モバイル通信端末用小形アンテナの設計課題とその解決技術
小柳 芳雄
†a)Technological Solutions for the Design Problems about the Small Antenna of the Mobile Communication Terminal
Yoshio KOYANAGI
†a)あらまし 携帯電話やスマートフォンに代表されるモバイル通信端末では,セルラシステムのマルチバンド化 や各種無線システムの搭載により高機能化が進んでいる.また,端末の小型化によりアンテナ占有体積も制限さ れ,アンテナ体積1cc当りの機能を見積もると,過去10年の間におよそ18倍に高密度化されている.こうした アンテナの高密度化は,素子の小形化とともに,複数の無線システムで素子を共用化する手法や,きょう体をア ンテナとして利用する手法,人体近接時にも放射性能を確保できる構造など,モバイル通信端末特有の解決技術 によりこれを実現している.今後は,更なるマルチバンド化やMIMO素子数の増加に対応するために,デカッ プリング技術や3軸偏波アンテナ等の新たな技術が必要である.本論文では,これら商用モバイル通信端末の小 形アンテナの設計で必要となる技術を述べ,将来更なる小型高機能化が進む次世代のモバイル通信端末における アンテナの開発の方向性を示す.
キーワード アンテナ,モバイル通信端末,小形化,高密度化,マルチバンド
1.
ま え が き携帯電話やスマートフォンに代表されるモバイル通 信端末は,ここ十数年の間に我々の暮らしに定着し,
無線機能を搭載した小型な端末を人々が常時携帯する ことは当たり前の世の中となった.日本国内の携帯電 話は
1994
年の端末売り切り制度導入以来,小型軽量 薄型化競争が熾烈となり,当時世界最小最軽量となる 製品を含めて多くの小型端末が生み出されてきた[1]
. 高速なデータ通信や多くの無線機能を搭載した高機能 な無線通信端末が,現在のように小型に進化してきた 技術的背景としては,各種デバイスの進化や電池の高 容量化に加え,アンテナ技術の進歩は欠くことのでき ない重要な要素である[2]
〜[4]
.利用者にとってより小型で高機能であることが求め られるモバイル通信端末では,アンテナの技術要件は 常に「小形」「高利得」「広帯域」が基本である.しか しながら,その具体的な中身は無線システムの進化や
†パナソニック株式会社,AVCネットワークス社,横浜市 AVC Networks Company, Panasonic Corporation, 600 Saedo-cho, Tuzuki-ku, Yokohama-shi, 224–8539 Japan a) E-mail: koyanagi.yoshio@jp.panasonic.com
端末の利用形態の変化とともに大きく変化してきてお り,新製品開発のたびに発生する様々な課題を解決し てきた技術の積み重ねが,昨今のような高機能でデザ イン性の高いスマートフォンを実現させているといえ る.例えば,モバイル通信端末用アンテナにおける小 形化は,電気的に小形であることはもちろん,物理的 に小型であることも求められるため,低い周波数帯に 対応するためであってもアンテナ素子に十分な物理体 積を確保することが難しい.そこでマルチバンド化に 対応するには,アンテナ素子を電気的に短縮するとと もに,周辺部品をアンテナの一部として活用するなど,
アンテナとして動作する導体を拡大させて性能を確保 する工夫が必要になる.
アンテナは,無線性能を司る電気部品であるととも に,端末の構造やデザインを左右する機構部品として の性質も合わせもっている.構造設計を含めたアンテ ナ設計思想の詳細は端末メーカーにとってのノウハウ に係わる部分であるため,これまで商用端末用アンテ ナの詳細について述べられた文献は必ずしも多くない.
文献
[5]
では,商用化された数多くのモバイル通信端 末を詳しく分析することで,様々な設計手法があるこ とが明らかにされているが,各アンテナの設計思想までは言及していない.また,文献
[6]
では,過去の論 文を体系的に分析することで,効率,帯域幅,利得と 電気的体積によって小形化を評価する手法が提案され ているが,複数の無線システムや複数の周波数帯域に 対応させる場合の評価についてまでは言及していない.そこで本論文では,商用モバイル通信端末で必要と なる小形アンテナ特有の設計課題に着目し,これま で具現化されてきた解決技術とその設計の考え方に ついて述べるとともに,
MIMO
(Multi-input Multi-
output
)等の新たな課題への対応技術について述べる.将来更なる小型化が進む次世代のモバイル通信端末で あっても,これまでの商用モバイル通信端末で培われ てきた小形アンテナ技術の延長線上にその課題解決の ヒントがあるはずである.本論文の最後では,偏波の 急激な変化にも追従できるウェアラブル端末用
3
軸偏 波アンテナについても紹介し,今後の開発の方向性に ついて考察する.2.
