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はじめに脳血流動態の評価は 古くよりpositron emission tomography(pet) や single photon emission computed tomography(spect) による手法が検査法として確立されている PETは精度の高い定量評価が可能であるが 検査可能な

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日常診療にすぐに役立つCT/MRIの基礎と活用法 —中枢神経系疾患—

3.CT/MRIによる定量解析

3-1.脳血流動態評価のためのPerfusion画像

工藤 與亮

北海道大学病院 放射線診断科

Perfusion Imaging for the Evaluation of Cerebral Blood Flow

Dynamics

Kohsuke Kudo Summary

The gold standard method for the measurement of cerebral hemodynamics is PET or SPECT; however, they have several disadvantages such as limited availability, radiation exposure, and long scan time. In contrast, CT and MR perfusion imaging can be quickly performed for acute stroke in almost all hospitals. As CT and MR perfusion share the same background and theo-ries, the same analysis methods can be applied. However, there are several differences be-tween them. In CT perfusion, quantitative results are more reliable and higher spatial resolu-tion is achieved, while higher contrast, wider coverage, and non-invasiveness (no radiaresolu-tion exposure) are the features of MR perfusion.

CT and MR perfusion utilize contrast materials (iodine and gadolinium, respectively), which act as an intra-vascular tracer. After the rapid injection of the contrast, continuous scans are performed to measure the concentration-time-curve (CTC) of each pixel. Semi-quantitative parameters such as bolus arrival time (BAT), time-to-peak (TTP), first moment mean transit time (fMTT), maximum slope (MS), and area under the curve (AUC) can be calculated from the CTC of the brain tissue. In contrast, quantitative analysis can be done after the deconvolution of CTCs of tissue and the artery (AIF) to obtain tissue residue function, R(t). Quantitative parameters such as cerebral blood flow (CBF), cerebral blood volume (CBV), and mean transit time (MTT) are calcu-lated from the R(t). CBF represents blood flow per unit time and unit volume, and it is directly recalcu-lated to brain tissue metabolism. CBV reflects the amount of the vascular bed, as it describes blood volume per unit volume of brain tissue, which is independent to the speed of blood flow. MTT is an average time for the transit of tracer in a pixel.

The most important application of CT and MR perfusion is acute stroke. As the decrease of cerebral perfusion pressure (CPP), CBV in-creases as the first compensation mechanism to maintain CBF (vascular reserve). When the CPP dein-creases further, decline in CBF starts but the oxygen extraction fraction (OEF) increases as the second compensation mechanism to maintain the oxygen metabolism of brain tissue (metabolic reserve). Finally, infarction of the affected tissues occurs through the severe drop in CPP and CBF values. MTT constantly in-creases during these processes.

Severely ischemic lesions demonstrate a severe decrease in CBF, therefore the tissue damage is irreversible and becomes infarct core. This core is imaged through the severe decrease of CBF or CBV in CT, whereas on MR images it is seen as a DWI lesion. Surrounding this core, there exists ischemic penumbra, where the drop in the CBF is not so severe and the functional failure of cells is reversible. Since this ischemic penumbra can be salvaged by early reperfusion, it becomes a target of early reperfusion therapy such as IV t-PA and mechanical thrombectomy. In CT perfusion, CBV-CBF mismatch can be used for the estimation of ischemic penumbra. In MR perfusion, DWI-PWI mismatch is frequently used for the visualization of ischemic penumbra. TTP and MTT have been widely used for the definition of PWI lesion; however, Tmax has become one of the standards for PWI lesion. The definition of PWI lesion with Tmax > 6sec has been used as the current consensus of stroke researchers and used in most multi-center trials.

Another application of CT and MR perfusion imaging is estimation of the vascular bed, and thus can be applied for the grading of brain tumors. As the malignant gliomas tend to have neo-vascularities, they have higher CBV (which reflects the vascular bed) than in low grade tumors. Therefore, these perfusion imaging modalities, especially MR perfusion, are frequently used for pre-operative evaluation of intracranial tumors.

