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(1)

タイ国ソンクラ

῏湖周辺における環境の変化と対策

佐 藤 哲 夫῍

I

研究の枠組み

地球環境の変化の現れ方は῍ 地域によって大 きく異なっている (Kates et al., 1990)ῌ またそ のような局地的な環境の変化が起こりうる場所 は῍ 環境負荷の発生源のある場所と必ずしも一 致しないῌ そのため῍ ある地域の環境は῍ その 地域の人間活動からもたらされる環境負荷のレ ベルとかかわりなく῍ 地球環境の変化による影 響をも受けることになるῌ 例えば῍ 先進国での 化石燃料の大量消費による大気中の二酸化炭素 濃度の増加は῍ 地球の温暖化による海面上昇を 通じて῍ 開発途上国の῍ 人間活動があまり活発 でない沿岸地域にも大きな影響を与えることに なろうῌ このように῍ 地域環境の変化は῍ 人間 活動のグロ῏バルな展開と῍ 環境要素の地球的 な変化の双方を含めて考えられるべき時代に なっているῌ タイ国における環境の変化については῍ 森林 の消失や土壌浸食῍ また都市における生活環境 の悪化など多くの環境問題について῍ それらが 経済の高度成長とともに深刻化してきたことが 指 摘 さ れ て い るῌ そ の 中 で Rigg (1995) は῍ ボ῏ダレス化してきた国際経済が地域の環境に 与える影響の重要性を強調しているῌ 他方῍ 佐 藤 (1997) は῍ タイ国内における人間活動に よって排出される二酸化炭素の増加に注目し῍ 高度経済成長がもたらした環境負荷の増大を῍ 地球環境への影響という観点からもとらえてい るῌ また逆に῍ 地球環境の変化がタイ国各地の 環境にどのような影響を与えるかという研究も 行われ始めている (Srivardhana, 1993)ῌ 本研究は Hirai et al.(1999) に連なるもので῍ 事例地域としてタイ国南部地方にある同国最大 の湖であるソンクラ῏湖 ῑ面積 1,182 km2ῒ 周辺 を取り上げるῌ この地域の環境については῍ ほ かにも Somboon and Paphavasit (1993), 春山 (1997),平井 (1995, 1999, 2000) などの報告があ るが῍ 本稿では῍ 社会経済的な側面に焦点を当 てて῍ バンコク大都市圏の発展過程を参考にし ながら῍ 地域経済の長期的な動向とのかかわり で῍ 地域環境の変化について検討するῌ ソンクラ῏湖は῍ サティンプラ半島と呼ばれ る幅 4ῐ10 km の砂州で海と隔てられた海跡湖 で῍ 汽水から淡水までの 3 連の湖からなるῌ 湖 口のある南側にサップ῎ソンクラ῏湖῍ 中央に ルアン湖῍ そして北側にはノイ湖が連なるῌ 湖 口近くにはマングロ῏ブ林が῍ 奥には淡水湿地 林が成立し῍ また湖水の塩分濃度が季節的にも 変化するため῍ 生物相は多様であるῌ 近年の開 発による変化が最も著しく῍ また将来予想され る海面上昇の影響を最も強く受けると思われる のは῍ 湖口に位置するサップ῎ソンクラ῏湖周 辺であるῌ 海面上昇は῍ 乾季に湖水の塩分濃度 を高め῍ 雨季には沿岸低地の排水を妨げるなど の環境変化を招くと予測されており῍ 開発にと もなって土地利用変化が進むことで῍ 被害はさ らに深刻化すると思われるῌ ここではサップ῎ ῍ 駒澤大学地理学教室

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図 1 ソンクラῌ湖地方の水地利用

A:水田 B: 市街地 C:養殖池 D:国営灌ῌ事業地区 E: 禁猟区 a: 幹線道路 b: 聞き取り地点 1: バンῌマイ 2: タῌボン 3: ティン 4: ホワῌリェオ 5: ノックῌパ 6: タῌサオ 7: パクῌバン Figure 1. Land-use around the Songkhla Lakes

A: Rice field B: Urban area C: Fish/Shrimp ponds D: Irrigation project area E: No-hunting area a: Highways b: Interview sites

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ソンクラ῏湖を中心に῍ ソンクラ῏湖地方の土 地条件と土地利用動向を観察し῍ 最近の衛星写 真の判読結果も用いながら῍ 環境保全対策のあ り方について検討した

II

タイ国南部地方の環境と開発の動向

タイ国の南部はマレ῏半島に伸びており῍ ク ラ 地 峡 ῑ北緯約 10 度ῒ 以南で国土面積の約 14%を占めるῌ 脊梁となる山脈の影響で῍ 東側 と西側の気候には大きな違いが生じるῌ 一般に タイでは῍ 5 月になると ITC が北上し始め῍ 南 から雨季に入るῌ ITC が通過した後῍ 一時的に 雨が少なくなるが῍ 9ῐ10 月にかけて南西モン ス῏ンが強まって多雨となるῌ 11 月になると ITCが南下して北から雨季があけるῌ 12ῐ2 月 半ば頃までは῍ 気温が低く過ごしやすいが῍ 続 く 3ῐ4 月は年間で最も気温が高く乾燥した季 節となるῌ 4 月後半になると大気が不安定にな り῍ 再び雨季が近づくῌ 南部地方でも西海岸側 ῑアンダマン海側ῒ は概ねこのパタ῏ンに従う が῍ 東海岸側 ῑタイランド湾側ῒ では῍ タイラ ンド湾をわたる北東モンス῏ンが多量の雨をも 図 2 サップῌソンクラ῍湖周辺の土地利用 A: 既成市街地ῑソンクラ῏市ῒ B: 造成地῎新規開発地 C: 養殖池 D: 水田 E: 湿地林῎湿原῎排水 不良地 F: 台地 G: 山地῎丘陵 a: 主要道路 b: 鉄道と廃線跡

