【目 的】 近年、本邦における同種骨移植を含む骨移植の件数は増加傾向にある。同種骨は骨伝導能を有する一 方骨誘導能に乏しく、広範囲骨欠損における再建術を行う際に同種骨移植を用いて治療を行う際に骨癒 合不全など臨床的に問題を生じることが多いと報告されている。この骨癒合不全の問題を解決すること は患者のQOLの向上につながり、骨芽細胞分化を促進するrh-BMP-2を投与することで骨形成が促進すれ ばこの問題の解決策を導く一助になる。本研究の目的は大腿骨広範囲骨欠損モデルratに対してDDSを使 用し同種骨移植におけるrh-BMP-2の骨形成に対する影響を検討することである。 【方 法】
本研究において7週齢、雄のLewis rat、Wistar ratを使用した。Lewis ratの左大腿骨骨幹部から8mmの 骨片を摘出して冷凍処理を行った。Wistar ratの左大腿骨骨幹部に8mmの骨欠損モデルのラットを作成し、 18ゲージ針を髄内釘として使用し、冷凍処理した同種骨を用いて骨接合術を行った。骨接合術を行う際 にrh-BMP-2をDDS(PLA-PEG15mg+βTCP15mg)に混和して移植骨に塗布した。rh-BMP-2使用量により 0μg,2.5μg,5μg,10μgの4群を作成した。(各々n=8)レントゲン撮影を術直後、術後3、6、9、12週後に行い、 術後12週で犠牲死させ、組織学的評価、力学試験(三点曲げ試験)を施行した。 【結 果】 BMP含有DDSを使用した群(rh-BMP-2:2.5μg,5μg,10μg)ではBMP0μg群と比較してレントゲン、組織 ともに良好な骨形成を認めた。BMP含有DDSを使用した群においてレントゲン上、骨形成は術後6週よ りみられる傾向にあった。力学試験においても強度はBMP含有DDSを使用した群でBMP0μg群と比較し て大きく、BMP10μg群は生後19週のintact boneと同等の強度であった。
広範囲骨欠損モデルラットに対する同種骨移植における
rh-BMP-2の骨形成への有効性の検討
安田宏之 矢野公一 松本富哉 中村博亮 高岡邦夫 (大阪市立大学大学院医学研究科 整形外科)Our previous researches have demonstrated the enhanced angiogenesis and ectopic bone formation by a single delivery system of stromal cell-derived factor-1 (SDF-1) and bone morphogenetic protein-2 (BMP-2) from gelatin hydrogels, respectively. In this study, when implanted with gelatin hydrogels incorporating mixed SDF-1 and BMP-2, in vivo bone regeneration at an ulna critical-sized defect or a subcutaneous site was investigated to compare with that of hydrogels incorporating either SDF-1 or BMP-2. The release profiles of SDF-1 and BMP-2, the degradation profile of gelatin hydrogels, and the recruitment of bone marrow-derived mesenchymal stem and endothelial positive cells were assessed. The gelatin hydrogels incorporating mixed SDF-1 and BMP-2 enhanced bone regeneration to a significant extent, compared with those incorporating either SDF-1 or BMP-2. The release study showed the simultaneously controlled release of both SDF-1 and BMP-2 from gelatin hydrogels over 4 weeks. The time profiles of SDF-1 and BMP-2 release were correlated well with those of gelatin hydrogels degradation (R2 0.92). After implantation into green fluorescent protein (GFP)-positive Chimeric mice, the strongest osteocalcin (OCN)-positive cells were observed in the gelatin hydrogels incorporating mixed SDF-1 and BMP-2 4 weeks later. In addition, the same localization of OCN- and GFP-positive cells was observed, indicating the recruitment of bone marrow-derived mesenchymal stem cells to those hydrogels implanted and their osteogenic differentiation thereat. On the other hand, OCN-positive cells were not found for the hydrogels incorporating SDF-1 or phosphate-buffered saline (PBS). Furthermore, the highest expressions of CD31- and CD34-positive cells (endothelial markers) were clearly observed in the hydrogels incorporating mixed SDF-1 and BMP-2. An enhanced angiogenesis was observed around the tissue implanted with hydrogels incorporating mixed SDF-1 and BMP-2 or BMP-2. It is concluded that the dual release of SDF-1 and BMP-2 from gelatin hydrogels enhanced bone regeneration through an increased recruitment of osteoblast progenitor cells and an enhanced angiogenesis.
