近畿大学工学部研究報告 Na40, 2006年,pp.4146 Research Reports of the School of Engineering,
Kinki University Na40, 2006, pp.4146
災 害 弱 者 の 現 状 把 握 と 災 害 時 の 避 難 に 関 す る 研 究 一東広島市中心地域を対象としたケーススタディ‑
難 波 義 郎 ¥ 古 川 雄 一 付
P r e s e n t c o n d i t i o n g r a s p o f t h e d i s a s t e r weak andevacuation a t t h e time o f d i s a s t e r : Case s t u d y on Higashihiroshima C i t y
Yoshiro NAMBAへYuichiFURUKAWA付
Synopsis
If the catastrophe occu町ed,the presence of dangerous around the place of life influences greatly the guaranty of safety in case of not evacuation. On the other hand the distance and the route to the refuge places control safety in case of evacuation. Especially, we must examine the evacuation place and evacuation route prudently for disaster weak such as senior citizen. Grasping of the evacuation place and dangerous place is the item that is necessary to consider because the disaster weak is increasing ln agIng soclety.
The central area of Higashihiroshima City is different from the area with the much country scenery like the suburb area. Therefore, the distribution of population in both differs largely and population of the disaster weak, mainly the senior. citizen, differs depending upon the area.
In this research, the refuge place and evacuated people were grasped at dangerous part in Higashihiroshima Ciゆ A ndthen, it was analyzed to consider the refuge place for the disaster weak such as senior citizen.
Keywords: disaster weak, evacuated people, refuge place, geographical information system 1 .はじめに
者は避難場所と避難経路は慎重に検討しなければならな 避難とは災難を避けて他の場所へ逃れることである。 い。避難場所と危険箇所の把握は、これからの高齢社会 地震や台風等の災害時に自宅にいると危険な時、危険を で災害弱者の増加が確実な現状にあることから考察が必 感じる時、また、自宅にいられなくなった時に、その災 要な事項である。
害の大きさにより最寄りの避難場所に避難する。 東広島市中心地域は、他の地域のような田園風景の多 大災害の発生時、避難する場合は避難場所までの距離 い地域とは異なっている。交通網では山陽本線の主要駅 及び経路、避難しない場合は自宅周辺の危険箇所の有無 である西条駅や山陽新幹線の西条駅があり、主要幹線道 が安全の確保に大きく左右する。特に高齢者等の災害弱 路の国道2号線、国道375号線が通っている。これらの
*近畿大学工学部建築学科 Department of Architecture, School of Engineering, Kinki University
**錦建設株式会社 Nishiki Kensetsu Co., Ltd.
41
42 近畿大学工学部研究報告 NQ40
周辺では集合住宅や大型商業施設などがあり、駅前周辺 部が人口集中地区になっている。一方でこれらの発展か ら取り残され、昔ながらの地域特有の西条瓦の住宅が点 在する農木村出区がある。したがって、人口分布が大きく 異なるので、災害弱者(主に高齢者)の人口が地区によ
り異なった状況にある。
そこで、本研究では、東広島市中心地域(以下西条町 と呼ぶ)における避難場所、災害弱者の現状及び危険箇 所を把握し、避難圏域の分析を行った。
2.避難場所
