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非対称ソーシャルメディアにおける分散的及び探索的選択特性 *

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(1)

非対称ソーシャルメディアにおける分散的及び探索的選択特性 *

小島 清信

a)

徳田 英幸

Decentralizing and Explorative Attachment in Asymmetric Social Media

Kiyonobu KOJIMA

†a)

and Hideyuki TOKUDA

あらまし ソーシャルフィルタリングといわれる人的ネットワークを介した選択的な情報伝達作用に着目した.

Twitterは相手の同意なくリンクをつなぎ換えできるため,ユーザの興味変化がソーシャルグラフとしてAPI

を通じて動的に取得可能である.実ユーザの行動を週単位から年単位まで追跡調査することで,リンク数が32 (101.5)以上のユーザにおいて積極的なつなぎ換えを観察した.アンケートを加えてつなぎ換えの分析を行い,中 位次数へのリンクを活性化させる分散的選択と探索的選択の特性を導き出した.モバイル環境の普及により人を 介する伝達の機会は更に増加すると考えられ,ソーシャルフィルタリングを活用するための知見が応用できる領 域は大きい.

キーワード ツイッター,ソーシャルグラフ,つなぎ換え,ソーシャルフィルタリング,情報伝達

1.

ま え が き

SNS

の利用が近年急拡大し,更には機能の一部と してユーザ同士のコミュニケーションを取り入れたア プリケーションが増えてきた.これらシステムでは,

ユーザの増加による情報量の急増や迷惑な情報の混入 が課題となり得るため,ユーザが情報を受け取る負荷 を考慮した設計が必要である.

大規模サービスの一つである

Twitter

では,時に応 じて有用な情報を誰かが選んで伝達することで,ソー シャルフィルタリングと呼ばれる人的ネットワークを 介した選択的情報伝達が起きている.この効果は場合 によって新聞や雑誌などプロの手による編集よりも期 待されている

[1]

.また,人の手による選択は機械的な フィルタに比べて情報量や環境の変化に対応しやすい と考えられる.

本論文は,情報を伝達する人のつながりであるソー シャルグラフの特性を分析し,伝達者を活性化する要 件を求めることにより,ソーシャルフィルタリングを 活かして有用な情報を得られる伝達システムの構築に

慶應義塾大学政策・メディア研究科,藤沢市

Graduate School of Media and Governance, Keio University, 5322 Endo, Fujisawa-shi, 252–0882 Japan

a) E-mail: [email protected]

*本論文は学生論文特集秀逸論文である.

資することを目的とする.

コミュニティのトポロジーは

2000

年ごろから多く の研究が成され

[2]

,特に

SNS

は実社会で観測しがた い人間関係を定量化できる場として活用されてきた.

更に

2006

年にスタートした

Twitter

は,ユーザの多 くが情報を公開し,

Web API

を通じてリアルタイム にデータが取得できるため,新たな対象として研究が 広がってきた.

Twitter

では相手の承諾を得ることな

follow

と呼ばれる購読関係を設定・解除することが

できるため,それまでの

SNS

で観測が難しかった関 係解除に注目した分析も行われた

[3]

Twitter

は友達が今何をしているかを知るための

ツールとしてスタートしたため,従来の

SNS

と同様に 実社会の関係をベースにしている.ところが

Twitter

では,知人でなくても情報収集目的でリンクを張り,

発信者の情報をほぼリアルタイムで読むことができる.

個人が購読者に対して情報を発信

/

伝達し,購読者数 の増加という形で動機付けが強化される関係が連鎖し ており,ソーシャルなメディアとしての位置付けが確 立した.

これらのリンク関係や伝達情報は,その多くを取得 可能なため,情報伝達メディアとしての拡散の分析

[4]

や,地震情報など人をセンサとしてとらえた分析

[5]

, 位置情報を用いて場のコンテクストを理解する応用

[6]

も進んできた.

(2)

これら先行研究の多くでは,社会的関係はユーザ間 のつながりを表すソーシャルグラフのトポロジー分析 で行われ,情報メディアとしての特性はトピックの伝 搬分析で行われてきた.本論文では

Twitter

の特性 を考え,ソーシャルグラフの変化による情報メディア としての分析を試みる.

Twitter

では相手の承認を必 要とせずにリンクのつなぎ換えができるため,自分に 好ましい情報を収集するために動的にソーシャルグラ フを変化させていると考えられる.従来の情報伝達で は,例えば興味のなくなったメーリングリストの場合,

退会依頼を出す代わりにメールソフトウェアのフィル タリング機能を用いることも多かった.購読という非 対称関係にある

Twitter

において,筆者らはリンクを 変えられる自由度に注目し,トポロジー変化の分析に よって情報伝達の特性を理解しようと考えた.リアル タイムに取得できる

API

を用いてユーザの興味の変 化を捉え,行動特性を分析することで,今後の情報量 増大時のネットワークの成長を考察する上での知見を 得られると考えている.

