マルチバンド・マルチモード送受信機用
Si-RFIC
技術
末松
憲治
†a)原田
博司
††Si-RFICs for Multi-Band Multi-Mode Transceivers
Noriharu SUEMATSU
†a)and Hiroshi HARADA
††あらまし 現在サービスが行われている6 GHz 帯までの各種ワイヤレス通信に対して開発されているマルチバ ンド・マルチモード送受信Si-RFIC の技術動向を報告するとともに,コグニティブ無線への適用について検討し た.その結果,現時点では,コグニティブ無線用には,送受信ともにダイレクトコンバージョン方式の採用が望ま しいことが明らかになった.続いて,本方式を用いたコグニティブ無線用マルチバンド・マルチモードSi-RFIC の開発例を紹介した.開発したRFIC により,0.4∼5.8 GHz の広帯域にわたり,W-CDMA や無線 LAN など の各種ワイヤレス通信の送受信が可能な特性が得られた. キーワード コグニティブ無線,SiGe-MMIC,ダイレクトコンバージョン,直交変調器,直交ミクサ
1.
ま え が き
ソフトウェア無線技術を適用して発展しつつある コグニティブ無線機は,異なる複数のワイヤレスシス テムに接続することが可能なことから,限られた周 波数資源を有効に利用する技術として注目されてい る[1]∼[8].周波数や,変調方式,ベースバンド帯域 の異なる複数のワイヤレスシステムに対応するため に,その高周波部には,マルチバンド・マルチモード 特性が求められている.具体的には,既存のワイヤレ スシステムとしては,0.8∼2.1 GHz帯のW-CDMA (Wideband Code Division Multiple Access)などの 携帯電話,2.45∼5.8 GHz帯の無線LAN (Local Area Network)系あるいは無線MAN (Metropolitan Area Network)系,5.8 GHz帯のITS (Intelligent Trans-port Systems)などがあり,将来的には,これらの周 波数帯のほかにDTV (Digital TeleVision)などに使 われる0.4 GHz帯までのUHF帯の活用,第4世代 などの将来ブロードバンド通信などへの対応も望まれ ている[1], [2].これらに対応できる送受信機の高周波 †三菱電機株式会社情報技術総合研究所,鎌倉市Information Technology R&D Center, Mitsubishi Electric Corporation, Kamakura-shi, 247–8501 Japan
††独立行政法人情報通信研究機構,横須賀市
National Institute of Information and Communications Technology, Yokosuka-shi, 239–0847 Japan
a) E-mail: suematsu@ieee.org 部としては,(1) 0.4∼5.8 GHzのすべての周波数帯を カバーすること,(2)少なくとも50 MHz以上のベー スバンド帯域をもち,かつ,受信ベースバンド回路に は各種システムに応じて帯域可変の低域通過フィルタ (LPF)を備えること,(3) FDD (Frequency Division Duplex)/TDD (Time Division Duplex)いずれの方
式でも対応可能なことが求められている[7].
本論文では,様々な用途に開発されてきたマルチバ ンド・マルチモード送受信機用Si-RFIC (Radio Fre-quency Integrated Circuit)技術に関して,簡単な分 類を行いその動作原理を説明するとともに,コグニ
ティブ無線機に適したRFIC構成について検討する.
更に,近年,コグニティブ無線用にSiGe (Silicon Ger-manium)デバイスを用いて開発された,上記(1)∼ (3)の特性を備えた送受信RFICの開発例を紹介する. (1)に関しては,スタティック形分周器を90◦移相器と して用いた広帯域な直交ミクサ[6]と直交変調器[9]を 用いるとともに,広帯域ドライバ増幅器と送受信それ ぞれに広帯域利得可変増幅器(VGA)を1チップに集 積することで,送受信系ともに,0.4∼5.8 GHz帯の広 帯域な特性を得ている.(2)に関しては,前記直交ミ クサと直交変調器のベースバンド帯域を広帯域化する とともに,広帯域ベースバンドVGA (Variable Gain Amplifier)と帯域可変形アクティブLPFを開発し, 広帯域かつ帯域可変なベースバンド回路を実現してい る.(3)に関しては,通常の局部発振器(LO:Local
Oscillator)信号の2倍の周波数のLO信号(2fLO信 号)で送受信を切り換える2fLO切換方式のLO信号 切換スイッチ回路[7]を採用し,TDD/FDD両システ ムに適用可能な構成としつつも,FDD動作時に,受 信系のLO信号が送信系のLO系に漏れることによっ て生じる,送信スプリアスによる受信系への干渉を抑 圧している.
