1
世界最速の中国高速鉄道「復興号」に乗車
梅雨時期の鬱陶しい気候の上海を離れ、梅雨のない北京を 4 年ぶりで訪ねた。私 が所属する上海での混声 4 部コーラスの定期演奏会も終了し、一息ついた 7 月中旬、上 海虹橋空港から北京第一空港まで 1074 ㎞、飛行機で 1 時間半のフライト。しかし、当日 は北京の空港付近に雷発生で、フライトが 3 時間遅れ、午後 4 時に北京のホテルチェッ クイン予定だったのが、夜の 7 時過ぎになってしまった。20 数年付合いがある北京の切 手収集の老朋友(68 歳)李さんと久しぶりに再会。近くのレストランで、中国の諺『酒 逢知己千杯少』(知己と逢えば、千倍の酒も少なし)通り、冷たい『燕京』ブランド (流石、北京は『青島』ビールではなく、この『燕京』が主流)の「啤酒」(『纯生』 ドラフトビール)を水代わりに、雑穀物の蒸 留酒・アルコール 53 度の「白酒」(『小糊涂 仙』500cc)を二人で飲んだ。酒の肴は「烤羊 腿」(羊の脚の丸焼き)、羊の肉も美味し く、切手の話に花が咲き、酒はいくらでも飲 める、結局 12 時過ぎまで二人で、「白酒」1 本とビールは 8 本飲んだ。 翌日二日酔いはなく、頭もすっきり、夕方 5 時から、1970 年、1980 年代、私が北 京に駐在した友好商社時代の運転手の張さん(定年退職、63 歳)も加わり、三人(伊藤 は 73 歳)で又、「白酒」で「乾杯」。酒の肴は、北京名物「北京烤鸭子」(北京ダック の丸焼き)、話は尽きなくこれまた、10 時頃まで、「白酒」2 本(持参の『五粮 液』1 本と他のブランド 1 本)とビール 10 本を飲んだ。中国は一般的にレストラ ンに酒類を無料で持参し飲む事が出来る ので、酒好きには非常に助かる。しか し、一番若い張さんは酔いつぶれ、起き2 上がれない、転んで目の上額を打ち出血した。幸い酷くはなかったが、タクシーが捉ま らず、仕方なく私のホテルへ連れて行って、彼は翌朝まで熟睡。 三日目は、元中国工商銀行勤務 のご夫婦に『天壇』南門直ぐ側にあ る羊肉のシャブシャブ(中国語では 「涮羊肉」)で有名な「南門涮肉」 本店で本場マトンのシャブシャブを ご馳走になった。ご夫婦は酒を飲ま ないので私一人がはやり『燕京純 生』を飲んだ。この店は 1994 年創設 で、元々「宏源涮肉」と言われ、今 や北京だけで 6 店舗、他に上海の中 山公園店と海南省の三亜店がある。 当初は冷凍肉を薄く切ったロール状 のものが主だったが、20 年程前から新鮮な肉のスライスも提供する様になった。肉の中 で特異な「羊腱子肉」と言う肉があり、必ずしも一番良い肉ではないが、歯ごたえがあ る腱肉で、この店の伝統的な人気肉になっている。シャブシャブ鍋は中国独特の銅で出 来た尖がり棒の形をしたもので、高級店で使用しているは高価な景泰蓝(琺瑯引き或い は七宝焼き)で青色の大理石テーブルと色合いがマッチし、見た目も綺麗との事であ る。燃料には昔は木炭だったが現在は燃料油を使用。この他に「烤烧饼」(焼き胡麻饅 頭)が美味しい。三人で肉 1.5 ㎏程食べ、お腹一杯。 北京最後の四日目は午前中、二十数年ぶりに 天安門広場に行ってみた。真夏を思わせる気温で 30℃以上、しかも入場するのに安全検査場が厳し く、人の山、汗をかきながら 30 分以上並び、漸く 毛沢東記念堂の脇から入ることが出来た。何度来て も広いなーと思わされる。色々な人達が思い思い、 天安門をバックに記念写真を撮っていた。私が最初 に天安門広場に入ったのは 51 年前、学生友好訪問 団で北京に来た 1968 年 8 月である。1973 年に友好 商社の駐在員になって以来これまで何度来た事か? 北京を訪れるお客さんのお供で、北京観光で必ず訪 れる場所は、万里の長城とこの天安門広場であっ た。上海に戻るのが夕方の列車なので、精華大学に勤める、30 代の青年と北京南駅の近 くで、遅い昼食をしようと思ったが、北京南駅は新しく出来た為か、駅内にあるレスト ランはファーストフードばかり、しかも駅周辺にも適当な所がなく、仕方なくタクシー で 10 分ほど行ったレストランで、唐辛子とカエルのブツ切り炒め物を酒の肴に又燕京ビ ールを飲んだ。 こうして北京で友人と酒漬けの旧交の 4 日間はあっという間に終了。上海に戻るの は、飛行機ではなく、高速鉄道で帰ることに決めていた。鉄道乗車マニアの私は、北
