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次元超解像技術を応用した高解像度パノラマエックス線画像
齊藤 嘉大
§井澤 真希
伏見 千宙
小澤 智宣
高橋 伸年
奥村 泰彦
明海大学歯学部病態診断治療学講座歯科放射線学分野 要旨:ディテクターを 45°傾けて配置し,画素の対角線方向に移動させて画像を採取しながら合成することで,2 次元 方向での超解像画像を再構成する技術が報告されている.この 2 次元超解像技術は従来の XY 座標を 45°回転させた座 標系で成り立ち,その解像度はディテクターのナイキスト周波数の 2 倍であることが明らかにされている.本研究はこの 技術を臨床へ応用すべく,パノラマ撮影系に適用することを目的とした.実験は,臨床で使用されているエックス線発生 装置およびディテクターを用いて,1 軸回転の実験用パノラマ撮影装置を作製.次いで 2 次元の超解像技術をパノラマ適 用するため,曲面断層像の画像再構成アルゴリズムを開発した.またパノラマ撮影装置で超解像技術を成立させるための 要件について,検討を行った.その結果,次のような結論を得た. 1 .次元超解像のパノラマ画像の周波数特性は,画像検出記録媒体のナイキスト周波数の 2 倍のカットオフ周波数を示し た. 2 .2 次元超解像のパノラマ画像は,従来の XY 座標を 45°回転させた 2 次元で成立することが確認された.その周波数 特性は,画像選出記録媒体のナイキスト周波数の 2 倍のカットオフ周波数を示した. 3 .2 次元超解像の臨床応用として,ヒト乾燥頭蓋骨の上顎前歯部を撮影して評価した結果,超解像画像はパノラマ画像 より解像度に優れていることがわかった. 4 .口内法撮影の画像と比較した結果,超解像画像は解像度においてフイルム画像と同等であることがわかった.また粒 状性については超解像画像がフイルムよりも優れていることがわかった. 5 .パノラマ装置での超解像成立には,焦点の半影,パノラマ装置の回転軸ぶれ,被写体の動きの 3 因子が関与すること が推定された. 3 因子について,それぞれ独立して超解像の成立条件を検討すると,焦点の半影幅では 100 μm 以下,回転軸ぶれ幅で は 50 μm 以下,頭部の動きのボケ幅では 100 μm 以下で成立することがわかった. 超解像の成立には 3 因子はそれぞれ独立したものではなく,コンボルージョン積分として関係付けられることが明らか になった. 3 因子による総合のボケ幅を小さく抑えることができれば,超解像画像は口内法に匹敵する画像を得られることが推定 された. 索引用語:デジタルエックス線撮影,超解像,MTF,解像力向上High Resolution Image of Panoramic Radiography
by Applying 2-Dimensional Super-resolution Technique
Yoshihiro SAITO
§, Maki IZAWA, Chihiro FUSHIMI,
Tomonori OZAWA, Nobutoshi TAKAHASHI and Yasuhiko OKUMURA
Division of Dental Radiology, Department of Diagnostic & Therapeutic Science, Meikai University School of Dentistry
Abstract : The twodimensional superresolution technology has been reported. A detector, which was set at a 45 degree angle,
緒
言
医療用エックス線画像の解像度は,エックス線管の焦 点サイズ,画像検出記録媒体(以後,ディテクターとす る)の画素サイズ,焦点・被写体・ディテクターの幾何 学配置の 3 要素によって決定される.超解像技術とは, 撮影系の持つ解像限界を示すカットオフ周波数を超えた 周波数成分の伝達によって,高解像度の画像を形成する 技術である. 一般光学系分野における超解像の理論的な報告1, 2)は 1950 年代初頭から見られるが,エックス線撮影系に応 用できる超解像技術は,1963 年の Lukosz ら3) が最初で ある.その技術は,変調用格子と復調用格子を用いた 2 段階処理法であり,この方法は現在,光ヘテロダイン法 と呼ばれている.一方,医療用エックス線画像分野で は,2003 年に白井ら4) が,回転パノラマエックス線撮影 (以後,パノラマ撮影とする)系に Lukosz らの技術を 応用して解像度の向上を図っている.その報告によれ ば,これまでの解像度を約 1.8 倍に向上したとしてい る. しかし,Lukosz らの超解像技術は 1 次元方向でのみ 成立し,2 次元では成立しない欠点が存在する.さら に,この技術をエックス線撮影系に応用した場合,照射 野の半分を鉛の周波数格子で遮るために感度低下が生じ てしまう.このような問題点が存在することから,光ヘ テロダイン法の技術は現在まで臨床応用されてこなかっ た. 2009 年池ら5) は,ディテクターを撮影中に移動させ て,画像を採取しながら再構成する新しい超解像技術を 発表した.理論と実験による検証から,この技術によっ て従来の撮影系の持つ解像度を 2 倍に向上できると報告 している. 近年,臨床に用いられているディテクターは,画像検 出と画像記録という 2 つの機能を有しており,ディテク ターの画素数と同じメモリー数で最終画像を表示するも のである.しかしながら池らの技術は,ディテクターを 画像検出専用として使用し,画像記録には別に設定した メモリーの大容量を利用している.この方法によってデ ィテクターの画素数よりも大容量の画素数で最終画像を 表示することが可能になった.さらに,画素を鉛格子な どで遮ることがないため,画素全体がそのまま画像検出 に利用できることから,感度低下を起こさない利点があ る.こ の 技 術 Detector Moving and Frame Additional Technique(以後,DEMOT 法とす る)は,デ ィ テ ク タ ーの移動方向,つまり 1 次元方向でのみ画像が成立する 画像再構成法である.2014 年佐藤ら6)は,これまで 1 次元でしか成立しなか