筆者らは

2010

年に

Twitter

の調査を始め,サンプ リングしたユーザを

2

週ごとに追跡調査することで,

リンクのつなぎ換えを分析し,シミュレーションによっ てソーシャルメディア発展の要件を抽出した

[7]

.本論 文では

2

年間の長期的変化とアンケートによるユー ザ行動の分析を加え,情報伝達メディアとしての特性 を明らかにすることで,以下に対して貢献できると考 える.

ソーシャル機能を含むアプリケーション開発

ソーシャルメディアのプロモーション利用

インフラとしてのネットワークシステム開発

2. Twitter

分析の前提

Twitter

分析の上で前提となる用語や性質,測定対

象について述べる.

2. 1

基本的な仕組みと用語

Twitter

で用いられる用語を図

1

に示す.ユーザ

A

がユーザ

B

のアカウント名またはリンクを知ると,

1 Twitterの用語 Fig. 1 Terms in Twitter.

ユーザ

A

はユーザ

B

に単方向リンク

(follow link)

を 張る(

follow

する)ことができ,

B

が書いたメッセー ジ

(tweet)

が継続的に

A

に伝達されるようになる.

A

B

follower

B

A

following

と呼ぶ.

B

が情 報保護強化のための設定をしていない限りは

B

の承認 なくリンクが張られるが,

B

A

follow

したこと を知ることができる.

B

A

に対して

follow

するか どうかは

B

の意思次第であり,非対称のソーシャルグ ラフとなる.

B

から受け取った

tweet

を更に

A

が他 に伝達することを

retweet

と呼ぶ.

2. 2

測 定 対 象

Twitter

の利用には,選挙やスポーツなどのイベン

トによる利用状況の変動や

follow

を集める有名人の 特性といった地域性があり,対象地域を分離して分析 するのが望ましい.

Twitter

で取得できるユーザ属性 のうち,最も適切に設定されている地域属性が言語で あり,

2010

年当時のサポート言語のうち日本語が最 も地域の分離精度が高いと見込まれた.また,先行研 究

[8]

で日本での利用が特徴的であることが示されて おり,日本を対象とした.

2010

5

月までに発行された

1.4

億のアカウント

ID

から

172,000

をサンプリングし,言語の属性によ

り日本語に該当する

6,967

ユーザについて,どういう

ユーザを

follow

しているか,そのリンクがどう変化し

ていくかを追跡調査した.また,その後

2012

5

月 までに発行された

5.8

億アカウント

ID

との差分であ る

4.4

億から

26,400

をサンプリングし,日本語に該当 する

1,100

ユーザについても追加して調査した.

2010

年の調査では,先行調査によって想定された複合要因 を分析するためのサンプル数とし,追加調査について は差分を分析するためのサンプリング数とした.図

2

に日本語言語に該当するサンプル数を発行

ID

に換算 して変化を示すが,

2

年間でユーザ数は

4.1

倍になっ

2 言語属性が日本語にあたるサンプルの遷移 Fig. 2 Transition of sampled accounts corresponding

to Japanese.

(3)

ている.

3. Twitter

ユーザの選択特性分析

Twitter

においては

follow

する側に主体性があるの で,各ユーザがどういうユーザを

follow

するかという 視点で分析する.相手先の購読者数(

follower

数)が 小さければ直接の知人である可能性が高く,大きけれ ば有名人の発信を期待している可能性が高いと考え,

ユーザが選択する先の次数によって傾向とその変化を 調べる.

3. 1 follow

選択先の次数分布

3

1

ユーザからの

follow

(following)

の分布 を示す.横軸には

following

の人気にあたる

follower

数(次数)を対数で示し,縦軸は

1

ユーザからの

follow

リンク本数の合計を

1

としたときのリンク数の確率 分布(次数ごとの選択率)を表す.ユーザが

follow

す る先の

13%

が,

32

100

万人の

follower

をもつ当時

Twitter

における有名人であることを示す.この図

には二つのピークがあるが,様々なパラメータで分類 した結果,図

4

に示すように

follow

する数が傾向を 決定的にしていた.

Follow

数が

32 (10

1.5

)

未満のユー ザには数十万人付近のピークがあり,

32

以上のユーザ には数百付近のピークがあり,これらの大きく傾向の 異なるものの平均として図

3

の分布になることを発見 した.図

4

の縦軸は

1

ユーザ当りの本数の絶対値を対 数で示しているため,図

3

に比べて起伏が緩やかに見 える.