Figure 2. Land-use around the Sap Songkhla Lakes

A: Built-up area (Songkhla City) B: New urban area C: Fish/Shrimp ponds D: Rice field E: Swamp forest/Swampy area F: Pleistocene terrace G: Mountain/Hill a: Principal roads b: Railroads (on and out of service)

資料 (data): Topogrophical Map 1: 50,000 (1973, 1990), Spot Image (08 Mar 1999), 平井 (2000) タイ国ソンクラ῏湖周辺における環境の変化と対策 ῑ佐藤ῒ

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たらすので῍ 10 月に始まる雨季が翌年の 1 月ま で続き῍ 降水量は 11ῐ12 月に最大となるῌ 脊梁 山脈の陰になる 5ῐ9 月までの降水量は比較的 少ないῌ 地形的な条件も脊梁山脈の東西で異なるῌ 西 海岸は῍ 沈水海岸が大きな割合をしめて平野の 発達が悪く῍ 海岸線は複雑であるῌ エスチュア リや小河川の河口にマングロ῏ブ林が発達す るῌ また῍ 離島も多く῍ サンゴ礁の発達がよいῌ 東海岸では῍ 強い沿岸流によって砂浜海岸や砂 州῍ 砂嘴がよく発達しているが῍ その一方で激 しい侵食を受けている海岸もあるῌ また 11ῐ12 月の多量の強い雨によって洪水が頻発し῍ 丘陵 部のゴム林伐採跡地では地すべりや土石流など の災害も生じるῌ タイ国の南部地方は῍ スズとゴム῍ さらに水 産物などの資源に恵まれ῍ 一人当たり所得で見 ると῍ 1970 年代までは他の地方に比べて豊かな 地域であったῌ しかし現在では῍ 工業化の遅れ から経済成長が伸び悩み῍ 必ずしも所得水準が 高いとは言えない状況になっているῌ 1994 年の 統計では῍ 南部地方は全国人口の 14%῍ 国民生 産の 8% を占め῍ 一人当たり所得は全国平均の 約 2/3 で῍ バンコクを除く平均とほぼ同水準に あるῌ しかし産業別所得構成では῍ 第一次産業 が 36%῍ なかでも水産業が 12% を占めており῍ また農業生産ではゴム製品の割合が高いという 点で῍ 非常に特徴的であるῌ 佐藤 (1999) は῍ 1990 年代後半における各県 の地域経済と資源に関する統計数値を用いて῍ 主成分分析による全国の地域区分を行ったῌ そ の結果῍ 南部の 14 県については῍ ΐ経済力の余 裕῔ を表す第 1 主成分はプ῏ケット県とソンク ラ῏県のみがプラスの値となり῍ また ΐ社会構 造の変動῔ を表す第 2 主成分は全県がプラスの 値を示したῌ このことから῍ 南部地方では῍ プ῏ケット県とソンクラ῏県を中心にして῍ 地 域経済の構造が変化していると言えるῌ ソンクラ῏湖地方では῍ 7ῐ8 世紀ころから῍ 海路による交易が外部との結び付きを担ってき たῌ 湖口に位置するソンクラ῏の町は῍ 18 世紀 後半に華人系領主が対岸のサティンプラ半島側 から港を移して建設した町で῍ 19 世紀末までこ の地方の政治経済的な中心地として栄えてき たῌ しかし 20 世紀初期の鉄道建設でこの地方 の地域構造は大きく変わったῌ 国鉄南部線は῍ 1916年にバンコクῐソンクラ῏間が開通した 後῍ 18 年にはハジャイからイギリス領マラヤの クダ῏州まで延びてマレ῏鉄道と接続し῍ さら に 21 年にハジャイからの支線がクランタン州 まで延長されたῌ 米などの農産物が鉄道でマラ ヤに輸出されるようになり῍ ソンクラ῏湖地方 でも低地の稲作や丘陵地のゴム栽培が大きな刺 激を受けて῍ 農業生産が拡大したῌ ハジャイは マレ῏半島南部の東西海岸地方の分岐点として 急速に発展したῌ ソンクラ῏湖地方の稲作の生産性は῍ 中部地 方や北部地方の水田地帯に比べて῍ 必ずしも高 いとは言えずῑ松田῎金沢῍ 1991ῒ῍ 稲作農村で は 1970 年代以前には灌漑整備を図りながら῍ 湖面漁業や湿原での水牛育成῍ 高燥地でのゴム 栽培などで収入を補っていたῌ 70 年代後半にな ると地域の中心都市が急成長し῍ 80 年代にはそ の影響が農村地域にも及んだῌ その背景には全 国的な経済成長とともに῍ 湖口を渡る橋の完成 ῑ1986 年ῒ と῍ サティンプラ半島を経て南部を 縦貫する 408 号線の整備という交通条件の変化 があったῌ 県庁のあるソンクラ῏市は῍ 現在で はタイ国における水産業の拠点の一つになって いるῌ またハジャイ市には῍ 国際空港があり῍ マレ῏シアとのボ῏ダ῏῎シティとして῍ 南部 地方の経済中心地になっているῌ これら地域経 済の成長に合わせて῍ とくに農村の開発を進め るため῍ ソンクラ῏湖を堤防で締め切って淡水 化する大規模開発事業も 80 年代後半に計画さ れた (NESDB, 1985) が῍ 生態系および住民生

