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J-STAGE Advance Published Date:July 7,2012 Original Article スポーツチームにおける集団効力感と チームパフォーマンスの関係の種目間検討 An Investigation of the Chan

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Academic year: 2021

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全文

(1)

スポーツチームにおける集団効力感と

チームパフォーマンスの関係の種目間検討

河津慶太

1)

・杉山佳生

2)

・中須賀巧

3)

Keita Kawazu

1

, Yoshio Sugiyama

2

and Takumi Nakasuga

3

Abstract

The purpose of this article is to evaluate the collective efficacy of sport teams and to investigate whether the relationships among collective efficacy, the behavior of sportspersons during a game, and team performance differs depending on the type of sporting event. Hence, we developed and examined a scale of efficacy to measure the above relationships in the first part of the study and applied this instrument in the second part of the study. The results of the first part of the study indicated that our scale consisted of 10 items with one common factor and had internal consistency, stability, construct validity, and criterion-related validity. In the second part of the study, we conducted a simultaneous analysis of several groups in order to investigate the above relationships. The results showed that the relationships among collective efficacy, the behavior of sportspersons during a game, and team performance differed depending on the type of sporting event. From these results, we inferred that the impact of different sporting events should be considered while examining the effects of collective efficacy on team performance.

Key words: group process, team work, sport team, team efficacy, team performance

1) 財団法人 福岡市体育協会 〒812-0045 福岡県福岡市博多区東公園8番2号 2) 九州大学健康科学センター 〒816-8580 福岡県春日市春日公園6丁目-1 健康科学セン ター 3) 九州大学大学院 〒816-8580 福岡県春日市春日公園6丁目-1 健康科学セン ター 連絡先:河津慶太 E-mail: [email protected]

1 Fukuoka Amateur Sports Association

8-2, Higashi-Koen, Hakata Ward, Fukuoka City, Fukuoka, 812-0045

2 Institute of Health Science of Kyushu University 6-1, Kasuga-Koen, Kasuga City, Fukuoka, 816-8580 3 Graduate School of Kyushu University

6-1, Kasuga-Koen, Kasuga City, Fukuoka, 816-8580 Corresponding author: Keita Kawazu

An Investigation of the Changing Relationship between the Collective Efficacy

and Team Performance of a Sport Team for Different Sporting Events

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序 競技スポーツの現場では,近年メンタルト レーニングが普及し,オリンピック選手やプロ 選手はもちろん,中学生から大学,社会人など の一般の競技者にまで導入されてきている(石 井,2010).メンタルトレーニングは,主に選 手の心理的競技能力の向上,それに伴う実力発 揮が目的として実施される.実力発揮やそれに 伴うパフォーマンス向上のための,心理的要因 の一つとして自己効力感(self-efficacy)が挙げ られる(徳永,2007).自己効力感はBandura (1977)が提唱した社会心理学的な概念であ る.Bandura(1986)はスポーツ場面における 自己効力感について,「その行動を達成できる かどうか,あるいは,確実な成績を上げられる かどうかの確信」と定義している.スポーツ心 理学の約30年にわたる研究で,自己効力感はパ フォーマンスに関連するもっとも強力な概念の 1 つとして定着してきた(ハガー・ハヅィザラ ンティス,2007).実際に自己効力感がパフォー マンスに及ぼす影響を検討した研究(Kavussanu et al., 1998;Martin and Gill, 1995;Theodorakis, 1995)では,自己効力感はパフォーマンスを予 測する強力な因子であることが示されてきた. ところで,Bandura(1997)は自己効力感を 集団レベルに拡張した集団効力感(collective efficacy)という概念を提唱しており,「課題の 達成に必要とされる行動を系統立て実行するた めの能力に対する集団で共有された信念」と定 義している.集団効力感は社会心理学領域の研 究から生まれた概念であるが,近年はスポーツ 心理学の分野でも注目されている.その中で, 概念定義もスポーツ場面に適する内容で再定義 された.例えば,Feltz and Lirgg(1998)は「一 定水準の課題達成を生み出すための共同の能力 に お い て 集 団 で 共 有 さ れ た 信 念 」,Short et al.(2005)は「特定の目標や基準に関連した, スポーツ課題の達成や集団の行動を生み出すた めのチームの能力について,チームに共有され た自信」としている.このように,集団効力感 は様々な研究領域においていくつかの定義がな されているが,永尾ほか(2010)によると,そ れらは総じて「チーム内における,集団に対す る有能感に関しての共有された信念」を表して いる.さらに,「ある特定の課題遂行のための 行動に関連する」ものであることも,集団効力 感を定義するにあたって一つの重要な点である と考えられる.そこで本研究においては,この 2 点を踏まえて,集団効力感の定義を「チーム 内における,ある特定の課題を達成するため の,行動を実行することに関連したチームの有 能感に関して,共有された信念」とする. さらに,Bandura(1997)の「collective efficacy」 の訳語としては様々な呼称が用いられている. 永尾ほか(2010)によると「集団効力感」,「集 合効力感」,「集合的効力感」などが用いられて いるが,どの研究においてもBandura(1997) や,Banduraの定義とほぼ同義であるZaccaro et al.(1995)の定義に準じており,定義の内容は ほぼ同義である.本研究においては,多くの呼 称がある中で最もよく用いられており,さらに スポーツ心理学事典でも用いられている「集団 効力感」という訳語を用いることとする. チームスポーツにおいては,個人レベルだけ でなく集団レベルでの心理的要因が重要である と考えられている(猪俣ほか,1991)ので,集 団効力感はチームパフォーマンスを予測する集 団レベルの要因として重要視されている.実際 に集団効力感とチームパフォーマンスの関係を 検 証 し た 研 究 で は, 集 団 効 力 感 が チ ー ム パ フォーマンスに影響するという結果がえられて いる(Chaw and Feltz, 2008;Feltz and Lirgg, 1998; Gully et al, 2002). 集団効力感を提唱したBandura(1997)は, メンバー個人から集団効力感を評価するため に.2 つのアプローチを勧めている. 1 つは, メンバー個人がチーム内で機能するための,自 分自身の能力についての信念(いわゆる自己効 力感)を評価し,それを総計してチームレベル の変数としたものである.Bandura(1997)に よれば,チーム内での個人の自己効力感信念 は,所属するチームの相互作用によっても規定 されているので,個人の自己効力感評価は,平