表2・1のように、東広島市には避難場所が、西条町28 箇所、八本松町13箇所、志和町7箇所、高屋町16箇所、
黒瀬町71箇所、福富町4箇所、豊栄町24箇所、河内町 56箇所、安芸津町39箇所、合計258箇所ある。広域避 難場所は西条町3箇所、志和町1箇所、高屋町2箇所、
計6箇所ある。
表2・1 東広島市の避難場所
3.災害弱者の把握
災害弱者とは、災害時に自分の力で身を守ることが困 難な人のことである。つまり、自分で移動できない人、
車椅子・補聴器なとの補装具が必要な人、情報を入手・ 発信することが困難な人、急激に状況変化への対応が困 難な人、医薬品・医療装置が常時必要な人、精神的不安 定になりやすい人等のことである。
具体的には、普段の生活から手助けを必要とする高齢 者・障害者・病弱者・負傷者、地理を把握してなく、災 害情報の入手や安否確認が困難である観光客・外国人、
普段の生活においては支障ないが、特殊な環境におかれ た場合に手助けを必要とする乳幼児・妊婦なとが挙げら れる。本研究では、高齢者を対象とする。
全国の総人口は平成16年10月1日現在で 1億 2.769 万人である。その内、高齢者人口 (65歳以上)が2.488 万人、生産年齢人口 (15"'‑'64歳)が8.508万人、年少人 口(0"'‑'14歳)が1.773万人である。高齢者人口が19.5%、 生産年齢人口が66.6%、年少人口が13.9%である。
65線以上 15歳 未 満,
19.5首 13.9弘
15‑64歳 66.6%
図3‑1 全国
広島県の総人口は平成16年10月1日現在で287万 8,915人である。その内、高齢者人口 (65歳以上)が53 万1.537人、生産年齢人口 (15"'‑'64歳)が191万6.796 人、年少人口 (0"'‑'14歳)が42万8.035人である。高 齢者人口が18.5%、生産年齢人口が66.6%、年少人口が 14.9%である。
65歳 以 上 15a禾滋
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66.61¥
図3・2 広島県
東広島市の総人口は平成17年現在で 17万4.814人で ある。その内、高齢者人口 (65歳以上)が 2万 6,599 人、生産年齢人口(15"'‑'64歳)が11万9.794人、年少 人口 (0"'‑'14歳)が2万8.421人である。高齢者人口が 15.2%、生産年齢人口が68.5%、年少人口が16.3%であ る。
65歳 以 上 15歳未瀦
15‑64歳 68.5%
図3‑3 東広島市
西条町の総人口は5万8.205人で、その内、高齢者人 口 (65歳以上)が7.239人、生産年齢人口 (15"'‑'64歳) が4万0,766人、年少人口 (0"'‑'14歳)が1万200人で ある。割合は高齢者人口 が 12.4%、生産年齢人口が 70.0%、年少人口が17.5%である。
災害弱者の現状把握と災害時の避難に関する研究 43
日‑14.
人 口.17.3叫
15‑64織 人 口.70.3弛
図3‑4 西条町
全国、広島県、東広島市のデータと比較すると、西条 町は 15歳未満人口が17.3%で最も高く、全国との差は 3.4ポイントもある。また、 65歳以上人口は12.4%で最 も低く、全国との差は7.1ポイントもある。
図3‑5は東広島市の 65歳以上割合である。東広島市 9町のデータと比較すると、西条町は12.4%で9町の中 で最も低い。次いで12.9%の高屋町である。最も高いの は37.3%の豊栄町である。次いで31.8%の福富町である。
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30.0悔 25.0也 20.0弘 15.0也 10.0"
5.0也 0.0也
百金町 八本松町 志相町
37.3、
高里町 凪調爾7 福富町 量袋町 珂向町 'Ie基調.町
図3・5 東広島市9町の65歳以上人口割合
G 1 S (ソフト名:Mapinfo)により、大字別38箇所 を図3・6のデータを元に高齢者割合で色分けを行った。
30%付近の地域は33.0%の西条本町、 31.4%の西条町 大字馬木、29.7%の西条町大字上三永の3箇所であった。 全体的に南部に高齢者割合の高い地域が多く見られる。
4. 危険箇所の把握
東広島市防災マップ西条町により危険箇所危険箇所を 把握した。
表4・1は各危険箇所を大字別に集計したものである。
危険箇所は全部で 65箇所ある。寺家、下三永、上三永 が多いことがわかる。
傾斜度30度以上、高さ 5m以上の急傾斜地で被害を生 じる恐れのある急傾斜地崩壊危険渓流が23箇所ある。
谷地形をしている渓流、または、過去に土石流が発生 した渓流、土石流発生の恐れのある渓流の土石流危険渓 流が53箇所ある。
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図3・6 大字別65歳以上人口割合 65歳以上
人口割合
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1 3 8
図3‑2 高齢者 (65歳以上)人口割合
44 近畿大学工学部研究報告 No40
図3‑3 選択部分(図3・2)の詳細
表4・1危険箇所数
、 弘、 紬 ~.&r.