った技術を,2 次元に拡張した超解像技術を発表した. struct the super-resolved image in the two dimensional direction. It has been clarified that this technology is effective in the coor-dinate system created by rotating the conventional XY coorcoor-dinates 45 degrees and that the resolution is twice as high as Nyquist frequency of detector.
The objective of the study is to apply this technology to the panoramic X-ray system with the aim of its clinical application. In the experiment, the clinically used X-ray generator and detector were used to prepare the experimental panoramic X-ray equipment of single axis rotation. Then, the image reconstruction algorithm of curved cross-sectional images was developed to apply the two-dimensional super resolution technology to panoramic radiography. The requirements for practical application of super-resolution technology to panoramic X-ray equipment were also examined. Consequently, the following conclusions were obtained.
1. The frequency response of panoramic image of one-dimensional super resolution showed a cutoff frequency twice as high as Nyquist frequency of image detector medium.
2. It was confirmed that the panoramic image of two-dimensional super resolution was formed in two dimensions created by rotat-ing the conventional XY coordinates 45 degrees. The frequency response showed a cutoff frequency twice as high as Nyquist fre-quency of image selection recording medium.
3. Two-dimensional super resolution was clinically applied to take X-ray images of maxillary anterior teeth of dried human skull. The results demonstrated super-resolved images were better than panoramic images in terms of resolution.
4. When compared with images obtained by intraoral radiography, super-resolved images were equivalent to film images in terms of resolution. Super-resolved images were better than film images in terms of graininess.
Key words : digital X-ray photography, super-resolution, modulation transfer function(MTF),improvement of resolution
───────────────────────────── §別刷請求先:齊藤嘉大,〒350-0283 埼玉県坂戸市けやき台 1-1
この技術の特徴はディテクターの 1 次元移動によって 2 次元の超解像を得ることにある.ディテクターをモデル 化して実験を行い,ディテクターの 1 次元移動で 2 次元 の超解像画像を再構成するアルゴリズムを開発した. その基本技術は,ディテクターを 45°傾けて配置し, 画素の対角線方向に移動させるものである.そして移動 中に多数枚の撮影を行い,移動方向と距離に合わせたメ モリー上の位置に画像を重ねることによって,2 次元の 超解像画像を再構成する.2 次元の超解像は,従来の XY 座標を 45°回転させた座標系で成り立つこと,そし て解像度はディテクターのナイキスト周波数の 2 倍であ ることが理論と実験から明らかにされている.さらに, ナイキスト周波数の 2 倍を超える超解像技術の開発につ いても報告されている6) .これによれば,ディテクター の画素には画像検出に寄与する領域と,画素間の区切り や信号伝達のための配線によって画像検出に不感な領域 が存在する.通常,画素サイズとはこの画像検出に寄与 する領域と不感領域を合わせた,全面積であらわされ る.全画素面積に対する有効受光面積の占める割合はフ ィルファクターと呼ばれる.ナイキスト周波数の 2 倍を 超える超解像技術は,画素中の不感面積形状をソフト上 で処理し超解像画像を合成する技術である.佐藤らはこ の技術を用いれば,理論的に解像限界を無限に延ばすこ とができることを明らかにし,それを実験的に証明して いる6) . そこで本研究は,佐藤らの開発した 2 次元超解像画像 再構成技術をさらに進め,臨床への応用としてパノラマ 撮影系に適用することを目的とした. 実験はまず,臨床で実際に使用されているエックス線 発生装置およびディテクターを用いて,1 軸回転の実験 用パノラマ撮影装置を作製.次いで,2 次元の超解像技 術をパノラマ撮影系に適用するために,局面断層像の画 像再構成アルゴリズムの開発を行った.さらに,パノラ マ撮影装置で超解像技術を成立させるための要件につい て検討した.
