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第 1 章 株式上場の意義 1. 株式上場とは株式の上場とは 広く一般投資家から資金調達を行うことを目的とし 証券市場で株式を自由に売買できるようにすることです 具体的には 経営者の同族や特定の限られた者に保有され 株式の譲渡が制限されていた自社の株式について 不特定多数の一般投資家に開放し 証券市

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Academic year: 2021

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化粧品・トイレタリー業界の

株式上場準備の留意点

株式会社 脇坂公開企画

本レポートは、新日本有限責任監査法人の 「週間:経営財務」の掲載記事から転記した ものです。

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第1章 株式上場の意義

1. 株式上場とは 株式の上場とは、広く一般投資家から資金調達を行うことを目的とし、証券市場で株式を自由に 売買できるようにすることです。 具体的には、経営者の同族や特定の限られた者に保有され、株式の譲渡が制限されていた自社の 株式について、不特定多数の一般投資家に開放し、証券市場において自由に売買できるようにする ことをいいます。 2. 株式市場の仕組み 株式会社は、広く一般投資家から資本参加を求めることで大規模な事業を営むことが可能ですが、 他方で一般投資家に資本参加を求める場合、一般投資家がいつでも投下した資本を回収できる仕組 みが必要となります。 また、資本参加したものの、換金することが容易でなければ、資本参加する一般投資家は限られ てしまうことから、一般投資家がいつでも株式を売買できる市場が設けられており、これが証券取 引所です。 日本国内には、日本取引所グループの東京証券取引所とともに、名古屋・札幌・福岡の計4カ所 の証券取引所があり、各取引所が証券市場を開設しているほか、先物市場には日本取引所グループ の大阪証券取引所があります。 証券市場には、「本則市場」と称される市場と「新興市場」と称される市場があり、本則市場に 関しては東京と名古屋の証券取引所に各々1部市場と2部市場があり、札幌と福岡には1つの市場 が開設されています。 新興市場とは、成長する新興企業のための市場であり、「マザーズ(東京)」・「JASDAQ スタ ンダード(東京)」・「JASDAQ グロース(東京)」・「セントレックス(名古屋)」・「アンビ シャス(札幌)」・「Q-Board(福岡)」が各証券取引所に開設されているほか、プロ投質家向け の「TOKYO PRO Market」が東京証券取引所に開設されています。

これらの新興市場は、既存の市場と比較すると、上場基準が緩和され、上場審査も短期間で済む ようになっていますが、上場基準が緩和されている分、投資家にとって新興市場は「ハイリスク・ ハイリターン」の市場であるといえます。 3. 株式上場のメリットと社会的責任の発生 会社は、株式を上場して資金調達を多数の一般投資家に求めれば、資金調達の多様化が図られ、 更なる会社の成長が期待できます。 しかしながら、一方で株式を一般投資家に開放して証券市場に流通させることで、会社にとって は見ず知らずの株主が参加してくるため、投資者保護の見地から「上場会社としての適格性」が問 われることになります。 会社は、株式を証券市場に上場することで、パブリックカンパニーとしてタイムリーな企業内容 の開示とともに、より高いコンプライアンスが要求されることになり、より高い社会的責任を負う ことになります。 −1−