Enhanced bone formation by a dual release of stromal cell-derived factor-1
and bone morphogenetic protein-2 from gelatin hydrogels
Juthamas Ratanavaraporn, Hiroyuki Furuya, Hiroshi Kohara and Yasuhiko Tabata
【目 的】
骨形成因子(BMP)はTGF-βスーパーファミリーに属するサイトカインである。BMPファミリーには BMP-2/4、BMP-6/7、BMP-9/10の3つのサブファミリーが存在するが、血管内皮細胞においてBMP-2/4とBMP-6/7はactivin receptor-like kinases(ALK)-2, 3, 6というI型受容体を、BMP-9/10はALK-1受容体 を介してシグナルを伝達することが報告されている。特にBMP-9/10は末梢血中に高濃度で存在するこ とから、その生理的意義が注目されている。我々は以前TGF-βがリンパ管内皮細胞の増殖を抑制するこ とを報告したが、リンパ管の形成におけるBMP-9/ALK-1シグナルの役割については未解明な部分が多く 残されていたため、培養細胞やマウス個体などの実験系を用いて検討した。 【方 法】 ヒト皮膚由来リンパ管内皮細胞HDLECを用いてBMP-9の細胞増殖に対する効果を検討した。またレ ンチウィルスを感染させることにより、BMP-9を発現するBxPC3ヒト膵臓癌細胞を樹立して、ヌードマ ウスへ皮下移植を行い、腫瘍内に形成される血管ならびにリンパ管を観察した。 【結 果】 HDLECをBMP-9存在下で培養することにより、有意にその細胞数が減少することが示された。また BMP-9添加によりアポトーシスを引き起こしている細胞が増加しており、リンパ管内皮細胞としての機 能維持に必要とされる転写因子Prox1の発現が低下していた。そしてBxPC3ヒト膵臓癌細胞由来の腫瘍 内において、形成された血管の数はBMP-9によって増加したが、リンパ管の数はBMP-9によって著しく 減少した。 【結 論】 以上の結果から、培養細胞ならびに個体レベルでもBMP-9がリンパ管形成を抑制することが示唆された。
リンパ管形成における骨形成因子(BMP)シグナルの役割
吉松康裕 鈴木夕佳 渡部徹郎 宮園浩平 (東京大学大学院医学系研究科 分子病理学分野)BMPは骨や鉄の代謝や血管形成を制御していることが知られているが、癌の発生や進展にも大きく関 与する。BMPの癌への作用は癌の種類に応じて異なるが、脳腫瘍や大腸直腸癌において、BMPは有力な 腫瘍抑制因子として考えられている。最近の研究では、BMPが胃における過誤腫や腺腫の形成を抑制し ていることが示唆されている。しかし、スキルス胃癌におけるBMPの役割は未解明な点が多い。我々は、 ヒトスキルス胃癌由来の細胞株であるOCUM-12、HSC-39、OCUM-2MLNを用いて、スキルス胃癌の進 展におけるBMPの作用について、in vitro、in vivoの両面から検討した。
いずれのスキルス胃癌細胞株においてもBMP-4シグナルが伝達されることが確認されたため、BMP-2/4の特異的。型受容体であるALK3のドミナントネガティブ変異型(dnALK3)の過剰発現株を樹立した。 OCUM-12、HSC-39のdnALK3発現株では、GFP発現株と比較して、ヌードマウスにおける腫瘍形成が有 意に亢進していた。腫瘍微小環境には大きな変化が見られなかったが、in vitroにおいて、BMP-4がSmad pathwayを介してp21の発現を誘導することで、スキルス胃癌細胞の細胞周期を停止させ、細胞増殖を抑 制していることを明らかにした。さらに、ALK3の恒常活性型(caALK3)の発現により、HSC-39やOCUM-2MLNにおける増殖がin vitro、in vivoにおいて抑制されることが示された。臨床検体におけるBMPシグ ナルの機能についても、pSmad1/5/8やp21、MIB-1の免疫染色を施行して検討している。
