電動巻上機 の歯車騒音 に及 ぼす歯面仕上法の影響
州ヽ
田
哲
*・永
村
和
照
*。難
波
千
秋
*(1976年
5月
31日 受 理)On Effect of Finisiing Methods of Tceth on Cear Noise
Elcctric Hoistby
Satoshi ODA*,Kazuteru NAGAMURA*,and Chiaki NANBA*
(Received May 31,1976)
Sunl】
mary
ln general the gearing is considered to be the predominant source of noise in electric hoists. This paPer presents a study into the effect of finishing methods of gear teeth on the gear noise in the electric hoist,which has PIa―
netary gear trains.
Analysis is made regarding the noise level and the mesh frequency oE gear trains.It is found that gear noise is affected significantly with methods of finishing teeth and that a considerable reduction of noise is attainable by grinding only the gear teeth of the motor pinion, which shows the highest mesh frequency.
Furthermore, the effect ot load on the gear noise oE the electric hoist is
also discussed. 1。 ま え が き 電動巻上機 における振動
,騒
音の支配的発生源の一つ として,歯
車装置をあげることができよう。歯車騒音は 歯車および歯車装置の振動が空気 中に伝わ ったものと考 えることができる。 歯車の振動,騒
音に関する比較 的 最 近 の研究 として は, ドイツにおける Niemannl)'2)ぉ ょび 。PitZ3)の研 究,わ
が国における歌川4),中村S)'。),会
田 ら7),8).0)の 研究がある。とくに会田 らの研究では,歯
車振動 と騒音 との関係を説明 し騒音の発生機構を明 らかにす るととも に,歯
車騒音の大 きさをその発生機構 に関連づけて定量 的に解明 している。 歯車騒音 と密接 な関係がある歯車の振動には,モ
ジュ ール,歯
数,歯
幅,歯
車本体の形状 と大きさ,材
質,か
みあい率,歯
車誤差,歯
面 あ らさ,潤
滑油,回
転速度, トルクなどきわめて数多 くの要因が相互に関連 して影響 する。そ してこれ らの要因の うちどれか一つがわずかに 変化 しても歯車の振動および騒音に大 きな影響を与える 場合がある。 本報では,これ らの要因のうち とくに歯車誤差,歯
面 あらさに着 日し,電
動巻上機 の歯車装置の歯面仕上方法 と歯車騒音の関係および荷重の歯車騒音に及ぼす影響に ついて検討を加え,興
味ある結果を得たので これ らにつ いて報告する。2.
歯車装置の振動・ 騒音の発生および伝達機構 歯車装置の振動,騒
音 の発生および伝達機構 は つざのように説明される。まず,歯
車は歯をぽね とし歯車本体を質量 とする振動系において,歯
の ばね こわさの周期的変化 と歯車誤差あるいは トル ク変動などの 外部的要因 で生 じる起 振力 によっ て,円
周方 向 (ねじり)振
動を生 じる。 この円周方向振動は軸,軸
受および軸受台のた わみあるいは歯す じ方向誤差などにより,半
径方 向および軸方向振動を発生させ る。これ らの振動 は同時に軸を経て軸受台振動を誘起 し,これが歯 車箱側壁に伝え られ歯車箱振動を生 じさせ る。歯 車縮がない ときは上記の歯車の5方向振動による 放射音が歯車箱のぶたおよび側壁を透過 したもの (空気音)の
ほかに,固
体音 として伝達され るた めに生 じた歯車箱振動が空気中に放射されて騒音 となる。5,
実験装置および実験方法 3.1 電動巻上機実験に使用 した電動巻上 機は
,実
験用にとくに試作 したもので,最
大巻上 荷重 10t,揚 程8mで
ぁる。この巻上機の歯車装 置部を図 1に示す。図か らわかるように歯車装置 部は2段の遊星歯車機構か らなっており,モ
ータ によって駆動される入力軸の回転数は歯車の 4個 Input Train l A : MotOr pinion E :B : Compound Planet gear F : C : Compound planet gear C:
D : CompOund internal gear Fig。 l Schematic representation