材料と方法
1.画像再構成アルゴリズムの開発理論 1 )1 軸回転パノラマ画像の画像再構成アルゴリズム パノラマ撮影による曲面断層撮影の原理を Fig 1 に示 す.ターンテーブルが一定の角速度 ω で回転している とする.エックス線が平行ビームで照射されると,ター ンテーブル上に置かれた被写体内のある半径 r 上の 1 点 が,エックス線束中をよぎる線速度は rω となる.一 方,フィルムの置かれている回転半径を R とし,角速 度を W とする. 被写体である半径 r 上の像は,次の(1)式が成立す る条件において,ボケのない断層像として映し出され る. rω=RW・・・・・・・・・・(1) しかし,実際のパノラマ装置ではエックス線束は必ず 放射状を呈する. つまり Fig 2 に示すように,フィルム上に投影されると きには半径 r 上の 1 点の線速度は,拡大率を乗じた rω (B/A)となる.したがって,フィルム上では(2)式が 成立するときに,半径 r 上の像は鮮明に映し出されるこ とになる. rω(B/A)=RW・・・・・・・・・・(2) 画像再構成のアルゴリズムは,フレーム画像をメモリ ーへ転送する際,(2)式が成立するように送り速度を調 節して曲面断層像を合成するようにした. 2 )1 次元超解像の画像再構成アルゴリズム パノラマ超解像の画像再構成アルゴリズムは(2)式 が成立するように池ら5)の方法にしたがい,ディテクタ ーの画像送り速度を調節して画像再構成を行った.Fig 3に示すように,最初の撮影によってディテクターからFig 1 Algorithm of the panoramic image by the parallel beam
出力された画像データを,ディテクターの画素数の 10 倍のメモリーに記録する.次いで被写体とメモリーの位 置を動かさずに,ディテクターを画素サイズの 1/10 距 離移動して撮影を行う.この画像データをメモリーに記 録するが,このときメモリーでは Fig 3 の最下段のよう に,ディテクターの移動距離合わせて,P1の画像デー タを 1 画素ずれた位置から 10 画素に記録するようにす る.実際には,最初に記録されたデータに以後のデータ を加算する.このようにしてディテクターを 1/10 ずつ 移動と撮影を繰り返し,画像データをメモリーに加算記 録する.10 回の移動で最初の画素 P1の位置が P2に置 き換わることから,それ以後の撮影はこれまでの繰り返 しとなる.したがって,10 回の微小移動で撮影は終了 する.超解像技術はこのようにしてパノラマ画像を作成 する. シミュレータで,ディテクターの 1 画素幅内に入るフ レーム枚数を理論的に計算すると,ターンテーブルの 1 回転を 160 秒とし,被写体の回転半径を 8 cm とすると 9∼10 フレームとなる.このフレーム枚数であれば超解 像は成立すると考えられる. 3)2 次元超解像の画像再構成アルゴリズム 2 次元超解像の画像再構成アルゴリズムは,(2)式を 基にし,佐藤ら6) の報告にしたがって開発を行った. 2.実験材料 1 )パノラマシミュレータの作製 1 軸回転方式の実験用シミュレータを作製した.エッ クス線発生装置に歯科用 CT ファインキューブ E 2(ヨ シダ,東京)のヘッド部(Fig 4)を使用した.エック ス線管には SXR-90-0.2(スペリオルアドバンテック, 東京)を使用し,実効焦点サイズは 0.2×0.2 mm であ る.撮影条件は管電圧 60 kV,管電流 4.0 mA とした.
