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2014 年 3 月号
産 産業業調調査査 1 エレクトロニクス業界の日系サプライヤーの中国展開について 中 中国国アアドドババイイザザリリーーのの現現場場かからら 5 中国民間企業への持分譲渡について 中 中国国戦戦略略 9 中国の e コマース−新しい消費者文化を牽引− 法 法務務 17 「最高人民法院による食品薬品紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する 規定」について 税 税務務会会計計 24 中国会計基準の改正について みず ほ銀 行 中国営業推進部 みずほ銀行(中国)有限公司 中国アドバイザリー部--
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-産業調査 エレクトロニクス業界の日系サプライヤーの中国展開について 中国のエレクトロニクス業界では、中資系メーカーの業績が拡大し、日系サプライヤーにとってもどのように 中資系メーカーに食い込むかが重要課題となっている。最終製品メーカーを頂点としたサプライチェーンが 形成されていた従来と異なり、最近は半導体・電子部品・ハード・ソフト等の企業が有機的に組み合わさった エコシステムへと変化している中で、日系サプライヤーにとって有効な中国展開の方法を検討する。 中国アドバイザリーの現場から 中国民間企業への持分譲渡について 中国事業の再度見直しを検討する企業が増えてきている。外資企業が中国事業から撤退する際、一般的 に持分譲渡を実行することが多いが、中国の特殊性を念頭に入れて慎重に進める必要がある。本稿では、 事業撤退における中国の民間企業を相手とする持分譲渡について、一般的な実務上の注意点を解説す る。 中国戦略 中国の e コマース−新しい消費者文化を牽引− 中国の e コマースは B2C、C2C の領域で爆発的な成長を見せ、ソーシャルメディアやモバイル端末利用の 広がりとともに、今なお急速に発展している。競争の激しいこの市場への参入を検討する企業は、ターゲッ ト市場と消費者に対する徹底的な戦略を立案する必要がある。本稿では、中国の e コマースについて分析 し、成功した企業の事例を紹介する。 法務 「最高人民法院による食品薬品紛争案件の審理における法律適用の若 干問題に関する規定」について 中国最高人民法院は 2013 年 12 月 23 日、「食品薬品紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関 する規定」を公布した。食品・薬品の安全に関わる民事紛争の処理に関して、より明確な判断基準を設けて いる。本稿では、食品・薬品に関わる事業者にとって重要な内容、及び既存の法律との関係について解説 する。 税務会計 中国会計基準の改正について 中国政府は 2014 年に入ってから、企業会計準則に関して 5 つの会計基準の改訂を発表している。2014 年 7 月 1 日に施行されるこれらの改訂のうち、本稿では新会計基準となる第 39 号「公正価値測定」について解 説する。
産業調査
エレクトロニクス業界の
日系サプライヤー
1の
中国展開について
1. エレクトロニクス業界における中国市場の位置づけ 昨今、エレクトロニクス業界では、需要の牽引役が減少し、特定製品への依存度が大きくな っている。過去 10 年間、エレクトロニクス業界には、ノート PC、携帯電話、液晶テレビなどの 成長製品が複数あり、一つの製品の成長率が鈍化しても他の成長製品が補って、需要を牽引し てきた。しかし、足元では、ノート PC、携帯電話、液晶テレビといった製品の成長率が次々と 鈍化し、スマートフォンやタブレット PC などに成長製品が限られている。 加えて、スマートフォン、タブレット PC は、需要の牽引役が先進国から中国をはじめとする 新興国に移ってきている。特にスマートフォンは 2012 年に中国が出荷台数ベースで北米を追い 抜き、中国が世界最大の需要地域となった。中国のスマートフォン市場では、Samsung や Apple が高いシェアを持っている一方、中資系メーカーも市場全体の 2/3 を握っている(【図表 1】)。 これらの中資系メーカーの中には、通信インフラ、PC、音楽プレーヤーなど既存事業のノウハ ウを活かして参入した企業だけでなく、レファレンスデザイン2を活用して異業種から参入する 企業なども現れている。このため、エレクトロニクス業界の日系サプライヤーには、中国のス マートフォン市場で将来的に伸びてきそうなブランドを見極め、その企業に製品を供給するだ けでなく、今後どのような機能・製品が求められるかを把握し、ソリューション提供すること が求められている。 【図表 1】中国スマートフォンメーカー別シェア推移(四半期) 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 1 Q 2 Q 3 Q 4 Q 1 Q 2 Q 3 Q 4 Q 1 Q 2 Q 3 Q 4 Q 1 Q 2 Q 3 Q 10年 11年 12年 13年 Samsung Apple Lenovo LG Huawei Sony Mobile ZTE Nokia Yulong HTC TCL BlackBerry BBK (出所) 各種資料よりみずほ銀行産業調査部作成 1本稿では、半導体メーカー、電子部品メーカー、材料メーカーなどをサプライヤーと総称 2半導体メーカーが提供する、半導体を使った製品の設計図。レファレンスデザインに従って部品を調達、組み立てれば、一 定程度の機能を持った製品が製造可能。 みずほ銀行 産業調査部マニュファクチャリングチーム 調査役 益子 博行 [email protected]産業調査 また、既存のエレクトロニクス分野以外では、自動車の電装化、ハイブリッドカー・電気自 動車の登場などを背景に、車載用の半導体・電子部品などの需要拡大が見込まれている。自動 車分野においても中国は世界最大の需要地域であり、2012 年の中国の新車販売台数(乗用車+商 用車)は前年比 4.3%増の 1,931 万台となった。中国の乗用車市場においては中資系自動車メー カーが出荷台数ベースで約 4 割を占めており(2012 年)、スマートフォン同様、中資系自動車メ ーカーにどのように食い込むかがエレクトロニクス業界の日系サプライヤーにとって重要にな っている(【図表 2】)。 【図表 2】中国自動車メーカー別出荷台数推移(台、2013 年、月次) 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 長城汽車 (GreatWall (GW)) 吉利控股集団 (Geely) 比亜迪汽車(BYD) 五菱 (Wuling) 長安 (Changan/Chana) 奇瑞汽車(Chery) 中国第一汽車集 団 (FAW) 東風汽車 (Dongfeng) (出所) 各種資料よりみずほ銀行産業調査部作成 2.中国市場へのアプローチにおけるポイント このような中国市場の拡大や中資系メーカーの成長を受けて、多くの日系サプライヤーが中 国展開を強化しているが、中資系メーカーに食い込むためには、各事業領域の様々な企業にア プローチすること、技術に詳しい人員がマーケティングすることが重要である。 従来、エレクトロニクス業界では、最終製品(PC、携帯電話端末など)のメーカーを頂点と して、モジュールメーカーや半導体・電子部品メーカー、材料メーカーが製品を供給するサプ ライチェーンが形成されていた。この場合、最終製品メーカー主体で立案された仕様に基づい て調達がなされており、サプライヤーは最終製品メーカーに食い込んでいればある程度ニーズ を把握することができた。 これが最近では、半導体、電子部品、ハードウェア、ソフトウェア、通信ネットワークなど を組み合わせたエコシステム(生態系)へと変わってきている。エコシステムでは、ハードウ ェアやソフトウェアといった単品で高機能化するのではなく、それぞれを連携させてパフォー マンスを上げることに重点が置かれている。このため、どのような機能・サービスを誰が提供 するのか、ハードウェアやソフトウェア、通信ネットワークにそれぞれどんな機能を担わせる のか、ボトルネックがどこにあるのかによって、鍵を握る企業が変わる。例えば、スマートフ ォンでナビゲーション(目的地への経路案内)を行う場合、ハードウェア(スマートフォン)、
