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早産児をもつ母親の親役割獲得過程に関する研究

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J. Jpn. Acad. Mid., Vol. 16, No. 2, pp. 25-35, 2003. 2

The

process

of maternal

role

attainment

in preterm

mothers

Abstract Object

The purpose of this study is to identify the factors involved in the process of maternal

(Sapporo Medical University)

早産児 を もつ母親の親役割獲得過程 に関す る研究

安 積 陽 子(Yoko ASAKA)* 要 約 目 的 本 研 究 の 目的 は,早 産 児 の母 親 の親 役 割 獲 得 過 程 を明 らか にす る こ とで あ る。 対 象 お よび 方 法 研 究 対 象 者 は,子 ど もがNICUを 退 院 して約1年 経 過 した初 産 婦7名 で あ る。 子 ど もの 在 胎 週 数 は 29週 ∼35週,出 生 体 重 は836g∼1,458gで あ っ た。NICU退 院 時 に,神 経 学 的 に異 常 な所 見 が認 め ら れ た 子 ど もは い な か っ た。 デ ー タ は半 構 成 的 面 接 法 に よ って収 集 し,面 接 内 容 を逐 語 録 と して デ ー タ 化 し た。 デ ー タ分 析 は,グ ラウ ン デ ッ ド ・セ オ リー ・ア プ ロー チ の 継 続 的比 較 分 析 法 を参 考 に して 行 っ た 。 結 果 分 析 結 果 か ら,《 出 産 に対 す る期 待 が 奪 わ れ た体 験 》,《期 待 喪 失 に対 す る悲 嘆 反 応 》,《親 役 割 の適 応 》,《普 通 の親 子 へ の希 求 》,《親 役 割 獲 得 に必 要 なサ ポー ト》 の5つ の カ テ ゴ リーが 抽 出 さ れ た 。 早 産 児 の母 親 は,育 児 の 困難 さ に直 面 す る た び に,罪 責 感,喪 失 感 等 の 悲 嘆 を想 起 して い た。 この よ うな 悲 嘆 は,育 児 に対 す る 自信 の な さや あせ り,苛 立 ち とな って 育 児 行 動 に反 映 され て いた 。 この状 況 に対 し て,《 普 通 の親 子 へ の 希 求 》 は,自 分 た ち親 子 は特 別 で は な い と と らえ る こ とで早 産 した 悲 嘆 を和 らげ, 親 役 割 に適 応 す る た め に用 い られた 対 処 行 動 で あ った 。 具 体 的 に は,早 産 した こ とに意 味 を見 い だ す, 子 ど もの健 康 な部 分 を見 い だす,他 の母 親 と自己 の体 験 を比 較 す る こ とが 見 い だ され た。 結 論 本 研 究 の 結 果 か ら,早 産 児 を もつ母 親 の 親 役 割 獲 得 過 程 の 理 解 に は,時 間 経 過 の み な らず,《 期 待 に 反 す る予 期 的 悲 嘆 》,《親 役 割 の 適 応 》,《普 通 の親 子 へ の 希 求 》 の3カ テ ゴ リー間 の関 連 を考 慮 す る必 要 が あ る こ とが 示 唆 され た。 キ ー ワー ド 早 産 児 の母 親,親 役 割 獲 得 過 程,普 通 の親 子 へ の 希 求 *札 幌医科大学保健医療学研究科 2002年4月10日 受 付2002年8月12日 採 用 日本 助 産 学会 誌 第16巻 第2号(2003.2) 25

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早産児 をもつ母親の親役割獲得過程に関する研究

role attainment and the interactions between those factors in preterm mothers. Subjects

The subjects of this study were seven first-time mothers ranging from 25 to 34 years with a mean of 29.7. The subjects delivered their babies after 29 to 35 gestational weeks. Birth weights ranged from 836-1458 grams. The infants had been home from the NICU 9-16 months at the first time of the interviews. All of them did not have serious medical prob-lems, developmental delays at the time of discharge from the NICU.

Methods

The design was descriptive, using a grounded theory approach. Data derived from semi-structured interviews was examined by constant comparative analysis after each inter-view was transcribed.

Results

Five categories were identified in the process of maternal role attainment in this study : "Loss of expectati

ons that the birth will be normal one", "Grieving caused by unfulfilled expectation", "Adaptation to the maternal role", "The search for normal 'parent and baby'

images", "The development of support networks for maternal role attainment". The finding categories, "Grieving caused by unfulfilled expectation", "Adaptation to the maternal role", "The search for normal 'pa

rent and baby' images", are interacted with each other in the process of maternal role attainment mothers during first year.

"The search for normal 'parent and b

aby' images", which is considered as a core category in this result, includes a series of a coping strategies that eases the negative feelings result-ing from havresult-ing preterm babies. These strategies involve downward comparison , lateral com-parison, searching for meaning in times of crisis, and normalization.

Conclusions

These results contribute to the knowledge of maternal role attainment in preterm mothers and suggest the importance of approaches that enhance the mother's ability to use coping strategies.

Key Words Preterm mothers, Maternal role attainment, Searching for images of normal parent and baby

I問 題 の 背 景 お よ び 研 究 の 目 的 少 産 少 死 時 代 と言 わ れ る現 代 で はあ るが,過 去 20年 間 に お け る全 出生 数 に対 す る早 産 児 の 占 め る 割 合 は,昭 和55年 か ら平 成8年 の 間 に4.1%か ら 5.0%と 上 昇 傾 向 を示 して い る(厚 生 統 計 協 会 編 集,2000)、 また,超 低 出 生 体 重 児 に お け る新 生 児 期 死 亡 率 の 全 国 平 均 は,1980年 度 の55.3%か ら 1995年 度 の21.6%に まで 低 下 して お り,現 在 で は 8割 近 い児 の生 存 退 院 が 可 能 な時 代 に な っ た(日 本 小 児 科 学 会 新 生 児委 員 会 新 生 児 医 療 調 査 小 委 員 会,1996)。 した が っ て,ハ イ リ ス ク 児 が 家 庭 へ 戻 っ た後,養 育 の 中 心 を担 う母 親 が 適 切 に親 役 割 を とれ る よ う にサ ポ ー トを提 供 す る こ とは非 常 に 重 要 な課 題 とな って い る。 親 役 割 に は2つ の 側 面 が あ る(馬 場,1990)。 1つ は環 境 の 変 化 や 病 気 か ら子 ど もを守 り,栄 養 を与 え て子 ど もの 体 の 成 熟 を はか る とい う保 護 の 側 面 で あ る。2つ 目 は子 ど もの 成 熟 の程 度 に従 っ て 運 動 ・言 語 ・精 神 発 達 を助 け,社 会 の ル ー ル を 教 え子 ど もの 自立 を促 進 す る側 面 で あ る。 親 役 割 を果 た す前 提 に は他 者 に対 す る共 感 的 理 解 の 能 力 を必 要 と し,こ の 能 力 は社 会 的 文 脈 の 中 で学 習 に よ っ て 発 達 し て い く(大 日 向,1988)。Mercer (1981)は 母 親 役 割 獲 得 を 「母 親 と して の ア イ デ 26 日本 助産 学 会誌 第16巻 第2号(2003.2)