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均値を出すなどしてチームの値にすることがで き,チームの集団効力感の評価として扱うこと

ができる.もう1 つは,所属するチーム全体の

能力についての,メンバー個人が持つ信念を評 価し,それを総計してチームレベルの変数とし たものである.Feltz and Lirgg(1998)の研究 では,チーム全体の能力についての評価を総計 した変数の方が,自己効力感を総計したものよ り,パフォーマンスを予測することが明らかに されている.集団効力感研究においては,この ような集団レベルで検討している研究が数多く 行われている(Feltz and Lirgg, 1998;Prussia and Kinicki, 1996). このように,スポーツ心理学の分野におい て,集団効力感研究は盛んに行われているが, これまでの集団効力感研究の多くは,対象の競 技を1 つにしぼったものであり,集団効力感尺 度やチームパフォーマンス得点も,その競技独 特の項目内容になっている(たとえばFeltz and Lirgg, 1998;Myers et al., 2004;Myers et al., 2007;芹澤ほか,2008)ので,いまだ競技種目 間で集団効力感の比較検討をした研究は十分に 行われていない.しかしながら,Chaw and Feltz (2008)が主張するように,競技特性が集団効 力感に影響を及ぼすこと,さらにはそのチーム パフォーマンスとの関係に影響を及ぼすことは 十分に考えられる.今後はこの点を考慮した研 究が必要となるだろう. 一方,わが国の集団効力感研究に目を向ける と,競技スポーツ場面においてわずかに研究が 行われているが(尼崎・清水,2009;荒井, 2011;芹澤ほか,2008),チームパフォーマン スとの関係を実証した研究はない.その一つの 理由として,チーム単位でのデータ収集の困難 さが考えられる.しかしながら,チームを対象 としてそのパフォーマンスと集団効力感の関係 などを検討するためには,どちらもチーム単位 のデータを用いて検討することが,最も妥当で あると考えられる.また集団効力感の評価尺度 の作成(芹澤ほか,2008)も行われてはいる が,対象とする範囲が「男子高校生の野球部員」 など,非常に狭いものであった.荒井(2011) はこの点を指摘し,広い範囲を対象とした評価 尺度の必要性を述べている.以上のことに鑑み るに,わが国の競技スポーツ場面における集団 効力感研究を発展させるためには,チームパ フォーマンスとの関係を実証すること,そのた めにチーム単位のデータを用いた検討を行うこ と,汎用性のある評価尺度を開発することが求 められる.さらに,わが国に限らず,競技種目 間の比較検討を行うことが研究分野発展のため に求められる. そこで本研究では,一つの競技に特化せず, 集団競技スポーツのチームを対象として,チー ムの集団効力感を評価し,チームパフォーマン スとの関係を,集団レベルで検討することを目 的とした.具体的には,研究1 で本研究におけ る集団効力感尺度を準備し,研究2 でチームご とに個人メンバーの集団効力感尺度の得点を平 均したものを用いて(すなわち,チームを1 つ のサンプルとして捉えて),集団効力感とチー ムパフォーマンスの関係を検討する.また,集 団効力感とチームパフォーマンスの関係が,競 技種目によって異なるのかも同時に検証する. 研究1 1 つの競技に特化しない,スポーツチームを対 象とした集団効力感の測定尺度としてCollective Efficacy Questionnaire for Sports(CEQS:Short et al., 2005)がある.CEQSは,直近の試合や 大会において,「相手チームに勝つことができる」 や「プレッシャーの中でもいつも通りプレーす ることができる」など,競技活動の中でも,試 合場面における,課題に関連したメンバー全体 の行動に焦点を当てたものである.加えて,そ れまでの特定のスポーツのみを対象にした研究 では行われなかった,様々なスポーツでの集団 効力感の測定を目的として開発されており,本 研究の目的である,汎用性の高い尺度の準備に 沿うと考えられる.しかしながら,項目は20項 目あり,実際に調査を行うとき調査対象者に対 して負担となる可能性も考えられる.そこで研 究1 では,CEQSを基にしてより簡便な尺度を 作成し,本研究で使用するために,因子構造,