産業調査 ソフトウェア(アプリ)、通信ネットワークにどう役割分担させるかによってスマートフォン、 ひいては半導体・電子部品に求められる機能が変わり、それを誰が決めるかによって日系サプ ライヤーがアプローチすべき企業も変わる。 よって、日系サプライヤーが中国のエコシステムに食い込んでいくためには、特定の企業だ けでなく、エコシステムに属する様々な企業に広くマーケティングしてニーズを把握する必要 がある(【図表 3】)。例えば、中国の自動車関連のデザインハウス(受託設計企業)は自動車メ ーカーなどから新しい機能・サービスなどの設計を受託しており、エコシステムに属する企業 とのリレーションや新しい機能・サービスに関する情報を持っているが、数人程度と小規模な 企業が多く、開発中心のため発注量も少ない。日系サプライヤーから見ると目先のビジネスは 小さいが、ニーズ把握やビジネスチャンス発掘の観点から小規模な案件にも対応していくこと が重要である。 【図表 3】日系サプライヤーによる中国市場へのアプローチ 例1:中国の自動車のエコシステム 自動車 メーカー デザイン ハウス 例2:中国の携帯電話端末のエコシステム ソフトウェア メーカー 電子部品 メーカー 端末 メーカー 日系 サプライヤー エコシステムに属す る様々な企業への アプローチが必要 通信 事業者 半導体 メーカー 半導体 メーカー ソフトウェア メーカー サプライ ヤー (出所)各種資料・ヒアリングよりみずほ銀行産業調査部作成 また、ハードウェアやソフトウェアを連携させてパフォーマンスを上げることに重点が置か れており、連携の仕方によってハードウェアに求められる機能が変わる点を考慮すると、高機 能の製品を提供するというプロダクトアウト(Product Out)の発想ではなく、顧客が求めてい る機能・モノに対して製品・ソリューションを提供するという、マーケットイン(Market In) の発想でマーケティングすることが求められる。そのためには、日系サプライヤーは単なるプ ロモーション(販促)活動ではなく、技術者が市場に出て情報収集し(テクノロジーマーケテ ィング(Technology Marketing)と呼ばれる)、ニーズ把握を通じて変化の予兆や新しいトレン ドを見つけ、ソリューション提供する必要があろう。 3.中資系の半導体・電子部品商社との協業 このようなアプローチを既に行っている大手サプライヤーがいる一方、リソース不足や中資 系企業への人脈不足などから十分に事業展開できていない企業も少なくない。中国市場では従 来以上に幅広い地域・分野・企業に “網”を張る必要が高まっているため、特に中堅・中小規 模のサプライヤーが独力で行うのは容易ではないと考えられる。 そのような日系サプライヤーにとっては、中資系の半導体・電子部品商社を活用した、中国 市場での露出・アピール・販促活動が有効ではないだろうか。具体的には、日系サプライヤー の製品を中資系の半導体・電子部品商社のラインナップへ追加したり、通信販売用サイトへ登 録したりすることが挙げられる。これらは、露出を高める→一部企業で採用→高評価→他の案 件でも採用→評価が他企業にも広まる、という好循環のための第一歩であり、中資系の半導体・
産業調査 電子部品商社の活用で、コスト・手間をかけずに知名度を上げることが可能となる。 また、現地法人を設けて日系取引先の中国拠点及び中資系メーカーへアプローチしている日 系サプライヤーも多数存在するが、中国市場は広く、分野・企業も多岐にわたることから、リ ソースが限られている現地法人だけではカバーしきれないケースもあるとみられる。加えて、 日系サプライヤーが独力で中資系大手のキーパーソンと接点を持つのは容易ではない。 このような場合には、日系サプライヤーの現地法人は日系取引先の中国拠点向けを主力とし、 中資系メーカー向けには中資系の半導体・電子部品商社などを経由して提供するのが現実解と いえる(【図表 4】)。例えば、中国の半導体業界は 20 年程度と先進国に比べ歴史が浅いため、中 資系の半導体・電子部品商社の経営陣が中資系大手のキーパーソンと人脈を持っているケース もあり、協業により中資系の半導体・電子部品商社の人脈を活用することができる。以上のよ うに、エレクトロニクス業界の日系サプライヤーが限りあるリソースを使って複雑かつ多様性 を持つ中国市場にアプローチしていくためには、中資系の半導体・電子部品商社との協業が有 効であろう。 【図表 4】日系サプライヤーと中資系半導体・電子部品商社の役割分担 中資系の 半導体・電子 部品商社 取引先の 中国拠点 日系 サプライヤーの 現地法人 中堅 中小 大手 中資系企業 日系企業 供給 供給 供給 供給 (出所)各種資料・ヒアリングよりみずほ銀行産業調査部作成 以 上
中国アドバイザリーの現場から
中国民間企業への持分譲渡について
はじめに この数年、中国における人件費の高騰、人民元高等により、元々安価な労働力を求めて進出 した日系企業にとっては、中国事業の経営が以前より格段に難しくなっているといわざるを得 ません。また、シャドーバンキング等による市場の不安や日中関係によるカントリーリスク等 の影響で、中国事業の再度見直しを検討する企業が増えてきているように思えます。 各企業の実情によりあらゆる可能性を検討し、それでも最終的には撤退を決断せざるを得な い状況が発生することもあるでしょう。 中国事業からの撤退について、外資企業の撤退は基本的に、持分譲渡と清算の 2 つのパター ンがあります。持分譲渡の場合、清算と比較すると全体にかける時間を比較的短縮できること が多く、状況によってはコスト面にも影響します。また、清算は労務問題や地方政府との関係 などの問題による影響が大きく、清算より持分譲渡を選択する方が多いように見受けられます。 そこで、本稿では中国事業撤退における中国の民間企業を相手とする持分譲渡について、一 般的な実務上の注意点を述べます。 持分譲渡における実務の流れと注意点 実際の現場では各社の実態によって様々ですが、一般的な流れを概観すると以下の通りです。 買い手候補先のリストアップ、および打診 →候補先の絞り込み →秘密保持協議の締結 →売り手の工場見学、面談 →基本合意書の締結 →デュー・デリジェンスの実施 →持分譲渡契約書の締結 →当局にて手続の実施※ →引渡し →持分譲渡代金の送金 →完了 ※「当局にて手続の実施」に関わる当局:商務部門、工商局、税務局、外貨管理局、税関、その他。 次ページ以降では、実際の持分譲渡において、よく見受けられる注意点をご紹介します。 みずほ銀行(中国)有限公司 中国アドバイザリー部 國浦 祥子 [email protected] みずほ銀行(中国)有限公司 中国営業第一部 営業三課 哈 晶偉 [email protected]中国アドバイザリーの現場から (1)価格設定&税金問題 税務局での手続きには相応の時間を要します。往々にして、撤退を目的とした持分譲渡を行 うのは赤字企業であることが多く、そのような場合は繰り延べ損失が累積されています。実際、 持分譲渡価格は当初投資した資本金を下回ることが多々あります。価格の相違分について当局 から説明を求められ、そのための準備にも時間と労力が必要になります。 持分譲渡に関わる金額の例および主な注意点は以下の図の通りです。 基本的には、資産評価会社による資産評価レポートの評価価値をベースに持分譲渡対価を決 めていくのですが、企業価値算定には主に以下の 3 つの手法があります。 ①修正純資産法 ②DCF 法 ③マルチプル法 評価手法が変われば評価価値も異なりますので、当事者によって採用したい手法が違ってき ます。一般的に、税務局は②DCF 法を推薦、要求することが多いといえます。理論的には将来の 黒字を前提に持分譲渡をしますので、当概企業の価値は今後増える見込みです。従って、持分 譲渡を行うことで将来の収益分を確保できることになり、将来の益税を持分譲渡で納税させる ことになります。 持分譲渡益税の考え方は以下の通りです。 売買価格≦資本金 : 納税不要 売買価格>資本金 : 差額納税必要 売買価格が資本金を下回れば企業にとっては損失したことになりますので、持分所得の納税 は不要ですが、売買価格が適切に決められているかどうかを評価価格等含めて、当局から説明 を求められることがあります。当局次第ですが、評価レポートの評価方法を変えて再度提出が 必要になる場面も出てきます。一旦作った資産評価レポートおよびその他資料の再提出を求め られることがないよう、事前に当局と確認しながら進めていくのが望ましいでしょう。 ここで注意が必要なのは、資本金の換算問題です。外貨建ての資本金である場合は、換算レ エビデンス: 験資報告 by会計士事務所 資産評価レポート by資産評価会社 持分譲渡契約書 by買い手及び売り手 売買価格 60万 項目: 金額: 100万 資本金 評価価値 70万 評価価値と売 買価格に差額 があれば、説 明を求められ たり、会計士事 務所による「持 分譲渡価値鑑 定報告書」の 提出が必要と なることがあり ます
