Treatment of glomus jugulare tumor with catecholamine secretion: A case report Yasuhide Okamoto*, Hideo Nameki**, Yorihisa Imanishi**, Isamu Yuge**, T

カ テ コ ラ ミ ン産 生 性glomus

jugulare tumorの1例

の

治 療 経 験 と周 術 期 管 理 の 問 題 点

Treatment of glomus jugulare tumor with catecholamine secretion: A case report

Yasuhide Okamoto*, Hideo Nameki**, Yorihisa Imanishi**, Isamu Yuge**, Tetsuji Okuno*** *Department of Otolaryngology

, National Tokyo Medical Center **Department of Otolaryngology _{, Shizuoka Red Cross Hospital}

***Department of Radiology

, Clinica ET

Catecholamine secretion from glomus jugulare tumor is uncommon. A 23-year-old male complained of dizziness without tinnitus and hearing impairment in the right ear. Red color mass in the right hypotympa-num was observed through the tympanic membrane.

Preoperative MRI revealed a hyper-vascular mass between the jugular bulb and the internal carotid artery and the diagnosis of glomus jugulare tumor was made. Preoperative data showed normal blood pres-sure and no tachycardia. The patient was received an intra-arterial embolization treatment before 48 hours of the surgery to reduce bleeding from the tumor during surgery. But just after the feeding arteries to the tumor were embolized, the patient had an attack of hypertension crisis that was 240mmHg at maximum blood pressure. Usual blood pressure of the patient was 120/70mmHg. The tumor was completely excised with large blocks and piecemeal by an infratemporal fossa approach. Intraoperative blood pressure was well controlled at 130 to 140mmHg. One of hypotensive drugs, calcium blocker, was given postoperatively for five days because of the high level of plasmocatecholamine. The patient had a good postoperative course. Incomplete facial palsy in the right side was completely recovered until four postoperative months. Embolization treatment for the glomus tumor was considered to be useful not only for the reduction of bleed-ing but also the detection of functionbleed-ing tumor. Routine screenbleed-ing of Catecholamine was indispensable before surgery.

Key words: glomus jugulare tumor, Functioning tumor, Catecholamine, hypertension crisis, Embolization treatment, Infratemporal fossa approach

は じめ に 頸 静 脈 球 部 グ ロー ム ス腫 瘍 は、 頸 静 脈 球 付 近 か ら発 生 す る 傍 神 経 節 腫 瘍 で 、 増 大 す る と迷 路 下 蜂 巣 に 進 展 し、 さ らに 増 大 す る と前 方 は 海 綿 静 脈 洞 に達 し、 下 方 で は 側 頭 窩 下 に進 展 す る。 組 織 学 的 に は 良 性 腫 瘍 で あ る が 、 頭 蓋 底 や 側 頭 骨 を破 壊 進 展 す る た め に複 雑 な 手 術 が 要 求 さ れ、 また 術 後 合 併 症 や 後 遺 症 が 懸 念 さ れ る 。 さ らに 、 グ ロ ー ム ス 腫 瘍 の1∼3%に カ テ コ ラ ミ ン を 産 生 す る functioning tumorが 含 ま れ 、 術 中 に異 常 高 血 圧 等 を呈 す る こ とが知 られ て い る 。 術 中 出 血 量 を減 少 させ る こ と や 、 腫 瘍 の大 き さ を で き る だ け縮 小 させ る こ と を 目的 と して 、 最 近 で は術 前 に 血 管 内塞 栓 術 を施 工 す る よ う に な っ て きて い る1)。 しか し、 今 回我 々 は術 前 に行 っ た 腫 瘍 .血 管 塞 栓 術 の 施 工 直 後 か ら血 中 の カ テ コ ラ ミ ン値 の 上