4

10

5.5に見られるピークは,初心者に

follow

を勧める

Suggested User List (SUL)

と呼ばれる仕組 みの影響であると考えられるが,それ以外はフラット に近い.一方,

following

数が

32

以上の利用が進んだ

3 follow先のユーザ(following)の次数分布(fol- lower数)

Fig. 3 In-degree distribution of followings linked from each user.

ユーザになると,高次(有名アカウント)へのリンク 比率は減少し,数百の

follower

をもつ中次の比率が増 加することが分かる.これは直接の知人へのリンクに 比べて,情報収集メディアとしての比重が上昇してく るためと考えられる.

3. 2

つなぎ換え活動の分析

この

32

を境にした変化を調べるため,時間を追っ て各々のユーザが追加したリンクと削除したリンクの 分布を調べた.代表して

2010

6

月の

2

週間におけ るリンクのうち

follow

数が

32

未満のものを図

5

に示 す.ユーザが

2

週間に追加した平均リンク数を縦軸の 正数に,削除したリンクを負数で表す.

Following

数 が増え,

10

31

になるとリンクの削除が活発になり,

その中でも

10

5

10

5.5付近については,追加と同程度 に削除が行われているが,低次から中次にかけては削 除が少なく,広く追加が行われている.

Following

4 ユーザのfollow数で分類したfollowingの次数分布 Fig. 4 Distribution of followings classified by number

of followers.

5 followingの次数ごとの追加/削除本数 Fig. 5 Average number of added/removed links.

(4)

32

を過ぎて,急に削除が進むわけではなく,

follow

先を変えて試しながら結果として中位次数の

follow

先 を選ぶ傾向に変化することが分かる.

4.

モデル化とシミュレーション

3.

の分析を踏まえてつなぎ換えについてモデル化を 行い,シミュレーションによって特性を分析し,

twitter

で起きている事象や今後の変化に関する知見を得る.

4. 1

つなぎ換えモデル

6

に基本的な概念を図示する.ユーザにあたる ノードを丸で表し,直径がそのノードの次数(

twitter

でいえば

follower

数)を表す.ノード

A

がいくつか のノードにリンクを張り,そのうちのノード

B

の人気 が上がり次数を更に成長させるとする.情報が各々の ノードに保存され,リンクを通じた参照要求に応答す る性質のネットワーク(ストック型と呼ぶ)であれば,

次数を増やしたノード

B

は更に情報を集約して利便性 を提供していくため,ノード

C

D

といった同種ノード の二番手の魅力は低下していく(図

6 “Stock type”

). 一方,リンクを通じてリレー式に各ノードが随時情報 を伝達するネットワーク(フロー型と呼ぶ)では,ノー ド

B

が発信する情報は別経路で伝達する可能性も増え,

一次発信者に直接リンクを張る価値が低下し,自分に 合った形で伝えてくれる伝達者の価値が上がっていく

(図

6“Flow type”

).結果として,前者のストック型 では高次へのリンクが加速するが,非対称ソーシャル メディアで想定される後者のフロー型伝達では中次へ のリンクが加速すると考えた.つなぎ換えのモデルと して,前者を集中的選択

(Centralizing Attachment)

, 後者を分散的選択

(Decentralizing Attachment)

と名 づけた

[7]

Twitter

は,カジュアルな情報を扱うことが多く,

また

retweet

によって他ユーザの発言の再掲載が許さ

れているために受信者の読み損ねが致命的にならず,

分散的選択がうまく機能できると考える.

6 つなぎ換えの概念

Fig. 6 Basic rewiring concept on stock/flow type.

4. 2

融合モデルによるシミュレーション

分散的選択を取り入れたネットワーク成長をシミュ レーションし,特性を調査するため,

Barab´ asi

らが 提案

[9]

した

BA

モデルをベースとして,片方向リン クが増加する成長プロセスと分散的選択に基づいたつ なぎ換えプロセスを組み合わせたシミュレーションを 行った.モデルの詳細は

[7]

に示されているが,基本 的な考え方を示す.

7

に成長プロセスを示す.相互リンクされたノー ド

1

2

から始め,新規ノードが追加されるごとに既 存ノードの入次数と出次数の合計が多いノードを優先 して

2

本のリンクを追加する(優先的選択).ノード

3

1

2

にリンクを張るが,ノード

4

は次数が

2

の ノード

3

より次数が

3

のノード

1

2

にリンクを張 る確率が高い.

7

“Rewiring process”

としてつなぎ換えプロ セスの基本を示す.ノード

B

D

へのリンクをもっ ているノード

A

をつなぎ換え対象としたとき,

1

本の 新規リンクを優先的選択で追加(例えばノード

C

へ のリンク:破線)する.各リンクを調べ,例えばノー ド

B

のようにノード

C

という

1

ホップを介してもつ ながっている場合に直接リンク(

1

点鎖線)を削除し,

削除と同数のリンクを優先的選択に基づいて別のノー ドへリンクする.