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第2章 化粧品・トイレタリー業界の概要

1.はじめに 化粧品・トイレタリー業界で取扱われている製品の多くは、百貨店・ドラッグストア・コンビニ エンスストアなど、日常生活でよく足を運ぶ場所で目にすることができます。 化粧品・トイレタリー業界のビジネスならびに流通システムおよび取引慣行等の特徴を説明する とともに、化粧品・トイレタリーの事業の特徴および取引の発生から会計の処理・表示までの業務 の流れ、その流れの中で発生する可能性のある財務報告リスクおよびリスクに対応する内部統制に ついて解説します。 2.化粧品・トイレタリー業界の範囲 経済産業省の工業統計表では、「化粧品」を香水・オーデコロン、頭髪用化粧品、皮膚用化粧品、 仕上げ用化粧品および特殊用途化粧品の5つに区分して開示しており、一般的に化粧品業界とされ る範囲もこれと同義となっています。 また、その大部分は、薬事法上の「化粧品」に該当しますが、薬用化粧品と呼ばれる特定の予防 効果が認められるものなど、薬事法上の「医薬部外品」に該当するものもあります。 一方で、「トイレタリー用品」についての明確な定義はなく、石鹸、洗顔・ボディ用身体洗浄剤、 合成洗剤、柔軟仕上げ剤、漂白剤、酸・アルカリ洗浄剤およびクレンザーといった「油脂製品、石 鹸・合成洗剤および界面活性剤」の区分に開示されている品目のほか、生理用品や紙おむつなどの サニタリー用品とともに、芳香剤、消臭剤、除湿剤等の日用品も含めるものとし、これらの中には 薬事法上の医薬部外品に該当するものもあれば、薬事法の対象外のものもあります。 また、化粧品・トイレタリー業界に参入している企業は、化粧品およびトイレタリー用品の双方 を取扱っていることも多いほか、流通システムの面でも共通する部分が多く存在するため、上記の 製品を扱う業界を「化粧品・トイレタリー業界」とします。 3.化粧品・トイレタリー業界の流通システムの説明 (1)化粧品・トイレタリー業界の特徴的な流通システム ①直接メーカーから小売業者に販売する流通システム 代表的なものとしては、化粧品業界の特徴的な流通システムである「制度品流通」がこれ に該当します。 「制度品」とは、店頭での美容部員によるカウンセリング販売を必要とする化粧品で、比 較的高価格帯のものが該当し、卸売業者を介在せずにメーカーと小売業者(百貨店・化粧品 専門店等)が直接契約し、メーカーから派遣された美容部員が直接きめ細かな販売活動を行 うことが特徴です。 また、様々な陳列ケースとともに、什器類や販促物等について、メーカーから小売業者に 対し無償または有償にて提供することなども特徴で、直接メーカーから小売業者に販売する 流通システムは次のとおりです。 −2−

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②卸売業者を経由した流通システム 比較的低価格帯の化粧品や大半のトイレタリー用品の流通システムは、これに該当します。 これは、メーカーから一般の卸売業者を経由して、小売業者(量販店・ドラッグストア・ コンビニエンスストアなど)へと製品が流通し、最終的に消費者へと販売されます。 また、このような小売業者は、全国に多数存在するため、卸売業者の有する全国の販売網 を経由することで、メーカーの製品を消費者に効率的に届けることができ、卸売業者を経由 した流通システムは次のとおりです。 ③訪問販売流通 訪問販売流通は、メーカーが販売員を消費者の家庭や職場等に派遣し、直接販売活動を行 う流通システムです。 社団法人日本訪問販売協会の資料によると、訪問販売業界の小売価格ベースでの売上高は、 一時に比べて下降しているものの、売上高順位は化粧品が過去から継続して1位を維持して おり、化粧品がこの流通システムで主要な位置づけとなっていることがわかります。 (平成25年度順位の参考:2位健康食品、3位清掃用具) 一方で、トイレタリー用品についても、訪問販売形態で販売活動が行われることはありま すが、トイレタリー業界における主要な流通システムといえるほどの規模ではないのが現状 です。 また、訪問販売流通には、メーカーと雇用関係のある販売員が販売活動を行う方式のほか、 メーカーと雇用関係のない、いわゆるディストリビューターが販売活動を行う方式もあり、 訪問販売の流通システムは次のとおりです。 ④通信販売流通 通信販売流通は、消費者がメーカーや通販業者に直接商品を注文することで、商品が直接 消費者の手元に届けられる流通システムです。 社団法人日本通信販売協会の資料によると、平成27年10月の業界総売上高に占める化粧品 の売上高割合は11.3%となっており、通信販売業界の分野別売上高は第5位となっています。 (平成27年10月順位の参考:1位衣料品22.9%、2位文具・事務用品17.9%、3位家庭用品 15.4%、4位文具・事務用品および化粧品以外の雑貨13.5%) トイレタリー業界の主要な企業でも、通信販売流通を採用していますが、訪問販売流通と 同様に、業界の主要な流通システムといえるほどの規模ではないのが現状です。 −3−

