年報
2005
特集
1.中国及び北朝鮮の動向と我が国の対応
2.防衛取得調達のあり方を考える
財団法人
ディフェンス・リサーチ・センター
「DRC 年報」は、今年で9回目の発刊となりますが、本年度から和文版と英文版を別本 と し て 刊 行 す る こ と と し ま し た 。 テ ー マ は 、 和 文 版 、 英 文 版 と も に 執 筆 者 の 自 主 的 選 択 に よ り そ れ ぞ れ 別 個 に 選 定 さ れ 、 内 容 は 全 て 個 人 の 意 見 に 基 づ く も の で 本 財 団 と し て の 統 一 見 解 で は な い こ と を お 断 り し て お き ま す 。 平 成 1 7 年 1 0 月 3 1 日 財 団 法 人 デ ィ フ ェ ン ス ・ リ サ ー チ ・ セ ン タ ー
会 長
塩 田 章
特 集 1 中 国 及 び 北 朝 鮮 の 動 向 と 我 が 国 の 対 応
最 近 の 安 全 保 障 情 勢 の 変 化 と そ の 影 響 の 一 考 察・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 ( 財 )DRC 研究専門委員 高 山 雅 司 台 頭 す る 中 国 の 軍 事 力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 ( 財 )DRC 研究委員 安 村 勇 德 中 国 の 台 湾 戦 略 と わ が 国 の 対 応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 ( 財 )DRC 研究委員 五 味 睦 佳 IT の側面から見た中国軍の近代化とわが国の安全保障・・・・・・・・・・・・・・25 ( 財 )DRC 研究委員 小 林 一 雅 北 朝 鮮 の 将 来 シ ナ リ オ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 ( 財 )DRC 研究委員 大 串 康 夫 北 朝 鮮 の 国 家 予 算 と 軍 事 費 の 推 定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 ( 財 )DRC 研究委員 佐 藤 太 一 北 東 ア ジ ア 地 域 に お け る テ ロ リ ズ ム の 脅 威 と 日 本 の 対 応 に つ い て・・・・・・・・ 49 ( 財 )DRC 研究委員 岡 本 智 博特 集 2 防 衛 取 得 調 達 の あ り 方 を 考 え る
こ れ か ら の 日 本 の 防 衛 ― 改 革 の 原 動 力 は 防 衛 実 務 の 現 場 か ら ―・・・・・・・・・・・ 53 ( 財 )DRC 専務理事 上 田 愛 彦 装 備 品 の 取 得 に 係 る 防 衛 政 策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 ( 財 )DRC 研究専門委員 庄 野 凱 夫 公 共 シ ス テ ム 取 得 調 達 で の 発 注 者 側 支 援 部 外 力 に 期 待 さ れ る 資 質・・・・・・・・ 67 ( 財 )DRC 研究委員 稲 垣 連 也( 一 般 論 文 )
米 軍 の ト ラ ン ス フ ォ ー メ ー シ ョ ン が わ が 防 衛 政 策 に 及 ぼ す 影 響・・・・・・・・・ 75 ( 財 )DRC 研究専門委員 青 山 滋 ド ク ト リ ン の 進 展 を 追 っ て・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 ( 財 )DRC研究専門委員 井 川 宏 多 国 籍 軍 と 日 本・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85 ( 財 )DRC 研究専門委員 江 口 博 保 宗 教 と 安 全 保 障・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 91 ( 財 )DRC 研究専門委員 玉 真 哲 雄英 国 の 市 民 緊 急 事 態 法(Civil Contingencies Act 2004)の概要・・・・・・・・ 105 ( 財 )DRC 研究参事 大 島 紘 二 情 勢 緊 迫 時 に お け る 航 空 自 衛 隊 に よ る 武 器 の 使 用 に つ い て・・・・・・・・・・・111 ( 財 )DRC 研究参事 長谷川 孝 一 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー が も た ら す 軍 事 革 命 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・117 ( 財 )DRC 研究参事 藤 本 晶 士 東 郷 精 神 の 根 源 ・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・ 121 ( 財 )DRC 研究委員 菊 田 愼 典 国 家 と 主 権 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・ 129 ( 財 )DRC 研究委員 重 村 勝 弘 日 本 に お け る 民 間 軍 事 会 社 活 用 の 現 状 と 問 題 点 ・・・・・・・・・・・・・・・ 133 ( 財 )DRC 研究委員 菅 谷 敏 彦 鄭 和 艦 隊 の 大 遠 征 ・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・141 ( 財 )DRC 研究委員 古 澤 忠 彦
特集1中国及び北朝鮮の動向と我が国の対応
最近の安全保障情勢の変化とその影響の一考察
( 財 ) D R C 研 究 専 門 委 員 高 山 雅 司は じ め に
地 球 規 模 で は 対 テ ロ 作 戦 が 重 視 さ れ る な か 、日 本 周 辺 で は 過 去 1 年間を振り返ると北朝 鮮 、 中 国 に 関 連 し た 安 全 保 障 に 影 響 を 与 え る 多 く の 事 件 事 象 が 発 生 し て い る 。 こ れ ら は 数 年 以 上 継 続 し 状 況 が 悪 化 し た も の 、好 転 し た も の 、新 た に 発 生 し た も の な ど が 挙 げ ら れ る 。 そ れ ら の 背 景 に あ る 国 家 目 的 や 戦 略 を な る べ く 長 期 的 に 分 析 し て 今 後 の 影 響 な ど に つ い て 直 接 侵 略 の み な ら ず 間 接 侵 略 の 観 点 か ら も 考 察 す る 。1 . 周 辺 の 安 全 保 障 情 勢 の 変 化
( 1 ) 北 朝 鮮 の 核 問 題 : 六 者 会 合 の 共 同 声 明 の 成 立 北 朝 鮮 は 核 兵 器 保 有 を 宣 言 し て い る 。 こ の 北 朝 鮮 の 核 問 題 を 解 決 す る た め に 日 米 韓 中 朝 露 の 第 4 回六者会合は北京にて 2005 年 7 月 26 日から開かれ米朝の意見の対立が 続 き 一 旦 休 会 し 、9 月 13 日に再開し 19 日にやっと合意が得られ共同文書が採択され た 。 そ の 文 書 の 中 で 、 北 朝 鮮 は 、 す べ て の 核 兵 器 及 び 既 存 の 核 計 画 を 放 棄 す る こ と 、 そ し て 、 核 兵 器 不 拡 散 条 約 及 び IAEA 保障措置に早期に復帰することを約束した。同 時 に 、 北 朝 鮮 は 2002 年日朝の平壌宣言を尊重することで拉致問題解決にも含みを持 た せ た 。し か し 、具 体 的 な 要 領 は 今 か ら で あ る 。次 の 六 者 会 合 は 、2005 年 11 月初旬 に 開 催 予 定 で あ る が 、 今 ま で の 北 朝 鮮 の 言 動 か ら 忠 実 に 実 行 す る 可 能 性 は 低 く 、 今 回 の 会 合 で 北 朝 鮮 の 非 核 化 へ の 端 緒 は 得 ら れ た が 、 北 朝 鮮 が 核 計 画 廃 棄 の 約 束 を 守 り 実 行 す る か ど う か の 不 安 は 残 っ て い る 。 ( 2 ) 韓 国 内 の 分 裂 と 反 米 反 日 の 動 き 韓 国 内 で は 親 北 の 風 潮 が 高 ま り 、 そ の 半 面 、 反 日 と 反 米 運 動 が 盛 り 上 が り 、 韓 国 内 で は 世 論 が 大 き く 二 分 さ れ 、盧 武 鉉 大 統 領 の 支 持 率 は 20%に落ち込んだり戻したり激 し く 上 下 し 韓 国 政 治 を 不 安 定 に し て い る 。 韓 国 の 左 傾 化 、 親 北 風 潮 は 、 北 か ら 多 数 の 工 作 員 を 潜 入 さ せ た 間 接 侵 略 の 結 果 で あ る と も 考 え ら れ る 。 2004 年は韓流と呼ばれるブームがあった。日韓関係はワールドカップ日韓共催以降 こ の ブ ー ム に 至 る ま で 良 好 な 関 係 に あ る と 思 わ れ た 。2005 年 3 月、竹島を島根県と し た 条 例 を 島 根 県 議 会 が 通 し た こ と で 韓 国 で は 反 日 運 動 が 激 化 し 日 本 の 国 旗 を 焼 く な ど の 過 激 な 行 動 が 目 立 ち 、 加 え て 、 盧 大 統 領 自 身 が 火 に 油 を 注 ぐ 過 去 の 謝 罪 要 求 、 教 科 書 問 題 、 靖 国 問 題 な ど 日 本 を 非 難 す る 発 言 が あ り 日 韓 関 係 は 冷 却 し て い る 。 ( 3 ) 明 確 に な っ た 中 国 の 意 図 ― 中 国 の 軍 事 力 増 強 と 覇 権 主 義中 国 は 驚 異 的 な 経 済 発 展 を 続 け る 中 で 貧 富 の 格 差 、 地 域 の 格 差 が 増 大 し 、 国 内 に 不 安 定 要 因 を 抱 え る 。 日 本 と 中 国 と の 経 済 関 係 は 深 ま る 一 方 で 日 本 の 経 済 回 復 も 中 国 の 発 展 に 支 え ら れ て い る と も い わ れ る 。 