昇 、 異 常 高 血 圧 を呈 した 症 例 を 経 験 した の で 文 献 的 考 察 を加 え て 報 告 す る と と も に、 術 前 に行 う腫 瘍 血 管 塞栓 術 の 有 用 性 に つ い て 述 べ る と と も に 、 周 術 期 管 理 の 問 題 点 ・術 前 ス ク リー ニ ング の 必 要 性 に つ い て も言 及 す る。 症 例 患 者:23歳 、 男 性 主 訴:め ま い 感 既 往 歴:特 記 事 項 無 し 現 行 歴:平 成11年12月 初 旬 か らの め ま い 感 にて 近 医 耳 鼻 科 を 受 診 した 。拍 動 性 耳 鳴 、 自覚 的 難 聴 は な く、 脳 神 経 学 的所 見 も認 め ら れ な か っ た。 鼓 膜 所 見 上、 下鼓 室 の 赤 色 膨 隆 を鼓 膜 か ら透 見 され 、 精 査 目的 に て 当 科 を紹 介 受 診 と な っ た 。 全 身所 見:血 液 一 般 、 尿 、 肝 ・腎 機 能 、 血 清 電 解 質 は す べ て正 常 。 血 圧120/70mmHg、 胸 部 レ線 と心 電 図 は 特 記 所 見 無 し。 局 所 所 見:右 外 耳 道 下 壁 の 膨 隆 と、 鼓 膜 を透 して 下鼓 室 に 赤 色 の 腫 瘤 を認 め た(図1)。 聴 力 検 査 で は 右 耳 に 30dBの 軽 度 伝 音 性 難 聴 を認 め るが 、眼振 は 認 め なか っ た。 画 像 所 見:CTお よ びMRIに て 頸 静 脈 球 周 囲 の 骨 を 破 壊 す る 腫 瘍 陰 影 が 認 め られ 、 一 部 は乳 突 蜂 巣 に も進 展 し、 さ ら に迷 路 下 蜂 巣 か ら後 頭 蓋 窩 、 側 頭 下 窩 へ の進 展 も認 め た(図2)。 こ れ らの 画 像 所 見 か ら頸 静 脈 球 部 グ ロ ー ム ス 腫 瘍 と診 断 し、 進 展 範 囲 か らFischの 分 類2)の classD2と 診 断 した 。 超 選 択 的 血 管 塞栓 術:術 前 約48時 間前 に行 われ た 血 管 撮 影 に お い て、 腫 瘍 栄 養 血 管 と して 上 行 咽頭 動 脈 鼓 室 枝 末 梢 に濃 染 像 を 認 め た(図3)の で 、 同 時 に 超 選 択 的 血 管 塞 栓 術 と して 上 行 咽 頭 動 脈 鼓 室 枝 に 白金 製 剤 のliquid coilを 留 置 し、 チ エ ナ ム と リ ピ オ ドー ル 懸 濁 液 を注 入 し て術 前 治 療 を完 了 し た1)。 こ こ で 注 目す べ き は 、 塞 栓 術 中 に 血 圧 の 上 昇 が 著 し く 収 縮 期 血 圧 が 通 常 の120mmHgか ら240mmHgへ 上 昇 し、 い わ ゆ るhypertension crisisを 認 め た 。 こ の 時 の ア ド レナ リ ン 、 ノ ル ア ドレナ リ ン、 ドーパ ミン の値 は そ れ ぞ れ60(pg/ml)/1941(pg/ml)/62(pg/ml)(正 常 値: 100以 下/100-450/20以 下)で あ っ た 。 こ の 経 過 よ り、 術 前 か ら の血 圧 コ ン トロー ル に 必 要 な a遮 断 薬 の 内服 に は手 術 ま で の 十 分 な時 間 が 取 れ な い た め に 、 麻 酔 科 に 対 して術 中 の腫 瘍 操 作 に よ る血 圧 変 動 の 可 能 性 が 十 分 に あ り得 る こ とを も と に した 麻 酔 管 理 をお 願 い した 。 手 術 所 見:頭 蓋 顔 面 側 方 到 達 法 と して の 頭 頂 か ら耳 後 図1 右 鼓 膜 所 見 矢 印:下 鼓 室 に み られ る赤 色腫 瘤 。 a c b d 図2 頸 静 脈 球 部 グ ロ ー ム ス 腫 瘍 の 術 前画 像 a:coronal CT、bone target、b: axial MRI、T1強 調