では,これまでの国内携帯電話のアンテナがい かに小形高機能化してきたかを,高密度化を表す指数 を定義することで考察する.3.
では,携帯電話用アン テナ技術を中心に,モバイル通信端末用アンテナの設 計における主要な技術的課題とその解決技術を紹介す る.4.
にて将来更なる進化が進む次世代のモバイル通 信端末の課題と今後の開発に必要となる技術について 述べ,5.
でまとめる.2.
携帯電話用アンテナの小形高機能化2. 1
アンテナ小形高機能化の推移図
1
は2004
年から2013
年の10
年間に日本国内で 商品化された携帯電話端末(スマートフォン含む)の アンテナ占有体積と対応バンド数の推移を示している.対応バンド数にはセルラシステムで運用されている各
図1 携帯電話用アンテナの小形高機能化の推移 Fig. 1 Transition of the volume and number of func-
tion for the mobile phone antenna.
周波数帯に加え,
GPS
(Global Positioning System
) やBluetooth
やWLAN
(Wireless LAN
:無線LAN
) 等の各種無線システムも含めている.また,アンテナ 占有体積にはアンテナ素子だけではなく,アンテナを 動作させるために必要な周辺空間も体積に含めており,定義の詳細については後述する.
図
1
では,端末の小型高機能化に伴い,アンテナに 許される占有体積は5cc
から2.3cc
に縮小されている.一方,対応が必要な機能の数は
2
から17
に増加して いる様子が分かる.すなわち,アンテナ占有体積1cc
当りの機能数は18
倍程度に高密度化されているとい える.なお,本論文における高性能の定義は,より放射効 率が高いこと,人体近接時でも実効的な放射電力が高 いこと,通信容量が高いことを総称している.また,
高機能の定義としては,より複数の周波数に対応して いること,あるいはより多くの無線システムに対応し ていることとしている.
2. 2
アンテナ高密度化の指標商用モバイル通信端末ではより少ない体積内に多く の周波数帯に対応したアンテナを搭載することが求め られる.すなわち,アンテナ占有体積
1cc
当りの対応 機能数が多いほどより高密度化されたアンテナである と考えることができる.そこで,モバイル通信端末ア ンテナにおける小形高機能化の評価指数として下記を 定義した.アンテナ高密度化指数
[
機能/cc]
= 機能数(対応周波数+無線数)アンテナ占有体積
cc (1)
ここで,機能数は対応周波数と無線数の総和であり,無線数には,携帯電話以外の通信システムである
GPS
やBluetooth
などのサブシステムの数をカウントして いる.また,対応周波数とは,1.5GHz
帯以上の帯域 では1
周波数帯につき1
,それより低い周波数帯では2
とカウントしている.すなわち800MHz
及び2GHz
対応のアンテナでは機能数を2 + 1 = 3
としている.これは,波長に比べて十分な端末サイズが確保できな いモバイル通信端末では,
800MHz
帯等の低い周波数 帯への対応がより困難であることからこのような重み 付けを行っている.各周波数帯における運用周波数帯 域幅は必ずしも同じではないため,数学的には厳密で はないが,1
周波数を1
機能として評価することでア ンテナ設計における難易度とはおおむね相関があるため,このような評価を行っている.
式
(1)
におけるアンテナ占有体積は,文献[7], [8]
に 示すRDV
(Requisite Design Volume
:必要設計体 積)に基づいて算出している.モバイル通信端末では,アンテナ素子が実装部品や基板のグランド,きょう体 シャーシなどの金属物に極近接して配置される.アン テナが効率的に動作するためには,アンテナ素子の周 りには十分な空間が必要であり,特に金属物が近接す る側の空間をできる限り広く確保することが性能上重 要である.そこで,アンテナ素子自体の体積に加えて,
アンテナ素子と周辺近接金属物との間の空間もアンテ ナ性能に必要な体積として含め,必要設計体積として いる.