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また、通信販売流通には、メーカーが自ら運営するウェブサイトやカタログなどで販売が 行われる方式のほか、通販専門企業が各社の製品を販売する方式等もあり、通信販売の流通 流通システムは次のとおりです。 (2)流通システムに起因する会計上の留意点 化粧品・トイレタリー業界の流通システムには、各々に特徴的な収益認識に係る取引慣行が 存在します。 ①リベート 化粧品・トイレタリー業界の流通システムでは、直接メーカーから小売業者に販売する化 粧品専門店との取引のほか、卸売業者を経由した流通システムがあり、一般的にリベートの 商慣行が存在します。 ②返品慣行 化粧品・トイレタリー業界では、新製品と既存製品の入れ替えが多いこともあり、一般的 に小売業者や卸売業者との取引において返品慣行が存在します。 また、クーリングオフ制度の対象となる訪問販売流通とともに、原則として同制度の対象 とはならないものの、業界団体において自主的に返品に関するガイドライン等を設けている 通信販売流通においても、消費者との取引において返品慣行が存在します。 ③ポイント制度 化粧品・トイレタリー業界では、化粧品のカウンセリング販売のほか、訪問販売および通 信販売など消費者とメーカーが直接取引する流通システムにおいては、メーカー側が独自の ポイント制度を運営している場合があります。 −4−

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第3章 化粧品・トイレタリー業界の会計処理の特徴

1.リベート等に係る取引慣行および会計処理 (1)リベート等に係る取引慣行 化粧品・トイレタリー業界のリベートは、売上割戻しとも呼ばれ、一定期間に多額または大 量の取引をした小売業者および卸売業者に対して、メーカー側が売上代金の返戻を行うことを 指し、業界ではよく見られる取引慣行です。 リベート金額の算定は、売上高または売掛金の回収高に一定の料率を積算するなど、事前に 契約等で定められた算式に基づいて行われ、その決済方法としては直接金銭を支払う方法また は売掛金と相殺する方法等が一般的です。 また、化粧品・トイレタリー業界では、得意先に対して自社の製品の販売促進を図ることか ら、販売奨励金(拡販費および販売促進費等)として金銭を交付する場合もあり、この場合で は売上高または売掛金の回収高といった基準によらず、営業政策上の観点から、得意先の営業 地域の特殊事情とともに、現在までの得意先の貢献度合いを総合的に勘案して交付金額が算定 されることになります。 (2)リベート等に係る会計処理 化粧品・トイレタリー業界のリベートは、各メーカーによってリベート等の支払目的につい ての多様な理解の仕方があり、リベート等に係る会計処理の現行実務においては、売上高から 控除する処理と販売費及び一般管理費として処理する場合の両方が行われています。 現在、日本には、リベート等に係る個別の会計基準が存在しないため、個々のリベート等に 係る会計処理は取引条件等からその支出の実態に応じ、売上高から控除するか販売費及び一般 管理費として処理するかを個別的に判断します。 ①売上高から控除する処理 リベート等が販売価額の一部減額または売上代金の一部返金という性格を有しているので あれば、売上高から控除すべきと考えられます。 (リベート確定時) (借) 売上高 ○○○○ (貸) 売掛金 ○○○○ なお、リベート等の条件には、様々な事例が存在するため、期末時点で最終的なリベート 金額が確定していない場合もあることから、金額を合理的に見積ることが可能であれば、引 当金として計上することになると考えられます。 この場合、当該引当金については、対価である売掛金等の売上債権から控除して表示され ることが一般的ですが、売買契約上の金額をもって売掛金等の売上債権を表示し、当該引当 金は売上割戻引当金等として、負債性引当金に表示されている場合もあります。 ②販売費及び一般管理費とする処理 リベート等が販売価額の一部減額または売上代金の一部返金等ではなく、得意先における 販売促進費等の経費の補填としての性格を有している場合は、販売費及び一般管理費として 処理すべきと考えられますが、金額未確定で合理的な見積りが可能であれば、やはり引当金 として計上することになります。 −5−