これらの結果より、スキルス胃癌におけるBMP-2/4の増殖抑制作用が、in vitro、 in vivoの両面におい て示され、BMP-2/4がスキルス胃癌において腫瘍抑制因子の一つとして機能していることが示唆された。
スキルス胃癌においてBMP-2/4は腫瘍抑制因子として作用する
白井陽太郎 江幡正悟 宮園浩平
【目 的】
骨粗鬆症は加齢やエストロゲン欠乏、ステロイドに代表される薬剤投与など様々な要因によって発症 する多因子疾患であり、これらの要因が複雑に絡み合っているためその病態は複雑と考えられるが、 これらの要因に加え遺伝的な要因による骨粗鬆症もあると考えられる。本研究では日本人の約40%が 保因者であるアルデハイド脱水素酵素2(ALDH2; aldehyde dehydrogenase 2)遺伝子のsingle nucleotide polymorphism(SNP)に注目し、ALDH2変異による骨芽細胞のBMP2(Bone morphogenic protein 2)への 応答性ならびに遺伝的要因による骨粗鬆症の発症機構を解明することを目的に解析を行うこととした。 【方法および結果】
変異型ALDH2(ALDH2*2)を発現するトランスジェニックマウス(ALDH2*2マウス)を用いて、骨量を DEXA(dual energy X-ray absorptiometry)で解析したところ、野生型マウスに比して著しい骨量の低下を 示した。また、骨組織を骨形態計測により解析したところ、破骨細胞の形成不全に加えて骨芽細胞の活 性が低下していることを見出した。ALDH2*2マウス由来の骨芽細胞を用いて、in vitroでBMP2刺激によ る分化誘導を行ったところ、分化能の著しい低下を認めた。ALDH2*2マウスではアセトアルデヒドが蓄 積していることを見出したことから、アセトアルデヒドを野生型マウス由来の骨芽細胞分化系に添加し たところ、BMP2による分化が著しく阻害されることを見出した。 【考 察】 日本人に保因者が多い変異型ALDH2が骨粗鬆症の素因となること、破骨細胞の形成障害下にも関わら ずそれ以上の強い骨芽細胞分化障害により骨量が低下すること、BMP2による骨芽細胞分化が強く阻害 されることが示された。ALDH2はアルコール代謝に重要であることが知られているが、ALDH2変異によ る骨粗鬆症化はアルコール非摂取下で発症することから、ALDH2が生理的な骨恒常性制御に重要な機能 を有することが示唆された。
ALDH2変異による骨粗鬆症と骨芽細胞機能不全
宮本健史 星 淡子 戸山芳昭 (慶應義塾大学医学部 整形外科)Objectives:
This study aimed to conduct a case-control investigation in maxilofacial morphogenesis, using a sample of Id2 homozygous knockout (KO) and wild-type (WT) mice. A special interest was to establish a relationship among Id2, BMP signals and chondrogenesis.
Materials and Methods:
Appropriate ethics approval has been received. Crania collected from mice at the age of 0 day, 2 weeks and 12 weeks were assessed with a Euclidean Distance Matrix Analysis method. Cultured synchondroses of the murine cranial base were inspected with a histological approach and examined with a reverse transcription polymerase chain reaction technique.
