Title
乳幼児膀胱尿管逆流症の臨床的検討
Author(s)
国方, 聖司; 郡, 健二郎; 秋山, 隆弘
Citation
泌尿器科紀要 (1991), 37(11): 1407-1413
Issue Date
1991-11
URL
http://hdl.handle.net/2433/117382
Right
Type
Departmental Bulletin Paper
Textversion
publisher
泌 尿 紀 要 37:1407-1413,1991
乳幼児膀胱尿管逆流症の臨床的検討
近畿大学医学部泌尿器科学教 室(主 任:栗 田 孝)
国 方 聖 司,郡
健 二 郎,秋
山 隆 弘
CLINICAL
STUDY
IN INFANTS
WITH
VESICOURETERAL
REFLUX
Seiji Kunikata, Kenjiro Kohri and Takahiro Akiyama
From the Department
of Urology,
Kinki University
Medical
School
A clinical study was performed
on 52 infants up to 2 years old with vesicoureteral
reflux.
We
treated 12 of them conservatively.
Half of them dropped out within I year.
It was very difficult
to follow up the infants over a long time in the conservative
treatment
group.
As a result of the
conservative treatment,
reflux disappeared
spontaneously
in only 2 infants.
Forty infants underwent
antireflux operations.
The reflux disappeared
in all cases.
However, we injured the peritoneum
in 2 cases when the Politano-Leadbetter
method was applied.
A modified Politano-Leadbetter
method was adopted because of the peritoneum
injury.
As an antireflux operation
on infants, the
modified Politano-Leadbetter
method is desirable.
Renal function and growth were studied.
Renal
function was assesed with 99m-Tc-DTPA renograms.
Renal
ratio
was evaluated
by intravenous
pyelography.
The function
of refluxing kidneys Severely
damaged
was not improved
after the
antireflux operations.
The small kidneys with a high
grade
or the atrophic
kidneys did
not
demonstrate
normalization
of renal
growth
after
antireflux
operations.
In conclusion,
it is
important
to detect the reflux at the early infant stage and perform
the antireflux
operation
at
an early stage in the case of high grade or renal impairment.
(Acta Urol. Jpn. 37: 1407-1413, 1991)
Key words: Infant, Vesicoureteral reflux
緒
言
近年,膀 胱 尿 管逆 流症 の一 部 症 例 で,逆 流 を契 機 と して 腎 障 害が 進 行 し,逆 流 腎症 に 至 る こ とか ら,本 症 の治療 の重 要 性 が 注 目され て い る.こ の疾 患 の特 性 上,当 然 なが ら小 児 に 多数 み られ,逆 流 腎 症 の 予 防 の 意 味 か ら も,早 期 発 見 ・治療 が重 要 な こ とは い うま で もな い.具 体 的 に は 逆 流発 見 後,保 存 的 治 療 を お こな うの か逆 流防 止 術 を 施 行す る のか こ の選 択,ま た 手術 施 行 す る な らば いか な る時 期 に お こ な うべ きか,各 医 療 機 関 で 論 議 の あ る と ころ で あ る.今 回,小 児 で も特 に3歳 未 満 の乳 幼 児 の逆 流症 に対 して,検 討 を 加 え た ので 若 干 の考 察 と と もに報 告 す る.対 象 お よ び 方法
