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資 料 通院がん患者の支援に対する外来看護師と * 他職種 他部門との連携の実態 ** ** 佐藤三穂, 鷲見尚己 ** 北海道大学大学院保健科学研究院基盤看護学分野 Key words: 通院がん患者, 連携, 外来看護師, がん診療連携拠点病院, カンファレンス (cancer outpatie

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Ⅰ.緒 言

 病院の機能分化,診療報酬の改定を背景に,国の施策 として早期退院促進が図られている.その結果,平均在 院日数は著しく短縮化し,施設医療から在宅医療への移 行が推進されている.特にがん医療の分野においては, 外来化学療法加算の導入・点数の引き上げ,また外来放 射線照射診療料の導入などを機に外来通院しながら治療 を継続している患者も増加しているという特徴がある.  外来通院しているがん患者は,疾患および治療がもた らす身体的・心理的問題に加え,毎日の生活や周囲の 人々との関係性にも関連した多様なニーズを抱えている といわれている1).治療期にある患者においては,食に 関する多様な問題を抱えていること2),また,診断され て間もない時期の患者においては,患者と看護師のパー トナーシップに加え,それを支える豊かな医療環境が重 要であること3)が報告されている.  このような中,外来看護師は,通院中のがん患者に とって身近な存在の医療者であり,担う役割もますます 重要となっていると考えられる.外来通院するがん患者 に必要な支援をタイムリーに提供していくためには,患 者が抱える問題やニーズを把握して直接的に必要な看護 介入をすると同時に,必要な職種やチームのサポートを 得られるよう他職種・他部門と協働していくことが求め られる.しかし,外来に勤務する看護師に着目して,他 職種・他部門との連携の実態を明らかにした報告はほと んどみられないといえる.これらを明らかにすること で,がん医療における外来看護師と他職種・他部門との 連携の課題が明らかとなり,効果的な外来がん看護のシ ステムを検討するうえでの基礎資料になると思われる. そこで本研究では,がん診療連携拠点病院に勤務する外 来看護師を対象に,通院がん患者の療養支援における他 職種・他部門との連携の実態について明らかにすること を目的とした.  なお,本研究では,「連携」を久保4)が述べている 「保健・医療・福祉の各専門職ないしは各機関がある共 通の目標に向けて互いに協力しながら業務を遂行するこ と」と定義し,「外来看護師の他職種・他部門との連携」 については,外来看護師が連携する対象となりうる職 種・部署・チームすべてを含むものとした.

Ⅱ.方 法

1.対象とデータの収集方法  A 市内の 8 つのがん診療連携拠点病院のうち,看護部 長へ電話と郵送にて研究の趣旨を説明し,調査協力の可 否について郵送で書面にて回答を得た.調査協力の同意 を得た 7 病院において,がん患者が通院する外来で働く 看護師を対象とした.事前に各施設の看護部長へ対象と なる看護師の人数を確認してもらった.調査票は,看護 ■ 資 料

通院がん患者の支援に対する外来看護師と

他職種・他部門との連携の実態

佐 藤 三 穂

**

,鷲 見 尚 己

** **北海道大学大学院保健科学研究院基盤看護学分野 (受付日:2014 年 9 月 5 日,受理日:2015 年 6 月 15 日) 連絡先 佐藤三穂/北海道大学大学院保健科学研究院基盤看護学分野 〒060⊖0812 北海道札幌市北区北 12 条西 5 丁目 Phone/Fax:011⊖706⊖3324/E-mail:m_sato@med.hokudai.ac.jp Key words: 通院がん患者,連携,外来看護師,がん診療連携拠点病院,カンファレンス

