DLC 膜のワイヤーボンディング用キャピラリーに対する
保護膜としての応用
土山明美
*1一條秀樹
*2蓮山寛機
*3Application of DLC Coatings for Protecting Wire Bonding Capillary
Akemi Tsuchiyama, Hideki Ichijo, Hiroki Hasuyama
半導体分野では,ICチップの生産性向上に重要な役割を果たしているワイヤーボンディング用キャピラリーの長 寿命化が課題となっている。その寿命は,主として連続する結線作業のために生じるキャピラリー先端部(フェイ ス面)の汚染状況により決定されるため,フェイス面への汚染防止用を目的としたDLC被覆実験を行い,DLC被覆キ ャピラリーのボンディング成形性について検討した。
*1 機械電子研究所
*2 一條商事
*3 久留米工業大学
1 はじめに
半導体実装現場では,連続する結線作業のためにキ ャピラリー先端部が汚染される。このため,結線不良 が生じる前のキャピラリー交換が余儀なく行われてい る。汎用品であるアルミナ製キャピラリーでは,一般 に使用開始から約4〜5日目で交換するため,低コスト でのキャピラリーの長寿命化が強く望まれている。
本研究では,DLC膜をキャピラリーフェイス面へ応用 することで,キャピラリーの長寿命化を実現するため の可能性を調査した。
2 実験と結果
DLC膜の作製はイオン化蒸着法を用いた。実装ボンデ ィング試験は10万ボンドまで行った。キャピラリーの 耐久性は,ボールボンド(1st bond)の形状変化を光学 顕微鏡で観察することで判断した。
実験の結果,キャピラリーフェイス面に対して,平 滑膜面,高密着性を有するDLC被覆処理方法を開発する ことができた。DLC被覆キャピラリーでは,10万ボンド 後でもボールボンドの形状に変化はみられず(図1),初 期形状を維持していることが確認でき,従来のアルミ ナ製キャピラリーと比較して,約5倍程度の長寿命化が 実現できることが示された。また,DLC被覆キャピラリ ーの場合には,その先端部への汚染物はほとんど確認 できなかった(図2)。
3 まとめ
ワイヤーボンディング用キャピラリーの長寿命化に 対して,DLC被覆は有益な手法であることを示すことが できた。
4 掲載論文
Proc. of the 21st International Korea-Japan Seminar on Ceramics,p.61(2004)
図1 ボンディング試験でのボール形状の変化 (a)及び(e) 初期,(b)及び(f) 2万ボンド後,(c) 及び(g) 5万ボンド後,(d)及び(h) 10万ボンド後
(a) (b) (c) (d)
(e) (f) (g) (h)
DLC-coatedUncoated
Initial 2 × 104 5 × 104 1 × 105
図2 10万ボンド後のキャピラリーフェイス面 (a)DLC被覆キャピラリー,(b)未処理のアル ミナ製キャピラリー
10 µm 10 µm I n i t i a l
(a) (b)
汚染