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活への影響が大きいとして῍ 着手されていな いῌ 自然植生の少ない南部地方の東海岸側の中で は῍ ソンクラ῏湖地方は῍ 自然が比較的豊かな 地域と言えるῌ 湖岸に広い湿地林や湿原が残さ れており῍ 水田を含む多様な生態系の恵みを求 めて῍ 雨季には多数の渡り鳥が飛来するῌ 1975 年には林野局がノイ湖周辺の 457 km2の湿地を 禁猟区に指定し῍ 鳥類保護の自然公園として整 備したῌ 王室や自然保護団体の支援も受け῍ 現 在ではラムサ῏ル条約の登録地になっているῌ 他方῍ サップ῎ソンクラ῏湖やルアン湖沿岸の マングロ῏ブ林や淡水湿地林は῍ 湖の生態系維 持における重要性が指摘されていながら῍ 急速 に失われているῌ 1980 年代から湖岸で養殖業が 行われるようになり῍ 現在はエビ養殖業が急成 長しているが῍ これが湿地の開発を進める要因 の一つになっているῌ また῍ 都市化のために埋 め立てられた湿地の面積も小さくないῌ ソンク ラ῏湖地方の環境を維持するために῍ 農村開発 や都市整備とのバランスをとりつつ῍ 将来の気 候変動や海面上昇にそなえることが求められて いるῌ

III

都市の発達と市街地の拡大

McGee and Robinson (1995)によれば῍ アセ アン諸国における近年の都市化の特徴として῍ 人口の大都市圏への集中と大都市圏内での分散 的分布が指摘されているῌ 佐藤 (2000) は῍ バン コク周辺における市街地の拡大が῍ バンコク都 内に広大な未利用地を残しながら῍ 幹線道路沿 いに帯状開発の形で進んでいることを明らかに したῌ 現在のタイ国では῍ 幹線道路に沿った急 速な市街地の拡大は῍ バンコク大都市圏だけで なく῍ 地方都市にも見られる現象であるῌ 自動 車交通の普及によって῍ 土地利用の広域的な調 整と管理が必要な時代になったと言えるῌ ソン クラ῏湖地方では῍ 1950 年代に῍ ハジャイ市の 人口がソンクラ῏市を上回り῍ 94 年の登録人口 ではソンクラ῏市の 8.2 万人に対してハジャイ 市が 16.7 万人と῍ 約 2 倍になったῌ 現在の両都 市は῍ 約 25 km しか離れていない距離関係や῍ 補完的な都市機能配置から῍ ハジャイ市を中心 とするコナベ῏ションと見ることができるῌ 近年῍ ハジャイ市周辺の幹線道路の整備が進 み῍ 市街地が急速に拡大しているῌ 市街地開発 はハジャイ市の中心市街地から見て῍ 西方と南 方の内陸丘陵地῍ および北東方の湖岸低地で活 発であるῌ 前者では国道 4 号線と 43 号線沿い に῍ また後者では二都市を結ぶ 407 号線とバイ パスおよびサティンプラ半島に向かう 408 号線 沿いに῍ 工場῍ 公共施設῍ 商業施設や住宅など が建設されているῌ 例えば中心市街地から西方 に 13 km ほど離れた῍ 国道 4 号線近くの丘陵地 には῍ スズ鉱山の跡地を利用して῍ 1994 年に国 営のソンクラ῏工業団地 (1.8 km2)が造成され たῌ また中心市街地から約 20 km 離れた῍ 407 号線と 408 号線が交差する地区には῍ 低湿地を 埋め立てて῍ 学校と病院を核にした公共施設地 区が建設され῍ さらに商業施設も集まって῍ 副 次的な中心地が形成されつつあるῌ ソンクラ῏ 市周辺でも῍ 砂嘴の基部に近代的な施設を備え た漁港が建設され῍ 湖口対岸側では流通港の整 備が進められているῌ これらの開発によって῍ ハジャイῒソンクラ῏都市圏の地域構造は大き く変わりつつあるῌ 工業῎流通施設や公共施設などの大規模開発 にともない῍ 住宅団地などの分散的な小規模開 発も進んでいるῌ バンコクの例では῍ 宅地開発 業者は開発の規模を大きくしてコストを下げる ために῍ 地価の高い既開発地周辺に未利用地を 残したまま῍ 離れた場所に新しい開発地を求め るのが一般的であるῌ その場合῍ 開発から取り 残されるのは低湿地など条件の良くない土地で あるが῍ 周囲の開発が進むことでますます排水 が悪くなるという例は少なくないῌ ハジャイῒ タイ国ソンクラ῏湖周辺における環境の変化と対策 ῐ佐藤ῑ

(6)