Department of Diagnostic and Inter-ventional Radiology, Hokkaido Uni-versity Hospital

NICHIDOKU-IHO

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日獨医報 第59巻 第2号 2014

はじめに

脳 血 流 動 態 の 評 価 は、 古 く よ りpositron emission tomography(PET)やsingle photon emission comput-ed tomography(SPECT)による手法が検査法として確 立されている。PETは精度の高い定量評価が可能である が、検査可能な施設は限定されている。対してSPECT は広く臨床応用されており、定量性も十分である。しか し、PETやSPECTは急性期疾患に用いるには検査時間 が長く、容易ではない。 一方、CTやMRIでもCT灌流画像(CT perfusion)や MR灌流画像(MR perfusion)にて脳血流評価が可能であ り1-3)MR灌流画像は灌流強調像(perfusion-weighted imaging: PWI)とも呼ばれる。いずれも、造影剤を急速 静注して検査する手法として確立されている。PETや SPECTと比較してCTやMRIを用いる利点は、急性期で も迅速かつ簡便に検査可能であるという点と、解剖画像 (例えば単純CTや拡散強調像)との対比が容易である点 である。また、MRIでは造影剤を用いずに内因性の血液

を縦磁化でラベルするASL(arterial spin labeling)法 も臨床応用が進んでいる4) 本稿では、造影剤を用いて検査を行うCT灌流画像と MR灌流画像について、原理と解析法、撮像法、臨床応 用と評価法について概説する。両者は共通の原理に基づ いており、多くの特徴が共通である。両者を比較し、 CT灌流画像が優れているのは、高い定量性、高い空間 解像度、画像の歪みがない、24時間体制や臨時検査対応 などが容易という点であり、MR灌流画像が優れている のは、高い画像コントラスト、非侵襲性(X線被曝がな い)、広い撮像範囲などの点である。これらの相違点を 意識して両者を使い分ける必要がある(表1)。

原理と解析法

脳の血流動態を測定するためには、血流に乗せたトレ ーサが必要である。CT灌流画像ではヨード造影剤、MR 灌流画像ではガドリニウム造影剤が血流トレーサとして 用いられるが、これらの造影剤は高分子であり血液脳関 門(blood brain barrier: BBB)は通過しない。そのため、

BBBが保たれている正常の脳組織では血管内に留まる血 管内トレーサとしての挙動を示す点が、PETやSPECT で用いられる拡散性トレーサとは異なる。 血管内トレーサであるがために、血流動態の測定には 造影剤の急速静注を行い、初回通過(first pass)での濃度 変化(時間濃度曲線)を計測する必要がある。脳組織の時 間濃度曲線から、脳血流動態に関する各種の半定量パラ メータが求められる(図1)。半定量パラメータとして、

ボーラス到達時間(bolus arrival time: BAT)、ピーク到 達時間(time to peak: TTP)、一次モーメント法による平 均通過時間(first moment mean transit time: fMTT)、 カーブ下面積(area under the curve: AUC)、最大傾斜 (maximum slope: MS)な ど が あ る。BAT、TTP、

fMTTは時間に関するパラメータであり、虚血による循 環遅延に鋭敏である。AUCは血管床を、MSは脳血流量 を反映しており、これらは定量値ではないが相対値とし て用いることができる。 定量解析を行う場合は逆畳み込み積分(デコンボリュ ーション)を用いるのが一般的で、同一条件で解析する 表1 CT灌流画像とMR灌流画像の相違点 CT灌流画像 MR灌流画像 使用装置 ほぼ全ての装置 1.5T以上 侵襲性 X線被曝あり なし 画像コントラスト・S/N比 低い 高い 撮像範囲 狭い 広い 空間解像度 高い 低い 画像の歪み・アーチファクト なし あり 造影剤濃度と信号の直線性 高い 低い 定量性 高い 低い AIFの設定 手動設定可能 自動設定が必要 金属・磁性体の危険性 なし あり 24時間体制・臨時・緊急検査 比較的容易 施設によっては困難

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ならば患者間、検査間の変動が少ない5)。この場合は動 脈の時間濃度曲線(arterial input function: AIF)を取得し、

AIFと脳組織の時間濃度曲線の両者から残留関数〔R(t)〕 を求め、R(t)から各種の定量パラメータを算出する(図 1)6、7) CT灌流画像ではAIFの位置を設定するのは容易であ り、視覚的に動脈を同定して設定することができる。し かし、MR灌流画像ではAIFは部分容積効果によって形 態やピークが変動するため8)、適切なAIFを用手的に設 定するのは困難である。安定した定量解析には解析ソフ トによる自動的なAIF設定が望ましい。なお、AIFが解 析対象の組織から遠い場合には造影剤の到達が遅れる が、それによって定量解析にエラーが生じるため(ディ レ イ 効 果)9)、 定 量 解 析 に はblock circulant singular value decompositions(bSVD)、oscillation index SVD(oSVD)などのディレイ効果のない解析アルゴリ ズムの使用が推奨される10、11)