近 畿 大学 医 学 部 泌 尿 器科 学 教室 に て,開 院 以 来 今 年 6月 ま で に治 療 した膀 胱 尿 管逆 流 症 患 者 は421例 で あ る.こ の うち3歳 未 満 児 は,52例 で あ った.原 発 性逆 流 が48例 で あ り,神 経 因 性膀 胱 に よる逆 流 が4例 で あ った.男 女 比 は11に て,片 側 逆 流 が 多 くみ られ た. 原 発 性 逆 流 で は,lI例 が 保 存 的 治療 を,37例 が逆 流 防 止 術 を 施 行 され た.ま た 神 経 因 性膀 胱 に よ る逆 流 で は,1例 が 保存 的 治療 を,3例 が逆 流 防止 術 を 施 行 さ れ た(Tablel).こ れ らの 乳 幼 児52例 に つ いて,腎 孟 腎炎 の既 往,臨 床所 見,治 療 法 に つ い て検 討 した.ま た腎 機 能,腎 杯 ・腎 孟 を 含 む 腎 の 形 態 的変 化 の 推 移 を,レ 線,99mTc-DTPAレ ノ グ ラ ムに て 検討 した.結
果
(1)既 往 歴 ・臨 床 的所 見 乳 幼 児52例 の うち49例(94%)に 腎 孟 腎 炎 の既 往 を 認 めた.し か し3例 は,腎 孟 腎炎 の既 往 が な く難 治性 の 膿 尿 のみ が み られ るだ け で あ った.一 方,初 診 時 に蛋 白尿 を認 め る もの が1例,高 血 圧 を認 め る もの が1例 あ った.尿 路 奇 形 を レ線,膀 胱 鏡 検 査 に て 検 討 す るに, 重 複 尿 管 を 有 す る ものが5例(10%),尿 管 瘤 が21408 泌 尿 紀 要37巻11号1991年 例,対 側 の無 形 成 腎 尿 管が1例,尿 管 が 前立 線 部 尿 道 に異 所 性 開 口す る もの が1例 あ った(Table2).全 体 と して これ らの いず れ か の尿 路 奇形 を 有 す る も の が,7例(13%)に み られ た.排 泄 性 腎孟 造 影,排 尿 時膀 胱 尿 道 造 影 か ら初 診時 の逆 流 腎 の 形態 的 変 化 を 検 討 す る と,逆 流 腎 は74腎 で あ り,この うち55腎(74%) に 腎杯 の鈍 化 を 認 め た.ま た 腎 の 癩 痕 を4腎(5%0) に,萎 縮 腎 あ るい はsmallkidneyを3腎(4%)に 認 めた.逆 流 の程 度 表 示 は,国 際 分類1)を 用 い検 討 す る に,gradeII(32%),gradeIII(50%)の もの が多 くみ られ た(Table3). (2)保 存 的 治療 保 存 的 治療 で の成 績 を 検 討 す る に,初 診 よ り1年 以 内 に5例 が 追 跡不 能 とな った.こ の うちgradeIII の も のが3例 あ った が,手 術 を 考 慮 しつ つ 経 過 観 察 し て いた が,来 院 しな くな った.特 に生 後5ヵ 月 の乳 児 の1例 は,逆 流 が 両側 に 進 行 した が,初 診 よ り9ヵ月 で 受 診 しな くな った.一 方,保 存 的治 療 を した12例 の う Table1. Fiftytwoinfantswithvesicoureteral reflux 近畿 大学 泌尿 器科 にて 治療 した 3歳 未満 の膀胱尿管逆流症(52例) 原発性 逆流 神経 因性膀胱 による逆流
魏 鵜/鷲
治療方法 原 発 性 逆 流 保存的治療 逆流防止術 神経因性膀胱 による逆流 保存的治療 逆流防止術 ち2例 で逆 流 が 消失 したが,軽 度 逆 流 のgradeI,II の3例 は,3年 以上 保 存 的 に 経 過 観 察 した に もか かわ らず逆 流 は存 続 した(Fig.1). (3)逆 流防 止 術 初診 か ら逆 流 防 止 術 に 踏 み 切 る まで の 観 察期 間 は, 平 均6カ 月で あ った,手 術 を 決 定 した理 由 は,高 度 逆 流 お よび 高度 腎 障 害 に よ る もの が26例 と 最 も多 か っ Table2. Episodesofpyelonephritisandclinical findings 腎孟腎炎の既往歴 な し 1回 2回 以 上 受診時 の所 見 蛋 白尿 高血圧 尿路奇形 重複尿管 尿管瘤 無形成腎尿管 尿管の異所性開 口 3例 11例 38例 1例 蓋例 48例 4例 22例 30例 ll例 37例 1例 3例 5例 2例 且例 1例 Table3. Gradesofrefluxand changesonIVPs morphological レ線 学 的 所 見 腎 杯 の 鈍 化55/74腎 腎 の 鍛 痕4/74腎 萎 縮 腎&小 腎3/74腎 逆流 の 程 度(74尿 管) gradeI5尿 管 gradeQ24尿 管 gradeID37尿 管 grade】V9尿 管 gradeV置 尿 管 gradei{li翫ト