そ の 中 で 日 中 間 の 政 治 軍 事 関 係 は 多 く の 対 立 要 因 が 顕 在 化 し 冷 却 し て い る 。 ○ 軍 事 力 増 強 の 継 続 と 核 兵 器 の 増 強 中 国 は 17年連続で毎年 10%以上の軍事費の増強を継続している。特にロシアから Su-27、Su-30 戦闘機、キロ級潜水艦、ソブレメンヌイ級駆逐艦、S-300 防空システム な ど の 能 力 の 高 い 兵 器 を 購 入 し 、 海 空 軍 の 近 代 化 に 努 力 し て い る 。 他 の 核 兵 器 国 が 核 兵 器 の 数 を 削 減 又 は 現 状 維 持 の 中 で 核 兵 器 を 増 強 し て い る の は 中 国 だ け で あ る 。NPT が 1970 年に成立して以降、5 年ごとに運用検討会議が開かれ 見 直 さ れ て い る 。 も と も と NPT は不平等条約で米英露仏中の核兵器国が有利である が 第 6 条に核兵器国の義務として核軍縮への努力が規定され 2000 年の運用検討会議 で も こ の こ と が 強 調 さ れ た が 、 中 国 は 非 核 兵 器 国 の 期 待 を 裏 切 り 核 兵 器 の 強 化 を 継 続 し て い る 。今 年 は 、米 国 に 届 く ICBM 及び SLBM(JL-2)の実験成功が報じられている。 ○ 増 幅 さ れ る 中 国 の 反 日 活 動 中 国 の 反 日 活 動 は こ の 数 年 激 し さ を 増 し て い る 。 鳥 居 民 は そ の 著 書 「 反 日 で 生 き の び る 中 国( 草 思 社 )」で 反 日 の 淵 源 を 明 ら か に し て い る 。中 国 共 産 党 は 1994 年 8 月 に 「 愛 国 主 義 教 育 実 施 綱 要 」を 採 用 し た 。そ の 内 容 は愛 国 教 育 と 称 し た 反 日 教 育 で あ る 。 若 者 の 政 治 へ の 不 満 を 反 日 憎 悪 に す り 替 え よ う と す る も の で 若 者 へ の 「 愛 国 教 育 」 と 称 す る 反 日 教 育 、「 愛 国 映 画 百 編 」 と 称 す る 抗 日 戦 映 画 、「 愛 国 主 義 教 育 基 地 」 と し て 数 多 く の 抗 日 戦 争 記 念 館 を 建 設 し た 。過 去 10 年以上、反日教育を徹底して行った結果、 一 般 の 中 国 の 青 年 層 に 反 日 の 憎 悪 が イ ン プ ッ ト さ れ た と 考 え ら れ る 。 中 国 政 府 が 支 持 ・ 支 援 し た 学 生 等 の 反 日 デ モ は 、 ア ジ ア カ ッ プ サ ッ カ ー に 続 き 日 本 の 国 連 安 保 常 任 理 事 国 入 り に 反 対 し 、 大 使 館 へ の 破 壊 行 動 を 行 っ た 。 こ れ に 対 す る 中 国 政 府 の 謝 罪 は な く 国 際 法 違 反 と し て 国 際 的 に 非 難 の 対 象 と な っ た 。 過 去 33 年間の日中友好の中で、中国は何を目標にしていたのかが、やっと日本人 一 般 に 理 解 さ れ て き た 。そ の 歪 な 関 係 を 作 っ た 日 本 の 政 治 家 は 力 を 失 い つ つ あ る 一 方 、 経 済 界 は 中 国 と 深 い 関 係 に あ る 。 そ の 関 係 を 梃 子 に し て 政 治 へ 利 用 す る 中 国 の 技 は 見 事 で あ る 。 日 本 の 政 治 家 の み な ら ず 財 界 の 一 部 も 練 達 の 中 国 政 治 家 の 手 玉 に 取 ら れ て き た と い え る 。 し か し 、 こ の 反 日 行 動 は 日 本 人 一 般 に 中 国 と 日 本 の 違 い と 中 国 の 本 性 を 知 ら せ る こ と に な っ た 。 ま た 、 国 際 的 な 論 調 は か つ て の 日 本 バ ッ シ ン グ か ら 中 国 批 判 に 変 わ り つ つ あ る 。 そ の 影 響 か 、 最 近 の 報 道 で は 北 京 の 抗 日 戦 争 記 念 館 で は 改 装 が 行 わ れ 、 残 虐 行 為 を 行 う 日 本 兵 士 の ど ぎ つ い 蝋 人 形 な ど は 撤 去 さ れ た と の 報 道 も あ る の で 、 中 国 側 が 反 日 政 策 を 抑 制 す る 方 向 に 転 換 し つ つ あ る の か も し れ な い 。 ○ 中 国 の 石 油 ガ ス 開 発 東 シ ナ 海 の 日 中 の 中 間 線 付 近 で の 中 国 の 石 油 ガ ス 資 源 の 開 発 は 進 捗 し 、 生 産 段 階 に 入 っ た と 見 ら れ て い る 。 東 シ ナ 海 の 中 国 海 洋 開 発 地 域 周 辺 を ソ ブ レ メ ン ヌ イ 級 ミ サ イ ル 駆 逐 艦 な ど の 中 国 艦 艇 が 2005 年 9 月に行動し存在を示した。日本政府は 2005 年 9 月 、 中 間 線 付 近 の 日 本 側 鉱 区 の 試 掘 を 帝 国 石 油 等 に 許 可 し た 。 ま た 日 本 は 中 国 と の 共 同 開 発 に つ い て 申 し い れ を 行 っ て い る 。
○ 中 国 艦 艇 に よ る 不 法 行 動 日 本 の 排 他 的 経 済 水 域 (EEZ)内を意図的に行動する中国艦艇による不法な海洋調 査 は 、 日 本 の 抗 議 に か か わ ら ず 継 続 し て い る 。 2004 年 11 月、中国の原子力潜水艦は先島諸島において領海侵犯を行った。海上に お け る 警 備 行 動 が 発 令 さ れ 、 海 上 自 衛 隊 の 艦 艇 、 航 空 機 は こ の 潜 水 艦 を 探 知 し 追 尾 を 継 続 実 施 し た 。 ○ 中 露 共 同 訓 練 ― ― 中 露 軍 事 協 力 の 緊 密 化 中 露 両 国 の 初 め て の 大 規 模 合 同 軍 事 演 習「 平 和 の 使 命 2005」は 2005 年 8 月約 1 週 間 行 わ れ た 。 演 習 は 3 段階に分かれ第一段階は図上演習(ウラジオストック)、第二 段 階 で は 兵 力 移 動 な ど が 中 心 で 最 終 の 第 三 段 階 は 山 東 半 島 で の 実 動 で あ っ た 。 参 加 人 員 は ロ シ ア 1,800 人、中国約 8,000 人といわれている。シナリオは山東半島を台湾に 見 立 て て 、 ミ サ イ ル 駆 逐 艦 と 戦 闘 機 に よ る 洋 上 の 阻 止 、 空 軍 、 海 兵 隊 、 降 下 部 隊 に よ る 着 上 陸 作 戦 、 ロ シ ア 戦 略 爆 撃 機 と 中 国 の 戦 闘 機 に よ る 攻 勢 作 戦 で あ っ た と い わ れ て い る 。ロ シ ア 軍 の 参 加 兵 力 は ウ ダ ロ イ 級 駆 逐 艦 、大 型 揚 陸 艦 等 、海 軍 陸 戦 隊 1 個 連 隊 、 空 挺 降 下 師 団 の 1 個 連 隊 、 参 加 機 種 は Tu-95MS(Bear-H: 巡 航 ミ サ イ ル 搭 載 型 )、 Tu-22M バックファイア及び Su- 27 戦闘機、Su-24 戦闘爆撃機、A-50 型 AWACS、IL-76
型 給 油 機 、空 挺 師 団 の 1 個連隊を輸送する特殊装備の IL-76 型軍用輸送機と報じられ た 。 中 露 の 軍 事 協 力 が 緊 密 化 し た こ と は ま ぎ れ も な い 事 実 で あ る 。 ○ 中 国 の こ の 半 世 紀 を 振 り 返 り 長 期 戦 略 目 標 を 考 察 す る 中 国 は 領 土 問 題 で は 武 力 を 使 用 す る 国 で あ る 。 中 華 人 民 共 和 国 が 成 立 し て か ら の 武 力 行 使 は 次 の と お り で あ る 。 1950 年 10 月 中国は朝鮮戦争に参加した。 1959 年 3 月 中国はチベットを武力で弾圧併合し、ダライラマは亡命した。 1959 年 8 月 中印国境小競り合いが起こった。 1954 年 9 月から中国は金門馬祖を攻撃した。 1962 年 10 月 中印国境紛争が起こりインド軍は敗退した。 1969 年 3 月 中国とソ連とはアムール川の国境をめぐり武力衝突が起こった。 1979 年 2 月 中国はカンボジア問題で懲罰と称してベトナムへ侵攻し逆に撃退さ れ た 。 カ ン ボ ジ ア で は 大 虐 殺 の ポ ル ポ ト を 中 国 は 支 援 し た 。 1974 年 1 月 中国は西沙群島を南ベトナムから武力で奪取した。 1988 年 3 月 中国は南沙群島周辺海域でベトナムと武力衝突した。 1995 年 2 月 中国は南沙群島のミスチーフ礁をフィリピンから威嚇して奪取した。 1996 年 3 月 中国は台湾周辺に弾道ミサイルを発射し台湾を恫喝した。 こ の 60 年間日本による武力行使はまったくない。その日本を中国は軍国主義の国 と し て 今 も 非 難 す る 。冷 戦 中 、中 国 は 東 南 ア ジ ア 各 国 で の 共 産 ゲ リ ラ 活 動 を 支 援 し た 。 ア フ リ カ 諸 国 へ の 武 器 輸 出 を 行 う と 同 時 に 、 裏 取 引 を す る な ど し て 共 産 革 命 の 輸 出 を 画 策 し た 。 ○ 中 国 の 目 標 は 日 本 の 弱 体 ( 従 属 化 ) 過 去 の 言 動 か ら 、 中 国 の 当 面 の 目 標 は 明 ら か に 中 国 を 中 心 と し た 地 域 覇 権 の 確 立 で あ り 、 長 期 目 標 は 、 米 国 に 対 抗 し 世 界 の 覇 権 国 家 と な る こ と の よ う に 思 わ れ る 。 周 辺