定量パラメータとしては、脳血流量(cerebral blood flow: CBF)、脳血液量(cerebral blood volume: CBV)、 平均通過時間(mean transit time: MTT)の3つがあり、

CBF=CBV/MTTの関係式が成り立つ12)CBFは脳組 織100g中に1分あたりに流れる血液の量であり、脳組織 の生理的循環パラメータで最も重要な指標である。虚血 によるCBVの上昇(血管予備能)が破綻するまではCBF の値は保たれるが、その後は低下する(図2)13、14)CBV は脳組織100g中に含まれる血液の量であり、流れの速 度は考慮されず、血管床を反映する。CBVは虚血によ る代償性の血管拡張により増加するが(血管予備能)、重 度の虚血では減少する。MTTは組織中を流れる血液の 平均的な通過時間を示すパラメータであり、虚血により 延長する。また、生理学的パラメータではないが、R(t) のピーク到達時間であるtime-to-maximum(Tmax)も 近年の多施設臨床研究(EPITHET、DEFUSEなど)で頻 用されている15-17) 一方、血管内トレーサであることを生かし、脳腫瘍の 血管床推定にCBVが応用されている。神経膠腫では一 般に、悪性度が高いと腫瘍血管の増生により血管床が増 加し、CBVが上昇する。よって、CBVの上昇によって 悪性度の推定がなされる。 なお、CT灌流画像では造影剤濃度とCT値が直線的で あるため特殊な変換は不要であるが、MR灌流画像では 造影剤濃度はΔR2*に比例するため、信号強度の対数を 用いて濃度に変換する。 C(t)=k×ΔR2*=- k ln

S(t)

TE S(0) 図1 時間濃度曲線とデコンボリューション

脳組織の時間濃度曲線から,BAT,TTP,fMTT,MS,AUCなど様々な半定量パラメータが計算される.さらに動脈のAIFを取得してデコンボリュー ションを行うことにより,残留関数[R(t)]が計算され,R(t)からCBF,CBV,MTTなどの定量パラメータが算出される.最近の臨床研究で頻用さ れているTmaxは,このR(t)のピーク到達時間である.

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日獨医報 第59巻 第2号 2014 ここで、比例定数kは血管内と脳実質で異なることが 知られているが、正確な値は撮像法や撮像パラメータに よって異なるため、定量性に影響を与える。 実際の解析に際しては、各装置メーカが提供する解析 ソフト、あるいは画像解析ワークステーションメーカの 解析ソフトが用いられることが多い。しかし、解析ソフ ト間で解析精度や解析結果が異なることが知られてお り18、19)、注意が必要である。ASIST-Japanによる標準 的解析ソフト(perfusion mismatch analyzer:PMA)が フリーウェアとして公開されており(http://asist.umin. jp/)、オフラインで解析することが可能である。

撮像法

CT灌流画像は多列検出器を用いた同時複数断面の撮 像が一般的で、面検出器による全脳撮像や、テーブル移 動を併用した広範囲撮像も用いられる。面検出器による 撮像では、CT angiography(CTA)やCT venography

(CTV)とのfusion画像も作成することが可能である(図

3)。

MR灌流画像は1.5T以上の装置が用いられ、echo pla-nar imaging(EPI)法で撮像される。急性期脳梗塞では

Gd造影剤のT2*コントラストが強いgradient echo型の EPI(GE-EPI)を使うことが一般的である。解析精度を 考 え る と 時 間 分 解 能 は2秒 以 内 が 望 ま し い が(TR< 2,000msec)、最近のMRI装置ではこの条件でほぼ全脳 の撮像が可能である。 CT灌流画像、MR灌流画像ともに造影剤は、インジェ クターを使用して3~5mL/sec程度で注入する。静脈ル ートの確保は右腕で20~22G程度の太い留置針が望まし 図2 虚血と各パラメータの推移 動脈の狭窄や閉塞により局所のCPPが低下すると,最初の代償機構としてCBVが上昇し(血管予備能), CBFは保たれる.さらにCPPが低下するとCBFが低下してくるが,次の代償機構としてOEFが上昇す ることで細胞の酸素代謝が保たれる(代謝予備能).最終的にはCBVも低下し,CBFが高度に低下する と梗塞に陥る.MTTはこの間,常に上昇傾向である.