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内的整合性,安定性次元の信頼性,構成概念妥 当性,併存的妥当性を検討した.併存的妥当性 を検証するための外部基準には,集団環境質問 紙(Group Environment Questionnaire, GEQ; Carron et al., 1985)の翻訳版(磯貝ほか,1988) を使用した. 1.方法 1)調査対象者 (1)探索的因子分析および検証的因子分析 九州地区および関東地区の5 大学の集団競技 運動部20チームに所属する選手を対象に調査を 実施した.回収された調査用紙は325名分で, その内記入漏れや記入ミスのあったものを除い た299名(男性244名,女性55名;平均年齢20.2 ±0.92歳)を調査対象とした.有効回答率は92% であった. (2)併存的妥当性,安定性次元の信頼性の検証 九州地区および関西地区の4 大学の集団競技 運動部8 チームに所属する選手を対象に調査を 実施した.回収された調査用紙は69名分で,そ の内記入漏れや記入ミスのあったものを除いた 66名( 男 性51名, 女 性15名; 平 均 年 齢20.1± 0.96歳)を分析対象とした.有効回答率は95% であった.またこの66名のうち,九州地区およ び関西地区の4 大学の集団競技運動部 8 チーム に所属する選手40名(男性27名,女性13名;平 均年齢20.1±1.00歳)が再検査法での対象であっ た.再検査法での有効回答率は100%であった. 2 回の調査を通して,対象とした競技種目は, 野球,サッカー,ラクロス,ソフトボール,バ スケットボール,バレーボール,ハンドボー ル,アメリカンフットボールの8 種目で,これ らはすべて,競技中選手間に複雑な相互作用を 必要とする競技種目である. 2)調査内容 (1)スポーツ用集団効力感質問紙 Short et al.(2005)が作成した,CEQSを邦 訳して使用した.CEQSは 5 因子20項目からな る質問紙である.邦訳は,スポーツ心理学を専 門とする大学教員1 名と,運動心理学,スポー ツ心理学を専門とする大学院生4 名との合議に よって邦訳を行い,その後,英語に精通する大 学教員によって,邦訳版をバックトランスレー ションし,そのうえで邦訳が適切が合議した. 教示文には「試合で,あなたのチームは」と明 記した.回答は「1 :まったく自信がない」か ら「6:非常に自信がある」の 6 件法で求めた. (2)集団環境質問紙(Group Environment Questionnaire, GEQ;Carron et al., 1985) GEQは集団凝集性概念を 4 つの因子から測 定する尺度であり,その4 因子とは,チーム内 の個人が,他メンバーとの人間関係にどの程度 魅力を感じているかを表す「個人が感じる集団 の魅力−社会凝集(ATG-S)」,チーム内の個 人が,所属チームの課題遂行能力にどの程度魅 力を感じているかを表す「個人が感じる集団の 魅力−課題凝集(ATG-T)」,所属チームがど の程度人間関係に関することでまとまっている かを表す「集団の統一感−社会凝集(GI-S)」, 所属チームがどの程度課題遂行に向かってまと まっているかを表す「集団の統一感 ― 課題凝 集(GI-T)」である.また,Caron et al. (1985) によって,尺度の信頼性と妥当性も確認されて いる.回答は「1 :まったく違う」から「 9 : まったくその通りだ」の9 件法で求めた.実際 には,磯貝ほか(1988)の作成した邦訳版を用 いた.この邦訳版に関しても磯貝ほか(1988) の研究から,尺度の信頼性,妥当性が確認でき る. 3)調査手順 はじめに,対象となった大学運動部の責任者 に研究趣旨を説明した後,調査協力の了解を得 て,質問紙を手渡しや郵送で配布した.質問紙 の表紙に研究趣旨,調査内容の処理方法,個人 データの守秘,調査協力の任意性について明記 した上で,同意した者のみ質問紙に回答しても らった.回答された質問紙は,他者の目に触れ ないよう,同封した返信用封筒に厳封し,手渡 しや郵送にて回収した.調査時期は2009年 6 月 −2010年 4 月であった. 4)分析方法 (1)探索的因子分析および検証的因子分析 CEQS20項目を邦訳したものに対して,主因