図
2
は,必要設計体積の求め方を説明する図である.図
2
の構造では,基板や電池パックで構成された階段 状の金属物に近接してアンテナ素子が配置されており,必要設計体積は
D × W × H
となる.図
3
は,式(1)
で定義したアンテナ高密度化指数の ここ10
年間における推移である.国内で商用化され たパナソニック(株)製端末のうち,特に高機能化が 要求されるハイエンド機種と平均的な機種について 示している.ハイエンド機種では,2004
年には1cc
当り0.4
の機能であったものが,2014
年には1cc
当 り7.4
もの高機能化が図られており,急激な右肩上が りのグラフになっている.2010
年に指数がいったん 減少に転じているが,これはスマートフォンの登場 によって,端末サイズが大きくなったことが理由であ る.しかしながら,その後も高密度化は更に進んでお り,アンテナ占有体積は益々少なくなっているにも係 わらず,MIMO
によるアンテナ数の増加[9]
やLTE
(
Long term evolution
)で追加される新しい周波数へ の対応等により急激に高密度化が進んでいる様子が分 かる.2. 3
実端末のアンテナ構成図
4
は,2013
年発売の国内向けスマートフォン端 末のアンテナ構成例である.通信用アンテナは四つ あり,本体下部にセルラ用メインアンテナ,本体上部 にMIMO
に対応するためのセルラ用サブアンテナ及 び,GPS/Bluetooth/WLAN
共用のアンテナ,DTV
(
1
セグメントディジタルTV
)/MM
(マルチメディ ア)放送共用の伸縮式ホイップアンテナを配置してい る.対応する周波数帯は図4
右表のとおりであり,国 内で運用されている主な周波数帯域をカバーしている.図
4
右表にて,は機能数を
1
として見積もった周図2 必要設計体積 Fig. 2 Requisite design volume.
図3 アンテナ高密度化指数の推移
Fig. 3 Transition of an antenna high-density index.
図4 スマートフォン端末のアンテナ構成例 Fig. 4 Structure of antennas for smart phone termi-
nal.
波数バンド,◎は機能数を
2
として見積もった周波数 バンドである.この端末におけるアンテナ占有体積は
2.3[cc]
,機能 数は17
と見積もられるため,アンテナ高密度化指数 は7.4[
機能/cc]
となる.例えばセルラ用メインアンテナでは
800MHz
帯を含む五つの周波数バンドである機能数
6
に対応しているが,そのためのアンテナ占有 体積は0.8cc
しかなく,極めて高密度化が進んだ部品 となっている.なお,本節で定義している運用周波数への対応とは,
3GPP [10]
や各通信事業者の仕様などの性能要件を満 足していることが条件である.近年のアンテナ性能 要件はOTA
(Over The Air
)による総合無線性能評 価尺度であるTRP
(Total Radiated Power
)やTRS
(
Total Radiated Sensitivity
)によって評価されるこ とが一般的である[11]
.各製品は,できる限り小型に 設計されるが,定められた性能要件を満たす必要があ るため,製品やメーカーによる性能差異は縮まる傾向 にある.3.