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い。造影剤量はCT灌流画像であれば40mL程度、MR灌 流画像であれば通常のMRI造影検査と同様に0.1mmol/ kg(0.2mL/kg、single dose)が一般的である。 撮像パラメータは、CT灌流画像の場合は被曝低減に 留意し、低電圧、低電流にする必要がある。装置の性能 にも依存するが、一般的には80kVp、100mA程度で、 間欠スキャンも被曝低減に有用である。MR灌流画像の 場合もパラメータ設定は装置の性能に依存するが、TE は最短に設定し、TRは1,000~2,000msec程度でスライ ス枚数に応じて最短にするのが一般的である。CT灌流 画像でもMR灌流画像でも、解析精度のことを考慮する と2秒以下の時間分解能が必要である。 CT灌流画像では被曝低減のため、造影剤注入後5~10 秒程度のディレイを置いてから撮像を開始する。撮像開 始が早いと被曝量が増えるが、撮像開始が遅いと最初の スキャンで造影剤が到達している可能性があるため、解 析精度が極端に低下する。全体の撮像時間は50~60秒 程度は必要であるが、被曝低減のため造影剤のfirst pass の間の最小限に留めるべきである。 MR灌流画像では被曝がないため、撮像時間は余裕を 持って長く設定できる。EPIの信号を安定させる意味も あり、造影剤注入前から撮像を開始する。造影剤のfirst passでの撮像であるため、全体の撮像時間は90秒程度あ れば十分である。 なお、撮像法の詳細についてはASIST-Japanによるガ イドラインに準じることが望ましい20)

臨床応用と評価法

1.脳梗塞

虚血によって脳灌流圧(cerebral perfusion pressure:

CPP)の低下が生じると、最初の代償作用として血管拡

張が生じ、CBVが上昇することでCBFが一定に保たれ る(血管予備能)(図2)。さらにCPPが低下すると血管拡

張による代償作用が最大限となり、CBFが低下する。そ

の際の代償機構は酸素摂取率(oxygen extraction frac-tion: OEF)の上昇であり、CBFの低下に対して酸素代謝 が保たれる。さらにCPPが低下すると血管の虚脱が生じ る た めCBVは 低 下 し、 最 終 的 な 非 可 逆 的 梗 塞 に 陥 る13、14) 空間的には、非可逆的な梗塞コア部分の周囲に虚血ペ ナンブラが存在する(図4)。梗塞コアの部分はCBF低下 が強く、再灌流が生じても梗塞となる部分である。虚血 ペナンブラの部分は細胞障害が可逆的であり、早期再灌 図3 CT灌流画像の全脳撮像 面検出器CTにより全脳の多時相撮像が容易になり,1回の 造影剤注入でCTA,CTV,CT灌流画像のデータが同時に 得られる.症例はもやもや病術前患者で,左前頭葉にTTP 延長域を認める(➡).この画像のような外頸動脈系のCTA との重ね合わせ表示は血行再建術の術前検討に有用である.

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日獨医報 第59巻 第2号 2014 流によって梗塞に陥るのを免れることができる部分であ る21)。そのため、t-PA静注や血管内デバイスによる血栓 溶解療法のターゲットになりうる。虚血ペナンブラは梗 塞の一歩手前であり、OEFの上昇部分であるものの、 CT灌流画像やMR灌流画像ではOEF上昇は測定できな いため、CBVの上昇やCBFの低下、MTTの延長、Tmax の延長部分で推定される。 CTでは、梗塞コアの部分は単純CTでの低吸収域、い わゆる初期虚血変化で判定されるが、CT灌流画像にお けるCBVの低下域で推定されることもある。その場合 はCBF-CBVミスマッチで虚血ペナンブラが推定される。 一 方、MRIで は 拡 散 強 調 像(diffusion-weighted image: DWI)での高信号が非可逆的な梗塞を示すため、

DWI-PWIミスマッチ(diffusion perfusion mismatch:

