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Received 25 April 2018, accepted 28 May 2018 連絡先: 藤井 馨 (北里大学医学部放射科学 (画像診断学)) 〒252-0374 神奈川県相模原市南区北里1-15-1 E-mail: kaorufujii33@yahoo.co.jp

Cone-beam CTにおける上肢の位置と撮影条件の画質に対する影響

藤井 馨1,塚野 優2,原 敏将1,井上 優介1 1北里大学医学部放射科学 (画像診断学) 2北里大学病院放射線部 背景: 腹部血管造影においてcone-beam CT (以下CBCT) が役割を果たしつつあるが,上肢が 挙上できない状況では画質が低下する。本研究で,CBCTの画質に対する上肢位置と撮影条 件の影響についてファントムを用いて検討した。 方法: 模擬肝臓と模擬血管を使用し,上肢の位置と撮影条件を変えてCBCTを撮影した。模 擬肝臓の評価にはCT撮影用全身ファントムを,模擬血管の評価には自作ファントムを用い た。 結果: 模擬肝臓の検討では,上肢非挙上時に線状アーチファクトが見られ,画像雑音の定量 指標が上昇し,不均一性も強くなった。線状アーチファクトは上肢を側方に設置すると背側 に,前側方に設置すると腹側に出現し,上肢と脊椎の間に出現する傾向が見られた。管電圧 を上げても画質は改善しなかった。撮影時間を延長すると線状アーチファクトや雑音は低下 した。模擬血管の検討では,上肢を挙上しないと模擬血管に随伴するアーチファクトが高濃 度造影剤封入時だけでなく低濃度造影剤封入時にも見られ,コントラスト雑音比は低下し た。コントラスト雑音比は管電圧を上げると低下し,撮影時間を延長すると上昇した。 結語: CBCTで上肢を挙上しないと画像雑音が上昇し,線状アーチファクトや血管に随伴す るアーチファクトが増強することが示された。管電圧調整は画質改善に有効でなかった。 Key words: cone-beam CT,腹部血管撮影,上肢位置,撮影条件

序  文

 近年の血管撮影装置はflat panel detector (以下FPD) が 搭載され,cone-beam CT (以下CBCT) の撮影が可能に なった。FPD搭載血管撮影装置でX線管球と検出器を 回転しながら多方向から撮影して得られた情報は volumeデータとして処理され,CTと同様の画像が作成 される。横断像に加えて,冠状断像,矢状断像が作成 可能で,三次元表示も可能である1-3。腹部血管造影で もCBCTは広く用いられ,特に肝細胞癌に対する肝動 脈化学塞栓療法ではCBCTが高頻度に使用される。肝 動脈化学塞栓療法におけるCBCTの目的としては,腫 瘍の位置,個数,治療前の支配血管の詳細な評価,治 療後の腫瘍へのリピオドール貯留の確認,肝外臓器へ の塞栓物質逸脱の評価,術中の合併症の確認と様々な ものがある4-7  腹部血管撮影時のCBCTでは,上肢運動制限や麻酔 の使用などで上肢が挙上できないと,側面でのX線吸 収が強くなり,画質低下の原因になる。通常のCTでは 管電圧を上げればX線の実効エネルギーが上昇してX線 透過性が高くなり,体厚増加に伴う画質低下が軽減さ れる。しかしCBCTでは管電圧上昇が画質改善をもた らすかは不明である。本研究では上肢挙上時と非挙上 時を模したファントムについて様々な条件でCBCTの 撮影を行い,得られた画像の画質を視覚的,定量的に 評価し,CBCTの画質に対する上肢位置の影響とこれ に対する対策を検討した。

方  法

1. 使用機器  撮影にはシーメンス社製FPD搭載血管撮影装置Artis zee BA-Twinを用いた。模擬肝臓の評価には京都科学社 製のCT撮影用全身ファントムPBU-10を使用した。模 擬血管の評価には自作ファントムを用いた。ヨード造 影剤は第一三共株式会社のIohexol (300 mg/ml) を用い た。

