Bumper, Grill 3% Hood 3% Door,Fender 5% Pillar, Roof 17% Windshield 30% Road, 42%
Fig.18 Rate of the vehicle, road surface, etc, causing bicyclist
head injuries (N=180,AIS2~6)(7)
4.1. A ピラーの特性への変更方法 A ピラーの特性を反映した自動車モデルへの変更方法を図 19 に示す.自動車の外観形状は変更せずに,ウインドシール ドの荷重‐貫入量特性を同図に示すA ピラーの特性(After Mod.)になるよう変更した.なお A ピラーの荷重‐貫入量特 性は,Mizuno らの文献(8)に基づき定義した.同図より,変更 前のウインドシールドの荷重‐貫入量特性(Before Mod.)で は,貫入量0.02m での荷重が 6kN に対し,変更後の A ピラー の特性(After Mod.)では貫入量 0.02m での荷重は 15kN であ り,約2.5 倍高い. 0 5 10 15 0 0.04 0.08 Fo rce[ kN ] Penetration [m] Before Mod. After Mod.
Fig.19 Comparison of the windshield stiffness 4.2. A ピラーとの衝突時に発生する HIC 値の解析結果
図20 に,A ピラーとの衝突時に発生する HIC 値を,自動車
の衝突速度ごとに分類して示す.なおSUV との衝突では,自
転車乗員の頭部はA ピラーと衝突しなかったため,同図には
Sedan と 1BOX において,A ピラー(特性変更前についてはウ インドシールド)に衝突した場合の結果のみを示す.特性変 更後の全車種(Sedan,1BOX)および全速度域での HIC の平 均値を求めると,約2003 となり,変更前のウインドシールド 衝突時の平均値である約904 に対し,変更後の方が 2.2 倍高く なり,A ピラーの危険性が示唆された. 806 2726 5555 399 732 1422 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 20 30 40 H ea d I nj ur y C rit er ia
Vehicle impact velocity [km/h] Sedan
1BOX
Fig.20 HIC values for each vehicle velocity (collision with windshield which has A pillar stiffness)
5.ま と め 本研究では,自転車対自動車の衝突シミュレーションモデ ルを構築し,自転車事故分析に基づいた全90 ケースの出会い 頭事故の衝突シミュレーションを実施した.そして,自転車 乗員頭部の自動車ならびに路面に対する衝突状況の解析を行 った.以下に,本研究で得られた自転車乗員保護対策におけ る主なポイントを示す. Sedan や 1BOX との 1 次衝突では,対車衝突部位の約 80%が ウインドシールドであったため,現行の日本の保安基準で求 められている歩行者頭部保護対策(対ボンネット)が自転車 乗員頭部保護には,有効ではない可能性がある. 2 次衝突時に発生する HIC 値は,全車種ならびに全衝突速度 域での平均で約2340(AIS4+傷害発生リスク:96%)となり, 頭部に重篤な傷害が発生する可能性が極めて高い. A ピラーに衝突した全車種ならびに全衝突速度域での平均 が約2003(AIS4+傷害発生リスク:88%)となり,頭部に重 篤な傷害が発生する可能性が高い. なお本稿では,車種間の違いを主に,大まかに自転車乗員 の頭部衝突状況を解析した.今後は,自転車乗員の体格,衝 突速度および自転車の走行速度の影響などについても詳細な 解析を行うとともに,得られた知見に基づき,自転車乗員の 被害軽減対策を具体的に検討していく予定である. 参 考 文 献 (1) 警察庁交通局:平成24 年中の交通事故の発生状況 (2012)
(2) T. Maki et al:Comparative analysis of vehicle-bicyclist and
vehicle-pedestrian accidents in Japan, Accident analysis and prevention, 35, p927-940 (2003)
(3) Y. Mizuno : Summary of IHRA pedestrian safety WG
activities(2003)-Proposed test methods to evaluate pedestrian protection afforded by passenger cars, Proceedings of the 18th ESV Technical Conference 00-0580 (2003)
(4) 浅沼宏幸ほか:歩行者事故再現可能な簡易車両モデルの
検討,自動車技術会学術講演会前刷集,No.27-13 p.7-12 (2013)
(5) K. ANATA et al:Injury risk assessment at the timing of a
pedestrian impact with a road surface in a car-pedestrian accident, Proceedings of the 22nd ESV Technical Conference 11-0119 (2011)
(6) 健康局:平成21 年国民健康・栄養調査報告 (2013)
(7) 公益財団法人 交通事故総合分析センター:交通事故例
調査・分析報告書,p424-442 (2005)
(8) Mizuno and Kajzer, Head injuries in vehicle-pedestrian impact,
Society of Automotive Engineers, 2000-01-0157 (2000)
全身筋
FE ソリッドモデルを用いた歩行者の衝突傷害解析
中平 祐子1) 岩本 正実2)
Impact Analyses Using a Pedestrian FE Model with Muscular Solid Elements
Yuko Nakahira Masami Iwamoto
A human whole body FE model with muscular solid elements, which can represent 3-D geometry of each muscle and stiffness change of the muscle for inputted muscle activation, was applied to sedan-to-pedestrian impact analyses. After the model without muscle activations was validated against cadaver test data of sedan-to-pedestrian impacts, we investigated how muscle activations of a pedestrian in bracing conditions just before crashes would affect the kinematics and injuries of the pedestrian during sedan-to-pedestrian impacts.