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に,連携を促進するには組織的な要因もあると考え「時 間がなく,連携を必要としている患者を把握できない」 「連携するための手順や方法,ルールなどがない」「連携 しやすくするための院内のシステム(情報共有のための 電子カルテなど)がない」の選択肢も追加した.これら 9個の選択肢において,当てはまるものすべてについて 回答を得た. 5)他職種・他部門との合同カンファレンス  通院がん患者の療養支援に関する他職種・他部門との 合同カンファレンスの実施の有無について,実施してい る場合には参加メンバーを尋ねた.参加メンバーについ ては「主治医」「薬剤師」「地域医療連携室」「緩和ケア チーム」「病棟看護師」「専門看護師・認定看護師」「外 来化学療法室看護師」「栄養士・栄養サポートチーム」 「理学療法士・作業療法士」の選択肢を設けた. 3.分析方法  それぞれの項目について単純集計により分布を把握し た.合同カンファレンスの実施については,「カンファ レンス実施群」「カンファレンス非実施群」の 2 群の違 いについて,連携の各項目の実施状況を,「よく行って いる / 行っている」を「行っている」「あまり行ってい ない / まったく行っていない」を「行っていない」の 2 群に分けてχ2検定により検討した.統計ソフトは SPSS ver.18を用い,有意水準は 5%未満とした. 4.倫理的配慮  対象者へは,本研究の目的,方法,研究参加は任意で あって断ることで不利益は生じないこと,匿名性の保 持,データの管理,結果の公表などについて文書で説明 した.匿名性の保持,および対象者の回答の自由意思を 尊重するめに,回答は無記名として,研究者宛の郵送法 による回収とした.本研究への同意は回答をもって得た ものとした.本研究は,北海道大学大学院保健科学研究 院倫理審査委員会で承認を得て実施した.

Ⅲ.結 果

 151 名(回収率 64.3%)から回答を得た.しかし,基 本属性以外が無回答のもの,「外来患者の中でがん患者 が占める割合」の質問に対して「0%」または「ほとん どいない」と回答しているものについては分析から除外 した.最終的には,これらを除外した 132 名を分析対 象とした. 1.対象者の属性・特性  対象者の基本属性を表 1に示す.対象者の性別はすべ て女性であり,20 歳代が 7.6%,30 歳代が 41.2%,40 部長または看護部長から紹介を受けた担当者に直接持参 または郵送し,対象者への配布を依頼した.配布部数は 235部であった.調査票は無記名自記式であり,郵送法 にて回収した.調査期間は 2009 年 9 月から 10 月まで であった. 2.調査内容 1)基本属性  性別,年齢,職位,勤務形態,外来看護師経験年数を 尋ねた.また,外来患者のうちがん患者が占める割合に ついても回答を得た. 2)外来での看護介入  先行研究5)を参考に,外来看護師の専門性としてあげ られている「身体管理技術の提供(セルフケアをするた めの知識・技術の提供など)」「心理的適応の促進(疾患 を受け止め,向き合うための支援など)」「社会資源の紹 介・導入(患者会の紹介や病気に関するパンフレットの 紹介など)」「相談機能(意思決定への支援,療養上の困 りごとに対する支援など)」について,「よくできてい る」「できている」「あまりできていない」「できていな い」4 件法で回答を得た.さらにこれらに加え,外来看 護師の基本的な業務である「診療の補助」についても同 様に尋ねた. 3)他職種・他部門との連携の実際  がん患者に対する連携について,主治医,薬剤師,地 域医療連携室,緩和ケアチーム,病棟看護師,専門看護 師・認定看護師,外来化学療法室看護師,栄養士・栄養 サポートチーム,理学療法士・作業療法士の 9 つの職 種・部門に関して調査した.具体的には,先行研究6) 示されている「連携」の展開過程を参考に,「患者につ いての情報共有(情報共有)」「ケア内容や方向性の検 討・統一(方向性の検討)」「役割を分担してケアを実施 する(役割分担)」「実施したケアの評価(評価)」「専門 知識を教えてもらう,または提供する(専門知識のやり とり)」の 5 項目について尋ね,実施頻度について「よ く行っている」「行っている」「あまり行っていない」 「まったく行っていない」の 4 件法で回答を得た.さら に「該当するケースなし」の選択肢も設けた. 4)他職種・他部門と連携するうえでの困難  先行研究6)で示されている連携の展開過程を参考に, 「どのように連携を取ればよいのか分からない」「誰と情 報共有したらよいのかが分からない」「連携する相手と の情報共有がうまくできない」「連携する相手との意見 が合わず,支援の方向性が決まらない」「自分がどのよ うな役割を果たしたらよいのかが分からない」「連携し た成果がみえない,よく分からない」を尋ねた.さら

