ICT 活用による思考力・表現力の育成
ホワイトボードからタブレット端末につなぐ協同的学習の実践を通して
高度学校教育実践専攻
授業実践・カリキュラム開発コース 吉 田 美 紀
I 課題分析 1 課題設定の理由
( 1 )思考力"表現力の育成について
近年子ども遠の学力に関して,知識・技能の 習得に比べそれらを使って考えるカや考えたこ とを表現するカが十分ではないことが指摘され ている。平成 20年改訂の新学習指導要領では
「思考力・判断力・表現力等の育成」は特に重 要であると示された。実習校でも同様の課題を 抱えており,知識の習得に比べて活用を苦手と していることがわかった。また,児童は,まじ めで素直なよさがある反面,積極的に自分の思 いを表現することや,自ら課題を見出し解決し ていくことにはキや議題が感じられる。そのた め,かかわり合う学びの中で自己を高めていく ことを大切にしている実習校において,
r
自ら考え,伝え合い,学び合うj授業をつくることで,
思考力・表現力の育成を図ることにした。
(2) ICT活用について
文科省の「教育の情報化ビジョン」の中では,
情報活用能力を育むことは思考カ・表現力を育 むことであると述べられ,情報通信技術の活用 によって教科内容をよりよく理解したり表現し たりできるようになる可能性についても言及し ている。そこで,昨今教育現場で活用事例が増 え今後も導入が進むと考えられる多鰯
E
な情報 端末に着宮し,従来の教具と組み合わせながら 効果的に活用しようと考えた。その際,地域や実習責任教員 実習指導教員
村 }II 前 田
雅 弘 洋
学校の実態を踏まえ,協同的な学習の形態をと りながら,ホワイトボードからタブレット端末 の活用へとスムーズに移行・併用できるように したいという思いから本研究課題を設定した。
2 先行研究・先行実践事例 (1 )協同的学習について
D.W.ジョンソンら(1998)は
r
協同学習とは スモールグ、ループを活用した教育方法であり,そこでは生徒たちは一緒に取り組むことによっ て自分の学習と互いの学習を最大に高めようと する。Jと述べている。筆者はそれらの活動がホ ワイトボードやタブ、レット端末の活用により促 進されるよう研究を進めた。
(2)思考力・表現力育成に関して
「考えるカ・伝えるカJの育成に焦点を当て 研究に取り組む鈴鹿市平田聖子中学校で,自分の 思いを相手に伝えるカを身につけるための授業 を観察し,生徒の思考の訴詑11こついて分析した。
(3)ホワイトボードの活用に関して
日常的にホワイトボードを活用して児童の表 現力を高め,活発な意見交換と学び合いを実現 させているたつの市小宅小学校の取り組みを参 考にし,ホワイトボードを使って思考と表現を 活性化させる手立てを考えた。
(4) ICT活用の観点から
総正安省フューチャースクール実証研究校であ った足代小学校では ICT機器を活用した授業 方法や環境整備について学んだ。一人一台のタ
ブ、レット端末活用状況を参考にして実習校の実 態に合わせた使用法を工夫し,課題解決に向け た実践方法について検討した。
E 課題解決のための実践研究の計画 実践研究の内容を1
r
ホワイトボードを活用 した協同的学習の実践J.11前半「タブ、レット端 末活用の価値追求と授業モデルの開発J. 11後 半「タブレット端末を活用した協同的学習の実 践J.血「矧回計画の立案と実施J.Nr
情報モ ラノレ・情報活用能力向上のための教育計画」に 分け,実施時期と合わせた計画を立てた。E 実践研究の実施
1 思考力・表現力を育成するための学習活動 実践研究実施に当たり,育成するべき思考力・
表現力について確認し,研究対象とする理科,
音楽(人権)における学習活動の方法および科 学と芸術の相違点を認識した上で進めていくこ