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早産 児 を もつ母 親 の親 役 割獲 得 過 程 に関 す る研究 ンテ ィテ ィ に心 地 よ さ を感 じ られ る よ う に,母 親 役 割 に お け る能 力 を獲 得 し,養 育 行 動 が す で に確 立 して い る一 連 の役 割 と統 合 され て い く過 程 で あ る」 と定 義 した。 健 康 な子 ど も を出 産 した 初 産 婦 で は,母 親 役 割 獲 得 は出産 後3か 月 か ら10か 月 の 間 に起 こる と され て い る(Mercer,1985)。 さ ら に この過 程 は,母 親 の 身 体 的 ・精 神 的 ・社 会 的 側 面,子 ど もの 発 達 等 多 様 な影 響 を受 け る の で あ り 直 線 的 に進 むの で は な い と指 摘 し,育 児 期 に お け る母 親 へ の 継 続 的 な看 護 の重 要 性 を示 唆 した。 早産 児 は覚 醒 時 間 が 短 い,反 応 性 が 乏 しい,ぐ ず りや す い,吸 畷 力 が 弱 い等 の特 有 の行 動 特 徴 を も つ た め,育 児 の 負 担 は 通 常 よ り も 大 き い (Ballard,1988)。 早 産 児 や ハ イ リス ク児 を育 て る母 親 は,家 庭 で の育 児 が始 まる時 期 に不 安 が 高 ま る(庄 司 他,1993;Booten et al.,1998;横 田, 下 田,今 関,1999),子 ど もの 退 院 前 後 に 子 ど も へ の愛 着 が 一 時 的 に低下 す る(山 本 他,1998)こ とが報 告 され て きた 。 また,極 低 出生 体 重 児 の母 親 の養 育 態 度 に は保 護 的 ・服 従 的 な傾 向 が あ る と 報 告 さ れ て い る(斎 藤 ら,1995)。 こ の よ う な報 告 か ら,早 産 児 の 母 親 は 親 役 割 を 獲 得 す る過 程 で,正 常 正 期 産 児 の母 親 と は異 な る困難 さ を経 験 して い る と考 え られ る。 母親 が親 役 割 を果 た す た め に は,Mercerが 述 べ た よ う に親 役 割 を 自己 の それ まで の役 割 と統 合 させ る過 程 が 必 要 で あ る。 しか し,女 性 が 母 親 とな る過 程 に関 す る研 究 の 中 で,早 産 児 の母 親 に焦 点 を 当 て た 報 告 は少 な い 。 こ の点 を明 らか に す る こ と は,早 産 児 の 母 親 が 自 己 お よ び親 と して成 長 す る過 程 を促 す 支 援 を検 討 す る基 礎 的 デ ー タ の提 供 とな る。 II 研 究 方 法 1.デ ザ イ ン 本 研 究 は,グ ラ ンデ ッ ド ・セ オ リー ・ア プ ロ ー チ を参 考 に し た質 的 記 述 的 研 究 で あ る(Chenitz & Swanson,1997;木 下,1999)。 2.研 究対 象 者 対 象 は,北 海 道 内 でNICUを 有 す るS病 院 で 早 産 児 を 出産 し,家 庭 で の育 児 を始 め て1年 前 後 が経 過 した母 親7名 で あ る。 対 象 者 の 背 景 は表1 に示 す。 面 接 は合 計14回 行 い,面 接 時 間 は35分 ∼ 120分(平 均68分)で あ っ た。7名 中1名 の 対 象 者 は,出 産 した 病 院 のNICUが 満 床 で あ っ た た め子 ど もが 他 施 設 に搬 送 さ れ た。 そ の た め,子 ど もへ の初 回面 会 は産 褥7日 目で あ っ た 。 その 他 の 対 象者 は,出 産 翌 日に子 ど もに面 会 し,子 ど もの 状 態 に合 わ せ て タ ッチ ング,抱 っ こ,カ ンガ ル ー 表1 事 例 の プ ロ フ ィ ー ル 日本 助産 学 会誌 第16巻 第2号(2003.2) 27

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早産児 をもつ母親の親役割獲得過程 に関す る研究 保 育 等 子 ど も と接 す る機 会 が 提 供 され た 。 子 ど も が コ ッ トに 移 床 した 後 は育 児 参 加 が 勧 め られ,子 ど もの退 院前 に は1日 間 の母 子 入 院 が 行 わ れ た。 対 象者 は出産 後 か ら搾 乳 指 導 を受 け,母 乳 の分 泌 が あ るか ぎ り子 ど もへ 搾 母 乳 を与 えて い た。 3.調 査 方 法 お よ び分 析 方 法 デ ー タ は 半 構 成 的 面 接 法 に よ っ て 収 集 し た。 「日常 生 活 の 中 で,ど う い う時 に母 親 で あ る こ と を実 感 し ます か」 とい う質 問 を手 が か りに,対 象 者 が 体験 した 内容 を理 解 す る よ う に努 め た。 面 接 内 容 は,対 象 者 の 承 諾 を 得 た 後 テ ー プ に 録 音 し た 。 そ の後,逐 語 録 を段 落 ご と に読 み進 め,出 来 事 や 事 実,そ れ に対 す る対 象 者 の 反 応 を探 した。 取 り出 した 内容 を研 究 課 題 と照 ら し合 わ せ な が ら 抽 象 的 に解 釈 し コー ド化 した 。 分 析 内 容 を も とに 新 た な対 象 者 へ の面 接 を行 い,コ ー ド化 を繰 り返 した 。 コ ー ド間 の比 較 を継 続 的 に行 う こ とで カ テ ゴ リー化 を行 い,最 終 的 に カ テ ゴ リー間 の関 連 性 を明 らか に した。 質 的 研 究 法 で は,デ ー タ 分 析 にお け る研 究 者 自 身 の能 力 や研 究 者 の もつ バ イ アス が 分 析 結 果 に大 き く影 響 す る(Sandelowski,1986)。 よ っ て, デー タ収 集 ・分 析 の信 頼 性 ・妥 当性 を高 め る た め に,以 下 の こ とを行 っ た 。① 面 接 技 能 を高 め る た め の プ レ テ ス トを行 う,② 研 究 対 象 者 との面 接 を 複 数 回行 う,③ 指 導教 員 や 研 究 領 域 の臨 床 経 験 を もつ仲 間 との話 し合 い を もつ 。 な お,倫 理 的配 慮 に つ い て は,研 究 者 の 在 学 す る大 学 内 の研 究 倫 理 委 員 会 に提 出 し方 法論 につ い て の承 認 を得 た。 III結 果 子 ど もの退 院 後 約1年 間 に対 象 者 が経 験 した 出 来 事 や そ れ に対 す る対 象 者 の 反 応 を分 析 した結 果, 127の コ ー ドが抽 出 さ れた 。 これ らの コー ドを類似 性 と相 違 性 に従 っ て分 類 した 結 果,43の 小 カ テ ゴ リー,15の 中 カ テ ゴ リー が 抽 出 され た。 カ テ ゴ リ ー間 の 関連 を検 討 した 結 果,最 終 的 に5つ の大 カ テ ゴ リー が抽 出 され た(表2参 照):《 出産 に対 す る期 待 が奪 わ れ た体 験 》,《期 待 喪 失 に対 す る悲 嘆 反 応 》,《親 役 割 の適 応 》,《普 通 の親 子 へ の希 求 》, 《親 役 割 獲 得 に必 要 な サ ポ ー ト》。 この5つ の カ テ ゴ リー の うち,前 者4つ の カ テ ゴ リー は 出 産 後 に 対 象 者 に起 こ った 心 理 的 反 応 で あ り,5つ めの カ テ ゴ リー は上 記4つ の心 理 的 反 応 に対 して 得 られ た サ ポ ー トで あ る。 今 回 の報 告 は,対 象者 の 心 理 的 反 応 を示 す前 者4つ の カ テ ゴ リー を 中 心 に具 体 例 を用 い て説 明 す る。 な お,大 カ テ ゴ リー,中 カ テ ゴ リー の表 記 は それ ぞ れ,《 》,<>と した。 また,対 象 者 の 語 っ た部 分 は 「 」 と記 し で 囲 ん だ 。 1.親 役 割 獲 得 過 程 にか か わ る大 カテ ゴ リー とそ こ に含 ま れ る下位 カテ ゴ リー 1)《 出産 に対 す る期 待 が 奪 わ れ た体 験 》 《出産 に対 す る期 待 が 奪 わ れ た 体 験 》 は,妊 娠 中 に抱 い て い た 出産 ・育 児,わ が 子 に対 して抱 い て い た イ メ ー ジ と現 実 の 体 験 との 不 一 致,お よび そ れ に対 す る 急性 の 情 緒 反 応 を示 して い る。 (1)〈 出 産 前 に抱 い て い た母 子 像 の イ メ ー ジ と現 実 の 出 産 体 験 〉 対 象 者 は妊 娠 中 に起 こ る体 の変 化,出 産 ・育 児 を し て い る 自分,生 まれ て くる子 ど もへ の イ メ ー ジ を膨 らませ て い た 。 また,胎 児 に話 しか け る こ とで 母 親 役 割 を ロー ル プ レ イ し,出 産 場 面 を想 定 しな が ら心 の準 備 を行 っ て い た。 この よ う な空 想 や ロー ル プ レ イ は,健 康 な子 ど もの母 親 を モ デ ル に して行 わ れ て い た。 した が って 対 象 者 に とって, 現 実 の 出産 体 験 は期 待 とま っ た く異 な る もので あ っ た 。 「も っ と も っ と,大 き く な っ て(お な か が),も っ と も っ と… な ん か こ う,な ん か 出 産 の 時 に は,こ ん な感 じ に な る の か し ら?と か,ど う な るの か し ら,破 水 して ど うの こ うの とか,出 産 の 時 は こ うゆ う風 に 私 は生 み ま した とか,な ん か い ろ い ろ … …急 に… … そ うい う所 が な くな っ た」。 (2)〈 期 待 喪 失 の危 機 に対 す る急 性 の情 緒 反 応 〉 対 象 者 は予 想 に反 し て早 過 ぎ る出 産 に対 して 驚 き,一 時 的 な 思 考 停 止 状 態 に 陥 って い た。 さ らに 対 象 者 は 出産 前 の 身 体 的 苦 痛,帝 王 切 開,手 術 後 の 疼 痛 等 多 くの こ とを一 度 に 経 験 した た め に混 乱 し,出 産 した事 実 を直 視 で きな い 状 態 で あ った 、 「も う頭 の 中 が パ ニ ッ クだ っ た ん で … … 自分 で 何 を言 わ れ て るの か もわ か ん な い状 態 だ っ た ん で, うん。 真 っ 白で す よ ね」。 28 日本 助 産学 会 誌 第16巻 第2号(2003.2)