DPM)によって虚血ペナンブラの推定がなされる(図 5)22)MR灌流画像での灌流異常域はMTT(特に一次モ ーメント法)を用いることが一般的であったが、より計 算が簡便なTTPが用いられることもある。しかし、これ らのマップでは灌流異常域の定義に絶対値を用いること が困難であり、閾値の設定によって灌流異常域が変動す る(図6)。最近ではTmaxを灌流異常域の定義に用いる ことが増えており、Tmax>6秒という基準が多施設共 同研究などで用いられている(図5)22) Tmaxは生理的な灌流パラメータではなく、ディレイ、 ディスパーション、MTTなどを含んだ指標ではある が15)、デコンボリューションによって患者間格差が少な くなるため扱いは簡便である。また、虚血の重症度にも Tmaxは関連しており、Tmaxの延長域が一定以上の容 積になると予後が悪いことも示されている。この場合は Tmaxの閾値として8秒や10秒が用いられる(図7)23) なお、MR灌流画像ではCT灌流画像よりも定量性が悪 いため、定量値そのものを絶対値で議論することは困難 である。また、解析法や解析ソフトウェアによって定量 値が変動するため、解析された定量値を絶対値として使 用することはできない。むしろ、灌流異常域の評価には 視覚的判定や対側比の使用などが必要となる。 2.脳腫瘍 CBVは血管床を反映するため、脳腫瘍の血管床の推 定にCBVが応用される(図8)。神経膠腫では一般に、悪 性度が高くなると腫瘍血管の増生により血管床が増加 し、CBVの上昇が見られる。よって、CBVの上昇によ って悪性度の推定がなされる24) また、脳腫瘍の治療後の再発病変の鑑別にもMR灌流 図4 虚血ペナンブラの模式図 CBFの高度な低下により非可逆的な梗塞のコアが中心部に生じる.その周 囲のCBF低下は比較的軽度であり,可逆的な機能障害を呈する虚血ペナン ブラとなる.

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図5 DWI-PWIミスマッチ DWI(A)で,左前頭葉弁蓋部に高信号を認める.MR灌流画像のTmax画像(B) では,同部位に加えて左側頭葉にも灌流異常域が広がっている.ミスマッチ マップ(C)ではDWIの高信号部分を赤,Tmax>6秒の部分を青で表示しており, ミスマッチ領域が視覚的に示される.本症例では血管の再開通は生じず,フォ ローアップのFLAIR像(D)でペナンブラ領域に一致した最終梗塞巣を認める. A B C D 図6 TTPの閾値による灌流異常域の変動 図5と同一症例のTTP画像(A)で,左中大脳動脈領域に灌流異常域を認める.TTPの閾値を用いた灌流異常域の自動マス ク設定において,閾値を10秒(B),14秒(C),18秒(D)と変化させることで,虚血領域のマスク(青)の範囲が変動する. A B C D

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日獨医報 第59巻 第2号 2014 A B 図7 Tmaxによる重症虚血の推定 図5と同一症例のTmax画像で,異なるカラースケールで表示している.一般的な灌流異常域の定義はTmax>6秒で あり,Aではその領域を赤く表示した.一方,重症虚血はTmax>10秒などが閾値の定義として用いられ,Bではそ の領域が赤く表示されるようにした.このように,目的に応じて表示スケールを変化させることも必要である. 図8 脳腫瘍におけるCBV

Low grade glioma(A, B)では,CBV画像(B)でCBV上昇を認めない.High grade glioma(C, D)では,CBV画像(D)で明らかなCBV上昇を認める.このようにCBV

は血管床を反映するため,gliomaの悪性度との相関が見られる.

A B C D

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画像は有用とされる。特に放射線治療後の壊死と再発の 鑑別にCBVが用いられ、放射線壊死ではCBVは低下す るのに対して再発病変ではCBV上昇が認められる25) CT灌流画像でもMR灌流画像でも、解析原理の基本は 血管内トレーサということであり、脳腫瘍のように血管 外に造影剤が漏出するような状況では定量性が悪くな る。CT灌流画像ではCBVの過大評価になりうる。MR 灌流画像ではT2*コントラストでの撮像のため、造影剤 漏出によってT1短縮が生じると、CBVの過小評価に繋 がる。それを最小限にするために、MR灌流画像では少 量のガドリニウム造影剤をあらかじめ投与しておき( pre-dose)、T1短縮効果を小さくするのが一般的である。