エックス線ディテクターは Cd-Te Cmos センサ SCAN 300 FPY(OyAFAT, ESPOO, Finland)を使用し(Fig 5), 画素サイズ 100×100 μm,画素数 60×1,300,フレーム レート 300 fps で実験を行った. ターンテーブルは CTN 120 G(日本トムソン,東京) を実験装置に組み込んだ(Fig 6).このターンテーブル はサーボモータ駆動で回転し,最小回転角は 0.198 秒と した.撮影時,被写体を半径 8 cm の円周上に置き,1
Fig 3 Image reconstruction algorithm of the super-resolution
Fig 4 The head of dental cone beam CT
週 160 秒で回転させて実験を行った.撮影系の幾何学配 置は,焦点・ディテクター間距離 80 cm,焦点・被写体 間 距 離 76 cm と し た(Fig 7).拡 大 率 は 1.05 で あ る. シミュレータの全景を Fig 8 に示す. 2 )パノラマ装置 パノラマ装置はベラビューエポックス(モリタ,京 都)を使用した. 3 )口内法エックス線撮影装置 周波数特性測定のため,口内法エックス線撮影装置デ ントナビ(ヨシダ,東京)を使用した.実効焦点サイズ 0.7×0.7 mm,管 電 圧 60 kV,管 電 流 1 mA,照 射 時 間 0.1 秒で撮影を行った.フィルムは Insight Film(Kodak, NY)を使用し,自動現像機に DENT-X(AFP imaging, NY),現像液 RG-D,定着液 RG-F を用いて現像を行っ た. 4 )画像解析用テストチャート 被写体としてスター状テストチャート Type 6(旭光 通商,東京)を使用した. MTF 測定には,鉛エッ ジ マ イ ク ロ チ ャ ー ト R-1 W (マイクロメディカル デバイス,東京)を使用した. 3.実験方法 1 )パノラマ断層像の画像再構成アルゴリズム開発 2 次元超解像法を,臨床で使用されるパノラマ装置に 応用するため,作製したシミュレータで従来のパノラマ
Fig 6 Turn table Fig 7 Geometric arrangement of the simulator
画像の画像再構成アルゴリズム開発を行い,得られた画 像の評価を行った. 作製したシミュレータを使用してテストチャートを撮 影し,従来の画像再構成アルゴリズムを利用して画像を 作成した.臨床で使用されているパノラマ装置から得ら れたテストチャート像と作成した画像とを比較検討し た. 2 )1 次元超解像の画像再構成アルゴリズム開発と周波 数特性の測定 1 次元超解像画像再構成アルゴリズム開発を行い,こ れをシミュレータに適用して超解像が成り立つか否かを 検証した.また周波数特性の測定を行った. シミュレータのターンテーブル回転速度を 80 rps,被 写体の回転半径を 8 cm としてテストチャートを撮影し た.得られた画像データから超解像画像を再構成した. 得られた画像と,従来のパノラマ装置で撮影したテスト チャート画像とを比較した. 周波数特性の測定は,佐藤ら6) の方法に従いエッジ法 で moduration transfer function(以後,MTF とする)を 計測した.シミュレータの拡大率を 1.05 とし,鉛エッ ジを撮影.得られたエッジ像の濃度分布曲線の edge spread function(以 後,ESF と す る)を 微 分 し,line spread function(以後,LSF とする)を求め,LSF のフ ーリエ変換から MTF を求めた. 3 )2 次元超解像の画像再構成アルゴリズム開発と周波 数特性の測定 1 次元移動による 2 次元超解像画像を得るためのアル ゴリズム開発と,その周波数特性の測定を行った. 実験は Fig 9 に示すように,ディテクターを 45°傾け て固定した.その他の幾何学配置は実験(2)と同様と した. テストチャートを撮影して 2 次元超解像画像を再構成 し,この画像と実験(1)で得られたパノラマ画像とを 比較した. 次に,解像度評価として口内法撮影によって得られた テストチャート画像と視覚的な評価を行った.口内法の 幾何学配置は,焦点・テストチャート間距離 20 cm,テ ストチャート・フィルム間距離 3 cm とした.また口内 法フィルムはスキャナーで取り込みを行い,モニター上 で両者を観察した. 周波数特性の測定は実験(2)と同様とし,2 次元超 解像画像から MTF を求めて評価を行った.MTF はエ ッジ法により測定し,従来の垂直水平方向から 45°回転 させた XY 座標で測定した. 4 )超解像技術のヒト乾燥頭蓋骨への応用 ヒト乾燥頭蓋骨の上顎前歯部についてパノラマ撮影を 行い,2 次元超解像画像と従来のパノラマ画像とを比較 した. 2 種類の撮影方法で得られた上顎前歯部の根尖部画像 について,抽出能を比較した. 次に,口内法 2 等分法で同じ部位を撮影し,2 次元超 解像画像と視覚的に比較検討した.