2.
マルチバンド・マルチモード送受信機
RF
回路構成
表1に,0.4∼6 GHz帯のワイヤレス通信端末用に 開発されたマルチバンド・マルチモード送受信機及び そのRF回路構成の一覧を示す.これまで,マルチバ ンド・マルチモード送受信機は,携帯電話,無線LAN の用途を中心に開発されてきた.携帯電話に関しては,GSM (Global System for Mobile Communications)
をベースに,GPRS (General Packet Radio Service),
EDGE (Enhanced Data Rates for GSM Evolution)
とのデュアルモード化及び0.8/0.9 GHz/1.8/1.9帯の マルチバンド化が進められてきた.GSMの携帯電話 では,送信系をFM変調器を用いて構成されていた 経緯があり,マルチモード・マルチバンド化はポー ラー変調を軸に進められている[10]∼[12].一方,受信 系はダイレクトコンバージョン方式が主流である[6]. W-CDMAに関しては,送受信ともにダイレクトコン バージョン方式にて,シングルモードでのマルチバンド 化が進められてきたが[13],近年,GSMとのマルチバ 表 1 ワイヤレス通信端末用マルチバンド・マルチモード送受信機及び RF 回路構成の一覧 Table 1 List of multi-band multi-mode transceivers and their RF configurations
developed for various wireless terminals.
ンド・デュアルモード化が急速に進められている.しか し,RFICの内部では,帯域ごと,変調方式ごとに別々 の変復調器を備えていることが多い[14].無線LAN に関しては,IEEE802.11a/b/g対応の2.5/5 GHz帯 のデュアルバンド・マルチモード化が送受信ともにダ イレクトコンバージョン方式にて進んでいる[15].無
線MANに関しては,Mobile-Wi-MAX (Worldwide Interoperability for Microwave Access)が注目され ている.現在はシングルバンド・マルチモードであ るが,ホットスポットをはじめとする無線LANとの RFICの統合が進む可能性もあり,その場合,マルチ バンド・マルチモード化が進む可能性が高い.これら 携帯電話,無線LANのRFICは,ICの外部から見る と1チップでマルチバンド・マルチモードに対応して いるものの,ICの内部を見ると,各周波数バンドごと に高周波回路が独立して存在していて,ベースバンド 回路のみが共通となっているものも多い.ただし,近 年,LO系やアナログ変復調系など一部高周波回路も 共通化しているものも増えてきている.ETC
(Elec-tronic Toll Collection System)とDSRC (Dedicated Short Range Communications)のITS用途に関して は,5.8 GHz帯のシングルバンドであるが,ASKと QPSKのデュアルモードの特性が求められており[16], 今後UHF帯へのデュアルバンド特性も求められる可 能性がある.ITSの場合は,送信系はダイレクトコン バージョンが多く使われているが,受信系は,信号帯 域が比較的狭帯域であり,かつ,周波数帯域の違いも
ないため,IFを使った構成を採用することが多い[17]. DTVに関しては,シングルバンドではあるが,0.4∼ 0.8 GHzと受信周波数の帯域が非常に広いため,他の マルチバンドシステムと同様の広帯域特性が求められ ている.携帯端末用の1セグ受信の場合に関しては, ダイレクトコンバージョン方式をとるものもあるが, 多くの場合,IFを使う方式を採用している[18]. 上記のように,様々なワイヤレス通信システムが 0.4∼6 GHz帯で展開されており,同一システム内,あ るいは類似システムとの間において,マルチバンド化, マルチモード化が進められているのが現状である.た だし,マルチバンド化,マルチモード化は近年急速に 要求が高まっており,異種サービス間のマルチバンド・ マルチモード化が今後必要となってくるのは明らかと 考えられる.以下では,マルチバンド・マルチモード のワイヤレス通信端末に用いられる,Si-RFICを用い た送信,受信回路構成をより具体的に紹介する. 2. 1 受 信 系 マルチバンド/マルチモード受信系の構成としては, 狭帯域なIF回路を必要としないダイレクトコンバー ジョン方式,低IF方式が有望である.近年では,ダ イレクトサンプリングミクサを使う方式についても開 発が進められている. 図1 はダイレクトコンバージョン方式の直交ミク サ[19]の構成を示したものである.受信したRF信号 を直交ミクサを用いて,直接,I/Qのベースバンド信 号に変換する構成となっており,チャネルフィルタは ベースバンドでLPF (Low Pass Filter)で実現する. 直交ミクサに対しては,直交度の高精度化,セルフミ
クシングやミクサの2次ひずみやミクサ回路内のア
図 1 ダイレクトコンバージョン方式の直交ミクサの構成 Fig. 1 Configuration of quadrature mixer for direct conversion receivers. PS is a phase shifter and LPF is a low pass filter for base band signal.