国 家 を 経 済 的 ・ 政 治 的 ・ 軍 事 的 に 圧 倒 し 従 属 さ せ る た め に 国 力 を 増 勢 す る と 同 時 に 中 国 の 覇 権 を 阻 害 す る 要 因 は 排 除 す る 。当 面 、そ の 第 1 歩は、米国のアジアへの影響力 を 弱 め る こ と で あ る 。 米 国 の プ レ ゼ ン ス を 終 わ ら せ 、 そ れ を 支 持 す る 日 本 、 韓 国 、 台 湾 な ど の 弱 体 化 を 図 る と 考 え ら れ る 。中 国 が 将 来 海 軍 力 を 増 強 し 第 7 艦隊を西太平洋 か ら 追 い 出 し 、 経 済 的 に も 、 そ し て 政 治 的 に も 戦 わ ず し て 日 本 を 制 圧 し て し ま う こ と を 狙 っ て こ よ う 。 そ の 場 合 、 台 湾 も 厳 し い 状 況 に な り 、 台 湾 が 危 う け れ ば 同 時 に 日 本 も 危 う く な る 。 特 に 中 国 は 、 台 湾 に 対 し て は 武 力 行 使 を 公 言 し 2005 年 3 月反国家分 裂 法 を 制 定 し 、 野 党 で あ る 国 民 党 の 連 戦 党 首 や 台 湾 経 済 界 の 大 物 許 文 虎 を 北 京 に 招 き 懐 柔 に 成 功 し て い る 。 中 国 へ 工 場 等 を 進 出 さ せ た 経 済 人 は そ の 工 場 及 び 従 業 員 が 人 質 に さ れ 相 手 の 言 い な り な ら ざ る を 得 な く な る 。 孫 子 の 兵 法 に あ る よ う に 、 戦 わ ず し て 勝 つ た め に あ ら ゆ る 手 段 を 用 い る で あ ろ う 。 ( 4 ) 日 米 関 係 ブ ッ シ ュ 政 権 は 対 テ ロ 作 戦 と し て 米 軍 の イ ラ ク 及 び ア フ ガ ニ ス タ ン に お け る 駐 留 し 作 戦 を 継 続 し て い る が 、 ま だ 安 定 状 態 に は 至 っ て い な い 。 同 時 に ハ リ ケ ー ン に よ る ル イ ジ ア ナ 大 災 害 の 国 内 問 題 を 抱 え 支 持 率 は 低 下 の 傾 向 に あ る 。 ブ ッ シ ュ 大 統 領 は 、 小 泉 政 権 の 陸 上 自 衛 隊 の イ ラ ク 派 遣 、 イ ン ド 洋 へ の 艦 艇 派 遣 、 ク エ ー ト へ の 輸 送 機 派 遣 等 の 迅 速 か つ 積 極 的 な 国 際 協 力 を 高 く 評 価 し 日 米 は か つ て な い 信 頼 関 係 に あ る 。 米 国 は2004 年 10 月に「北朝鮮人権法」を制定、日本人と韓国人の拉致問題の完全 な 情 報 公 開 と 拉 致 被 害 者 の 帰 国 を 北 朝 鮮 に 要 求 し 日 本 を 支 援 し て い る 。 ( 5 ) 日 本 国 内 の 変 化 小 泉 首 相 に よ る 郵 政 民 営 化 関 連 の 衆 院 解 散 総 選 挙 の 結 果 は 、 日 本 を 大 き く 変 え よ う と し て い る 。 過 去 4 年間の小泉政権の成果が国民に評価・支持されたといえる。 別 な 観 点 か ら 、 中 国 と 韓 国 の 反 日 が 日 本 人 の 目 を 覚 ま さ せ 正 常 に 戻 し た と も い え る 。 中 国 ・ 北 朝 鮮 寄 り で 相 手 の 術 中 に 嵌 っ た 日 本 の 政 治 家 、 官 僚 、 経 営 者 等 が 明 ら か に な り つ つ あ る 。 国 民 の 目 は 厳 し く ODA など中国、北朝鮮との従来の関係の見直しは始 ま っ て い る 。 日 本 経 済 は や っ と 上 向 き と な り 、 景 気 は 回 復 し つ つ あ る と い え る 一 方 、 自 衛 隊 の 隊 員 募 集 状 況 は 少 子 化 傾 向 も 加 わ り 、 厳 し く な り つ つ あ る 。
2 . 今 後 の 変 化 と 影 響
自 衛 隊 法 に は 自 衛 隊 の 任 務 と し て 「 直 接 侵 略 及 び 間 接 侵 略 に 対 し わ が 国 を 防 衛 す る こ と を 主 た る 任 務 と す る 」 と 定 め ら れ て い る 。 従 来 、 自 衛 隊 は 直 接 侵 略 に 対 処 す る 兵 力 整 備 を 進 め て き た 。間 接 侵 略 対 処 は 、直 接 侵 略 に 比 べ る と 必 ず し も 重 視 さ れ て こ な か っ た 。 間 接 侵 略 で は ハ ー ド ウ エ ア の 戦 い で は な く 情 報 戦 、 心 理 戦 、 電 子 戦 、 宣 伝 戦 の よ う に ソ フ ト ウ ェ ア の 戦 い が 主 で あ る 。 間 接 侵 略 に は 平 時 有 事 の 区 別 は な い 。 中 国 か ら の サ イ バ ー 攻 撃 が 日 本 政 府 機 関 に 対 し て 行 わ れ た こ と も そ の 1 例 で 、 そ の 他 に も 間 接 侵 略 は 行 わ れ つ つ あ る と 考 え る べ き で あ ろ う 。 間 接 侵 略 対 処 は ネ ッ ト ワ ー ク の 戦 い を 含 め 今 後 の 研 究 課 題 で あ る 。 (1)北朝鮮への対応―ミサイル防衛体制の整備と国際的レジームの構築 北 朝 鮮 の 核 搭 載 の ノ ド ン や 中 国 の 日 本 指 向 と い わ れ る 核 ミ サ イ ル の 脅 威 に 対 抗 す る に は 画 期 的 な ミ サ イ ル 防 衛 シ ス テ ム の 配 備 が 急 が れ る 。 既 に そ の 能 力 を 持 つ 米 イ ージ ス 駆 逐 艦 は 最 優 先 で 横 須 賀 に 配 備 さ れ て い る 。日 本 海 で は LR&T 能力を持つイージ ス 艦 の 哨 戒 は 始 ま っ て い る 。 そ し て 迎 撃 能 力 を 持 つ 艦 も 存 在 す る と 推 定 さ れ る 。 そ の 証 拠 に 2004 年 11 月には SM3 の実験に成功したイージス巡洋艦レイクエリーの新潟 入 港 が 報 じ ら れ た 。 米 軍 は 既 に 日 本 周 辺 で ミ サ イ ル 防 衛 体 制 を 整 備 し 逐 次 そ の 能 力 を 高 め つ つ あ る と い え よ う 。 自 衛 隊 も ミ サ イ ル 防 衛 能 力 の 整 備 は 予 算 化 し 計 画 よ り も 早 く 2006 年には配備する 方 向 で あ る 。 真 の 日 米 共 同 作 戦 は 統 合 作 戦 で あ る ミ サ イ ル 防 衛 に 始 ま る 。 ミ サ イ ル 防 衛 シ ス テ ム の 完 成 は 北 朝 鮮 に 圧 力 を 与 え る こ と は 間 違 い な い し 、こ の こ と が 9 月に行 わ れ た 六 者 会 同 で 北 朝 鮮 の 譲 歩 を 引 き 出 し 、 核 兵 器 開 発 放 棄 を 決 断 さ せ た 可 能 性 も あ る 。 今 ま で 多 く の 条 約 や 宣 言 を 無 視 し て き た 北 朝 鮮 の こ と で あ り 、 完 全 に 廃 棄 す る ま で は 予 断 は 許 さ れ な い 。 北 朝 鮮 以 外 の 潜 在 的 脅 威 の 弾 道 ミ サ イ ル も 存 在 す る 。 核 兵 器 搭 載 弾 道 ミ サ イ ル の 脅 威 を 無 能 化 す る た め に 、 ミ サ イ ル 防 衛 シ ス テ ム の 整 備 と 配 備 は 早 け れ ば 早 い ほ ど よ い 。 仮 に 、 日 本 に ミ サ イ ル 防 衛 シ ス テ ム が 完 備 し た 場 合 は 、 非 核 宣 言 と 絡 め て 、 政 治 段 階 で 、 い か な る 国 の 核 弾 道 ミ サ イ ル で あ ろ う と も 日 本 向 け に 発 射 す る こ と 並 び に 日 本 の 上 空 通 過 は 許 さ な い と し 、 全 力 を あ げ て こ れ ら を 迎 撃 す る こ と を 国 会 で 決 議 宣 言 す る べ き で あ る 。 そ し て NPT, MTCR,PSI などと同様に無差別に破壊する核弾頭弾道ミ サ イ ル は 領 空 で あ ろ う と 公 海 上 で あ ろ う と そ れ を 誰 が 迎 撃 し て も 許 さ れ る と す る 国 際 的 な 協 力 レ ジ ー ム を 構 築 す る こ と も 一 案 で あ ろ う 。 ( 2 ) 韓 国 と の 関 係 改 善 は 重 要 韓 国 と 中 国 の 反 日 は 同 じ 反 日 で も 異 質 の 面 が あ る 。 韓 国 に は 中 国 を 宗 主 国 と み な し 日 本 を 弟 と し て 見 下 す 考 え が 潜 在 す る と い わ れ て い る 。 韓 国 の 反 日 の 淵 源 は 李 承 晩 時 代 の 徹 底 し た 嫌 日 教 育 に あ る と 考 え ら れ る 。 ソ ウ ル の 南 に あ る 独 立 記 念 館 は 日 本 統 治 時 代 の 悪 い 面 を ど ぎ つ く リ ア ル に 表 現 し て 日 本 人 に は 見 辛 い し 居 辛 い 。 初 代 日 本 首 相 で あ っ た 伊 藤 博 文 統 監 を 暗 殺 し た 安 重 根 は 英 雄 と し て 際 立 っ て 顕 彰 さ れ て い る の に 驚 く 。 日 本 人 に と っ て は 暗 殺 犯 人 で あ り こ の こ と を 日 韓 が 共 有 す る こ と は 無 理 で あ る 。 竹 島 問 題 も 同 様 で あ る 。 違 い は 違 い と し て お 互 い 認 め 合 い 、 も っ と 沢 山 の 共 通 の 目 的 と 利 益 に 向 か っ て 協 力 す る こ と が で き る は ず で あ る 。多 く の 問 題 を は ら ん だ ASEAN 諸 国 の 間 に は 30 年以上紛争がなく遂には、かつての潜在的敵国をも仲間にいれて 10 カ国に発展し ARF、ASEAN+3 などで政治力を発揮している。その秘訣のひと つ に ASEAN Wayと 呼 ば れ る や り 方 が あ る 。そ れ は 相 互 の 内 政 不 干 渉 を 固 く 守 る こ と で あ る と い う 。 将 来 の 日 韓 を 改 善 す る 上 で 参 考 に な る や り 方 で あ る 。 ( 3 ) 中 国 と の 関 係 改 善 は 可 能 か ○ 中 国 へ の ODA 終結と内政不干渉 間 接 侵 略 と い う 言 葉 は あ ま り 聞 か れ な く な っ た 今 こ そ 間 接 侵 略 に 十 分 に 留 意 す る 必 要 が あ る 。 軍 事 的 手 段 だ け で な く 外 交 、 経 済 、 マ ス コ ミ を 利 用 し て 戦 わ ず し て 目 的 を 達 成 す る 孫 子 流 の 戦 略 で あ る 。 非 合 法 手 段 を も 使 用 し て 相 手 の 弱 点 を 突 い て 弱 み を つ か み 自 在 に 操 る 。 裏 切 れ ば 窮 地 に 落 と し い れ る で あ ろ う 。 こ の 手 段 は 、 独 裁 国 家 で は で き て も 自 由 民 主 主 義 国 家 で は 透 明 性 が 強 調 さ れ 賄 賂 そ の 他 法 律 に 反 す る 行 為 や 謀 略 は 使 い 難 い 。使 っ て 明 ら か に さ れ た 加 担 者 は 失 脚 す る 。ODA など金が動けば、そ