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子法・プロマックス回転による探索的因子分析 を実施した.また,本尺度の内的整合性を検証 するために,α係数を算出した.その後,構成 概念妥当性を検証するために,検証的因子分析 を実施した.分析にはSPSS ver.18,Amos ver.18 を使用した. (2)併存的妥当性,安定性次元の信頼性の検証 尺度の併存的妥当性を検証するために,外部 基準にGEQをもうけ,「 1 :本尺度とGEQの尺 度得点の間には有意な相関関係がある.2 :本 尺度の各下位尺度の得点は,GEQの下位尺度 の中でも,GI-Tの得点との相関が最も高くな る.3 :本尺度の各下位尺度において,GEQの 各下位尺度との相関係数は,ATG-T>ATG-S, GI-T>GI-Sになる.」という仮説を設定し,検証 した.仮説設定の理由は以下のとおりである. Carron et al.(2005)によると,集団凝集性は スポーツチームにおけるグループダイナミクス の極めて重要なものとして位置づけられてお り,ハガー・ハヅィザランティス(2005)は, 集団効力感を含む様々な集団プロセスに広範な 影響を与えるものと主張している.このよう に,集団凝集性と集団効力感の間にポジティブ な関係があると考えられることから,仮説1 が 設定された.また,CEQSを作成したShort et al.(2005)の研究では,GEQの中でも,GI-T は集団と課題達成を考慮した因子となっている ことから,集団効力感と最も関係があると考え られていた.実際,CEQSのすべての下位尺度 において,GI-Tとの相関が最も高かった.さら に,CEQSのスペイン語版を作成したMartínez et al.(2011)の研究では,CEQSのすべての下 位尺度において,GEQの各下位尺度との相関 係数は,ATG-T>ATG-S,GI-T>GI-Sとなった. これは,CEQSが課題達成に焦点を置いていた ことから十分に予測できる.これらを踏まえて, 仮説2 と 3 が設定された. また,安定性次元の信頼性を検証するため に,再検査法による前後の調査での下位尺度得 点の相関係数を算出した. 2.結果 1)探索的因子分析および検証的因子分析 邦訳した20項目に対しての探索的因子分析の 結果,第1 因子が固有値11.68で,第 2 因子以 下は固有値1 未満であり, 1 因子構造であると 判断した.オリジナルの5 因子構造はみられな かった.また本研究の目的である,簡便な尺度 の作成のために,項目を10に減らした.項目は 因子負荷量の大きいものから選んだ.その際, 項目の内容が偏らないように,オリジナルの5 因子それぞれから2 つだけ選んだ.最終的に 残った項目は表1 に記す.尺度の内的整合性を 示すα係数は.94であり,本尺度が高い内的整 合性を有することが示された.また,CEQSを 邦訳した20項目の合計得点と本尺度の合計得点 との相関係数はr=.98( p<.01)であった(表 1 ).このことからも,集団効力感を測定する 尺度として問題のないことが確認された.本尺 度の構成概念妥当性を検討するために検証的因 子分析を行った.その際項目15と 5 は比較的類 似した内容を表していることから,誤差間に相 関を引いた.その結果,適合度指標はGFI=.953, AGFI=.925,CFI=.980,RMSEA=.064であった. この結果は,豊田(2008)によって示されている 適合度指標の判断基準(GFI,AGFI,CFIは.90 以上,RMSEAは.10より小さい)を十分に満た すものであり,本尺度の構成概念妥当性が確認 された.各項目のパス係数は.70−.85であった (図1 ). 2)併存的妥当性,安定性次元の信頼性の検証 妥当性および信頼性の検証は,本尺度の合計 得点を扱った.本尺度の合計得点とGEQの合 計得点および4 つの下位尺度得点との相関は表 2 のとおりである.GEQの各因子の下位尺度 得点と本尺度の合計得点との間には,相関係数 r=.36−.69( p<.01)の範囲ですべての因子の 下位尺度得点と有意な相関がみられた.相関係 数の大きさを比べてみると,ATG-Tとの相関係 数はATG-Sとの相関係数よりも高く,GI-Tとの 相関係数はGI-Sとの相関係数よりも高かった. さらにGI-Tとの相関係数が最も高かった.この ように,本研究で設定した仮説通りの結果が得

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表1 集団効力感尺度項目一覧 固有値 寄与率(%) チャンスがほとんど無いような時でも,試合に集中できる α 係数 試合に向けての準備を整えることができる 努力をおしまずプレーできる 試合のためにメンタル面を整えることができる 一致団結できる 相手チームよりも良いプレーができる 相手チームよりも実力を発揮できる 困難な状況にあっても,持ちこたえることができる 問題を解決できる CEQS日本語訳版20項目の合計得点との相関係数 因子負荷量 項目内容 共通性 チームに起こる様々な障害を乗り越えることができる 図1 集団効力感の検証的因子分析結果

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られ,尺度の併存的妥当性が確認された.また 本尺度の調査−再調査間の相関係数(安定性) はr=.74( p<.01)であり,尺度の安定性が示 された. 3.考察 1)尺度の因子構造について 結果から,本研究において,Short et al.(2005) が報告した5 因子構造は見られなかった.しか しながら,Short et al.(2005)の研究では, 5 つの下位尺度得点間の相関係数は,r=.62−.88 であり,因子間に中程度から非常に高い相関が あると考えられる.さらに各下位尺度得点と尺 度の合計得点の相関係数は,r=.84−.95と非常 に高い値であった.スペイン語版CEQSを作成 したMartínez et al.(2011)の研究においても, これと同様の結果がみられる.さらに,Short et al.(2005)は集団効力感を多因子構造であ ると主張しているが,CEQSの因子構造は探索 的因子分析によってえられたものであり,必ず しも概念的な根拠があったわけではない.実際 多くの研究で集団効力感は単一因子モデルで測 定されている事実が存在する(Myers and Feltz, 2007).これらを踏まえて,本研究においては 1 因子構造をそのまま採用することとした.実 際にShort et al.(2005)が,尺度の合計得点か もしくは5 つの下位尺度得点を集団効力感尺度 として使用できると主張しており,当該論文の 中で,未公刊ではあるが,野球選手を対象とし たCEQSの合計得点と,CEQS以前の 1 つの競 技に特化した集団効力感質問紙の合計得点との 間に強い相関関係があったことを報告してい る.以上に鑑み,本研究においても尺度の合計 得点を集団効力感得点とした. また本研究においては,尺度をより簡便にす るために項目を10に削減した.その結果得られ た尺度は,信頼性,妥当性を十分に有するもの であった.よって,本研究においては,研究1 の結果作成された尺度を,集団効力感尺度とし て用いることとした. 研究2 研究1 で準備された尺度を用いることで, 1 つの競技に特化しない集団効力感の指標をえる ことができた.研究2 では,集団効力感とチー ムパフォーマンスの関係を検討する. 集団競技運動部を対象とする本研究において は,チームパフォーマンスの指標に競技種目ご とに異なったパフォーマンス指標は用いること ができない,そこで,異なった競技種目間でも 共通する全日本選手権大会の結果を数値化して 用いた.また本研究では,もう一つのパフォー マンス指標として,チームメンバー全体の試合 中の行動にも着目した.これは,本研究におけ る集団効力感の定義や,本研究で作成された集 団効力感尺度が試合中の課題に関連する行動に 焦点を当てていることからもわかるように, 集団効力感は直接的には行動を予測するもので あると考えられるからである.このことから, 試合中の行動はチームパフォーマンスに先行す るという関係も考えられる. これまで,チームが遂行する課題の特性に よって左右される,所属メンバーの相互依存の 程度が,集団効力感とチームパフォーマンスの 関係に影響することが様々な研究で実証されて いる(Gully et al., 2002).しかしながら,集団 のサイズなど,その他のチームの特性や,競技 特性が集団効力感とチームパフォーマンスの関 表2 集団効力感尺度の合計得点とGEQの各因子得点との相関係数および安定性 **p<.01 n=66(再調査法はn=40) GEQ 合計との 相関 .61** 集団効力感尺度 合計得点 .74** .36** .63** .69** .41** 安定性 (r) 集団環境質問紙(GEQ)各因子との相関