H。O.(皿)囮 ×VUR進 行,dropout V,T.(II)懸['二=:二 他 院 へ
M.K.(II》%//////////VUR消 失=====レfollowup
A,K,(皿} VUR消 失==========コ レfolbwup G.K.(N)%///////////////////////////////† 心 奇 形 に て 死 亡 T.S・(II)%//////////////////////////////////////////////////%////.。 ・t %//////////////////////////////////////////////////////////////
LY・(π)一
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・t
初 診12345年 Fig.1.Resultsofconservativetreatmentた.当 科 で はgradeに 関 し て は,原 則 と して 皿 以 上 の も の を 手 術 対 象 に し て い る.つ い で 手 術 に 踏 み 切 っ た 理 由 と して 多 い の は,保 存 的C過 観 察 し て い た が, 腎 孟 腎 炎 が 頻 発 す る た め 手 術 を お こ な っ た も の で あ り 8例 あ っ た.ま た 逆 流 あ る い は 腎 機 能 低 下 の 進 行 の た め に 手 術 に 踏 み 切 っ た も の が6例 あ っ た(Table4)・ 逆 流 防 止 術 に 関 し て は,当 科 で は 片 側 逆 流 で も 原 則 的 に 両 側 逆 流 防 止 術 を お こ な っ て お り,ま た 重 複 尿 管 は 一 塊 と して2尿 管 を 同 時 に 手 術 し て い る.こ の た め 手 術 症 例440例 で あ る が,82尿 管 に 逆 流 防 止 術 を し て い る.Politano・Leadbetter変 法 と示 し て い る の は, Politano・Leadbetter法Vこ 準 じて い る が 膀 胱 外 か ら の 操 作 を 必 要 と した も の で あ る.当 科 で は,ほ と ん ど の 症 例 にPolitano-Leadbetter法 を 採 用 し て お り, Cohen法 は,神 経 因 性 膀 胱 の1例 に 施 行 した の み で あ る.合 併 症 と し て は,Politano-Leadbetter法vこ て 手 術 中 に 腹 膜 損 傷 を お こ し,Politano-Leadbetter 変 法 に 変更 した も のが2例 あ った.ま た 神 経 因 性膀 胱 に よ る逆 流 に 対す る逆 流 防 止 術 に て,1例 に一 過 性 の 逆 流 再 発 を み た もの が あ った.最 終 的 に は,合 併 症症 例 を 含 め40例 と も,逆 流 は 治癒 した(Table5). Table5. Methodsofantirefluxoperationsand complications 手 術 方 法(40例) Politano-Leadbetter法 Poli[ano-Leadbetter変 法 Paquin法 Cohen法 合 併 症 腹 膜 損 傷(術 中) 一 過 性 の 尿 も れ 術 直 後 の 逆 流 再 発 → 消 失 70尿 管 8尿 管 2尿 管 2尿 管 2例 1例 1例 Table6. Themorphologicalchange afterantirefluxoperation onIVP Table4.Determinationofantirefluxoperations 初診 か ら逆 流 防 止 術 まで の 期 間 平 均6ヵ 月(1ヵ 月 一z年10カ 月) 逆流 防止 術 を決 定 した理 由 逆流 ・腎 障 害 の程 度 よ り 腎 孟腎 炎(保 存 治 療 中) 逆 流 ・腎機 能低 下 の進 行 術 後 の 観 察期 間 平 均2年10ヵ 月 逆流防止術 症例 における術後で の逆流 腎の形態 的変化 Grade改 善 増 悪 合計 26例 8例 6例 I II 皿 V 3 17 30 8 0 O l z O O (3腎) (18腎) (32腎) (8腎) (0腎) (3ヵ 月 ∼9年4カ 月) 合計 58 3 (61腎) Lpattern Mpattern 15 min 10 1皿 皿 GradeofVUR V 03歳 未満児 op. postop. (3年 以 上) L:lowfunctionpattern M:mountainpattern Fig.2.ThecourseofTmaxvaluesof99mTc-DTPArenogramsafter antirefluxoperation