Results:
A shorter nasofrontal profile was seen in Id2 KO 12-week-olds but not 0-day-olds. The WT-KO gap in the skull length instead of the width increased with age. KO 2-week-olds showed a narrower hypertrophic zone and an inhibited proliferative zone in the presphenoid and the spheno-occipital synchondroses. Id2 expression in WT synchondroses was identified. Distribution of Type X collagen other than osteopontin was downregulated in Id2 KO samples. The WT murine cranial base showed a wider hypertrophic zone, a higher degree of ectopic hypertrophy and a larger number of proliferative chondrocytes in the presence of exogenous BMP2, BMP4 and BMP7, respectively. Such acquired growth was not detected in KO subjects. A 5-fold upregulation of Smad7 transcripts and a decrease in phosphorylation of Smad1-Smad5-and-Smad8-positive cells were identified in Id2 KO cartilage.
Conclusions:
Postnatal chondrogenesis was related to Id2 that acted downstream to enhance BMP signals by inhibiting Smad7 expression.
Id2 acts downstream of BMP signaling in chondrogenesis
Boyen Huang, Katsu Takahashi, Tomoko Sakata-Goto Honoka Kiso, Hiroko Tsukamoto and Kazuhisa Bessho
遺伝性多発性外骨腫(Hereditary multiple exostosis: HME)は、骨幹端部に発生する多発性骨軟骨種を 特徴とする常染色体優性の遺伝性疾患であり、しばしば低身長、四肢の変形を伴う。連鎖解析の結果、 Exostosin 1(EXT1), Exostosin 2(EXT2)がHMEの主たる原因遺伝子であることEXT1がへパラン硫酸(Heparan sulfate : HS)の合成に必須な酵素であることが見いだされた。しかし、HSの欠損とHMEの数々の病態と の因果関係については不明であった。 EXT1の通常のノックアウトマウスは胎生致死であるため、四肢特異的に発現するPrx-1を用いてEXT1 を四肢特異的に欠損させるマウスモデルを作成した(変異マウス)。変異マウスは、四肢骨の短縮、横径 の増大、関節形成不全、指欠損などの多岐にわたる四肢発生異常を示した。組織学的検討の結果、変異 マウスにおいては間葉凝集(Mesenchymal condensation:MC)および軟骨膜の形成が障害されていた。さ らに、肢芽より間葉系幹細胞を含む細胞を採取、Micromass cultureを行ったところ、HSの欠損により Bone Morphogenic Protein(BMP)の拡散、BMP下流経路の活性化が障害されていた。また、胎生12.5日 の肢芽の組織標本において、野生型ではMCに一致したBMPの活性化を認めたが、変異マウスにおいて はBMP活性化の範囲が拡大また減弱していた。 HSは、四肢発生時における正常なBMP経路活性化およびMC形成に必須であることが示されると共に、 HSの欠損はHMEの四肢変形の病因の1つとなっている可能性が示唆された。