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2. 模擬肝臓の検討  全身ファントムの上肢位置について以下の3条件を設 定した (図1)。上肢条件1は 上肢なし (上肢挙上時に対 応),上肢条件2 は上肢側方設置 (両上肢を挙上せず, 体幹の横につけた状態に対応),上肢条件3 は上肢前側 方設置 (両上肢を体幹の前側につけ,手を骨盤の前で組 んだ状態に対応) とした。各上肢位置について,基準管 電圧や撮影時間を変えた6種類の撮影条件で撮影した (表1)。基準管電圧を設定すると,被写体に応じて実際 に出力される管電圧および管電流が自動調整される。 管電圧を上げると自動的に管電流が下がる。CBCTで はパルス状にX線を照射して多方向の画像を収集する が,撮影時間を決定すると収集フレーム数が自動的に 決定される。  得られたCBCT画像の肝臓の画質を視覚的に評価 し,画像雑音,線状アーチファクト,不均一性を比較 表1. 模擬肝臓の検討における撮影条件 上肢条件 回転時間 基準管電圧 出力管電圧 (kV) 管電流 (mA) 撮影条件 フレーム数 (秒) (kV) 1 2 3 1 2 3 1 6 81 396 81 85 81 380 353 453 2 6 90 396 90 91 90 235 306 303 3 6 102 396 102 102 102 140 223 174 4 6 125 396 125 125 125 61 113 78 5 5 90 248 90 90 90 252 374 314 6 20 90 496 90 96 90 495 436 471 図2. 肝実質雑音評価用のROI 図3. 肝実質不均一性評価用のROI 図1. 模擬肝臓の検討におけるファントムの外観。上肢条件1 (A),上肢条件2 (B),上肢条件3 (C) を示す。

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した。撮影視野中心の横断像で2人の放射線診断専門医 が独立して判定した。グレード4 (高度),グレード3 ( 中等度),グレード2 (軽度),グレード1 (無視できる) の 4段階評価とし,2人が決定したグレードの平均値を使 用した。  さらに,肝臓の画質を撮影視野中心の横断像で定量 的に評価した。右葉背側,右葉腹側,両葉境界域,左 葉外側区に500 mm2の正円形関心領域 (ROI) を配置し, 各ROI内の吸収値の標準偏差を算出し,定量的雑音指 標とした (図2)。また,肝臓に16箇所の200 mm2の正円 形ROIを配置し,ROI内平均値の標準偏差を算出し,定 量的不均一性指標とした (図3)。 3. 模擬血管の検討  自作模擬血管ファントムをCBCTで撮影した。自作 模擬血管ファントムは,2.5倍,5倍,10倍に希釈した 造影剤を封入したチューブを血管モデルとして楕円柱 ファントム (長径30.5 cm,短径20 cm) に入れて作成し た。内径2.1 mmのテルモ社製サフィード延長チューブ を模擬大血管,内径1.1 mmのテルモ社製サフィード延 長チューブを模擬小血管とした。上肢は全身ファント ムのものを使用した。上肢位置について以下の2条件を 設定した (図4)。上肢条件1 は上肢なし (上肢挙上時に 対応),上肢条件2は 上肢側方設置 (両上肢を挙上せず, 体幹の横につけた状態に対応) とした。上肢条件2で は,楕円柱と上肢の中心の高さが同等になるようにし た。各上肢位置について模擬肝臓の場合と同じ6種類の 撮影条件設定で撮影した (表2)。  得られた画像の画質を視覚的に評価した。評価対象 は横断像とし,模擬血管が視認できる全ての断面を観 察して評価したが,視野辺縁はアーチファクトが強い ため評価から除外した。評価項目は模擬血管の視認性 (模擬血管が認識できるかどうか),模擬血管の辺縁の 鮮明さ,模擬血管周囲のアーチファクトとした。模擬 血管の視認性と模擬血管の辺縁の鮮明さはグレード4 (明瞭),グレード3 (やや明瞭),グレード2 (やや不明 瞭),グレード1 (不明瞭) の4段階評価とした。模擬血 管に随伴するアーチファクトはグレード4 (高度),グ レード3 (中等度),グレード2 (軽度),グレード1 (無視 できる) の4段階評価とした。2人の放射線診断専門医が 独立して判定し,決定されたグレードの平均値を使用 した。 表2. 模擬血管の検討における撮影条件 上肢条件 回転時間 基準管電圧 出力管電圧 (kV) 管電流 (mA) 撮影条件 フレーム数 (秒) (kV) 1 2 1 2 1 6 81 396 88 97 446 414 2 6 90 396 93 101 381 351 3 6 102 396 102 108 303 278 4 6 125 396 125 125 150 213 5 5 90 248 93 102 429 399 6 20 90 496 99 104 484 458 図4. 模擬血管の検討におけるファントムの外観。上肢条件1 (A),上肢条件 2 (B) を示す。