結
果
1.開発した画像再構成アルゴリズムによるパノラマ断 層像 実験用パノラマ撮影装置シミュレータで撮影し,従来 の画像再構成アルゴリズムで得られたテストチャートの 画像を Fig 10 左に,従来のパノラマ撮影装置による画 像を右に示す. テストチャートの画像から,従来の画像再構成アルゴ リズムで得られた画像の解像度は約 5 cycles/mm であっ た.従来のパノラマ撮影装置による画像は,横径が縦径 よりも縮小されて描出されているため,解像度評価は縦 方向のクサビ状格子で行った.結果,従来のパノラマ画 像の解像度は約 3 cycles/mm であった. 両者の画像を比較すると,実験用装置の画像は従来の 画像よりも解像度に優れていた. この結果から,本実験のために作製したシミュレータ とパノラマ像の画像再構成アルゴリズムは,正確に画像 再構成が行われていることを確認することができた.2.1 次元超解像の画像再構成アルゴリズム開発と周波 数特性の測定 Fig 11左は,シミュレータによって撮影した従来法の パノラマ画像を,右は 1 次元方向である X 軸方向に超 解像の成立した画像を示している.左右の画像を比較す ると,両者に差は認められなかった.しかし,Fig 12 に 示す拡大像では,従来法のパノラマ画像ではジャギー現 象の出現によって画像が粗くなることが確認された.超 解像画像では粗さが低減され,格子は高周波数領域まで 解像度が向上していることがわかった.スターパターン カメラ法(JISz 4704, 2005 第 8 項)で求めた両者の解 像限界値は,従来法画像で約 5 LP/mm,超解像画像で約 8 LP/mm であった.両者を比較すると,超解像画像の 方が視覚的にも数値的にも優れていることがわかった. Fig 13はエッジ法によって求めた超解像画像と,従来 法のパノラマ画像の MTF を示している.超解像画像の カットオフ周波数は 10 cycles/mm であるのに対し,従 来法のパノラマ像では 5 cycles/mm であった.超解像画 像は,従来法の 2 倍の解像度を示した.従来法のパノラ マ画像の解像度は,ディテクターのナイキスト周波数の
Fig 10 Test chart image
A : Test chart reconstruction image at simulator
B : Test chart image by conventional method panoramic tomography
Fig 11 1-dimensional super-resolution image of test chart
A : Test chart image by conventional method panoramic tomography B : Test chart image by One-dimensional super-resolution technique
2 倍にあたり,検証実験は理論値と一致していた. 3.2 次元超解像の画像再構成アルゴリズム開発と周波 数特性の測定 Fig 14の左側画像は,2 次元超解像技術によってテス トチャートを撮影し再構成した画像である.この画像は テストチャートの XY 軸の周波数格子を,床面に対し て垂直水平に配置して撮影したものである.画像を見る と水平方向の格子で高周波領域に横に流れる複数のアー チファクトが見られ,水平方向の格子の分解能は垂直格 子よりも劣っていることがわかった.そこで,テストチ ャートを 45°回転させて撮影した画像を Fig 14 右に示 す.この画像では,XY 両方向は同じ解像度であること がわかった.このことから,本技術の 2 次元超解像は従 来の垂直水平方向ではなく,45°回転した 2 次元座標系 で成立することがわかった. Fig 15は,テストチャートを撮影した従来の装置によ るパノラマ画像と 2 次元超解像画像とを比較したもので ある.従来の画像は超解像画像に比較して,解像度が劣 っていることがわかった. Fig 16は,口内法撮影によって得られたテストチャー トのフィルム画像と超解像画像とを比較したものであ る.これをみると,開発した 2 次元超解像パノラマ画像 は,口内法フィルム画像とほとんど同様の解像度を示し ていることがわかった. Fig 17に,45°回転の XY 座標で測定された超解像画 像の周波数特性を示す.XY 軸方向で解像度にはほとん ど差が見られず,9∼10 cycles/mm であった.この結果 は Fig 13 で示した 1 次元超解像の解像度と同じ結果と なった.したがって,記録媒体を 45°傾けて固定し,こ れを対角線方向に移動することで,2 次元の超解像が成 立することがわかった. 2 次元超解像の解像度は,1 次元の超解像とほぼ同様 にディテクターのナイキスト周波数の約 2 倍を示した.