中国アドバイザリーの現場から ートによって持分譲渡所得(持分譲渡価格−持分原価)に影響する可能性がありますので、注 意が必要です。 (2)交渉&面談 最近は、持分買収に興味をもつ中国地元の民間企業のオーナー社長が増えてきています。そ の多くは、中国の安い労働力と原価コストによって大量生産・大量販売で収益を上げてきた企 業で、賃金上昇、原材料コスト高、海外市場での経営不振、人民元高等で成長が伸び悩み、今 後は海外の高い技術をもつ企業と提携して新たな市場拡大をしたいと考えています。ただ、持 分譲渡のやり方等は経験がない企業がほとんどです。面談、交渉に当たっては、まず初歩的な ことを細かく説明することから始まり、幾度となく持分譲渡に対する理解のための説明をしな ければなりません。軌道修正に非常に時間を要することもありますので、持分譲渡自体が長引 いてしまい、時間・労力という見えないコストがかさんでしまいます。 では、ステップに分けて見ていきましょう。 ①工場見学段階 一般的に、この時点で売買両社が初対面となります。買い手が工場を見学した後で面談を行 い、お互いの現状および今後の考え方について情報交換します。 面談・情報交換するということは、情報が漏れる可能性があるということです。事前に秘密 保持契約(NDA)を締結して、情報漏洩が発生した場合の責任の所在を明らかにしておくなど、 対策をとってから臨むことが重要です。とはいえ、法務面を軽くみている中国民間企業のオー ナーが多いのも事実です。従って、情報漏洩の可能性を最小限にするため、どのように進めて いけば良いのか常に注意を払いながら状況に対応していかなければなりません。面談なども少 人数、短時間で終わらせるようにすると良いでしょう。 また、工場見学時に万が一自社の従業員に質問された場合を想定して、買い手の来社目的を 予め考えておくなど、各社の実際の状況に応じて事前の対策を考えなければなりません。さら に、今後大きな路線変更が発生することのないよう、初期の段階で買い手に大まかなスケジュ ールを説明、共有し、絶対に譲れない条件を伝えておく必要があります。 ②基本合意書締結段階 基本合意書締結に関して面談を行うのですが、この際の一番の焦点となるのは、持分譲渡の ターゲット金額です。ターゲット金額を決めていくためにベースとなる参考資料には、①資産 評価レポート、②直近の貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、③会計士事務所の監査報告書、 などが挙げられます。ただ、中には独自の計算方法で算出した金額を提示してくる買い手もあ ります。買い手に当方の金額計算方法を少しでも納得してもらえるよう、時間をかけて丁寧に 説明・交渉していく必要があります。 しかし、基本合意書の締結は、あくまでもデュー・デリジェンスを行うための意思確認の一 環として行われるもので、この際の金額等の記載は形式的に行うものとなっています。
中国アドバイザリーの現場から ③持分譲渡契約書締結段階 持分譲渡契約書は、持分譲渡対価、譲渡の諸条件が全て盛り込まれており、持分譲渡の基準 となるものです。その後、行政手続を行う際にも同契約書の提出を求められます。従って、全 ての条項を慎重に検討し、交渉する必要があります。 ここでも注意すべきことは、中国民間企業のオーナーによる独自の判断で、流れが変わるこ とがあるということです。交渉の途中でこれまでと異なる金額、条件を要求されるケースもあ ることを、最後まで留意しながら進めていく必要があります。このような場合、専門のアドバ イザリーのスタッフが間に立つことで、調整可能な場合があります。彼らは双方にとって第三 者であり、経験豊富な専門家であれば、両者の考え方、意図を正確に把握することができます。 (3)その他の注意点(借入返済) 借入を抱えて持分譲渡する場合、借入の返済の問題があります。借入といっても、銀行借入、 委託貸付、親子ローン、オフショアローン等様々ですので、種類によって返済方法も異なりま す。持分譲渡前に借入全額返済をする場合、コストやリスク等に注意し、実際は各地域の政策 および会社の実態に応じて総合的に考える必要があります。 最後に このように、持分譲渡の実行には様々な注意するべき事項があります。今後、中国における 撤退事例が増えるにつれ、撤退の仕方が変わったり、手続の方法が変更されたり、中国側の認 識が高まるなど、状況が変化することも考えられます。ただ、現時点では中国における持分譲 渡は、中国側との交渉方法、関係当局の姿勢など様々な要素を考慮する必要があり、専門家等 の第三者を交えるなどしながら、中国の特殊性を念頭に入れて慎重に進める必要があります。 以 上
中国戦略
中国の e コマース
−新しい消費者文化を牽引−
中国工業情報化部は、「電子商取引(e コマース)発展の第 12 次 5 カ年計画」(2011∼2015 年) において、投資重視型の成長モデルからより消費主導型のモデルへの移行に合わせて、e コマー スのグローバル・リーダーを目指す方針を明らかにしました。 中国での e コマース産業の成長の速さと、企業や消費者への影響の大きさは多方面で驚きを もって受け止められています。中国は、B2C(企業と一般消費者の取引)と C2C(一般消費者同 士の取引)での購買活動で諸外国を圧倒するようになるでしょう1。アリババ(阿里巴巴)の創 業者ジャック・マー(馬雲)氏は、最近、「他国では e コマースは買物の方法の一つだが、中国 ではそれがライフスタイルなのだ」2と述べました。中国で e コマースがブームを迎えているこ とはいかなるデータからも間違いありません。 本稿では、B2C、C2C の領域で爆発的な成長を見せる中国の e コマースについて分析します。 特に興味深いのは、オンライン取引の増加を支える中国独特のプラットフォームと、ますます 高まるソーシャルメディアやモバイル機器の役割の重要性です。これらをはじめとするトレン ドが、中国人消費者の商品・サービスの購入方法を根本的に作り変えようとしています。 本稿ではまた、e コマースが対象とする消費者は誰なのか、その消費者はオンラインでどのよ うに購入するのか等を正確に知ることの重要性を浮き彫りにするとともに、市場で成功した中 国内外企業の事例を紹介します。 e コマースが爆発的に成長する中国 十数年前から、米国やその他の市場で IT ブームが起きて、e コマースが重要な B2C、C2C のチ ャネルとして発達しましたが、その頃は中国が e コマースのリーダーへの道を歩むことなどほ とんど予想できませんでした。 2000 年の時点では、中国ではまだ e コマースのアプリケーションは開発されておらず3、イン ターネットユーザーにしても全国にわずか 2000 万人程度しかいませんでした。e コマースの発 展を促す決済システムと商品の配達方法も諸外国の市場では十分に発達していましたが、中国 ではそれらが完全に不足していました。 1He Wei「China set to overtake US in e-commerce(e コマースで米国を追い越そうとする中国)」China Daily 中国日報,2013 年 8 月 28 日 http://usa.chinadaily.com.cn/business/2013-08/28/content_16927926.htm
2
「E-commerce in China:Gain entrance into a completely different world(中国の e コマース:全く新しい世界へようこ そ)」Group of Companies 2013 年 6 月 16 日
http://www.ptl-group.com/blogs/e-commerce-in-china-gain-entrance-into-a-completely-different-world
3