ンバランスにより生じるDCオフセットの低減,1/f 雑音低減などの課題が存在する.直交度に関しては, LO系に90◦移相器を配置する場合,スタティック形 の周波数分周器を移相器として用いることで,非常に 広帯域な特性を実現でき,0.8∼5.2 GHz帯で良好な 直交精度が得られている報告もある[6].DCオフセッ トに関しては,基本波ミクサの場合,レイアウト最適 化などの差動信号のバランスを考慮したIC設計によ り,対応は可能であるが,ある程度のDCオフセット は生じてしまう.偶高調波ミクサの場合,ダイオード の対称性の優れたアンチパラレルダイオードペアを用 いることで,DCオフセットを大幅に抑圧できる報告 もある[20].なお,このDCオフセットに関しては, GSMなどの非常に狭帯域な信号を受信する場合には, オフセットキャンセラを設けるなどの対応が必要とな るが[21],W-CDMAや無線LANなどの比較的広帯 域な信号を取り扱う場合,DC近傍の周波数成分をも つ信号の影響が無視できるシステムに関しては,直交 ミクサの出力をACカップルすることで,オフセット を除去することも可能である[6].LO信号がRF信号 入力へ漏えいして発生するセルフミクシングに関して は,RF信号とは異なる周波数(例えば,RF信号の 2倍の周波数)のLO信号源を用いること[6],あるい は直交ミクサとして偶高調波ミクサ[20], [22]を用いる ことでLO漏えいの影響を,実用的なレベルで排除す ることができる. 図2は低IF方式のイメージリジェクションミクサ
(IRM:Image Rejection Mixer)の構成を示したもの であり,(a)はシングルコンバージョン構成[23],(b) はダブルコンバージョン構成(ウェーバー形)[24]で ある.いずれの構成においても,広帯域な90◦分配器 が必要となるが,LO系に用いるため線形性は必要と ならない.したがって,広帯域に動作可能なスタティッ ク形などの周波数分周器を使用することができる.シ ングルコンバージョン構成のIRMにおいては,IF出 力にマルチモードに対応するために広帯域な90◦移 相器が必要となる.IFの90◦移相器は受信信号を扱 うため,線形性も必要となることから,通常,ポリ フェーズフィルタ(PPF)が使われるが,信号帯域が 広いと,比帯域的に広帯域な特性が求められるため, 実現が困難なことがある.また,ダイレクトコンバー ジョン方式に比べて高速なADC (Analog to Digital Converter)が必要となり,無線LANなどの広帯域信 号を受信する場合には問題となることがある.ダブル
(a) Single conversion type Image Rejection Mixer (IRM)
(b) Double conversion type IRM (Weaver type) 図 2 低 IF 方式の IRM の構成
Fig. 2 Configuration of image rejection mixers (IRMs) for low-IF receivers. Hyb. is a hybrid circuit and BPF is a band pass filter for IF band signal.
コンバージョン方式は,IF帯の90◦移相器を2ndLO (LO2)に置き換えた構成となっており,広帯域な信号 に比較的対応可能な構成である.しかし,1stと2nd のミクサ間のIFフィルタは,チャネルフィルタとして の特性も担うことが多く,急しゅんな帯域外減衰特性 が求められるため,高いQ値の特性をもつSAWフィ ルタなどが使われる.マルチモードの場合に対応させ る場合には,IFフィルタを周波数可変とする必要が あるが,高いQ値の可変回路素子の実現が難しく,急 しゅんな帯域外減衰特性が得にくい問題がある.また, ADCに関しては,シングルコンバージョン方式と同 様の問題がある.近年,IF信号を90◦位相差で合成す る部分をアナログ回路ではなく,ADCでサンプルし た後,ディジタル的に行う方式も開発されている[25]. この場合,高速なADCは必要なものの,90◦移相器 の広帯域化の問題はなくなる.ただし,サンプリング する時点でイメージ信号も存在するために,アナログ 的に90◦合成した後にADCでサンプリングする方式 に比べて,ADCには,より広いダイナミックレンジ が求められる問題がある.表2に,マルチモード・マ ルチバンド受信系の構成,利点,課題,適用例をまと めて示す. 以上のように,マルチモード・マルチバンド用の受 信系としては,ダイレクトコンバージョン方式と低IF 方式のものがあるが,無線LANなどの比較的広帯域 な信号を含めて受信する場合には,現時点ではダイレ クトコンバージョン方式が望ましいと考えられる.こ れまでに,0.8∼5.2 GHz帯において,W-CDMA/無 線LAN(IEEE 802.11a相当)の受信が可能なレベ
ルの直交ミクサIC [6]が報告されている.LO信号の 90◦位相差をスタティック形周波数分周器を用いて実 現する構成を採用することで,90◦位相差の無調整化 を図り,周波数/モード切換時の位相調整キャリブレー ションを不要としている.また,広帯域なミクサを開 発することで,数百MHzのベースバンド帯域を実現 している.直交精度に関しては,位相誤差2◦以下,振 幅誤差0.2 dB以下が得られており,NFなどの他の特 性もW-CDMA及び無線LANの受信が可能なレベル である.なお,DCオフセットに関しては,直交ミク サのベースバンド出力を容量結合(Cカップル)を介
表 2 マルチバンド・マルチモード受信系のまとめ Table 2 Summary of multi-band multi-mode receivers.
