94 T he Crustacean Society Summer M eeting in ]apanと日本甲殻類学会第47回大会の合同大会を振り返って
6.
シンポジウム「世界における
ズワイガニ類の漁業と漁業生物学の
現状j
を企画して
本 尾 洋 (日本海甲殻類研究会) 近 年 の 水 産 統 計 に よ る と 世 界 の ズ ワ イ ガ ニ 属 カ ニ の 漁 獲 量 は お よ そ17万 ト ン 内 外 に 達 し て い ま す. 一 方 , そ の 量 は 決 し て 安 定 的 で は あ り ま せ ん . こ の 貴 重 な 水 産 資 源 の 漁 獲 情 況 や 調 査 研 究 の 成 果 を 把 握 し , 互 い の 情 報 を 交換 す る こ と に よ り , 同 資 源 の 更 な る 適 切 な 管 理 を 目 指 し て , 表 記 の シ ン ポ ジ ウ ム を9 月21日に開 催 し ま し た . 以下 に そ の 結 果 の 概 要 を 紹 介 し ま す ちなみに ,世界にズワイガニ属 Chionoecetesの カニとして以下の5
種 * が分布しています( ①, ② は浅海性種,③ ⑤は深海性種)•① ズ ワ イ ガ ニ Chionoecetes opilio (Fabricius. 1788) ( 英名Snow crab)
② オオズワイガニ Chionoecetes bairdi Rathbun, 1893 (英名 Tanner crab)
③ ベ ニ ズ ワ イ ガ ニ Chionoecetes japoη!cus Rathbun, 1932 ( 英名 B eni-zuwai crab) ④ ト ゲ ズ ワ イ ガ ニ Chionoecetes angulatus
Rathbun, 1893 (英名 Triangle Tanner crab) ⑤ ミ ゾ ズ ワ イ ガ ニ Chionoecetes tanneri
Rathbun, 1893 (英名 Grooved Tanner crab) 発 表 者 は4 カ 国 か ら の6名 で , 発 表 順 に そ れ ぞれの概要を紹介します( 括弧内は所属機関) • 1 ) 山崎 淳 (京 都 府立海洋センター ) 長年,ズワイガニ漁獲量が減少傾向にあった若 狭湾西部海域において,保護区( 禁漁区) を設け *:li泣新の N get al. (2008)では従来の亜種が種に昇格され, Chionoecetes angulatus Rathbun, 1893
Chionoecetes bairdi Rathbun, 1893
Chionoecetes elongatus Rathbun, 1925 Chionoecetes jatonicus Rathbun, 1932 Chionoecetes otilio (Fabricius, 1788) Chio間oecetes tacificus Sakai, 1978
Chionoecetes tanneri Rathbun, 1893
てなかば強制的に底曳き網操業が出来ない区域を 設定した. 加えて操業許可漁場において,カニ・ カ レイ底曳き網に入った規 制 対象ガニが生きた状 態で網から脱 出できる装置を各漁船の漁網袋部に 装着した その結果,ズワイガニ漁獲量が良好な 状態で回復してきている.
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) ん1 nD .
B u r meister (グ リ ー ン ラ ン ド 天 然 資 源 研 究 所) 漁獲対象種はズワイガニで,その漁場はグリー ン ラ ン ド 西 岸 の 北 緯620- 72。 の 位 置 に あ る (世 界最 北 ). カニ漁業は1996年 に 開 始 さ れ , 急 速 な 開発により2002年 に は 約15,000トンのピークに 達 し た し か し , 過 剰 な 漁 獲 か ら2007年 に は2,189 トンに激減してしまった. 同海域ではメスガニの 再生産活動は1年ないしは2年 で 繰 り返さ れてお り, それは水温に左右されていることが明らかに なっている 3 ) 守安実己男( カナ ダ水産・海洋局) カ ナ ダ 大 西 洋 に お い て , ズ ワ イ ガ ニ 漁 業 が 始 まったのは1960年代中頃で,その 主漁場はセント ローレンス湾と南ノパスコシア ラブラドール海 域である . 漁獲はカニ篭で行われており,対象ガ ニ( 雄) のサイズは甲幅9 5 m m以上に決められて いる. 漁獲量は2007年 で90,000トン である . ここ では4 - 5
年の周期で漁獲量の増減が繰り返され てきている . 資源管理の一環として脱皮後間もな いカニの漁獲禁止およびそのようなカニの多い場 所での漁獲自粛をする方策をとり,資源量の維持 管理に努めている . 1980年代に雄ガニで最終脱皮 (terminal molt)が存在することが明らかとなり, その知見に基づいて資源管理の手法が大きく前進 した 以下の7稜となっている .ηle Crustacean Society S u m mer M eeting in ]apan と日本甲殻類学会第47回大会の合同大会を振り返 って 95 4 ) Gretchen H. Bishop (アメ リカ漁業局) アラスカ海域ではズワイガニ,オオズワイガ ニ, トゲズワイガニとミゾズワイガニの4種が分 布している 同海域には10漁業管理域があり,そ こでは現在ズワイガニとオオズワイガニが漁獲対 象となっている. 一方,深海性の