Fig 12 Test chart by 1-dimensional super-resolution image and conventional method panoramic
to-mography(enlarged image)
A : Conventional method panoramic image B : One-dimensional super-resolution image
Fig 13 MTF of 1-dimensional super-resolution image and
con-ventional method panoramic image A : Conventional method panoramic image B : 1-dimensional super-resolution image
4.超解像技術のヒト乾燥頭蓋骨への応用 ヒト乾燥頭蓋骨の上顎前歯部をパノラマ撮影し,2 次 元超解像画像と従来法のパノラマ画像とを比較検討し た. Fig 18左側画像は,従来法のパノラマ画像を,右側は 2 次元超解像画像を示している.この画像では両者に明 らかな差は見られなかった.両者の拡大像を示した Fig 19では,A に示す従来法の画像は画素が大きくなり, さらに Fig 20-A ではジャギー現象が認められるのに対 して,Fig 20-B に示す超解像画像では根尖部の構造が より明瞭に描出されていた. 口内法撮影によるフィルム画像と 2 次元超解像画像と を比較した画像を Fig 21 に示す.両者を比較すると, 超解像画像は口内法画像と同様に微細構造の描出能に変 わりはないことがわかった(Fig 21-A).さらに拡大像 を比較すると,超解像画像は視覚的な粒状性にも優れて いることがわかった(Fig 22).
Fig 14 2-dimensional super-resolution image(enlarged image)comparison due to the inclination of
the test chart
A : Reconstructed image of the test chart grid was the vertical and horizontal to the floor B : Reconstructed image of the test chart grid was 45°rotated
Fig 15 Comparison of the 2-dimensional super-resolution image and the conventional method
pano-ramic image
A : Conventional method panoramic image B : 2-dimensional super-resolution image
考
察
パノラマ画像には,1960 年代から臨床利用されるよ うになったスクリーン系アナログ画像7-12 と,2000 年代 から本格的に利用されるようになったデジタル系画 像13-15)があり,現在はこの 2 系統の画像が臨床に使用さ れている.デジタル系の出現によってその利点は広く認 められているが,未だアナログ系画像には根強い人気が ある.その最大の理由は,アナログ系画像がデジタル系 画像に比較して解像度に優れるためである16-18) .したが って,よりデジタル系の解像度を向上させることが求め られている.解像度を向上させる一般的な方法として, ディテクターの画素サイズを小さくし,画素数を大容量 にすることが行われてきた.しかし,ディテクターの画 素サイズを小さくすることによって,エックス線に対す る感度低下をきたす問題点が存在する.ディテクターの 感度低下を補正する方法の 1 つに,エックス線量を増大 して撮影する方法があるが,この方法では患者被曝線量 の増大につながり,医療被曝が問題となる時代において は最適化を図ることが重要である.増感紙フィルム系の 感度は光学写真に換算すると,ASA 1,000 以上に匹敵す るといわれている.このことがエックス線フィルムと同 じ感度,分解能を有するディテクターの開発を困難にす る原因の 1 つとなっている. 現在のデジタルパノラマ系の撮影は,ようやく増感紙 フィルム系の感度に近づいている.しかし,パノラマ撮 影に使用されるディテクターの画素サイズは 100×100 μm であり13) ,解像度は未だ増感紙フィルム系の画像に 及ばない現状がある15, 16, 19-21) .したがって,本研究では感 度低下をきたすことなく,撮影系の解像度の向上を図る ことを目的とした. 本研究はこれまで行ってきた超解像技術の臨床応用とFig 16 Comparison of the 2-dimensional super-resolution image and the intraoral radiography image