David Wei「E-commerce bigger in China than United States(米国より大きい中国の e コマース)」CNN 2013 年 9 月 19 日 http://edition.cnn.com/2013/09/19/business/on-china-alibaba-e-commerce/index.html
KPMG Advisory (China) 編 厚谷 禎一 訳・監 www.kpmg.com.cn www.kpmg.or.jp/jp/china
中国戦略 米国と中国の e コマース取引高(2009∼2015 年) 10 億米ドル 中国 アメリカ 見込み しかし、2013 年末には、中国の インターネットユーザーは早くも 6 億人に近づきつつあります4。2009 年から 2012 年にかけての e コマー スの売上成長率は年平均 70%を突 破し5、このペースで行けば近い将 来に米国を追い越し、世界最大の e コマース市場になるでしょう。 (3) 2015 年には、中国の e コマース取引が 5,400 億ドル に達し、これは全小売取引の 7.5%を占める見通しで す。また、2020 年までには、この e コマース市場は、 米国、英国、日本、ドイツ、フランスのそれを合わせ たものよりも大きくなると予想されています7。 中国の中産階級はすでに膨大な数に達し、今もます ます増え続けています。これらの中産階級には e コマ ースでの頻繁な購入が習慣になっています。さらに、 早くから存在してきた諸外国の e コマース市場と同じ ように、中国の中産階級もまたブランド意識を高め、 高品質でかつ自分が納得する製品(またはそのいずれかを満たす製品)を購入する傾向が強く なっています。また、ブランドロイヤルティが高く、リピーターになる傾向があります。中国 のオンライン衣料品・アパレル会社ヴァンクー(凡客誠品 VANCL)は、2012 年に同社を利用し た消費者の 80%がリピートで購入していたとしています8。 中国の e コマース・チャネルの今後の発展は、IT 技術の発展だけでなく、オンラインでの商 品検索や注文の仕方、スピードと利便性を優先する傾向を含めた消費者行動とも密接に結びつ 4
「CNNIC released the 32nd Statistical Report on Internet Development(CNNIC、第 32 次中国インターネット発展状況 統計報告を発表)」CNNIC 2013 年 7 月 22 日 http://www1.cnnic.cn/AU/MediaC/rdxw/hotnews/201307/t20130722_40723.htm ※2014 年 1 月の第 33 次中国インターネット発展状況統計報告(CNNIC)発表では、2013 年 12 月末時点で 6.18 億人に到達。
5
Bain Brief「China's e-commerce prize(中国 e コマースの躍進)」Bain & Company 2013 年 8 月 28 日 http://www.bain.com/publications/articles/chinas-e-commerce-prize.aspx
6
J.T.Quigley 「Singles Day in China Decimates Online Shopping Records(オンラインショッピングの記録を塗り替える 中国のシングルデー)」The Diplomat 2013 年 11 月 12 日
http://thediplomat.com/2013/11/singles-day-in-china-decimates-online-shopping-records/
7
Amanda「China E-Commerce Market to Reach 30 Trillion Yuan in 2020(中国の e コマース市場、2020 年には 30 兆元規模 に)」China Internet Watch 2013 年 3 月 13 日 http://www.chinainternetwatch.com/2007/china-e-commerce-market-2020/
8
Chiang「China Ecommerce Roundup:IPOs, Downsizing, and Gaopeng(中国の e コマース総まとめ:IPO、ダウンサイジング、 高朋)」Business Insider 2012 年 2 月 http://www.businessinsider.com/china-ecommerce-roundup-ipos-downsizing-and-gaopeng-2012-2 中国の「シングルデー」は 毎年 11 月 11 日。日付が 「1 のゾロ目」になる日 (11/11) 2013 年「11/11」の オンライン売上が前年比 80%増の 57 億ドルを突破。 これは米国の「サイバー マンデー」の売上の 3 倍以上6 。
中国戦略 いています。 KPMG 中国パートナー、e コマース&決済の責任者であるメアリー・チョンは、「中国において e コマースの成長を促す推進力は、e コマースプラットフォーム、ソーシャルメディアプラット フォーム、電子決済プラットフォーム、モバイル機器の 4 つである」としています。 二大オンラインショッピングモールが e コマース業界を支配 中国には特有のソーシャルメディアプラットフォームが存在するのと同様に、e コマースにも 独自の企業が揃っています。競合するこれらの企業の中には、中国の e コマース市場でかなり 大きなシェアを持つだけでなく、他の国の著名なグローバル企業より数多くの取引を実際に取 り扱っているところがあります。 アリババ(阿里巴巴)はそうした中国独自企業の一つです。中国国外ではまだ eBay や Amazon ほど知られていませんが、アリババは中国の B2C、C2C e コマースでトップシェアを誇る企業で あることは疑う余地がありません。アリババは最近、2012 年の商品総売上高が eBay と Amazon の合計額を上回ったと発表しました9。2016 年にはウォルマートを追い越し、世界の小売ネット ワーク業界でナンバー・ワンに躍進すると同社は見ています10。 アリババは次の 2 つのオンラインショッピングモールを運営しています。 • タオバオ(淘宝網)−タオバオは eBay に似た C2C サイトです。アリババは 2003 年にこのサ イトを立ち上げました。売り手はタオバオ・マーケットプレイスに新品や中古品を定額また はオークション形式で出品し、販売や再販売を行うことができます。タオバオは、消費者の 登録アカウント数が 5 億件超、出品商品数が 8 億件に達し、中国 C2C 市場の 80%という驚異 的なシェアを獲得したとしています11。タオバオのマーケットプレイスは、eBay と同じよう に売り手が自分の商品を消費者に直接販売できる場所ですが、タオバオは取引手数料を一切 徴収していません。タオバオの主な収益源はサイト上の広告です。 9
Kenneth Rapoza「Alibaba Says Sales Better Than Amazon And eBay...Combined(アリババ、売上高が Amazon と eBay の 合計を上回ったと発表)」Forbes 2012 年 9 月 9 月
http://www.forbes.com/sites/kenrapoza/2012/09/09/alibaba-exec-brags-sales-better-than-amazon-ebay-combined/ Juro Osawa「Alibaba Isn't the Amazon of China(アリババは中国の Amazon ではない)」The Wall Street Journal 2013 年 10 月 16 日 http://blogs.wsj.com/digits/2013/10/16/alibaba-isnt-the-amazon-of-china/
10
「E-commerce giant will not list on Hong Kong exchange(e コマース大手、香港証券取引所に上場せず)」South China Morning Post 南華早報,2013 年 10 月 11 日
http://www.scmp.com/business/china-business/article/1328993/e-commerce-giant-will-not-list-hong-kong-exchange
11