ソンクラ῏都市圏でもスプロ῏ル的な住宅地の 開発が進んでおり῍ 盛り土や排水路の設置が無 計画に行われるため῍ 丘陵῎台地の麓の開発地 周辺では雨季の強い雨による滞水が見られるῌ 計画的な築堤や排水整備が行われなければ῍ 雨 季における浸水被害は悪化することになろうῌ 政府は῍ ハジャイ῔ソンクラ῏都市圏の急速 な成長への対策として῍ 1985 年に都市計画の修 正を行い῍ 都市計画区域を 33.6 km2から一気に 254.5 km2に拡大したῌ 現在のハジャイ市の市 域面積 21.1 km2῍ ソンクラ῏市の市域面積 4.6 km2に比べると῍ 十倍近い広さであるῌ 計画区 域内の土地利用現況は῍ 89 年には῍ 住宅系が 14.3 km2῍ 公共系が 4.9 km2῍ 工業῎流通系が 2.0 km2῍ 商業系が 1.8 km2῍ その他の交通用 地や公園῍ 宗教施設を加えると῍ 水路を除く市 街地面積は 25.2 km2であったῌ 90 年のハジャ イ῔ソンクラ῏の都市人口 ῐ市域外含むῑ は NESDBの推定で 30.5 万人であるから῍ 市街地 の人口密度は 12,100人/km2῍住宅地について は 1 人当たり面積が 47m2となるῌ これらの人 口規模や市街地面積は῍ 90 年当時のバンコクだ と῍ 既成市街地の外縁として開発が進んでいた ホワィクァン区ῐ26.6 万人῍ 22.5 km2ῑ に類似し ており῍ 過密とは言えないまでも῍ もっとゆと りが必要な状況にあると判断されるῌ 今後は人 口の郊外流出も加わって῍ 市街地の拡大が進む だろうῌ

IV

農業基盤と農村の地域分化

都市の発達による土地利用の変化について は῍ 市街地拡大などの直接的な影響のほかに῍ 労働市場や農産物市場の変化を通じてあらわれ る῍ 農地利用の変化を考える必要があるῌ Satoh (1999)による 1993 年農業センサスの分析によ れば῍ バンコク周辺の農業地域の空間構造は῍ 既成市街地を中心とした 3 層の圏構造にまとめ られるῌ 内側には農地が既成市街地の中に包摂 されて耕作放棄が広く見られる ῒ農業衰退地 域ΐ῍ 中間には粗放的な永年作物の割合が増え て幹線道路沿いに連続的市街地が形成されつつ あるῒ郊外農村地域ΐ῍ 外側には水田作が続けら れながらも集約的な野菜や果樹の園芸が発展し つつある ῒ準郊外農村地域ΐ が見られるῌ この 圏構造は῍ 都市化の過程で農村がたどる変化の 段階にも対応すると思われるが῍ その展開は伝 統的な水田地帯であるかどうか῍ 幹線道路が 通っているかどうかといった地域固有の事情で 異なってくる ソンクラ῏湖地方の場合῍ 湖の西側では῍ 小 規模な河川から取水して灌漑を行う稲作と῍ 高 燥地でのゴム栽培とを組み合わせた῍ 複合的な 農業が行われてきたῌ 近年はゴム栽培以外に῍ 果樹῎野菜や畜産῍ 養魚を取り入れた複合経営 が増えているῌ ただし作目間の有機的な関連は 意識されておらず῍ 作物は経済性の観点から選 ばれているようであるῌ 1990 年代初めには῍ 飼 料会社の主導で῍ 農民の生産組織によるナマズ 類の養殖が拡大したが῍ 生産過剰で価格が下が り῍ 現在は伸び悩んでいるῌ それに代わり῍ マ ンゴ῏などの果樹作や῍ 都市近郊では野菜作が 主力になりつつあるῌ このように主力作物の交 替の周期が短いことは῍ 生態的῎経済的に安定 した土地利用方式が未だに定着していないこと を示しているῌ 農協などの系統出荷が発達して おらず῍ 仲買人が特定産地に集中するという状 況を考えると῍ 産地間競争への参入を通じて商 業的農業の発展に期待することは難しそうであ る 湖の東側のサティンプラ半島でも῍ 稲作に依 存した農業が行われているが῍ その生産基盤は 西岸と大きく異なっているῌ 1993 年農業センサ スによれば῍ サティンプラ半島 4 郡の農家保有 地の 84% は水田であるが῍ 灌漑が行われてい る水田の割合は 33% にとどまり῍ そのうち 83%は半島北部にあるラノット郡に集中して

(7)