成長プロセスに従って追加するノード一つに対して つなぎ換えプロセスに従って見直すノード数

M

をパ ラメーターとして変化させて

1

万ノードまで成長させ た結果の

follow link

分布を図

8

に示す.

M

を増やすにつれ,中次にピークができてくること が分かるが,ある程度以上増やしても分布が変化しな くなる現象が発見された.これは,つなぎ換えを頻繁 に行うことで高次ノードの成長にブレーキをかけてし まうために発生する.本来は高次ノードが人気を集め

7 成長プロセスとつなぎ換えプロセス Fig. 7 Growing process and rewiring process.

(5)

8 つなぎ換えによる次数分布変化 Fig. 8 Rewiring effect on decentralizing attachment.

9 シミュレーションによるfollower数の分布 Fig. 9 Degree distribution of followers on the

simulations.

ることで発信を動機づけ,伝達者も含めたソーシャル メディア全体の活性化が期待されるが,分散的選択が 縮小均衡をもたらしかねない.

この対策として,つなぎ換え先を全ノードに対する 優先的選択ではなく,自分の

following

following

を 対象とした優先的選択にすると高次ノードの人気が伸 びて全体が成長することが分かった.図

9

に対策あ り

/

なしと

BA

モデルだけの場合の全体の

follower

数 の次数分布を相補累積分布関数

(CCDF)

で示す.ス ケールフリーを示す

BA

モデル(

M=0

に該当)に対 して,分散的選択によって中位の膨らみ(直線的分布 に比べて存在確率が部分的に高い)を生み,つなぎ換 え対策によって高次が伸びることが分かる.

対策がない場合,つなぎ換えによって古くからある ノードの多くが中位として平均的にリンクを集めるこ とになる.対策がある場合,複数の中位からリンクを 集めているノードへのリンクを集中的に加速するため に,高次のノードが作られると考えられる.中位次数 が活性化する情報伝達システムには,分散的選択だけ でなく,その上位を活かす仕組みと組み合わせること

によって全体を活性化することが必要であることが分 かった.

5.

長期的変化の分析

2010

年の分析に対してユーザ総数に関する依存性 を明確にするとともに,モデルやシミュレーションを 実環境と比較するため選択特性の長期的変化を観察し た.

2012

5

月までの

2

年間でユーザ数は

4

倍以上 に増加しており,その間の変化を分析する.

5. 1

静的特性の変化

2010

5

月にサンプリングしたユーザの

following

先の分布について図

10

2012

5

月と

2

年前(図

4

) とで比較した.

10

2以下のノードの比率が下がってい るのは,ユーザの増加で次数が上がっているユーザが 増えていることと考えられ,特に普及率の上昇で友人 同士の相互リンクが増加したと考えられる.当時アカ ウントだけ作ったと思われる

follow

リンクがなかった ユーザも相当数

follow

を始め,リンク数が

0

のユーザ は

1884

から

1317

に減少している.また,影響力のあ るユーザの参加も増えて多様化したため上位次数が増 えている.一方

follow

数が

100

を超えるユーザでは,

数万

follower

数をもつ層へのリンクが増加したが,必

ずしもこの層を積極的に選択しているとは限らない.

Follow

数の多いユーザは

follower

への影響力が大き いために注目先の次数をこれら

follower

が育てた結果 とも考えられ得る.このほかは各チャートとも非常に よく一致している.この

2

年間に

4

倍以上ユーザが増 え,

2011

3

月の地震を境に

twitter

の利用が変わっ たといわれるにもかかわらず大きな変化のなかったこ とは,モデル活用の上で大きな知見である.また,分 布傾向が変化する境は

follow

32

であり,低次の割 合が大きく変化したにもかかわらずマジックナンバー として変化しなかったことは特筆すべきである.

次に

2010

年以降に新規に登録したユーザの分布を 図

11

に示す.

2010

年以前では加入時期による分布傾 向の差は認められなかったが,

2010

年以降のユーザで は

10

5.5に加えて

10

4

10

1

10

1.5にピークが認めら れる.

2010

年当時は,

SUL

として数十万の

follower

がいる国内の著名ユーザを一律に推奨していた.その 後,

SUL

のカテゴリー分けやユーザ情報に基づいた

SUL

が始まり,分野や組織内の有名人や身近な友達 が勧められるようになった.その傾向が三つのピーク に影響していると考えられるが,それでも

follow

数が

32

を超えるとこの影響がなくなり,図

10

と同じ傾向

(6)

10 2010年と2012年の選択特性比較 Fig. 10 Comparison of degree distribution between

2010 and 2012.

