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「総合的問題解決能力」を育成する 中学校社会科時事問題学習の開発

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Academic year: 2021

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(1)

「総合的問題解決能力」を育成する

中学校社会科時事問題学習の開発

指導教員(附属) 迫

眞也

指導教員(大学) 小原 友行

スーパーバイザー(大学) 草原 和博

科学文化教育学専攻 社会認識教育学専修

M151034 竹内 和也

(2)

発表構成

1,問題の所在

2,問題の確定と検証仮説の修正・設定

3,AR実習Ⅱの概要と授業の実際

4,AR実習Ⅱの成果と課題

5,課題解決実習への示唆

(3)
(4)

「総合的問題解決能力」とは?

=対立軸の基底にある多様な価値観や思想の複数性の存

在を理解し、互いに認め、多様な価値観を前提として,それ

らが共生・共存できる社会構築に向けた問題解決能力

問題解決過程

(1)主体としての態度

(3)対人的技能

(2)多角的な分析・思考力

(5)

「総合的問題解決能力」とは?

(1)問題解決の主体としての態度

問題における自己の立場(意見)を明確にし、他者の意見から自己の考え 方に他者の価値観や見方を反映させつつ解決に向けて取り組む態度

(2)問題に対する多角的な分析・思考力

多様な価値観や視点から問題を分析し、それらの価値を勘案し,解決策を 提示する思考力・判断力

(3)問題解決行動における対人的技能

問題解決のアプローチの中で、協働的に、相手の価値観や意見、利害を 把握することのできる豊かなコミュニケーション能力

(6)

先行研究(時事問題学習)の課題

(1)河原和之「『消費税アップ』と『

TPP参加』の是非を問う」

⇒多様な立場からの意見の提言により、多角的に問題を分析させてい

るが、合理的な解決策の提示まで至っていない

(2)松井克行「問題を克服し,さらに平和な日韓関係を目指して」

⇒解決策を提示しているが,多様な価値観を取り上げていない

(3)高野剛彦「戦争と平和」

⇒解決策を提示しているが,方向性を示したにとどまり,具体的な解決

策創出に至らず,現実の問題として考えにくい

(7)

現実問題として時事問題を捉え,多様な意見や価値観も考

慮しながら,問題の解決策を提示していく思考過程が組織さ

れていない

RQの設定

先行研究における課題

中学校社会科公民的分野において「総合的問題解決能力」

を育成するためには時事問題を取り上げた授業をどのよう

に構成すればよいか?

RQ

(8)
(9)

AR実習Ⅰにおける検証仮説

①時事問題に対する解決策を考えさせるための意見文を

ロールプレイさせる

②協同学習の一手法としてのアナロジカル・ジグソーメソッド

を取り入れる

③意見や価値観をマトリックスなどに図化し,それらを相対

的に捉えさせる

※(2)多角的な分析・思考力に限定して検証

(10)

AR実習Ⅰにおける成果と課題

・(2)多角的な分析・思考力の検証において,仮説の有効性

が示されたこと

成果

・ロールプレイにおける意見や内容が抽象度の高いもので

あったために,具体性に欠ける記述が多いこと

・(2)多角的な分析・思考力の検証だけではなく,(1)問題

解決の主体としての態度・(3)対人的技能の育成に向け

た仮説の修正と検証が必要であること

課題

(11)

検証仮説の修正・設定

ロールプレイにおける意見や内容が抽象度の高いもので

あったために,具体性に欠ける記述が多いこと

課題

史実(実際の出来事)に基づく

ロールプレイを行うこ

とによって,「総合的問題解決能力」を育成することができる

仮説①の修正

(12)

検証仮説の修正・設定

(2)多角的な分析・思考力の検証だけではなく,(1)問題解

決の主体としての態度・(3)対人的技能の育成に向けた仮

説の修正と検証が必要であること

課題

意見や価値観をマトリックスなどに図化し,かつその

マトリックス上に自己の意見を表明させ,他者との意

見調整を実際に行わせること

で「総合的問題解決能力」が育成できる

仮説③の修正

(13)

AR実習Ⅱにおける検証仮説

①史実(実際の出来事)に基づくロールプレイを行う

②協同学習の一手法としてのアナロジカル・ジグソーメソッドを

取り入れる

③意見や価値観をマトリックスなどに図化し,かつそのマトリック

ス上に自己の意見を表明させ,他者との意見調整を実際に

行わせる

※(2)多角的な分析・思考力/(3)対人的技能に限定して検証

(14)
(15)

AR実習Ⅱの概要

【実習期間】

12月1日(火)~12月14日(月)

【実習校】

広島大学附属東雲中学校

【実習クラス】

3年1組・2組

(16)