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早産児をもつ母親の親役割獲得過程 に関する研究 表2早 産 児 の母 親 の親 役 割獲 得 過 程 に含 まれ る カ テ ゴ リー一 覧 1.出 産 に対 す る期待が奪 われ た体験 1)出 産 前 に 抱 い て い た母 子 像 の イ メ ー ジ と現 実 の 出産 体 験 (1)妊 娠 ・出産 ・育 児 に 対 す る期 待 (2)期 待 と現 実 の 出 産 体 験 の 差 異 2)期 待喪失の危機 に対 する急性 の情緒 反応 (1)出 産 に対す る期待 を くつが え された衝撃 (2)想 像 と違 う子 ど もか ら受 けた衝撃 2.期 待 喪 失 に対 す る悲 嘆 反 応 1)早 産 し た こ と へ の 罪 責 感 (1)自 責 感 (2)早 産 して しま った 申 し訳 な さ (3)早 産 した事 実 を 思 い 出す 辛 さ 2)普 通 の 出 産 が で き な か っ た喪 失 感 (1)期 待 に反 した 出 産 へ の 無 念 (2)出 産 し親 に な った 実 感 の 希 薄 さ (3)わ が 子 で あ る実 感 の 希 薄 さ (4)次 子 妊 娠 に 対 す る不 安 3)周 囲 か らの 孤 立 感 (1)普 通 の 母 親 で は な い と い う孤 独 感 (2)非 難 か らの 回避 (3)感 情 を 表 現 で き な い辛 さ (4)気 持 ちの 落 ち込 み 4)子 ど もの 成 長 ・発 達 へ の不 確 か さ (1)子 ど もの 生 命 に 対 す る不 安 (2)期 待 どお りに い か な い成 長 ・発 達 に 対 す る 不 安 3.親 役 割 の 適 応 1)子 ど もへ の 愛着 の 高 ま り (1)子 ど もと の接 触 を通 して 得 る わ が 子 の 実 感 (2)子 ど もと の接 点 を 求 め る気 持 ち 2)育 児 行 動 獲 得 へ の試 行 錯 誤 (1)育 児 に対 す る戸 惑 い ・不 安 (2)育 児 に よ る心 身 の 負 担 (3)無 事 に 育 て な け れ ば な らな い緊 張 感 (4)早 く大 き くな って ほ しい あ せ り (5)子 ど もの 生 活 リズ ム へ の 対 応 3)育 児 行 動 を 通 して得 られ る親 役 割 へ の 自信 (1)親 役 割 を 通 して 得 られ る親 で あ る 自覚 (2)育 児 行 動 獲 得 に お け る葛 藤 (3)生 活 リズ ム の 理 解 に よ っ て得 られ る余 裕 4)親 役 割 の 受 容 (1)家 族 の一 員 で あ る 子 ど もの認 識 (2)親 役 割 に対 す る責 任 の 自覚 (3)子 ど もの 存 在 に よ る 自己 成 長 4.普 通 の 親 子 へ の 希 求 1)与 え ら れ た 試 練 を乗 りき るカ (1)早 産 や育 児 の 困 難 さ の プ ラ ス思 考 へ の 転 換 (2)過 去 や 将 来 の 視 点 の 取 り入 れ (3)他 の 母 親 と 自己 との 比 較 2)子 ど もの 成 長 を見 い だ す 試 み (1)指 標 を 変 え子 ど もが 順 調 で あ る と と らえ る 試 み (2)子 ど もの な りの成 長 を 知 ろ うと す る試 み 3)子 ど も か ら得 るプ ラ ス思 考 (1)明 らか な子 ど も の成 長 ・発 達 に よ る心 の安 定 (2)子 ど もの反 応 性 の高 ま り に よ る 成長 の 喜 び と 安 心 5.親 役 割 獲 得 に 必 要 な サ ポ ー ト 1)親 役 割 の 受 け入 れ へ の サ ポ ー ト (1)母 子 の絆 を つ な ぐ夫 の サ ボ ー ト (2)親 子 で あ る 実 感 を 高 め る看 護 援 助 (3)気 持 ちを 共 有 す るサ ポ ー ト 2)育 児行 動 獲 得 へ の サ ポ ー ト (1)夫 ・家 族 か らの 家 事 ・育 児 援 助 (2)問 題 や 心 配 の 解 消 に必 要 な サ ポ ー ト (3)期 待 す るサ ポ ー トが得 られ な い心 細 さ ・不 満 日本 助 産学 会誌 第16巻 第2号(2003.2) 29