件 数
西条町大字馬木 西条町大字上一永
西条町大字郷曽 4 西条町大字下見
西条
町大字下一永西条町大字寺家 西条町大字助実 西条町大字国口 西条町大字土与丸 西条町大字福本
西条町大字御園宇 4 西条町大字森近
西条町大字吉行 西条中央 3 丁目
計
6 5
山腹崩壊により、人家や公共施設に被害を与えるおそ れがある地区の山腹崩壊危険地区が 8箇所ある。また、
山腹崩壊等により発生した土砂が土石流となって流出し、
人家や公共施設等に被害を与えるおそれのある地区の崩 壊土砂流出危険渓流が31箇所ある。
5.避難圏域の分析
国土交通省の避難地設置基準では、避難所の誘致距離 は概ね2km、一次避難場所の誘致距離は概ね500mと定 めている。
避難圏域とは、避難場所に避難することが可能な範囲 のことである。避難圏域は避難場所を中心とした円とな
りその半径は以下の式で算出される。
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避難可能限界距離与1.4142km (1)西条町は、都市化していない地域や高低差の大きい所 もあり、避難地設置基準の誘致距離 2kmでは範囲が大 きく、実際の経路との誤差も大きくなることから式(1 ) の値を採用する。また、 一次避難場所の誘致距離は避難
図5・1避難所のバッファ図
図5・2 一次避難場所のバッファ図
地設置基準を採用する。図5・1は西条町の避難場所のバ ッファ図で避難場所の位置と避難圏域を示している。南 北方向に広く分布しており、山陽本線周辺、国道2号周 辺、山陽新幹線西条駅周辺に集中している。
図5・2は一次避難場所のバッファ図で一次避難場所計 62箇所の位置と避難圏域を示している。避難所同様に南 北方向に分布している。避難所の配置に比べ、部分的に 細かく網羅されている。特に西条中央周辺は密集してい る。全体的には網羅されていない。避難圏域の半径が小 さいので、避難圏域外は避難所の場合より小さい。避難 圏域は中心部に集中しており、西条町の境界周辺が避難 圏域外になっており、南部が最も大きい。
避難場所では大字地域52の内、避難圏域に入らない 地域があるのは16あった。図5・3の斜線部が避難圏域 外面積であり 41682.40ばであった。最も大きかったの は8886.40ぱの西条町大字郷曽であった。しかし、避難 圏域外面積の占める割合は67.7%ほどで、最も大きかっ たのは100%の西条町大字大沢であった。
一次避難場所では大字地域 52の内、避難圏域に入ら ない地域があるのは25であった。図5・4の斜線部が避 難圏域外面積であり 75077.73m'であった。最も大きか ったのは11753.30ばあった西条町大字郷曽であった。
45 災害弱者の現状把握と災害時の避難に関する研究
一次避難場所での各人口 表5・2
避難所の避難圏域 図5‑3
250 200
iiii i i i i i
E昔 話 語 E童 話 出
避難圏域外面積内の高齢者人口(避難所)
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謝申
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Ed
帝国
50
次いで、 9499.64mの西条町大字下三永であった。避 難圏域外面積の占める割合が 100%の場所が西条町大字 大沢、西条町大字上三永、西条町大字森近の3箇所ある。
次に、避難圏域外面積の総人口と高齢者人口を算出す る。式 (2)より、この16地域の1mあたりの人口を求 め、避難圏域外面積つまり避難困難区域の人口を求めた。
一次避難場所の避難圏域 図5‑4
図5・5
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避難圏域外面積内の高齢者人口 (一次避難場所)
人口ともに最も多かったのは8423.2人、 1056.3人の西 条町大字寺家であった。次いで3521.7人、 555.0人の西
図5‑6 避難所では、避難圏域外面積の総人口は9193人で、
その内、高齢者人口は 1610人である。表5・1のように 避難困難地域の人口、避難困難地域の 65歳以上人口と もに最も多かったのは1615.0人、203人の西条町大字寺 家であった。次いで1188.8人、 197人の西条町大字郷曽 であった。
しかし、西条町大字寺家、西条町大字郷曽ともに避難 困難区域の65歳以上人口割合は2.0%、11.2%ほどであ り、最も高かったのは22.9%の西条町大字福本であった。