KEY WORDS: Safety, Anthropomorphic dummy, Injury prediction Pedestrian, Muscle activation (C1) 1.ま え が き 車両による歩行者の死傷事故は重要な社会的問題であり, その安全対策を検討する上で,車両の衝突による歩行者の傷 害発生メカニズムを明らかにする必要がある. 一方,交通事故の詳細な調査結果(1)によると,衝突直前に おいて回避行動(ブレーキ操作とステアリング操作のどちら か一方を含む動作)を行った自動車乗員は約 60%を占めてい る.回避行動の際に筋は活性化し,その結果として衝突直前 の乗員姿勢に変化が生じたり(2),筋の硬さ,すなわち筋硬度 に変化が生じる.筋硬度の変化は衝撃時の人体の力学的応答 に影響を及ぼす(3).したがって実事故における傷害発生メカ ニズムを解明するためには,筋活動を考慮する必要がある. 傷害メカニズムの解明には人体有限要素(FE)モデルの活 用が有用な手段の一つである.これまでに,衝突前の筋活動 が傷害に及ぼす影響を評価することを目的として全身筋ソリ ッドモデルを開発した(4).本研究の目的は,人体有限要素(FE) モデルを用いて衝突直前の筋活動が歩行者傷害に与える影響 を調査することである. 2.全身筋 FE ソリッドモデルの概要 衝突直前の筋活動を考慮した傷害評価に活用するために脱 力や身構えのような筋の活動状態を表現可能な全身筋 FE ソリ ッドモデルを開発した(4).図 1 に AM50(成人男性標準体型, 身長 175 cm,体重 77 kg)モデルの歩行者姿勢を示す.本モ デルは従来の人体有限要素モデルに比べて容易に姿勢を変更 することが可能であり,かつ筋活動に伴う筋硬度の変化や筋 同士の接触も考慮できるという特徴を有する.節点数は約 15 万,要素数は約 28 万,タイムステップは 0.27×10-6秒である. なお,本報で実施した計算には非線形陽解法有限要素解析ソ ルバーLS-DYNA v971(LSTC)を使用した. 3.膝部せん断衝撃時の下腿挙動の検証 3.1. 膝部せん断衝撃の計算条件 膝部せん断衝撃の献体実験(5)は,献体をテーブル上に寝か せた状態で左脚に体重の約半分に相当する 400 N を負荷して 行われた.大腿部の 2 箇所をロードセルに接続したボルトに より拘束し,全面にフォーム材を取り付けたインパクタを膝 部のすぐ下に側面方向から衝突させた.衝突速度は 40 km/h で行われた.実験を模擬するように設定した計算の初期条件 を図 2 に示す.実験では全身を使用したが,計算では仙骨を 拘束した下肢モデルのみを用い,床の強制変位により左脚部
*
*2014 年 10 月 24 日受理.2014 年 10 月 24 日自動車技術会秋季 学術講演会において発表. 1)・2)(株)豊田中央研究所(480-1192 愛知県長久手市横道 41-1)Fig. 1 A human whole body FE model with muscular solid elements. Pectoralis Major Sternocleidomastoid Deltoid Biceps Brachii Extensor Digitorum Triceps Sartorius External Oblique Tibialis Anterior Rectus Femoris Soleus Extensor Digitorum Flexor Hallucis Brevis Abductor Digiti Minimi
Peroneus Longus Tensor Fasciae Latae
Vastus Lateralis Vastus Medialis Brachioradialis
に初期荷重の 400 N を与えた.バー要素モデルを用いて,実 験と同様に大腿骨の 2 箇所を拘束し,外側からインパクタを 衝突させた. 3.2. 膝部のせん断衝撃の計算結果 図 3~5 に計算結果と実験データ(6)を共に示す.比較した実 験データは本モデルに身長と体重が近く,拘束部位での骨折 がない献体データを選び, Test No. 8S(身長 177 cm, 体重 75 kg,35 歳男性)と 16S(身長 177 cm,体重 80 kg,63 歳男 性)を用いた.図 3 に示すインパクタ加速度はピーク及びそ の発生時刻ともに,計算と実験で同様の結果となった.図 4 と図 5 に示す P1, P2 の変位についても,実験に近い結果が得 られたため,下腿部の挙動についても計算結果は実験データ とよく一致していると考えられる. 4.セダン衝突時の歩行者挙動の検証 4.1. セダン衝突の計算条件 検証データとして Schroeder ら(7)が実施した献体実験デー タを用いた.実験では車両の前方で人が道路を横断する状況 を表現するため,車両のカットボディが献体の側部から衝突 するように配置した.献体の姿勢は左脚を前に,右脚を後ろ にした立位姿勢とした.衝突前 50 ms まで献体は直立した姿 勢に保持された.衝突後に車両は減速し,献体の地面との二 次衝突による傷害を防ぐためにパッドでできた安全ネットで 受け止められた.歩行者モデルとの比較には,身長 170 cm, 体重 68 kg,78 歳の男性の献体データを用いた.衝突速度は 40 km/h である. 図 6 に計算条件を示す.献体実験と同様に歩行者筋ソリッ ドモデルを配置し,重力を人体のみに与え,車両モデルに 40 km/h の初速度を与えて衝突させた.献体との比較を行うため, 筋ソリッドモデルに入力する筋活性度は脱力相当とし,筋の 振動による計算不安定の問題を回避できる程度の 0.5%以下 の小さい値を設定した. 車両モデルの節点数は約 56,000,要素数は約 53,000 であり, 実験で用いられた車両と同型の車両の外形状データ(8)を参考 に作成された.今回の検証では人体の挙動に着目したため, 車両モデルは車両前面の外側形状のみとした.作成した車両 モデルの車重は約 425 kg である.