1410 泌尿 紀 要37巻11号1991年 KR enalratio=L2十Disc ・grade[ 轟9rade皿 oantirefluzop. 十25D
/ノ
.、、D
oエ ー 一 一 一 一 一 一 〒一 一 Renalratio=L2十Discヨ
refluxop. oエ「一__「__r-_ 0510150510 yearsold Renalratio=kidney(K)length/iengcnofL2pulsitsdisc(D) Fig.3.Renalgrowth 15 yearsold (4)逆 流 防 止 術 術 後 の逆 流 腎 の形 態 的変 化,腎 機 能 の推 移 お よび 腎 の発 育 逆 流 防 止術 した40例 の61逆 流 腎 に おけ る,術 後 の排 泄 性 腎 孟 造 影 の 変 化 を検 討 す るに,gradeIの1腎, gradeIIの2腎 以 外,す べ て の腎 杯 の 鈍 化 あ る いは 水 腎 症 は 改 善 した(Table6).一 方 増 悪 した3腎 は,搬 痕 腎 お よび 癩 痕新 生 腎 で あ った,腎 機 能 の評 価 に は,当 科 で はssmTC-DTPAdynamicstydyを 施 行 して お り,99m'1'C-DTPArenogramのTmax値 を検 討 した.Fig.2は,年 長 者 を 含め た 小 児症 例 全 般 で 逆 流 腎 のssmTc-DTPArenogramのTmax値 の推 移 を み た もので あ る.gradeに 比較 的 相 関 して, Tmax値 が 延長 して い る.し か しgradeの 低 い もの で も腎機 能 が 低 下 して い る も のが み られ る。 また術 後 3年 以上 経 過 した 症例 に て,Tmax値 の推 移 を み る に,高 度 腎機 能 障害 腎 は 改 善 せず,軽 度 腎 機 能 障 害 腎 は逆 流 防 止術 に よって 軽 快 す る傾 向が あ った .増 悪 す る症 例 で は,全 例 に 搬 痕 あ る いは 蛋 白尿 が み られ た . 乳 幼 児 に年 長 者 を 含 め た小 児 全 般 で の 腎 の発 育を み た もの がFig.3で あ る. 腎 の発 育評 価 は,折 笠 ら2)が 報 告 して い るrenal ・ati・(腎 の長 軸/第2腰 椎 の縦 幅+第2第3腰 欄 の 幅)を 用 い た.軽 度 逆 流 のgradeI,IIの もの は, 逆 流 防 止術 前 後 とも大 体 正 常範 囲 の腎 の発 育 を しめ し て い る.し か し逆 流 が 高 度 な もの のな か に は,低 発 育 腎 が み られ,逆 流 防 止術 を して も正 常 発 育範 囲 まで 復 さな い ものが み られ た.こ れ らは,す べ て搬 痕 腎 で あ った.r⊃
纈 螺・
Fig.4.ThepreoperativeDIP
cystogram(left)
き触
臥
Fig.5.ThepostoperativeDIP
cystogram(left)
(right)and
(right)and
(5)症 例 の 供 覧 今回 の対 象 症 例 の うち興 味 あ る1例 を 供 覧 す る.患 者 は4カ 月 の 男 児 に て,腎 孟 腎 炎,高 度 腎 機 能 障 害 にて某院 か ら紹 介 され た.初 診 時 のDIPで は,両 側 の 水 腎症 を 認 め,腎 機 能 低 下 もみ られ る こ とか ら,両 側 の腎痩 造 設 を お こ ない,同 時 に下 部 尿 路 の通 過 障 害 を 疑 い膀 胱 鏡検 査 をお こな った.膀 胱 鏡 検 査 では,両 側 の尿 管瘤 を認 め る も頸 部,尿 道 に異 常は み られ な か っ た.一 方,膀 胱 造 影 を お こな うに左 尿管 の不 完 全逆 流 を認 めた た め,腎 痩 造 設 の1ヵ 月 後 に,尿 管 瘤 切 除 と と もに両 側逆 流 防 止 術 をPolitano-Leadbetter変 法 にて お こな った.両 側 腎 痩 カ テ ー テ ルを 逆 流 防 止 術 の 1ヵ 月 後 に抜 去 し経 過 を み るに,逆 流 の治 癒 と と もに 水 腎症 も改善 し腎 機 能 も回 復 した(Fig.4,5).