(enlarged image)
A : Intraoral radiography image B : 2-dimensional super-resolution image
Fig 17 XY-axis direction MTF of the 2-dimensional
super-resolution image at 45°detector arrangement A : X-axis direction
して,パノラマ撮影系に適用するための画像再構成アル ゴリズム開発とその実験を行った. その結果,明らかになった種々の問題点を含めて考察 する. 1.実験用パノラマ撮影装置の作製と画像再構成アルゴ リズム開発 シミュレータで撮影された画像(Fig 10,左)とパノ ラマ装置で撮影された画像(Fig 10,右)とを比較する と,パノラマ装置で撮影された画像は,シミュレータの 画像よりも解像度が劣っていた.これは,シミュレータ の拡大率が 1.05,焦点サイズが 0.2 mm であるのに対し て,パノラマ装置の拡大率が 1.2∼1.3,焦点サイズが 0.5 mm であるため,ボケとして関与する焦点の半影幅 は,シミュレータで 10 μm,パノラマ装置で 100∼150 μm となることが挙げられる.焦点の半影幅が大きくな
Fig 18 Comparison of the 2-dimensional super-resolution image and the conventional method pano-ramic image on dry maxillary anterior bone
A : Conventional method panoramic image B : 2-dimensional super-resolution image
Fig 19 Comparison of the 2-dimensional super-resolution image and the conventional method
pano-ramic image on dry maxillary anterior bone(low-enlarged image at apical part) A : Conventional method panoramic image
れば,結果的に解像度は悪化する22) .これが臨床で使用 されているパノラマ装置の解像度が悪かった原因と考え られた. 2.1 次元超解像の画像再構成アルゴリズム開発と周波 数特性の測定 本実験の目的はまず,1 次元の超解像画像再構成アル ゴリズムを開発し,それをシミュレータに適用して超解 像画像を得ることが可能か否かを検討すること,そして 画像の周波数特性を測定することにある.1 次元の超解 像技術の周波数特性を測定した結果,カットオフ周波数 は 10 cycles/mm であった.この周波数は記録媒体のナ イキスト周波数である 5 cycles/mm の 2 倍にあたり,こ の結果は池ら5)や佐藤らの報告6)と一致する.したがっ
Fig 20 Comparison of the 2-dimensional super-resolution image and the conventional method
pano-ramic image on dry maxillary anterior bone(high-enlarged image at apical part) A : Conventional method panoramic image
B : 2-dimensional super-resolution image
Fig 21 Comparison of the 2-dimensional super-resolution image and the intraoral radiography image on dry maxillary anterior bone(magnification)
A : Intraoral radiography image B : 2-dimensional super-resolution image
て,本実験のために作製したシミュレータならびにパノ ラマ画像の画像再構成アルゴリズムは正しく機能してい ると判断された. 3.2 次元超解像の画像再構成アルゴリズム開発と周波 数特性の測定 Fig 14に示す 2 次元超解像のテストチャートの拡大像 を見ると,Y 軸方向の格子(水平方向に置かれた格子) の解像度が X 軸方向よりも劣っていることがわかった. 一方,Fig 14 の右側画像に示す格子を 45°回転させた XY 方向では,2 次元方向に超解像の成立および解像度 の向上が認められた.つまり,Fig 23 に示すように,超 解像は画素の各辺に直行する方向に成立する.したがっ て,テストチャートの格子を垂直水平に配置すると,水 平方向の格子は画素の下辺と角度に差がないため,超解 像成立が困難になったと考えられる.