食品添加物の安全性と
安全確保のしくみについて
内閣府食品安全委員会事務局
平成27年11月
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食の安全・安心シンポジウム(平成27年11月25日):滋賀県◆ 食品の安全を守るしくみ
◆ 食品安全委員会とは?
◆ 食品の安全性の基本的考え方
◆ 食品のリスクについて
◆ 食品添加物ってどんなもの?
◆ 食品添加物のリスク評価について
目 次
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食品の安全を守るしくみ
考え方
○国民の健康保護の優先
○科学的根拠の重視
○関係者相互の情報交換
と意思疎通
○政策決定過程等の透明
性確保
方法
○「リスク分析」の導入
○農場から食卓までの一貫
した対策
世界各国の経験から、次のような考え方や手
段が重視されるようになった。
2003年、国際食品規格委員会(Codex, FAO/WHO)
食品の安全性確保についての国際的合意
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【基本原則】
○消費者の健康保護の最優先
○リスク分析の導入
(科学的根拠の重視)
○食品安全基本法の制定
○食品安全委員会の設置
(平成15年7月)我が国の食品安全行政のあり方
手段
○農場から食卓まで
(フード
チェーン
)の一貫した対策
○リスク分析の導入
後始末より未然防止
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食品安全委員会とは?
12専門調査会
企画等
(企画・緊急時対応・リスクコミュニケーション)
化学物質系:農薬、添加物など
生物系: 微生物・ウイルスなど
新食品系:遺伝子組換え食品など
専門委員:約200名
食品安全委員会は
7人の委員
から構成。
食品安全
委員会委員
事務局
7名局長、次長、総務課、情報・勧告広報課、
評価第
1課、評価第2課、
リスクコミュニケーション官、評価情報分析官
食品安全委員会の構成
7
食品安全委員会
リスク評価 ・ハザードの同定 ・ADIの設定 ・リスク管理施策の評価 厚生労働省(リスク管理) ・残留基準値(MRL)の設定 ・検査、サーベイランス、指導 等 ・農薬使用基準の設定 ・動物用医薬品使用基準の設定 ・検査、サーベイランス、指導 等 農林水産省(リスク管理) 消費者庁 ・アレルギー 等の表示 等リスク
コミュニケーション
関係者全員が意見交換し、 相互に理解を深める 諸外国・ 国際機関等 情報収集 ・交換 評 価 結 果 の 通 知 評 価 の 要 請 環境省 ・環境汚染物質 の基準の設定 等各省庁との連携
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食品の安全性の基本的考え方
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食品の安全
◆食品が「安全である」とは
「予期された方法や意図された方法で
作ったり、食べたりした場合に、
その食品が
食べた人に害を与えないという保証」
(Codex「食品衛生に関する一般原則」
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キャッサバ
キャッサバ
青酸化合物
商品化されている大果系トマト
トマトの原種
トマト野生種
ソラニン
1cm 調理の時に除去 育種で低減化されている 加工の時に除去どんな食品も絶対安全とはいえない
トマチン
不 足
適 量
過 剰
ビタミンA
(必須栄養素)
夜盲症、
感染症に対する
抵抗力の低下
※1
600-2,700㎍
RAE/日
(成人男性)
※2
全身の関節や骨の痛み、
皮膚乾燥、脱毛、
食欲不振
※1
水
(生体に必要)
脱水症状
水中毒
(頭痛、嘔吐、痙攣等:
5時間で約8
リットルを飲み、
死亡した例あり。)
食品の安全性は量で決まる
出典:※1 ファクトシート(食品安全委員会) ※2 日本人の食事摂取基準(2015年版)推定平均必要量∼耐容上限量(18∼69才)13
摂取量
NOAEL
無毒性量(動物実験の数値)
可逆的 影響ADI
許容一日摂取量
No Observed Adverse Effect Level
残留農薬基準 食品添加物使用量 1/100 安全係数 不可逆的影響
動物実験の数値を
1/100にする
生
体
影
響
︵
毒
性
︶
どんなものも毒か毒でないかは量で決まる
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試験4 試験2 試験3 試験115
天然由来の方が安全?