Fig. 6 Simulation setup for sedan-to-pedestrian impact.
40km/h Human FE model Gravity 9.8m/s2 Head maker Chest maker Pelvis maker
Ground 25mm (High of shoe sole) Windshields Car FE model Z Y Pre-Load (400N) Fixed 40km/h Impactor mass 6.25kg 245mm 50mm P2 P1
Fig. 2 Simulation setup for knee shearing impact.
Fig. 3 Comparison of impactor accelerations between simulation result with a relaxed condition and test data.
0 400 800 1200 0 10 20 30 Im pact or A ccelerat io n (m /s 2) Time (ms) Simulation Test-8S Test-16S
Fig. 4 Comparison of a P1 Y-displacement between simulation result with a relaxed condition and test data.
-200 20 40 60 80 100 120 140 0 10 20 30 P1 -Y-Di sp lacem en t (mm ) Time (ms) Simulation Test-8S Test-16S
Fig. 5 Comparison of a P2 Y-displacement between simulation result with a relaxed condition and test data.
-20 0 20 40 60 80 100 120 140 0 10 20 30 P2 -Y -D isp la ce m en t (m m ) Time (ms) Simulation Test-8S Test-16S 4.2. セダン衝突の計算結果 図 7 に衝突時の歩行者モデルの挙動を献体実験データと比 較して示す.40 ms までの挙動は献体実験データと比較してよ く一致している.60 ms 時に足部がバンパーへ巻き込まれるが, 献体実験データと比較して計算結果では巻き込まれ度合が小 さかった.そのため,80 ms 以降において献体実験データと比 較して計算結果では膝下部分がバンパーから離れた状態にな った. 図 8 に腰部,胸部,頭部のマーカー位置における変位の時 間変化について計算結果と実験データの比較を示す.腰部マ ーカーの変位に関して車両前方向および上下方向変位はとも に献体実験とよく一致している.また,胸部マーカーの変位 に関して車両前方向および上下方向の変位はともに実験より も約 10 ms 遅く変位が開始されるものの,それ以降は実験デ ータと同様の変位速度を示している.頭部マーカーに関して も車両前方向では実験データよりも小さい変位を示している が,上下方向の変位はやや変位開始時刻が実験データよりも 遅れるものの,概ね実験データと一致している. 図 9 に左膝を後方から見た様子を示す.本モデルでは膝の 靭帯に要素削除機能を適用しているので削除された要素の位 置で靭帯破断箇所が確認できる.図 11 中の丸で示したのは破 断した靭帯である. 左膝 MCL(内側側副靱帯)が衝突後 6 ms 時に破断し,左膝 PCL (後十字靭帯)が衝突後 7 ms 時に破断した.しかし,献体実 験データでは膝靭帯破断は見られなかった. 図 10 に頭部の接触反力が最大となった時刻における頭部の 応力分布を示す.左後頭部において骨折が予測されたが,献 体実験データでは頭蓋骨骨折は見られなかった. 図 11 に下肢と車両の接触反力が最大となった時刻における 下肢皮質骨の応力分布を示す.左大腿骨は,図 11(a)の丸で示 した位置において骨折が予測されたが,献体実験データでは 大腿骨骨折は見られなかった.図 11(b)の丸で示した地上から 約 380 mm 上方の位置において左脛骨および左腓骨の骨折が予 測された.この結果は,献体実験結果と一致している. Fig. 7 Comparison of the kinematics between simulation
result with a relaxed condition and test data.
0 ms 80 ms
20 ms 100 ms
40 ms 120 ms
60 ms 140 ms
Fig. 9 Back view of left knee ligament rupture locations of simulation result with a relaxed condition at 8ms after sedan-to-pedestrian impact. Femur Tibia PCL MCL Fibula -200 0 200 400 600 800 0 0.05 0.1 0.15 C hes t H or izon ta l Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -200 0 200 400 600 800 0 0.05 0.1 0.15 Pe lv is Hori zo nt al Di sp la ce me nt (mm) Time (s)
Fig. 8 Comparison of displacement time histories of markers between simulation result with a relaxed condition and test data. -800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 C he st V er tica l Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -400 -200 0 200 400 600 0 0.05 0.1 0.15 He ad Hori zo nt al Di sp la ce me nt (mm) Time (s) Test Simulation -800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 H ead V er tical Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 Pe lv is V er tical Di sp la ce me nt (mm) Time (s)
に初期荷重の 400 N を与えた.バー要素モデルを用いて,実 験と同様に大腿骨の 2 箇所を拘束し,外側からインパクタを 衝突させた. 3.2. 膝部のせん断衝撃の計算結果 図 3~5 に計算結果と実験データ(6)を共に示す.比較した実 験データは本モデルに身長と体重が近く,拘束部位での骨折 がない献体データを選び, Test No. 8S(身長 177 cm, 体重 75 kg,35 歳男性)と 16S(身長 177 cm,体重 80 kg,63 歳男 性)を用いた.図 3 に示すインパクタ加速度はピーク及びそ の発生時刻ともに,計算と実験で同様の結果となった.図 4 と図 5 に示す P1, P2 の変位についても,実験に近い結果が得 られたため,下腿部の挙動についても計算結果は実験データ とよく一致していると考えられる. 4.セダン衝突時の歩行者挙動の検証 4.1. セダン衝突の計算条件 検証データとして Schroeder ら(7)が実施した献体実験デー タを用いた.実験では車両の前方で人が道路を横断する状況 を表現するため,車両のカットボディが献体の側部から衝突 するように配置した.献体の姿勢は左脚を前に,右脚を後ろ にした立位姿勢とした.衝突前 50 ms まで献体は直立した姿 勢に保持された.衝突後に車両は減速し,献体の地面との二 次衝突による傷害を防ぐためにパッドでできた安全ネットで 受け止められた.歩行者モデルとの比較には,身長 170 cm, 体重 68 kg,78 歳の男性の献体データを用いた.衝突速度は 40 km/h である. 図 6 に計算条件を示す.献体実験と同様に歩行者筋ソリッ ドモデルを配置し,重力を人体のみに与え,車両モデルに 40 km/h の初速度を与えて衝突させた.献体との比較を行うため, 筋ソリッドモデルに入力する筋活性度は脱力相当とし,筋の 振動による計算不安定の問題を回避できる程度の 0.5%以下 の小さい値を設定した. 車両モデルの節点数は約 56,000,要素数は約 53,000 であり, 実験で用いられた車両と同型の車両の外形状データ(8)を参考 に作成された.今回の検証では人体の挙動に着目したため, 車両モデルは車両前面の外側形状のみとした.作成した車両 モデルの車重は約 425 kg である.