モバイル通信端末用アンテナにおける 技術的課題とその解決手法前節で述べたようなアンテナの高密度化のためには,
アンテナ素子の小形化に加え,複数の無線システムで アンテナ素子を共用する,アンテナ以外の部品をアン テナとして活用する,などの様々な工夫によってこれ を実現している.表
1
は携帯電話端末で実用化されて いる高密度化技術の一例を示したものであるが,ここ に記載されていない各端末メーカーの独自ノウハウも 数多く存在すると予想される.本節では,モバイル通 信端末用アンテナにおける主な技術的課題と,これま でに筆者らが実用化してきた解決技術について,その 実例を述べる.3. 1
アンテナ素子の小形化アンテナ素子そのものを小形化する手法は,過去か ら数多くの研究事例
[2], [6], [12]
〜[16]
があるが,商用 端末では設計の容易性や製造コストの観点からよりシ ンプルな構成が求められる.図5
は,代表的なアンテ ナ素子の小形化手法を示しているが,多くはグランド 板上に配置されたλ/4
モノポールアンテナを基本とし た構成になっており,スロットアンテナやダイポール アンテナのようにλ /2
程度以上の大きな電気的サイズ が必要となる方式を採用するケースは少ない.図
5(a)
はメアンダ構成[17]
であり,アンテナ素子 の領域に十分な長さが確保できない場合に,アンテナ 素子を折り返し構造によって電気長を確保しており,800MHz
帯など主に波長の長い周波数帯域に適用される.図
5(b)
は板状逆F
アンテナ[18]
であり,グラン ドに近接した低姿勢なアンテナ素子でもインピーダン ス整合を取りやすくして小形化している.複数周波数 に対応するための手法としては,図5(c)
のように素子 を根元から分岐する構成や,図5(d)
のように共振回 路を素子の途中に配置する構成,図5(e)
のように無給 電素子を配置する構成,図5(f)
のように接地したλ /4
素子を近接配置する構成がある.図5(g)
は,折り返 したλ/2
モノポールアンテナの先端を接地することで インピーダンス整合をとりやすくした構成である[19]
. 本構成では,自己平衡作用によりグランド電流を抑制表1 アンテナ高密度化技術
Table 1 Techniques for high density antenna.
図5 代表的なアンテナ素子の小形化手法 Fig. 5 General methods for minimization of antenna
element.
し,人が手にもったときのインピーダンス特性を安定 化している
[20]
.図5(h)
は,箱型の素子によって高 周波電流が流れる経路を増やし,広帯域化を図ってい る[21]
.図5(i)
は,一つのアンテナ素子に対して異な る場所から給電することで,素子を共用化している.これらの小形化手法は一つの方法で万能というもの は無く,端末の構造や設計思想によって採用される手 法も異なるとともに,複数の手法を組み合わせるこ とで更なる小形化を図るのが一般的である.例えば 図
4
の端末のセルラ用メインアンテナでは,図5
の(a)(c)(d)(f)
を組み合わせることで小形化を図り,ア ンテナ高密度化指数7.4[
機能/cc]
を実現している.3. 2
複数システム共用アンテナ昨今のモバイル通信端末にはセルラシステム以外に も複数の無線システムが搭載されるが,無線システム ごとにアンテナを配置するスペースが確保できない場 合に,一つのアンテナ素子を複数の無線システムで共 用することで小形化を図る方法がある.
図
6
は,アンテナ共用器を用いてGPS
とWLAN
及びBluetooth
の三つの無線システムを共用化してい る.GPS
用のアンテナ素子とWLAN/Bluetooth
用 のアンテナ素子をそれぞれ別々に配置した場合には,GPS
用で0.35cc
,WLAN/Bluetooth
用で0.25cc
と図6 GPSとWLAN/Bluetoothの共用アンテナ Fig. 6 Shared antenna for GPS and WLAN/Bluetooth.
都合
0.6cc
のアンテナ占有体積が必要であったが,共 用化により計0.4cc
に省スペース化できている.本構 成では,アンテナ共用器が追加されるため,通過損失が
0.5dB
ほど増加してしまう欠点があるが,二つのアンテナを統合する際に素子体積を若干拡大し,
GPS
帯域の放射効率を0.8dB
改善することで,表2
に示す ように共用前と同等以上の性能を確保している.表2
におけるGPS Sensitivity
とは,GPS
としての感度 性能であり,高い値ほど性能が良いことを表している.また,本方式に用いるアンテナ共用器の設計では,ア ンテナ側の負荷インピーダンスが必ずしも
50Ω
とは ならないため,共用器に整合回路の機能ももたせるこ とで,アンテナ素子と各無線回路とのインピーダンス 整合をとる工夫をしている.こうしてアンテナ素子を共用化する組合せは,
DTV
用アンテナとBluetooth
用アンテナ,セルラ用サブア ンテナとGPS
用アンテナ等の組合せでも実用化して おり,省スペース化の手法として多くの商用端末で採 用されている.3. 3
きょう体ダイポールアンテナモバイル通信端末のきょう体サイズは持ち運びの利 便性などの理由で
10
〜15cm
程度の長さが一般的であ る.これは通信に使用されているUHF
帯の周波数に とって1
波長に満たない長さであるため,端末のきょ う体はアンテナにとっての安定したグランドとして動 作しない[22]
.これはモバイル通信端末特有の制約条 件であり,アンテナ素子のみならずきょう体グランド を含めた周辺金属の構造を最適化することがアンテナ の性能を確保する上で重要である[23]
.つまり,アン テナ素子を励振したときにきょう体や周辺部品に流れ る高周波電流を上手く利用できれば,アンテナ素子自 体が小さくても周辺の導体がアンテナの一部として機 能し,放射特性を向上させることが可能となる.折り畳み式携帯電話端末にて,きょう体の構造を活 用して高利得化と広帯域化を実現したアンテナとして,
きょう体ダイポールアンテナがある
[24], [25]
.これは,表2 共用アンテナのGPS性能評価結果 Table 2 GPS performance of shared antenna.
