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ミヤコサワガニの食性 : デジタルカメラ撮影による直接記録

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Academic year: 2021

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C A N C E R 18 (2009), p.11-15

ミヤコサワガニの食性: デ ジ タルカメラ撮影による直接記録

田 喜 久

はじめに

、 ヤ コ サ ワ ガ ニ GeothelPhusa m

akoensis Shokita, Naruse

&

Fujii, 2002 は,サワガニ科に 属する中型種で,琉球列島の宮古島のみに分布 する. 本種は,宮古島のわずか4 カ所の極めて 小さな規模の地表水性の湧水にのみ生息してお り,個体数も少ない( 藤田 ,2007, 2009) そのた め,環境省レッドリストにおいて絶滅危倶I類 (C R + E N) に,沖縄県版レッドデータブックにお いて絶滅危倶IA 類 (C R) に,それぞれ区分され ている (成瀬,2005; 諸喜田 ,2006). しかしなが ら, ミヤコサワガニの保護 ・保全のために必要な 産卵期 ・卵数 ・食性 ・生長 ・寿命等に関する研究 は現在までほとんど行われていない (諸喜 田ら, 2006). この理由としては,本穫が比較的最近発 見された種であることの他に,本種の個体数が極 めて少なく,研究目的による採取ですら現地個体 群に大きな影響を与える可能性が考えられること も一つの要因であろう. 著者は,宮古島の湧水に生息する十胸l甲殻類の 種類相と生態に関する研究の目的のために, 2004 年以降,ほほ毎月 1 回宮古島を訪れている その 機会を利用して,夜間にミヤコサワガニの生息地 を訪れて諸観察を行った 本稿では,その過程で 直接観察することができたミヤコサワガニの食性 について写真記録を添えて報告する .

材料と 方法

今回の観察は, 2004年 7 月から 2008年 8 月ま で,沖縄県の宮古島におけるミヤコサワガニの 3カ所の湧水において実施した. なお,生息地の 保全上の理由から,本稿ではミヤコサワガニの生 Y oshihisa

Fu

JIT A: T he diet of Geothelphusa miya-koensis Shokita, Naruse & F吋ii,2002

息する湧水の名称や位置を伏せさせていただく. また,ごく最近,宮古島の東部の湧水付近にお いて本種の新たな生息地が確認されたが (藤田, 2009) ,同 生息域における本種の食性に関する調 査は行われていない. 日没後に湧水を訪れ,ライトで照らしながら本 種を探索したその際,摂食行動が見られた場合 は速やかにデジタルカメラを用いて撮影 ・記録し た. なお ,デジタルカメラは,防水性能および水 中撮影の可能なペンタ ックス (P E N T A X) 社製の iuptio W Pi J および iuptio W 6 0J を用いた 結果と考察 植物性の餌としては,湧水周 辺に生育する植物 の茎や校,落葉,落実を摂食する様子が観察され た. 落葉および茎・校については,いずれも枯れ て濃褐色にな った状態のものを摂食する様子が多 く観察された (図1 A,C ). ただし,緑葉の落葉 も食べていた (図 1 B ). また,比較的新鮮な植 物の茎 ・校では,主に表皮部分を食べる様子が観 察された( 図 1 D ). 植物の落実については,ガ ジュマルFicus microcarpαM i q.あるいはアコウ Ficus superba Miq. var. japonica Miq.の実を摂食 する様子を観察することができた (図1 E ). た だし,図1 Eのものは ,残念ながらどちらの実で あったか現地で確認することはできなか ったが, 観察日が2005年7月22日であったことから ,結実 期が10月- 4月のガジュマル (花城ら,2009) で はなく,アコウの実である可能性が高いものと思 われる. なお,宮古鳥の湧水周辺 には,ガジュマ ルとアコウが良く見られ 湧水中に葉や実が落ち てテナガエビ類およびヌマエビ類の重要な餌資源 となっている (佐渡山 - 藤田,2006). また, ミヤ コサワガニが生息する湧水中には,アオミドロ類 と思われる緑藻類の繁茂が見られたが, これを摂