図 3 ダイレクトコンバージョン方式の直交変調器の構成 Fig. 3 Configuration of direct conversion type
quadrature modulator. してベースバンド回路に入力する構成として問題ない ことを確認している[26].なお,上記以外の受信系の 方式として,RF信号をサンプリング受信するダイレ クトサンプリング方式があり,ソフトウェア無線機用 受信系への適用についても報告されている[27].現時 点では,シングルバンド・シングルモード用への適用 に留まっているが,今後のマルチバンド・マルチモー ド化への進展が期待される. 2. 2 送 信 系 マルチバンド・マルチモード送信系の構成としては, 受信系と同様,図3に示すように,直交座標系のI/Q ベースバンド信号を用いたダイレクトコンバージョン 方式の直交変調器を用いた構成と,図4に示すよう に,極座標系の位相/振幅のベースバンド信号を用いた Polar-Loop方式の送信機構成とがある.図3のダイ レクトコンバージョン方式の直交変調器の構成によれ ば,直接,RF周波数で変調するために,IF帯を介し たアップコンバージョン方式に比べて,ミクサで発生 するイメージ信号やLOの漏えい信号を抑圧するフィ ルタが不要になるという利点がある.ディスクリート 部品により直交変調器を構成していた時代には,GHz 帯において広帯域にわたり十分な直交精度が得られな いという問題があったが,Si-RFICの高周波化が進ん だ結果,受信系と同様,スタティック形分周器を用い ることで,6 GHz程度までであれば,実用的なレベル に近い直交精度が得られるようになってきた.更に実 用的なレベルまで直交精度を改善する方法として,直 交変調器出力をフィードバックしてキャリブレーショ ンを行い,分周器出力の位相を調整する機能を加えた ものや,分周器出力に位相精度を改善するためのPoly Phase Filter (PPF)を加えたもの[9]などがある. 図4のPolar-Loop方式による送信機構成は,これ まで主に,GSM/EDGEのデュアルモード端末用に開 発が進められてきたものであり,GSM端末で一般的に 用いられてきたRF帯電圧制御発振器を直接GMSK
変調する構成に,Envelope Elimination and Restora-tion (EER) [28]などのように送信増幅器(PA:Power Amplifier)の電源電圧制御による振幅変調機能を付加 し,EDGEに用いられる8PSK変調信号をも生成で きるようにしたものである[11], [12].通常,GSM端 末では,高効率ではあるが非線形なPAが使われてい るが,この方式を用いれば,線形性はPAの駆動電圧 制御による振幅変調の精度で決まるため,非線形PA を使いながら,線形変調もでき,かつ,電源効率もよ いという利点がある.原理的には,オープンループで
図 4 Polar-Loop方式の送信機の構成
Fig. 4 Configuration of Polar-Loop transmitter. Phase modulation is done by a digital FM modulator and amplitude modulation is done by an Envelope Elimination and Restoration (EER) Power Amplifier (PA) having a supply voltage control circuit.
表 3 マルチバンド・マルチモード送信系のまとめ Table 3 Summary of multi-band multi-mode transmitters.