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係にどのような影響を及ぼすのかは未だにあい まいなままである.このことを踏まえ,本研究 では,メンバーの相互依存の程度以外にも,ス ポーツチームにおける集団効力感とチームパ フォーマンスの関係に影響を及ぼすチームの特 性があるのか,検討を行った. 研究2 の分析対象について,本研究では, チームによって所属メンバーの人数に偏りが出 ることを考慮し,直接試合に関係すると考えら れる選手のみを対象とした.また,男子部,女 子部は区別しなかった.これは,男子選手と女 子選手の間に集団効力感の差異が認められな かったとする,荒井(2011)の報告に基づいて いる. 1.方法 1)調査対象者 2009年度の全日本大学選手権大会に出場する, 全国の42大学の集団競技運動部50チームを調査 対象とした.実際には対象チームに所属する個 人に対して質問紙調査を実施した.回収された 質問紙は1,317名分で,その内記入漏れや記入 ミスのあったものを除いた有効回答数は1,153 名分で,有効回答率は87%であった.対象と なった運動部の競技種目はサッカー,バスケッ トボール,バレーボール,ハンドボールの4 種 目で,これらは研究1 と同様,試合中,選手間 に複雑な相互作用が必要であるという点で共通 している.また,本研究では,直接試合に関わ る選手の尺度得点のみを用いてチーム平均を算 出するために,属性要因としてチームでの立場 ( 先 発 メ ン バ ー, 途 中 出 場 の 多 い 控 え メ ン バー,控えメンバー,その他)について質問し た.チームでの立場を「その他」としたメン バーは除外し,チーム平均を算出した.その 際,分析対象となったメンバーが,10人を下 回ったチームは分析から除外した.さらに,質 問紙への回答時期が,大会後になったチームに ついては,集団効力感に対する試合結果の影響 を考慮し,分析から除外した.最終的に,サッ カー5 チーム,バスケットボール14チーム,バ レーボール4 チーム,ハンドボール18チームの 計41チーム(男子26チーム,女子15チーム)が 分析対象となった.また,競技種目間の比較検 討には,対象が比較的多く集まり,同等のサン プル数が集まった,バスケットボール14チー ム,ハンドボール18チームに所属している, 466名(男性239名,女性227名;平均年齢20.3 ±1.18歳)の個人データを用いた. 2)調査内容 (1)属性要因 チーム内での立場について質問した. (2)集団効力感質問紙 研究1 で作成された,10項目からなる集団効 力感尺度を使用した.教示文には「試合で,あ なたのチームは」と明記した.回答は「1 : まったく自信がない」から「6 :非常に自信が ある」の6 件法で求めた.それぞれのチームに 所属する選手個人に回答を求め,その合計得点 をチームごとに平均した. (3)試合中の行動指標 チームパフォーマンスの指標の1 つとして, 試合中のチーム全体の行動について質問した. 質問項目は,「われわれのチームは」という 一文に続き,「決められた戦術をしっかり行っ ている」,「メンバーのプレーを予測して動いて いる」「チームを盛り上げるために声を出して いる」「ミスをして落ち込んでいるメンバーが いるときはげます」「メンバーの悪いプレーば かりに注目している(逆転項目)」の5 つで あった.回答は「1 :まったくあてはまらな い」から「6 :非常によくあてはまる」の 6 件 法で求めた.分析には5 つの質問項目の合計得 点を用いた.質問項目は,スポーツチームに所 属するコーチや監督,選手に対して行った,強 いチームの特徴についてのインタビューで収集 した発話,およびメンバーがチームのために任 意で行う行動に着目した組織市民行動(Smith et al., 1983)の概念とそれを測定する既存の尺 度(Podsakoff et al., 1997)を基に作成した.組 織市民行動は,組織・社会心理学の分野で数多 く研究が行われている.その中でチームのパ フォーマンスにも影響を与えるという報告がな されており(Podsakoff et al., 2000;Podsakoff