Fig. 6 Simulation setup for sedan-to-pedestrian impact.
40km/h Human FE model Gravity 9.8m/s2 Head maker Chest maker Pelvis maker
Ground 25mm (High of shoe sole) Windshields Car FE model Z Y Pre-Load (400N) Fixed 40km/h Impactor mass 6.25kg 245mm 50mm P2 P1
Fig. 2 Simulation setup for knee shearing impact.
Fig. 3 Comparison of impactor accelerations between simulation result with a relaxed condition and test data.
0 400 800 1200 0 10 20 30 Im pact or A ccelerat io n (m /s 2) Time (ms) Simulation Test-8S Test-16S
Fig. 4 Comparison of a P1 Y-displacement between simulation result with a relaxed condition and test data.
-200 20 40 60 80 100 120 140 0 10 20 30 P1 -Y-Di sp lacem en t (mm ) Time (ms) Simulation Test-8S Test-16S
Fig. 5 Comparison of a P2 Y-displacement between simulation result with a relaxed condition and test data.
-20 0 20 40 60 80 100 120 140 0 10 20 30 P2 -Y -D isp la ce m en t (m m ) Time (ms) Simulation Test-8S Test-16S 4.2. セダン衝突の計算結果 図 7 に衝突時の歩行者モデルの挙動を献体実験データと比 較して示す.40 ms までの挙動は献体実験データと比較してよ く一致している.60 ms 時に足部がバンパーへ巻き込まれるが, 献体実験データと比較して計算結果では巻き込まれ度合が小 さかった.そのため,80 ms 以降において献体実験データと比 較して計算結果では膝下部分がバンパーから離れた状態にな った. 図 8 に腰部,胸部,頭部のマーカー位置における変位の時 間変化について計算結果と実験データの比較を示す.腰部マ ーカーの変位に関して車両前方向および上下方向変位はとも に献体実験とよく一致している.また,胸部マーカーの変位 に関して車両前方向および上下方向の変位はともに実験より も約 10 ms 遅く変位が開始されるものの,それ以降は実験デ ータと同様の変位速度を示している.頭部マーカーに関して も車両前方向では実験データよりも小さい変位を示している が,上下方向の変位はやや変位開始時刻が実験データよりも 遅れるものの,概ね実験データと一致している. 図 9 に左膝を後方から見た様子を示す.本モデルでは膝の 靭帯に要素削除機能を適用しているので削除された要素の位 置で靭帯破断箇所が確認できる.図 11 中の丸で示したのは破 断した靭帯である. 左膝 MCL(内側側副靱帯)が衝突後 6 ms 時に破断し,左膝 PCL (後十字靭帯)が衝突後 7 ms 時に破断した.しかし,献体実 験データでは膝靭帯破断は見られなかった. 図 10 に頭部の接触反力が最大となった時刻における頭部の 応力分布を示す.左後頭部において骨折が予測されたが,献 体実験データでは頭蓋骨骨折は見られなかった. 図 11 に下肢と車両の接触反力が最大となった時刻における 下肢皮質骨の応力分布を示す.左大腿骨は,図 11(a)の丸で示 した位置において骨折が予測されたが,献体実験データでは 大腿骨骨折は見られなかった.図 11(b)の丸で示した地上から 約 380 mm 上方の位置において左脛骨および左腓骨の骨折が予 測された.この結果は,献体実験結果と一致している. Fig. 7 Comparison of the kinematics between simulation
result with a relaxed condition and test data.