「天然だから」、「食経験があるから」、
安全と思われているようだが、天然由来の
方が安全性が高いというわけではない
パラケルスス (スイスの医学者、錬金術師、1493−1541)“全ての物質は毒
であり、薬であ
る。量が毒か薬
かを区別する”
例えば、医薬品は
適量を守れば
“良薬”
適量を過ぎれば “毒薬”
大事なことは毒性の限界値の見きわめ!
食品のリスクについて
−危害要因(ハザード)とリスク−
リスクとは??
食品中にハザードが存在する結果として生じる健康へ
の悪影響が起こる確率とその悪影響の程度の関数
実際にはハザードの毒性とハザードの
摂取量によって決まる
ハザードとは??
ハザード(危害要因)
健康に悪影響をもたらす可能性を持つ食品中の生物
学的、化学的または物理学的な物質・要因、または食
品の状態
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有害微生物等
腸管出血性大腸菌O157
カンピロバクター
リステリア
サルモネラ
ノロウイルス
異常プリオンタンパク質
等
意図的に使用される
物質に由来するもの
農薬や動物用医薬品の
残留
食品添加物
等
加工中に生成される
汚染物質
アクリルアミド
クロロプロパノール 等
環境からの汚染物質
カドミウム
メチル水銀
ダイオキシン
等
食品中の様々なハザードの例
物理的
危険要因
放射性物質
等
その他
健康食品
サプリメント
等
自然毒
きのこ毒
ふぐ毒
等
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食品添加物ってどんなもの?
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食品添加物は、食品衛生法では、次のように定義され
ています。
(食品衛生法第4条第2項)
添加物とは、食品の製造の過程において又は食品
の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸
潤その他の方法によって使用する物
食品添加物の定義
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食品添加物はどんなものに使われているの?
○食品の形を作る
例:豆乳を凝固させて豆腐を作るための豆腐用凝固剤
○食品に独特の食感を持たせる
例:ゼリーやプリンの食感を持たせるゲル化剤
○食品の味をよくする
例:甘味料、酸味料、苦味料、うま味などをつける調味料、香料
○食品の品質を保つ
例:殺菌料:加工食品製造の際、原材料に付着している微生物を殺菌・除去する
保存料:食品中の微生物やカビの繁殖を防ぐ
酸化防止剤:油などの酸化による変質を防ぐ(油脂の多い食品に使用)
防かび剤:果物でのカビの発生を防ぐ(主にかんきつ類に使用)
日持向上剤:保存料や酸化防止剤ほど効果が強くないが、短期間、
品質を保つ目的で使用
○食品の栄養成分を補う
例:強化剤のビタミン類、ミネラル
等
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ヨーロッパでは、昔から「岩塩」を使って
ハムやソーセージを作っていた
岩塩を使うと、おいしそうな色になって風味
が良くなるだけでなく、食中毒が起きにくくなる
ことを、昔の人は経験から知っていた。
(岩塩には硝酸塩が含まれている)
理由は?
食品添加物の歴史
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日本では、「食品衛生法」で次のようなルールが定められています。
使用できる添加物
は?
→原則として厚生労働大臣が指定したものだけです。これは、天然物であるかどうか に関わりません。未指定の添加物を製造、輸入、使用、販売等することはできませ ん。 (ただし、「既存添加物」、「天然香料」、「一般飲食物添加物」は例外)品質や使用量
は?
→食品添加物には、純度や成分についての規格や、使用できる量などの基準が定め られています。食品への表示
は?