四肢発生時のBMP情報伝達経路における
ヘパラン硫酸プロテオグリカンの役割
松本嘉寛1 福士純一1 岡崎 賢1 岩本幸英1 山口 悠2 入江史敏2 (九州大学医学研究院 整形外科1) (Sanford-Burnham医学研究所2)BMPは骨芽細胞の分化を促進することが知られている。一方で、生体におけるBMPの破骨細胞に対す る作用は決定されていない。今回我々は、破骨細胞特異的にBMPシグナルを制御したマウスを作製し、 解析した。 【方 法】 IA型BMP受容体遺伝子(Bmpr1a)のfloxedマウスと、破骨細胞特異的Ctsk-Creノックインマウスを交配 し、破骨細胞特異的にIA型BMP受容体を欠失したCtsk-Cre/+;Bmpr1a flox/floxコンディショナルノック アウトマウス(CKO)を作製し、解析した。 【結果と考察】 CKOマウスの体は小さく、脛骨のmicro CT像では海綿骨の増加と皮質骨の肥厚が観察された。CKOマ ウス脾臓を用いた破骨細胞の形成能は、コントロールマウス脾臓のそれに比べて、RANKL存在下の単培 養では同等、calvaria由来の培養骨芽細胞との共培養ではより多く形成された。また、CKOマウス脾臓か ら誘導した成熟破骨細胞における破骨細胞マーカー遺伝子の発現は増加していた。一方で、8週令マウス 脛骨海綿骨における骨形態計測では、CKOマウスにおいて骨量の増加、破骨細胞数及び骨吸収面の減少、 骨芽細胞数の増加と骨形成速度の増加を認めた。これらの結果から破骨細胞におけるBMPシグナルは、 骨芽細胞性骨形成を抑制することが明らかになった。破骨細胞数に関しては培養実験結果と相違を認め、 生体での複雑な機序の存在が示唆される。 【結 語】 破骨細胞におけるBMPシグナルは、骨形成と骨吸収のリモデリングにおいて重要な役割を担っており、 骨の形成と維持に不可欠であると考えた。
破骨細胞におけるBMPR1Aシグナルは骨形成を調節する
−破骨細胞特異的にBmpr1Aを欠失させたコンディショナルノックアウトマウスの解析−
岡本美奈1,2 村井純子1,2 今井祐記3 池上大督1,2 神谷宣広5 加藤茂明3 三品裕司4 吉川秀樹1 妻木範行1,2,6 (大阪大学大学院医学系研究科 骨・軟骨形成制御学1) (大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学整形外科2) (東京大学分子細胞生物学研究所3)(School of Density, University of Michigan4)
(Research Department, Texas Scottish Rite Hospital for Children5)(京都大学 iPS細胞研究所6)
【目 的】 何らかの原因により、小胞体に“折りたたみ不全タンパク質”が蓄積した場合、これらの不良タンパ ク質を検知・除去するために小胞体ストレス応答と呼ばれるシグナル伝達機構が機能する。骨芽細胞は 大量の骨基質タンパク質を産生することから、不良タンパク質の蓄積が多く、骨芽細胞の分化過程にお いて、小胞体ストレス応答機構が関与していることが推測されていた。すでにこれまで、小胞体ストレ ス応答分子であるOASIS、およびPERK-ATF4経路が骨芽細胞分化の制御に関わっていることが報告され ているが、これらの経路は個体発生過程における骨芽細胞分化に関与するだけでなく、BMP2添加によ る骨芽細胞分化の強制的誘導の際にも活性化されることが示されている。そこで本研究ではBMP2添加 による骨芽細胞分化の強制誘導時におけるIRE1α-XBP1経路の機能解明を試みた。 【結果・考察】 野生型マウス胎児繊維芽細胞へBMP2を添加し、骨芽細胞分化を誘導したところ、Xbp1遺伝子の発現 上昇とXBP1タンパク質の核への移行が観察された。さらにマウス新生児の頭蓋骨を用いたex vivo培養系 においても、BMP2添加によりIRE1α分子の活性化とXBP1のスプライシングが生じることが示された。 次に、IRE1α欠損細胞、およびsiRNAにてXBP1の発現を抑制した細胞を用いてBMP2誘導による骨芽細 胞分化能の確認を行ったところ、これらの細胞においてBMP2添加による骨芽細胞分化が著明に抑制さ れることが明らかとなった。興味深いことに骨芽細胞関連遺伝子の発現解析から、IRE1α欠損細胞では BMP2添加後のOsterixの発現が顕著に低下していることが確認された。そこで、IRE1α-XBP1経路と Osterixの転写制御の関連を検討したところ、XBP1がOsterixプロモーターに直接結合し、Osterixの転写 を亢進しうることを見出した。