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 自作模擬血管ファントム横断像を用い,模擬血管が 視認できる断面で画質を定量的に評価した。模擬大血 管内に2.1 mm2の正円形ROIを,模擬大血管近傍のバッ クグラウンド領域に100 mm2の正円形ROIを配置し,以 下の式で大血管コントラスト雑音比 (大血管CNR) を算 出した。  大血管CNR = (LV mean−LVBKG mean)/LVBKG sd  ここで,LV mean,LVBKG mean,LVBKG sdはそれ ぞれ,大血管ROI内平均値,大血管バックグラウンド ROI内平均値,大血管バックグラウンドROI内標準偏差 を表す。  また,模擬小血管内に0.5 mm2の楕円形ROIを,模擬 小血管近傍のバックグラウンド領域に100 mm2の正円 形ROIを配置し,以下の式で小血管コントラスト雑音 比 (小血管CNR) を算出した。  小血管CNR = (SV max−SVBKG mean)/SVBKG sd  ここで,SV max,SVBKG mean,SVBKG sdはそれ ぞれ,小血管ROI内最大値,小血管バックグラウンド 表3. 模擬肝臓における視覚評価の結果 上肢条件 撮影条件 雑音 線状アーチファクト 不均一性 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 2 2 1 3 4 1 2.5 3 2 2 2 2 1 3 4 1 2.5 3 3 2 2 2 1 3 3.5 1 2.5 2.5 4 2 2.5 2 1 3 3 1 2.5 2.5 5 3 3 3 1.5 3 3.5 1 2.5 3 6 1 1 1 1 2 2 1 1.5 2 図5. 模擬肝臓のCBCT画像。上肢条件1と撮影条件2による画像 (A),上肢条件1と撮影条件5による画像 (B),上肢条 件1と撮影条件6による画像 (C),上肢条件2と撮影条件2による画像 (D),上肢条件3と撮影条件2による画像 (E) を示 す。

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ROI内平均値,小血管バックグラウンドROI内標準偏差 を表す。小血管は細いため,部分容積効果の影響を小 さくするために最大値を使用した。

結  果

1. 模擬肝臓の検討  各撮影における実際の出力の管電圧および管電流を 表1に示す。基準管電圧の設定値を上げると実際の出力 管電圧も概ねこれに一致して上昇し,管電流は低下し た。  CBCT画像の例を図5に,視覚評価の結果を表3に示 す。視覚評価では,画像雑音に上肢条件の違いによる 影響は見られなかった。管電圧の異なる撮影条件1から 撮影条件4の間でも画像雑音は同等だった。基準管電圧 設定が同じ場合,撮影時間が短い撮影条件5で雑音が高 く,撮影時間の長い撮影条件6で雑音が低かった。線状 アーチファクトについては,上肢が撮影視野内に設置 された上肢条件2,3で上肢なしの上肢条件1より強く 見られ,側方設置の条件2よりも前側方設置の上肢条件 3で強かった。管電圧の違いによる線状アーチファクト の違いは見られなかった。撮影時間を延長すると線状 アーチファクトが低減した。不均一性は上肢条件2,3 で強かった。管電圧の違いによる影響は見られなかっ た。上肢条件2,3で,撮影時間を延長すると不均一性 が小さくなった。  定量的雑音指標はどの部位でも上肢なしで最も小さ く,上肢非挙上では大きくなった (表4)。右葉背側で は,上肢条件2で最も大きく,右葉腹側,両葉境界域, 左葉外側区では上肢条件3で最も大きかった。管電圧の 違いによる画像雑音の違いは見られなかった。撮影時 間延長で画像雑音の低下が認められた。  定量的不均一性指標も上肢条件1で最も小さく,上肢 非挙上では大きくなった (表5)。上肢条件3で上肢条件 2よりも大きかった。管電圧上昇とともに上肢条件3で わずかには低下したが,撮影時間延長では変化しな かった。 2. 模擬血管の検討  各撮影において自動調整によって実際に使用された 撮影条件を表2に示す。視覚評価では,模擬大血管モデ ルも模擬小血管も,上肢条件や撮影条件に関わらず明 瞭に視認され,視認性に条件間の差は見られなかっ た。辺縁の鮮明さは,10倍希釈造影剤を入れた模擬小 血管モデルにおいて上肢条件2の方がやや低くなった が,それ以外では明瞭と判定された。撮影条件による 表4. 模擬肝臓における定量的雑音指標 上肢条件 撮影条件 右葉背側 右葉腹側 両葉境界域 左葉外側域 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 21.1 29.8 24.1 19.7 25.3 26.8 19.0 22.8 28.3 18.4 22.3 30.0 2 21.6 33.2 24.5 20.7 26.6 28.8 19.7 24.4 28.4 19.9 22.7 28.9 3 22.4 32.8 24.9 22.0 26.9 31.7 20.8 24.0 30.6 21.4 23.7 30.9 4 23.1 31.8 26.2 22.1 28.1 27.4 21.3 24.1 26.6 21.2 24.1 29.6 5 28.9 44.3 33.7 26.5 33.1 35.0 24.7 30.2 34.5 25.8 31.0 36.4 6 15.1 25.8 19.0 16.3 18.5 27.0 15.0 18.7 26.2 15.1 17.0 25.5 表5. 模擬肝臓における定量的不均 一性指標 上肢条件 撮影条件 1 2 3 1 11.7 23.8 35.0 2 11.4 22.2 33.9 3 11.1 24.3 32.5 4 10.1 24.2 27.7 5 10.6 22.6 34.4 6 7.7 21.8 33.3