単元「シリア難民問題を考える」

第1時「なぜ難民が発生するのだろうか?」 難民問題を発生国側と受入国側の視点でとらえ,難民の発生する要因を理解する 第4時「日本での難民受け入れ政策を考えよう」 日本における難民の受け入れの現状を理解し,難民の受け入れに対する賛否を判断 し,多様な意見を考慮しつつ,解決策を考える 第3時「全員が納得できる移民法を提案しよう」 ドイツ国民の立場に立って,他の立場の意見を考慮しながら,留保条件を加えて提案 し,話し合いの中で,解決策としての移民法を考え,提案する 第2時「ドイツ国民として移民を受け入れるべきか?」 移民法(独・2005年)の成立過程における議論の中での難民受け入れに対する意見を 理解し,各立場に立って,難民受け入れの是非を判断する

仮説①

仮説②

仮説③

(17)

1時「なぜ難民が発生するのだろうか?」

①難民問題を発生国(シリア)側と受

け入れ国側の両者の「プッシュ要因」

から難民の発生要因を考えさせ,難

民の置かれている状況を理解させる

(18)

2時「ドイツ国民として移民を受け入れるべきか?」

①「難民受け入れ国」としてのドイツを

取り上げ,

2005年の移民法制定の議

論に着目し,当時のドイツの経済的,

社会的背景などを理解させる

(19)

2時「ドイツ国民として移民を受け入れるべきか?」

②移民法制定の議論の中で,意見の異

なる

4名のドイツ国民として,それぞれ

立場に立って,賛否を判断させる

40人を5人×8班に各立場を2班ずつに

振り分け,エキスパートグループを形成)

(20)

第3時「全員が納得できる移民法を提案しよう」

①移民法の制定に向けて進むドイツ社会

において,

4人の各立場に立って,経済面,

政治面,文化面,人道面の論点について,

自分の立場の意見を理解させる

②反対側の立場の意見を考慮しつつ,留

保条件を考えさせる

(21)

第3時「全員が納得できる移民法を提案しよう」

③ミックスグループにおいて,異なる

立場同士で留保条件を提示しなが

ら,移民を受け入れる際の基準とな

る移民法について,各論点を調整し,

提案させる

(22)

第4時「日本での難民受け入れ政策を考えよう」

①日本における難民の定義や制度,政治的,

経済的状況・背景をドイツの論点と関連させ

て,理解させる

②それをもとに,日本における難民の受け入

れについての賛否を判断し,各論点におけ

る賛否の程度を図に表現させる

(23)

第4時「日本での難民受け入れ政策を考えよう」

③それぞれが考えた自分の意見をもとに,

4人

1班で各論点について話し合いを行い,意見

が対立したグループではお互いが納得でき

る解決策,同意見のグループでは反対の立

場を意見を考慮した解決策を提案させる

(24)
(25)

仮説の検証方法

【検証対象】

①プレテスト(第

1時終了時)

②ポストテスト(第

4時終了時)

➂音声記録(第

4時話し合い時)

プレ・ポストともに「シリア難民受け入れに 賛成か・反対か?」について (1)賛否と根拠 (2)解決策と根拠 を記述

(26)

仮説の有効性①

【仮説①】 史実(実際の出来事)に基づくロールプレイを行うことによって,「総 合的問題解決能力」を育成することができる 【検証対象:ポストテストの記述】 ロールプレイの各立場に与えた視点や意見の内容が根拠として組み込ま れているか 【検証結果】※カッコ外の数字は1組,カッコ内は2組 各クラス40人のうち,組み込まれている生徒は39(39)人であった ロールプレイの中で多くの立場の意見を理解し、自分の意見に反映させ ていることが明らかである

(27)

仮説の有効性②

【仮説②】 協同学習の一手法としてのアナロジカル・ジグソーメソッドを取り入れ ることによって,「総合的問題解決能力」を育成することができる 【検証対象:プレテスト・ポストテストの記述】 アナロジカル・ジグソーメソッドを通して、シリア難民問題に対する多 様な視点から分析・思考できているか 【検証結果】 各クラス40人のうち,視点の数が増えていた生徒は20(24)人いた 問題の賛否を判断する際に、授業内で提示した4つの視点から、分析・思 考している。 一方で,具体性はあるが,意見の現実性や根拠の具体性に欠けている

(28)

仮説の有効性②

視点(0または 1) 視点(2) 視点(3) 視点(4) プレテスト 26 14 2 0 ポストテスト 14 18 5 2 0 5 10 15 20 25 30 視点の数の分布(3-1) プレテスト ポストテスト 視点(0または 1) 視点(2) 視点(3) 視点(4) プレテスト 33 4 2 0 ポストテスト 16 16 9 1 0 5 10 15 20 25 30 35 視点の数の分布(3-2) プレテスト ポストテスト

プレテストとポストテストの記述に含まれている視点の数

の分布が,多くの視点が増加しており,両クラスともに、

多角的に分析・思考し、判断していることがわかる

(29)