小胞体ストレス応答機構IRE1
α-XBP1経路はBMP2誘導性の
骨芽細胞分化過程において活性化され、Osterixの転写を誘導する
東門田誠一1,2 宮内芳輝2 千葉一裕1,2 戸山芳昭2 堀内圭輔1,2 (慶應義塾大学医学部 抗加齢運動器学講座1) (慶應義塾大学医学部 整形外科学教室2)【背景・目的】 Smad1/5/8はBMP受容体によって活性化される主要な転写因子である。我々は、BMPシグナルの分子 メカニズムを明らかにするため、プロテオミクスの手法を用いてSmad1結合因子を解析し、ZRANB2を 新規のSmad調節因子として同定することに成功した。 【方法・結果】 HEK293細胞にFLAG-Smad1を発現させ、抗FLAG抗体による免疫沈降物をプロテオミクスの手法で解 析し、結合因子としてZinc finger RAN-binding domain containing 2(ZRANB2)を同定した。Zranb2は Smad1/5/8のBMP-Smad以外にTGF-SmadであるSmad2/3およびco-SmadであるSmad4とも結合した。 Zranb2の過剰発現はBMP特異的Id1-luc活性とTGF特異的CAGA-luc活性を抑制した。また、C2C12細胞の BMPによる骨芽細胞分化に対してZranb2は抑制的に作用した。さらに、C2C12細胞の内在性Zranb2を siRNAにてノックダウンすると、BMPによる骨芽細胞分化およびId1-luc活性を促進した。Zranb2、は BMP刺激によって誘導されるSmad1/5のリン酸化および核内局在には影響を与えず、C末端のリン酸化 部位を変位させた構成的活性型Smad1による骨芽細胞分化も抑制したが、Runx2によって誘導される骨 芽細胞分化には影響しなかった。また、Zranb2は、Smad1/5とSmad4のId1遺伝子に存在するBMP応答 配列へのDNA結合には影響しないことが示された。Zranb2の野生型およびN末側のZnフィンガー(ZF)ド メイン欠損型変異体は核に局在するのに対し、C末側に存在するセリン・アルギニン・リッチ(SR)ドメ イン欠損型変異体は細胞質に局在し、BMPに対する抑制活性を失うことが判明した。また、Zranb2はZF ドメインとSRドメインの間に存在するグルタミン酸リッチドメインを介してSmadと結合する可能性が 示された。 【考 察】 以上の結果から、Zranb2はSmadに結合することでシグナルを抑制する新しい分子と考えられた。 Zranb2は、SmadのDNA結合能に影響せずに初期応答遺伝子の発現を抑制したことから、コア口ベータ との競合、またはコリプレッサーのリクルートによりSmadの転写活性を抑制すると予想された。
新規Smad結合分子Zranb2はBMPシグナル抑制因子である
大手 聡1 古株彰一郎1 家村俊一郎2 笹沼寛樹1 米山克美1 進 正史1 福田 亨1 夏目 徹2 自見英治郎3 片桐岳信1 (埼玉医科大学ゲノム医学研究センター 病態生理部門1) (産業技術総合研究所2) (九州歯科大学生命科学講座 分子情報生化学分野3)SUMO(Small ubiquitin related modifier)化修飾はユビキチン化に類似したタンパク質翻訳後修飾であ り、SUMO化修飾を受けた標的タンパク質はその安定性や活性、局在などが変化することが報告されて いる。BMPシグナル伝達において転写因子として機能するSmad4もSUMO化修飾の標的タンパク質であ ることが報告されているが、SUMO化修飾がBMP刺激による骨芽細胞分化の促進にどのような役割を担 っているかは未だ報告がない。 そこで我々はSUMO化修飾による骨芽細胞分化調節機構を明らかにする目的で免疫化学的および分子 生物学的な解析を行った。マウスを用いたSUMO-1タンパク質の免疫染色の結果から、骨膜付近の線維 芽細胞様細胞に陽性反応が認められる一方で、骨芽細胞では局在を示すシグナルが減弱する傾向を認め た。