Adam Jourdan「Surviving Chairman Ma:Life in the shadow of China's Alibaba(生き残った馬会長:中国アリババの陰に 隠れたその生活)」Reuters 2013 年 11 月 26 日
http://www.reuters.com/article/2013/11/26/us-china-ecommerce-idUSBRE9AP17H20131126
Willis Wee「With 1.4 Million Users, Taobao Launches Hong Kong Official Site(140 万ユーザーを抱えるタオバオが 香港で公式サイトを開設)」TECHINASIA 2013 年 5 月 10 日
中国戦略 • Tmall(天猫)−Tmall は、タオバオの C2C マーケットを補完するため、2008 年に B2C サイ ト(Amazon に近いセグメント)として立ち上げられました。サイト上に各ブランド自身の店 舗を出店できるというユニークな「モール体験」を提供します。売り手はサイトに出店する 際に保証金を支払い、Tmall は売上げごとに取引手数料を受け取ります12。「モール・スペー ス」には国内や海外の人気ブランドが並び、各ブランドはモール内にバーチャルストアを持 つことができます。また、海外の売り手の場合、Tmall にストアを持てば、中国でのオンラ イン販売に必要な ICP 許可証(付加価値電信業務経営許可証)の取得要件を回避することが できます。このモデルは目覚ましい成功を収めました。中国のオンライン B2C 売上総額に占 める Tmall のシェアは、2010 年の 35%から 2012 年には約 51%を占めるまでに上昇しました。 ちなみに Amazon の米国でのシェアは 20%弱です13。 これら 2 強が中国市場を支配し、ランボルギーニから靴ひもまであらゆるものを販売してい ます。 しかし、アリババが市場で支配的な地位を築いているとは言っても、中国の e コマース市場 は非常に大きいので、福州の大閩網(Daminwang)のような地方型オンラインショッピングモー ルや、京東商城(360buy.com14)など、競合企業やニッチ企業が成功する余地は十分に残されて います。京東商城は B2C 市場で約 15%15のシェアを持っています。同社は主に電子製品にター ゲットを絞り、現在 3C 製品(コンピュータ、通信機器、家電製品)の e コマース販売で中国の トップに立っています。 消費者の行動に影響を及ぼすソーシャルメディア 中国のソーシャルメディアプラットフォームは、e コマース活動のもう一つの重要な要素であ り相乗効果をもたらすものでもあります。テンセント(騰訊)の微信や、中国最大のツイッタ ースタイルのマイクロブログ新浪微博が急速に成長しています。微信の登録者数は 2013 年 1 月 時点で 3 億人でしたが、すでに 6 億人を超えたとされます16。 ほぼ瞬時に得られるフィードバックの速さと、使いやすいインターフェースを特長とするソ ーシャルメディアは、中国の e コマース消費者の必需品になっています。中国の消費者は、これ らのプラットフォームを活用して「買うべきか、買わざるべきか」のアドバイスをその場で受 け、商品のレビューを投稿し、有名なオピニオンリーダーに商品知識やアドバイスを求めたり します。最近の中国 e コマース統計によれば、オンラインショッピング利用者の 40%が商品の レビューを読んだり投稿したりしています。これは米国の 2 倍以上に当たる数の利用者です17。 12 脚注 9 参照 13 脚注 11 参照 14 現在は「JD.com」に改称 15
Steven Millward「A guide to China's top 10 e-commerce sites(中国 10 大 e コマースサイトの手引き)」CNET http://asia.cnet.com/blogs/a-guide-to-chinas-top-10-e-commerce-sites-62215025.htm
16
Tracey Xiang「WeChat Reportedly Surpassed 600 million Users(ユーザーが 6 億人を超えたとされる WeChat)」TechNode 2013 年 10 月 24 日 http://technode.com/2013/10/24/wechat-reportedly-surpassed-600-million-users/
17
「E-commerce In China – Statistics and Trends(中国の e コマース‐統計と傾向)」GO Global.com 2013 年 2 月 8 日 http://www.go-globe.com/blog/ecommerce-in-china/
中国戦略 これらのソーシャルメディアは、e コマース・チェーンとの一体化に力を入れています。小売 業者はソーシャルメディア上でのプレゼンスを一層高め、微信など一部のソーシャルメディア は決済機能を追加しました。こうしてソーシャルメディアユーザーは、アプリケーションから 直接買い物ができるようになりました。このような傾向が、中国の e コマースにおけるモバイ ル端末の重要性をますます高めています。
中国のソーシャルメディアについては、「Mizuho China Monthly 2013 年 7 月号」をご参照く ださい18。 モバイルへと進む e コマース 中国で e コマースの成長とともに 目立つのがモバイル機器の重要性の 高まりです。中国はわずか数年の間 に、モバイルベースでの e コマース 取引が最も多い国となりました19。 2012 年のモバイルによる取引高 は 78 億米ドルでした20。これは中国 国内の e コマース取引高の 3.7%で すが、2015 年には 5 倍以上に増え、 414 億米ドルに達する見込みです21。 これは全 e コマース取引の 8%にあ たります。(4) モバイル決済は、「いつでも買える」という利便性とスピードを求める中国人消費者のニーズ に一致します。タオバオのデータによれば、モバイルショッピングが一番活発になる時間は夜 10 時です。そして、モバイルでの購入に必要な時間はパソコンでの購入より 67 秒短いのです23。 より高性能でより機能的な携帯電話やタブレットが好まれる傾向に加え、ソーシャルメディ アの使用が広がり、消費者への情報提供や消費者同士の結びつきが活発になるにつれ、中国の e コマース市場では、いわゆる「モバイルコマース(m コマース)」取引の件数と比率がますます 18
Mizuho China Monthly2013 年 7 月号「中国のソーシャルメディア革命−全土を結ぶ中国独自のイノベーション−」 http://www.mizuhobank.com/china/jp/fin_info/pdf/MizuhoChinaMonthly201307.pdf
19
「China, South Korea Lead World in Mobile Commerce Adoption(m コマース導入で世界をリードする中韓)」eMarketer 2013 年 3 月 20 日 http://www.emarketer.com/Article/China-South-Korea-Lead-World-Mobile-Commerce-Adoption/1009742
20
Steven Millward「China's M-Commerce Shopping Spree to Hit $27.1 Billion in 2014, Surpassing US Mobile Shoppers (2014 年には中国の m コマース買い漁りが 271 億ドルを突破。米国のモバイルショッパーを追い越す)」TECHINASIA 2013 年 3 月 18 日 http://www.techinasia.com/china-mobile-shopping-hits-27-billion-dollars-in-2014/
21
Steven Millward「Mobile Commerce Worth $4.29 Billion in Q1 in China, But One Company Dominates(第 1 四半期に 42 億 9,000 万ドルに達した中国の m コマースだが売上は 1 社が独占)」TECHINASIA 2013 年 5 月 21 日