11 2010/5以降に登録したユーザの選択特性

Fig. 11 Degree distribution of users registered after May/2010.

を示すのは,各々に対する分散的選択がなされた結果 と考えられる.

4.

のシミュレーションでは,分散的選択が進むと高 次の次数が伸びず,それを拡散する中次も伸びないこ とが分かったが,

SUL

はこれを防ぐ手段の一つである.

今回のピークの

10

4

10

5.5は,

follow

数が多いユー ザに選択されなくなる次数に一致しており,

Twitter

が意図して該当次数に

SUL

を設定している可能性も あるが,

SUL

にあがるようなユーザだからこそ情報価 値が下がり

follow

しなくなるとも考えられる.

Follow

数の多いユーザはサンプル数が少ないので注意が必要 だが,図

10

が示す

10

4にバイアスのかかっていない ユーザ層において

10

4は必ずしも選択率の低い次数で はない.いずれにしても意図的なピークは分散的選択 により平滑化するため,特定のプロモーションを意図

12 Follower数の次数分布の比較 Fig. 12 Comparison of degree distribution of

follower.

して強調すると,その情報の伝達を抑制する層を育て,

意図とは逆の作用をもたらす可能性がある.ユーザか ら見れば,情報の氾濫をフィルターする作用をもつと 考えられる.

5. 2

ノード全体の

follower

数分布と世界との比較

4.

ではシミュレーション結果としての,ノード全体

follower

数分布を示したが,実際のサンプリング

による

2010

年と

2012

年の分布を図

12

に示す.一般 に

SNS

では,成長とともに実社会の関係が相互リン クとしてマップされて

10

2以下の領域が増える形にな る

[10], [11]

.韓国の人口の

1/3

が加入していたといわ

れている

Cyworld

のピーク時には,知人同士が密に

SNS

上でもつながっている状態で,

10

2.5付近まで次 数分布が膨らんでいた

[12]

Twitter

の普及率がそこ まで及ばないにもかかわらず

10

3にかけて膨らんでい るのは,情報伝達のための独自のソーシャルグラフが 構築されているためと考えられる.

2010

年から

2012

年にかけてその膨らみが更に増してきた.

12

には言語によらない

Twitter

全ユーザの次数 分布も

“World wide”

に示した.

2010

年には直線的 なべき乗則にのっていたチャートが,

2012

年にはほぼ

2010

年当時の日本のチャートに重なっている.

Twitter

では日本の特殊性も指摘されるが,トポロジーに関し ては全世界の傾向が日本を追いかけてきたといえる.

5. 3

今後の変化への考察

本論文で使用してきた,図

10

に代表される

1

ノー ドからの選択特性のグラフと図

12

の関係を考察する.

各ノードがどこを選択して

follow

するかの総計が各 ノードの

follower

数の分布に当たるので,

BA

モデル で仮定するように次数

(k)

に比例する確率で接続先を 選択する(優先的選択)として,その存在確率

P (k)

(7)

スケールフリーになると両者の積がバランスして図

10

に代表されるチャートの分布がフラットになることに なる.したがって議論してきた選択性を示すチャート はスケールフリーからの乖離要因を示すチャートとし て捉えることができる.

本章では

3.

と併せて,ユーザ総数によらず

follow

数が

32

を超えると分散的選択により

follower

数が数 十から数百のユーザへのシフトが起き,更に

follow

数 が増えるとピークが徐々に上位側にシフトすることを 示した.今後ユーザ数が拡大すると,選択特性が変化 しないとしても

follow

数の多いユーザ比率が高くなる こと,また,普及が進み飽和に近づくとつなぎ換え要 素が支配的になることから,この層における更なる分 析を試みる.

6.

アンケートによる調査

今後の長期的な変化に影響を与える中位の選択並び に徐々にピークが上位シフトする現象を分析するため,

アンケート調査を行った.

Follow

32

以上のユーザ は全体の

2

割にあたるが,ここに該当するユーザの意 識を調査し,実際のつなぎ換えを分析することで今後 の変化を考察する.

6. 1

対象者の特性

2011

6

月に大学の関係者にアンケート調査を呼 びかけたうち,

follow

32

以上のユーザ

44

人に対し てアンケートによる調査と,アンケートの際に同意し たユーザ

35

人に対してその後の特性変化を

API

上で 追跡調査した.

13

にアンケート対象ユーザの

follower

数を横軸 に

following

数を縦軸にとり,

11

か月の変化を示す.

また一日当りの

tweet

数を線の幅で示した.どのユー

13 アンケート回答者の特性 Fig. 13 Characteristics of the respondents.