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(リベート確定時) (借) 販売費及び一般管理費 ○○○○ (貸) 未払金 ○○○○ 2.返品に係る取引慣行及び会計処理 (1)返品に係る取引慣行 化粧品・トイレタリー業界では、新製品と既存製品との入れ替えが頻繁なため、メーカーが 卸売業者および小売業者から、自社製品の返品を受入れる取引慣行があります。 また、化粧品・トイレタリー業界では、訪問販売流通および通信販売流通においても、返品 慣行は存在し、訪問販売流通では消費者が製品を購入した後、一定の期間内であれば申込みの 撤回または契約の解除ができるクーリングオフ制度が「特定商取引に関する法律」で認められ ており、その適用に伴う返品が発生します。 通信販売流通では、原則として同制度の適用はありませんが、業界団体のガイドラインなど に基づき、メーカーが「商品到着後○○日以内の返品は可能」といった規定を自主的に設けて いる場合も多くあります。 (2)返品に係る会計処理 化粧品・トイレタリー業界には、返品慣行があることから、将来発生する返品金額を過去の 実績等から合理的に見積ることが可能な場合が多いと考えられます。 また、化粧品および医薬部外品の製造業や卸売業は、一定の条件の下で翌期の返品に係る損 失の見込額を返品調整引当金として計上することが法人税法上認められています。 以上のことから、化粧品・トイレタリー業界においては、返品調整引当金を計上している実 務が多く見られ、返品調整引当金の一般的な会計仕訳および算定式は以下のとおりです。 (引当金計上時) (借) 返品調整引当金繰入額 ○○○○ (貸) 返品調整引当金 ○○○○ (一般的な算定式) 返品調整引当金 = 売上高または売上債権残高 × 予想される返品率 × 売上総利益率 なお、昨今では、返品された製品を再販売に回さず、そのまま廃棄を行う企業が増加してお り、当該ケースにおいては売上総利益相当額だけでなく廃棄損失相当額も含めた金額で返品調 整引当金を計上する実務も見受けられます。 (3)訪問販売流通における留意点 化粧品・トイレタリー業界では、継続的に販売している製品に関し、過去の実績等に基づき、 返品の金額を合理的に見積ることができる場合には、売上高のうち返品が予想される部分以外 については、財貨は買手に実質的に移転していると考えられ(「財貨の移転の完了」)、予想 される返品の額を控除した対価についても、信頼性をもって測定することも十分に可能です。 (「対価の成立」) −6−

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したがって、わが国の実現主義に照らして考えると、返品調整引当金を計上したうえ、売上 高を出荷基準で計上するという、現行の会計実務は適切と考えられます。 この点から考えると、クーリングオフ制度の対象となる訪問販売流通においては、製品の納 入時点では法律上で売買契約の成立は認められないことから、会計上も「財貨の移転の完了」 および「対価の成立」が満たされていないと考えられるためです。 この場合は、納入時に売上高および返品調整引当金を計上するのではなく、買手による購入 意思が示された時点またはクーリングオフ期間が終了した時点で、初めて売上高の計上を行う という会計処理が適切と考えられています。 3.ポイント制度に係る取引慣行および会計処理 (1)ポイント制度に係る取引慣行 ポイント制度は、企業の販売促進の手段のひとつとして百貨店、家電量販店およびスーパー などの小売業者が広く採用している制度です。 化粧品・トイレタリー業界では、ポイント制度は化粧品のカウンセリング販売、訪問販売お よび通信販売等の消費者とメーカーが、直接取引する流通システムにおいて導入している場合 に見られます。 例えば、インターネットの通信販売等では、購入金額の一定割合を顧客にポイントとして付 与し、顧客は次回購入時に蓄積したポイントを利用できるシステムを採用しています。 (2)ポイント制度に係る会計処理 現在、日本には、ポイントに係る個別の会計基準等が存在していないことから、ポイント発 行企業は企業会計原則等にしたがった会計処理を行っており、具体的な会計処理としては以下 のようなものが考えられます。 a. ポイント付与時において、消費者に提供する予定の商品原価を費用処理 b. ポイント使用時において、消費者に提供した商品原価を費用処理 c. ポイント使用時において、消費者に提供した商品原価を費用処理するとともに、期末 に未使用ポイントに対して過去のポイント使用実績を勘案し引当金計上 この会計処理は、商品やサービスと交換可能なポイントの付与が、約款や広く周知され撤回 不可能な方針等に基づいて行われており、将来の商品またはサービスとの交換時に通常の取引 価格を下回る価格での提供もしくは一定の支出が見込まれている場合には、引当金を認識する ことになると考えられます。 最近では、ポイント制度が定着するとともに、システムの発達により過去の使用実績データ や未使用ポイント残高の把握が可能となったため、上記 c.の会計処理を採用する場合が増えて います。 また、ポイント引当金を繰入れる際の会計処理としては、売上高の控除処理とする考え方も 存在しますが、販売費及び一般管理費に区分している事例が多いようです。 これは、付与したポイントと商品やサービスとの将来の交換について、そのポイントを付与 する元となった当初の売上取引の構成要素としては取扱わず、むしろ顧客への商品またはサー ビスの販売促進に資する別個の取引として取扱う考え方を前提としています。 なお、ポイント引当金は、一般的に以下のような計算式で算定されます。 ポイント引当金 = 期末ポイント残高×見積使用実績割合 × 1ポイント当たりの製品等交換 対価 −7−