の よ う な こ と は 起 こ り や す い し 、 独 裁 国 家 は 利 用 す る で あ ろ う 。 驚 異 的 経 済 発 展 を 続 け る 中 国 へ の ODA 等の援助は最早必要ないし、打ち切るべきである。教科書問題や 靖 国 参 拝 な ど へ の 内 政 不 干 渉 と 日 本 の 軍 事 大 国 化 、 南 京 事 件 等 の 誇 張 や 誤 り を 正 す こ と が 必 要 で あ る 。 独 裁 国 家 の 要 求 に 迎 合 す る と 相 手 は 弱 点 と 見 て 、 更 に 要 求 を 拡 大 す る の が 歴 史 の 示 す 通 例 で あ る 。 一 方 、 中 国 は 、 大 陸 側 の 周 辺 諸 国 と は 関 係 改 善 に 努 め 成 果 を 挙 げ て い る 。 ロ シ ア と は 国 境 を 画 定 し た 。 中 央 ア ジ ア 諸 国 と は 上 海 協 力 機 構 で 協 力 体 制 を 作 り 上 げ 、 宿 敵 で あ っ た イ ン ド と も 関 係 改 善 に 努 め て い る 。 東 南 ア ジ ア と は 経 済 的 文 化 的 連 携 を 深 め 南 沙 群 島 で は 関 係 国 と の 共 同 開 発 を 進 め て い る 。 日 中 間 は 一 衣 滞 水 、 同 種 同 文 と い い な が ら 政 治 、 経 済 、 社 会 、 文 化 に か な り な 違 い が あ る 。 文 字 は 同 じ で も 言 語 は ま っ た く 違 う 。そ の い ろ い ろ な 違 い を 認 め 合 い 韓 国 の と こ ろ で 述 べ た ASEAN Way を採用しお 互 い に 内 政 不 干 渉 に 徹 す る こ と が 改 善 の 第 1 歩 で あ ろ う 。 ○ 中 国 の 国 際 宣 伝 戦 へ の 対 応 こ こ 十 数 年 、 中 国 は 外 国 に 多 く の 人 材 を 派 遣 し 交 流 を 深 め て い る 。 そ の 目 的 は 外 国 か ら の 知 識 技 術 経 験 を 導 入 し 中 国 ( 軍 ) を 強 化 す る こ と で あ る と い わ れ て い る 。 従 来 か ら 中 国 の 海 外 に お け る 宣 伝 は 定 評 が あ る 。 世 界 に 広 が る 華 人 の ネ ッ ト ワ ー ク に 加 え 最 近 は 多 く の 中 国 人 が 留 学 や 学 術 交 流 で 海 外 に 出 て い る 。 英 語 は 得 意 で 中 国 の 英 語 に よ る 宣 伝 は 日 本 の そ れ に 比 べ る と 桁 違 い に 上 と い わ れ て い る 。 独 裁 国 家 は 自 分 の 国 益 に 合 わ せ た 情 報 操 作 は 勿 論 、 虚 偽 、 誇 大 を 含 め 国 内 の マ ス コ ミ や 論 壇 を コ ン ト ロ ー ル で き る 。 一 方 、 自 由 民 主 義 国 家 は 独 裁 国 家 に 同 調 す る 一 部 の 自 国 民 と の 政 治 闘 争 も あ り 、 こ の よ う な 情 報 宣 伝 戦 で は 独 裁 国 家 の 方 が 有 利 で あ る 。 ニ ュ ー ヨ ー ク タ イ ム ズ な ど は 小 泉 政 権 の 圧 勝 を 中 国 や 北 朝 鮮 の 独 裁 と 同 一 に み な す 論 調 を 掲 げ て い る が 、 こ れ は 大 新 聞 の 無 知 に 乗 じ 中 国 系 米 国 人 な ど を 利 用 し た 反 日 宣 伝 の 一 環 と い わ れ て い る 。 南 京 事 件 で の 残 酷 な 日 本 人 の 誇 大 宣 伝 も 同 じ で あ り 、 ま こ と に 巧 妙 で あ る 。 日 本 国 内 で こ れ に 同 調 す る グ ル ー プ は 厄 介 な 存 在 で あ る 。 日 本 は 今 後 、 国 際 語 で あ る 英 語 を 自 由 に 駆 使 し て 日 本 の 意 見 や 主 張 を 海 外 に 発 信 す る こ と が 必 要 で あ る 。 経 済 援 助 は 世 界 一 で も そ の 成 果 と し て 、 国 連 安 全 保 障 常 任 理 事 国 へ 立 候 補 し た と き の 支 持 は 得 ら れ ず 期 待 外 れ で あ っ た 。 ( 4 ) 日 米 同 盟 を ど の よ う に 強 化 す る か 日 本 単 独 で は 日 本 の 防 衛 は 無 理 で あ る 。 そ れ は 中 国 、 ロ シ ア の よ う な 核 兵 器 国 、 そ し て 北 朝 鮮 の よ う な 核 兵 器 保 有 疑 惑 国 が 存 在 す る 中 で は 日 米 安 保 に 基 づ く 核 の 傘 は 必 要 不 可 欠 で あ る 。ま た 米 国 と は 自 由 民 主 主 義 体 制 の 国 と し て 多 く の 価 値 観 を 共 有 し て い る 。 安 全 保 障 に 関 連 し 、 日 本 と 韓 国 と は 直 接 の 同 盟 関 係 は な い が 米 韓 同 盟 が あ る が 故 に 米 国 を 通 じ て 準 同 盟 国 の 関 係 に あ る と 考 え ら れ る 。 台 湾 関 係 法 に 基 づ き 米 国 は 台 湾 を 支 援 す る 準 同 盟 関 係 に あ る 。 日 本 は 米 国 を 通 じ て 台 湾 と は 間 接 的 な 同 盟 関 係 に あ る と い え よ う 。 米 国 は こ の 地 域 の 安 全 保 障 の 中 心 軸 で あ る 。 日 米 同 盟 関 係 は 日 米 双 方 の 政 権 政 党 の 違 い に よ っ て そ の 関 係 に は 濃 淡 が で き る 。 状 況 が 大 き く 変 化 す れ ば 形 骸 化 更 に 破 綻 も な い と は い え な い 。 そ う な ら な い た め に は 常 日 頃 の 連 携 と 努 力 が 日 米 双 方 に 求 め ら れ る 。 当 面 の 日 米 間 の 懸 念 で あ る 沖 縄 普 天 間 基 地 問 題 や BSE 関連の牛 肉 輸 入 問 題 は 速 や か に 解 決 す る べ き で あ る 。 そ し て 、 海 兵 隊 の 存 在 価 値 を し っ か り 認
識 し 原 子 力 空 母 の 母 港 化 に つ い て も 受 け 入 れ る べ き で あ る 。 ○ 努 力 し な け れ ば 親 密 な 日 米 同 盟 と い え ど も 安 心 で き な い 。 日 本 の 平 和 と 安 全 に 取 っ て 日 米 同 盟 の 重 要 性 は 論 を ま た な い 。 し か し 、 同 盟 国 米 国 と い え ど も さ ま ざ ま な 意 見 が あ る 。 現 在 の ブ ッ シ ュ 共 和 党 政 権 は 中 国 を 戦 略 的 競 争 者 と 呼 び 対 立 的 で あ る が 、 ク リ ン ト ン 政 権 時 代 は 、 戦 略 的 パ ー ト ナ ー と 呼 び 中 国 寄 り で あ っ た 。2005 年 17 年 10 月2日の産経新聞は外交評議会の上級研究員、エドワード・ リ ン カ ー ン の 論 説 を 掲 載 し た 。 同 氏 は 日 中 関 係 を 悪 化 し た 原 因 の ほ と ん ど が 日 本 側 の 挑 発 行 為 に よ る と 述 べ た 。 同 氏 は 挑 発 の 実 例 と し て 、「 小 泉 首 相 の 靖 国 神 社 参 拝 と 右 翼 の 歴 史 教 科 書 の 採 択 」 を 挙 げ て 中 国 寄 り の 見 解 と 姿 勢 を 示 し た 。 日 本 大 使 館 な ど を 破 壊 し た 反 日 暴 力 デ モ や 潜 水 艦 の 領 海 侵 犯 に つ い て の 質 問 へ の 回 答 も 中 国 を 弁 護 し 、 す べ て 日 本 の 態 度 が 挑 発 的 で 問 題 と の 見 方 を 繰 り 返 し た と い う 。 同 氏 は ク リ ン ト ン 政 権 時 代 に 三 年 間 モ ン デ ー ル 駐 日 米 大 使 の 特 別 補 佐 官 と し て 勤 務 し た 民 主 党 リ ベ ラ ル 派 で あ る 。 リ ベ ラ ル 派 に は 、 中 国 側 の 日 本 非 難 を 額 面 ど お り 中 国 の 言 い 分 を 支 持 す る 傾 向 が あ り 共 和 党 寄 り の 識 者 と は 対 照 的 で あ る 。 モ ン デ ー ル 大 使 は 尖 閣 列 島 問 題 で 米 国 は 不 関 与 と の 発 言 で 物 議 を か も し た が 、 そ の 裏 に リ ン カ ー ン が い た と す れ ば う な ず け る 。 こ の 様 な 考 え や 日 本 を 瓶 の な か に 閉 じ 込 め る 考 え は 今 も 米 国 の 一 部 に 存 在 す る こ と は 確 か で あ る 。 将 来 、 民 主 党 政 権 に な れ ば こ の よ う な 見 方 を す る 人 物 が 米 国 政 府 を リ ー ド す る 可 能 性 が あ る こ と を 覚 悟 す る 必 要 が あ る 。 