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職種・部門別にみると,すべての項目におい て「よく行っている」または「行っている」 と回答した人の割合が高かった職種・部門 は,主治医(38.7~73.1%),専門看護師・認 定看護師(41.9~61.6%),外来化学療法室看 護師(46.2~78.5%)であった.一方,割合 が低かった職種・部門は,理学療法士・作業 療法士(9.4~17.0%),栄養士・栄養サポー ト チ ー ム(9.2~21.5 %), 薬 剤 師(6.0~ 37.3%)であった.  項目別にみると,「情報共有」「専門的知識 のやりとり」の実施率が高い傾向がみられ た.具体的には,「情報共有」は,主治医, 地域医療連携室,病棟看護師,専門看護師・ 認定看護師,化学療法室・栄養士・栄養サ ポートチーム,理学療法士・作業療法士の 7 職種・部門において,連携について尋ねた 5 項目のうち最も実施率が高く,「専門的知識 のやりとり」では,主治医,薬剤師,地域医 療連携室,緩和ケアチーム,専門看護師・認 定看護師,外来化学療法室看護師,栄養士・ 栄養サポートチーム,理学療法士・作業療法 士の 8 職種・部門が 1 番または 2 番目に実施 率が高い結果であった.一方,「評価」は実 施率が低い傾向がみられ,理学療法士・作業 療法士以外の 8 職種・部門が 5 項目のうち最 も低い実施率を示していた.  「該当ケースなし」については,医師が 7 名と最も少なく,次いで病棟看護師(21 名) であった.栄養士・栄養サポートチーム,理 学療法士・作業療法士では該当ケースなしと 回答する人が多く,それぞれ 64 名,75 名であった. 4.他職種・他部門と連携するうえでの困難  他職種・他部門と連携するうえでの困難について表 4 に示す.困難があると回答した人は,87.5%であり,そ のうち,「時間がなく連携が必要な患者を把握できない」 が 61.0%と最も多く,次いで「どのように連携をとれ ばよいのか分からない」(43.8%),「連携するための手 順や方法,ルールなどがない」(32.4%)「連携した成果 がみえない,よく分からない」(31.4%)であった.「連 携する相手と意見が合わず,支援の方向性が決まらな い」は 6.7%と最も少なかった. 5. 他職種・他部門とのカンファレンスの有無とその 関連について  他職種・他部門との合同カンファレンスの実施につい 歳代が 35.9%,50 歳以上が 15.3%であった.対象者の 約 90%はスタッフ看護師として勤務しており,勤務形 態は 66.4%が常勤であった.外来看護師としての経験 年数は,1 年未満が 11.6%,1~4 年が 41.1%,5~9 年 が 20.2%,10 年以上が 27.1%であった. 2.外来での看護介入の実際  外来での看護介入について表 2に示す.「よくできて いる」または「できている」と回答した人は,「診療の 補助」では 69.5%であったが,「身体管理技術の提供」 では 49.2%,「心理的適応の促進」では 39.2%,「社会 資源の紹介・導入」では 34.1%,そして「相談機能」 では 43.8%といずれも 5 割未満であった. 3.他職種・他部門との連携の実際  他職種・他部門との連携の実際について表 3に示す. 表 2 外来での看護介入 n=132 n %* 診療の補助 よくできている/できているあまりできていない/できていない 8939 69.530.5 身体管理技術の提供 よくできている/できているあまりできていない/できていない 6466 49.250.8 心理的適応の促進 よくできている/できているあまりできていない/できていない 5179 39.260.8 社会資源の紹介・導入 よくできている/できているあまりできていない/できていない 4485 34.165.9 相談機能 よくできている/できているあまりできていない/できていない 5773 43.856.2欠損値を除いた割合を示しているため n=132 にならない項目がある. 表 1 対象者の特性 n=132 n %* 性別 男性 0 0 女性 132 100 年齢 20~ 29 歳 10 7.6 30~ 39 歳 54 41.2 40~ 49 歳 47 35.9 50歳以上 20 15.3 職位 看護師長 1 0.8 看護副師長 6 4.7 主任 7 5.4 スタッフ看護師 115 89.1 勤務形態 常勤 87 66.4 非常勤 7 33.6 外来看護師経験年数 1年未満 15 11.6 1~ 4 年 53 41.1 5~ 9 年 26 20.2 10年以上 35 27.1 外来患者の中でがん患者が 占める割合 55割未満割以上 4861 44.054.0欠損値を除いた割合を示しているため n=132 にならない項目がある.

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共有」のみ,理学療法士・作業療法士では「評価」と 「専門知識のやりとり」において,カンファレンスを実 施している群が有意に実施していた.