0 ms 80 ms
20 ms 100 ms
40 ms 120 ms
60 ms 140 ms
Fig. 9 Back view of left knee ligament rupture locations of simulation result with a relaxed condition at 8ms after sedan-to-pedestrian impact. Femur Tibia PCL MCL Fibula -200 0 200 400 600 800 0 0.05 0.1 0.15 C hes t H or izon ta l Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -200 0 200 400 600 800 0 0.05 0.1 0.15 Pe lv is Hori zo nt al Di sp la ce me nt (mm) Time (s)
Fig. 8 Comparison of displacement time histories of markers between simulation result with a relaxed condition and test data. -800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 C he st V er tica l Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -400 -200 0 200 400 600 0 0.05 0.1 0.15 He ad Hori zo nt al Di sp la ce me nt (mm) Time (s) Test Simulation -800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 H ead V er tical Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 Pe lv is V er tical Di sp la ce me nt (mm) Time (s)
図 12 に左腕と車両との接触反力が最大となった時刻におけ る鎖骨と上腕骨の応力分布を示す.左鎖骨(図 12 中の丸)の 応力は皮質骨が破断する閾値を超えているので,骨折のリス クが高いと考えられる.この結果は献体実験結果と一致して いる. また,献体実験データでは右脛骨と右腓骨の骨折や,C7- T1 間の椎間板の破断が見られたが,本モデルでは該当箇所に 傷害は見られなかった. 5.歩行者の挙動と傷害に及ぼす身構えの影響 5.1. パラメータスタディの条件 衝突直前の身構え筋活動が歩行者の挙動や傷害に及ぼす影 響を調べるため,パラメータスタディを実施した.計算条件 は第 4 章に示す検証条件(図 6)と同じ衝突速度 40 km/h とし た.身構えの影響を調べるため,脱力状態と身構え状態の 2 つの条件を設定した.脱力状態を表現するために筋に入力す る活性度には,筋の振動による計算不安定の問題を回避でき る程度の 0.5%以下の小さい値を設定した.また,歩行者の身 構え状態の筋活性度は不明であるため,筋電計測データ(9)か ら体幹部の活性度の平均値である 20%を仮定して設定し,計 算開始の 0 ms から 200 ms で筋活性度を 0%から 20%まで増 加させ,200 ms 時に車両との衝突を開始し,200 ms 以降では 筋活性度を 20%に維持した. 5.2. パラメータスタディの結果 脱力の場合の計算結果は,第 4 章の結果を使用する.図 13 に衝突時の歩行者モデルの衝突後 115 ms 時の挙動を示す.こ の時点の挙動において身構えの場合と比較して脱力の場合は 下肢の開きが大きいという違いが見られたものの,その他に は明確な差は見られなかった. 図 14 に腰部,胸部,頭部のマーカー位置における変位の時 間変化について脱力と身構えの計算結果を比較して示す.脱 力と身構えを比較において顕著な差が見られたのは頭部マー カーの上下方向の変位であった. 図 15 に, 衝突開始から頭部と車両との打撃反力が最大とな った時刻までの,頭部・頚部・胸部・腰部・膝部・踵部の車 両に対する水平方向と垂直方向の変位について示す.図中の 人体挙動は身構え状態における頭部衝突時の姿勢である.脱 力よりも身構えの方が頭部や上半身の打撃位置が遠くなり, 下肢は高く上がった.これは,身構えにより関節が曲がりに くくなっていることが要因であると考えられる. 図 16 に身体各部位と車両との接触反力の最大値を示す.脱 力と比較して身構えでは下肢の接触反力が 7.9kN から 8.5kN に大きくなった.屈筋と伸筋を共に同じだけ活性化させるこ とで身構えを表現したので,衝突しても足首や膝関節や股関
Fig. 13 Comparison of pedestrian behaviors between simulation result with a relaxed condition and that with a braced condition at 115ms after impact.
(a) Without muscle activity (b) With muscle activity
Fig. 10 Contour of stress distribution on cranial at the time that maximum contact force (147ms after impact) was predicted with a relaxed condition.
Von mises stress (MPa) 150 125 100 75 50 25 0
Fig. 11 Contour of stress distribution on lower extremities at the time that maximum contact force was predicted with a relaxed condition.
(a) at 25ms after impact Right extremity
Left extremity
(b) at 15ms after impact
Von mises stress (MPa) 150 125 100 75 50 25 0
Fig. 12 Contour of stress distribution on clavicle, ribs and left upper extremity at the time that maximum contact force (at 110ms after impact) was predicted with a relaxed condition.
Hood
Von mises stress (MPa) 120 100 80 60 40 20 0 節が屈曲しにくくなり,受けた衝撃力を屈曲により減少させ ることができなかったため,下肢の接触反力が大きくなった と考えられる.頭部の接触反力は脱力と比較して身構えでは 有意に低下した.頭部の接触反力には頚部挙動が影響してい ると考えられる. 頭部の接触反力には頚部挙動が影響していると考えられる ことから,頚部の伸びについて比較した.図 17 に頚部の伸び 量を示す.ここでは頚部の長さを,第 1 胸椎の後棘突起から 後環椎後頭膜の上端付着部(頭蓋骨の大後頭孔の後縁)まで の距離とした.脱力と比較して身構えの場合は頚部の伸び量 が少なかった.これは,身構え状態では筋肉が収縮し,衝突 前から衝突後を通じて頚部の伸びが抑制されたためである. 頭部の接触反力が脱力と比較して身構えでは有意に低下した 理由は,脱力の場合では頭部が振り子のように撓って車両に 衝突するが,身構えの場合,筋緊張により頚部の伸び量が抑 制され頭部が車両に衝突するタイミングが遅れたためと考え られる. 次に,傷害予測結果について比較する.膝の靭帯について は図 9 で示した脱力状態の場合と同様に身構え状態において も左膝 MCL(内側側副靱帯)と左膝 PCL(後十字靭帯)におい て破断が発生した.本条件では膝靭帯損傷について身構えの 影響は見られなかった. また,図 10 で示した脱力状態の場合と同様に,身構え状態 においても左後頭部において骨折が予測された.よって,本 条件では頭蓋骨骨折について身構えの影響は見られなかった. 図 18 に下肢と車両の接触反力が最大となった時刻における 下肢皮質骨の応力分布を示す.図中の丸で示した位置におい て骨折が予測された.脱力の場合と比較して身構えの場合に 大腿骨の応力が小さくなったが,脛骨の応力は大きくなった. これは,屈筋と伸筋を共に同じだけ活性化させることで身構 えを表現したので,衝突しても足首や膝関節や股関節が屈曲 -400 -200 0 200 400 600 0 0.05 0.1 0.15 He ad Hori zo nt al Di sp la ce me nt (mm) Time (s) Test Relaxed Braced
Fig. 14 Comparison of displacement time histories of markers between simulation result with a relaxed condition and that with a braced condition.