日 米 同 盟 を 維 持 す る た め に は 常 日 ご ろ か ら そ の 強 化 と 相 互 理 解 に た ゆ ま ぬ 一 層 の 努 力 が 必 要 で あ り 、 努 力 し 過 ぎ る こ と は な い 。 小 泉 首 相 と ブ ッ シ ュ 大 統 領 と の 緊 密 な 関 係 の 維 持 発 展 は 対 テ ロ 作 戦 へ の 協 力 を 継 続 す る こ と で あ る 。 イ ン ド 洋 へ の 海 上 自 衛 隊 の 派 遣 は 延 長 が き ま っ た 。 イ ラ ク へ の 陸 上 自 衛 隊 派 遣 の 更 な る 延 長 も 考 慮 す る べ き で あ る 。 加 え て 、 日 米 間 の 諸 問 題 は 速 や か に 誠 意 を 持 っ て 解 決 す る こ と が 必 要 で あ る 。 ○ 海 兵 隊 存 在 価 値 の 認 識 日 本 の 防 衛 に と っ て の 在 沖 縄 海 兵 隊 の 存 在 価 値 は 一 般 的 に は 認 識 さ れ て い な い よ う に 思 わ れ る 。 先 般 「 米 軍 の ト ラ ン ス フ ォ ー メ ー シ ョ ン 」 の 講 演 で 講 師 が 最 近 や っ と 米 海 兵 隊 の 存 在 価 値 が わ か っ た と 聞 き 今 更 と 驚 い た 。 米 海 兵 隊 は 海 軍 部 隊 に 属 す る 陸 上 部 隊 で 米 海 兵 隊 の 現 役 部 隊 の 1 / 3 が 西 太 平 洋 に あ り 、 そ の 司 令 部 は 沖 縄 に あ る 。 そ し て 佐 世 保 を 母 港 と す る エ セ ッ ク ス ( 約 4 万 ト ン ) を 中 核 と す る 4 隻 の 大 型 両 用 戦 艦 船 は 機 動 展 開 部 隊 と 呼 ば れ る 約 2 千 人 の 海 兵 隊 陸 上 戦 闘 部 隊 を 乗 艦 さ せ 原 子 力 潜 水 艦・ イ ー ジ ス 巡 洋 艦 ・ 駆 逐 艦 等 と と も に 遠 征 打 撃 群(ESG)を編成し紛争地に迅速 に 進 出 で き る 。 即 応 戦 力 と し て 空 母 部 隊 と 同 様 に 日 本 の 防 衛 に と っ て 極 め て 重 要 な 存 在 で あ る 。 こ の 部 隊 は 、 着 上 陸 作 戦 を 本 務 と す る が そ の 他 、 対 テ ロ ・ ゲ リ ラ 、 コ マ ン ド ウ 作 戦 、 民 間 人 救 出 、 災 害 派 遣 な ど 多 様 な 任 務 に 迅 速 に 対 応 で き る 態 勢 に あ る 。 沖 縄 基 地 再 編 の 中 で も 、 米 海 兵 隊 の こ の 機 能 は 残 し て お か ね ば な ら な い 。 平 松 茂 雄 教 授 が 以 前 か ら 警 告 し て い る よ う に 尖 閣 列 島 や 東 シ ナ 海 の 石 油 ガ ス 資 源 開 発 を め ぐ り 中 国 海 軍 の 拡 大 す る 動 き は 予 断 を 許 さ な い 段 階 に 入 っ た 。 そ の 場 合 、 沖 縄 の 海 兵 隊 の 存 在 は 迅 速 な 対 応 が 可 能 で あ り 中 国 の 行 動 を 制 約 す る 抑 止 力 で あ る こ と を 認 識 す る べ き で あ る 。 普 天 間 基 地 の 移 設 問 題 は 、 海 兵 隊 の 能 力 を 低 下 さ せ な い こ と が 大 前 提 に な
ろ う 。 ○ 原 子 力 空 母 母 港 化 の 問 題 強 大 な 打 撃 力 を 持 つ 第 七 艦 隊 の 中 核 は 空 母 で あ る 。 空 母 搭 載 の 戦 闘 機 や 爆 撃 機 は 艦 船 搭 載 の 巡 航 ミ サ イ ル ( ト マ ホ ー ク ) と 同 様 に 湾 岸 戦 争 や イ ラ ク 戦 争 で そ の 威 力 を 発 揮 し た よ う に 遠 距 離 の 目 標 を 正 確 に 破 壊 す る こ と が で き る 。 自 衛 隊 に 加 え 、 こ れ ら 強 力 な 打 撃 力 を 迅 速 に 投 射 で き る 能 力 を 持 つ 米 軍 と の 共 同 が あ っ て こ そ 日 本 防 衛 の た め の 抑 止 力 が 発 揮 さ れ る 。 横 須 賀 に 在 籍 す る 通 常 動 力 の 空 母 キ テ イ ホ ー ク の 後 継 は 原 子 力 空 母 に な る 可 能 性 は 高 い が 、地 元 、横 須 賀 市 議 会 が 205 年 2 月原子力空母の母港 化 へ の 反 対 決 議 を し た と 聞 き 驚 い た 。 原 子 力 潜 水 艦 の 日 本 寄 港 に つ い て は 、 そ の 原 子 力 機 関 の 安 全 性 に 疑 問 を 投 げ 危 険 と し た 反 対 運 動 が 約 四 十 年 に わ た り 行 わ れ て き た が 、 今 ま で 昭 和 41 年以来延べ 1,000 回に近い寄港において関係機関の厳重なる放射 能 検 知 を 実 施 し た が 、 今 ま で 少 し の 問 題 も 発 生 し て い な い 。 事 故 が よ く 報 道 さ れ る ロ シ ア と 違 い 米 海 軍 の 原 子 力 機 関 の 安 全 性 に つ い て は 他 の 交 通 手 段 に 比 較 し て も 安 全 で あ る こ と は 過 去 の 実 績 が 証 明 し て い る 。 い た ず ら に そ の 安 全 性 を 無 視 し て 、 な き に 等 し い 危 険 を 誇 張 し て 煽 動 す る こ と は 反 対 グ ル ー プ の 常 套 手 段 で あ り 、 良 識 を 持 つ は ず の 政 治 家 の 多 く が 、 そ れ に 踊 ら さ れ る に は 驚 く 。 将 来 の 日 本 へ の 潜 在 的 脅 威 は 、 テ ロ リ ズ ム は 別 格 と し て 、 中 国 、 北 朝 鮮 そ れ に ロ シ ア が 加 わ る 可 能 性 も 含 め 容 易 な ら ざ る も の に な る と 考 え ら れ 原 子 力 空 母 の 母 港 化 は 日 本 の 防 衛 の 抑 止 力 及 打 撃 力 と し て 必 要 不 可 欠 で あ る こ と を 理 解 す る べ き で あ る 。
お わ り に
中 国 は 外 貨 準 備 高 で は 既 に 日 本 を 抜 い た そ う で あ る 。 自 己 中 心 で 自 分 の こ と は 棚 に あ げ て 遠 慮 な く 内 政 干 渉 を し て く る 扱 い 難 い 相 手 で あ る が 付 き 合 っ て 行 か ね ば な ら な い 。 今 ま で の よ う に 日 中 友 好 の 言 葉 だ け で は ど う に も な ら な い 。 巨 大 な 相 手 に 飲 み 込 ま れ な い よ う に 将 来 を 見 据 え て 検 討 す る 必 要 が あ る 。 日 本 が 中 国 と 国 交 回 復 す る と き に 、 中 国 古 典 に 造 詣 の 深 い 碩 学 の 安 岡 正 篤 は 勉 強 不 足 の 日 本 政 治 家 は 中 国 の 老 練 な 政 治 家 の 手 玉 に 取 ら れ る の で は な い か と 心 配 し た そ う で あ る 。 日 中 国 交 30 年を迎えた今この数年の日中関係を見 る と そ の 言 葉 が 当 た っ て い る よ う に 思 わ れ る 。 今 ま で ODA などは必要以上に提供し、言 わ れ 放 題 、 海 洋 観 測 ・ ガ ス 油 田 開 発 等 や り た い 放 題 で 、 挙 句 の 果 て が 反 日 と な る と 、 や っ と 日 中 友 好 の 幻 想 か ら 目 が 覚 め つ つ あ る 。 小 泉 首 相 の 靖 国 参 拝 反 対 の 内 政 干 渉 が 、 そ の こ と を 日 本 国 民 に 教 え た と い え よ う 。 総 選 挙 で の 大 勝 は そ れ を 示 し て い る 。 今 後 の 日 本 の リ ー ダ ー は 是 非 、 政 治 戦 略 を よ く 勉 強 し 安 全 保 障 に 強 い 政 治 家 で あ っ て 中 国 等 と 対 等 に 渡 り 合 っ て 欲 し い 。 日 本 は 政 治 力 、 経 済 力 、 軍 事 力 の い ず れ に も 強 靭 で バ ラ ン ス の あ る 力 を 保 有 し な け れ ば な ら な い 。 そ の た め に は 自 ら の 力 を 蓄 え る と 同 時 に 多 く の 利 益 並 び に 価 値 観 を 共 有 す る 世 界 の リ ー ダ ー で あ る 米 国 の 力 も 借 り る 。 そ れ が 日 米 同 盟 で あ り 、 双 方 の 政 権 が 変 わ ろ う と し っ か り 維 持 で き る よ う に 確 固 た る も の に し て お く 必 要 が あ る 。 「 自 由 を 守 る 」 は 今 後 の 国 際 社 会 に お け る 錦 の 御 旗 に な る 。 自 由 民 主 主 義 国 家 と し て 日 米 韓 台 そ れ に 豪 州 な ど の 団 結 と 連 携 が 国 際 社 会 の テ ロ リ ズ ム へ の 対 処 と 同 時 に 権 威 主 義 、 独 裁 主 義 の 国 の 野 望 や 間 接 侵 略 を 抑 制 す る こ と に な ろ う 。台頭する中国の軍事力
(財)DRC 研究委員 安 村 勇 徳前 言