Ⅳ.考 察

 外来看護師は役割として「診療の補助」が最もよくで きていると感じていた.他の 4 項目は,診療の補助と比 較して実施率が低い傾向があり,特に心理的適応の促 進,社会資源の紹介・導入は 4 割未満であった.「診療 の補助」は優先度が高い業務であり,通院患者が必要な 治療・処置を確実に受けることができ,そして患者の満 足度を高めるためにも重要である.一方,看護独自の専 門性と言える療養支援に関する項目の実施は高くない結 果であった.先行研究において,がん患者の外来看護の 問題として,心理面・社会面への支援を実施することの 難しさ,また患者個々の背景を踏まえてその患者の具体 的な問題を明らかにしていくことの難しさが報告されて て表 5に示す.他職種・他部門と合同で実施していると 回答した人は 25.2%であった.これらのうち参加して いる職種・部門として最も多かったのは主治医であり (68.8%),次いで病棟看護師(59.4%),外来化学療法 室看護師(53.1%)であった.カンファレンスへの参加 が少なかった職種・部門は,薬剤師(15.6%),地域医 療 連 携 室(15.6 %), 栄 養 士・ 栄 養 サ ポ ー ト チ ー ム (9.4%),理学療法士・作業療法士(9.4%)であった.  他職種・他部門と合同カンファレンスを実施している 人(カンファレンス実施群)としていない人(カンファ レンス非実施群)における他職種・他部門との連携の実 施状況の違いについて表 6に示す.主治医,緩和ケア チーム,病棟看護師,専門看護師・認定看護師,外来化 学療法室看護師では,カンファレンスを実施している群 が実施していない群に比べすべての連携の項目を有意に 実施していた.薬剤師では「専門知識のやりとり」の み,地域医療連携室では「方向性の検討」と「専門知識 のやりとり」,栄養士・栄養サポートチームでは「情報 表 3 他職種・他部門との連携 n=132 情報共有 方向性の検討 役割分担 評価 専門知識のやりとり n* n n n n n 主治医 よく行っている/行っている 87 73.1 54 45.4 64 53.8 46 38.7 68 57.1 119 あまり行っていない/まったく行っていない 32 26.9 65 54.6 55 46.2 73 61.3 51 42.9  該当ケースなし 7 名 薬剤師 よく行っている/行っている 14 16.9 9 10.8 19 22.9 5 6.0 31 37.3 83 あまり行っていない/まったく行っていない 69 83.1 74 89.2 64 77.1 78 94.0 52 62.7  該当ケースなし 43 名 地域医療連携室 よく行っている/行っている 44 48.4 27 29.7 29 31.9 15 16.5 34 37.4 91 あまり行っていない/まったく行っていない 47 51.6 64 70.3 62 68.1 76 83.5 57 62.6  該当ケースなし 36 名 緩和ケアチーム よく行っている/行っている 35 42.2 27 32.5 26 31.3 22 26.5 39 47.0 83 あまり行っていない/まったく行っていない 48 57.8 56 67.5 57 68.7 61 73.5 44 53.0  該当ケースなし 44 名 病棟看護師 よく行っている/行っている 70 67.3 46 44.2 44 42.3 29 27.9 32 30.8 104 あまり行っていない/まったく行っていない 34 32.7 58 55.8 60 57.7 75 72.1 72 69.2  該当ケースなし 21 名 専門看護師・認定看護師 よく行っている/行っている 53 61.6 48 55.8 48 55.8 36 41.9 52 60.5 86 あまり行っていない/まったく行っていない 33 38.4 38 44.2 38 44.2 50 58.1 34 39.5  該当ケースなし 43 名 外来化学療法室看護師 よく行っている/行っている 73 78.5 59 63.4 59 63.4 43 46.2 62 66.7 93 あまり行っていない/まったく行っていない 20 21.5 34 36.6 34 36.6 50 53.8 31 33.3  該当ケースなし 35 名 栄養士または よく行っている/行っている 14 21.5 9 13.8 13 20.0 6 9.2 13 20.0 栄養サポートチーム 65 あまり行っていない/まったく行っていない 51 78.5 56 86.2 52 80.0 59 90.8 52 80.0  該当ケースなし 64 名 理学療法士・作業療法士 よく行っている/行っている 9 17.0 6 11.3 6 11.3 5 9.4 6 11.3 53 あまり行っていない/まったく行っていない 44 83.0 47 88.7 47 88.7 48 90.6 47 88.7  該当ケースなし 75 名 *「該当ケースなし」および「欠損値」を除いた対象者数を示している