の変調も可能であるが,実際には,図4に示すよう に,PAで振幅変調を行う際に生じるAM-PMひずみ を,発振器を制御する位相変調信号にフィードバック したり,振幅変調時の振幅誤差成分をPAの電源電圧 制御回路にフィードバックしたりして,ひずみ補償を 行う構成も報告されている[12].本構成は,PAの振 幅制御の精度(ダイナミックレンジを含む)の問題か ら,QAM変調などの多値変調への適用は難しい.ま た,変調信号帯域が広くなると,送信系増幅器の周波 数特性を含めて補償する必要があること,PAの電源 電圧制御を高速に行う必要があることなどから,実現 が難しくなってくる.表3に,マルチモード・マルチ バンド送信系の構成,利点,課題,適用例をまとめて 示す. したがって,広帯域かつ多値変調を求められる無線 LANなどへの適用を考えると,ダイレクトコンバー ジョン方式の直交変調器を用いる構成が最も有望と考 えられる.ダイレクトコンバージョン方式の直交変調 器を実現するためには,受信系の直交ミクサに比べ て,より高精度な90◦移相器が求められる上,方式 の全く異なる複数のワイヤレスシステムにキャリブ レーションなしで対応できるマルチモード特性が求め られている.これらの要求に対し,高精度な直交度を キャリブレーションなしで実現した0.8∼5.2 GHz帯 でW-CDMA/無線LAN(IEEE802.11a相当)の送
信が可能な直交変調ICが報告されている[9]. 2. 3 コグニティブ無線用送受信Si-RFICの検討 マルチバンド・マルチモードの送受信機を構成する 場合,バンド及びモードの数が限られているならば, バンドやモード数に相当する複数の送受信系を並列に 接続し,切り換える方式が考えられる.しかし,コグ ニティブ無線機のように,必ずしも限定されない通信
図 5 コグニティブ無線機用マルチバンド・マルチモード送受信機の高周波部の構成例 Fig. 5 Configuration of multi-band multi-mode transceiver’s RF section for
cog-nitive radio. Dark gray area shows RF section and light gray area shows Si-RFIC. システムに対応する場合あるいは多数のバンド・モー ドに対応する場合には,広帯域デバイスと帯域可変デ バイスにより構成した一つの送受信系で複数のバン ドとモードに対応できるようにする必要がある.図5 にコグニティブ無線機用マルチバンド・マルチモード 送受信機の高周波部の構成例を示す.濃いグレーの領 域が高周波部であり,明るいグレーの領域が現時点で Si-RFICに集積可能な部分である.理想的には,すべ ての周波数,通信システムに対して,同一の信号経路 で対処したいところであるが,実際に実現できるマイ クロ波デバイスの周波数帯域の制限があること,及び, 通信システムごとに送信スプリアスや受信系の耐干渉 性に関する規定があるため,広帯域な信号経路だけで 送受信機を作ることは難しい状況である.少なくとも, これらの規定を満足するためには,送受信ともに各シ ステムに準拠したRFフィルタが必要となる.また, FDDシステムに対応するには,図 5に示すように, 送受信アンテナを分離し,空間的なアイソレーション を確保することが必要だが,これだけでは,送信信号 の受信系への干渉を防ぐに十分なアイソレーションが 確保できない可能性もあり,アンテナを分離しても, 受信系に干渉抑圧のRFフィルタが必要になることも ある.送信系の高出力増幅器に関しては,システムご とに要求される出力レベルが異なるため,最も大きな 出力電力にあわせた増幅器を備える必要がある.この ため,携帯電話に必要となる1 W程度の出力の高出 力増幅器が必要となる.このような出力レベルの増幅 器を,オクターブ以上の広帯域にわたり,40%程度の 電源効率で実現しようとすると,整合回路を可変に する必要があり,MEMS (Micro-Electro-Mechanical Systems)スイッチを用いたチューナブル高出力増幅 器[29]が注目されている.上記回路ブロック以外につ いては,現状でも広帯域デバイスによる実現性がある と考えられる.特に送受信コンバータ回路に関しては, 2.で述べたようにダイレクトコンバージョン方式を 送受信ともに採用することで,マルチバンド・マルチ モード特性が実現でき,かつSi-RFICに1チップ集 積することが可能であると考えられる. コグニティブ無線用のRFIC化できるブロックに求 められる特性は,以下の三つが挙げられる. (1) 広帯域 (2) 高ダイナミックレンジ (3) キャリブレーションレス 広帯域特性については,UHF帯から6 GHz帯まで のすべての信号を処理するために,送信系出力飽和 電力,受信系入力飽和電力,受信系雑音指数などの特 性を広帯域にわたって確保する必要ある.また,広帯 域を保ちつつ,十分なダイナミックレンジを得るため