いるῌ 他方῍ ゴムを除く樹園地の割合は半島全 体で 6%῍ 耕作放棄地その他の非耕作地の割合 は 4% であるが῍ それぞれ 63%, 51% を半島南 端のシンハ῎ナコム郡が占めているῌ 半島南端 の農地利用が粗放的なのは῍ 浜堤の発達が良い という土地条件の違いもあるが῍ それよりも都 市化の影響が大きいと思われるῌ シンハ῎ナコム郡の内陸にあるノック῎パ村 では῍ 水田は耕作放棄されて湿地林の藪になっ ていたῌ また聞き取りによれば῍ 道路沿いの条 件のよい畑は宅地並みの高い価格で売却される というῌ 稲作は 10 年以上前から行われておら ず῍ 現在ではマンゴ῏やカシュ῏ナッツの栽 培῍ 養鶏などで収入を得ている者῍ 工場で働く 者が多いῌ 同じシンハ῎ナコム郡の海岸部にあ り῍ 408 号線に面したホワ῎リェオ村では῍ 農 家は約 340 世帯のうちの 3 割足らずで῍ 全世帯 の約 7 割は῍ 主な収入を土木工事や工場労働な どの農外雇用に依存しているῌ 50 世帯ほどは沖 合漁業の漁船員として雇用され῍ 年間 8 カ月を 村外で生活しているῌ このように῍ 半島南端で は῍ すでに地域社会が非農村化しつつあるῌ それとは対照的に῍ 半島北部にあたるルアン 湖北東岸の低地には῍ 南部地方では先進的な水 田農村が広がるῌ ここでは灌漑局 (RID) の国 営灌漑事業が行われているῌ 1967 年に着手さ れ῍ 現在の受益面積は 15,520 ha で῍ さらに 8,800 haを拡大する計画もあるῌ 事業は 3 地区 に分かれており῍ 第 1 区 (9,600 ha) は湖岸の低 地に῍ 第 2 区 (4,800 ha) はその北東方の海岸部 に῍ 第 3 区 (1,120 ha) は南東方の内陸部に位置 するῌ 第 1 区は 1 カ所の揚水機場と総延長 47 kmの幹線用水路からなり῍ その完成 ῑ1979 年ῒ で二期作が実現したῌ 以前は長稈在来種の一期 作が一般的で῍ 収量は 2ῐ3 t/ha であったが῍ 現在では 1ῐ4 月と 5ῐ9 月の年二回栽培されて おり῍ 収量も改良種の導入で 5ῐ6 t/ha に増加 したῌ つまり῍ 洪水に対応した雨季の長期栽培 から῍ 雨季前後の短期栽培二期作に集約化した わけで῍ 年間の生産量は 4ῐ6 倍に増加したこ とになるῌ 第 2 区῍ 第 3 区は既設水路に水門を設けて乾 季の用水を確保する方法をとっているῌ 地区内 の水路は農民組織の手で建設されてきたもの で῍ 水路網の整備は現在でも続けられているῌ 浜堤に沿って南北に伸びる水路のほかに῍ 雨季 の余剰水を直接海に排水するため῍ 浜堤を横断 する水路も開削されたῌ 3ῐ10 月の間は῍ 海岸 にある排水口の水門を締めることによって῍ 海 水の浸入を防ぐとともに῍ 水路網に水を溜め るῌ 水路は用排水兼用となるので῍ 機能が十分 に生かせず῍ 土地改良の効果は第 1 区ほど著し いものではないῌ 農業の集約化が進んだ半島北部の農村とは異 なり῍ 半島中央部では伝統的な稲作が続けられ ているῌ 在来種は 7 月に播種して翌年 1ῐ2 月 に収穫する大粒種で῍ 収量は 2 t/ha 程度と低 いῌ 一方῍ 改良種は在圃期間が約 2 カ月短縮さ れ῍ 収量は 4 t/ha まで増収するが῍ 出穂後の 1 月ごろに灌漑が必要となるので῍ 作付け面積は 少ないῌ 湖から水路に揚水するポンプの運転や 水路の管理は伝統的な農民組織によって行われ ており῍ 頭割りで徴収されている運営費の現状 を考えると῍ 画期的な改良は望めないῌ 低湿地 の水田土壌が重粘土で作業がきつく῍ また雨季 初めの洪水で被害を受けやすいこともあって῍ 稲作の生産性は低いῌ 水田の畦畔に生育するパルミラヤシの樹液採 取は῍ 古くから稲作を補う重要な現金収入源に なってきたῌ 採取は 1ῐ4 月の涼季に限定され るが῍ 現在の価格だと῍ 単位面積当たりの水田 から年間で米に匹敵する収入を得ることができ るῌ また樹齢 50 年までの長期にわたって採取 することが可能であるῌ しかし樹液採取の技術 を持つ者は次第に少なくなっており῍ 自ら樹液 採取を行う農民は῍ 水田所有者の半数に過ぎな タイ国ソンクラ῏湖周辺における環境の変化と対策 ῑ佐藤ῒ

(8)

いというῌ このように῍ 半島中央部では῍ 幹線 道路が通る海岸部の浜堤上の園芸農業以外は῍ 有望な代替作物がなく῍ 灌漑整備による稲作改 良に収入安定化の望みを託しているῌ