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行ったとしても,実践した後の評価を共 有するまで至っていないことを示してい る.他職種・他部門と連携するうえでの 困難の結果をみても,「どのように連携を とればよいのかわからない」「連携するた めの手順や方法,ルールなどがない」「連 携した成果がみえない」が多い結果であ り,必要性を認識しているもののどのよ うに連携を始めてよいのかが分からない, また連携を開始したものの評価のツール が不足していたり,または結果自体を相 互に共有できていなかったりすることで, 評価の共有ができず,評価の困難につな がったことが推察される.今回はその関 連については明らかになっておらず,今 後の課題である.「時間がなく連携が必要 な患者を把握できない」と回答した人は 6 割以上であった.外来看護における時間的 な制約の問題は従来いわれてきており7),類 似した結果であった.  他職種・他部門との合同カンファレン スを実施していると回答した人は約 25% であり,合同カンファレンスの実施頻度 が低いことが示された.参加職種・部門 においても主治医,病棟看護師の参加は 約 6 割と多い結果であったが,栄養士・ 栄養サポートチーム,理学療法士・作業 療法士の参加は 1 割未満という結果で, 合同カンファレンスの参加職種・部門のバラつきが示さ れた.一方で,合同カンファレンスを実施している群と 実施していない群を比べたときに,実施している群が他 職種・他部門との連携を有意に行っていることが明らか となった.先行研究では,多職種を巻き込んだ公開カン ファレンスによって連携が効果的に行えた事例10),外来 患者に対する他職種・他部門カンファレンスを実施する ことによる患者の QOL の維持に貢献できた事例11)12) 報告されており,これらを定量的に支持する結果であっ た.今回の調査では,カンファレンス実施の効果が,カ ンファレンスそのものの場で連携が行われたのか,もし くは,カンファレンスによって他職種・他部門とのコ ミュニケーションがスムーズに図れるようになったこと によって連携がしやすくなったのかについては調査して いないが,これらの要因も踏まえて検討していくことが 必要であろう.  以上のことから,今後の方向性について述べる.本調 いる7).本研究でも類似した結果が示され,今なお同様 の難しさがある現状があると考えられる.  外来看護師は,通院がん患者の療養支援において,主 治医,専門看護師・認定看護師,外来化学療法室看護師 との連携頻度は高かったが,理学療法士・作業療法士, 栄養士・栄養サポートチーム,薬剤師との連携頻度は低 い結果であった.先行研究では,がん医療における栄養 士の食事支援の効果8)や薬剤師と外来化学療法室看護師 間の連携ノートの活用の効果9)など看護師と他職種との 連携は報告されてきているものの,これらは病棟や外来 化学療法室と看護師との連携である.外来の看護師との 連携についてはほとんど報告がなく,今後の課題として 考えられる.  他職種・他部門との連携の実際について項目別にみる と「情報共有」「専門的知識のやりとり」の実施率は比 較的高いものの,「評価」の実施率は低かった.これは 看護師が患者をアセスメントするうえで必要な連携を 表 4 他職種・他部門と連携するうえでの困難 n=132 n % 困難の有無* 1 ない 15 12.5 ある 105 87.5 具体的な困難* 2   どのように連携をとればよいのか分からない 46 43.8   時間がなく連携が必要な患者を把握できない 64 61.0   誰と情報共有したらよいのか分からない 22 21.0   連携する相手との情報共有がうまくできない 32 30.5   連携する相手と意見が合わず,支援の方向性が決まらない 7 6.7   自分の果たすべき役割が分からない 32 30.5   連携するための手順や方法,ルールなどがない 34 32.4   連携のための院内のシステムがない 30 28.6   連携した成果がみえない,よく分からない 33 31.4 *1欠損値を除いた割合を示している. * 2 %は、困難がある人(n=105) に対する割合を算出している. 表 5 他職種・他部門との合同カンファレンス n=132 n % 合同カンファレンスの有無* 1 実施していない 95 74.8 実施している 32 25.2 参加している職種・部門* 2 主治医 22 68.8 病棟看護師 19 59.4 外来化学療法室看護師 17 53.1 専門看護師・認定看護師 11 34.4 緩和ケアチーム 7 21.9 薬剤師 5 15.6 地域医療連携室 5 15.6 栄養士・栄養サポートチーム 3 9.4 理学療法士・作業療法士 3 9.4 * 1欠損値を除いた割合を示している. * 2 %は、合同カンファレンスを実施している人(n=32)に対する割合を算出している.