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表6. 模擬血管に随伴するアーチファクトの視覚評価の結果 上肢条件 大血管モデル 小血管モデル 撮影条件 2.5倍希釈 5倍希釈 10倍希釈 2.5倍希釈 5倍希釈 10倍希釈 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2.5 2.5 1 2 1 2 1.5 1.5 1.5 1 1 1 2 2.5 2.5 1 2 1 2 1 1.5 1 1 1 1 3 2.5 2.5 1 2 1 2 1 1.5 1 1 1 1 4 2.5 2.5 1 2 1 2 1 1.5 1 1 1 1 5 2 2.5 1 2 1 2 1.5 1.5 1 1 1 1 6 1.5 2.5 1 2 1 2 1 1.5 1 1 1 1 表7. 模擬血管のCNR 上肢条件 大血管CNR 小血管CNR 撮影条件 2.5倍希釈 5倍希釈 10倍希釈 2.5倍希釈 5倍希釈 10倍希釈 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 132.2 82.7 80.1 61.2 40.7 32.0 90.8 54.8 45.3 28.9 25.5 15.0 2 129.3 73.2 71.8 50.7 37.5 32.9 79.5 50.5 37.8 26.5 17.5 14.0 3 106.5 66.0 62.1 50.8 33.6 28.0 71.1 42.4 32.2 23.2 16.3 11.7 4 81.9 53.4 50.7 42.5 25.7 25.0 52.8 40.1 24.6 18.4 10.4 9.1 5 91.2 67.1 55.1 38.2 29.9 26.1 61.3 39.6 32.7 22.0 14.7 10.9 6 133.3 90.5 103.2 86.5 57.3 43.4 131.9 69.7 57.7 33.5 29.0 17.1 図6. 模擬肝臓のCBCT画像。上肢条件1と撮影条件2による画像 (A),上肢条 件2と撮影条件2による画像 (B) を示す。上肢条件2で模擬大血管で随伴する アーチファクトが強い (矢印)。

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違いは見られなかった。  上肢条件1では2.5倍希釈造影剤を入れた模擬大血 管おいて,模擬血管に随伴するアーチファクトが見ら れた。上肢条件2では,このアーファクトが5倍,10倍 希釈造影剤を入れた模擬大血管,2.5倍希釈造影剤を入 れた模擬小血管でも観察された (表6,図6)。模擬血管 に随伴するアーチファクトについて,撮影条件の影響 は明らかでなかった。  全ての模擬血管モデルにおいて,上肢条件2で上肢条 件1よりも大血管CNR,小血管CNRともに低下した。 上肢条件に関わらず,基準管電圧上昇により大血管 CNR,小血管CNRともに低下し,撮影時間を延長する と,大血管CNR,小血管CNRが上昇した (表7)。