ザも

follow

数に見合った

follower

tweet

数があり,

follower

数を増やしている情報発信

/

伝達の中核層で あると考えられる.

Tweet

数や

follow/follower

比は,

follow

数や

follower

数の変化に対して顕著な相関がな かったことから,対象を分類せずに分析する.

6. 2

リンクの追加

/

削除

直近

1

か月間の追加リンク数

/

削除リンク数に関す るアンケート回答の度数分布を図

14

に示す.追加も 削除も多く,

1

か月の間に

6

割のユーザが

1

件以上削 除し,追加したリンク数に対して削除したリンク数も 半分に達していて,頻繁なつなぎ換えが行われている ことが分かる.

次に,直近に

follow

した先と削除した先の各々につ いて,表

1

にその相手の分類を,表

2

follow

した アカウントの入手方法を,表

3

に削除した理由を示す.

1

の分類には各々の次数を代表すると考えられる選 択肢を挙げたが,追加,削除とも「一般個人」が圧倒 的に多く,かつ表

2

によれば

Twitter

上で相手を探 すことが大半であるといえる.入手先の

1

位に挙がる

follow

先の

retweet

3

位に挙がる

follow

先の

follow

先は,

4.2

で述べた縮小均衡回避の手法にあたる.自 分の

follower

に対する

follow

(相互フォロー)も多い

ものの,

follow

先のツテともいえる関連情報を用いて,

発信力のある一般個人を探し出して

follow

しているこ とが分かる.

Follow

先が増えるに連れて

Twitter

上 での探索力が上がるために,自分に好ましい中位次数 の発信

/

伝達者を発見できると考えられ,その

follower

によってツテが連鎖することで,発見された「興味深

14 直近1か月のfollowリンクの追加,削除数 Fig. 14 Added/deleted links in one month.

(8)

1 直近でfollowした先の分類 Table 1 Category of the most recent following.

2 直近でfollowした先の入手方法 Table 2 Means to get the account for the most recent

following.

3 直近で削除した理由

Table 3 Reason of deleting the most recent following.

い個人」の情報が拡散し,次数を育てる(

follower

を 増やす)ことになる.

次に削除の理由を分析する.直近でリンクを削除し た

1

件について三つまでの複合回答を許したアンケー トを表

3

に示す.アンケート対象のこの層は

follower

にとって有用な情報を取捨選択するフィルタリング機

能を担うことが期待されるが,多くを

follow

している からこそ流入量が多くなり,自分が入手する

tweet

や有用な

tweet

比率によって見直しをしていることが

分かる.ソーシャルフィルタリング機能を担うといっ ても専任のキュレーターではないので,情報の入手経 路を積極的に保守して効率化を図らなければいけない ことになる.

既に分散的選択の経験のあるこの層は,皆が容易に 発見できる手法ではなく,新しい相手を発見しては見 直す繰り返しによって情報ソースの最適化を行ってい る.これを筆者らは「探索的選択」と名づけ,リンク 主導権が購読者側にある非対称ソーシャルメディアに おけるつなぎ換え特性の一つに位置づける.今後ユー ザ数が増えて

follow

数が増加し,成長が鈍化してくる と,この「探索的選択」が

Twitter

のトポロジーの大 きな要因になり,またユーザにとっても

Twitter

を特 徴づける大きな要因になると考えられる.ただし,リ ンクの保守頻度は高く,ユーザ数の増加により保守の 負荷が増大していく可能性を考えると,探索的選択を サポートする機能が有用になると考える.

3

の削除理由の中に,分散的選択で想定していた

「他の人のリツイートで入手可能だから」という項目 が多くはない.これは既に分散的つなぎ換えのフェー ズを既に経ている層だからともいえるが,

Twitter

の 新機能である後述の公式リツイートが影響していると 考えられる.

7.

シミュレーションに用いたモデルや知見を実際の

Twitter

における

2

年間の変化と比較し,また他論文

の知見と併せて考察する.

7. 1

分散的選択による縮小均衡

2010

年当時は,首相の

tweet

がマスコミの話題に 上り,何人かの有名人が

Twitter

加入を推進してお り,話題に乗り遅れまいとする動機もあって特定な集 中が起きていたと考えられる.その後,分散的選択で 平滑化が進んだと考えられるが,今のところ

4.

で危 惧したような縮小均衡は認められない.表

2

にあるよ うに,

follow

先の

retweet

follow

先の

follow

先を

参照して

follow

することが行われていること,及び

Twitter

が導入した公式

retweet

機能が作用している と考えられる.公式

retweet

2010

1

月から正式 スタートし,

2010

年内にほぼ普及した.元情報を直 接

follow

している場合,他の人に

retweet

されても多

(9)

重表示されなくなったため,

retweet

されていること 自体に気づきにくい.何度も同じ内容を受け取ること を防ぐ役目ももつが,過度の分散的選択を防ぎ,発信

者に

follower

数という形で報いるシステムにとって重

要な役割を果たしていると考えられる.