このことは佐藤ら の 2 次元超解像技術が,従来の XY 軸から 45°回転さ せた方向に成立するという報告6) と合致する. 池ら5) は,超解像画像では等高線状の縞模様が見られ たと報告しているが,本実験で開発したアルゴリズムで は再構成画像に等高線による縞模様のアーチファクトは 確認されなかった.池らの方法は 2 次元画像のうちの 1 次元超解像の画像であるのに対し,本実験では 2 次元超 解像に拡張したことで,アーチファクトが出現しなかっ たものと考えられる.さらに,池らの実験で用いたディ テクターと本実験のディテクターが異なること,また平 面像に対して曲面断層像の再構成の違いなどが考えられ る.これらの違いが縞模様のアーチファクト出現の有無 に関与しているものと思われる. テストチャートを撮影した口内法フィルム画像と超解 像画像の解像度を比較すると,ほとんど同じ解像度を示 した(Fig 16).口内法に用いるノンスクリーンフィル ムの解像度は 20 cycles/mm 前後である7) が,実際の撮影 では,焦点サイズが 0.7×0.7 mm の管球を使用し,拡大 率は 1.15 であることから,この条件での焦点の半影幅 はフィルム上で 105 μm となる.一方,超解像画像では 画素サイズが 100 μm に焦点の半影幅 10 μm がコンボル ージョン積分された幅になることから,両者のボケ幅は ほとんど同じになり,解像度に差がでなかったものと考
Fig 22 Comparison of the 2-dimensional super-resolution image and the intraoral radiography image
on dry maxillary anterior bone(low-enlarged image at apical part) A : Intraoral radiography image
B : 2-dimensional super-resolution image
Fig 23 Image established theory on XY coordinate system of the 45°detector
えられる. 4.超解像技術のヒト乾燥頭蓋骨応用 Fig 19に示した画像の拡大像を比較すると,従来のパ ノラマ画像では画素が大きく目立つために診断能が低下 してしまうが,超解像画像では画素の粗さは出現するこ となく,根尖部の微細構造がより明らかになった. 拡大像で画素の粗さが出現しない理由として,画像再 構成におけるメモリー数を従来の 10×10 倍に設定して いることにある.したがって,拡大率を 10 倍にしても 理論的には画像の粗さが出現しないことになる. Fig 20に示した口内法撮影のフィルム画像との比較で は,超解像画像はフィルム法と同等の解像度を示し,視 覚的な粒状性に優れていることがわかった. エックス線画像の粒状性はポアソン分布23)に従うこと から,粒状性の最も簡便で効果的な低減方法は画像加算 法である.このことから超解像技術はフレーム画像を加 算するため,粒状性の改善につながると考えられる. 以上の結果,本実験で開発した 2 次元超解像技術は臨 床に応用できることが示唆された.解像度は多田ら24) の 研究に見られるように,エックス線コントラストによっ て左右され,また内田25) や金森ら26) も指摘しているよう に,粒状性によっても解像度は影響される.また粒状性 はエックス線量によって左右されることが知られてい る27-31) .今後,超解像技術の解像度を真に生かすには, 粒状性の問題とエックス線コントラストの問題の解決も 必要と思われる.
結
論
2 次元超解像技術を臨床のパノラマ撮影に応用するこ とを目的に,実験用の 1 軸回転のパノラマ撮影装置を作 製し,2 次元超解像の画像再構成アルゴリズム開発を行 った.そして,撮影された 2 次元超解像パノラマ画像に ついて種々の検討を行った結果,次の結論を得た. 1 .1 次元超解像のパノラマ画像の周波数特性は,画像 検出記録媒体のナイキスト周波数の 2 倍のカットオフ 周波数を示した. 2 .2 次元超解像のパノラマ画像は,従来の XY 座標を 45°回転させた 2 次元で成立することが確認された. 3 .2 次元超解像のパノラマ画像の周波数特性は,画像 選出記録媒体のナイキスト周波数の 2 倍のカットオフ 周波数を示した. 4 .ヒト乾燥頭蓋骨の上顎前歯部を撮影して評価した結 果,2 次元超解像画像はパノラマ画像より解像度に優 れていることがわかった. 5 .口内法撮影の画像と比較した結果,超解像画像は解 像度においてフィルム画像と同等であることがわかっ た.また粒状性については超解像画像がフィルム法よ りも優れていることがわかった.引用文献
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