-800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 H ead V er tical Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -200 0 200 400 600 800 0 0.05 0.1 0.15 C hes t H or izon ta l D is pl ac em en t ( m m ) Time (s) -800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 C he st V er tic al Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -200 0 200 400 600 800 0 0.05 0.1 0.15 Pe lv is Hori zo nt al Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 Pe lv is V er tical Di spl ac eme nt (mm) Time (s) 0 0.5 1 1.5 2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 V er tic al d is pl ac em en t ( m ) Horizontal displacement (m) Head T1 T6 L5 Right knee Left knee Right ankle Left ankle Head T1 T6 L5 Right knee Left knee Right ankle Left ankle Braced Relaxed
Fig. 15 Comparison of trajectories between simulation result with a relaxed condition and that with a braced condition.
Fig. 16 Comparison of the maximum contact force between simulation result with a relaxed condition and that with a braced condition.
0 5 10 15
R/L_Leg
average Buttock Trunk L_Arm Head
Ma xi m un C onta ct For ce (k N) 45 50 Relaxed Braced 45 50 Relaxed Braced
Fig. 17 Comparison of the neck length time histories between simulation result with a relaxed condition and that with a braced condition.
120 140 160 180 0 0.05 0.1 0.15 Neck Le ng th (m m ) Time (s) Relaxed Braced
図 12 に左腕と車両との接触反力が最大となった時刻におけ る鎖骨と上腕骨の応力分布を示す.左鎖骨(図 12 中の丸)の 応力は皮質骨が破断する閾値を超えているので,骨折のリス クが高いと考えられる.この結果は献体実験結果と一致して いる. また,献体実験データでは右脛骨と右腓骨の骨折や,C7- T1 間の椎間板の破断が見られたが,本モデルでは該当箇所に 傷害は見られなかった. 5.歩行者の挙動と傷害に及ぼす身構えの影響 5.1. パラメータスタディの条件 衝突直前の身構え筋活動が歩行者の挙動や傷害に及ぼす影 響を調べるため,パラメータスタディを実施した.計算条件 は第 4 章に示す検証条件(図 6)と同じ衝突速度 40 km/h とし た.身構えの影響を調べるため,脱力状態と身構え状態の 2 つの条件を設定した.脱力状態を表現するために筋に入力す る活性度には,筋の振動による計算不安定の問題を回避でき る程度の 0.5%以下の小さい値を設定した.また,歩行者の身 構え状態の筋活性度は不明であるため,筋電計測データ(9)か ら体幹部の活性度の平均値である 20%を仮定して設定し,計 算開始の 0 ms から 200 ms で筋活性度を 0%から 20%まで増 加させ,200 ms 時に車両との衝突を開始し,200 ms 以降では 筋活性度を 20%に維持した. 5.2. パラメータスタディの結果 脱力の場合の計算結果は,第 4 章の結果を使用する.図 13 に衝突時の歩行者モデルの衝突後 115 ms 時の挙動を示す.こ の時点の挙動において身構えの場合と比較して脱力の場合は 下肢の開きが大きいという違いが見られたものの,その他に は明確な差は見られなかった. 図 14 に腰部,胸部,頭部のマーカー位置における変位の時 間変化について脱力と身構えの計算結果を比較して示す.脱 力と身構えを比較において顕著な差が見られたのは頭部マー カーの上下方向の変位であった. 図 15 に, 衝突開始から頭部と車両との打撃反力が最大とな った時刻までの,頭部・頚部・胸部・腰部・膝部・踵部の車 両に対する水平方向と垂直方向の変位について示す.図中の 人体挙動は身構え状態における頭部衝突時の姿勢である.脱 力よりも身構えの方が頭部や上半身の打撃位置が遠くなり, 下肢は高く上がった.これは,身構えにより関節が曲がりに くくなっていることが要因であると考えられる. 図 16 に身体各部位と車両との接触反力の最大値を示す.脱 力と比較して身構えでは下肢の接触反力が 7.9kN から 8.5kN に大きくなった.屈筋と伸筋を共に同じだけ活性化させるこ とで身構えを表現したので,衝突しても足首や膝関節や股関
Fig. 13 Comparison of pedestrian behaviors between simulation result with a relaxed condition and that with a braced condition at 115ms after impact.
(a) Without muscle activity (b) With muscle activity
Fig. 10 Contour of stress distribution on cranial at the time that maximum contact force (147ms after impact) was predicted with a relaxed condition.
Von mises stress (MPa) 150 125 100 75 50 25 0
Fig. 11 Contour of stress distribution on lower extremities at the time that maximum contact force was predicted with a relaxed condition.
(a) at 25ms after impact Right extremity
Left extremity
(b) at 15ms after impact
Von mises stress (MPa) 150 125 100 75 50 25 0
Fig. 12 Contour of stress distribution on clavicle, ribs and left upper extremity at the time that maximum contact force (at 110ms after impact) was predicted with a relaxed condition.