近 年 に お け る 中 国 の 軍 事 力 拡 大 は 、 高 度 経 済 成 長 に 支 え ら れ 著 し い も の が あ る 。 こ の 軍 事 力 の 拡 大 傾 向 が 今 後 と も 続 く と す れ ば 、 中 国 は 近 い 将 来 こ の 地 域 の ス ー パ ー パ ワ ー に な る こ と は 想 像 に 難 く な い 。 こ の 様 な 情 勢 認 識 が 高 ま る 中 、2005 年 7 月台湾国防当局の招 き で 、 中 国 人 民 解 放 軍 研 究 の 国 際 セ ミ ナ ー に 参 加 す る 機 会 が あ っ た 。 日 本 を 始 め 、 米 国 、 オ ー ス ト ラ リ ア 、 イ ン ド 、 タ イ か ら そ れ ぞ れ 軍 人(退役 軍人を含 む )や中 国軍 研究の専 門家 が 集 ま り 、2 週間にわたって興味深い熱心な討議が行われた。この期間中に、米国では中 国 軍 に 関 す る 国 防 省 の 議 会 報 告 が 発 表 さ れ,中国に対する関心は更に高まることになった 。 ま た 、8 月上旬には、わが国は 2005 年版「日本の防衛」(防衛白書)を発表し、この中で中 国 に つ い て は 、「 高 い 国 防 費 の 伸 び 」や「 軍 事 力 の さ ら な る 近 代 化 」と い っ た 動 向 に 注 目 す る 必 要 性 を 指 摘 し て い る こ と が 紹 介 さ れ た 。 更 に 、8 月下旬には、中国の山東半島で大規 模 な 中 露 合 同 軍 事 演 習 が 実 施 さ れ 、 周 辺 諸 国 は も と よ り 、 世 界 の 注 目 を 集 め る も の と な っ て い る 。 こ の 様 な 一 連 の 中 国 軍 の 動 向 に 関 し 、 本 稿 で は 、 中 国 人 民 解 放 軍 の 近 代 化 の 現 況 を 分 析 し て 、 中 国 の 軍 事 力 の 台 頭 が 地 域 の 安 全 保 障 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 考 察 す る 。1. 軍事予算
本 年 7 月に発表された米国防省の議会報告によると、中国の軍事費はこの 10 年間で、 毎 年 10%を超える成長を続けている。これは中国の順調な経済成長を背景としているも の で あ る が 、GDP に占める軍事費の割合は、毎年拡大し地域内の他の諸国と比較しても 著 し い も の が あ る 。中 国 が 公 表 し た 今 年 度 の 国 防 費 は 1997 年度の約3倍、2000 年度の 約 2 倍となっている。更に、先に発表された米国防総省の年次報告によると、中国の実 際 の 国 防 費 は 、公 表 さ れ た 額 の 2 ∼ 3 倍 と 推 計 さ れ 、米 国 、ロ シ ア に 次 い で 世 界 第 3 位 の 軍 事 大 国 に な っ て い る と し て い る 。 中 国 は 、「2004 年の中国の国防」白書において、「 国 防 建 設 と 経 済 建 設 を 協 調 的 に 発 展 さ せ る 方 針 を 堅 持 す る 」と し て 、国 防 建 設 を 経 済 建 設 と 並 ぶ 重 要 課 題 と 位 置 付 け て い る 。 当 面 、 中 国 が 国 防 に 対 す る 資 源 配 分 を 急 激 に 高 め る 可 能 性 は 大 き く な い と 考 え ら れ る も の の 、 近 年 の 国 防 予 算 の 伸 び は GDP の伸びを大幅に上回っており、国防費の総額も大 幅 に 増 大 し て い る こ と か ら 、 今 後 も 軍 事 力 の 近 代 化 が 推 進 さ れ て い く も の と 考 え ら れ る 。 こ の 様 な 中 国 の 軍 事 予 算 に つ い て 、わ が 国 の 防 衛 白 書 は 、「 国 防 予 算 の 総 額 や 詳 細 な ど に つ い て 明 ら か に し て い な い 」 こ と を 問 題 点 と し 、「 軍 近 代 化 の 目 標 が 、 中 国 の 防 衛 に 必 要 な 範 囲 を 超 え る も の で は な い の か 」と 懸 念 を 示 し て い る 。ま た 、米 国 防 総 省 報 告 も 、 中 国 の 軍 事 力 増 強 の 速 度 、規 模 が 地 域 の 軍 事 バ ラ ン ス を 危 う く し て お り 、長 期 的 に は「 確 実 な 脅 威 」 に な り う る 、 と 指 摘 し て い る 。2. 軍事力の近代化
中 国 の 保 有 す る 軍 事 力 は 世 界 最 大 で あ り 、 人 民 解 放 軍 、 人 民 武 装 警 察 部 隊 及 び 民 兵 か ら 構 成 さ れ て い る 。 人 民 解 放 軍 は 、 総 兵 力 約 2 3 0 万 前 後 と 見 ら れ 、 陸 軍 を 中 心 と し た 兵 員 の 削 減 を 行 う 一 方 、 各 軍 ・ 兵 種 間 の 統 合 作 戦 能 力 の 向 上 を 重 点 に 、 核 ・ ミ サ イ ル 戦 力 や 海 ・ 空 軍 を 中 心 と し た 全 軍 の 近 代 化 を 進 め て い る 。 海 上 戦 力 は 、 北 海 、 東 海 、 南 海 の 3 個 の 艦 隊 か ら な り 、 艦 艇 約 750 隻(うち潜水艦約 70 隻)約 93 万 9,000 トンを保有し、国の海上の安全を守り、領海の主権と海洋権益を保 全 す る 任 務 を 担 っ て い る 。 中 国 海 軍 は 、 近 海 の 防 御 作 戦 空 間 を 拡 大 し 、 近 海 で 作 戦 を 行 う 総 合 的 作 戦 能 力 を 増 強 す る こ と を 目 標 に 、 静 粛 性 に 優 れ た キ ロ 級 潜 水 艦 や 、 超 音 速 対 艦 ミ サ イ ル(SS-N-22)の 運 用 が 可 能 な ソ ブ レ メ ン ヌ イ 級 駆 逐 艦 を ロ シ ア か ら 導 入 し て い る ほ か 、 ソ ン(宋 )級潜 水艦の国 内 生産、ロ シ アからの キ ロ級潜水 艦 の調達、 新 型のユア ン(元)級ディーゼル潜水艦の独自開発、次世代の 093 型攻撃原潜の開発などの近代化を 推 進 し て い る 。 航 空 戦 力 は 、 空 軍 、 海 軍 を 合 わ せ て 作 戦 機 を 約 2,390 機 保 有 し て い る 。 国 産 の J-10(F-10)戦闘機を開発中であるほか、ロシアから Su-27 戦闘機の導入・ライセンス生 産 を 行 っ て お り 、ま た 、対 地・対 艦 攻 撃 能 力 を 有 す る Su-30 戦闘機の導入も進めている。 旧 世 代 の 戦 闘 機 を 退 役 さ せ て い る こ と か ら 、 総 機 数 は 年 々 減 少 し て い る 一 方 、 対 地 及 び 対 艦 攻 撃 用 の 長 距 離 精 密 誘 導 兵 器 を 搭 載 し た 第 3 、 第 4 世 代 の 新 型 機 は 急 激 に 機 数 が 増 加 し て い る 。 こ の 様 に 中 国 空 軍 は 、 新 型 機 の 導 入 に 加 え て 、 空 中 給 油 や 早 期 警 戒 管 制 と い っ た 近 代 的 な 航 空 戦 力 の 運 用 に 必 要 な 能 力 の 獲 得 に 向 け た 努 力 や 巡 航 ミ サ イ ル の 開 発 を 行 っ て お り 、 国 土 防 空 型 の 空 軍 か ら 攻 撃 ・ 防 衛 一 体 型 の 空 軍 へ の 転 換 を 目 指 し 、 そ の 作 戦 能 力 は 各 段 位 向 上 し つ つ あ る 。 核 戦 力 に つ い て は 、 抑 止 力 の 確 保 、 通 常 戦 力 の 補 完 及 び 国 際 社 会 に お け る 発 言 力 の 確 保 と い う 観 点 か ら 、1950 年代半ば頃から独自の開発を継続しており、その運搬手段とし て は 、弾 道 ミ サ イ ル の ほ か 、中 距 離 爆 撃 機H-6(Tu-16)を約 160 機保有している。弾道ミ サ イ ル は 、 現 在 、 大 陸 間 弾 道 ミ サ イ ル(ICBM)を約 30 基保有するほか、新型ICBMや潜 水 艦 発 射 弾 道 ミ サ イ ル(SLBM)な どの 開発 も 進め 、自 国 内で 新型 長 距離 弾道 ミ サイ ル 、 東 風 31 (CSS-9)の発射実験を行っている。また、中距離弾道ミサイルについては、わが 国 を 含 む ア ジ ア 地 域 を 射 程 に 収 め る ミ サ イ ル を 合 計 約 110 基保有しており、従来の東風 3(CSS-2)から、命中精度などの性能が向上した新型の東風 21(CSS-5)への転換を進め て い る 。 さ ら に 、 短 距 離 弾 道 ミ サ イ ル は 、 移 動 式 で 残 存 性 が 高 ま り 、 台 湾 対 岸 に お け る 東 風 15(CSS-6)や東風 11(CSS-7)の配備数増加の動きが見られる。 陸 上 戦 力 に つ い て は 、 総 兵 力 の 規 模 は 、160 万人と世界最大である。中国は 1985 年 以 降 に 軍 近 代 化 の 観 点 か ら 実 施 し て き た 人 員 の 削 減 や 組 織 ・ 機 構 の 簡 素 化 ・ 効 率 化 に 引 き 続 き 努 力 し て お り 、 装 備 や 技 術 の 面 で 立 ち 遅 れ た 部 隊 を 漸 減 し 、 作 戦 能 力 に 重 点 を 置 い た 軍 隊 の 創 設 を 目 指 し て い る 。 こ の た め 、 快 速 反 応 部 隊 や 特 殊 部 隊 な ど に つ い て 近 代 的 装 備 の 導 入 を 優 先 し 、 機 動 力 の 向 上 を 図 る と と も に 、 後 方 支 援 能 力 を 向 上 さ せ る た め の 改 革 に 取 り 組 ん で い る 。3. 地域の安全保障に及ぼす影響