http://www.techinasia.com/china-q1-2013-mobile-commerce-worth-over-4-billion-dollars/
22
脚注 19 参照
23
Vaughn Highfield「Infographic:China's M-Commerce Set to hit $27.1 Billion in 2014(インフォグラフィック:中国 の m コマース、2014 年には 271 億ドルを突破か)」TotalPayments 2013 年 3 月 18 日 http://blogs.terrapinn.com/total-payments/2013/03/18/infographic-chinas-commerce-set-hit-27-1-billion-2014/ 中国では 55%のインターネッ トユーザーがモバイル決済を したことがありますが、米国で モバイル決済をしたことがあ るインターネットユーザーは わずか19%です22。
中国戦略 高まるでしょう。 顧客と市場を知る 全体として、中国の e コマース市場は、ハンドバッグ、靴、化粧品などのファッション、ア クセサリー商品に大きく偏る傾向があります。e コマース取引のおよそ 40%がこれらの商品で、 購入者は都市部に住むホワイトカラーの若い女性達です24。 中国の e コマース市場が成熟してきた現在、企業は対象とする顧客への影響力を強めるため に、より高度な戦略を練らなければなりません。何でも一まとめに取り扱う画一的な e コマー ス戦略では、もはや不十分です。中国のオンライン人口は途方もなく多いだけでなく、消費者 行動の面でもきわめて多様です。企業は、中国の消費者市場はどれも同じだと考えるべきでは ありません。 実際は全く逆なのです。中国の都市には等級があり、その等級によって売上の内容は大きく 異なります。上海のような一級都市では、多くの消費者が旅行、自動車、あるいは高級なパー ソナルケア用アクセサリー(化粧品、ハンドバッグ、高級衣料品など)を購入します。オンラ イン取引は、二級、三級、四級都市の消費者より高頻度です25。 また、一級都市では中国国内の他都市よりブランドロイヤルティが際立っています。これに 対し、大連、西安、福州など、より小さな市場では、好まれる製品やブランドのばらつきが大 きいことがわかります。例えば、上海では昨シーズンの商品はあまり売れませんが、他の市場 では売れ行きが好調です。等級の低い都市の消費者は、購入の決定を下すとき、いまだより基 本的な商品の価値に重点を置いているようです26。 影響の受け方も市場によって異なります。四級都市は「有力なオピニオンリーダー」に依存 する傾向が強く、口コミやユーザーレビュー、ブログ等の影響は比較的小さいようです。また 予想に反し、四級都市の住人は可処分所得が比較的少ないにもかかわらず、三級都市や二級都 市の消費者に匹敵する額のオンライン購入を行っているようです27。 24
「With E-Commerce Surging In China, Who Needs Brick-And-Mortar?(盛り上がる中国の e コマース。実店舗は不要に?)」 Jing Daily 2012 年 6 月 13 日
http://www.jingdaily.com/with-e-commerce-surging-in-china-who-needs-brick-and-mortar/18894/
25
Bain Brief「China e-commerce:Heading toward RMB 1.5 trillion(中国の e コマース:いよいよ 1 兆 5,000 億元規模へ)」 Bain & Company 2012 年 2 月 27 日
http://www.bain.com/offices/china/en_us/publications/articles/china-ecommerce.aspx
26
McKinsey & Company「2012 Annual Chinese Consumer Report. From Mass to Mainstream:Keeping Pace with China's Rapidly Changing Consumers(2012 年年次中国消費者レポート。マスマーケットからメインストリームへ:変化の速い中国の消費者 についていくために)」2012 年 9 月
http://www.mckinseychina.com/wp-content/uploads/2012/09/McKinsey-2012-Annual-Chinese-Consumer-Report1.pdf
27
「Average value of U.S. online shopping orders in 2nd quarter 2013, by device(in U.S. dollars)(2013 年第 2 四半期米国オンラインショッピング・オーダー平均金額、デバイス別(ドル))」Statista 2013 年 9 月
http://www.statista.com/statistics/239247/us-online-shopping-order-values-by-device/ KPMG「The rapidly Changing Face of D-commerce(急速に顔を変える D コマース)」pdf. 2013 年 11 月
中国戦略 e コマース成功への道 確かに中国の e コマースは成長していますが、全ての企業に成功が約束されているわけでは 決してありません。企業は、ターゲット市場を理解し、消費者に影響を与え、オンライン購入 に向かわせる一番良い方法を探るために十分な調査・分析をする必要があります。その上で、 よく用いられるビジネスモデルは、定評のある e コマースプラットフォームで販売する方法で す。 例えば、実店舗型小売企業であるユニクロは、アリババの Tmall での営業を選択しました。 2009 年の参入時に、ユニクロは 2 つのサイトを立ち上げました。ブランド衣料品、価格情報の ほか、会社の詳細情報を紹介する自社公式サイトと、Tmall 上で運営するサイトです。2 つのサ イトのレイアウト、カテゴリー、品揃え、価格体系は全く同じです。また、ユニクロのサイト はタオバオを通じて販売を実行するので、両サイトの注文と決済はアリババに一本化されてい ます。 しかし、成功への道筋は様々です。既存のプラットフォームに出店せずに成功を収めた企業 も多くあります。 一つの例が蘇寧電器です。蘇寧電器は中国の大規模店舗型家電小売販売会社としては比較的 早く、2009 年に e コマースへと参入しました。同社は Tmall には出店していません。蘇寧電器 の戦略は、コンテンツと商品が充実した、ユーザーフレンドリーなウェブサイトの構築です。 同社は、商品販売に関わる一連の業務全般において、オンラインストアと実店舗の間のスムー ズな連携を確実にするための技術に投資しました。蘇寧電器は、この 4 年間でオンラインとモ バイルアプリケーションの製品カテゴリーを拡大し、デジタルチャネルと実店舗を一体化させ ました。2010 年から 2012 年にかけて、蘇寧電器のオンライン売上高は年平均 190%の伸びをみ せ28、現在のシェアは中国の B2C におけるオンライン小売業者トップ 3 に食い込むまでになりま した29。 結論 中国の e コマース市場は今なお急速に成長しています。競争の激しい中国 e コマース市場へ の参入を検討している企業には、ターゲット市場と、消費者がどのように商品を評価し購入す るのか、消費者が現地の市場でどのような IT テクノロジーの利用を好むのかを、徹底的に理解 した上で戦略を立案することが必要です。 さらに、一級都市の消費者だけでなく他の都市の消費者のニーズにも応える戦略を考案する ことも重要です。多くの企業にとって、これらの都市は重要な成長市場ですが、消費者の購入 行動はそれぞれ大きく異なります。 28 脚注 5 参照 29 脚注 15 参照
中国戦略
最後に、ソーシャルメディアへのアプローチとそれとの一体化は、今日のあらゆる e コマー ス戦略の重要な要素として捉えるべきです。消費者は、これらのアプリケーションを日常生活 にどんどん取り入れるようになってきているからです。
厚谷 禎一