7. 2 Twitter

における集中的選択

Twitter

は基本的にフロー型であるが,ハッシュタ

グと呼ばれるキーワードを付加して検索対象とするス トック型といえる利用も行われている.検索サービス やハッシュタグによる情報分類サービスが広がってき たが,今のところサービス間での集中的選択が作用し たようには見えない.検索は広告など収益に直結して いる機能のため,

Twitter

tweet

の二次利用の制限 を強化しており,ユーザによる自由な選択が進み難い ことが理由と考えられる.

7. 3

つなぎ換えの地域性と利用段階の違い

Kwak

[3]

は,筆者らとほぼ同時期である

2010

6

月から

8

月に韓国ユーザに関する

follow

削除につい て日ごとの変化を調べ,また削除理由をインタビュー によって調査している.相互リンク率が高いことが報 告されているが,当時

Twitter

は韓国向けにローカラ イズをしていなかったため

Twitter

による

SUL

がな

く,

follow

数が少ないユーザが多かった.そのためか

分散的選択に該当するような現象や削除理由は報告さ れていない.削除について,同日のうちに複数の削除 が行われる場合が多いことが報告されているため,つ なぎ換えはある程度まとまってから整理しようとする 動機が関係すると考えられる.本論文ではユーザ数が 増加しても

follow

32

をしきい値としてつなぎ換え が活発になることが分かったが,心理的側面での分析 も必要であると考える.

Kwak

らは男女

22

名ずつに削除理由のインタビュー を行ったが,迷惑と感じる

tweet

が理由の大多数を占 め,表

3

で上位にあるような有用

tweet

数や,有用と 無用の比率といった理由がなかったのが大きく異なっ ていた.本論文では

follow

32

を超える層に絞った 影響が大きいと考えられるが,正式導入前の利用形態 の違いや

SNS

が活発な韓国独特の背景も考えられる.

以前から正式導入された日本では,リンクの整理から 一歩進んで積極的な探索的選択が認められるが,これ が利用の段階の違いなのか地域性なのか,今後は地域 間の差異も含めた継続的な調査が必要である.

8.

む す び

本論文では,新しい視点として,情報伝達における ユーザの興味をソーシャルグラフの動的変化に基づい て分析し,ソーシャルフィルタリング作用につながる いくつかの新しい発見とモデル化について報告した.

32

というつなぎ換えにおけるマジックナンバを発見 し,

SUL

のような意図的特異点を平滑化しようとす る効果を発見した.また,

follow

数の多いユーザが細 かくつなぎ換えを行って情報量をコントロールしてい ることが分かった.そして,ソーシャルグラフの継続 的なつなぎ換えに着目し,集中的選択,分散的選択,

探索的選択の三つを定義し,今あるソーシャルメディ アの今後の予測やソーシャル機能の開発を行う上での フレームワークを与えた.これらは同時に,プロモー ション目的などの利用者にも有効な知見になると考え ている.

以上の知見から,中位次数の伝達者を活性化させる 要件として以下が挙げられる.

1

) 自由につなぎ換えでき,かつ情報の見逃しが 許されること

2

) リンク数が

32

を超えるユーザを増やすこと

3

) 高次の発信者へリンクを誘導し,縮小均衡さ せないこと

また,縮小均衡防止には

SUL

やリンク先の情報活用 が有効なことが分かった.今後,探索的選択が増え,

中位次数のユーザが発見的に高次ユーザを生み,盛り 立てると考えられるが,そのためには頻繁なつなぎ換 えをサポートする必要性が高まると考えられる.

従来の情報伝達のトポロジーは,論理的にも物理的 にもスケールフリーになることが多いが,インター ネットは集中的選択で巨大ノード化が進んでいる一方,

ソーシャルフィルタリング効果を発揮するようなメ ディアは,ローカルでもグローバルでもない中位優勢 領域に移ろうとしている.モバイル環境の発達で人間 が常時オンラインに変化することで,人間というホッ プが遅延などのマイナス要因でなくなり,付加価値を 提供する要素に変化していく.インフラと論理トポロ ジーの差異が今後の課題になると考えられる.

非対称なメディアは必ずしも片方向ではなく,それ ぞれに別の役目をもたせることと考える.現在,こ こでの知見を既存システム上の行動理解にとどめず,

ソーシャルフィルタリング作用を促進し,人の付加価 値を生かすソーシャルメディア開発に反映させて提案

(10)

できるよう研究している.人のネットワーク自体がイ ンテリジェンスを内包するような環境で,分散的選択 と探索的選択が適応される分野が更に拡大すると考 える.