3 京・上海間に高速鉄道が正式に運行された初日、今から丁度 9 年前、2011 年 6 月 30 日 に、その始発列車に乗車した。その旅行記は私の「中国便り」No.49.で発表済みですの で、これを今回同送付します。それと比較しながら下記をご覧ください。 中国の駅はどこもそうで あるが、飛行場と同じ様に、 駅の待合室に入るのに先ず身 分証明書(外国人はパスポー ト)と切符の照合検査があ り、それから荷物と身体の安 全検査がある。プラットフォ ームへは出発時刻の 20 分~30 分前にならないと入れてくれ ない。18:30 に改札が始ま り、各車両の入り口には女性乗務員が笑顔で迎えてくれる。私は自分の席を確認し、 “復興号”の先頭車両の写真を撮る為下車、真っ赤な線がきれいな洒落た先頭である。 運転席がある第一車両は、ビジネスクラス(“商務”1748 元)横 3 座席。2 両目は、横 2 席、2 席の 1 等車(933 元)、私が乗車した車両は 6 号車の 2 等席(553 元)車輛で、 横 3 座席と 2 座席の前から 4 列目の窓際の席を予約していた。乗客は 8 割位で、私の隣 は空席で上海まで、ゆっくりと列車の旅が出来た。 かすかに夕日が残る北京南駅を丁度 19 時出 発した 16 両編成の「G17」号“復興号”はゆっ くりと上海にむかって滑り出した。私がなぜこ の「G17」を選んだかというと、それは、北京上 海間、1 日 1 本しかない最短乗車時間の 4 時間 18 分だからで、夜 7 時に北京を出発しても、11 時 18 分には上海虹橋駅に着くからである。次に 短い時間は 4 時間 28 分、4 時間 32 分と約 4 時間半である。しかも上海の地下鉄営業時 間は金曜日と土曜の夜だけは 1 時間延長になり最終電車が 11 時 58 分と悠々と間に合う からである。中国で一番運行が頻繁な北京上海路線での運行時間は 9 年前の「和諧号」 の5時間 2 分から今回の“復興号”では 4 時間 18 分に短縮された。料金は 555 元が 553 元(約 9000 円)と逆に 2 元安くなっている。 列車の速度は徐々に上がり、 200 ㎞、300 ㎞、350 ㎞と 15 分も しないで最高速度まで達する。時 速は車輛両端の電子掲示板に表示 される。車内アナンスも少なく、 静かに睡眠も出来る。車窓は段々 暗くなり、スピードが速いのと、
4 民家が少ない田んぼや畑の中を走行する ためか、何も見えない。持参したビール を飲みながら摘まみを食べるか、携帯ス マフォをチェックする位、時々車内販売 員が台車を押しながら販売に来る、弁 当、飲み物、おつまみ等大概のものがあ るので、何も持参しなくても、食べ物に 困ることはないし、支払いは現金がなけ れば、スマフォの”微信”(Wechat)で支払いが出来、非常に便利である。清掃員が 1 時間置き位にゴミ集めに来る。沿線のお土産屋や“復興号”の模型を売りに来る。全長 1300 強㎞の途中には殆どトンネルがないので、日本の新幹線の様な耳鳴りもしない、カ ーブも大きいので横揺れは殆ど感じない。終点の上海虹橋駅迄、途中停車は南京南駅一 つだけで 22:13 到着、停車時間も僅か 2 分のみ、上海虹橋駅には定刻の 23:18 より早い 23:15 頃到着。従って単純計算だと全乗車時間 4 時間 18 分から途中の停車時間 2 分を 引いた 4 時間 15 分で総距離 1318 ㎞を割ると、平均時速は 310kmである。 9 年前は中国新幹線列車の称号を「和諧号」(協調号)型式 CRH(China Railway High-speed)と言っていたが、現在は「復興号」型式 CR(China Railway)に変わって いる。この“復興号”称号は 2017 年 6 月 25 日、正式に命名され、同 26 日から北京上海 間双方方向で運転が始まった。これは中国鉄道総公司が筆頭になってこの数年独自に研 究開発し、全部自主設計・製造したもので、最高時速は 400 ㎞に達し、完全な自主知的 所有権を持つ世界の先端を行く高速列車で、世界的に有名な日本の新幹線(運行速度 300 ㎞)及び、フランスの TGV 高速鉄道(運行速度は 320 ㎞)よりも速い。 