(1) 中国の軍事戦略 中 国 は 、 万 一 攻 撃 さ れ た 時 に は 攻 勢 的 な 反 撃 に 出 る と い う 「 積 極 的 防 御 の 軍 事 戦 略 」 に 基 づ き 、 海 空 軍 力 の 近 代 化 を 中 心 に 軍 事 変 革 を 積 極 的 に 推 進 し て い る 。 こ れ は 、 相 手 か ら 攻 撃 さ れ な け れ ば 自 ら 攻 撃 を す る こ と は な い が 、 万 一 攻 撃 を 受 け た 時 に は 攻 勢 的 な 反 撃 に 出 る と い う 戦 略 的 考 え 方 で あ る 。 そ し て 、 世 界 の 新 し い 軍 事 変 革 は 加 速 度 的 に 発 展 し 、 情 報 化 が 軍 隊 の 戦 闘 力 を 高 め る 鍵 と な っ て い る と の 認 識 か ら 、 中 国 人 民 解 放 軍 の 近 代 化 に 関 し て も 、 引 き 続 き 軍 の 機 械 化 に 努 力 す る と 同 時 に 、 情 報 化 戦 争 に 勝 利 す る と い う 軍 事 戦 略 に 基 づ い て 、「 中 国 の 特 色 あ る 軍 事 変 革 」 を 積 極 的 に 推 進 し て い る 。 こ の 様 な 軍 事 戦 略 の も と 、 人 民 解 放 軍 は 、 近 年 、 運 用 面 に お い て も 近 代 化 を 図 る こ と な ど を 目 的 と し て 、 陸 ・ 海 ・ 空 軍 間 の 協 同 演 習 や 上 陸 演 習 な ど を 含 む 大 規 模 な 演 習 を 行 っ て お り 、本 年 8 月には、中露合同の大規模な軍事演習が実施されたのは、特に注目す べ き 事 象 で あ る 。 ま た 、 海 洋 進 出 の 戦 略 に 立 つ 中 国 は 、 東 シ ナ 海 な ど で 海 軍 艦 艇 が 活 発 な 活 動 を 展 開 し て い る が 、 こ の 活 動 は 今 や 西 太 平 洋 に ま で 拡 大 し つ つ あ る 。 昨 年 11 月 に は 中 国 海 軍 の 原 子 力 潜 水 艦 が 沖 縄 県 宮 古 列 島 周 辺 で 日 本 領 海 を 侵 犯 す る 事 案 が 発 生 し た が 、 こ れ は 、 中 国 に 近 接 す る 海 洋 国 家 日 本 に と っ て 憂 慮 す べ き 事 態 で あ り 、 国 家 主 権 を 侵 害 す る 不 法 行 為 に は 断 固 た る 対 処 が 必 要 で あ る 。 そ の 一 方 、中 国 は 、自 国 の 近 代 化 建 設 を 継 続 し て 推 進 す る た め に 、世 界 各 国 と の 貿 易 、 往 来 、 経 済 面 や 技 術 面 で の 協 力 な ど を 推 進 す る と 共 に 、 中 国 の 周 辺 地 域 に つ い て 、 安 定 的 な 安 全 保 障 環 境 を 構 築 す る こ と を 重 視 し 、国 際 犯 罪 や テ ロ 、海 上 に お け る 捜 索・救 助 、 海 賊 対 策 、 麻 薬 取 締 と い っ た 「 非 伝 統 的 安 全 保 障 分 野 」 に お け る 協 力 や 安 全 保 障 協 議 の 場 を 中 心 に 、 世 界 各 国 と の 間 で 実 質 的 な 協 力 関 係 を 発 展 さ せ 、 外 交 面 で 対 外 イ メ ー ジ を 向 上 さ せ る 努 力 を 継 続 し て い る 。 中 国 は 、 今 年 の 9 月 1 日「中国の軍備管理・軍縮・拡散防止努力」白書を発表した。 こ の 中 で 、 核 兵 器 の 先 制 不 使 用 や 、 国 防 費 増 大 の 理 由 な ど を 説 明 し て い る が 、 こ れ は 胡 錦 濤 国 家 主 席 の 訪 米 を 前 に 米 国 な ど に 根 強 い 「 中 国 脅 威 論 」 の 払 拭 を 狙 っ た も の と 見 ら れ て い る 。 こ の 白 書 で は 、 中 国 は 防 衛 的 な 国 防 政 策 を 堅 持 し て い る と 強 調 す る と 共 に 、 核 兵 器 の 先 制 不 使 用 方 針 は 今 後 も 変 わ ら な い と し 、 更 に 、 台 湾 を 米 国 の ミ サ イ ル 防 衛 に 組 み 込 む こ と に 反 対 を 表 明 し て い る 。こ れ ら は 、米 国 に よ る 台 湾 へ の 支 援 ・ 協 力 を け ん 制 す る と 同 時 に 、 中 国 の 対 外 的 な イ メ ー ジ 向 上 を 図 ろ う と す る 戦 略 の 一 環 と 見 る こ と が で き よ う 。 (2) 中国の海洋における活動の活発化 昨 年 11 月、中国の原子力潜水艦がわが国の領海内を潜没航行した。この中国原子力 潜 水 艦 に よ る 領 海 内 潜 没 航 行 事 案 も 含 め 、 近 年 、 わ が 国 の 近 海 に お い て 、 中 国 の 海 軍 艦 艇 の 航 行 が 活 発 に 行 わ れ て い る 。 何 ら か の 訓 練 と 思 わ れ る 活 動 や 情 報 収 集 活 動 、 海 洋 調 査 活 動 を 行 っ て い る と 考 え ら れ る 海 軍 艦 艇 が 視 認 さ れ て お り 、 こ の 1 年 に つ い て も 、 中 国 海 軍 の 測 量 艦 が 東 シ ナ 海 や 太 平 洋 上 に お い て 、 ケ ー ブ ル や ワ イ ヤ ー を 曳 航 ま た は 海 中 に 向 け て 音 波 を 発 信 し な が ら 航 行 し て い る の が 確 認 さ れ て い る 。 さ ら に 、 わ が 国 の 排 他 的 経 済 水 域 に お い て 、 中 国 の 海 洋 調 査 船 に よ る 海 洋 調 査 と 見 ら れ る 活 動 も 行 わ れ 、 鉱 区や 構 造 が 日 中 中 間 線 の 東 側 ま で 連 続 し て い る と み ら れ る 春 暁 油 ガ ス 田 な ど で の 探 鉱 ・ 開 発 を 行 っ て い る 。 ま た 、 わ が 国 の 近 海 以 外 で も 中 国 は 、ASEAN 諸 国 な ど と 領 有 権 に つ い て 争 い の あ る 南 沙 ・ 西 沙 群 島 に お け る 活 動 拠 点 を 強 化 し て い る 。 こ の 様 な 海 洋 に 関 す る 活 動 に 加 え 、 わ が 国 固 有 の 領 土 で あ る 尖 閣 諸 島 の ほ か 、 南 沙 ・ 西 沙 群 島 な ど を 中 国 領 と 明 記 し た 「 領 海 法 」 を 1992 年に施行し、領土、領海、領空の 安 全 の 防 衛 と 並 ん で 海 洋 権 益 の 擁 護 を 明 記 し た 「 国 防 法 」 を 1997 年に制定するなど、 法 制 面 で も 整 備 を 行 っ て い る 。 こ の よ う な 中 国 の 海 洋 に お け る 活 動 の 活 発 化 は 、 中 国 海 軍 が 、 近 海 に お い て 防 御 作 戦 空 間 を 拡 大 し 総 合 的 作 戦 能 力 を 増 強 す る こ と を 目 指 し て い る と さ れ て い る こ と に 加 え 、 将 来 的 に は い わ ゆ る 「 外 洋 海 軍 」 を 目 指 し て い る と の 指 摘 も あ る こ と か ら 、 そ の 動 向 に 注 目 し て い く 必 要 が あ る 。 (3) 中露合同軍事演習 中 国 と ロ シ ア は 、本 年 8 月ウラジオストクや山東半島周辺で、初の合同軍事演習を実 施 し た 。 両 国 は 「 国 際 テ ロ 」 や 「 分 裂 主 義 」 な ど に 共 同 で 対 処 す る た め で 、「 第 三 国 を 対 象 と し た も の で は な い 」 と し て い る が 、 時 期 や 演 習 内 容 か ら み て 、 中 国 主 導 で 日 米 同 盟 や 台 湾 を け ん 制 す る 意 図 が あ っ た こ と は 明 白 で あ る 。 中 ロ は 米 国 の 一 極 主 義 に 対 抗 し て 連 携 を 強 化 し お り 、 こ れ が 軍 事 分 野 に ま で 広 が る と な る と 日 本 へ の 影 響 も 少 な く な い も の と 思 わ れ る 。 「 平 和 の 使 命 2005」と銘打った今回の合同演習は、8 月 18 日からウラジオストクで 始 ま り 、22 日から 25 日まで山東半島とその周辺海域で、降下、上陸、ミサイル射撃な ど 、 両 国 の 陸 、 海 、 空 三 軍 約 1 万 人 が 参 加 し て 実 施 さ れ た 。 ロ シ ア 側 は 2000∼3000 人 が 参 加 、 大 型 対 潜 艇 、 上 陸 用 舟 艇 の ほ か 、 戦 略 爆 撃 機 「 ツ ポ レ フ T u95 ベア」、中距離 爆 撃 機 「 ツ ポ レ フ T u22Mバックファイア」など計 17 機の航空戦力も投入している。 中 国 側 兵 力 の 詳 細 は 不 明 で あ る が 、 北 海 艦 隊 や 空 軍 、 第 2 砲 兵 隊 な ど を 動 員 し た も の と 見 ら れ る 。 演 習 の 規 模 や 兵 力 、 作 戦 内 容 は テ ロ 対 策 を は る か に 上 回 り 、 台 湾 や 朝 鮮 半 島 の 有 事 も 想 定 し た 作 戦 と の 見 方 が 多 い 。 報 道 に よ る と 、 ロ シ ア 側 は 当 初 中 央 ア ジ ア 地 域 で の 合 同 演 習 を 望 ん だ が 、 中 国 側 の 強 い 働 き か け で 極 東 海 域 と な っ た 。 中 国 側 は 台 湾 に 近 い 浙 江 省 沿 海 で の 演 習 を 望 ん だ が 、 日 米 や 台 湾 を 刺 激 す る こ と を 懸 念 し た ロ シ ア 側 の 反 対 で 山 東 半 島 に 落 ち 着 い た と い う 。 更 に 、 日 米 両 国 は 2 月 に 発 表 し た 安 保 共 通 目 標 に 初 め て 「 台 湾 海 峡 を 巡 る 問 題 の 平 和 解 決 を 促 す 」 こ と を 盛 り 込 ん だ が 、 中 国 は こ れ を 「 内 政 干 渉 」 と 強 く 反 発 し て い た こ と か ら 、 合 同 演 習 を 通 じ て 日 米 を け ん 制 す る 意 図 が あ っ た と 見 る こ と が で き る 。 一 方 、 ロ シ ア 側 は 、 最 大 の 兵 器 輸 出 先 で あ る 中 国 の 意 向 に も 配 慮 し て 今 回 の 演 習 に 応 じ た と の 見 方 が 有 力 で あ る 。 い ず れ に せ よ 、 中 露 両 国 は 2 期 目 の ブ ッ シ ュ 政 権 が 「 圧 政 の 終 焉 」 を 掲 げ て 、 中 東 や 中 央 ア ジ ア 諸 国 な ど の 民 主 化 を 促 し て い る こ と に 警 戒 を 強 め 、 7 月 初 め の 両 国 首 脳 会 談 で は 、 米 国 の 一 極 支 配 や 内 政 干 渉 を け ん 制 す る 共 同 声 明 を 発 表 し て い る が 、 い わ ば 、 米 国 の 民 主 化 圧 力 が 両 国 の 結 束 を 強 め て い る こ と の 表 れ と 言 え よ う 。 東 シ ナ 海 の 領 土 ・ 領 海 や 台 湾 、 歴 史 問 題 で 日 中 関 係 が 険 悪 な 中 で 、 こ の 様 な 中 露 の 軍 事 連 携 が 強 ま る こ と は 、 わ が 国 に と っ て 好 ま し い 事 態 で は な い 。 極 東 地 域 で 日 米 対 中 露