Gd(+)、c: OM+40° bone target、 d:coronal MRI、

T1強 調Gd(+)

*:juglar bulb,矢 印:ク ロ ー ム ス 腫 瘍:頸 静 脈 球 周 囲 の 骨 を 破 壊 す る 腫 揚 陰 影 。 一部 は 乳 突 蜂 巣 に も進 展 し 、 さ ら に 迷 路 下 蜂 巣 か ら後 頭 蓋 窩 、 側 頭 下窩 へ の 進 展 す る 。

図3 選択 的血 管造 影

(左 はStenvers view、 右 はSubtraction) 矢 印:上 行 咽 頭 動 脈鼓 室 枝 末梢 に濃 染 像

図4 a皮 切 ラ イ ン 図4 b術 中 写 真 F:顔 面 神 経 、IJ:内 頸 静 脈 、IC:内 頸 動 脈 矢 印:頸 静 脈 球 部 グ ロ ー ム ス 腫 瘍 図5 左:ヘ マ トキ シ リ ン ・エ オ ジ ン染 色:胞 体 豊富 な円 形 か ら紡 錘 形の 類 上皮様 細 胞 で構 成 され る腫 瘍 細 胞 。 右:電 顕 像:腫 瘍 細 胞 に多 数 の分 泌 穎粒 を認 め る。 部 を通 り側 頸 部 に い た る 皮 膚 切 開(図4a)を 行 い 、 さ らに 乳 様 突 起 か ら そ こ に付 着 す る 筋 群 を剥 離 し、 乳 様 突 起 の 骨 削 開 を 行 っ た。 こ れ はS状 静 脈 洞 ・頸 静 脈 球 部 の 視 野 を良 くす る こ と と、 顔 面 神 経 本 幹 を膝 神 経 節 か ら茎 乳 突 孔 ま で 露 出 してreroutingす る た め で あ る。rerout-ing後 、 頸 部 か ら 内頸 動 脈 、 脳 神 経IX・X・XIIを 露 出 し、 後 頭 蓋 窩 ・頸 静 脈 球 ・頸 動 脈 管 を 開 放(図4b)し 腫 瘍 の全 摘 出 を行 っ た2),3)。しか し なが ら腫 瘍 とS状 静 脈 洞 、 頸 静 脈 球 部 の 血 管 壁 との癒 着 が 強 い た め腫 瘍 の 一 塊 切 除 は 断 念 し、 血 管 壁 に残 っ た腫 瘍 をpiece by pieceに 追 加 切 除 す る こ とで 全 摘 しえ た 。 術 前 に腫 瘍 血 管 塞 栓 術 を行 っ て い た の で腫 瘍 本 体 か らの 出血 は少 量 で あ っ た が 、 頸 静 脈 球 部 の 血 管壁 か ら腫 瘍 を剥 離 摘 出 す る と き の 出 血 に よ り術 中 の 総 出血 は600mlで あ っ た 。 病 理 組 織 学 的所 見:腫 瘍 は 増 殖 した 傍 神 経 節 腫 瘍 細 胞 か ら成 り立 っ て お りglomus jugulare tumorと 診 断 され た(図5左)。 電 顕 像 で は腫 瘍 細 胞 に 限 界 膜 で 囲 ま れ た 電 子 密 度 の 高 い 分 泌 顆 粒 が 多 く含 まれ て い るの が 認 め ら れ た(図5右)。 術 後 経 過:術 中軽 度 の 血 圧 上 昇 は 認 め て い た もの の、 術 前 の 塞 栓 療 法 中 に生 じたhypertension crisisは 認 め な か っ た 。 しか し、 術 後 に180mmHg程 度 の 高 血 圧 が 持 続 した の で 、 術 後5日 目 まで は血 圧 コ ン トロ ー ル 目的 に 降 圧 剤(ヘ ル ベ ッサ ー(R))の 投 与 が 必 要 で あ っ た 。 術 後5 日 目 まで の ア ドレ ナ リ ン、 ノ ル ア ドレ ナ リ ン、 ドー パ ミ ン濃 度 の 経 過 を別 表 に示 す(表1)。 ま た 、 術 直 後 の 顔 面 神 経 麻 痺 は 顔 面 神 経 ス コ ア(柳 原 法)に て20/40で あ っ た が 、 術 後 約4ヶ 月 で完 全 回 復 を み た 。 表1 血 管 塞 栓 術 後 か ら腫 瘍 摘 出 術 後5日 目 ま で のAdrenaiin, Noradrenalin,Dopaminの 血 中 濃 度 考 察 1941年 にGuild4)は 頸 動 脈 小 体 と類 似 した 組 織 が 頸 静 脈 球 の壁 に あ る こ と を 明 らか に し、 そ の部 に 発 生 した 腫 瘍 をglomus jugularisと 命 名 した 。 頸 動 脈 小 体 に似 た 組 織 学 的構 造 を 示 す 組 織 は 、 こ の ほ か 上 行 大 動 脈 の周 囲 、 迷 走 神 経 の神 経 節 お よ び そ の 走 行 中 、 さ らに は喉 頭 内 に も見 出 さ れ て い る。 こ れ ら組 織 の機 能 は頸 動 脈 小 体 と似 て お り、 ア ドレナ リ ンを分 泌 す る と され て い る。 そ の た