骨芽細胞分化におけるSUMO化修飾の役割を明らかにするため、マウス筋芽細胞由来培養細胞株 C2C12細胞を用いて、SUMO化修飾に必須の酵素であるUBC9をsiRNAによりノックダウンした。UBC9 のノックダウンにより、SUMO化修飾を受けるタンパク質は減少し、BMP添加時のアルカリホスファタ ーゼ活性や骨芽細胞分化マーカー遺伝子発現が上昇した。さらに、DNAマイクロアレイによる網羅的な 解析により、SUMO化修飾の阻害はBMP刺激による骨芽細胞分化の促進および筋細胞への分化の阻害の 両方を増強していることが明らかになった。UBC9のノックダウンによって、Smad1/5/8のリン酸化お よびそのタンパクレベルには大きな影響は認められない一方で、BMPシグナルの標的遺伝子であるId-1 遺伝子のプロモーターを用いたレポーターアッセイの結果から、UBC9のノックダウンはBMPシグナル の伝達を促進することが分かった。また、SUMO化修飾を受けないようにアミノ酸を置換した変異型 Smad4は野生型と比べBMPシグナルの伝達活性が強くなることを見出した。 以上のことから、Smad4のSUMO化修飾はBMP刺激による骨芽細胞分化を抑制的に調節していると考 えられる。
SUMO化修飾によるBMP応答能の制御
雪田 聡1 細矢明宏1 片桐岳信2 中村浩彰1 (松本歯科大学歯学部 口腔解剖学第2講座1) (埼玉医科大学ゲノム医学研究センター 病態生理部門2)BMPは骨欠損部の修復を可能とするが、その活性は齧歯類に比べ大型動物では低下し、マウスやラット よりイヌにおいてはより多くのBMPを必要とするとされ、さらにサルを用いた実験等からも大型の動物 におけるBMPの活性レベルはイヌなど中型動物に比べさらに低くなることが報告されている。このよう なことから将来的な人への応用に向けた問題点の一つとなっている。BMP活性には修飾因子が存在しこ れについての検討がなされてきた。これまで負の修飾因子についての検討からBMP活性を促進するため に、これを負の修飾因子を抑制することが実験的な可能性として示されてきた。一方、BMP活性を正に 促進する活性が得られるならば治療の上でより有効な方法となる可能性がある。これまで生体内におけ る骨の形成を促進する分子としてはBMPに加え副甲状腺ホルモンが知られているがBMP同様ペプチドで あること更には副甲状腺ホルモンでは全身性の投与が主体であることから、より局所性で尚且つ非ペプ チド性の分子がBMPの局所的な作用の促進的修飾の上では望ましい。このような観点から、現在得られ る骨形成の促進を達成する分子としてプロスタグランジンが注目される。これまでプロスタグランジン Eは全身投与においてもまた局所投与においても骨形成の促進活性が生体内で示されてきた。一方、プ ロスタグランジンEの受容体が腸管など骨以外に存在することから全身投与のプロスタグランジンEの投 与は骨形成を起こす用量では下痢等の副作用が動物実験で観察されることから、より選択的なプロスタ グランジンの受容体へのアゴニストとしてEP4に対する分子の骨形成促進活性検討がなされてきた。こ のEP4アゴニストは骨芽細胞に、より選択的に発現する受容体を介することから全身性の副作用を低減 するとともに局所的な活性を持つことにより骨欠損等の修復に対する使用が可能であることが示されて いる。今回、BMPとEP4アゴニスト(以下EP4A)の両者を用いることにより、BMPの用量を軽減出来る か否かついて検討を行った。BMP並びにEP4Aはそれぞれペプチド並びに低分子量の化学薬品であるこ とから両者を適切に局所に対し投与できる方法が必要であり、この観点からナノゲルによるシステムを 用いた。コレステロールプルランを用いたナノゲルは秋吉らにより、その有効性が報告されておりヒト に対する使用も報告されている。EP4AおよびBMPをナノゲルにより通常は自然治癒を起こさない骨欠 損部に対して投与する方法の検討を行った。その結果、ナノゲルのシステムは適切な形状により骨欠損 部と同様の形態を取ることが可能であり、またそのゲルからのBMP及びEP4Aの両者の欠損部への導入 によりBMP単独の場合よりも低いBMP用量により骨欠損が可能であることが明らかになった。これらの 検討により適切な担体を用いることによりBMPの活性を正に修飾する低分子化合物の併用が出来る可能 性が示された。