→原則として、食品に使用した添加物は、すべて表示しなくてはなりません。表示は、 物質名で記載され、保存料、甘味料等の用途で使用したものについては、その用 途名も併記しなければなりません。表示基準に合致しないものの販売等は禁止さ れています。 なお、食品に残存しないもの等については、表示が免除されています。食品添加物に関する規制
(厚生労働省ホームページより抜粋)24
食品添加物の種類
種類 定義 例 品目数※ 備考 指定添加物 食品衛生法第10条に基づき、 厚生労働大臣が定めたもの ソルビン酸、キ シリトールなど 449品目 既存添加物 平成7年の法改正の際に、我 が国において既に使用され、 長い食経験があるものについ て、例外的に指定を受けること なく使用・販売等が認められた もの。既存添加物名簿に収載 クチナシ色素、 柿タンニンなど 365品目 安全性に 問題があ るもの、使 用実態の ないもの は消除 天然香料 動植物から得られる天然の物 質で、食品に香りを付ける目的 で使用されるもの バニラ香料、カ ニ香料など 約600品 目 指定制度 の対象外 一般飲食物 添加物 一般に飲食に供されているも ので添加物として使用されるも の イチゴジュース、 寒天など 約100品 目 ※平成27年9月18日現在の品目数 (厚生労働省ホームページより)食品添加物のリスク評価について
危害要因は何か
動物実験から有害作用を知る
動物実験等から無毒性量を推定する
安全係数(不確実係数)を決める
許容一日摂取量(ADI)を設定する
リスク評価はどのように行われるのか
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無毒性量
動物に有害影響が 認められない 最高投与量100
1
100分の1に
安全係数
許容一日摂取量
(
ADI)
ネズミやイヌなど複数の 動物で色々な毒性の 試験をして求めたもの人が一生の間、
毎日取り続けても
健康に影響しない量
ヒトがある物質を毎日一生涯にわたって摂取し続けても、
現在の科学的知見からみて健康への悪影響がないと推定される
一日当たりの摂取量のこと
許容一日摂取量とは
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A D I N O A E L 摂取量
健
康
影
響
安全係数 (1/100) 許容一日摂取量 無毒性量 中毒・ 致死領域 大 大 厚生労働省 添加物の 使用基準 添 加 物 検出限界値 食品中の 使用基準値 ADIを超えない ように基準を定める28
食品中の添加物と基準値の関係
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リスク評価の具体例:
サッカリンカルシウム及びサッカリンナトリウム
●甘味料として使用される
●リスク評価に使用した安全性試験
遺伝毒性、反復投与毒性、発がん性、生殖発生毒性等
●試験データから分かった無毒性量
380 mg/kg 体重/日(サッカリンとして)
●安全係数(不確実係数)
100
●
サッカリン類のグループとしての許容一日摂取量(ADI)
3.8 mg/kg 体重/日(サッカリンとして)
●食品添加物の使用基準は、厚生労働省が決める。
●厚生労働省が国民健康・栄養調査などから各食
品の摂取量を調べ、それに基づいて、食品添加
物の摂取量を推定する。
●食品添加物の推定摂取量が、許容一日摂取量
(ADI)を大幅に下回るように考慮して、食品添加
物ごとに使用基準を定めている。
厚生労働省の調査(平成18・19年)30
食品添加物の使用基準はどうやって決めるのか
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食品添加物をどのくらい食べているのか?
食品添加物の種類 (mgADI/kg体重 /日) 1人あたりの 1日摂取許容量 (日本人の平均体重 58.6kgの場合) (mg/人/日) 日本人1人 あたりの平均 1日摂取量 (mg)対ADI比
(%)
保存料 ※1 安息香酸 5 293 1.1260.38
甘味料 ※2 サッカリン類 (サッカリンとして) 3.8 223 0.3870.17
アスパルテーム 40 2344 0.0190.001
アセスルファムK 15 879 2.4120.27
着色料 ※1 赤色102号 4 234 0.0250.01
黄色4号 7.5 440 0.2230.27
出典: ※1:「平成24年度マーケットバスケット方式による保存料及び着色料の摂取量調査結果について」(厚生労働省)より ※2:「平成23年度マーケットバスケット方式による甘味料の摂取量調査結果について」(厚生労働省)より○許容一日摂取量(ADI)と1日摂取量との比較
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?
ゼ ロ リ ス ク ?• 食品を含めどんなものにもリスクがある
• リスクのとらえ方は人によって差がある
• リスクを知り、妥当な判断をするために
は努力が必要
科学知識を身につける努力
メディアの情報の正確性を見分ける努力
情報を批判的に読み取る努力
事実と意見、編集の有無、キャスターのイメージ等に影響されていないか あらゆる情報を一度批判的に考えるリスクとつきあうには?
• あるリスクを減らすと別のリスクが増す
リスク間のトレードオフ、リスクとベネフィット
内閣府 食品安全委員会は、食品に含まれる可能性のある農薬や食品添加物などが 健康に及ぼす影響を科学的に評価する機関(リスク評価機関)です。 食品安全委員会や意見交換会等の資料や概要、食中毒等特定のトピックに関する科学的知見等を ホームページに掲載しています。
食品安全委員会
検索 http://www.fsc.go.jp33
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