とにした。
2 学校課題フィールドワークIの取り組み (1)ホワイトボードを使った協同的学習
ホワイトボード、を使って思考と表現を活性化 させるため,授業のどの場面でどのような活用 効果をねらって潟践するのか,授業の流れにそ
って次の図のようにまとめた。
(2)理科の指導
研究対象を4年「電気のはたらき」とし,ホ ワイトボードを活用した問題解決的学習を実施 した。グ〉レープでホワイトボードを使い意見を 伝え合いながら考えを深めたり,それを見やす く表すことで思考を助け,表現へと結びつける ことができた.0 また,各グループの実験結果を 比べて考えることにより問題解決へ向かいやす
くした。
(3)音楽の指導
研究対象を5年音楽(人権)とした。 FWIIの 音楽物語づくりを念頭に置き FWIでは既成の 2曲をつなぐ語りを貴Uf乍し,合唱と共に音楽物 語仕立ての作品として他学年に発表する活動を 行った。個人やグ/レープの恩湾と表現を活性化 するよう努めると共に,全員が協力しながら作 品づくりを行う活動を通して互いに認め合おう とする集団づくりに貢献することができた。
3 異校種フィールドワークの取り組み 中学校では難聴学級においてタブ、レツト端末 を導入し,生徒が耕市や同級生とのコミュニケ }ションツールとして活用するほか,タブレツ ト端末が多機能である点を生かして 1時間の授 業展開の中で様々な活用形態で学習効果をあげ ていた。また,協力学級における授業では支援 の教師から送信される授業説明を読みながら一 斉授業を受けていた。通信手段を使ったコミュ エケーションツールとして侵却することにより,
同級生と一緒に学び合うことができていた。
4 学校課題フィールドワーク Eに向けて (1)タブレット端末活用価値の追求
ホワイトボードを活用した授業からタブレッ ト端末を併用した授業への見直しを図るため,
それぞれの特徴を整理・検討し、次の図のように まとめた。
験学習の時間において,タプ、レット端末活用に よる思考・表現の促進との関連を下図のように 整理し実践した。実験の結果を即時的にグラフ 化し各グループの結果を即座に同期して見比べ たり,前時間のデータに次時のデータを重ねタ ブ、レット端末から大きく拡大される結果を見て 考えたりすることにより児童の思考が促進され,
問題解決につながりやすくなったことが考察の 記述からうかがえる。
各ツール由長所と共通点
竃で見やすい '"舎さ
..込みが箇侵
楓いがoa
Z l E
(2)自作教材の隠発
音楽のねらいに迫るため,筆者自身の制作活 動を主として,原作者と作曲家の協力を得て「走 れ!良平2013音楽物語Jを作成した。制作に あたり,以下の観点に配慮した。
聞 瑚 唱 で 昆 甘 い
一 也 震 時 す 作 あ ピ ロ
・ 福 舗 が
量‑
‑一 旬ト 書
安 田 も 剛
H'e
E E&
﹄e
Eでし
Uz
‑
‑ ‑ ‑ ' L E ‑
‑ u F
フ れ
? で
E岡
a
寓q
・
M R E 句
‑鴫
S
R E h
‑q
・ 也
z
・ か
圃 崎 国
・
L‑
F
‑ 刷 ゆ 同 一4 u
dm
同
jEE引mL自
φe at
吊
z ‑ E
‑‑ za
?"
‑'
a胃
‑‑ いグ
︐ヲ
・・ 思 栂 グ
‑ m
・
‑ R ‑ R
隠 錘
留軍
EE
am
司
,
穆
①思考カ・表現カを育成する総合芸術の有効性
②協同的学習の形態と人権教育の効果
③高学年│自lけの作品になること
@魅力あり表現意欲を掻き立てる作品づくり
⑤著作権
⑥タブレyト端末の機能が生かされることでより
よい作品づくりが可能となること I
亡 金 富 岡 繍 さ 抱 . .
主君
s z r r r ' z l J E F r r r p l E Z . .品協宝君主. 芳 . . ぃ .