表2 カ テ コ ラ ミ ン代 謝 過 程

PNMT:phenylethanolamin e-N-methyltransferase, VMA: vanillyl-mandelic acid, HVA: homovanillic acid

尿 中排泄産物

めglomus tumorの 中 に は 約3%のfunctioning glomus tumorが 存 在 す る9)。 薬 理 学 的 に は 、 一 般 に カ テ コ ラ ミ ン は チ ロ シ ン か ら ド ー パ ミ ン_{、 ノ ル ア ド レ ナ リ ン 、 ア ド レ ナ リ ン へ の 代 謝 過} 程 を 経 る 。 そ の 過 程 に お い てdopamin-beta-hydroxylase やPNMT(phenylethanolamin e-N-methyltransferase) と い っ た 酵 素 が 関 与 し 代 謝 が 進 む(表2)。Functioning glomus tumorに は 腫 瘍 内 に こ の 酵 素 の 欠 如 が 認 め ら れ る た め に 、dopamin-beta-hydroxylase欠 損 型 の 腫 瘍 で あ れ ば ドー パ ミ ン が 、PNMT欠 損 型 で あ れ ば ノ ル ア ド レ ナ リ ン が 腫 瘍 か ら血 中 に 放 出 さ れ 、 カ テ コ ラ ミ ン値 が 上 昇 し 高 血 圧 と い っ た 症 状 を 引 き起 こ す と い わ れ て い る5)。 ス ク リ ー ニ ン グ で は 血 中 カ テ コ ラ ミ ン濃 度 測 定 が 有 効 で あ る が 、 カ テ コ ラ ミ ン は 単 な る 針 刺 し の 痛 み 刺 激 だ け で も1.5か ら5倍 も上 昇 す る こ と が あ る の で 、 測 定 値 を 読 む 場 合 は 偽 陽 性 が 出 る 可 能 性 を 念 頭 に 注 意 が 必 要 で あ る 。 さ ら に 、 ス ク リ ー ニ ン グ で は 血 中 の 濃 度 が 約8倍 に 上 昇 し て い て も無 症 状 の 患 者 が い る こ と が 報 告 さ れ て い る6)た め 、 術 前 の 高 血 圧 等 の 症 状 が な く て も や は り施 行 し て お く こ と が 必 要 で あ る と 考 え る 。 ま た 、dopamin-beta-hydroxylaseやPNMTに よ り代 謝 過 程 を 阻 害 さ れ 、 血 中 濃 度 の 上 昇 し た ドー パ ミ ン 、 ノ ル ア ド レ ナ リ ン は さ ら に 代 謝 さ れ 、 ドー パ ミ ン で あ れ ばHVA(homovanil-licacid)、 ノ ル ア ド レ ナ リ ン で あ れ ばVMA(vanillyl-mandelicacid)の 形 で 尿 中 に 排 泄 さ れ る 。 そ の た め も う 一 つ の ス ク リ ー ニ ン グ と し て24時 間 尿 に お け る HVA・VMAの 値 が 参 考 と な る 。 一 般 にHVA、VMA は 他 の 代 謝 経 路 で も 生 成 さ れ る が 、 血 中 カ テ コ ラ ミ ン 濃 度 の 慢 性 的 な 異 常 高 値 が 持 続 す る 場 合 に は そ れ ら の 値 が 上 昇 し 、 カ テ コ ラ ミ ン の 分 泌 過 剰 が 反 映 さ れ る た め functioning tumorの 診 断 に は 有 用 で あ る と 考 え ら れ る 。 い ず れ にせ よfunctioning tumorを ス ク リ ー ニ ン グ す る に は チ ロ シ ンの代 謝 産 物 に対 す る血 液 ・尿 検 査 が 非 常 に 有 用 で あ る。 な お 異 常 高 値 を認 め た場 合 に は 、 褐 色 細 胞 腫 を 除外 診 断 す る 必 要 が あ る。 