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図1 ミヤコサワガ ニの食性

A,植物の落葉 (枯れ葉) を食べるミ ヤコサワガニ; 8 ,植物の落葉 (緑葉) を食べ る個体; C ,植物の枯れ枝を食べる

個体; D ,植物の枝の表皮部分のみを食べる個体; E ,植物の実 (アコウワ) を食べる個体; F ,アオミドロ類を食べる

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藤 田 喜 久

13

図2 ミヤコサワガニの食性

A.陸性巻貝類を食べる ミヤコサワガニ;s.別の巻貝 ;C .ヤコ類を食べる 個体;O. ミヤコサワガニの甲を食 べる個体;

E . j勇水周辺で 見 られた 供え物 ;F. 米粒 を食べる 個体; G. ミヤコサワガニ の死個体に群がるプラナリア類; H .同, 拡大写真

(4)

た. また

i

勇水 中には,巻貝類 (カワニナ類) や

グ ッ ピ ー

Poecilia reticulata

Petersが多数生息 し てい たが, ミヤ コサワ ガニがそれらを捕食す る様 子 は一度も観察する ことができなか った. ミヤコサワガニの生息湧水の一部は,昔から貴 重な水場として地元の人々に 利川 されてきたが, 現在でも祈願の場として大切にされているよう である (佐渡山 ・藤田 ,2006) は,線香,塩, おj酉,米,煮干し,菓子類 (黒糖 飴など) などが供え られていることもあった (図 2 E ). これら の供 え物 のうち ,米,煮干し ,菓子 類などは, ミヤコサワ ガニの餌資源となりえるも のであるが,実際に米粒を摂食する様子も観察さ れた (図2 F). 今回は観察されなか ったものの, 菓子類のように添加物などが含まれている食品 は, ミヤコ サ ワガニになんらかの影響 を及ぼす可 能性もあり,今後注意を要するかもしれない . し かし,地域の人々が湧水を大切 にする習慣や文化 が続く こと自 体 は,その 地の開発を食 い止め る原 動力にもなりえるため, ミヤコサワガニの 保護 ・ 保全 にと っても好ましい ことであ ると思われる . なお ,全くの余談ではあるが,現地調査中に地元 の方 ( ミヤコサワガニの生息湧水がある土地を所 有している方) にミヤコサワガニについて話を聞 生息地周辺の開墾や土地整備,2 ) 水量の低下, 3 ) 農薬散布などが懸念されている (成瀬 ,2005; 諸喜 田,2006). ミヤコサワガニの保護 ・保全のた めには,餌資源を確保するために ,1勇水周辺部の 植生や餌動物 (陸生員類など) の生息環境につい て も良好に保つ必要があると思われ る ミヤコサワガ ニは,生息地におけ る11百│ 体数が 極めて少なく ,保護 - 保全のために必要な基礎 的研 究は,採集圧の懸念からほとんど行われて こなか った (諸喜 田,2006; 諸喜 田ら ,2006). 今 後も,生態情報の 収集には ,研 究者や地元の有 識者による 「直接観察」に頼ることになると思わ れる その際,本研究のように ,防水型のデジ‘タ ルカメラやビデオカメラを常に携帯する ことで, 容易に「画像証拠j を得る ことができる . 近年, 本種の抱卵雌は7 月に ,稚ガニを抱えている個体 が

5 - 9

月に各々確認されたが, これらも 写真記 録付き で公表 された (佐渡 山・ 藤田 ,2006 ;藤田 , 2007) また ,本研究期間には , ミヤコサワガニ の死 亡個体に種名不詳のプラナリア類が多数群 が っているという貴重 な瞬間を記録することもで きた (図

2 G

H ).