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第4章 化粧品・トイレタリー業界の無形資産・設備

投資・宣伝物等の会計処理の特徴

1.無形資産(のれん・ブランド等)に係る取引慣行および会計処理 化粧品・トイレタリー業界では、目に見えない無形資産であるブランドの育成がメーカーにとっ て非常に重要になります。 企業は、ブランド価値を他の企業による模倣等により棄損しないためにも、製品名・ロゴマーク・ パッケージなどを商標登録や意匠登録することで、その権利を保護することが一般的です。 また、企業は、様々な方法でブランドを獲得し、以下では各々のケースごとにおける概要および 会計処理について説明します。 (1)自社で立ち上げて育成を行うケース 通常、化粧品やトイレタリー用品に関するブランド価値は、各々の企業が企画立案、製品化 およびその後の市場での浸透といった一連のプロセスにおいて、自ら関わることで育成され、 創造されたブランド価値を保護するため、企業は商標登録等を行います。 このケースでは、企業は登録に関する諸経費のうち、固定資産に該当するものについて「商 標権」等として、無形固定資産に計上するとともに、効果の発現する期間にわたって償却を行 います。 (取得時) (借) 商標権等 ○○○○ (貸) 現金及び預金 ○○○○ (償却時) (借) 商標権等償却 ○○○○ (貸) 商標権等 ○○○○ なお、企業がブランドを創造する過程で生じたその他の様々な支出(人件費等)については、 無形固定資産として計上することは認められていません。 (2)他社が育成したブランドを利用するケース 企業は、他の企業が育成したブランドを用いて事業を展開することもあり、一般的にはブラ ンドを所有する企業とライセンス契約を締結したうえで事業展開するケースのほか、ブランド 自体を買収したうえで事業展開するケースに分かれます。 ライセンス契約を通じて利用するケースでは、ブランドを所有する企業に対して売上高等に 応じて一定のロイヤリティを支払う必要があり、会計処理としては個々の契約条件に基づく金 額を発生主義により認識し、売上原価に計上します。 (発生時) (借) ロイヤリティ ○○○○ (貸) 未払金 ○○○○ −8−

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しかしながら、ライセンス契約による事業展開の場合では、ブランドを所有する企業から当 該契約を解除されるリスクとともに、更新時にロイヤリティの値上げを求められるリスクなど が存在します。 そのため、企業では、このようなリスクを回避したうえで積極的な事業展開を行うことから、 企業が他社の所有するブランド自体を買収することもあります。 このケースでは、当該ブランドの取得に要した金額を「商標権」等として、無形固定資産に 計上するとともに、効果の発現する期間にわたって償却を行います。 なお、会計仕訳は、1.(1)と同様になります。 (3)企業買収や事業譲受けを通じてブランドを獲得するケース 上記のほか、他社自体や他社の事業を買収することによって企業がブランドを獲得すること もあります。 企業は、買収した他の企業や事業の時価ベースでの純資産額と買収価額との差額については、 通常「のれん」として無形固定資産に計上し、効果の発現する期間にわたって償却を行います。 なお、受入れた資産に含まれる商標権等のブランド価値が、法律上の権利として分離して譲 渡可能な場合には、当該金額を控除したうえ、「のれん」の金額を算定することになります。 また、事業を買収した場合には、のれんや商標権等が多額に計上されることがありますが、 「のれん」や商標権等の無形固定資産については、減損会計の適用の対象となるため、留意が 必要です。 (取得時) (借) のれん ○○○○ (貸) 現金及び預金 ○○○○ (借) 商標権等 ○○○○ (償却時) (借) のれん償却 ○○○○ (貸) のれん ○○○○ (借) 商標権等償却 ○○○○ (貸) 商標権等 ○○○○ 2.店頭陳列棚や金型等に係る取引慣行および会計処理 (1)店頭陳列棚、金型等に係る取引慣行 化粧品売場では、多くの場合にブランドごとに販売コーナーや陳列棚が設置されます。 これらの什器は、製品を陳列するための棚としての役割のみならず、各ブランドのイメージ 戦略の一部を担うという重要な役割を持っており、そのデザインから製作に至る工程は小売業 者側ではなく、化粧品メーカー側が主導することが一般的です。 店頭陳列棚は、新製品の発売や同一店舗内での販売エリアの移動等に合わせて新設や改装が 行われるため、化粧品メーカーにとっては恒常的に発生する設備投資のひとつになります。 化粧品・トイレタリー製品の容器等を成型・加工する際には、金型等を用いることが一般的 で、製品ごとに容器のデザインや大きさが異なることから、金型等もそれに合わせて製品ごと に異なるものが用いられます。 −9−