仮説の有効性③

【仮説➂】 意見や価値観をマトリックスなどに図化し,かつそのマトリックス上に 自己の意見を表明させ,他者との意見調整を実際に行わせることによっ て,「総合的問題解決能力」を育成することができる 【検証対象:音声記録】 レーダーチャートに図化し,意見を表明させ,他者と意見調整をする話 し合いの中で,調整を狙いとした発言がなされているか 【検証結果】 意見調整を意図とした提示をしていると判断できる班は,記録した3 (2)班のうち,2(2)班あった 意見の調整を図る話し合いが行われている事実が確認できる

(30)

仮説の有効性③

【実際の音声データより(グループ①A, B, C, Dの場合)】 (難民の受け入れについて,A,Cは反対,B,Dは賛成を表明) B:Cさんたちって,難民1人も受け入れん感じ? C:ちょいちょい。 A:俺もちょいちょい。積極的に受け入れるとなると,審査基準が落ちるじゃん。 C:若くて雇用できるやつを受け入れて,おっさんはバイバイ。 おっさんがこれ以上増えたらやばいんで。 B:親がない子供? C:うん,親がない子供は可哀想だから,ちょっと受け入れてあげようかなと。 Cは反対の立場だが,留保条件として,年齢制限を設けて受け入れること を提案している。

(31)

仮説の有効性③

【実際の音声データより(グループ①A, B, C, Dの場合)】 (難民の受け入れについて,A,Cは反対,B,Dは賛成を表明) B:じゃあちょいちょいってさ,(どれくらい?) C:まあ,1000人か,5000人か,2500人ぐらい。 B:万人にはいかんってくらい?じゃあ。 C:万人にはいかんってくらい。 B:5000人くらいかなあ。じゃあ。 A:5000人多くない? (その後,日本の人口などから考えて,5000人で話し合いを終えた。) AやCは反対の立場だが,留保条件として,人数制限を設けて受け入れる ことを提案している。

(32)

仮説の有効性③

【仮説➂】 意見や価値観をマトリックスなどに図化し,かつそのマトリックス上に 自己の意見を表明させ,他者との意見調整を実際に行わせることによっ て,「総合的問題解決能力」を育成することができる 【検証対象:ポストテストの記述】 他者と意見調整をする話し合いの中で,多様な意見との調整を図り,多 様な意見や価値観を踏まえて,記述することができているか 【検証結果】 自己の立場(賛否)と反対の立場の意見を考慮して,意見調整を意図と した提示をしていると判断できる生徒は,27(23)人いた 対立する価値観を内包している社会(状況)において,相互の主張を鑑 み,検討した解決策を提案されている 一方で,問題の争点がズレている解決策の提案も見られた

(33)

AR実習Ⅱにおける成果と課題(成果)

・(2)多角的な分析・思考力/(3)対人的技能を育成する仮

説の有効性が示されたこと

・時事問題の解決に向けた手段として,史実を基にしたロー

ルプレイ教材を開発することができたこと

成果

(34)

AR実習Ⅱにおける成果と課題(課題と要因)

・問題の論点が拡散し,その原因分析と解決策の提示などの思考に

バラつきが見られた

→第1時などにおいて,単元を通した論点を明示しなかった

・具体的な解決策を示せているが,その解決策の根拠が不十分

→時事問題における意見に対する根拠の提示が不十分

・「対人的技能」の成長を図る検証方法が,行われている事実を確

認するに留まる

→音声データの録音のみでは会話の記録に留まる

課題

(35)
(36)

課題解決実習への示唆

・時事問題としての内容編成・題材の選択

①時事問題の困難さ(内容の複雑さ・高度な知識活用等)

②子供の生活に根差した問題

・指導法としてのアナロジカル・ジグソーメソッド

①分割した資料や意見をシンプルに(立場の明確化)

②実生活に向けた「練習試合」として,

子どもに意見を持たせ,意見を教室に取り入れる

解決すべき課題

(37)

【参考文献】

[「総合的問題解決能力」] ・シャンタル・ムフ(石田雅樹 訳)「グローバル化と民主主義的シティズンシップ」『思想』9242001年 ・シャンタル・ムフ著(山崎カヲル・石澤武 訳)『ポスト・マルクス主義と政治:根源的民主主義 のために』大村書店,1992年 ・シャンタル・ムフ(岡崎晴輝 訳)「民主政治の現在」『思想』867号,1996年 [時事問題学習] ・藤原孝章編著『時事問題学習の理論と実践―国際理解・シティズンシップを育む社会科教 育』福村出版,2009年 ・河原和之『100万人が受けたい「中学公民」ウソ・ホント?授業』明治図書,2012年 [検証仮説] ・安斎勇樹 益川弘如 山内祐平「創発的コラボレーションを促すワークショップの活動構成 ―アナロジカル・ジグソーメソッドの効果の検討」『日本教育工学会論文誌』第37号,2013年

参照

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