考
察
近 年,周 産 期 か ら尿 路 異 常 が発 見 され る よ う に な り,早 期 発見,早 期 治 療 が提11昌され てい る.こ の 意 味 か らも,膀 胱 尿 管逆 流 症 も早 期 の発 見 が 重 要 な こ とは い うまで もな い.今 回 の3歳 未 満 児 で の 検 討 で は,94 %に 腎 孟 腎炎 の既 往 が み られ た が,残 る3例 は,難 治 性 の膿 尿 が続 き逆 流 症 が発 見 され た.早 期 発 見 の た め には,腎 孟腎 炎 の症 状 ・既 往 がな くて も乳 幼 児 の膿 尿 を認 め た場 合,逆 流 症 を念 頭 にお く必 要 が あ ろ う.一 方,朴 ら3)は 小 児 に 無菌 性 の膀 胱 尿 管 逆 流 症 を認 め, 感染 が な くて も高血 圧,蛋 白尿 が み られ る とき は,積 極 的 に排 尿 時 膀 胱 尿 道造 影 を お こな い 早期 発 見 に努 め るべ きだ と報 告 して い る.わ れ わ れ も今 回,蛋 白尿, 高血 圧 を各1例 認 め た が,尿 感 染 を と もな って いた 。 しか し年 長 児 で あ る が,尿 感 染 が な く蛋 白 尿 を主 訴 と して来 院 し,膀 胱 尿 管 逆 流 症 のた め逆 流 防止 術 を お こ な った に もか か わ らず,逆 流 腎 症 に い た っ た症 例 を 報 告 して い る4).ま た 今 回 のretrospectiveな 検 討 に て, わ れわ れ は逆 流 症例 の13%に,他 の尿 路 奇 形 を 認 め た.こ の こ と よ り,重 複 尿 管 等 の 尿路 奇 形 が あ る場 合 に も,逆 流症 に 注意 す る必要 が あ ろ う. 逆 流 が 高 度 あ る いは 腎 機 能 障 害 が 高度 の と きは,逆 流 防止 術 施行 が一 般 的 で あ るが,軽 度 逆 流 の場 合,手 術 適応 に つ い て論 議 のあ る と ころ で あ る。 有 馬 ら5)は 1年 以 上 保存 的 に経 過 観 察 で きた逆 流 症 乳 児 では,61 %に 逆 流 が消 失 した と報 告 して い るが,わ れ わ れ の 今 回 の検 討 で は,保 存 的 治 療 の12例 中 で2例 に 逆 流 が 消 失 した の み で あ った.こ れ は,わ れ わ れ の保 存 的 治 療 症 例 の 半 数 が1年 以 内 に 追 跡不 能 とな って お り,正 確 な評 価 とな っ て いな い た め で あ ろ う.こ の よ うに保 存 的 治療 で は,長 期 の経 過 観 察 が きわ めて 困 難 で あ る こ とが 痛 感 され た 。 しか も高 度逆 流症 例 で手 術 を 考 慮 し つ つ保 存 的 に 観 察 して い た もの が,短 期 間 の 治療 中 に 来 院 しな くな る こ とが あ り,こ れ がわ れ わ れ に積 極 的 な逆 流 防止 術 を選 択 さ せ る理 由 の ひ とつ とな っ て い る.わ れ わ れ は,以 前 に逆 流 防止 術 前 後 で の 腎機 能 推 移 をssmTc-DTPAdynamicstudyに て 検 討 し,高 度 腎機 能 障 害 腎 は 逆 流 防止 術 に よ って も腎機 能 低 下 を 防止 で きず,軽 度 逆 流 で も腎機 能 低 下 が み られ る もの が あ る ことを 報 告 した6).こ の こ とか ら,当 教 室 で は gradeIII以 上 の もの を原 則 と して 手術 し,逆 流 が 軽 度 の もので は 腎 機 能 の程 度,尿 感 染 の コ ン トR一 ルの 面か ら検 討 し,手 術 に 踏み 切 って い る. 両 側 逆 流 症 に 対 して は,両 側 逆 流 防 止術 を お こ な う のは い うまで もな い が,片 側 逆 流 に 対 して患 側 のみ か あ るい は 両 側逆 流 防止 術 を お こな うべ きか 論 議 の あ る とこ ろで あ る.こ の こ とは,排 尿 時膀 胱 尿道 造 影 の逆 流 検 出感 度 の 信 頼性 に起 因 す る ・Jequierら7)は,逆 流 の程 度 が 排 尿 時膀 胱 尿道 造 影 の施 行 毎 に変 化 す る こ と を報 告 して お り,わ れ わ れ も非逆 流側 腎 に水 腎 症 や 搬 痕 形 成 を 認 め る ものが あ る こ とか ら,排 尿 時 膀 胱 尿 道 造 影 に よ り完 全 に逆 流 の程 度 が 検 出 され て い る とは 考 えて い な い8》.このた め 当 教 室 で は,片 側 逆 流 で も原 則 と して 両 側 の逆 流 防止 術 を お こな ってい る.