electric hOist
Train 2 Main pinion Main planet gear Main internal gear
of gear train in
Table l Dimensions oF gears in electric hoist
Gear train 2
1 F I G
Gear sign Module Pressure angle Number of teeth z Addendum modifi― cation coefficient XFace width min b
MateriaI Heat treatinent 4。233 12 1
0,81
70 0.084逢設
°
d°£
h Sh gInduction‐hardened zed
Cut with pinion cutte Cear train l Sち
C
Cut withS45C
驚
i計 │Hobbed
所のかみあい (A一
B,C― D,E― F,F―
G)に
よっ て約 1/218に 減速され,
巻胴に伝え られ る。表 1は 歯 車装置の歯車の各諸元を示す。なお,モ
ータの回転数は 1720rpmで ぁる。5.2歯
車装置のかみあい周波数一般に歯車装置 か ら生ず る騒音 の周波数分析結果には
,か
みあい周波数 のほかにその整数倍や分数倍の周波数成分が現われ る。 この中でもとくに整数倍のものが支配的である場合が多 い。このため,まず歯車装置のかみあい周波数をもとめ てみ よう。図 1の 2段遊星歯車機構の 4個 所のかみあい に対するかみあい周波数はそれぞれ次式によってもとめ ら矛tる。 鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第7巻
〔HZ〕・…… (1) 〔HZ〕・…… (2) 〔HZ〕・…… (3) 上方法 と歯車騒音 の関係を調査 した。マイクロホ ンは図 2に示すように電動巻上機の歯車装置の斜め下方2200m mの位置に固定 し,この位置を騒音測定位置 と定め,い
Fig。 2 Mcasuring position for gear nOise in
electric hoist ずれ の実験条件 に対 して も騒音 は この位置で測定 した。 図3は本実験 で使用 した測定機器 お よび騒音測定 システ 、 日 I ト レ / E E l Ч Condenser ,Hcrophone BttK4131 FrequenCy anilyzer BSIK2107 High speed level recorder Be/K2305
Fig.3 Measurmg:syStem for gear aoise in
electric hoist ムの ブロック線 図を示 す。 一般に騒音測定においては対象の音のあるときと
,な
い ときの差が10dB以上であれば測定値は暗騒音 に影響 されていない とみなされてい る。本実験では,暗
騒音 は 63∼65dBで
ぁ り,このため73dB以
上の騒音 に着 目す r4】=
≒
群
/cD=―
々 静二為
F=み
G=―
≒器一
ここで,nA,nE,n4は
,そ
れぞれ入力軸,
歯車E,出
力軸の回転 数 〔rpm〕,ZA,ZD,ZGは
,
歯 車A,D,Gの
歯数を示す。表 2は 式(1】 修),13)によってTable 2 Mesh frequenCies of mating gears
計算 された歯車装置のかみあい周波数をその 6倍 のもの まで示 したものである。かみあい周波数が最 も高いfAB の 6倍 までの周波数は
,ISOの
聴感曲線IO)において人 間の聴覚が敏感であるとされ る200∼6000Hzの範囲内 にある。3.5
実験方法 騒音の測定にはBruel&Kttr社
製 のコンデンサマイクロホン(B&K4131),周
波数分析器 (B&K210り ぉょびレベ″記録器 (B&K230の を用い て,騒
音の大きさの測定を行なうとともに,そ
れ らの周 波数分析を行なって,電
動巻上機における歯車の歯面仕 Electric hoist ヽFre叩ency analyzer
れば暗騒音の影響は無視できるもの と考え られ る。また
,騒
音 の測定は 無響室で行 なってはいないが,電
動 巻上機は広い室内に取付け られてい るため周囲の壁などによる反射音の 影響はないものと考えてよかろう。 電動巻上機の騒音測定および周波 数分析は各歯面仕上 げの歯車に対 し て,巻
上荷重W=Okgぉ
ょび6250kgで
巻上 げ時(uP)と
巻下 げ時(dOWn)の
場 合 につ いて行 なっ た。なお,巻
上速度は10mm/Sで
ある。 W=O kg(down)一 m O 一o > o ︻ Φ 角 戸 ∽ ∽ o H ︹ ↓ E β O ∽ 20 63 200 630 2000 6300 20000 Frequency HzFig.5 Spectra Of moise for hobbed gears
4.