従来の“和諧号”より色々な面で優れており、特に運行エネルギー消耗を大幅に減 少させ、使用年限を和諧号の 20 年を超え 30 年に延ばした。CR400/300/200 と 3 種類に 分類され、数字は最高時速を表し、それぞれ平均時速は 350km、250km、160km で高速鉄 道(『高鉄』)、快速鉄道(『快鉄』)、『城際』(都市間を繋ぐ近距離)鉄道(城鉄)に 対応している。 “復興号”の初期の 2 つの型式は“藍海豚”(青イルカ)の CR400AF と“金鳳凰” (金の鳳凰)の CR400BF だった。復興号 CR400 系は最高時速が 400 ㎞で通常は 350 ㎞で ある。平均時速 350 ㎞の復興号と従来の和諧号の CRH380 と比較すると、総エネルギー消 耗比率が 10%下がり、復興号の速度が 300 ㎞から 350 ㎞に上がった時のエネルギー消耗 は概算で 20%~30%増加するだけである。2018 年 7 月 1 日から全国の鉄道で新しい列車 運行の実行に伴い、16 両編成の“復興号”高速鉄道が初めて運行を始められ、先ず 8 月 1 日に北京天津間の高速列車は全部“復興号”に変更した。北京上海間高鉄の旅客流量 は中国全体の 1/6 以上で、沿線の経済能力と需給力の増加に合わせ、2018 年 9 月 21 日 から北京上海間高鉄での“復興号”は 350 ㎞速度運行に高められた。
5
北京と上海間には「京沪高速鉄路」(Beijing-Shanghai High-speed Railway) (『京』は北京の略称、『沪』は上海の略称で、通常『京沪高鉄』)と言う高速鉄道、所謂 中国版新幹線があり、一般的には列車番号の頭に”G” 字をつけ、 簡単に『高鉄』と呼 んでいる。全長 1318 ㎞、この間に 24 の駅があり、設計最高時速は 380 ㎞であるが、現 在の運行最高時速は 350 ㎞である。「京沪高鉄」は北京市、天津市、河北省、山東省、安 徽省、江蘇省、上海市の 3 特別直轄市と 4 つの省を貫く高速鉄道で、この間に 23 の停車 駅と 1 つの連絡駅がある、北から駅名は、北京南、廊坊、天津西(連絡駅で通常は停車し ない)、天津南、滄州西、徳州東、済南西、泰安、曲阜東、滕州東、棗庄、徐州東、宿州 東、蚌埠南、定遠、滁州、南京南、鎮江南、丹陽北、常州北、無錫東、蘇州北、昆山 南、上海虹橋(上海)である。 現在は片道、毎日全部で 45 列車運行しており、北京南駅 の始発車は;北京南⇒上海虹橋 6:36⇒12:40、北京南⇒上海 7: 00⇒11:40 で、最終車は;北京 南⇒上海 19:08⇒23:40,で、 最短乗車時間は;北京南⇒上海 虹橋 19:00⇒23:18(『G17 号』) の 4 時間 18 分である。同じよう に上海から北京へも毎日 45 列 車あり、始発;上海虹橋⇒北京 南 6:26⇒12:29、上海⇒北京 南 7:00⇒11:38, 最終;上海虹橋⇒北京南 19:00⇒23:18 。従って片道、約 18 分に 1 列車が運行されている計算になる。 ビジネスクラス最前列と運転席
6 和諧号と復興号の車両内の主な違いは下記の通り; 1.WiFi の有無;和諧号にはない が、復興号には全車両についていて 無料で使用できる 2.充電ソケットの設置数;和諧号 では横5列席に 2 つ、復興号では横 2 列席に 1 つ、3 列席には 2 つ。 3.座席間距離;和諧号の 2 等席の 距離は、0.99m、1 等席は 1.06m 復興号の 2 等席の距離は、1.02m、1 等席は 1.16m 4.座席の空席状況表示灯;和諧号にはなし。復興号では座席の上の荷物棚の下に表示 灯があり、赤は販売済み、黄色は販売中(人が座ってなくても途中駅から指定席とな る)、緑色は予約なし(空席)。 中国の高鉄には、自由席車輛がなく、全てが座席指定“有座”車輛である。しかし 車輛毎にある一定の数量(無制限ではないので日本の様に乗車率 200%という事はな い)立見席承知席(“無座”)として販売している。しかし料金は“有座”と同料金で この切符がないとプラットフォームに入れない(1 等席でも同様)。車両の中に入り、 人が座ってなければ座って良く、座席指定券を持っている人が来ればその人に譲る。従 って復興号のこの座席有無表示灯は、“無座”者にとっては非常に便利で有効である。 2019 年 7 月 26 日 伊藤俊彦 ビジネスクラス