つ い で逆 流 防 止 術 を お こな うに あた って どの術 式 を 選 ぶ か とい うこ とが 問 題 に な る が,わ れ わ れ は お もにpolitano-Leadbetter法 を 採用 して きた,し か し2例 で術 中 に 腹 膜 損 傷 を き た し,膀 胱 外操 作 を余 儀 な くされ た.こ の点 に 関 して,秋 山 ら9)は,politano-Leadbetter法 手 術 で は腹 腔 内臓 器 損 傷 の 危 険性 が あ る こ とを 指摘 して い る.こ の こ とか ら乳 幼 児 では,politano-Leadbetter 変 法 が 有用 で あ る と思 わ れ る.最 近,わ れ わ れ は種 々 の 合 併症 を軽 減 す る方 法 と して,内 視 鏡 的逆 流防 止 術 を 検討 してい る10).こ れ ま で は,主 に 成 人逆 流症 患 者 に 適応 して きた が,最 近 は3歳 児 まで 施 行 してお り, 将来 乳 幼 児 まで の手 術 適応 の拡 大 を 検 討 中 で あ る. 逆 流 防止 術 の 目的 は,逆 流 の治 癒 は い うま で もな い が,究 極 的 に は腎 機 能 の温 存,回 復 であ る.こ のた め 腎 機 能 の評 価 と して,種 々 の もの が 報 告 さ れ て い るn・12)ssm'1'C-DMSAシ ンチ グ ラフ ィー,尿 中 β2-MG,Crク レァ ラ ンス 等 が あ げ られ て い るが,わ れ わ れ は,長 期 観 察 を 前提 と した 場 合,外 来 に て短 時 間 に 分 腎機 能 を 評 価 で き る99m'1'C-DTPAdynamic studyが 最 適 で あ る と考 え て い る.99mTc-DTPA dynamicstudyに は種 々のprameterが あ り,こ の 総 合 的 評 価 が 本 来 必要 で あ るが,簡 単 な指 標 と して こ の レノ グ ラ ムのTmax値,パ タ ー ンを重 視 し,今回 は これ に て 検 討 した.高 度 腎 機 能 低 下 を示 す 逆 流 腎 は, 逆 流 防 止 術 に よ って も回復 傾 向は な く,こ れ らの腎 の なか に は 搬 痕 あ るい は萎 縮 を ともな った もの が多 くみ1412 泌 尿 紀 要37巻11号1991年 られ た.こ れ ら を,Hodson13)やKincaid-Smith ら14)は逆 流 腎 症 の進 行 性病 態 と して と らえ て い る.わ れ わ れ も,逆 流 腎 症 の悪 化 の 予後 因 子 と して 蛋 白尿 を 指 摘 し,蛋 白尿 症 例 の大 部分 が搬 痕 あ るい は萎 縮 腎 を 有 して い る こ とを 報 告 して い る15).今 回 の3歳 未 満 の 乳 幼 児 の検 討 では1例 の み 蛋 白尿 を認 め,こ の1例 も や は り逆 流 防 止 術 を お こな ったが,腎 機 能 は 回復 しな か った.当 然 なが ら,病 態 が糸 球 体 まで お よば な い早 期 の うちに 逆 流 を発 見す る こ とが 重要 で あ り,早 期 の 逆 流 防止 術 が 勧 め られ る, 逆 流 腎 の 発 育 は,尿 感 染 と関 連 して興 味 あ る と ころ で あ る.Lyon's)は,尿 感染 患 者 の高 頻 度 にsmall kidneyを 認 め た と報 告 して い る.今 回 の検 討 では,74 腎 の うち3腎 と低 頻 度 に しか 認 め な か った 。 これ は, わ れ わ れ の 症 例 が他 の報 告5・12)と比較 す る と,逆 流 の 程 度 が 低 い傾 向 に あ るた め か も しれ な い.本 院 で は 小 児科 医 の 協力 を 得 て,尿 路 感 染 あ る いは 蛋 白尿 の早 期 か ら積 極 的 に排 泄 性 腎 孟 造影 のみ な らず 排 尿 時膀 胱 尿 道 造 影 を して お り,比 較 的早 期 に 逆 流 が 発 見 で き て い る もの と思わ れ る.逆 流 を と もな ったsmallkidney での 逆 流 防止 術 後 の腎 発 育 に 関 して は,肯 定 的,否 定 的 の 両方 の意 見 が あ る17・18).今回 の 年長 児 を 含め た 検 討 で は,gradeの 低 いsmallkidneyの も ので,逆 流 防止 術 後 に 発 育 の 回 復す る も のが あ った が,grade の高 いsmallkidneyで は手 術 後 も発 育 の 回復 は み ら れ な か った.こ の発 育 の 回復 がみ られ な か った腎 は, 搬 痕 を 有 したsmallkidneyで あ った.腎 の発 育 に 関 して は,renalc◎unterbalance19)も 考慮 す る必 要 が あ るが,こ の こ と よ り腎搬 痕 の形成 が お こる 以前 で の 早 期 の逆 流防 止 術 が 重要 と思 わ れ る.