実験結果および考察 4.1 運転条件と騒音の関係図 4は 電動巻上機の 歯車騒音の全音圧 レベル (Aス ヶ―ルでの値
)を
各歯面 ルと比べて大きい差がないため,電
動巻上機の騒音を考 える場合負荷巻上げ時の騒音を問題とすればよいことが わかる。 個 “ ド。 済 o 事 。 ∽ “。 目 H ゛ O り 図 5は ホブ切 りされた歯車の各運転条件に対す る騒音 スペク トルを示す。無負荷時においては周波数全 域 にわたって顕者な ピークは現われてお らずほぼ 一定の音圧 レベルを示 している。これに対 して, 負荷時における騒音のスペク トルは周波数200∼ 6000Hzの間で とくに高 い音圧 レベルの ピー クを 示 してお り,この周波数域はISOの
聴感曲線に おいて人間の聴覚が敏感 とされている周波数域に 相当す るため,電
動巻上機の騒音低減をはか るた めにはこれ らの ピー クの発生する原因を究明 し, それ らの騒音 レベルを下 げることが必要である。4.2
かみあい周波数 と騒音の関係電動巻 上機の歯車騒音に対 しては
,図
5の 負荷時の騒音 スペク トルに示され るように歯車のかみあい周波 数成分 とその整数倍 の成分が支配的である。 とくFig.4 Relation behveen gear姐oise level and ' rnethods of finishhg teeth
仕上方法に対 して示 したものである。図中の左端の棒 グ ラフ群はホブ切 り歯車に対す る全音圧 レベルを示 したも ので
,無
負荷時においては巻上げ,巻
下げの場合で音圧 レベルにわずかの差があるが,い
ずれの場合も負荷時の 騒音に比べ て極めて小 さ く無負荷時における電動巻上機 の騒音は問題にな らない と考えられ る。負荷時において は騒音 レベルは高 く,し
かも巻上げ,巻
下げの場合でか なりの差があるが,巻
下 げの場合は無負荷時の騒音 レベ に周波数200∼6000Hzの間で高い音圧 レベルを 示す ピークの周波数はそれぞれ,表
2に 示 した最 も高いかみあい周波数 £▲Eと,
その整数倍 には ぼ一致するため,これ らの ピー クは歯車A,Bの
かみあ いによって生 じるものと考え られ る。このことか ら電動 巻上 機の歯車騒音の低減対策の一つ として,最
も高いか み あい周波数を示す歯車対の各歯面に対 して研削などの 歯面仕上 げを施す ことが有効であると考え られ る。4.5
歯面の仕上方法と騒音の関係図6仰),“), (9はそれぞれ歯車装置内で最 も高いかみあい周波数を示 す歯車
A,Bの
歯面 のうちAの みを研削 (Bは ホブ切 り O kg(up)W=6250kg(up)一
― 瓦 戸 一 一―一 □ W=O kg(up) 区潤 o kg(dOwn) 匡∃ 6250(g(モユp) 露□ 6250kg(down) Ccar A:GrOundりまま
),Bの
みを研削(Aは
ホブ 切 りのまま), A,Bと
もに研削し た場合の届音スペク トルを各運転条 件に対 して示 したものである。│これ らの各場合に対する全音圧 レベル値 は図 4に まとめて示 した。図 4よ り 歯面を研削することによって騒音を かな り低減させ ることがわか る。B
のみを研削した場合,他
の場合 と逆 に,無
負荷時における巻上 げの際の 騒音 レベルのほ うが巻下 げの場合 よ りも大 きくなってお り,またいずれ の場合もホブ切 りの場合よりも騒音 レベルは大きくなっているが, これ は歯車の組立誤差などの影響による ものと考えている。歯車A,Bと
もに研削することによって騒音 レベ ルは著 しく減少するが,歯
車A(モ
ー歩ピニオン)の
みを研削す ること によっても騒音はかな り減少するこ とがわかる。これに対 し歯車Bの
み研削 した場合には騒音はほ とんど 減少 していない。図 7は 負荷巻上 げ 時における,研
削歯車を用いた場合 の騒音 レベルの,ホ
ブ切 り歯車の騒 音 レベルか らの減少量を示す。 図 8は 負荷巻上げ時の騒音スペ ク トルを各歯面仕上条件に対 して示 し たものである。また,図
9は 図 8の 騒音スペク トルにおいて大 きい値を 示すf ABおよびその整数倍 の周波数 成分に対する音圧 レベルを示 してい る。図 より電動巻上機の騒音は,歯
面仕上条件に無関係にいずれの場合 も 2fABの 周波数成分が最 も高い音 圧 レベルを示 し,この成分の音圧 レ ベルは図 4で示された全音圧 レベル の値 とほぼ等 しくなっている。ホブ 切 り歯車の場合 と比べて研削歯車を 用いた場合は,fABお
よびその整数 倍 の各成分においてともに音圧 レベ ルは減少 している。図10は各歯面仕 鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第7巻
20 63 200 630 2000 6300 20000Frequency Hz
(a)Gear A:Ground
伍 “ > 電 ∽ 20 63 200 630 2000 6300Frequency Hz
(b)Gear B:Ground