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4)分析方法 はじめに,個人データを平均してチームごと のデータにしても問題がないか,級内相関係 数,級内α係数を用いて検討した.その後, チームごとの集団効力感尺度の得点,試合中の 行動指標得点,大会結果得点の関連を,パス解 析によって検討した.さらにパス解析によって 得られたモデルが,競技種目間で異質なもので あるかどうかを検討するため,多母集団同時分 析を行った.分析には,HAD ver.8.44(清水ほ か,2006),Amos ver.18を用いた. 2.結果 1)級内相関係数,級内α係数 本研究で扱っているような,調査対象の個人 的なデータではあるが,それと同時に所属する 集団からも影響を受けていると考えられるデー タを階層的データと呼ぶ.このようなデータを 取り扱う場合,本研究のように同一集団内の データを平均して用いることがあるが,そう いった場合,前もってチーム内の得点の類似性 を検討することが必要になる.本研究では,清 水ほか(2006)のHADを用いて,集団効力感 および行動指標の級内相関係数,および級内α 係数を算出した.級内相関係数はチーム内での 尺度得点の類似性を,級内α係数はチーム内の 尺度得点を平均して問題ないかどうかを検討す るための指標となる(尾関,2007;清水ほか, 2006).分析の結果,級内相関係数は集団効力 感で.40( p<.01),行動指標で.23( p<.01),級 内α係数は集団効力感で.90,行動指標で.79で あった. 2)集団効力感,試合中の行動,大会結果の 関係 集団レベルのデータを用いて,集団効力感, 試合中の行動,大会結果の関係を検討した.各 変数の記述統計,単相関係数は表3 のとおりで ある.設定したモデルは,集団効力感を独立変 数として,パフォーマンス変数である,試合中 の行動と大会結果を従属変数としたものであ る.パス解析の結果は図2 のとおりである.モデ ルの適合度はGFI=.988,AGFI=.925,CFI=1.000, and Mackenzie, 1997),近年スポーツチームに も応用の可能性がみられる概念である.インタ ビューで得た発話の中から,試合中にみられる 行動であること,Podsakoff et al.(1997)の尺 度に含まれる組織市民行動の3 つの因子,(す なわちチーム内の特定のメンバーに対して援助 を行う「援助行動因子」,特定の誰かに対して ではなく,チーム全体に貢献する行動である 「市民の美徳因子」,チームの状況への選手の態 度を表す「スポーツマンシップ因子」)の内容 に当てはまること,を条件として項目を設定し た.結果として前述の5 つの項目を選定した. (4)大会結果 全日本選手権大会のトーナメント結果を数値 化して用いた.具体的には,トーナメントでベ スト32より低い成績は 1 点,ベスト32,16は 2 点,ベスト8 , 4 は 3 点,優勝,準優勝は 4 点 として得点化した. 3)調査手順 はじめに,対象となった大学運動部の責任者 に研究趣旨を説明した後,調査協力の了解を得 て,質問紙を手渡しや郵送で配布した.質問紙 の表紙に研究趣旨,調査内容の処理方法,個人 データの守秘,調査協力の任意性について明記 した上で,同意した者のみ質問紙に回答しても らった.回答された質問紙は,他者の目に触れ ないよう,同封した返信用封筒に厳封し,手渡 しや郵送にて回収した.調査時期は2009年 9 − 11月であった.また,回答は2009年度の全日本 大学選手権大会の2 週間前に郵送し,そこから 1 週間前までの間に回答を依頼した.この尺度 は,試合や大会での集団効力感について質問す るものであるので,試合後の回答は,試合の結 果が影響してしまう.さらに,目的とする2009 年度の全日本大学選手権大会についての集団効 力感を測定するには,できるだけ大会に近い時 に回答をしてもらう必要がある,しかしなが ら,前日の回答などは,選手やチームに負担を かけることになりかねないので,本研究におい ては1 週間前までというように回答の時期を限 定した.

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である.はじめに,各集団におけるモデルの適 合を確認したところ,バスケットボールでのモデ ルの適合度はGFI=1.000,AGFI=.999,CFI=1.000, RMSEA=.000,ハンドボールでのモデルの適合度 はGFI=.999,AGFI=.993,CFI=1.000,RMSEA=.000 であり,両群においてモデルの適合が良好であ ることが示された.各群でモデルの適合が確認 されたので,次にモデルの配置不変性を検討し た.その結果,配置不変モデル(等値制約な し)のモデル適合度はGFI=.999,AGFI=.995, CFI=1.000,RMSEA=.000であり,モデルの適 合は良好であった.モデルの配置不変性が確認 されたので,次に各推定値の集団間での差異を 検討した.その結果,集団効力感から大会結果 へのパスで有意差が認められた.最後に,パス 係数に等値制約を置いたモデルをいくつか設定 し,モデルにおける集団の異質性,等質性を検 討した.設定したモデルはモデル1 (配置不変 モデル),モデル2 (集団効力感から大会結果 へのパスに等値制約),モデル3 (集団効力感 から試合中の行動へのパスに等値制約),モデ ル4 ( 2 つのパスに等値制約)であった. 4 つ のモデルの適合度は表5 のとおりである. 表5 からモデル 3 の適合度が最も良好であっ た.モデル3 のパス図は図 3 のとおりである. この結果から,集団効力感がチームパフォーマ ンスに与える影響に関して競技種目間での異質 性を考慮することは妥当であると判断した. RMSEA=.000であり,基準を十分にみたす値 が得られたといえる.個別にパス係数をみると, 集団効力感から大会結果へのパス係数が.64, 試合中の行動へのパス係数が.82であった. 2 つ の従属変数のR2値は,大会結果でR2=.41,試合 中の行動でR2=.68であった. さらに,試合中の行動を独立変数,大会結果 を従属変数としたパス解析を行ったところ,パ ス係数が.59,R2=.34,( p<.001)という結果が えられた. 3)競技種目間のモデル比較 パス解析によって構築された,集団効力感, 試合中の行動,大会結果の関係モデルが,競技 種目間で異なるかどうか検討するために,多母 集団同時分析を行った.この分析においては, 個人データを用いることとし,バスケットボー ルとハンドボールの2 群間での比較を行った. バスケットボールとハンドボールそれぞれでの 各変数の記述統計,単相関係数は表4 のとおり 図2 集団効力感,試合中の行動,大会結果の関 係モデル 表3 集団効力感,試合中の行動,大会結果の記述統計および単相関係数 1 2 3 ― .82** ― .64** .59** ― 41.81 21.82 2.29 5.46 1.82 .68 1 集団効力感 2 試合中の行動 3 大会結果 平均値 標準偏差 **p<.01