本 症 例 の 場 合 、 術 前 に高 血 圧 、 頻 脈 な どの カ テ コ ラ ミ ン に よる 症 状 を 認 め な か っ た た め 、 ス ク リー ニ ン グ を施 行 して い な か っ た こ と は反 省 させ られ る。 こ の よ う なfunctioning tumorに 限 らず 、 最 近 で は グ ロ ー ム ス 腫 瘍 に対 す る術 前 治 療 と して 血 管 内 治 療 を施 行 す る ケ ー ス が 増 え て きて い る。 血 管 内 治 療 は 、 血 流 が 豊 富 な腫 瘍 に対 す る術 中 出血 量 の 減 少 お よ び腫 瘍 の縮 小 を 目 的 と し、 手 術 操 作 で 起 き て く る カ テ コ ラ ミ ン に よ る hypertensioncrisisの 予 防 と して も重 要 で あ る と考 え ら れ て い る7)。 しか し そ れ に対 し て 、 塞 栓 術 そ の も の に対 す る手 技 的 な リス ク を唱 え る 慎 重 論8)や 、 また 本 症 例 の よ う に 塞 栓 術 中 にhypertension crisisを 引 き起 こ す こ と も あ る との 海 外 の 報 告 例 が あ る。 本 症 例 の場 合 、 表1か ら分 か る よ う に 、 塞 栓 術 後 か らノ ル ア ドレナ リ ン値 の 異 常 高 値 が 出 現 しhypertension crisis症 状 が 出 現 した 。 こ れ は術 中 のhypertension crisis予 防 目的 の た め に行 う塞 栓 術 がhypertension crisisを 引 き起 こ した こ とに お い て 非 常 に 注 目す べ き点 と考 え る。 しか し、 塞 栓 術 を施 行 す る前 か ら高 血 圧 等 の 症 状 が な い 症 例 に対 して 、 塞 栓 術 に よ るhypertension crisisの 出現 を事 前 に予 測 す る こ と は 難 しい が 、 手 術 に 限 らず 塞 栓 術 に お い て も降圧 剤 を 準 備 す る必 要 が あ る こ と は認 識 して お い た 方 が よい 。 本 症 例 の 場 合 、 塞 栓 術 に よ る カ テ コ ラ ミ ン値 の 上 昇 は ノ ル ア ド レ ナ リ ンで 約5倍 で あ る の で 、 一 般 的 頭 頸 部 外 科 手 術 に よ る カ テ コ ラ ミ ン値 の 上 昇 は 通 常 約2か ら3倍 とい わ れ て い る の に比 べ る と高 い。 この こ とは 今 回 の 塞 栓 術 にお い て腫 瘍 に 対 して の 塞 栓 効 果 が 確 実 に 得 られ た こ とが 考 察 さ れ る 。 さ らに 手術 後 は 手術 ス トレス と手 術 で の摘 出 操 作 に よ る カ テ コ ラ ミ ン分 泌 上 昇 とそ れ に よ る血 圧 上 昇 を認 め、 降 圧 剤 を使 用 す る 必 要 が あ っ た 。 降圧 剤 と して は、 術 前 か ら経 口 のa遮 断 薬phenoxybenzamineの 投 与9)(通 常 は 術 前1週 間 前 か らの 投 与 が 望 ま しい と さ れ る)、 さ らに術 中 ・術 後 の 高 血 圧 に対 して 我 が 国 で はCa 拮 抗 薬 、 フ ェ ン トラ ミ ンな ど に よ り コ ン トロ ー ルす る こ と が 良 い と さ れ て い る 。 本 症 例 に 対 して はCa拮 抗 薬 (ヘ ル ベ ッサ ー(R))を 用 い 血 圧 の コ ン トロ ー ル を行 っ た 。 これ ら術 前 塞 栓 術 に よ る異 常 血 圧 上 昇 や 手 術 操 作 に よ る 血 圧 上 昇 の 可 能 性 は 周 術 期 管 理 に お い て 麻 酔 科 へ の 重 要 な 情 報 とな る た め 、 十 分 な術 前 の カ ン フ ァ レ ンス も必 要 で あ る。