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早産児 をもつ母親の親役割獲 得過程に関す る研究 2)《 期 待 喪 失 に対 す る悲 嘆 反 応 》 期 待 喪 失 の 危 機 に対 す る急 性 の 情 緒 反 応 の 後 に,早 産 した こ とへ の 罪 責 感 を は じめ と した 悲 嘆 反 応 が 生 じて いた 。 これ らの 反 応 は,育 児 を通 し て さ ま ざ まな 場 面 で 想 起 さ れ て い た 。 (1)〈 早 産 した こ とへ の 罪 責 感 〉 対 象 者 は,早 産 の原 因 を 自分 にあ る とし て罪 責 感 を抱 い て いた 。 そ の た め,自 分 の 行 い に 自信 が もて ず,他 者 か ら非 難 され て い る と意 識 して いた 。 例 え ば,子 ど も と共 に外 出 し近 所 の 人 た ち との間 で 子 ど もが 話 題 に な る時 に,子 ど もが 早 産 で 生 ま れ た こ とを言 い た くな い,子 ど もの 小 さ さ を指 摘 され た くな い とい う形 で罪 責感 は意 識 化 され て い た 。「6か 月 か7か 月 で,も う平 均 の体 重 にな っ た ん で す 。 … … それ まで,ず っ と「 小 さいね」 とか 言 わ れ て … …。い や で した 。私 の せ い で,こ うゆ う子 ど もが で きた っ て 言 っ て るふ う に聞 こ え る」。 (2)〈 普 通 の 出 産 が で き な か っ た喪 失 感 〉 対 象 者 はイ メ ー ジ して い た よ うな出 産 が で きず, 他 の 母 親 の よ うに育 児 が で きな い こ とに対 し て無 念 さ を感 じて い た。 そ して,出 産 した こ と ・親 に な った こ と ・目 の前 に い る子 ど もが わ が 子 で あ る こ との実 感 が 希 薄 で あ る と語 っ て い た 。 「今 回 の 場 合 は 結 局 何 も痛 くも な く,手 術 の 後 だ けが 痛 か った っ て い う の と,赤 ち ゃ ん の産 声 は 聞 こ え ま した け ど,見 る こ と もで きな く,一 度 も 夕 方 く らい まで ず っ と離 れ て,「 これ が あ な た の 赤 ち ゃ ん で す よ」 っ て 言 わ れ て も,『 あ ー』 っ て い う感 じだ った 。(略)な ん と な くっ て い う感 じ しか まだ 持 て てな い ん で す 」 「生 ん だ の に退 院 して か ら子 ど もが 家 にい な い っ て い う…… 淋 しい って い うか,虚 しい っ て い うか」 「入 院 して る時 って,や っぱ り病 院 の管理 が ほ と ん どだ か ら,だ か ら,や っ ぱ り,ね(母 と して の 実 感 が 湧 い て きた の は,子 ど もが 退 院 して か らだ っ た)… … 」 さ らに,対 象 者 はイ メー ジ して い た 出産 を体 験 す る こ とが で きず 出 産 を乗 り越 え た 自信 を得 て い な い た め,育 児 に対 して も自信 が もて な い状 況 で あ っ た。 「結 局 辛 くな っ た らそ の時 の場 面(出 産) を思 い出 せ ば な ん とな く頑 張 れ る よ うな気 が す る ん で す け ど,私 は す ご く楽 に産 ん で,そ の こ と を 思 い 返 し て も(略)励 み に な ら な い っ て い う か … …」。 (3)<周 囲 か らの孤 立感> 対 象 者 は,早 産 は稀 で あ り体 験 を だ れ と も共 有 で きな い と孤 独 感 を抱 い て い た。 「あ た しだ け じゃ な いで す か,赤 ち ゃ ん横 に い な い の(母 児 同室)。 み ん な横 に い て,そ れ もす ごい 辛 か っ た し,な ん で あ た しだ けが っ て 」。 また,早 産 した た め 子 ど も は特 別 で あ り,子 育 て も普 通 と は違 う と意 識 し て い た 。 そ の た め,他 者 か らの励 ま しや ア ドバ イ ス を聞 き入 れ る こ とが 難 し くな っ て い た 。 また, 周 囲 の人 び と との 関 係 で 子 ど もの話 題 が 上 る と非 難 され る と感 じる た め,子 ど もの話 題 を避 け る, 心 配 を 打 ち 明 け な い 等 の 行 動 を 選 択 して い た 。 「この ま ま体 重 が 止 まっ た ら ど う し よ う,と か 思 っ て,で も ま た そ れ を 言 う と,ま た ば ー ち ゃん が 過 剰 に心 配 す るか ら言 わ な い 。 言 え な い。 言 わ な い」,「こ う ゆ う ケー ス っ て き っ と稀 で…… それ と 同 じ悩 み を もっ て る人 っ て い な い で す よね 」。 (4)〈 子 ど もの成 長 ・発 達 へ の不 確 か さ 〉 対 象者 は出 産 時 に産 声 を聞 き,写 真 や ビデ オ で 出産 当 日 に子 ど もの生 命 の 無 事 を確 認 した 。 しか し,そ の 後 は障 害 が 残 る可 能 性,成 長 ・発 達 へ の 不 安 を抱 きな が ら過 ご して い た 。 「食 べ て る し, 元 気 な の に増 え な くっ て,1,000も 伸 び て ない よ う な気 が して て … … で も周 りの 子 ど も もみ ん な10 キ ロ とか11キ ロ とか で,こ の まま 止 ま った ら ど う し よ う,と か 思 っ て」,「外 見 は 何 と もな い の に, 実 は内 臓 が な んか な っ て る とか … … や ー だ か ら心 配 し た ら き りな い っ て い うか ……」。 3)《 親 役 割 の 適 応 》 対 象 者 は,わ が 子 との関 係 を通 して親 子 で あ る と実 感 し,親 役 割 の責 任 を 引 き受 け る よ うに な っ た 。 この カ テ ゴ リー に は,育 児 に お け る困 難 な 出 来 事 へ の認 知 も含 まれ る。 (1)〈 子 ど もへ の愛 着 の 高 ま り〉 出 産 後,対 象 者 は 出産 した 実 感 の希 薄 さ,子 ど もが わ が子 か わ か らな い不 確 か さ を抱 い て い た 。 しか し,子 ど も との接 触 を繰 り返 し,子 ど もに家 族 の面 影 を見 いだ した り,子 ど もを知 る こ とで わ が 子 で あ る こ とを感 じた りす る よ う にな っ た。 「だ ん だ ん毎 日見 てた か らか な,や っ ぱ り顔 とか も, よ そ の子 と は違 う」,「目 は旦 那 に似 て た し,鼻 と 口 は私 だ った んで 『あ ー,や っ ぱ り この子 だ』 っ 30 日本 助 産学 会誌 第16巻 第2号(2003。2)