KPMG Advisory (China) Limited ディレクター 東京工業大学理学部卒業・同大学理工学部修士課程修了(情報科学専攻) 米国ペンシルバニア大学ウォートン校経営学修士(財務専攻) これまで 20 年以上にわたり、日本、米国、カナダ、英国、韓国にて経営コンサル ティング会社及び会計事務所に勤務、各国企業顧客に戦略・M&A・オペレーション 等の分野でのアドバイザリー・サービスを提供。 2003 年より KPMG LLP(米国)ニューヨーク事務所に勤務、主に日本企業顧客に対 して事業デュー・ディリジェンスを中心とした M&A 支援サービスを提供。 2008 年より現職、KPMG 中国の上海事務所にて同じく日本企業顧客に対して M&A 支 援サービスを提供。 専門は市場評価、事業計画の精査、M&A 実施後の統合支援等を含む事業デュー・ ディリジェンスだが、日本企業顧客に対しては広く、財務・税務デュー・ディリジ ェンス、企業価値評価、不正調査、リストラクチャリング支援等を含む、M&A 支援 サービス全般のプロジェクト・マネジメント・サービスを提供する。 +86 10 8508 7111 [email protected]
法務
「最高人民法院による食品薬品
紛争案件の審理における法律
適用の若干問題に関する規定」
について
1.はじめに 2013 年 12 月 23 日、中国最高人民法院は「食品薬品紛争案件の審理における法律適用の若干 問題に関する規定」1(以下、「本規定」といいます)を正式に公布しました。本規定は、「食品 安全法」、「契約法」、「不法行為責任法」、「民事訴訟法」を含む複数の法律に基づくものですが、 その内容の多くは本誌 1 月号にて紹介した改正「消費者権益保護法」を根拠にしており、その 施行日も同じ 2014 年 3 月 15 日2からとなっています。 中国では、過去数年の間に、「メラミン混入粉ミルク事件」、「痩肉精(塩酸クレンブテロール) 中毒事件」などの食品・薬品安全事件が相次いで発生し、大きな社会的関心を呼んでいます。 こうした事件が度重なり発生した背景の一つとして、食品・薬品市場の急速な成長に伴い、供 給商品と販売ルートの拡大と多様化に対し、法的制度の整備が遅れていることが挙げられます。 2013 年 10 月 10 日、2009 年施行の「食品安全法」の改正案が国家食品薬品監督管理総局から 国務院に提出され、食品の安全に関する法整備は新しいステップを迎えました。また、2013 年 5 月 4 日、最高人民法院及び最高人民検察院は、食品安全事件の刑事責任に関する司法解釈であ る「食品安全に危害を及ぼす刑事事件の処理における法の一部適用に関する解釈」3を施行し、 刑事責任追及に関する詳細な判断基準を定めました。 一方、今回公布された本規定は、食品・薬品の安全に関わる民事紛争の処理に関して、より 明確な判断基準を設けることを目的とした司法解釈です。その背景には、食品・薬品の安全に 関わる民事紛争の解決には多くの法律が関係するため、司法実務上の判断基準が交錯し、処理 が複雑になりがちであるという実情があります。本規定はこうした状況の解消に繋がることが 期待されています。 本稿では、本規定における食品・薬品の生産者及び販売者を含む事業者(以下「事業者」と いいます)にとって重要な内容を紹介しつつ、既存の法律との関係について解説していきます。 2.本規定の内容について 本規定は全 18 条からなり、その内容のうち、事業者にとって重要なものは、主に(1)消費 者提訴の相手の範囲、(2)損害賠償請求及び立証責任、(3)関係事業者の責任、(4)懲罰的賠 償請求が挙げられます。 1 2013 年 12 月 9 日付、最高人民法院審判委員会第 1599 回会議において通過した司法解釈(2013 年司法解釈第 28 号)。 2 毎年 3 月 15 日は、中国の消費者権益保護デーである。中央テレビをはじめとするマスコミは、通常この日に消費者権益保 護に関するキャンペーンを行う。メーカー、小売企業などの企業広報部門にとっては、この日は大変緊張する日であるとされ ている。 3 2013 年 4 月 28 日付、最高人民法院審判委員会第 1576 回会議、最高人民検察院第十二回検察委員会第 5 回会議においてそれ ぞれ通過した司法解釈(2013 年司法解釈第 12 号)。 金杜法律事務所 上海事務所 パートナー中国弁護士 陳青東 E-mail:[email protected] URL:http://www.kwm.com法務 (1)消費者提訴の相手の範囲 本規定第 2 条では、食品・薬品の品質問題によって消費者が損害を受けた場合、①消費者は 販売者と生産者のいずれか、又は両方を同時に提訴できる、②消費者が販売者又は生産者の一 方のみを起訴した場合、必要に応じて人民法院はその他の関係者を訴訟参加人として追加でき ると規定されています。 この点、「不法行為責任法」第 43 条第 1 項において、「製品に欠陥が存在したことにより損害 が生じた場合、被害者は製品の生産者に対して賠償を請求することができる。また製品の販売 者に対しても賠償を請求することができる」と規定されていますが、同条項では、被害者が生 産者及び販売者を同時に提訴できるかが明確ではありませんでした。これに関して、本規定第 2 条は、消費者が食品・薬品の生産者及び販売者を同時に提訴できることを明確にしました。 また、「不法行為責任法」第 43 条第 2 項は、「製品の欠陥が生産者によって生じたものである 場合、販売者は賠償を行った後、生産者に対して求償権を有する。販売者の過失により製品に 欠陥が生じた場合、生産者は賠償を行った後、販売者に対して求償権を有する」とし、生産者 と販売者間の責任に基づく求償権を規定しています。そのため本規定では、訴訟実務における 必要性の観点から、生産者と販売者の一方のみを提訴した場合、人民法院は他の関係者を訴訟 参加人として追加できる旨を明確にしました。 (2)損害賠償請求権及び立証責任 本規定第 3 条から第 7 条までは、消費者から生産者及び販売者に対する損害賠償請求権及び それに関する立証責任を規定しています。 ① 欠陥を承知の上で購入した場合の損害賠償請求権 食品・薬品の品質的欠陥を承知の上で購入した者が消費者と言えるか、損害賠償請求権を有 するかについては、現行の「消費者権益保護法」や「食品安全法」にも明確な規定が設けられ ておらず、司法実務における取扱の判断が分かれていました。 このような状況に対し、本規定第 3 条では、食品・薬品の事業者が、消費者が品質の欠陥を 承知の上で購入したことを抗弁事由に挙げた場合、人民法院はこれを支持しないと定め、消費 者が欠陥を承知していることは損害を与えた事業者の免責事由にならない旨を明確にしました。 この規定により、食品・薬品の生産者及び販売者は、その製品の品質に対する注意義務をよ り重く負わされることになります。 ② 贈答品に関する損害賠償請求権 生産者又は販売者から受け取った食品・薬品の贈答品の品質的問題により損害を被った場合、 消費者が損害賠償請求権を有するかに関しては明確な規定がなく、実務上の争点となっていま した。 また、「不法行為責任法」第 43 条では、「製品の品質の欠陥により生じた損害について、被害 者は損害賠償請求権を有する」と規定されており、「製品品質法」第 2 条では、「製品とは、販 売のために加工・製造された製品を指す」と規定されているため、事業者側は、「消費者は贈答 品に対して対価を支払っておらず、贈答品は販売のためのものではないので、製品に当たらず、 賠償する根拠がない」という抗弁事由を挙げることが実務上よく見受けられました。