ま と め

カ テ コ ラ ミ ン 産 生 性glomus jugulare tumorを 経 験 し た 。 本 症 例 は 術 中 出 血 量 の 軽 減 と 腫 瘍 縮 小 の た め に 施 行 し た 血 管 塞 栓 療 法 に よ っ てhypertensioncrisesを 起 こ し た 。 こ の よ う なfunctioning glomus tumorに 対 し て の 治 療 経 験 と 周 術 期 の 管 理 の 問 題 点 に つ い て 述 べ た 。

本論 文 の要 旨 は第10回 の 日本 耳科学 会 にお いて発 表 した 。

参 考文献

1)奥 野 哲 治: 耳 鼻 咽 喉 科 領 域 の 血 管 性 病 変 に 対 す る 塞 栓 術 、JHONS11: 663-673, 1995.

2) Fisch U: Infratemporal fossa approach for exten-sive tumors of the temporal bone and base of the skull. Neurological surgery of the ear. pp34-53, Aesculapius Birmingham 1977.

3) Fisch U: Infratemporal fossa approach for glomus tumors of the temporal bone. Ann otol rhinol laryn-gol 91: 474-479, 1982.

4) Guild SR: A hiterto unrecognized structure, the glomus jugularis, in man. Anat Rec 79 (Suppl 1):

28, 1941.

5) Azzarelli B, Felten S, Miyamoto R, Muller J, and Purvin V: Dopamine in paragangliomas of the glo-mus jugulare. Laryngoscope 1988; 98: 573-578. 6 ) Jensen NF. Glomus tumor of the head and neck:

anesthetic considerations. Anesth Analg 1994; 78: 112-119.

7) Kuhweide R, Lanser MJ, Fisch U.: Catecholamine-secreting paragangliomas at the skull base. Skull Base Surg 1996; 6: 35-45.

8 ) Urquhart AC, Johnson JT, Myers EN, Schechter GL. Glomus vagal: paraganglioma of the vagus nerve. Laryngoscope 1994; 104: 440-445.

9) Schwaber MK, et al.: Diagnosis and management of catecholamine secreting glomus tumor. Laryn-goscope 94: 1008-1015, 1984.

論文受付 13年5月 24日 論文受理 13年10月 16日 別 刷 請 求先:〒152-0021目 黒 区 東 が丘2-5-1