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早産児をもつ母親の親役割獲得過程に関す る研究 て… …」。 わ が子 で あ る実 感 が 希 薄 で あ っ た り,面 会 す る こ とで早 産 した こ とを思 い知 らさ れ る辛 さ を感 じ た り しな が ら も,子 ど もの様 子 が 気 に な り会 わ ず に は い られ ない 気 持 ち は強 くな っ て い た。 対 象者 の退 院 後 は,自 らが 行 動 しな けれ ば子 ど もの様 子 が わ か らな くな っ て しま う状 況 に な り,子 ど もに 会 い た い 気 持 ちが 強 くな る場 合 もあ っ た。 (2)<育 児 行 動 獲 得 へ の 試行 錯誤> 子 ど もの 退 院 後,対 象 者 は育 児 に関 す る多 くの 困 難 を体 験 した 。 退 院 して もな お か つ,子 ど もは 小 さ く壊 れ そ うな存 在 と して映 っ て い た た め,子 ど もに触 れ る こ とが怖 い と感 じて い た。 「この子 が 退 院 し て1か 月 く らい実 家 に いた んで す け ど,そ の 間,な んか 自分 の子 ど も じゃ ない よ うな,急 に 生 まれ ち ゃ った ん で,扱 うの も怖 か った し…… 」。 子 ど もに は未 熟 性 の 問題 が残 っ て い るた め,そ の 点 を注 意 しな け れ ば な らな い とい う思 いが,日 々 の 育 児 を慎 重 に させ て い た。 「未 熟 児 ち ゃ ん は肺 が 丈 夫 じゃ な い っ て言 わ れ て …… 湿 度 チ ェ ック と か 毎 日 して … … 」,「し ょせ ん小 さ く生 まれ て き た 子 は,違 うん で す よ。 内臓 の で きか ら して違 う し … … だ か らあ ん ま り人 ご み の 中 に は行 か な い とか … … 」。 また,子 育 て へ の漠 然 と した不 安 を抱 き,退 院 直 後 か ら始 まる子 ど もの泣 きに翻 弄 され て いた 。 「な ん で 泣 い て るん だ ろ うか っ て い う の が,つ か め なか った り とか,小 さ く生 まれ て い る んで ミル ク の 量 とか 全 然 わ か ら な い ん で す よ …… 」。 この よ うな 時,子 ど もの 泣 き の理 由 を知 るた め に消 去 法 を用 い る,一 日の 様 子 を 日記 に残 す 等 の 方 法 に よ っ て 子 ど もを理 解 し よ う と試 行 錯 誤 して い た 。 さ らに,子 ど もは小 さ く生 まれ た とい う意 識 か ら,対 象者 は授 乳 量 や 離 乳 食 の 進 め 方 に戸 惑 って い た。 そ の戸 惑 い は,体 重 増加 が期 待 どお りに 進 ま ない と と ら える場 合 に顕 著 で あ った 。 この場 合, 授 乳 量 を無 理 に増 や そ う とす る,子 ど もの嗜 好 に 合 わ せ た 食 生 活 を提 供 す る 等 の行 動 が と られ て い た。「どれ だ け食 べ た物 消 化 して,栄 養 にな って る か っ て,わ か ん な い じ ゃ な い で す か。 だ か ら結 局,ミ ル クが や っ ぱ りな い と,栄 養 の 補 給 に な ら な い ん だ ろ うなー って 思 うか ら,飲 め飲 め っ て な る ん です よね 。 だ か ら,ま,飲 め っ てや った ら, ガ ー って(吐 く)…… それ で泣 く,で,今 度 また イ ライ ラす る」。 子 ど もの リズ ム が 安 定 す る まで の 間,子 ど もの 泣 きへ の対 応 に よ る身 体 的 消 耗 は激 しか った 。 さ らに子 ど もの成 長 に伴 う行 動 範 囲 の拡 大,分 離 不 安 が表 れ る よ う にな る と,子 ど もか ら 目が 離 せ な い,子 ど もが一 日中 つ き ま とう状 態 が 続 く よ う に な る。 そ の た め,子 ど も に対 す る苛 立 ちが 瞬 間 的 に表 れ て い た。 「な ん で泣 くんだ,い い し ょ,ち ょ っ と く らい(母 親 が 側 に)い な くて も っ て 」。 対 象 者 の 中 に は,こ の よ うな否 定 的 な 感 情 や 自発 的 に 出 て くる 自分 の行 動 が親 ら し くな い の で は な い か と悩 む者 もい た。 「(夜中 に 子 ど もが 泣 い て も そ の声 が 聞 こえず 起 き られ な か っ た こ と に対 して) 私 っ て母 親 の 自覚 な い の か な と思 って … … 」。 (3)〈 育 児 行動 を通 して 得 られ る親 役 割 へ の 自信 〉 子 ど もが 入 院 中で 限 られ た環 境 で あ っ て も,育 児 行 動 を取 る こ とで 自分 が 出産 した とい う実感 は 少 しず つ強 くな って い っ た。 「お っ ぱ い出 て か らっ て い うか,搾 っ て,搾 乳 して看 護 婦 さ ん に渡 す よ う に な って か ら,あ ー子 ど も生 まれ た ん だ なー っ て」。 実 際 に子 ど もが 退 院 し,育 児 の 責 任 を担 う よ う に な っ てか ら親 で あ る実 感 は高 まっ て い た 。 日 ご ろ の子 ど も との 交 流 で 自分 が 母 親 の立 場 に あ る とこ とに気 づ いた 時 や,子 ど もの成 長 ・発 達 に よ り子 ど もが 能 動 的 に母 を求 め る姿 を見 た 時 に, 親 で あ る実 感 を強 め て いた 。 「で,だ ん だ ん(子 ど もが)帰 っ て きて,自 分 が 自分 の こ とお 母 さん み た い な,『 お 母 さん,こ うだ か ら』 っ て,自 分 の こ とを「お 母 さん,お 母 さん」 って 呼 ぶ 時 。 あ ー,私 って お 母 さ ん な ん だー っ て … … 」,「 自分 の 手 か ら飲 ん で,で,『 ち ょっ と抱 っ こ させ て ー」 って 違 う人 が 抱 っ こ す る と,『 わ 一」 って 泣 い た りす る と,(だ れ が母 親 で あ る か) わ か る ん だ な 一 っ て … … 」,「引 っ 越 し し て き た し,落 ち 着 か な か った し,で,こ の子 パ パ で もい い ん で す け ど,そ の 時 だ け はマ マ の所 に来 て … … あー,私 じゃ な きゃ だ め な ん だ な ー っ て … … 」。 試 行 錯 誤 の 末,子 ど もの 生 活 リズ ム を理 解 す る と,母 親 と して の 余裕 が 生 まれ て くる。 さ ら に 自 分 流 の子 ど もへ の対 応 方 法 を見 い だ す,生 活 リズ ム を改 善 す る等 の行 動 が とられ る よ うに な った 。 (4)〈 親 役 割 の受 容 〉 日本 助産 学 会誌 第16巻 第2号(2003.2) 31