考  察

 本研究では,模擬肝臓におけるCBCT撮影において 上肢非挙上で強い線状アーチファクトが見られた。上 肢を側方に設置した場合には背側に,前側方に設置し た場合には腹側に出現し,上肢と脊椎の間に出現する 傾向が見られた。脊椎は強いX線吸収体であり,同部 による吸収に上肢による吸収が加わった方向におい て,X線検出量が不足し,線状アーチファクトが現れ ると考えられる。画像雑音については,上肢位置の影 響は視覚的には明らかでなかったが,定量的雑音指標 は上肢非挙上で上昇した。線状アーチファクトも寄与 していると考えられるが,線状アーチファクトが明ら かでない領域でも定量的雑音指標は軽度上昇した。不 均一性は上肢前側方設置で強かったが,線状アーチ ファクトが強い部位でROI内平均値が低く,アーチ ファクトが強い領域が広かったことが原因と考えられ る。体幹は前後方向に比べて左右方向に長く,X線の 吸収も左右方向で強い。左右方向の強いX線吸収に, さらに上肢による吸収が加わるのを防ぐために,上肢 を挙上できない場合に手を前で組んで上肢を前側方に 置いて撮影している施設があるが,上肢挙上困難時の 対策としては有効でないことが示唆された。ただし, 肝腫瘍が右葉後区域に位置し,観察領域が背側の場合 には,脊椎と上肢に観察領域が挟まれないように上肢 を前側に置くことで,画質低下の影響を軽減できると 思われる。  管電圧を上げるとX線の透過性が高くなり,画像雑 音やアーチファクトが低下することが期待される。し かし,今回使用した装置では,基準管電圧を上げると 自動的に管電流が低下し,X線検出量が減少する。本 検討の結果では,基準管電圧を変えても画像雑音に視 覚的にも定量的にも変化は見られず,視覚的なアーチ ファクトも変化しなかった。今回使用した装置におい て,管電圧調整は上肢挙上困難時の対策として有効で ないと考えられた。管電圧と管電流を独立して設定で きる機構が望まれる。  撮影時間を延長し,照射するX線量を増やした場合 には画像雑音やアーチファクトは低下した。これは, 上肢を挙上できなくても,X線量の増加で画質が改善 することを示唆する。しかし,本検討で用いた条件 は,通常6秒の撮影時間を20秒に延長し,照射線量は4 倍程度になっている。そのまま臨床に適用するのは呼 吸停止時間からも放射線被ばく量からも現実的でな い。  模擬血管を用いた検討では,いずれの条件でも模擬 血管の視認性や辺縁の鮮明さは良好で,上肢の位置や 撮影条件の違いによる差は見られなかった。より細い 模擬血管やより低濃度の造影剤を用いた腫瘍濃染モデ ルを用いた検討が今後の課題である。注目されるの は,模擬血管に随伴するアーチファクトに対する上肢 の影響である。上肢なしでは高濃度造影剤を入れた模 擬大血管でのみ見られたアーチファクトが,上肢非挙 上では低濃度造影剤でも見られた。このようなアーチ ファクトは血管の分岐や血管周囲の構造の描出を妨げ ることが懸念され,上肢非挙上による重要な問題と考 えられる。  CNRを用いて模擬血管のコントラストを定量的に検 討した。通常はコントラストの評価には,対象領域と バックグラウンド領域に設定したROI内平均値の差を 用いる。しかし,対象構造辺縁部のピクセル値は部分 容積効果の影響で過小評価されるため,対象構造が小 さいとROI内に過小評価された値を含み,コントラス トも過小評価されやすい。このため,本検討では,小 血管のCNRを評価するために小血管ROI内の最大値を 用い,大血管CNRと小血管CNRで同様の結果が得られ た。この結果は小血管ROI内最大値を用いたCNR評価 の妥当性を支持し,今後の模擬小血管を用いた検討に 寄与すると思われる。  上肢非挙上では,大血管でも小血管でもCNRが低下 したが,これは雑音の増加によると思われる。管電圧 を上げるとCNRが低下した。通常のCTでも管電圧を上 げると特にヨード造影剤によるコントラストが低下す るが8-10,これに対応する現象と考えられる。通常のCT 診療では,腎機能低下でヨード造影剤の使用が制限さ れる場合に,少量の造影剤でも造影効果を評価しやす いように低電圧撮影が行われることがある。CBCTで もヨード造影剤使用制限がある場合に同様の対策が有 効な可能性が考えられる。撮影時間を延長するとCNR が上昇したが,これは雑音の低下で説明される。

結  語

 本研究にて,CBCTで上肢非挙上では画像雑音が上 昇し,線状アーチファクトが出現し,更に,血管に随 伴するアーチファクトが強くなることが示された。今

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Influence of arm position and imaging parameters on

image quality in cone-beam CT

Kaoru Fujii,1 Masaru Tsukano,2 Toshimasa Hara,1 Yusuke Inoue1 1Department of Diagnostic Radiology, Kitasato University School of Medicine

2Radiation Department, Kitasato University Hospital

Background: The role of cone-beam CT (CBCT) is expanding in abdominal angiography. The image quality

is distorted when the patients cannot raise their arms. We evaluated the effects of arm positioning and imaging parameters on the image quality of CBCT using phantoms.