折り畳み端末にて,上下のきょう体を連結する回転ヒ ンジ部を経由して上下のきょう体に給電することで,
きょう体全体をダイポールアンテナとして動作させる 方式である.
図
7
に,きょう体ダイポールアンテナの構成及び800MHz
帯で励振した場合の電流分布を示す.下部きょう体に配置された回路基板から,一定の間隔
Gap
を離間して回転ヒンジ部に給電することで,回転ヒ ンジ部に接続された上部きょう体全体を励振させてい る.折り畳み式携帯電話を開いた状態の長さは一般に20cm
程度以上であり,800MHz
帯の半波長ダイポー ルとして動作させることができる.また,きょう体が 板状の導電体として動作し,電流経路が複数あること で広帯域特性を得ることができる.本構成は,2GHz
帯では1
波長のダイポールとして動作可能であるため,マルチバンドアンテナが実現可能である.更に,きょ う体全体を大きなアンテナ素子とすることで,図
7
右 図のように電流がきょう体全体に拡散されるため,人 が手にもったときの人体による特性劣化が少ないこと も特徴である.更に,本方式は,
400
〜770MHz
帯のDTV
用アン テナとしても有効であり,きょう体全体を励振させる ことで短縮型のダイポールアンテナとして動作し,比 較的高い放射抵抗を確保することができる.このため,折り畳み端末では伸縮式ホイップアンテナ無しでも端 末を開いただけで
TV
を視聴可能な内蔵アンテナを実 現している.3. 4
人体近接使用時の性能劣化改善近年のスマートフォンでは,通話時における頭部へ の
SAR
(Specific Absorption Rate
:比吸収率)への 配慮から,図4
のようにきょう体下部にセルラ用メイ ンアンテナが配置されることが一般的である.しかし ながら,手にもって使用することが多いモバイル通信 端末では,きょう体下部は手に覆われる可能性が高く,手に覆われても性能劣化の少ないアンテナが求めら
図7 きょう体ダイポールアンテナ Fig. 7 Chassis dipole antenna.
れる.
図
8
は,電磁界シミュレーションにより手に吸収さ れる電力を求め,放射特性が最も良くなるようにアン テナ構成を最適化した事例を示している.きょう体下 部を手にもった場合,きょう体エッジ部分が手のひら に近接することで,電力が手に吸収されているため,きょう体エッジ部分の電流を減らすようにアンテナ素 子を構成することで,手持ち性能の改善が可能である.
しかしながら,きょう体下部ではアンテナのために限 られた空間しか確保できないため,複数の周波数帯域 で理想的な電流分布を実現するにはアンテナ素子やグ ランド構成に工夫が必要である.図
8
の構成では,赤 色で示すアンテナ素子に近接して黄色で示す地線を導 入することで,きょう体エッジ部における手の吸収電 力を軽減している.人体近接時のアンテナ性能として,もう一つ考慮す べき使用状態に通話時がある.モバイル通信端末では スピーカーがきょう体上端部に設置されるため,通話 時には端末本体が人体頭部に密着して使用される.こ のため,人体頭部によるアンテナ放射特性の劣化が発 生し,これを抑えるための設計上の工夫が必要となる.
図
9(a)
は,セルラ用メインアンテナを800MHz
で励 振させたときにきょう体に流れるグランド電流を青矢 印で示しており,きょう体の下から上に向かって大き な電流が流れている様子が分かる.これは,800MHz
帯ではアンテナ素子の電気長が十分確保できないた め,きょう体励振によって動作していることが理由で ある[26]
.一方,人体頭部内には赤矢印のように上か ら下に向かって逆相電流が流れ,きょう体電流と相殺図8 手持ち性能に配慮したアンテナ構成 Fig. 8 Antenna structure for low coupling to the
users hand.