おわりに

CT灌流画像やMR灌流画像は、PETやSPECTと比較 して新しい脳血流検査法であり、簡便に使用可能な手法 としての位置づけではあるが、解析アルゴリズムの改良 などにより定量解析の精度も向上してきた。急性期脳梗 塞や慢性期脳虚血における血流動態解析や、脳腫瘍にお ける悪性度推定や再発病変の鑑別などに主に利用されて おり、今後も臨床研究の積み重ねによるエビデンスの構 築が期待される。 【参考文献】 1) Konstas AA, Goldmakher GV, Lee TY, et al: Theoretic basis and technical implementations of CT perfusion in acute ischemic stroke, part 1: Theoretic basis. AJNR Am J Neuroradiol 30: 662-668, 2009 2) Konstas AA, Goldmakher GV, Lee TY, et al: Theoretic basis and technical implementations of CT perfusion in acute ischemic stroke, part 2: technical implementa-tions. AJNR Am J Neuroradiol 30: 885-892, 2009 3) Provenzale JM, Shah K, Patel U, et al: Systematic re-view of CT and MR perfusion imaging for assessment of acute cerebrovascular disease. AJNR Am J Neuro-radiol 29: 1476-1482, 2008 4) Zaharchuk G, El Mogy IS, Fischbein NJ, et al: Compar- ison of arterial spin labeling and bolus perfusion-weighted imaging for detecting mismatch in acute stroke. Stroke 43: 1843-1848, 2012 5) Eastwood JD, Lev MH, Azhari T, et al: CT perfusion scanning with deconvolution analysis: pilot study in patients with acute middle cerebral artery stroke. Ra-diology 222: 227-236, 2002 6) Ostergaard L, Weisskoff RM, Chesler DA, et al: High resolution measurement of cerebral blood flow using intravascular tracer bolus passages. Part I: Mathemat-ical approach and statistical analysis. Magn Reson Med 36: 715-725, 1996 7) Ostergaard L, Sorensen AG, Kwong KK, et al: High resolution measurement of cerebral blood flow using intravascular tracer bolus passages. Part II: Experi- mental comparison and preliminary results. Magn Re-son Med 36: 726-736, 1996 8) van Osch MJ, van der Grond J, Bakker CJ: Partial vol- ume effects on arterial input functions: shape and am-plitude distortions and their correction. J Magn Reson Imaging 22: 704-709, 2005 9) Calamante F, Gadian DG, Connelly A: Delay and dis-persion effects in dynamic susceptibility contrast MRI: simulations using singular value decomposition. Magn Reson Med 44: 466-473, 2000 10) Wu O, Østergaard L, Weisskoff RM, et al: Tracer ar-rival timing-insensitive technique for estimating flow in MR perfusion-weighted imaging using singular val-ue decomposition with a block-circulant deconvolution matrix. Magn Reson Med 50: 164-174, 2003 11) Kudo K, Sasaki M, Ogasawara K, et al: Difference in tracer delay-induced effect among deconvolution algo- rithms in CT perfusion analysis: quantitative evalua-tion with digital phantoms. Radiology 251: 241-249, 2009 12) Meier P, Zierler KL: On the theory of the indicator-di- lution method for measurement of blood flow and vol-ume. J Appl Physiol 6: 731-744, 1954 13) Powers WJ, Grubb RL Jr, Raichle ME: Physiological responses to focal cerebral ischemia in humans. Ann Neurol 16: 546-552, 1984 14) Powers WJ, Raichle ME: Positron emission tomogra-phy and its application to the study of cerebrovascular disease in man. Stroke 16: 361-376, 1985 15) Calamante F, Christensen S, Desmond PM, et al: The physiological significance of the time-to-maximum (Tmax) parameter in perfusion MRI. Stroke 41: 1169-1174, 2010 16) Davis SM, Donnan GA, Parsons MW, et al; EPITHET investigators: Effects of alteplase beyond 3 h after stroke in the Echoplanar Imaging Thrombolytic Eval- uation Trial (EPITHET): a placebo-controlled ran-domised trial. Lancet Neurol 7: 299-309, 2008 17) Albers GW, Thijs VN, Wechsler L, et al; DEFUSE In- vestigators: Magnetic resonance imaging profiles pre- dict clinical response to early reperfusion: the diffu-s i o n a n d p e r f u dict clinical response to early reperfusion: the diffu-s i o n i m a g i n g e v a l u a t i o n f o r understanding stroke evolution (DEFUSE) study. Ann

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参照

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