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査では,診療の補助に比べて心理的適応の 促進,社会資源の紹介・導入は少ない結果 であった.外来通院するがん患者は生活に 密着したさまざまな問題を抱える一方で, 外来での療養支援は限られた時間で展開さ れるという特徴がある.限られた時間で効 果的な療養支援を実施するためには,多部 門でうまく情報共有したり連携したりする ことがひとつの方策になると考えられる. また,外来の看護師との連携についてはほ とんど報告がなく,今回の調査は外来看護 師と他職種・他部門の連携の状況を知る一 資料となると考える.前述のとおり,限ら れた時間で患者の生活を捉え療養支援を展 開していくためには,他職種・他部門との 連携がその一助となるため,効果的な連携 方策のあり方については今後の課題として 考えられる.さらに,今回の調査では,評 価の実施率が低く,連携をどのように開始 してよいのかという困難を抱えていた.一 方で,カンファレンスを実施している群に おいて,より連携を実施している結果で あったことより,カンファレンスを連携の 手段として活用していくことも有効であろ う.多職種合同のカンファレンスはまだ少 ない状況が明らかとなったため,カンファ レンスの有効な開催方法について,または カンファレンスの開催を妨げている要因に ついても検討していくことが必要と考える.  本研究の限界について述べる.まず,対 象者が特定された地域の看護師に限定され ており,結果を一般化するうえで限界があ る.今後,対象者を広げて検討することが 必要である.さらに本研究では,看護師の 背景による違いを検討していない.たとえ ば連携の実施頻度や困難は,看護師の知識 や経験などの背景要因や看護師が 1 日の外 来で関わる患者数などの環境要因などによ り異なることが考えられる.今後これらの 背景要因による違いも検討していくことが 必要といえる.これらの限界はあるものの, 今回の調査で今まであまり報告されてきて いなかった外来看護師における他職種・他 部門との連携に着目してその実態を明らか にしたことは,今後さらに増加することが 6 カンファレンス実施群と非実施群における他職種・他部門との連携の比較 情報共有 方向性の検討 役割分担 評価 専門知識のやりとり 行っている 行っていない p 値 行っている 行っていない p 値 行っている 行っていない p 値 行っている 行っていない p 値 行っている 行っていない p 値 主治医 カンファレンス実施群 29 3 0.010 22 9 0.001 24 7 0.003 19 12 0.003 25 6 0.003 カンファレンス非実施群 58 28 29 55 38 46 25 59 41 43 薬剤師 カンファレンス実施群 6 18 0.194 4 20 0.232 8 17 0.262 2 22 0.633 15 10 0.016 カンファレンス非実施群 7 49 4 52 11 45 3 53 18 40 地域医療連携室 カンファレンス実施群 17 11 0.115 13 15 0.024 13 15 0.053 7 21 0.127 17 11 0.006 カンファレンス非実施群 26 36 13 47 15 45 7 53 18 44 緩和ケアチーム カンファレンス実施群 19 11 0.003 17 13 0.000 16 14 0.001 15 14 0.000 21 9 0.001 カンファレンス非実施群 15 38 9 42 9 42 6 45 17 35 病棟看護師 カンファレンス実施群 27 5 0.023 25 6 0.000 22 8 0.000 14 17 0.015 16 15 0.010 カンファレンス非実施群 44 28 22 50 21 50 14 56 17 55 専門看護師・認定看護師 カンファレンス実施群 22 5 0.009 22 5 0.002 20 7 0.034 19 8 0.000 22 5 0.009 カンファレンス非実施群 29 28 25 32 27 29 16 41 29 28 外来化学療法室看護師 カンファレンス実施群 30 1 0.001 28 3 0.000 27 4 0.001 24 7 0.000 27 4 0.005 カンファレンス非実施群 40 20 29 30 31 28 18 41 35 26 栄養士・栄養サポートチーム カンファレンス実施群 9 11 0.002 5 15 0.097 6 14 0.172 3 17 0.315 7 13 0.109 カンファレンス非実施群 4 39 3 40 6 37 2 41 7 37 理学療法士・作業療法士 カンファレンス実施群 6 13 0.059 4 16 0.184 4 16 0.184 5 15 0.024 6 14 0.009 カンファレンス非実施群 3 30 2 31 2 31 1 32 1 32