図9 頭部近接時性能に配慮したアンテナ構成 Fig. 9 Antenna structure for low coupling to the
users head.
されて放射特性を劣化させる原因となっている.そこ で,図
9(b)
のようにきょう体上端部の基板面上にλ/4
地線素子(図中Ground wire
)を配置し,図9(a)
に てきょう体長手方向に流れていたグランド電流を横手 方向にも流すことで,人体頭部内に発生する逆相電流 を軽減することができる.この地線素子は基板面の人体側に配置することでその効果が最大となるため,地 線を放射素子として利用する従来技術とは異なる方式 である.本方式を搭載することで,人体近接時のアン テナ利得が約
1dB
改善し,通話時の性能を向上させ ている.4.
新たな技術的課題と開発の方向性4. 1
周波数切り替えアンテナ第
4
世代セルラシステムであるLTE
(Long Term Evolution
)では運用周波数が700MHz
〜2.6GHz
帯 と幅広く,今後は更に拡大する傾向であるため,これ らを一つのアンテナ素子でカバーするのが困難になっ てきている.そこで,アンテナ整合回路に半導体ス イッチや可変容量を追加し,共振周波数を切り替える 技術が注目されている[5], [27]
.従来の共振周波数切 り替えアンテナは,人体近接時などのアンテナイン ピーダンスのずれを補償する手段としてアダプティブ にインピーダンス制御を行う手法が提案されている が,構成や制御方法が複雑であり,実用化には適さな かった[28]
.そこで,より簡易な構成と制御方法によ り,周波数切り替えを行う方式が必要となる.図
10(a)
はSPDT
(Single-Pole/Double-Throw
) スイッチによってアンテナ整合回路の特定の定数を 切り替える周波数切り替え回路の構成である.本構成 では,Low
バンド用のアンテナ素子とHigh
バンド用 のアンテナ素子の二つのアンテナ素子の間に集中定数 を配置し,SPDT
スイッチによって定数を切り替える 構成としている.図
10(b)
は,集中定数を18pF
,6pF
,0.2pF
の3
段 階に切り替えたときのインピーダンス変化であり,い ずれかの定数を選択することで網掛けで示す運用帯域 をカバーできている様子が分かる.なお,切り替え回 路を整合回路内に配置する構成も考えられるが,この 場合,Low
バンドとHigh
バンドの両方の素子に対し て切り替え回路が機能してしまうため,キャリアアグ リゲーション[29]
のように複数の周波数を同時に使用 したい場合に設計が難しくなる課題がある.図10(a)
のように,周波数切り替え回路をLow
バンド素子の 根元に配置する構成であれば,主にLow
バンドの周 波数が変化し,High
バンド側の変化量を抑えること が可能となるため,キャリアアグリゲーション時にも 有効な構成である.4. 2
デカップリング技術より高い伝送容量を実現する
MIMO
技術は,端末図10 周波数切り替えアンテナ Fig. 10 Frequency switching antenna system.
設計にとってはアンテナ素子数の増加が課題であると ともに,アンテナ素子間の結合状態によって性能が大 きく左右される.同一周波数帯域で動作するアンテナ 素子を小型な端末きょう体内に近接して配置させると,
互いに結合して放射効率の低下や相関係数の増加を招 くため,目論見どおりの伝送容量が得られなくなる.
そこで,アンテナ素子間に互いの結合をキャンセルさ せる集中定数回路を装荷することで,アンテナ素子を 近接して配置しても結合を低減させるデカップリング 手法が有効である
[30]
.しかしながら,アンテナ素子 間に配置するデカップリングのための集中定数回路に は電流が集中して損失が発生するとともに,アンテナ 素子の根元に入れる移相回路を複数周波数に対応させ ることが難しい[31]
.図
11
は,移相回路を配置しなくてもデカップリン グを実現した構成であり,アンテナ素子に分岐構造を 取り入れることでマルチバンドに対応している[32]
. 本構成では,アンテナ素子に図5(c)
で示した分岐素 子を用い,更に並列共振回路をアンテナ間に配置する ことで900MHz
と1.7GHz
と2.6GHz
の三つの動作 周波数でデカップリングを実現している.2
本の分岐 素子は動作周波数から意図的にずらした1.3GHz
と2.3GHz
で自己共振する長さに調整されており,三つの動作周波数では
Y
120
となるように工夫してい る.図12
のS
パラメータで示すとおり,本構成によ図11 分岐素子を用いた多周波数デカップリング Fig. 11 Multi-band decoupling using branch shape
elements.