文 献

[1] C. Anderson, in a SPIEGEL interview, “Maybe me- dia will be a hobby rather than a job,” Spiegel online international 28/Jul/2009.

[2] M.E.J. Newman, “The structure and function of com- plex networks,” SIAM Review, vol.45, no.2, pp.167–

256, 2003.

[3] H. Kwak, H. Chun, and S. Moon, “Fragile online re- lationship: A first look at unfollow dynamics in Twit- ter,” Proc. 2011 annual conference on Human factors in computing systems, pp.1091–1100, 2011.

[4] H. Kwak, C. Lee, H. Park, and S. Moon, “What is twitter, a social network or a news media?,” Proc.

19th International Conference on World Wide Web, pp.591–600, 2010.

[5] T. Sakaki, M. Okazaki, and Y. Matsuo, “Earthquake shakes twitter users: real-time event detection by so- cial sensors,” Proc. 18th International World Wide Web Conference, pp.851–860, 2010.

[6] 荒川 豊,田頭茂明,福田 晃,“Twitterにおけるコン テキストと単語の相関関係分析,情処学研報モバイルコ ンピューティングとユビキタス通信,2010-MBL-53 (50), pp.1–7, 2010.

[7] K. Kojima, H. Tokuda, “Decentralising attachment:

dynamic structure analysis in twitter as a flow- type information medium,” Proc. IADIS Interna- tional Conferences Web Based Communities and So- cial Media 2011, pp.65–72, Rome, Italy, July 2011.

[8] B. Krishnamurthy, P. Gill, and M. Arlitt, “A few chirps about twitter,” Proc. 1st Workshop on Online Social Networks, pp.19–24, 2008.

[9] A.L. Barab´asi, R. Albert, and J. Hawoong, “Mean- field theory for scale-free random networks,” Phys. A:

Statistical Mechanics and its Applications, vol.272, Issues 1-2, Oct. 1999, pp.173–187, 1999.

[10] 湯田聴夫,小野直亮,藤原義久,“ソーシャルネットワー キングサービスにおける人的ネットワーク構造,情処学 論,vol.47, no.3, pp.865–874, 2006.

[11] J. Leskovec, K.J. Lang, A. Dasgupta, and M.W.

Mahoney, “Statistical properties of community struc- ture in large social and information networks,” Proc.

17th International Conference on World Wide Web, pp.695–704, 2008.

[12] Y.Y. Ahn, S. Han, H. Kwak, S. Moon, and H. Jeong,

“Analysis of topological characteristics of huge online social networking services,” Proc. 16th International Conference on World Wide Web, pp.835–844, 2007.

[13] V. G´omez, A. Kaltenbrunner, and V. L´opez, “Sta- tistical analysis of the social network and discussion threads in slashdot,” Proc. 17th International Con-

ference on World Wide Web, pp.645–654, 2008.

[14] A. Java, X. Song, T. Finin, and B. Tseng, “Why we Twitter: Understanding microblogging usage and communities,” Proc. 9th WebKDD and 1st SNA- KDD 2007 Workshop on Web Mining and Social Net- work Analysis, pp.56–65, 2007.

[15] D. Zhao and M.B. Rosson, “How and why people twitter: the role that micro-blogging plays in infor- mal communication at work,” Proc. ACM 2009 In- ternational Conference on Supporting Group Work, pp.243–252, 2009.

(平成2463日受付,103日再受付)

小島 清信 (学生員)

1982慶大・工卒.1984同大大学院工学 研究科修士課程了.同年ソニー(株)入社.

2009慶大大学院政策・メディア研究科後 期博士課程.現在,情報伝達システムの研 究に従事.

徳田 英幸 (正員)

1977慶應義塾大学大学院工学研究科修 士課程了.1983ウォータールー大学計算 機科学科Ph.D.(Computer Science).同 年カーネギーメロン大学計算機科学科勤務,

1990年同学科研究准教授.現在,慶應義 塾大学大学院政策・メディア研究科委員長.

主に,分散リアルタイムシステム,オペレーティングシステム,

ユビキタスコンピューティングシステムに関する研究に従事.

IEEE, ACM,情報処理学会,日本ソフトウェア科学会各会員.

Fig. 3 In-degree distribution of followings linked from each user.
Fig. 6 Basic rewiring concept on stock/flow type.
図 8 つなぎ換えによる次数分布変化 Fig. 8 Rewiring effect on decentralizing attachment.
図 10 2010 年と 2012 年の選択特性比較 Fig. 10 Comparison of degree distribution between
+2

参照

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