次いで21.5%の西条町大字上三永であった。
一次避難場所では、避難圏域外面積の総人口は28641 人で、その内、高齢者人口は4361人である。表5・2の ように避難困難地域の人口、避難困難地域の65歳以上
表5・1 避難所での各人口
避難困難区域人口 (2) 大字人口×避難区域外面積=
大字面積
46 近畿大学工学部研究報告 NQ40
条町大字御薗宇であった。
しかし、西条町大字寺家、西条町大字御園宇ともに避 難困難区域の65歳以上人口割合は 10.3%、10.7%ほど であり、最も高かったのは29.9%の西条町大字馬木であ
った。次いで29.7%の西条町大字上三永で、あった。
6.寺家地区の詳細
西条町大字寺家は西条町と八本松町の境界に位置し、
北部に山林が多く、その他の部分は平野部である。 JR 山陽本線の蜘萱はあるが、西条駅と八本松駅の中間にあ
り駅はない。西条町の中でも開発が遅れている地域と言 える。幹線道路から外れれば山林や田畑の風景が見られ、
住宅は点在している。田畑周辺の畦道が多く見られ、隣 接する道路が畦道のみの住宅もある。
このような地区では、一次避難場所は公園や運動場な どの屋外より、天候や高齢者を考慮して屋内の一次避難 場が必要になる。そこで、東広島市指定の避難所、及び 都市公園台帳登録公園以外で一次避難場所として使用で きる駐車場等の広場を有し、かっ避難できる広さのある 屋内がある建物を有した施設を検索した。その結果、適 当と思われる施設が三次整形外科リハビリクリニック、
くすのき幼稚園の2箇所があった。これらの2つの施設 は広い駐車場や広場があり、かっ屋内も使用できる建物 があるため、一次避難場所として最適である。
一次避難場所は、災害時に一時的に避難する場所なの で、屋内であればこれらの2箇所の病院、幼稚園以外で も診療所、保育所や民間企業の建物などを利用すればか なりの避難圏域の領域を確保することができる。
7.結果及び考察
以上の結果から、災害発生時に災害弱者(高齢者)が 避難する際、避難所の場合は避難困難地域の人口 1615 人、避難困難地域の65歳以上人口203人、また、一次 避難場所の場合も避難困難地域の人口 8423人、避難困 難地域の65歳以上人口1056人で西条町大字寺家が避難 できにくい状況にあることがわかった。避難しない場合 においても危険箇所数が8箇所の西条町大字寺家が最も 危険箇所が多く、人及び人家に被害の出る可能性が高い
ことがわかった。
また、 65歳以上人口割合が33%で最も多かった西条 町西条本町は、避難所及び一次避難場所の両方の避難圏 域内にあるので、距離上は安全に避難できることがわか った。そして、西条本町を含め、西条町駅前の人口密集 地区においても避難所及び一次避難場所の両方の避難圏 域内にあることがわかった。
今後は、高齢社会に対応するため、避難所及び一次避 難場所の指定、設置、設備を充実させる必要がある。一 次避難場所においては公園に限らず、近くにある駐車場 や空地等を代用できる。つまり、住民は近隣で利用でき る場所を認識しておけば災害時困らないが、避難所は代 用できる施設は少ないことから、避難所の設置や指定を 増やす必要がある。
災害は季節・天候・時間帯を間わず発生する。また、
災害によって被害の受け方や対応が異なることから、今 後の研究課題としては、避難場所、特に一次避難場所で の季節や天候を考慮した災害別の分析を東広島市全域、
そして、広島県全域の広範囲を対象として行う必要があ る。
参考文献
1)東広島市ホームページ,
httザ//www.city.higashihiroshima.hiroshima.jp/ 2)広島県ホームページ, http://www.pre.fhiroshimaj.p/ 3)東広島市:統計でみる東広島, pp.6・17,120・125,
2004.8
4)東広島市防災会議:東広島市地域防災計画(基本編),
pp.23・25,41, 118・119,2002.2
5)東広島市防災会議:東広島市地域防災計画付属資料,
pp.108・126,149・167,2002.2
6)国立社会保障・人口問題研究所:日本の市区町村別将 来推計人口平成12"‑'42年(平成15年12月推計),
pp.42・44,122‑123, 2004.3
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災実務ハンドブック震災に強い都市づくり・地区まち づくりの手引, pp.132・137,158・162,2005.2 9)内閣府:平成17年版高齢社会白書, pp.2・9,2005.6