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早産児をもつ母親の親役割獲得過程 に関する研究 この カ テ ゴ リー は,親 役 割 に対 して責 任 の 重 さ を感 じる だ け で な く,そ の 責 任 を引 き受 け る肯 定 的 な姿 勢 を示 して い る。 子 ど もの反 応 性 が増 す につ れ,対 象 者 は,子 ど も との交 流 を楽 しみ,子 ど もの 個 性 を知 ろ う とす る。 そ の試 み を通 して 子 ど もの 新 た な一 面 を知 る と,し つ け の必 要性 を感 じ,対 象 者 は育 児 方 針 を 持 つ よ う にな った。 「あー ゆ ー子 だか ら,離 す こ と も大 切 だ と思 うん で す よ。 ず っ とべ っ た りじ ゃだ めだ と思 うん で す 」。 さ らに,子 ど もが どの よ うに 育 と う と も,子 ど もの 責 任 は 自分 に あ る とい う強 い責 任 感 も生 まれ て い た。 「これ か らこの 子 が どん な性 格 に な るか わ か ん な い け ど,(略)自 分が そ う ゆ う風 に,母 親 として そ う ゆ う風 に育 て て きた の か も しれ な い し,持 っ て生 まれ て きた この子 の 何 か が そ うだ った の か も しれ な い し。 だ か ら,な る よ う に しか な らな い っ てい う自信 。責 任 か な,そ うゆ う悪 い方 に もいい 方 に も,な ん て言 うの,引 き受 け る,う ん そ うゆ う感 じ」。 4)《 普 通 の 親 子 へ の 希 求 》 こ の カ テ ゴ リー は,自 分 とわ が子 は特 別 な 親 子 で は な い と と らえ,早 産 した シ ョッ ク ・悲 嘆 に対 処 し,親 役 割 に適 応 す るた め に対 象 者 が 用 い た 対 処 行 動 で あ る。 そ の 中 に は,早 産 した事 実 や 自己 を肯 定 的 に と らえ よ う とす る,子 ど もの 成 長 して い る部 分 を見 い だ す た め に発 想 を転 換 す る こ とが 含 まれ る。 さ らに,子 ど もの成 長 ・発 達 を視 覚 的 に と ら え る と,子 ど も が 示 す 生 命 力 の 強 さ を感 じ,気 持 ち は安 定 して い っ た。 (1)〈 与 え られ た 試練 を乗 り切 る力 〉 対 象 者 は,早 産 の原 因 に つ い て 罪 責感 を抱 い て い た 。 しか し,同 時 に早 産 に は何 か 意 味 が あ る, 自分 た ちへ の試 練 で あ る と も と らえて い た。 「子 ど もが そ う ゆ うふ う に生 まれ るの は,悪 く取 らな い で,よ くと ら え る。 よ くっ て 言 うか,そ う ゆ うふ う にな るべ く して な っ た し,意 味 の あ る こ とだ っ て … この 子…… こん な お な か に い な き ゃい けな い 時 期 か ら,外 に出 て,一 人 で強 く生 きて い か な き ゃ い けな い 子 な ん だ っ て… …今 だ け を と ら え る と す ご くマ イナ ス か も しれ な い け ど… …(略)長 い人 生,考 え る と,自 分 に とっ て も,こ の 子 に とつ て も,よ か った こ とだ か ら こ うゆ うふ う に な った 」。 また,出 産 か ら育 児 を通 して体 験 した 困 難 な出 来 事 を過 去 や 将 来 の 視 点 を取 り入 れ な が ら,現 在 の抱 えて い る 困難 さ を乗 り越 え よ う と して いた 。 「2歳 ち ょ っ と大 きい子 ど もを もつ お母 さん か らみ れ ば,こ れ か ら もっ と悩 む よ っ て感 じだ と思 うか ら,こ れ か ら もっ と大 変 な ん だか ら今 まだ 楽 な ん だ っ て… … 」。 さ らに,対 象 者 は 自分 の体験 を他 の ハ イ リス ク児 の母 親 が体 験 し て い る内容 と比 べ る こ とで,そ の 体験 を客 観 的 に と ら えて い た。 「私 の は 自分 だ けの 問 題 っ て感 じだ け ど,あ の人 は,難 しい子 ど もが ー人 い る こ とに よ っ て,自 分 もお か し くな る わ,旦 那 もお か し くな るわ,家 族 もお か し くな るわ … … うち は 私 が メ ソ メ ソ して た だ け で.な ん て い う こ とな い け ど」。 ② 〈子 ど もの成 長 を見 いだ す試 み 〉 対 象者 は,出 産 後 少 しず つ 子 ど もの 外 観 を受 け 入 れ,小 さ く未 熟 なが ら も成長 して い る部 分 を 見 い だ す た め の 発 想 の 転 換 を 試 み て いた 。 特 に退 院 後,周 りの子 ど も と比 較 し,自 分 の 子 ど もの小 さ さ を改 め て感 じ る よ う な時,対 象 者 は比 較 の対 象 を変 え る こ とで 子 ど もの順 調 な部 分 を と らえ よ う と して い た 。 例 え ば,修 正 月齢 を用 い て 子 ど もの 成 長 ・発 達 を判 断 す る こ とが あ る。 「少 な くとも10 か 月 じ ゃ な く,8か 月?う ん。 そ れ な りの こ と は や って る と思 い ます 」。 (3)〈 子 ど もか ら得 るプ ラ ス思 考 〉 子 ど もの成 長 ・発 達 へ の 不確 か さ は,子 ど もの 成 長 ・発 達,あ る い は進 歩 が視 覚 的 に確 認 で き る こ とで軽 減 され て い た。 む し ろ子 ど もの生 き る力 を感 じ られ る と,日 々 を肯 定 的 に と らえ る よ う に な っ て いた 。 「人 間 っ てす ごい よね,こ ん な に大 き くな るん だ も んね 」,「た っ ち した り とか,そ や っ て 発 達 して い く の が,う ん 楽 し い,毎 日,毎 日 が」。 2.各 大 カテ ゴ リーの 関連 性(図1) 早 産 児 の母 親 の 親 役 割獲 得過 程 は,《 出産 の期 待 が奪 わ れ た 体 験 》 を前 提 と し て い た。 自分 た ち は 普 通 の親 子 で は な い,自 分 た ち親 子 の体 験 は普 通 の体 験 で は な い とい う認 識 は,期 待 してい た出産 ・ 赤 ち ゃん の イ メ ー ジ と現 実 に体 験 した こ と の相 違 か ら生 じ て い た。 そ の 認 識 は 《期 待 喪 失 に対 す る 悲 嘆 反 応 》 を 引 き起 こ して い た。 育 児 を始 め て か らの 約1年 間,《 期 待 喪 失 に対 す 32 日本助 産 学会 誌 第16巻 第2号(2003.2)