の 対 抗 関 係 を 際 だ た せ な い た め に は 、 米 国 を 始 め と す る 友 好 諸 国 と の 連 携 を よ り 一 層 強 化 す る と 共 に 、 対 中 、 対 露 外 交 の 再 構 築 に 取 り 組 む こ と が 必 要 で あ ろ う 。 (4) 周辺諸国への影響 ア ジ ア 太 平 洋 地 域 で は 、1990 年代以降、経済面を中心として二国及び多国間の連携・ 協 力 関 係 の 充 実 ・ 強 化 が 図 ら れ る 一 方 、 政 治 体 制 や 経 済 の 発 展 段 階 、 民 族 、 宗 教 な ど 多 様 性 に 富 み 、 ま た 、 安 全 保 障 観 、 脅 威 認 識 も 各 国 に よ っ て 様 々 で あ る こ と な ど の 地 域 的 特 性 か ら 、 欧 州 地 域 で 見 ら れ た よ う な 安 全 保 障 環 境 の 大 き な 変 化 は 見 ら れ ず 、 冷 戦 構 造 終 焉 後 も 依 然 と し て 、 領 土 問 題 や 統 一 問 題 と い っ た 従 来 か ら の 問 題 が 残 さ れ て い る 。 す な わ ち 、 朝 鮮 半 島 に お い て は 軍 事 的 対 峙 が 続 い て お り 、 中 国 と 台 湾 の 問 題 は 、 こ の 地 域 の 平 和 と 安 定 を 脅 か し か ね な い 重 要 な 安 全 保 障 問 題 で あ る 。 ま た 、 イ ン ド ネ シ ア や タ イ で は 、 国 内 に お け る 分 離 ・ 独 立 運 動 を 抱 え 、 中 国 、 東 南 ア ジ ア 各 国 の 間 で は 、 南 沙 群 島 の 領 有 権 を め ぐ る 対 立 の 問 題 も 存 在 す る 。 ま た 、 こ の 地 域 の 多 く の 国 に お い て は 、 国 防 費 の 増 額 や 新 装 備 の 導 入 な ど 軍 事 力 の 拡 充 ・ 近 代 化 を 行 っ て き て い る が 、 特 に 、 政 治 的・経 済 的 に 地 域 の 大 国 と し て 重 要 な 影 響 力 を も つ 中 国 は 、特 に そ の 軍 事 面 に お い て 、 各 国 が そ の 動 向 に 注 目 す る 存 在 と な っ て い る 。 軍 事 力 バ ラ ン ス を グ ロ ー バ ル に 考 察 す る と 、冷 戦 時 代 は 、米 ソ 2 カ国の強大国(スーパ ー パ ワ ー)に加え、英、仏、独、日の 4 つの大国(パワー)が東西の軍事力バランスに大き な 影 響 を 及 ぼ し て い た 。 ソ 連 の 崩 壊 後 は 、 米 国 1 国のみが強大国として残り、前述の 4 カ 国 に 、 中 国 、 イ ン ド 、 パ キ ス タ ン 、 ロ シ ア を 加 え た 8 カ国が大国として、それぞれの 国 の 周 辺 地 域 の 平 和 と 安 定 に 影 響 を 及 ぼ す 重 要 な 国(軍 事的要素 )となって い る。このよ う な こ と か ら 考 察 す る と 、 中 国 の 軍 事 力 の 拡 大 は 、 ア ジ ア 太 平 洋 や わ が 国 周 辺 地 域 の 安 全 保 障 に 大 き な 影 響 を 及 ぼ す こ と は 明 ら か で あ る 。 こ の 地 域 で 想 定 さ れ る 紛 争 事 態 に は 、 ① 朝 鮮 半 島 、 ② 台 湾 海 峡 、 ③ 南 シ ナ 海 な ど の 領 土 ・ 資 源 に 関 す る 事 態 、 ④ イ ン ド ・ パ キ ス タ ン の 紛 争 な ど 、4 つのエリア(地 域)で生起 す る 可 能 性 が 大 で あ る 。 こ れ ら の 事 態 に 対 す る 中 国 の 影 響 力 は 、 将 来 に お け る そ の 軍 事 力 の 増 強 と 共 に 一 層 拡 大 す る こ と と な る が 、 こ の 様 な 事 態 の 生 起 に 際 し 、 米 国 は 中 国 の 軍 事 力 に 対 抗 で き る 唯 一 の ス ー パ ー パ ワ ー と し て の 責 任 は 大 で あ る 。 そ し て 、 こ れ ら の 事 態 対 処 に 当 た っ て の 日 米 の 果 た す べ き 役 割 は 何 か を 明 ら か に し て お く こ と は 、 わ が 国 に と っ て 、 よ り 一 層 重 大 で あ ろ う 。 ま た 、 台 湾 海 峡 を 挟 ん で 中 国 と 対 峙 す る 台 湾 が 、 わ が 国 と 同 じ 民 主 主 義 国 家 で 価 値 観 を 共 有 で き る 国 家 と し て ど の よ う な 役 割 を 果 た す か に つ い て 考 察 し 、 相 互 に 意 見 交 換 を し て お く こ と は 、 極 め て 意 義 あ る こ と と い え る 。 今 回 参 加 し た 台 湾 国 防 当 局 の 主 催 す る 中 国 人 民 解 放 軍 の 研 究 に 関 す る 国 際 セ ミ ナ ー の 狙 い も 、 実 は 、 こ の 点 に あ っ た の で あ り 、 将 来 に お け る 中 国 の 軍 事 的 台 頭 に 対 応 す る た め に は 、 日 、 米 、 韓 、 台 湾 な ど 、 自 由 主 義 経 済 と 民 主 主 義 を 謳 歌 し 、 価 値 観 を 共 有 す る 国 々 が 相 互 に 密 接 に 連 携 し て 対 応 し な け れ ば な ら な い の で あ る 。
結 言
台 湾 で の セ ミ ナ ー を 通 じ 印 象 に 残 っ た こ と は 、 台 湾 の 多 く の 人 々 は 「 性 急 な 独 立 」 は 決 し て 望 ん で い な い と 言 う こ と で あ る 。 現 状 を 維 持 し 、 平 和 と 繁 栄 を 追 い 求 め る こ と が 、 当 面 の 国 家 目 標 な の で あ る 。こ の た め 最 も 重 要 視 さ れ る の は 、当 面 、 中 台 2 国間の協調で あ り 、台 湾 海 峡 の 平 和 維 持 で あ る 。し か し な が ら 、中 国 は 本 年 3 月 、「 反 国 家 分 裂 法 」を 成 立 さ せ 、 同 法 に お い て 中 台 問 題 の 平 和 的 解 決 の た め 最 大 の 努 力 を 尽 く す と 同 時 に 、 台 湾 が 独 立 の 動 き を 示 せ ば 、 非 平 和 的 な 方 式 に よ る 措 置 を 講 ず る こ と も 排 除 し な い と の 意 思 を 明 ら か に し た 。 す な わ ち 、 中 国 は 、 武 力 に よ る 台 湾 の 独 立 阻 止 を 表 明 す る こ と に よ り 、 台 湾 の 動 き を け ん 制 し つ つ 時 間 を 稼 ぎ 、 こ の 間 に 、 軍 事 力 の 近 代 化 を 着 実 に 推 進 し て 、 台 湾 問 題 に 対 す る 米 国 の 軍 事 介 入 を 排 除 で き る 実 力 を 保 有 し よ う と し て い る の で あ る 。 こ の 様 な 中 国 の 動 き に 対 し 、 わ が 国 や 米 国 に 加 えEU も 、 台 湾 海 峡 の 平 和 と 安 定 、 緩 和 し つ つ あ っ た 両 岸 関 係 へ の 否 定 的 影 響 の 観 点 か ら 懸 念 を 表 明 し て い る が 、 中 国 と 台 湾 の 問 題 は 、中 国 側 か ら 見 れ ば 、「 国 内 問 題 」で あ ろ う が 、関 係 諸 国 か ら 見 れ ば 、こ の 地 域 の 平 和 と 安 定 に 重 要 な 影 響 を 及 ぼ す 恐 れ の あ る 安 全 保 障 問 題 と し て 捉 え ら れ る か ら で あ る 。 中 国 の 一 方 的 な 軍 事 力 の 強 化 は 、 中 台 間 の 軍 事 力 バ ラ ン ス の み な ら ず 、 米 国 を 含 む 北 東 ア ジ ア 全 体 の 軍 事 力 バ ラ ン ス に 重 大 な 変 更 を も た ら す こ と と な る 。 不 安 定 な 地 域 が 抱 え る 諸 問 題 を 、 軍 事 的 な 手 段 に 訴 え る こ と な く 、 平 和 的 に 解 決 す る た め に は 、 こ の 地 域 に お け る 関 係 諸 国 間 の 軍 事 力 バ ラ ン ス を 保 つ こ と が 極 め て 重 要 で あ る 。 こ の た め に は 、 わ が 国 独 自 の 防 衛 力 の 整 備 ・ 近 代 化 の 推 進 に 加 え 、 グ ロ ー バ ル な 米 軍 の 再 配 置 の 動 き に 連 携 し た こ の 地 域 に お け る 米 軍 の プ レ ゼ ン ス を 確 保 す る と 共 に 、 関 係 諸 国 と の 軍 事 協 力 の 体 制 を 見 直 す こ と が 今 後 益 々 重 要 と な ろ う 。 参 考 文 献 1. 防衛白書、2004∼2005 年版 2. Annual Report to Congress;
The Military Power of the People’s Republic of China 2005 3. National Defense Report, Republic of China 2004
4. 読売新聞 5. 朝日新聞