V

エビ養殖池のブῌム的拡大

海岸部での沿岸漁業には地域的な差があまり 見られず῍ 季節的にも北東季節風の強い 10ῑ12 月を休漁にするというパタῐンが共通してい るῌ それに対して湖面での漁業は場所と季節に よる差が大きくあらわれるῌ 海水の影響を大き く受けるサップ῎ソンクラῐ湖では地域差が特 に大きいῌ 湖口に近いシンハ῎ナコム郡のタ῎ サオ村では῍ 海水魚やエビの漁が中心であり῍ 1ῑ4 月までが主要な漁期であるῌ 1980 年代に は῍ 生簀῎籠によるスズキ類の養殖が導入され たが῍ 現在も養殖を行っている世帯は約 300 世 帯のうちの 1 割程度にすぎないῌ ほとんどの世 帯は休漁期には工場に日稼ぎに出ているῌ 一 方῍ 湖口から遠い西岸に位置するクアン῎ニャ ン郡のパク῎バン村では῍ 淡水魚の漁獲も多 く῍ 様῏な魚種を漁業の対象としているῌ 漁業 の最盛期は 9ῑ10 月で῍ 1 日の収入が農外雇用 の日当の 5 倍以上になるというῌ 湖水の塩分濃 度が低くなる 11ῑ2 月は休漁して῍ ゴム工場に 働きに出るῌ 北のルアン湖になると῍ 漁業に生計を依存す る世帯は少なくなるが῍ 湖岸に住む農民の多く は῍ 簗を用いてエビや汽水魚の漁を副業的に 行っているῌ サティンプラ郡ティン村では῍ 全 世帯の 1 割ほどが漁業に従事しているῌ 漁獲の 一部はペῐストなどに加工され῍ 仲買人や地元 の市場で販売されるが῍ それだけで生計を立て られるほどの収入にはならないῌ 漁は季節に よって仕掛を変えながら一年中行われている が῍ 漁獲量は 10ῑ12 月がピῐクで῍ 乾季は少な く῍ 4 月には最盛期の半分以下になるῌ ルアン 湖北部では῍ 淡水ウナギやコイ類など῍ 淡水魚 の漁業が行われ῍ 一部は海外にも出荷される が῍ 水揚量は多くないῌ 零細的で停滞な沿岸漁業に対して῍ 成長著し いのがエビ養殖業であるῌ エビ養殖業の経営体 数は῍ 全国的に増加し続けているが῍ 面積は 1990年代になってから頭打ちになったῌ すなわ ち中小規模の経営体が増加しているῌ 地域的に 見ると῍ 先発したバンコクおよび近隣 4 県で は῍ 1980 年代末をピῐクとして経営体数῍ 面積 とも減少に転じているが῍ 経営体当たりの平均 経営面積からみると῍ 90 年代に入っても 4.8 ha 前後で῍ 依然として大規模経営体が中心となっ ているῌ 他方῍ 後発の南部地方では῍ 90 年代に 入って経営体数と経営面積の著しい増加が見ら れるが῍ 平均経営面積の減少から῍ 構造的変化 があったことがうかがわれるῌ 南部地方の中で は先発していたナコンシタマラῐト県では῍ 87 年の平均 8.8 ha から 89 年には平均 2.9 ha に急 減しており῍ 87 年以後に中小経営体が急増した ことを示しているῌ それとともに῍ 面積当たり 平均収量が増加しており῍ 小規模な経営体ほど 集約的経営が行われていることも示されてい るῌ 南部地方の中でも後発のソンクラῐ県では῍ 当初から中小規模の経営体が担い手となってき たῌ 中小経営体は῍ 生産性の面では不安定であ るῌ ソンクラῐ県で養殖されているジャンボタ イガῐの収量は῍ 89 年に 7.4 t/ha, 90 年 6.5 t/ ha, 91年 3.7 t/ha, 93 年 5.6 t/ha と大きく変動し ているῌ ソンクラῐ湖地方のエビ養殖は῍ ラ ノット郡の海岸部で最も早く῍ 1980 年代半ばに 始まったῌ 郡の漁業事務所が把握している個人 経営の養殖経営体は῍ 1990 年の 788 戸から῍ 93 年 824 戸῍ 95 年 1,073 戸῍ 97 年 1,222 戸と増え 続けているῌ 90 年代からは海岸部だけでなくソ ンクラῐ湖の湖岸全域に普及し始めたῌ 経営体 には企業経営῍ 個人経営のほかに῍ 企業傘下の 生産者組織によるグルῐプ経営があり῍ さらに

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請負契約で従事する者῍ 各種作業の労働者がい て῍ 雇用の波及効果は大きいῌ また養殖池の造 成や施設の設置῍ 食品加工など῍ 関連部門への 経済効果も小さくないῌ 例えばサティンプラ郡 では῍ 野菜生産を行っていた農民グル῏プがエ ビの種苗生産に転じ῍ 現在では南部地方各地の 養殖場に稚エビを出荷しているῌ ラノット郡タ῎ボン村の場合῍ 約 370 世帯の うち῍ 3 割ほどがエビ養殖場の個人経営῍ 5 割ほ どがエビ養殖の請負῍ 残り 2 割が海面漁業に従 事しているῌ 養殖池からの排水による塩害で῍ 1990年頃までに稲作は全く見られなくなり῍ ま た砂丘上のパルミラヤシが立ち枯れるなど樹園 地も縮小して῍ 土地利用῎土地被覆は大きく変 化したῌ 廃水の浄化῎再利用は῍ すでに養殖業 界の大手企業で試みられているが῍ 下請け的な 経営体にもその技術が普及するとは考えにく いῌ 経営者の多くは病害の発生を警戒してお り῍ 常に新鮮な水を供給するように心がけてい るῌ また生産性に大きく影響する要因として῍ 養殖池の水の塩分濃度にも注意を払っている その結果῍ 現在では῍ 沖合いからパイプライン で取水した海水と῍ 塩分濃度の低い地下水を調 合して利用している経営体が多いῌ 出荷までに 要する期間はほぼ 4 カ月で῍ 季節的な制約はな いので年間に 2ῐ3 回養殖できるが῍ 海水の塩 分濃度や降水量に注意しながらスケジュ῏ルを 立てているῌ 雨で塩分濃度が低く抑えられる 9ῐ12 月の収量は῍ 乾季の 1.5 倍にもなるとい い῍ 地下水や淡水に対する需要は大きいῌ 農業が衰退したラノット郡の海岸部とは異な り῍ その他の地域῍ とくに最近養殖池が拡大し ているソンクラ῏湖岸の地域では῍ 養殖池から の排水をめぐって῍ 養殖業者と農業者や漁業者 との対立が起きているῌ 農業用水路でもある水 路への排水は῍ 稲作に塩害をもたらす可能性が あると心配されており῍ また湖への直接の排水 が漁獲を減少させているとの苦情も漁業者から 出ているῌ 一方῍ 養殖池の経営者は自分の住む 地域内での紛争を避けるため῍ 遠くの村に土地 を取得して池を造成する例が少なくないῌ また 不在地主の中には῍ 養殖池を造成しようとして いる者に土地を貸す者もいるῌ このことがエビ 養殖池のスプロ῏ル的な拡散を促しているῌ ル アン湖岸に面するサティンプラ郡クロン῎リ῏ 行政区では῍ エビ養殖池のスプロ῏ル的な拡散 を防ぐため῍ 1998 年からゾ῏ニングによる土地 利用規制を行っているῌ 水牛の育成が衰退して 以来῍ 利用価値を失っていた湖岸の湿原は῍ 今 では周辺の水田の収益を上回る地代を生み出す 土地になったが῍ その利用には新たな秩序が求 められているῌ