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早 産 児 を もつ母 親 の親 役割 獲 得過 程 に関 す る研究 図1早 産 児 の親役 割獲 得過程 を構 成 す る カテ ゴ リー間 の関係 る悲 嘆 反 応 》 と 《親 役 割 の適 応 》 は互 い に負 の影 響 を与 え て い た。 例 え ば,対 象 者 は責 任 を もっ て 子 ど もの世 話 を す る機 会 を 得 て い な か っ た た め, 子 ど もの 入 院 中 に親 と して の 実感 を得 に くい状 況 に あ っ た 。 また,育 児 の 困難 さに直 面 す る と出産 を乗 り越 え る体 験 を し なか った 喪 失感 を思 い出 し, 育 児 の困 難 さ を乗 り切 る 自信 に疑 問 を抱 い てい た。 《普 通 の親 子 へ の希 求 》 は,《期 待 喪 失 に対 す る 悲 嘆 反 応 》 を軽減 し 《親 役 割 の 適応 》 を高 め る よ うな影 響 を 及 ぼ して い た 。例 えば,子 ど もの順 調 な部 分 を見 い だ す,同 じ よ うな体 験 を した母 親 と 交 流 す る こ とで,罪 責 感 や 子 ど もの成 長 ・将 来 に 対 す る不 安 を軽 減 させ て い た 。 また,早 産 体 験 に 意 味 を持 た せ る こ とで,子 ど もに対 す る申 し訳 な さ を プ ラ ス に転 じ よ う と して い た。 この よ う に 《期 待 喪 失 に対 す る悲 嘆 反 応 》 を軽 減 す る こ とで, 対 象 者 は 小 さな 変 化 で も子 ど もの成 長 を喜 び と し て と ら え る よ う にな って い った 。 また,対 象 者 は 《普 通 の 親 子 へ の希 求 》 に よ っ て 《親 役 割 の 適 応 》 にお け る育 児 の 困難 さ を乗 り越 えて い た。 例 えば, 普 通 に生 ん だ 他 の 母親 と 自分 の体 験 を比 較 し,育 児 の 困難 さ はだ れ で も同 じで あ る と と ら え る こ と が あ げ られ る。 そ の結 果 と して,対 象者 は育 児行 動 に お け る 自信 を高 め,親 と して成 長 した 自己 を 見 い だ して い た。 IV 考 察 早 産 児 を もつ母 親 の親 役 割 獲 得 過 程 に つ い て, 看 護 の視 点 か ら結 果 に つ い て以 下 に考 察 す る。 対 象 喪 失 反 応 は,対 象 を 失 っ た こ とが 心 的 ス ト レス とな っ て起 こる急 性 の情 緒 反 応 と持 続 的 な 悲 哀 の 心理 過 程 に分 け られ る(小 此 木,1993)。 急 性 の情 緒 反 応 は激 しい衝 撃 や パ ニ ッ ク として 表 れ る が,比 較 的 速 や か に 回復 して い く。 悲 哀 の 心 理 の 中で も悲 嘆 は,対 象 を失 っ た こ と を諦 め られ ず 取 り戻 そ う とす る試 み で あ り,そ れ に伴 い 不 安,怒 り,罪 悪 感 な どさ ま ざ まな情 動 を経 験 す る状 態 で あ る。 本 研 究 の母 親 は突 然 の 出産 に対 す るパ ニ ッ クや 子 ど もの小 さ さ,未 熟 さ に対 して衝 撃 を受 けて い た。 出産 後,子 ど も との対 面 や正 期 産 で 出 産 し た 母 親 の体 験 と自己 の体 験 とを比 べ,自 己 とわ が 子 が イ メー ジ して い た 「普 通 の親 子 」 か らか け離 れ て い る こ とを改 め て認 識 した。 その こ とに よ って, 罪 責 感,喪 失 感,孤 立 感,子 ど もの成 長 ・発 達 に 対 す る不 安 が生 じて い た。 した が っ て,母 親 は早 産 に よ っ て子 ど もを健 康 な状 態 で 生 む こ とが で き ず 「普通 の親 子 」 の イ メ ー ジ を失 う危機 に直 面 し, 急 性 の情 緒 反 応 や 悲嘆 反 応 を示 した と考 え られ る。 早 産 児 を もつ母 親 の親 役 割 の適 応 に お け る特 徴 と して,親 で あ る実 感 を得 る時 期 が 遅 い こ とが あ げ られ る。 本 研 究 の母 親 が 親 で あ る と実感 した 時 期 は,子 ど もの退 院 後 育 児 を始 め た 時 点,母 親 を 求 め る子 ど もの姿 を見 た時 等 で あ った 。 子 ど もの 入院 中 か ら育 児 参 加 を通 して 出産 した こ とや 目 の 前 に い る子 ど もが わが 子 で あ る実感 は 少 しず つ 高 まっ て い た が,対 象者 は子 ど もの世 話 は病 院 に ゆ だ ね られ て い る と と らえ て い た 。母 親 は子 ど もの 育児 に お け る責 任 を直 接 担 う よ う にな っ てか ら親 で あ る こ と を 実 感 し て お り,こ の 結 果 は 藤 村 (1990),Zabielski(1994)の 報 告 と共 通 し て い た。 した が っ て,子 ど もの 入 院 中,早 産 児 の母 親 が 主体 的 責任 を感 じ られ る よ うな 場 面 作 りを積 極 的 に行 う こ とが 重 要 で あ る と考 え られ る。 また,対 象者 は 子 ど も を 自分 で 育 て る不 安 だ け で は な く,子 ど もは早 産 で 生 まれ た た め特 別 で あ り壊 れ そ うで怖 い と,わ が 子 を正 常 正 期 産 児 と異 な る子 ど も として特 別 視 し なが ら育 児 を してい た。 子 ど もの 成 長 ・発 達 が 期 待 どお りで は な い と と ら え る時,早 産 した 罪 責 感 や 子 ど もの成 長 ・発 達 へ の不 安 を想起 し,焦 りを強 め て い た。 早 く大 き く な って ほ しい 思 いが 強 く,食 生 活 を子 ど もの 嗜 好 日本 助 産学 会誌 第16巻 第2号(2003.2) 33