Methods: Phantoms bearing the simulated liver and simulated vessels were imaged by CBCT. The arm

position and imaging parameters were manipulated.

Results: When the phantom bearing the simulated liver was imaged with the arms down, streak artifacts

appeared, image noise increased quantitatively, and image inhomogeneity increased. Streak artifacts appeared in the dorsal portion of the liver with arms at the lateral positions of the phantom and in the ventral portion with the arms at the anterolateral positions. Increased tube voltage did not improve the image quality while prolongation of the scan time depressed streak artifacts and noise. When the phantom bearing the simulated vessels was imaged with the arms down, artifacts appeared around the vessels not only using high-concentration contrast solution but also using low-concentration contrast solution and, additionally, the contrast-to-noise ratio decreased. The contrast-to-noise ratio decreased with increasing tube voltage and increased with prolongation of the scan time.

Conclusions: When CBCT was performed with the arms down, noise increase. In CBCT, presence of the

arms in the imaging plane increased image noise, streak artifacts, and artifacts around the vessels. Manipulation of tube voltage was not effective to reduce the image distortion.

Key words: cone-beam CT, abdominal angiography, arm position, imaging parameter

回使用した装置では,管電圧調整で画質を改善するこ とは困難なことが示唆された。線状アーチファクト出 現領域は上肢位置に関連し,上肢挙上が困難な場合に は対象領域に応じて上肢の位置を調整することが望ま れる。また,管電圧と管電流を独立して調整できる機 構がCBCT装置に導入されることが期待される。 謝辞  本研究に協力いただいた北里大学病院放射線部相澤 真氏,神宮司公二氏,常木武士氏,シーメンスヘルス ケア株式会社市川隼氏,里見啓太氏に感謝します。 利益相反  本論文内容に関する著者の利益相反: なし

文  献

1. 阿知波左千子,廣田省三,山本 聡,他. 特集: FPDによる コーンビームCTの進歩─総説: 腹部IVRにおけるFlat Panel Detector搭載Cone-beam CTの有用性の検討─. 断層映像研究 会雑誌 2006; 33: 134-9. 2. 掛田伸吾, 興梠征典. 特集: FPDによるコーンビームCTの進 歩─総説: 直接変換方式フラットパネル検出器搭載血管造影 装置を用いたコーンビームCT; 悪性腫瘍のIVR治療における 有用性─. 断層映像研究会雑誌 2006; 33: 140-5. 3. 高瀬 正,木内克典,武 俊夫,他. 血管造影撮影装置搭載 コーンビームCTの特徴. 日本放射線技術学会雑誌 2009; 65: 755-64.

4. 宮山士朗. 特集: IVR Today 2009 IVRの可能性と限界─見 えない壁を越えて I. IVRの最新動向: 限界への挑戦 1. Vascular IVR 1) 肝動脈塞栓術 肝細胞がんに対するコーン ビームCT支援下動脈塞栓術. INNERVISION 2009; 24: 5-7. 5. 金澤 右,笹井信也. 特集: マルチモダリティによる Abdominal Imaging 2008 [臨床編]─日常臨床における戦略と 選択─ I . 肝 3 . 肝細胞がん・転移性肝がんのI V R . INNERVISION 2008; 23: 12-5.

6. Miyayama S, Yamashiro M, Shibata Y, et al. Arterial blood supply to the caudate lobe of the liver from the proximal branches of the right inferior phrenic artery in patients with recurrent hepatocellular carcinoma after chemoembolization. Jpn J Radiol 2012; 30: 45-52.

7. Kinoshita M, Takechi K, Iwamoto S, et al. The usefulness of cone-beam computed tomography during chemoembolization of hepatocellularcarcinomas fed exclusively by the cystic artery. Jpn J Radiol 2016; 34: 747-53.

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