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3.考察 1)集団効力感,試合中の行動,大会結果の 関係 本研究の特徴の一つは,大会結果と並行し て,試合中の行動をチームパフォーマンス変数 として用いている点にある.このように,行動 の側面に注目している例として,社会心理学の 分野におけるチームワーク研究がある.山口 (2008)は,チームワークに関する先行研究で 指摘されていることを整理し,「チームワーク とは,チーム全体の目標達成に必要な協働作業 図3 多母集団同時分析,モデル3 パス図 1 2 3 ― .72** ― .55** .42** ― 42.04 22.16 2.65 9.40 3.70 .70 1 集団効力感 2 試合中の行動 3 大会結果 平均値 標準偏差 **p<.01 注)上段がバスケットボール,下段がハンドボールでの表 1 2 3 ― .59** ― .28** .14* ― 41.33 21.91 2.18 7.26 3.34 .38 **p<.01,*p<.05 1 集団効力感 2 試合中の行動 3 大会結果 平均値 標準偏差 表4 バスケットボールおよびハンドボールでの各変数の記述統計と単相関係数 表5 多母集団同時分析,モデル別適合度指標

GFI AGFI CFI RMSEA AIC

モデル1 .999 .995 1.000 .000 20.538 モデル2 .966 .864 .942 .126 43.219 モデル3 .999 .996 1.000 .000 18.725 モデル4 .966 .897 .944 .107 41.407 注)モデル1 は配置不変モデル,モデル 2 は集団効力感から大会結果へのパスに等値制約を 置いたモデル,モデル3 は集団効力感から試合中の行動へのパスに等値制約を置いたモ デル,モデル4 は 2 つのパスに等値制約を置いたモデルをそれぞれ表している.

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の練習で,どれだけ効力感を高めて,チームの 勝利につながるような選手たちの行動を生起さ せられるかという部分である. さらに,試合中の行動を独立変数,大会結果 を従属変数としたパス解析を行ったところ,試 合中の行動が大会結果を説明するという結果が 得られた.これらの結果や,山口(2008)の チームワークの定義の中に見られる,心理が基 盤となって行動に至るという考え方を考慮する と,集団効力感が直接的にチームパフォーマン スに影響するのではなく,本研究で着目した行 動的な指標が媒介してチームパフォーマンスに 影響する可能性も十分に考えられる.今後チー ムパフォーマンス予測の精度を向上させるため に,これらの関係性も検討していくべきであ る. 2)競技種目間のモデル比較 モデルの競技種目間比較では,集団効力感と 大会結果の関係に競技種目間で差異がみられ た.しかし,集団効力感と試合中の行動に関し て差異はみられなかった. 今回,競技種目間比較を行ったのはハンド ボールとバスケットボールである.結果から, 両方の競技種目で集団効力感が試合中の行動と 大会結果に影響をおよぼしていることが示唆さ れたが,その影響の大きさには差があると考え られる.両競技種目ともに試合中に選手間の相 互作用がみられる種目であるので,集団効力感 のようなチームレベルの変数がチームパフォー マンスに影響を及ぼすであろうことは考えられ る.しかし,その影響の差はどのように説明で きるだろうか. 1 つの要因として集団サイズが影響するので はないだろうか.例えば,一般性には未解決の 領域が残されてはいるが,Latane(1981)の社 会的手抜きの実験では,集団のサイズが大きく なれば,社会的手抜きによるメンバーの努力量 の減少がより大きくなるという結果がみられ る.このようなことを踏まえると,ハンドボー ルの方が,試合人数が多いため,社会的手抜き が原因の努力量の減少が,より大きくなると考 えられる.さらに,集団効力感と社会的手抜き を支え,促進するためにメンバー間で交わされ る対人的相互作用であり,その行動の基盤とな る心理的変数も含む概念である.」とチーム ワークの定義づけを行っている.つまり,チー ムワークには心理的な側面と,行動的な側面が あると考えている.このような視点は,集団効 力感研究にも応用ができると考えられる.そも そも効力感信念は,特定の行動を成功裏にでき るかどうかという信念で,対象の行動を予測す るものである.このことを踏まえると,集団効 力感研究においても,チームの行動をチームパ フォーマンスとして従属変数に用いることは非 常に効果的であると考えられる. 分析の結果から,集団効力感は試合中の行動 をよりよく説明していた.本研究の対象となっ た対戦型の集団競技では,試合ごとの勝敗を左 右する外的で統制不可能な要素が存在する.例 えば,どんなに強いチームでも,より強いチー ムと対戦すれば負けてしまうように,相手の強 さというものは勝敗に強く影響するし,統制は 不可能である.トーナメントの大会であればそ のような要因がより強く働いてしまうだろう. このようなことから考えて,本研究の結果は妥 当であるといえるし,単純な勝敗だけを従属変 数とするのは,外的な要因の存在を考えれば不 十分であるといえる.従来の研究ではこの点を 踏まえて,勝敗以外の試合ごとのチーム成績 (たとえば,サッカーにおけるシュート数やバ スケットボールにおけるリバウンド数など)を パフォーマンスとして用いていたが,それでは 競技種目間の比較検討などが行えない.この点 から見ても行動に着目した本研究は意義のある ものである.さらに,行動に着目することは, 集団効力感研究の実践場面への応用の観点から も重要であるといえる.なぜなら,現場の視点 では,勝敗と集団効力感の関係ばかりが重要視 される傾向にあるが,実際にチーム作りをして いくうえでは,指導者は,チームの勝敗には直 接介入することができないからである.ひとた び試合が始まってしまえば,どんなにコーチン グしようとあとは選手たち次第である.指導者 が介入できるのは,あくまで試合が始まるまで