り
900MHz
と1.7GHz
と2.6GHz
でS
12が下がって おり,低結合化が実現できている様子が分かる.また,最終的にはアンテナの根元に整合回路を配置すること で,図
13
のように三つの動作周波数で整合とでデカッ プリングを両立させている.また,図
11
の分岐素子は,アンテナ素子間の集中 定数が無くてもアンテナ素子の形状だけでデカップリ ングができるという特徴がある[33]
.図14
は近接配置 した二つのアンテナの電流経路のイメージを示してお り,(a)
集中定数無し,(b)
集中定数有り,(c)
デカッ プリングを分岐素子で行った場合,を比較している.Port1
を励振した場合の電流経路は点線で,Port2
を 励振した場合の電流経路は実線で表現している.集中 定数を配置しない図14(a)
では,アンテナ素子全体に 電流が流れるが,キャパシタンスを装荷した図14(b)
では互いのアンテナ素子に電気長がキャパシタンスに よって短縮された経路分の電流が流れ込むと考えるこ とができる.図14(c)
の分岐構造でも,図14(b)
と同 様な電流分布形状を実現することができ,このことで キャパシタンス無しでも低結合化を実現できる.このように,モバイル通信端末の多機能化に伴うア ンテナ数の増加と,更なる高密度化に対応するには,
結合対策であるデカップリング技術が有効であり,ア ンテナ素子の形状や配置を含めた最適化を行うことで 性能を確保したまま更なる小形化が可能である.
4. 3
ウェアラブル端末用3
軸アンテナ次世代のモバイル通信端末の運用の形として,常に 身につけて使用できるウェアラブル端末が注目されて いる
[34]
.例えば腕時計型ウェアラブル通信端末では,人体の動きに応じて端末の傾きが大きく変化するた め,到来波と端末アンテナの偏波の不整合が生じやす
図12 デカップリング時のSパラメータ Fig. 12 S parameter under decoupling condition.
図13 インピーダンス整合後のSパラメータ Fig. 13 S parameter under decoupling & matching
condition.
図14 分岐素子によるデカップリング Fig. 14 Decoupling using branch element.
く,通信の安定性が損なわれることが懸念される.ま た,第
5
世代の移動通信システムでは,超高速大容量 通信を実現するため,ヘテロジーニアスネットワーク セルと呼ばれるマクロセルとスモールセルのオーバレ イ構造が進み,基地局と端末との距離が近くなり直接 波の影響を強く受けることで,到来波のXPR
(Cross Polarization Ratio
:交差偏波比)が大きく変化する.このため,最適な通信性能を得るためには端末アンテ ナの偏波特性を,場所と人体の動きに合わせて変化す る
XPR
に応じて制御する必要がある.そこで偏波の 整合性に注目し,3
軸の偏波に対応したアンテナのう図15 ウェアラブル端末のユースケース Fig. 15 Use case of Wearable Terminal.