VI

サップ

ῌソンクラ῍湖周辺の環境

変化と対策

以上見てきたように῍ ソンクラ῏湖地方の環 境変化は῍ 社会῎経済的側面からは῍ ハジャイ ΐソンクラ῏都市圏の成長と農業῎農村の停滞 ないし衰退῍ そしてエビ養殖業のブ῏ム的拡大 の影響を受けているῌ その状況が最もよく現れ ている地域である῍ サップ῎ソンクラ῏湖周辺 の環境変化について῍ 海面上昇まで視野に入れ た超長期的タイムスケ῏ルで῍ 最後に検討して おきたいῌ この地域については῍ 土地利用の全 体的動向として῍ 水田や湿地林から市街地や養 殖池への転換が進んでいること῍ そして地域的 には῍ ῌ湖口周辺から南岸にかけての都市化地 域῍ ῍北岸の水田農業地域῍ ῎南西岸の複合農 業地域῍ ῏北西岸の湿地林地域῍ に区分される ことが指摘できるῌ NESDB (c. 1992)によれば῍ 2010 年の都市人 口は῍ 現在の市域のみでハジャイ市が 286,437 人῍ ソンクラ῏市が 117,658 人と予測されてい るῌ ソンクラ῏市の場合῍ 1980 年代以降の人口 推移は安定しており῍ NESDB 予測の人口増加 率の逓減傾向をそのまま外挿することができる タイ国ソンクラ῏湖周辺における環境の変化と対策 ῑ佐藤ῒ

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と思われるῌ その場合῍ 人口規模は 21 世紀後半 に 13.2 万人程度で安定するῌ 他方῍ ハジャイ市 の場合῍ 近年の人口変動が激しく῍ 信頼性の高 い予測ができる状況にないが῍ あえて逓減傾向 の外挿を行うと῍ 人口増加率が年平均 1% 未満 に低下するのは 2050 年以後となり῍ その時点 での人口規模は約 55 万人で῍ 2100 年にはさら に増加して 73 万人に達していることになるῌ この結果に加えて῍ 現市域周辺の都市化も考慮 するなら῍ 2100 年までにはソンクラ῏市も含め て 100 万人規模の都市圏が成立している可能性 が十分にあるῌ 100 万人規模の都市圏への成長 は῍ すでに限界に達しているといわれる固形廃 棄物の焼却῎埋立処理の問題を深刻化させるだ ろうし῍ 上水の不足も予想されているῌ また市 街地の拡大にともなう非合理的な土地利用が問 題になることもあるかもしれないῌ この予測を基に῍ 前述のハジャイῐソンク ラ῏都市圏の現在の市街地面積から考えると῍ 2100年の予測人口 865,000 人に対する市街地 面積は 106 km2となり῍ 現在の既成市街地を除 く約 70 km2῍ 今世紀中に新たに市街化され る面積として見積られるῌ そのうち῍ 産業用地 は経済構造の変動にともなって変わりうるが῍ 人口比例的な宅地需要によって῍ 少なくとも約 40 km2以上の開発が῍ ほぼ確実に見込まれるῌ さらに現在はまだ旧市街地の密度が高いので῍ 人口の郊外流出にともなって῍ 人口増加率を上 回る住宅地の拡大が予想されるῌ 産業部門別に地域的な立地動向を考えると῍ 水産加工を除く工業系の土地利用は῍ 現在と同 様῍ 内陸丘陵地のスズやラテライトなどの鉱物 採掘跡地に拡大していくだろうῌ 従って海面上 昇の影響は受けにくいῌ 一方῍ シンガポ῏ル῍ マレ῏シア方面との物流は今後も増加して῍ 流 通関連産業がこの地域の経済成長を主導する力 の一つになると予想されるが῍ その拠点となる 流通施設の用地は῍ 国道 4 号線よりも道路事情 がよく港湾施設の利用の可能性にも恵まれた 408号線沿いに展開するだろうῌ 例えばサティ ンプラ半島の南端が候補地として考えられるῌ 道路網の整備と海岸侵食の可能性を考え合わせ た῍ 計画的な配慮が求められるῌ 商業῎業務系 用地は῍ 都心部では高層化が進むので῍ 人口や 産業の成長ほど大きな拡大は見られないだろ うῌ むしろ郊外に新中間層をタ῏ゲットにした 大規模商業施設が立地していくと思われるが῍ その立地は宅地開発の影響を大きく受けるῌ 住 宅地は造成コストや宅地の選好性から῍ 水辺に 近い平坦地での分散的小規模開発が活発に行わ れると予想されるῌ 中心市街地からのアクセス のよい῍ 湖南岸の低地に注意する必要があるῌ 湖の水位上昇とスプロ῏ルの進行という二重の 要因から土地条件の悪化が広範囲に拡大しない よう῍ 基盤整備を行い῍ 開発を誘導しなければ ならないῌ それと同時に῍ 市街地の外縁に取り 込まれる農村や漁村を核におそらく形成される であろう密集市街地でも῍ 再開発などの対策が 必要となろう 農村地域では῍ 海面上昇によって῍ 汽水の浸 入による塩害や῍ 排水不良による水害を受ける 可能性があるῌ 湖口周辺では῍ 耕作放棄が進行 するので῍ 農業に対する影響は小さいだろう が῍ 用排水兼用の水路に依存している῍ サティ ンプラ半島内陸の水田地帯への影響は深刻であ るῌ 農業生産性の低下が急速に進むと考えられ るので῍ 農外部門を含めて῍ 雇用機会の確保に 柔軟に対応する必要があろうῌ 西岸の複合農業 地域でも῍ 近郊園芸の定着に成功する一部の農 村を除けば῍ 農業の衰退はまぬがれないだろ うῌ 今後῍ 低地の土地利用の動向で注目される のは῍ ゴム栽培であるῌ 現在῍ ゴム栽培は輸出 税を原資とする政府からの補助金によって῍ 植 付けから成園になるまでの 7 年間῍ 肥料などの 現物補助を受けることができるῌ 耕作者はその 間῍ ココヤシ῍ 落花生῍ パイナップルなどの間