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の関係を調査したLichacz and Partington(1996) の研究では,集団効力感が高い対象者ほど社会 的手抜きによるパフォーマンス低下を示さな かった.すなわち,メンバーが多いほど,社会 的手抜きによるパフォーマンス低下は,大きく なることが予想されるが,その分集団効力感の 向上によって抑制されるパフォーマンスの低下 量も,大きくなると考えられる.このことか ら,試合人数の多いハンドボールの方が,より 集団効力感がチームパフォーマンスに影響する という結果に結びついたのではないだろうか. 両競技種目のルールや戦略の違いなども,影 響する可能性がある.バスケットボールでは, 能力の優れた1 人の選手をわざと孤立させて, 1 対 1 による得点を狙うプレーがあったり,得 点がハンドボールに比べて入りやすいため, エースの活躍だけで逆転したりすることが少な くない.以上のことを考慮すると,バスケット ボールはハンドボールに比べて個人の能力の影 響力が強くなる可能性も考えられる.このよう な,細かい戦術やルールの違いなども選手間の 相互作用の重要性に影響をおよぼし,結果とし て集団効力感とチームパフォーマンスの関係の 大きさに結びついてくる可能性がある. 総合論議 本研究では,スポーツチームを対象とした集 団効力感の競技種目間比較を可能にするよう な,汎用性の高い簡便な集団効力感尺度が作成 された.さらに,集団効力感とチームパフォー マンスとの関係を検討する際,チームメンバー の行動に注目することの有用性を示した.最後 に,競技種目間比較の分析からは,集団効力感 からチームパフォーマンスに及ぼす影響の強さ に競技種目間で差がある可能性を示した. 本研究で得られたこのような知見は,わが国 における集団効力感研究の発展に大いに貢献で きるものである.しかしながら,本研究の限界 点もいくつかある.その一つとして,大会結果 以外の,質問項目のすべてが横断的にとられた ものであるということが挙げられる.このよう な点を踏まえると,論理的には集団効力感と試 合中の行動の間に因果関係が成り立つとはい え,因果関係を証明するのに十分なデータとは いえない.もう一つは,本研究で用いた行動指 標について,すべてメンバー個人の認知的な評 価であるというところも,評価法の妥当性の観 点から,さらに検討を加えるべきところであ る.さらに,本研究では対象が大学生のみであ るため,作成された尺度は大学生の競技者のみ を対象としたものである.今後は,その他の年 代にも適用範囲を広げていく必要があるだろ う.加えて,本研究で用いたチームパフォーマ ンス評価方法も限界点の一つと考えられる.本 研究で行った評価方法は,異なった競技種目間 の中でも用いることができるチームパフォーマ ンス評価方法の一つであると考えられる.しか しながら,競技ごとの競技人口やチーム数の違 いを考えると,最適な方法とは言い切ることは できない.このように,チームパフォーマンス の評価方法については,今後集団研究の中でも 特に議論がされるべき課題であるといえよう. 最後にデータの分析法についても言及する. 近年の階層的データに対する分析法の発展によ り,集団効力感研究においても新たなデータ分 析法としてマルチレベル分析が提案されてい る.階層的データとは,スポーツチームや,学 校のクラスなどを対象とした,調査対象の個人 的なデータではあるが,それと同時に所属する 集団からも影響を受けていると考えられるデー タのことをいう.スポーツチームを対象として いる集団効力感研究でえられるデータも階層的 な構造を持つと考えられる.マルチレベル分析 は,階層的データにおける,調査対象の独自性 と集団から影響を受けることによるデータの類 似性を適切に分析モデルの中で取り扱っており (内田ほか,2011),集団効力感研究への適用の 有効性が主張されている(Watson et al., 2001). 今後,このような分析法を用いて,研究をすす めていく必要があるかもしれない. 謝  辞 アンケート調査にご協力いただいた,各チームの監 督,コーチおよび選手の皆様に心よりお礼申し上げま

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す.また,貴重なご指摘を数多く示してくださった査 読者の皆様にも,心よりお礼申し上げます. 文  献 尼崎光洋・清水安夫(2009)高校野球部員を対象とし た集団効力感の研究:集団凝集性および部活動スト レッサーとの関連による検討.学校メンタルヘル ス,11:23-31. 荒井弘和(2011)競技者における心理的パフォーマン スに対するコレクティブ・エフィカシーとその関連 要因.体育学研究,56:229-238.

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参照

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