には高入力飽和特性が要求されることとなる.更に, ベースバンド直交信号の位相/振幅のキャリブレーショ ンを不要にすることで,使用する周波数帯ごとにベー スバンド信号の補正を行う必要がなくなり,ディジタ ル部の簡素化にもつながる. RFIC化のコアとなるブロックは,送受信コンバー タ回路である.マルチバンド・マルチモード特性を実 現する送受信機の回路構成としては,2.で述べたよ うに,送受信ともにダイレクトコンバージョン方式が 適している.課題は,直交ミクサ及び直交変調器に おいて,広帯域な直交精度を得ることであるが,こ れについては,スタティック型2分周回路を90◦分 配器として使用することで,実現可能である.実際 にUHF∼5 GHz帯の広帯域にわたって,直交信号の キャリブレーションを行わず,良好な特性が得られて いる[6], [9].また,ダイレクトコンバージョン受信機 では,特に狭帯域通信システムにおいて,ベースバ ンド周波数帯域の低周波での低雑音特性が求められ る.このため,無線LANなど比較的広帯域な信号を
扱う回路ではCMOS (Complimentary Metal Oxide Semiconductor)-FET (Field Effect Transistor)を用
いることができるが,W-CDMAなど狭帯域システム のダイレクトコンバータを実現する場合,1/f雑音の大 きいCMOS-FETは性能劣化が懸念される.このため, ミクサを構成するトランジスタは,CMOS-FETに比 べて1/f雑音の小さいSiGe-HBT (Hetero-junction Bipolar Transistor)を用いることが有利である[6]. 受信用RF-VGA,送信用RF-VGAは,ダイナミック レンジ拡大のために設けられる.送信用ドライバ増幅 器も含めて,広帯域な特性が要求される.高効率,高 出力電力の特性が要求されない範囲であれば,現状の 集積化ICで実現可能と考えられる.LO系について は,例えばUHF∼6 GHz帯の低雑音発振器を1回路 で実現することはIC外部の部品を用いても困難であ
るため,複数VCO (Voltage Controlled Oscillator)
の切換,または,逓倍/分周/ミクシングによる信号生 成が必要と考えられる.また,FDD/TDDの両方シ ステムに対応するためにも,信号経路の切換構成が必 要である.更に,FDDで動作する場合,送信系と受 信系の干渉が存在すると受信性能の劣化,送信スプリ アスの増大につながるため,アイソレーションの確保 が重要である.ベースバンド回路については,各シス テムに固有のチャネル帯域幅に対応する,可変フィル タが必要となる.これについては,Gm-Cフィルタな どを用いたSi-RFICに内蔵したアクティブフィルタ が実現されている.また,フィルタに用いる容量や抵 抗値の製造ばらつきを補償する回路が必要となると考 えられる.ディジタルフィルタとの性能配分を含めて 議論していく必要がある.また,ADCのダイナミッ クレンジを考慮した,ベースバンドVGAも必要とな る.これら,ベースバンド可変フィルタ,VGAにつ いても低雑音,広帯域特性が課題である.
3.
コグニティブ無線用送受信
Si-RFIC
の
開発例
[7]
3. 1 送受信RFICの構成 図6 にコグニティブ無線機用に試作された送受信 Si-RFIC [7]のブロック図を示す.ダイレクトコンバー ジョン方式の直交変調器及び直交ミクサとLO信号切 換回路がSi-RFICとして1チップ化されている.直交 変調器は直交したベースバンド信号(単相)を周波数 変換し,差動の送信信号を生成する.直交ミクサは差 動の受信信号入力を周波数変換し,直交したベースバ ンド信号出力(差動)を生成する.LO系は,帯域に よって異なるシンセサイザを用いることを想定し,LO 信号入力(単相)を送信用2バンド・送受信用2バン ドとし,LO信号切換回路(LO-SW)で選択して使用 する構成としている.入力されたLO信号は,LO-SW によって出力先を切り換えられた後,分周器で2分 周されるとともに90◦位相差の4相信号に変換され, 直交変調器及び直交ミクサに入力される.LO-SWを 制御することにより,TDD,FDDのいずれのモードでも動作し,無線LAN(IEEE802系),W-CDMA,