Hood
Von mises stress (MPa) 120 100 80 60 40 20 0 節が屈曲しにくくなり,受けた衝撃力を屈曲により減少させ ることができなかったため,下肢の接触反力が大きくなった と考えられる.頭部の接触反力は脱力と比較して身構えでは 有意に低下した.頭部の接触反力には頚部挙動が影響してい ると考えられる. 頭部の接触反力には頚部挙動が影響していると考えられる ことから,頚部の伸びについて比較した.図 17 に頚部の伸び 量を示す.ここでは頚部の長さを,第 1 胸椎の後棘突起から 後環椎後頭膜の上端付着部(頭蓋骨の大後頭孔の後縁)まで の距離とした.脱力と比較して身構えの場合は頚部の伸び量 が少なかった.これは,身構え状態では筋肉が収縮し,衝突 前から衝突後を通じて頚部の伸びが抑制されたためである. 頭部の接触反力が脱力と比較して身構えでは有意に低下した 理由は,脱力の場合では頭部が振り子のように撓って車両に 衝突するが,身構えの場合,筋緊張により頚部の伸び量が抑 制され頭部が車両に衝突するタイミングが遅れたためと考え られる. 次に,傷害予測結果について比較する.膝の靭帯について は図 9 で示した脱力状態の場合と同様に身構え状態において も左膝 MCL(内側側副靱帯)と左膝 PCL(後十字靭帯)におい て破断が発生した.本条件では膝靭帯損傷について身構えの 影響は見られなかった. また,図 10 で示した脱力状態の場合と同様に,身構え状態 においても左後頭部において骨折が予測された.よって,本 条件では頭蓋骨骨折について身構えの影響は見られなかった. 図 18 に下肢と車両の接触反力が最大となった時刻における 下肢皮質骨の応力分布を示す.図中の丸で示した位置におい て骨折が予測された.脱力の場合と比較して身構えの場合に 大腿骨の応力が小さくなったが,脛骨の応力は大きくなった. これは,屈筋と伸筋を共に同じだけ活性化させることで身構 えを表現したので,衝突しても足首や膝関節や股関節が屈曲 -400 -200 0 200 400 600 0 0.05 0.1 0.15 He ad Hori zo nt al Di sp la ce me nt (mm) Time (s) Test Relaxed Braced
Fig. 14 Comparison of displacement time histories of markers between simulation result with a relaxed condition and that with a braced condition.
-800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 H ead V er tical Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -200 0 200 400 600 800 0 0.05 0.1 0.15 C hes t H or izon ta l D is pl ac em en t ( m m ) Time (s) -800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 C he st V er tic al Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -200 0 200 400 600 800 0 0.05 0.1 0.15 Pe lv is Hori zo nt al Di sp la ce me nt (mm) Time (s) -800 -600 -400 -200 0 200 0 0.05 0.1 0.15 Pe lv is V er tical Di spl ac eme nt (mm) Time (s) 0 0.5 1 1.5 2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 V er tic al d is pl ac em en t ( m ) Horizontal displacement (m) Head T1 T6 L5 Right knee Left knee Right ankle Left ankle Head T1 T6 L5 Right knee Left knee Right ankle Left ankle Braced Relaxed
Fig. 15 Comparison of trajectories between simulation result with a relaxed condition and that with a braced condition.
Fig. 16 Comparison of the maximum contact force between simulation result with a relaxed condition and that with a braced condition.
0 5 10 15
R/L_Leg
average Buttock Trunk L_Arm Head
Ma xi m un C onta ct For ce (k N) 45 50 Relaxed Braced 45 50 Relaxed Braced
Fig. 17 Comparison of the neck length time histories between simulation result with a relaxed condition and that with a braced condition.
120 140 160 180 0 0.05 0.1 0.15 Neck Le ng th (m m ) Time (s) Relaxed Braced
しにくくなったためであり,受けた衝撃力を屈曲により減少 させることができなかったため,最初に打撃を受ける脛骨に かかる衝撃力が脱力よりも身構えにおいて大きくなったと考 えられる.また,身構えにより脛骨の応力が増加したために, 大腿骨に及ぶ衝撃力が小さくなり,骨の応力が小さくなった と考えられる. 図 19 に左腕と車両との接触反力が最大となった時刻におけ る鎖骨と上腕骨の応力分布を示す.脱力の場合(図 19(a))と比 較して身構えの場合(図 19(b))では,鎖骨の応力が低くなった. 身構えにより鎖骨の骨折のリスクが低減される可能性がある と考えられる. 6.ま と め 本研究は,衝突直前の筋活動が歩行者傷害に与える影響を 調査することを目的として,全身筋 FE ソリッドモデルを検証 するとともに,身構えの影響を調査するパラメータスタディ を行った.結果を以下にまとめる. (1) モデルの膝部へのせん断衝撃時における膝部の挙動に ついて献体実験データと比較した結果,脱力時のモデルの挙 動は献体の挙動とよく一致した. (2) 車両(セダン)衝突時の歩行者の挙動について全身モ デルを用いた計算結果を献体実験データと比較した結果,脱 力時のモデルの挙動は下肢の巻き込みが少なかったものの, 献体実験データと同程度であった.傷害については脛骨骨折 など献体実験データと一致する部分が見られたが,膝靭帯損 傷など実験と異なる傷害も予測されたので,傷害予測精度に ついて更なる検証が必要である. (3) 全身モデルを用いて衝突直前の身構えが挙動や傷害に 及ぼす影響を調査した.脱力の場合と比較して身構えでは下 肢の挙動が変化し,頭部の衝突位置も変化した.また,今回 の身構え条件では,頚部の伸び量,鎖骨応力は低減した. 今回の解析で得られた衝突直前の身構えが傷害に与える影 響の調査結果の妥当性については,今後,事故データ調査や 事故再現解析等により検証を進める予定である. 謝 辞 本研究に使用した車両モデルの作成には,トヨタテクニカ ルディベロップメント(株)の西村 律 氏の協力をいただいた. ここに記し,謝意を表する. 参 考 文 献 (1) “筋応答の影響を考慮した乗員姿勢と傷害に関する分析” 交通事故例調査・分析報告書,ITARDA,p.353-374 (2007)