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早産児 をもつ母親の親役割獲得過程 に関す る研究 に合 わ せ る,離 乳 食 だ け で は不 安 で 授 乳 を続 け る 等 の行 動 が み られ た。 早 産 児 に限 らず ハ イ リス ク 児 の母 親 は,わ が 子 が 普 通 の子 ど も と は違 う と意 識 す るた め,栄 養 に関 連 した育 児 上 の 戸 惑 い を経 験 す る(服 部 な ど,1998;星 な ど,1998)。 し た が っ て,母 親 の育 児 行 動,特 に 離 乳 食 の 進 め 方 な ど栄 養 に 関連 す る行 動 は,子 ど もの 日々 の 成 長 ・ 発 達 に関 す る母 親 の不 安 や期 待 を反 映 し て い る と と ら え援 助 して ゆ く必 要 が あ る。 しか し親 役 割 の 適 応 に お い て,早 産 児 の 母 親 と 正 期 産 児 の 母 親 との間 に共 通 点 もみ られ た 。 これ まで,健 康 な子 ど もを育 て る母 親 は試 行 錯 誤 を通 して 子 ど もの リズ ムで 生 活 す る よ う にな り,子 ど も を一 人 の人 として と らえ る よ うに な る(大 久 保, 1994:大 久 保,1999),健 康 な子 ど もの 母 親 は, 子 ど もの 成 長 ・発 達 に対 応 す るた め に必 要 な育 児 行 動 を身 に つ け る困 難 さ を体 験 す る(Mercer, 1985)こ とが 報 告 され て きた。 本 研 究 にお け る母 親 も試行 錯誤 を繰 り返 しなが ら,子 ど もの 理 解 に 基 づ い た 育 児 行 動 や 育 児 観 を獲 得 す る よ う に な っ た り,育 児 にお け る 自信 が 子 ど もの 成長 ・発 達 と と もに 高 まっ た り揺 ら い だ りす る経 験 を し て い た 。対 象 者 が,子 ど もの 成 長 ・発 達 が順 調 だ と感 じ られ る よ う な時 期 に,親 役 割 の適 応 にお け る正 期 産 児 の母 親 との 共 通 点 を伝 え る こ と は,早 産 児 の母 親 が親 と して の 自己 に対 す る 自信 を高 め るた め に役 立 つ 可 能 性 が あ る と考 え る。 《普通 の親 子 へ の 希 求》 は,自 分 た ち親 子 は特 別 で はな い と とら え る こ とで,早 産 した シ ョ ッ ク ・ 悲嘆 に対 処 し,親 役 割 に適 応 し よ う とす るた めに, 対 象 者 が 用 い た 方 法 で あ る。Wereszczakら (1997)は,子 ど もがNICUに 入 院 して い る母 親 の ス トレス対 処 方 法 と して,① 危 機 を迎 えた こ との 意 味 を探 る,② 子 ど もの 正 常 性 を知 る,③ 下 向 き の比 較 をす る,を 明 らか に した。 これ は,早 産 に は何 らか の意 味 が あ る と と らえ る こ と,子 ど もか らの サ イ ン を肯定 的 に読 み取 り子 ど もは普 通 で あ る と感 じ る こ と,自 分 よ り状 況 の悪 い他 者 と 自己 を比 較 す る こ とで あ る。Blanchard(1999)も ま た,生 後3か 月前 後 の 早 産 児 の 母 親 は,自 分 よ り 状 況 の悪 い他 者 との比 較(下 向 きの比 較)を 多 く 用 い る こ とで,自 己価 値 の 低 下 を避 け よ う とす る こ とを報 告 した。 本 研 究 の対 象者 も,早 産 を試 練 と と らえ て いた 。 また,子 ど もの 成 長 ・発 達 が 期 待 どお り にい か な い,育 児 が 思 う よ う に進 まな い と感 じる時,比 較 の 対 象 を変 え る こ とに よ っ て,子 ど もの成 長 ・発 達,育 児 の 困難 さ を肯 定 的 に と ら え る よ うに 努 力 して い た。 そ れ ら は,同 じ よ うな 体 験 を した母 親 と 自己 との 比 較,過 去 に起 こっ た こ とや 将 来 起 こ りう るで あ ろ う こ と との 比 較,子 ど も自身 が示 す 元 気 に成 長 して い る部 分 を と らえ る,修 正 月齢 に よ る子 ど もの成 長 ・発 達 の判 断等 で あ った 。 この よ うに 《普 通 の親 子 へ の 希 求 》 は,早 産 児 の母 親 が 自分 た ち親 子 の 自己 評 価 を低 下 させ な い た め に, 子 ど もの 成 長 ・発 達,育 児 の 困 難 さ,母 親 と して の 自己 に対 す る主 観 的 と ら え を肯 定 的 に変 化 させ る た め に用 いた 方 法 で あ る と考 え る。 したが って, 母 親 が 《普 通 の 親 子 へ の 希 求 》 に含 まれ る よ う な 対 処 行 動 を と りや す くす る よ う なか か わ りが 看 護 援 助 と して 有 効 で あ る と考 え る。 子 ど もの 退 院 後 約1年 の 間,母 親 は育 児 の 困 難 さ に 直 面 す るた び に,程 度 の 差 は あれ 罪 責 感,孤 独 感,不 安 な どの 悲嘆 反応 を想 起 して い た。Miles (1995)ら は,早 産 に まつ わ る辛 い体 験 は,子 ど も が3歳 に な っ た 時 点 で も母 親 に とっ て辛 い 思 い 出 と して鮮 明 に残 っ て い る と述 べ て い る。 また,足 立(1999)は,障 害 児 の母 親 の適 応 を理 解 す るた め に活 用 され て い る段 階 モ デ ル は,適 応 状 態 の理 解 を歪 め る可 能 性 が あ る と指 摘 して い る。 す な わ ち,出 産 後 一 定 の 時 間 が 経 過 す る と悲 嘆 反 応 は 軽 減 し適 応 へ 向 か う こ とを示 した段 階 モ デ ル は,母 親 の適 応 の共 通 性 を強 調 す るあ ま り,悲 嘆 反 応 を 幾 度 も想 起 しな が ら育 児 をす る母 親 の適 応 へ の 理 解 を妨 げ る恐 れ が あ る。 早 産 児 を もつ 母 親 の親 役 割 獲 得 過 程 を理 解 す る上 で も,時 間 経過 だ けで は な く,悲 嘆 反 応 と親 役 割 の適 応 が どの よ うに影 響 して い るか,ど の よ うな対 処 方 法 を用 い るか と い う3つ の カ テ ゴ リー 間 の 関係 を考 慮 す る必 要 が あ る と考 え る。 V 結 語 早 産 児 の 母 親7名 を対 象 に,子 ど もの退 院 後 約 1年 間 の親 役 割 獲 得 過 程 に 含 まれ る カ テ ゴ リー と そ の 関連 性 を検 討 した。 そ の 結 果,早 産 児 の 母 親 34 日本 助 産学 会 誌 第16巻 第2号(2003.2)

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早産児をもつ母親の親役割獲得過程 に関する研究 の 親 役 割 獲 得 過 程 を構 成 す る カ テ ゴ リー と して 《出産 に対 す る期 待 が 奪 わ れ た 体 験 》,《期 待 喪 失 に対 す る悲 嘆 反 応 》,《親 役 割 の適 応 》,《普通 の親 子 へ の 希 求 》,《親 役 割 獲 得 に必 要 な サ ポ ー ト》 の 5つ の カ テ ゴ リー が抽 出 され た 。 早 産 児 の母 親 は 「普 通 の親 子 」 の イ メー ジ に対 す る対 象 喪 失 を経 験 して い た 。悲 嘆 反 応 は,子 ど もが 家 庭 に戻 っ て きて か らの 約1年 の 間,程 度 の 差 は あ れ 幾 度 も想 起 さ れ て い た 。 《普 通 の 親 子 へ の希 求 》 は,自 分 た ち親 子 は特 別 な 親 子 で はな い と と ら え早 産 の 悲 嘆 に対 処 し,親 役 割 に適 応 す る た め の行 動 で あ った 。 今 後 は,対 象 者 が 《普 通 の 親 子 へ の 希 求 》 に含 まれ る対 処 方 法 を と りや す く な る よ うな 援 助 方 法 につ いて 検 討 す る必 要 が あ る と考 え る。 謝辞 本 研 究 を進 め る にあ た り,デ ー タ収 集 に協 力 して いた だ いた お母様 方,対 象 とな るお母様 方 を紹 介 し て くだ さ い まし た施 設 の 病 棟 師 長,小 児 科 医 師 の 方 々 に心 よ りお礼 申 し上 げ ます。 また,研 究 計 画 の 段 階か ら細 や か な指導 をい ただ きま した札幌 医 科大 学 の丸 山 知子 教授,今 野 美紀 講師 他,研 究 室 の諸 先 生 をは じめ,支 えて くだ さった皆 様 に改 めて深 謝 い た します。 な お,本 研 究 結果 は,札 幌 医 科大 学修 士 論 文 の 一 部 に加 筆 ・修正 を加 えた ものです。本 研究 の要 旨は, 第16回 日本 助産学 会学 術集 会 にお いて発表 し ました。 文献 ・ 足立智昭 (1999), 障害児を もつ乳幼児の母親 の心理的 適応 とその援助 に関する研究, 12-31, 東京, 風間書房. ・ 馬場一雄 (1990), 育児 とは, 周産期 医学 臨時増刊号, 20, 268-270、

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参照

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