― -1-一 一 中 20 63 200 630 2000 6300 20000 Frequency Hz(c)Gears A and B:Ground
Fig, 6 Spectra of noise for ground gears
80 70 60 田 句 ︻ o > o ︹ o ︻ p ∽ の O ﹃ ︹ ↓ F p o ∽ 70 80 70 60 80 70 60 90 80 70 m 硝 一ω > ω ︻ o ﹁ 戸 ∽ ∽ O 角 鳥 硝 営 β O の
w=o kg(up)―
― W=O kg(dOwn)― ― ― ― 一 ―一 一 ― ― 一 ― 一 ―W=O kg(up)一
W=O kg(dOwn)一
上条件に対する音圧 レベルの
,ホ
ブ切 り歯車の音圧 レベ ルか らの減少量を各周波数成分に対 して示 したものである。各歯面仕上条件に対 してともに2£
AB成
分 の音圧 レベルの減少 量は 他の 成分 と比 較 して大きい ことがわか る。
Decrement of gear poise level dB Fig.7 Decrement of gear nOise level by
grinding teeth 90 80 70 90 80 70 80 70 90 80 70 個 蒋 “ o > o ︻ 。 H 戸 ∽ ∽ o 営 癖 ︺ E 戸 0 ∽ Gear A:Ground ―――― ― ――――――――― ――――一――一― Gear B,Ground ――一 ――一―一――― ――――一――― ―――――――― Gёar A,B:Ground――一 ――――――…… ― ― 20 63 200 630 2000 6300 20000 Frequency Hz
Fig.8 Spectra oF noise for various methods of finishing teeth
cW=6250kg,uの
鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
7巻
0 500 1ooo Frequency Fig。 9 Relati04 betWeen sound Pressure
1500 Hz level 困 ヽ 85 80 75 ︻ O > Φ ︻ O H 戸 ∽ ∽ O H ︹ O E β o の 2 0 8 6 4 2 0 困 可 ︻o > o ︻ o H β ∽ り o L 感 碍 営 戸 0 ∽ 哨 0 い 。 O F ︻0 常 0 0 6 一
l fAB 2 fAB 3 fAB 4 fAB 5 fAB 6 fAB
Mesh frequency Hz
Fig。 10 Decrement of sound Pressure level for
various mesh frequencies by grinding
teeth CW=6250と
g,up)
and
mesh frequency
5.
む す び 電動巻上機の歯車騒音に及ぼす歯面仕上法の影 響について検討 した結果,明
らかになった諸点を 要約すればつぎのようになる。 は,
電動巻上機の歯車騒音を考える場合,荷
重 を巻上げる際に 発生 す る騒音を 問題 とすればよ ヤヽ。 12)電動巻上機の歯車騒音に封 しては,か
みあ い周波数成分 とこれ らの整数倍の成分が支配的で あるが,この中でもとくに最 も高いかみあい周波 数成分お よびその整数倍のものが大 きい影響を及 ぼす。 儒〕 歯車の歯面の仕上方法 と歯車騒音 には密接 な関係があ り,歯
面を研削す ることによって騒音 をかな り低減させ ることができる。 とくに最 も高 いかみあい周波数を示す一対の歯車 の歯面を研削 すれば最 も効果的であるが,駆
動歯車 (モータピ ニオン)の
歯面だけを研削することによっても騒 W=6250kg(up) │ o Hobbed gears ●CearA:Ground O CearB:Ground o GearA,B:Ground 2 fAB∧
l fAノ \ 八鞠
B , イク
ア‐
`
く
\
ヽ ´´″″Юト ー中い‐‐r'却
堂
6 fAB C/ て ` ・ヽ
\預 、
Ц ‐‐`¬家 ` ヽ式
E三] CearA:Ground ミミ§ CearB:GrOulld 陛2 CearA,B:GrOund音をかなり低減させることが可能である。
Nr.46(1962),116. o
おわりに,本
研究を行なうにあたってとくたご協力い(0
歌川,機
就学会誌i61-470(昭 33),29α ただいた神内電機製作所な―らびに本学部機械工学科若良151
申村,機
械学会論文集,32238(昭
41j,1001. 二氏に対して深 く感謝の意を表 します。16)中
村,機
械学会論文集,32-238(昭41),1007.
ボ 参 考 文 献i m倉
耳ち笏摩 ほか2名,機
械捨 論麟,譴-268餌
徹
)Nieman■
,c..Mお
Chinenelene4te,B― d,■o96 (81
福間,歯
車の振動・騒音に関する基礎的研究=京
都5),St 43,SPTれger―
Vedag,
大学学位論文,(昭
47),(郷
Nieman4,C,und Unterberger,M.,VD卜
Z, o)会
田,精
機学会中国支部岡山講演会テキス ト,(昭
_
Bd。