(2) Ejima, S., Zama, Y., Satou, F., Holcombe, S., Ono, K., Kaneoka,
K., Shiina, I., "Prediction of the physical motion of the human body based on muscle activity during pre-impact braking" IRCOBI Conference, P.163-175 (2008)
(3) Dhaliwal, T. S., Beillas, P., Chou, C. C., Prasad, P., Yang, K. H.,
King, A.I.,"Structural response of lower leg muscles in compression: a low impact energy study employing volunteers, cadavers and the Hybrid Ⅲ" Stapp Car Crash Journal Vol.46, No.2002-22-0012, p.229-243 (2002)
(4) 中平祐子, 岩本正実. “全身筋 FE ソリッドモデルを用いた
乗員胸部傷害解析”. 自動車技術会論文集, Vol.42, No.6,
p.1321-1326, (2011)
(5) Kajzer, J., et al. "Shearing and Bending Effects at the Knee Joint
at High Speed Lateral Loading", SAE Paper 973326, p.151-165, (1997)
(6) Nagasaka K, Mizuno K, Tanaka E, Yamamoto S, Iwamoto M,
Miki K, Kajzer J. "Finite Element Analysis of Knee Injury Risks in Car-to-Pedestrian Impacts". Traffic Injury Prevention, Vol.4,
p.345-354, (2003)
(7) Schroeder, G., Konosu, A., Ishikawa, H., Kajzer, J., "Injury
Mechanism of Pedestrians during a Front-End Collision with a Late Model Car." JSAE Spring Convention, No.20004255, p.40-45, (2000)
(8) Digimation, Inc.: 3D Libraries, Digimation,
http://digimation.com/3d-libraries/the-archive/ (参照 2007.11.07)
(9) 岩本正実, 金原秀行, 杉山喬彦. “人体全身筋 FE バーモデ
ルを用いた前突乗員身構え解析”. 自動車技術会論文集,
Vol.41, No.6, p.1249-1254, (2010) Fig. 18 Contour of stress distribution on lower extremities
at the time that maximum contact force was predicted.
(a) Relaxed (b) Braced at 25ms
after impact at 15ms after impact at 30ms after impact at 15ms after impact Von mises stress
(MPa) 150 125 100 75 50 25 0
Fig. 19 Contour of stress distribution on clavicle, ribs and left upper extremity at the time that maximum contact force was predicted.
(a) Relaxed
(at 110ms after impact) (at 110ms after impact)(b) Braced
Von mises stress (MPa) 120 100 80 60 40 20 0 Hood
リスクポテンシャルを考慮した最適制御理論による
自律運転知能システムに関する研究
長谷川 隆裕1) ポンサトーン・ラクシンチャラーンサク2) 山崎 彬人3) 毛利 宏4) 永井 正夫5)
KEY WORDS Safety, Active Safety, Vehicle Dynamics Control 1.緒 言 近年,我が国における交通事故発生件数および死傷者数は 法令の厳罰化や自動車の安全技術の発展などにより減少傾向 にあるものの依然として高い水準にある.特に,対歩行者事 故が深刻であり,歩行中の死者は 年以降最多となってい る .これまで,歩行者の被害軽減を目的とした衝突安全技 術が実用化に至っているが,対歩行者事故では軽度の事故で も歩行者に甚大な被害を与える危険性が高い.そのため,事 故の発生を未然に防ぐ予防安全技術が必要不可欠であり,近 年では,車載センサの情報に基づく自動ブレーキシステムに ついての研究が盛んに行われ,実用化されている. しかし,図 のような駐車車両や構造物による死角からの 歩行者の飛び出し場面に注目すると,既存の自動ブレーキシ ステムでは,センサの検出性能や作動領域が限定され,歩行 者を認識できないため,事故を防ぐことができない可能性が ある.一方,このような場面に対し規範的なドライバは,歩 行者の飛び出しを予測し,あらかじめ速度を落とすなどの危 険予測に基づく安全運転により事故発生のリスクを回避して いる.このことから自動ブレーキシステム等の予防安全技術 の効果をさらに高めるためには,規範的なドライバのように * 年 月 日受理. 年 月 日自動車技術会秋 季学術講演会において発表. ・ ・ ・ 東京農工大学大学院 東京都小金井 市中町 (一財)日本自動車研究所 東京都港区芝大門 危険を予測するということが重要である. そこで,本研究では,ドライバの危険予測運転を模擬した リスク評価手法の確立と,それに基づく自律運転知能システ ムの開発を目的とする.本稿では,障害物回避のための自律 運転知能システムを提案する.まず,直線単路に障害物があ る場面において,横方向と前後方向につて独立のリスクポテ ンシャルを定義する.次に,そのリスクポテンシャルを考慮 した評価関数を横方向と前後方向について設定し,それぞれ を最適化することで横方向,前後方向の指令値を独立に算出 する.最後に,シミュレーションによる熟練ドライバの走行 データとの比較による有効性の検証結果について報告する.