ちの二つの素子を選択し,更にウエイトを制御して通 信性能を向上させる技術について検討が進められてい る
[35]
.図
15
は腕に装着したウェアラブル端末のユースケー スの一例である.図15(a)
は立ち止まって腕装着端末 を見るようなブラウジング姿勢,図15(b)
は歩行時に 腕を振りながらデータをダウンロードするような腕振 り歩行時の状態である.このように腕に装着するウェ アラブル端末では,ユーザの使用状態によって,端末 の傾きが大きく変化するため,アンテナの偏波を到来 波の偏波にできる限り合わせるための工夫が必要と なる.図
16
は,小形な3
軸アンテナとして開発されている パッチ付き円板装荷モノポールアンテナDLMP
(Disk- Loaded Monopole Stacked with Patch Antenna
)の 構造である[36]
.本アンテナは,水平偏波用に厚さ2mm
のマイクロストリップパッチアンテナを,垂直 偏波用に円板装荷モノポールアンテナ[37]
を使用する ことで,低姿勢な構造でxyz
の3
軸方向からの到来 偏波に対応している.グランド板上のアンテナにて垂 直偏波成分を確保するためには,通常はグランド板か ら十分なアンテナ高が必要となるが,DLMP
は高さ12mm
(2GHz
帯で0.08
波長)と非常に低姿勢である ことが特徴である.DLMP
への給電はGND
面との 間に配置したPort1
から行い,入力インピーダンス は,給電部を折返し構造とし,ステップアップ比(ρ
1:ρ
2)を変えることで50Ω
に整合させる工夫を行ってい る[38]
.図
17
はDLMP
の2GHz
における放射指向性であ る.Port1
の円板装荷モノポールアンテナを励振した 図17(a)
では,z
軸に沿った垂直偏波成分であるE θ
成分が仰角60
度方向に強く放射されているが,E φ
成 分は非常に小さい.一方,図17(b)
及び図17(c)
では,図16 パッチ付き円板装荷モノポールアンテナDLMP Fig. 16 Structure of the Disk-Loaded Monopole
Stacked with Patch Antenna.
図17 DLMPの2GHzにおける放射指向性 Fig. 17 Radiation Patterns of DLMP at 2GHz.
それぞれ
y
軸及びx
軸に沿った水平偏波成分が得られ ており,三つの給電ポートで偏波方向の異なる指向性 が得られている.本アンテナでは,互いの指向性がほ ぼ直交することで,小形なサイズながら低結合に動作 しており到来波との偏波の整合性が高いアンテナが実 現できる.5.
む す び本論文では,商用モバイル通信端末アンテナの設計 における課題とその解決技術について述べた.商用携 帯電話端末アンテナの小形高機能化を表す指標として アンテナ高密度化指数を定義し,この
10
年の間に0.4
から
7.4[
機能/cc]
に高密度化されていることを示した.端末の小型化のためには,アンテナ素子の小形化はも ちろん,複数システム共用アンテナや,きょう体ダイ ポールアンテナ,人体近接時の性能を高める工夫など,
商用端末特有の解決技術を導入することで性能とデザ イン性の両立を図ってきた.更に,将来のモバイル通 信端末の開発に向けたアンテナ技術として,キャリア アグリゲーションに対応した周波数切り替え技術,ア ンテナ素子形状を工夫したデカップリング技術,ウェ アラブル端末用
3
軸偏波アンテナの開発事例を示した.ユーザの使用形態の変化に合わせて,ストレート形 状の携帯電話が折り畳み形状に,そしてスマートフォ ンと呼ばれる大画面の端末に進化したように,今後も 新しい形状のモバイル通信端末が登場することが予想 される.
4.3
で紹介したウェアラブル端末のように,常に身につけて使用されるモバイル通信端末では,ア ンテナの更なる高密度化と性能の向上が望まれるが,
機器を人体に密着させても
SAR
が低く,十分な利得 が確保できる小形アンテナは,現時点では非常にハー ドルが高い技術である.しかしながら,本論文で述べ たような商用端末アンテナ技術が数々の困難を乗り越 えて生み出されてきたように,アンテナとアンテナを 取り巻く各種の技術革新が進むことで,人々が安心安 全に通信を行うことのできる次世代のモバイル通信端 末が実現できるものと確信している.謝辞 本研究の一部は平成
26
年度総務省戦略的情報 通信研究開発推進制度(SCOPE)
課題番号:145005101
により行っている.また,本論文をまとめるにあたり,貴重なコメントを頂いた森下久防衛大学校教授に感謝 する.
文 献
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(平成27年1月6日受付,4月16日再受付)
小柳 芳雄 (正員)
平元電通大・電気通信・応用電子卒.同 年松下通信工業(株)入社.以来,ディジ タル携帯電話を中心とした移動無線通信機 用小形アンテナ,端末用MIMOアンテナ,
人体と電磁波の相互影響の研究に従事.平 15千葉大大学院博士後期課程修了.現在,
パナソニック(株)AVCネットワークス社イノベーションセ ンター課長.工博.IEEE会員.