DTVなど様々なアプリケーションに対応可能である. 基本波ミクサによりダイレクトコンバージョン方式 の送受信回路を構成する場合,LO信号とRF信号の 周波数が等しいため,FDDモード時に送信用LO信 号に受信用LO信号が漏れ込むと,送信端子から受信 周波数帯のスプリアスが出力されることになる.送信 端子から出力された受信周波数帯のスプリアスは,受 信端子に回り込むと受信感度の劣化を引き起こすた め十分に抑圧される必要がある.通常の無線機では, 送信系に設けたRF帯の狭帯域BPFで抑制している が,マルチバンド特性が必要なコグニティブ無線機に おいては,帯域ごとに狭帯域なBPFを用意すること は困難になるため,送信スプリアス,特に受信信号周 波数帯に発生する成分の抑制が重要な課題となる.本 RFICにおいては,RFの周波数の2倍の周波数帯で
図 6 コグニティブ無線機用マルチバンド・マルチモード送受信 Si-RFIC のブロック図 [7] Fig. 6 Block diagram of multi-band multi-mode Si-RFIC transceiver for cognitive
radio [7]. LO信号を切り換える2fLO切換構成を採用している. 1/2分周器には,送信(Tx)波の2倍の周波数成分を もつTx用LO信号とともに,前記信号に比べて低い レベルの受信(Rx)波の2倍の周波数成分をもつRx 用LO信号がスプリアス成分として入力した場合,分 周器から出力される信号には,Rxの周波数成分のスプ リアスを含まないという特性がある.1チップRFIC に集積するため比較的低いアイソレーション特性しか 実現できない条件ではあるが,この特性を利用するこ とで,FDD時に受信周波数帯に生じる送信スプリア スを十分に抑圧することができ,受信特性が劣化しな いことを確認している. 3. 2 送受信RFICの評価結果 図7に試作したコグニティブ無線用マルチバンド送 受信ダイレクトコンバータのチップ写真を示す.受信 系の直交ミクサの1/f雑音低減のため,ミクサ回路に はCMOS-FETに比べて1/f雑音の低いSiGe-HBT を用いており,このため,本RFICは0.18µm SiGe BiCMOSプロセスを用いて試作された.アクティブ エリアは1.6 × 2.8 mmである.電源電圧は3.3 Vで あり,消費電流は直交変調器15.1 mA,直交ミクサ 19.6 mA,LO-SW 11.4 mAである. 図8に送受信RFICの送信時における出力飽和電力 (OP1 dB)のRF周波数依存性を示す.図より0.4∼ 5.8 GHzの広帯域にわたって−16 dBm程度と,ほぼ 一定な出力飽和電力が得られている.図9に送受信 RFICの受信時における電圧変換利得及びNFのRF 図 7 コグニティブ無線機用マルチバンド・マルチモード 送受信 Si-RFIC のチップ写真 [7]
Fig. 7 IC Chip photo of multi-band multi-mode Si-RFIC transceiver for cognitive radio [7].
周波数依存性を示す.図より0.4∼5.8 GHzの広帯域 にわたり動作していることが分かる.0.4∼2 GHz帯 であれば,ほぼ平たんな周波数特性が得られているが, 2 GHzを超えると,トランジスタの高周波特性が不足 するとともに,回路の寄生容量の影響により,変換利 得が低下するとともに,NFが増加してしまう傾向が ある.図10に受信時における電圧変換利得のベース
図 8 送信時の出力飽和電力 (OP1 dB) の周波数依存性 [7] Fig. 8 Tx frequency dependence of output power at 1 dB gain compression point (OP1 dB) at Tx mode [7].
図 9 受信時の電圧変換利得 (Gc)・NF の周波数依存性 [7] Fig. 9 Rx frequency dependence of voltage conver-sion gain (Gc) and Noise Figure (NF) at Rx mode [7]. バンド周波数依存性を示す.図より,100 MHzのベー スバンド帯域において帯域内利得偏差が3 dB以下で あり,将来システムの広帯域な変調信号にも対応可能 であることが分かる. 表4 に試作したコグニティブ無線用マルチバンド 送受信Si-RFICの評価結果を示す.EVM評価にお ける変調信号は実際のアプリケーションを想定し, OFDM信号あるいはQPSK信号を用いている.こ の結果より,0.4 GHzのUHF帯のアプリケーション (OFDM/16QAM),0.8 GHz/2.1 GHzのW-CDMA (送信:HPSK,受信:QPSK),5.2 GHz/5.8 GHzの 無線LAN (OFDM/64QAM)のいずれの条件におい ても,送信時EVM 2.7%rms以下,受信時2.8%rms 図 10 受信時の変換利得のベースバンド周波数依存性 [7] Fig. 10 Base band frequency dependence of voltage
conversion gain (Gc) at Rx mode [7].
以下の特性が得られている.
4.