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作で現金収入を得ることもできるῌ これは治山 に配慮した῍ 丘陵部でのゴム栽培奨励を目的と した政策であるが῍ ゴムは木材としての利用価 値も高いので῍ すでに木材輸入国に転じたタイ 国では῍ 国内需要に支えられて今後も生産は堅 調に推移するだろうῌ 約 25 年という改植の周 期からみると῍ 土地所有者にとっては῍ 資産保 全的な性格の強い土地利用方式であるから῍ 低 地でも収量の低さにかかわらず῍ 拡大していく ことが十分に考えられるῌ 現在すでに水田から ゴム園への転換を試みている例が散見される ルアン湖に続く水道付近の北西岸と῍ 湖口に 近い北岸と南岸では῍ 養殖池の急速な拡大が見 られるῌ 前者は湿地林に蚕食的に拡大したもの であり῍ また後者は都市開発の影響で水田が耕 作放棄されて転用されたもので῍ いずれもエビ の養殖池であるῌ 海面上昇によって湖水の塩分 濃度が高まり῍ 水の入れ替えが活発になれば῍ 養殖池の拡大がさらに進むと考えられるので῍ 農業者や漁業者との紛争回避のための土地利用 調整の手段を整備しておく必要があろうῌ また 湿地林の縮小は湖の生物資源を荒廃させるの で῍ 最後に残されたサップ῏ソンクラῐ湖とル アン湖を結ぶ水道沿いの淡水湿地林は῍ 保全の 必要度῏緊急性が高いῌ ところで῍ エビ養殖業が持続的であるかどう かについては῍ 検討の余地があるῌ 技術的には 持続可能だとしても῍ その技術が中小経営体で 採用されるためには῍ 団地化や資金補助などの 措置が必要になるだろうし῍ その場合は経済的 に国際競争力を失い῍ エビ養殖は衰退していく ものと思われるῌ いずれ去るであろうブῐム後 の養殖池跡地の土地利用に注意しておく必要が あるῌ バンコク周辺の場合῍ 工業用地や住宅団 地への転用が見られるが῍ ソンクラῐ湖周辺で は῍ それほどの土地需要はないだろうῌ 未利用 のまま放置されるだけならば問題は少ないが῍ 最も警戒しなければならないケῐスとして῍ 廃 棄物埋め立て地とされる可能性が考えられる とくに湖水位の上昇によって土地が水没する可 能性がある場合には῍ 所有者が保全のために積 極的に廃棄物を受け入れることも考えられるῌ 環境規準のゆるいタイ国では῍ 廃棄物に有害物 質が混入する危険性は小さくないῌ 養殖池の跡 地が῍ 湖の環境汚染源となってしまわないよ う῍ 監視していくことが重要であるῌ 謝 辞 本研究をまとめるにあたっては῍ 平 成 11 年度駒澤大学特別研究助成金の助成を受 けたῌ タイ国での現地調査は῍ 平成 9 年度駒澤 大学在外研究の期間中に῍ 愛媛大学教育学部地 理学研究室ῑ現在῍ 専修大学文学部地理学教室ῒ の平井幸弘氏が実施した῍ 環境庁の地球環境研 究総合推進費による ΐ海面上昇の影響の総合的 評価に関する研究῔ の機会を利用させて頂いて 行ったῌ 調査にご協力頂いた῍ ハジャイ市のプ リンス῏オブ῏ソンクラῐ大学自然資源学部地 球科学教室の Dr. Charlchai Tanavud をはじめ としたスタッフに῍ 深く感謝いたしますῌ

参 考 文 献

佐藤哲夫 1999. 空間構造からみた巨大都市バン コク῎ 統計 50(2): 11῍16. 佐藤哲夫 2000. バンコク郊外における市街地開 発の過程῎ 駒澤地理 36: 13῍31. 春山成子 1997. タイ南部ウタパオ川下流域の地 形と水害῎ 早稲田大学教育学部 学術研究 ῑ地理学῏歴史学῏社会科学編ῒ 45: 37῍45. 平井幸弘 1995. タイ国南部ソンクラῐ湖周辺の 地形と環境問題῎ 愛媛大学教育学部紀要 第 III部 15(2): 1῍16. 平井幸弘 1999. タイ国ソンクラῐ湖湖岸におけ る自然および社会῏経済システム῎ 愛媛大学 教育学部紀要 第 III 部 19(2): 1῍15. 平井幸弘 2000. タイ国南部ソンクラῐ湖におけ る海面上昇の影響予測評価῎ 汽水域研究 7: タイ国ソンクラῐ湖周辺における環境の変化と対策 ῑ佐藤ῒ

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1῍14.

松田藤四郎῍金沢夏樹 編 1991. ῎タイ稲作の 経済構造῏ 農林統計協会ῌ

Hirai, Y., T. Satoh and C. Tanavud 1999. Assess-ment of Impacts of Sea Level Rise on Coastal Lagoons. Regional Views, 12: 33῍45.

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図 1 ソンクラῌ湖地方の水地利用
Figure 2. Land-use around the Sap Songkhla Lakes

参照

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