(3)研究プロジェクトチームとのかかわり 本研究は,
r
多機能携帯端末を活用したグノト プ学習および協同的な学習方法の研究」をテー(3)音楽(人権)の指導の実際
「走れ!良平2013音楽物語」は,各グルー プが課題に基づいて自由に部分的創作を楽しめ る作品に仕立てた。グループが活動する時には 必然的に思考・表現が活性化されるよう工夫を 施し,全体学習では再びグループでの表現が問 われる形となる。児童が協同的に一つの作品づ くりに取り組み,学級全体で表現力を高めてい く活動を通して互いに認め合う仲間づくりを目 指す人権教育の実践である。タブ、レット端末の 活用が学習活動をより促進させられるよう,以 下のことが可能になるように工夫を施した。
全 休 場 曹 , 、
マに発足したプロジェクトチームとかかわりな がら進めている。タブレット端末活用価値の追 求,授業実践方法の検討,環境整備,実践後の 改善等についての研究は現在も継続中である。
学校課題フィールドワークEの取り組み (1)タブレツト端末の導入
グノレープごとに初めてタブ、レット端末が 1台 ずつ与えられることに伴い,学習規律の再確認 を行うと共に使用に当たって必要となる情報モ ラルを学習した。
(2)理科の指導の実際
4年「ものの温度と体積」の単元における実 5
①思い思いに11í~のアイデアを入力でき,デ-~として活用できるe 音声入力機能の活用で入力時間を短縮できる。
母全ての音楽が全端末に同期され,自由に聴Ijるa
g音楽と語りの自由な組み合わせを楽しめる。
由児童同士で平軽に動画記酷,確認,改普・睦正ができる.
国語動場所が隠れても,即座に同期され互いの活動の樟干がわかる。
同期されたシナ日オで班が担当する部分の前桂閑悟を参考にできる。
証での決定が即座lこ反映され物語全体ができあがるa 骨ス夕日ーンにむナリオが拡大表示され.児童の担轟が合う.
全体町中での班の責任が感じられ,より良い表現にしようとする。
@児童伴奏のほか音喪データの再生により即座に(f.書ができる。
軍学習の足跡がのこり,学習の成果がわかる。
@他校や他の地域との吏掩学習が行える。
W 実践研究の成果と課題 (1)ホワイトボードの活用について
ホワイトボードを活用した授業では,個人や グループの意見が可視化されることで学習内容 の理解が深まり思考守安現を促したり,グルー プごとの学習結果を並べて表示することで結果 を比較しやすくしたりする効果があった。しか し,さらに学び合いを深めることには課題が残 った。理科では各グループの実験結果の比較か ら問題解決に至るには時聞がかかり,思考を深 める結果の表示方法がFWIIの課題となった。
音楽においては,児童が自分たちの表現につい て自己評価や他者評価から総合的に判断し,主 体的に改善していく意欲がもてる方策を考える
ことがFWIIへの課題として残された。
(2)タブレット端末の活用について
タブレット端末の新規導入から授業実践まで 労を要したが,既存の
I C T
関連機器を工夫して 活用することや,斑に一台のタブレット端末で 協同的な学習を展開する方法を提案・実践することができた。
理科では温度によるものの体積変化の様子と タブ、レット端末で作成した棒グラフの動きや同 期した各班の結果,実生活における温度計の仕 組みなどを一致させ問題解決へと結びつきやす くした。思考と表現を一体化させることで,児
童の表現意欲や記述が増したと考えられる。
音楽では,主にグループ活動において思考と 表現を活性化させる実践ができた。動画による 活動のま録と確認・修正,無線環境により活動 場所が離れても同期できる機能,そして,タブ レット端末が多機能であることが音楽物語づく りの活動の幅を大いに広げた。グ、ループや学級 全体で課題の解決に向かう活動を通して互いを 認め合う仲間づくりにもなった。
また,自作教材の開発と活用にも確かな手応 えを得ている。今後の展望として,さらに他校 ともつながることで児童が自己を高める活動を 視野に入れて取り組みを続けたい。
(3)評価計画の立案.情報モラル等
実習単元においてタブ、V;)'ト端末の活用を念 頭に置いた評価基準を設けたが,教師の見取り や児童の表現の変容,児童の自己評価が大きな 割合を占めた。年間を通して一貫した評価計画 が立案できなかったことが反省として残る。授 業の実践計画と準備に追われたことが理由と恩 われる。情報モラノレと情報活用能力の向上につ いても,学校の実態と発達段階を考慮し,義務 教育期間を見越した計画を立てることを今後の 課題とした1t¥
V 省 察
I C T
機器に疎かった筆者が教職大学院での 研究テーマにI C T
活用を選んだ経緯から振 り返り,教育的人間カや教育実践指導力,学 校改善指導力に関して, ICT活用・音楽教育・学力向上の 3点と関連づけてこの 2年 間 を 顧みた。自己の意識変革と実習校での実践は 教員生活における貴重な財産となった。今後 は,自分の軸がしっかりとしてぶれないこと で大学院での学びを永く学校現場において 提案できるようにと決心を闘めている。