む す び
コグニティブ無線への適用可能なマルチバンド・マ ルチモード送受信Si-RFICの技術動向について述べ た.これまでは,携帯電話や無線LANなど特定の用 途に対するマルチバンド化,マルチモード化が進め られてきたが,異種のワイヤレスサービスにまたが り通信を行うことのできるコグニティブ無線機用に検 討すると,現時点での実現という条件では,送受信と もにダイレクトコンバージョン方式が好ましいことが 明らかになった.次いで,送受信ともにダイレクトコ ンバージョン方式を前提として,高周波部の全体構成 検討と,RFICに集積化可能なブロックの検討を行っ た.送信/受信のフロントエンド部や,局部発振器な ど,広帯域で高いQ値の特性が必要なブロックに関し ては,信号経路切換方式,またはMEMSなどを用い たチューナブル回路が期待されるが,その他のブロッ クについては,SiGe-HBTを用いたRFICへの集積 化が可能と考えられる. コグニティブ無線用マルチバンド・マルチモード送 受信Si-RFICの一例として,直交変調器,直交ミクサ, LO信号切換回路を0.18µm SiGeBiCMOSプロセス を用いて1チップに集積化した開発例を示した.本 Si-RFICは,0.4∼5.8 GHzの任意の周波数で動作し,か つ,それぞれの周波数帯で,W-CDMAや無線LANな どの送受信が可能である.実際の用途を想定した変調信 号評価の結果,0.4 GHzのUHF帯のアプリケーション表 4 コグニティブ無線用マルチバンド・マルチモード送受信 Si-RFIC の評価結果 [7] Table 4 Evaluation results of multi-band multi-mode Si-RFIC transceiver for
cog-nitive radio [7]. The evaluation was done under the condition of 0.4 GHz UHF applications (OFDM/16QAM), 0.8/2.0 GHz W-CDMA (QPSK) and 5.2 GHz/5.8 GHz Wireless LAN (OFDM/64QAM).
(OFDM/16QAM),0.8 GHz/2.1 GHzのW-CDMA (送信:HPSK,受信:QPSK),5.2 GHz/5.8 GHzの 無線LAN (OFDM/64QAM)のいずれの条件におい ても,送信時EVM 2.7%rms以下,受信時2.8%rms 以下の変復調特性が得られている. 今後,フィルタなどの周波数可変特性をもつRFデ バイスの実現と,これらのブロックを含めたSi-RFIC への集積化が望まれるとともに,ダイレクトサンプリ ングなどの新しい受信方式の適用も考えていく必要が ある. 文 献 [1] 情報通信審議会新世代モバイル委員会,“新世代移動通信 システムの将来展望,”諮問第 121 号,pp.58–65, June 2001.
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(平成 20 年 5 月 12 日受付,7 月 2 日再受付) 末松 憲治 (正員) 昭 60 早大・理工・電子通信卒.昭 62 同 大大学院博士前期課程了.同年三菱電機 (株)入社.以来,衛星通信,業務無線,携 帯電話などの移動体通信端末用途の GaAs 及び Si 系マイクロ波半導体回路及び送受 信機の低ひずみ化技術の研究・開発に従事. 平 4∼5 英国リーズ大学客員研究員としてマイクロ波半導体デ バイスシミュレーションの研究に従事.平 20∼東北大学電気通 信研究所客員教授.平 2 年度本会篠原記念学術奨励賞.平 14 電気科学技術奨励賞(オーム技術賞).現在,同社情報技術総 合研究所光・マイクロ波回路技術部システム IC チームリーダ. 博士(工学).IEEE シニア会員.電気学会,応用物理学会各 会員. 原田 博司 (正員) 平 7 阪大・工・通信博士後期課程了.同 年郵政省通信総合研究所(現 独立行政法 人情報通信研究機構 (NICT))入所.以来 ディジタル信号処理を用いた移動通信技術, ソフトウェア無線技術,コグニティブ無線 技術,ミリ波 WPAN システムの研究,開 発,標準化に従事.平 8∼9 オランダ・デルフト工大,ポスト ドクトラルフェロー.平 17 本会業績賞.平 17∼19 ソフトウェ ア無線研究専門委員会専門委員長,平 18∼電気通信大学客員教 授,平 19∼米国ソフトウェア無線 (SDR) フォーラム,Board of Directors,平 20∼IEEE SCC41 (1900) Vice Chair,平 20∼IEEE1900.4 Vice Chair.現在,NICT,新世代ワイヤ レス研究センター,ユビキタスモバイルグループ,グループ リーダ.