法務 この点、本規定第 4 条では、消費者が、生産者又は販売者から受け取った食品・薬品の贈答 品の品質的問題により損害を被り権利を主張する場合、人民法院は、消費者が贈答品に関する 対価を支払っていないという事業者側による抗弁事由を支持しない旨を規定し、消費者側の損 害賠償請求権を認めました。 ただ、本条では贈答品により損害を被った場合に限定していますので、消費者が実際に損害 を受けていない場合は、贈答品に品質的な瑕疵があるという事由のみをもって賠償を請求する ことは難しいものと思われます。 ③ 立証責任 「契約法」第 122 条では、「一方当事者の違約行為により相手方の身体、財産上の利益を侵害 した場合、被害者は、本法に基づき違約責任の負担を請求するか、又は他の法律に基づき不法 行為責任の負担を請求するかを選択することができる」とされているため、食品・薬品による 損害に関しても、当該規定に従い、消費者は食品・薬品の事業者に対して損害の違約責任、又 は不法行為責任を追及することができます。 本規定第 5 条によると、食品・薬品に関する違約責任追及の場合と不法行為責任追及の場合 の、それぞれの立証責任は大きく異なります。 まず、違約責任の立証責任について、本規定第 5 条第 1 項では、消費者が食品・薬品の事業 者の違約責任を追及する場合、食品・薬品の購入の事実、及び当該食品・薬品が契約の約定に 合致していないことを証明できれば、人民法院はその主張を支持すると定めています。即ち、 違約責任の追及に関し、消費者は購入の事実と約定に合致していない(例えば関連安全基準に 達していない)ことを証明できれば充分であり、事業者に過失や錯誤があることを証明する必 要はないと解されます。この内容は、「契約法」を含む関連法令上の、契約当事者が違約行為に 関する損害賠償請求を行うときの立証責任に関する規定と一致しています。 それに対し、不法行為責任の立証責任について、本規定第 5 条第 2 項では、消費者が食品・ 薬品の品質的問題により損害を被った場合、初歩的因果関係を証明できれば、人民法院はこの 損害賠償請求権を支持する、ただし、食品・薬品の事業者側が当該損害が食品・薬品の品質に より生じたものではないことを立証できれば、その限りではないと規定しています。この規定 によると、消費者は初歩的因果関係に関する立証責任を負うのみであり、確実な因果関係の立 証は求められていません。また、消費者側の初歩的立証ができた場合、事業者側は①食品・薬 品が品質基準を満たしていること、又は②品質基準を満たしていなくても、消費者側の損害と 食品・薬品との間で因果関係がないことを証明する必要があり、立証責任がここで転換される ことになります。 この点は、「不法行為責任法」、「製品品質法」の規定と一致しています。その背景には、食品・ 薬品の瑕疵、及び被害の因果関係の詳細を消費者側が明確に証明することは、実際には極めて 困難であることに鑑み、立証責任を客観的に、より公平に分担させるという考えがあるためと 思われます。 また、事業者が証明すべき食品の品質基準に関しては、「食品安全法」第 22 条、第 24 条及び 第 25 条で国家・地方・企業という 3 種類の品質安全基準を設けており、いずれの基準を満たし ていることを証明すればよいかが、実務上の問題となっていました。 これに関して、本規定第 6 条では、食品が品質基準を満たしている旨を証明する際には、国
法務 家の品質安全基準を参照しなければならず、国家の基準がない場合は地方の品質安全基準を参 照しなければならない、と規定されています。そのいずれの基準もない場合は、事業者の基準 を根拠に証明することが求められます。なお、事業者の基準が国家や地方の基準よりも高いと きは、事業者の基準を根拠に証明することが求められます。 一方、本規定では薬品の品質に関する立証責任ついては規定されていません。なぜなら、「薬 品管理法」などの法令上で、薬品の品質基準は明確に規定されており4、本規定にて明確にする 必要がないためと思われます。 (3)関係事業者の責任 食品・薬品の生産、販売には、生産者、販売者以外にも、多くの事業者が関係している場合 があります。本規定はそうした関連事業者の責任に関しても規定しています。 本規定第 8 条から第 10 条は、生産、販売環境を提供した事業者の責任について定めています。 以下の場合、生産、販売環境の提供者は、実際の生産者、販売者と連帯して責任を負わなけれ ばなりません。 ① マーケット主催者、ブース貸出人、展示会主催者が「食品安全法」に規定される審査、検 査、管理などの義務を怠って、食品安全事故が発生し、消費者に人身損害をもたらした場 合(第 8 条) ② インターネット取引プラットフォームの提供者が、食品・薬品の実際の生産者、販売者が 当該販売環境を利用して消費者の権利を侵害していることを知りながら必要な措置を取 らず、消費者に損害をもたらした場合(第 9 条第 3 項) ③ 食品生産・販売資格を取得した者が食品生産・販売資格を持たない者に名義を貸し、消費 者に損害をもたらした場合(第 10 条) 上記①∼③の内容はいずれも「不法行為責任法」第 8 条の共同不法行為に関する内容をベー スに、改正「消費者権益保護法」と「食品安全法」の関連規定を加味したものです。また、② について本規定第 9 条第 1 項は、「消費者がインターネット取引プラットフォームを通じて食 品・薬品を購入し、損害を被った場合、インターネット取引プラットフォームの提供者が食品・ 薬品の実際の生産者、販売者の真実な名称、住所及び有効な連絡方法を提供できない場合、人 民法院は、消費者がインターネット取引プラットフォームの提供者を相手とする損害賠償請求 を支持する」とも定められています。インターネット販売が急成長した近年において、それに 由来する紛争処理の根拠を初めて明文化したことは大きな意義があるといえます5。 また、本規定第 11 条から第 13 条は、生産、販売の過程における品質検査、広告宣伝に関連 する事業者の責任について規定しています。 ① 虚偽広告経営者、広告主、虚偽広告における商品推薦者(社会団体、その他の組織と個人 を含む)の責任(第 11 条) 4 「薬品管理法」第 32 条:薬品は国家の薬品基準を満たさなければならない。 5 改正「消費者権益保護法」の中でも、同様の規定がなされている。本規定の内容はそれに沿った実務処理上の規定である。
法務 ② 食品・薬品検査機構が故意に虚偽の検査報告した場合の責任(第 12 条第 1 項) ③ 食品認証機構が故意に虚偽の認証を行った場合の責任(第 13 条第 1 項) ①は改正「消費者権益保護法」第 45 条6と「食品安全法」第 55 条7を反映した内容です。ま た、②と③については、「故意」ではなくても、「過失」により事実と異なった検査報告、認証 を行った場合も、消費者の請求に応じて「過失」の程度に相当する賠償責任を求められます(第 12 条第 2 項、第 13 条第 2 項)。 近年、市場の急拡大に伴って、虚偽の宣伝のみならず、食品・薬品の検査、認証を行う機構 による虚偽も多発し、市場の規範化が急務となっています。今回の本規定がそうした行為に対 する制裁強化の一環として機能することが期待されます。 (4)懲罰的賠償請求 既存の法令では、以下のような懲罰的賠償請求が規定されています。 ① 「不法行為責任法」第 47 条では「欠陥を知りながらこれを生産或いは販売し、他人に健 康被害を及ぼした場合、損害を受けた者は懲罰的賠償請求ができる」と規定しています。 ② 改正「消費者権益保護法」第 55 条では「事業者が詐欺行為により消費者に損害を与えた 場合、消費者の請求に応じて、損失に対する賠償を増額することができ、その増額は消費 金額の 3 倍までとする」と規定しています。 ③ 「食品安全法」第 96 条では、「安全基準を満たさない食品を生産し、或いは安全基準を満 たさないと知りながらこれを販売した場合、消費者は生産者、販売者に対し、損害賠償請 求以外に購入価格の 10 倍の賠償金を請求できる」と規定しています。 食品の品質問題の紛争において、実務上、健康被害を懲罰的請求の前提にすべきかの問題が あります。これに関しては、①の「不法行為責任法」では前提にしているのに対して、②及び ③の法規では前提にしておらず、それにより司法判断が分かれるところです。この点、本規定 第 15 条では、「食品安全法」第 96 条をベースに、「安全基準を満たさない食品を生産し、或い は安全基準を満たさないと知りながらこれを販売した場合、消費者は生産者、販売者に対し、 損害賠償請求以外に購入価格の 10 倍の賠償金、或いはその他法律に定められた基準での賠償請 求を、人民法院は支持する」と規定し、健康被害が懲罰的請求の前提ではないと明確に示しま した。 6 改正「消費者権益保護法」第 45 条第 2 項:広告事業者、発行者が消費者の生命健康に関わる商品又はサービスの虚偽広告 を制作、発行して、消費者に損害が発生した場合、その商品又はサービスを提供する事業者と連帯して責任を負わなければな らない。 第 45 条第 3 項:社会団体又はその他の組織、個人が、消費者の生命健康に関わる商品又はサービスの虚偽広告やその他の虚 偽宣伝において、消費者に商品又はサービスを推薦し、消費者に損害を及ぼした場合は、その商品又はサービスを提供した事 業者と連帯責任を負わなければならない。 7 「食品安全法」第 55 条:社会団体又はその他の組織、個人は、虚偽の広告の中で消費者に食品を推薦し、消費者の合法的 権益が損なわれた場合、食品製造・販売者と連帯責任を負う。