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謝 辞  本研究を行うにあたり,ご協力頂きました患者の皆様および, ご協力くださいました病院のスタッフの皆様に深く感謝申し上げ ます. 文 献 1) 菅原聡美,佐藤まゆみ,小西美ゆき,他.外来に通院するが ん 患 者 の 療 養 生 活 上 の ニ ー ド. 千 葉 大 看 紀.26,27⊖37 (2003) 2) 反町真由,石田和子,石田順子,他.外来で化学療法を受け ている乳がん患者の食欲不振の要因とセルフケア行動の分析. 群馬保健紀.25,33⊖40(2005) 3) 猪又克子.外来でがんと診断されて間もない時期にいる乳が ん患者への看護介入ならびに本看護介入を促進する医療的環 境.日看科会誌.24(1),30⊖36(2004) 4) 久保元二.“ 保健・医療・福祉の連携についての概念整理と その課題 ”.社会福祉援助と連携.石田紀久恵,小寺全世, 白澤政和編.東京,中央法規出版,2000,108⊖123 5) 数間恵子.外来看護に求められる専門性と役割.看実践の科 学.34(4),6⊖13(2009) 6) 吉池毅志,栄セツコ.保健医療福祉領域における「連携」の 基本的概念整理―精神保健福祉実践における「連携」に着目 し て. 桃 山 学 院 大 学 総 合 研 究 所 紀 要.34(3),109⊖122 (2009) 7) 佐藤まゆみ,小西美ゆき,菅原聡美,他.がん患者の主体的 療養を支援する上での外来看護の問題と問題解決への取り組 み.千葉大看紀.25,37⊖44(2003) 8) 石長孝二郎.がん医療における栄養士の役割.医療.63(3), 185⊖192(2009) 9) 鈴木麻由香,佐藤美佳,岡澤美貴子,他.他職種間連携によ る外来化学療法業務の質向上へ向けて 薬剤師の視点からの 取り組み.癌と化療.37(13),2881⊖2885(2010) 10) 藤田智子,木下優子,白土辰子.緩和ケアチーム主導の公開 カンファレンスと多職種連携促進効果.死の臨.29,77⊖82 (2006) 11) 浅塲 香,白石 好.在宅緩和ケア移行に向けた外来緩和ケ アカンファレンス.癌と化療.35,51⊖53(2008) 12) 浅塲 香,千裝真由美,橋本泳子,他.在宅緩和ケア移行に 向けた外来緩和ケアカンファレンス(第 2 報) カンファレン スを活用し,患者の QOL 維持,向上に貢献できた事例を振り 返る.癌と化療.36,84⊖88(2009) 見込まれる外来通院するがん患者の支援を検討するうえ で意義があると考えられる.

Ⅴ.まとめ

 外来看護師における通院がん患者の療養支援における 他職種・他部門との連携の実態について明らかにするた めに,がん診療連携拠点病院に勤務する外来看護師を対 象に外来での看護介入,他職種・他部門との連携の実 際,連携するうえでの困難,合同カンファレンスについ て質問紙調査を実施して,次のことが明らかとなった. 外来看護師は役割として「診療の補助」では約 7 割の人 ができていると感じていたが,心理的適応の促進,社会 資源の紹介・導入は 4 割未満であった.他職種・他部門 との連携については,主治医,専門看護師・認定看護 師,外来化学療法室看護師との連携頻度は高かったが, 理学療法士・作業療法士,栄養士・栄養サポートチー ム,薬剤師との連携頻度は低い結果であり,「情報共有」 「専門的知識のやりとり」の実施率は比較的高いものの, 「評価」の実施率は低い状況であった.合同カンファレ ンスの実施頻度は約 25%と低い結果であったが,合同 カンファレンスを実施している人は実施していない人と 比べ他職種・他部門との連携を有意に行っていた.以上 より本研究では,外来看護師が他職種・他部門と連携す るうえでの難しさが明らかとなった.今後,外来におけ る限られた時間で患者の生活に即した療養支援を展開し ていくためには,具体的な連携の方策について検討する こと,そして合同カンファレンスがその一助となる可能 性が示された.

Collaboration between Nurses in Outpatient Settings and Other Healthcare Professionals or Teams regarding Cancer Care*

Miho Sato, Naomi Sumi Address reprint requests to :

Miho Sato. Department of Fundamental Nursing, Faculty of Health Sciences, Hokkaido University. 5 Nishi, 12-jyo Kita, Kita-ku, Sapporo-shi, Hokkaido 060⊖0812, JAPAN

参照

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