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また、金型等は、製品のライフサイクルに合わせて新しいものが必要となるため、店頭陳列 棚と同様に化粧品メーカーにとっての恒常的な設備投資のひとつです。 (2)店頭陳列棚に係る会計処理 店頭陳列棚は、化粧品メーカー主導で製造されますが、その所有権は化粧品メーカー側がそ の後も継続して保持する場合もあれば、小売業者側に無償譲渡したうえ、実際の使用に供する 場合もあります。 化粧品メーカー側が所有権を継続保持する場合では、通常の有形固定資産の取得に係る会計 処理を行います。 また、小売業者側に無償譲渡する場合では、その支出額を会計上は費用項目として処理し、 税務上は繰延資産として取扱うなどの実務が考えられます。 (3)金型等に係る会計処理 化粧品・トイレタリー企業は、容器の製造を自社で行うこともありますが、外注先に製造委 託する場合も多いと考えられることから、金型等が保管される場所は必ずしも化粧品・トイレ タリー企業の自社工場内とは限らず、外注先の工場となる場合も多々あります。 通常は、化粧品・トイレタリー企業側が金型等の費用負担をしますが、当該所有権について は店頭陳列棚と同様に、化粧品・トイレタリー企業側が保持する場合もあれば、金型の入手後 に外注先に譲渡する場合もあります。 また、化粧品・トイレタリー業界では、企業の外注先側が金型を購入し、その費用負担につ いては化粧品・トイレタリー企業への容器の販売価格の一部として回収する場合のほか、一定 期間の分割払いで回収する場合等もあります。 このように、金型等の取引慣行は、多様な場合が考えられ、その会計処理については実態に 即した対応が求められます。 3.宣伝物(製造品または購入品)に係る取引慣行および会計処理 (1)宣伝物に係る取引慣行 化粧品・トイレタリー業界では、新製品の発売の際に製品のサンプル品を配布することがあ りますが、これはサンプル品を広く消費者に配布し、実際に利用してもらうことで、新製品の 発売の際の売上げ増加に結びつけることを目的としています。 また、口紅やファンデーションなど消費者が実際の色合いを手にとって確かめる必要がある 製品の場合、販売用の製品の一部がサンプルとして店頭に陳列されることもあるほか、化粧品・ トイレタリー業界では定期的にキャンペーン期間を設け、自社製品にポーチ、ポスター、食器 といった「おまけ」をつけて販売することがあります。 これは、主に既存製品の販売促進を目的としているもので、企業は販売促進活動の一環とし て、自社製品のカタログを顧客に配布することもあります。 こにように、化粧品・トイレタリー業界の宣伝物は、メーカーが自社で製造するのではなく、 外部から購入したものを利用することが一般的です。 (2)宣伝物に係る会計処理 ①宣伝物(製造品) 化粧品・トイレタリー業界では、サンプル品は販売用の製品と同様に製造ラインを通じて 製造されます。 −10−

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したがって、サンプル品が完成するまでは、通常の製品と同様に原価計算の枠内で取扱わ れ、完成してサンプル品として区分された段階で、販売用の製品と異なる取扱いがされ、簡 単なイメージとしては以下のとおりです。 ②宣伝物(購入品) 化粧品・トイレタリー業界では、宣伝物(購入品)の会計処理としては、購入時に広告宣 伝費等の費用項目として計上しておき、期末時点で未使用状態のものについては、貯蔵品等 のたな卸資産に振り替えるといった事例が多いようです。 (購入時) (借) 広告宣伝費等 ○○○○ (貸) 未払金 ○○○○ (期末時点) (借) 貯 蔵 品 ○○○○ (貸) 広告宣伝費等 ○○○○ 4.ポイント制度に係る取引慣行の今後の対応 化粧品・トイレタリー業界では、今後においては国際会計基準の導入による影響を大きく受ける 項目もあり、当該項目については今後の対応を検討する必要があります。 ■□■〶451-0043■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 愛知県名古屋市西区新道一丁目11番11号 エスポアビル702号 株式会社 脇 坂 公 開 企 画 代表取締役社長 脇 坂 博 明 TEL(052)446-7610(代表) FAX(052)446-7620 E-mail : [email protected] ■株式上場■企業広報■内部統制■商事法務■M&A■CSR■ISO■ −11−

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