今後も, このような情報をも 積み重ねて行くことで,ミヤコサワガニの保護 ・ 保全に少しでも資する ことができた らと考えてい く機会があり,

I

一度焼いて食べてみたが結構お る いしか った」 との談を得た 笠井 - 成瀬 (2003) は,

I

琉球列島に おいては 甲殻が厚堅な 中型 ・大 型植が多いた めか,食用にする習慣はないようで ある

.J

と述べ てい る. 宵慣として食べていたの ではないが, ミヤコサワガニを食べた 例 として貴 重 な証言だと思われるの で ここに紹介しておきた し、 一般的に,サワガニ類の食性は雑食性である 謝 辞 宮古島での調査に 同行 していただいた琉球大 学の旧 諸喜 田研究室の川原 問)1,池田広志,琉 球大学医学部の伊藤 茜 宮 古 島 市 在 住 の 砂川博 秋の各氏に感謝する . ま た, 宮古島市総合博物館 の関係者の諸氏には,同施設利用や湧水の情報収 集に際し ,様々な便宜を図 っていただいた 宮古

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藤 田 喜 久

15

島 に お け る 野外 調 査 や本 稿 の 取 り ま と め に は , 財 団法人トヨ タ財団 , 独 立 行 政 法 人 日 本学術 振 興会 の平成 19年 度 科学研 究 費 補 助 金 ( 奨 励 研 究 : 課 題 番号 19916012), 琉 球 大 学21世紀C O Eプログラム 「サンゴ礁 島唄系の生物多様性の総合解析

J

の支 援を受けた . 文 献 藤田 喜久,2007 宮古の湧水に生息する卜脚甲殻類. 宮古島市総合博物館紀要, 11: 89-110 藤田喜久,2009. 宮古島におけるミ ヤ コサワガニの新 たな生息地について. 宮古島市総合博物館紀要, 13: 71-76. 花城良居者 宮里政智 -西銘宜考- 字座 正・宇根杭l昌・ 久高弘輝 ・仲間敏岡IJ.下地俊充- 儀問礼乃斎藤綾子-篠原太郎, 2009. 沖縄の都市緑化植物図鑑 (第 l 版 第 4刷 )(国土交通省国土技術政策総合研究所環境研 究部緑化生態研究室監修, (財)海洋博覧会記念公園 管理財団編). 399 pp. 新星出版,那覇 笠井英美 ・成瀬 貫, 2003. サワガニ科Potamidae. 琉 球 列島の降水生物 (西島信昇監修,西国 l陸・鹿谷法一 -諸喜田茂充編) 東海大学出版会,東京, pp. 282-288. 成瀬 賞,2005 ミヤコサワガニ. 改訂・ 沖縄県 の絶 j威のおそれのある野生生物( 動物編) レッドデータ おきなわ (沖縄県編) 沖縄県文化環境部自然保護課, 那覇 ,pp. 190-191. 佐渡山正吉 ・藤田喜久, 2006 宮古の湧水 地下水環境 ・ 生物・人とのつながり - (宮古島市企画政策部地域 振興課編). 16 pp 宮古島市企画政策部地域振興課, 宮古島 諸喜回茂充, 2006. ミヤコサワガニ. 改訂 ・日 本の絶 滅のおそれのある野生生物 レッドデータブ ックー 7 クモ形類 ・甲殻類等( 環境省編) . 財 団法人自然環 境研究センター ,東京,p.33.

Shokita, S., Naruse, T ., & Fujii, H ., 2002. Geothelthusa miyakoensis, a n e w species of freshwater crab (Crustacea: Decapoda: Brachyura: Potamidae) from Miyako Island, Southern Ryukyus, ]apan.百le Raffles Bulletin of Zoology, 50: 443-448.

諸喜田茂充・成瀬 賞 ・藤田喜久, 2006. ミヤコサワ ガニの起源論. Cancer, 15: 1-7.

(琉 球 大 学 大 学 教 育 セ ン タ ー /

図 1 ミヤコサワガ ニの食性
図 2 ミヤコサワガニの食性

参照

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