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心理学研究法としてのウェブ調査

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Academic year: 2021

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DOI: http://doi.org/10.14947/psychono.39.4 

心理学研究法としてのウェブ調査

三 浦 麻 子

大阪大学大学院

Web survey as a psychological research method

Asako Miura

Graduate School of Human Sciences, Osaka University

This article explains the basic features of survey, which is one of the major research methods in psychology, its pros and cons, and the points to be considered when conducting it. In particular, it focuses on Web surveys, which are becoming more common nowadays. It explains how the data obtained by Web surveys from broader generals are likely to be different from those obtained by conventional and convenient method, which inviting people close to the researcher, such as university students, to participate. The author hopes that this paper will provide the readers with a basic knowledge of web research and help them to select appropriate situations for survey data collection from among the various phases of psychological research.

Keywords: Web survey, psychological research method, pros and cons, satisfice

本稿では,心理学の主要な研究法のひとつである調査 について,基本的な特徴と,それがもたらす利点と問題 点,そして,実施の際に留意すべき点について解説す る。特に,今般よく行われるようになっているウェブ調 査に焦点をあてて,これまでの心理学研究で典型的によ く用いられてきた実施形態,すなわち,大学生など研究 者の身近な人々に参加を募る方法との相違点を解説す る。本稿の読者が,心理学研究に存在する多様なフェー ズのうち,調査によるデータ収集に適した場面を適切に 選択するための基本的知識を修得できることを期待す る。 まず,一般的な「調査」の定義は広く「物事の事情や 詳細を明らかにするために調べること」であり,調べる 手段は定義されていない。この意味においては,調査は 研究とほぼ同義であると言ってもよいだろう。しかし, 本稿で述べる調査は,より狭義の「参加者に言葉を用い てさまざまな質問を投げかけ,それに対する主観的な評 定である回答(データ)を得る研究法」を指す。投げか けるさまざまな質問項目を集約したものを調査票 (ques-tionnaire)と呼ぶ。対面や電話などによるインタビュー 形式で行われる場合もあるが,より低コストで多くの データを得るために調査票を紙に印刷・配布し,回答の 記入を求めることがよくある。そのため,慣習的に「質 問紙」と称されることも多い。 調査票をウェブ上に構築して実施するのがウェブ調査 である。単にウェブ調査と言う場合は,実験とは異な り,関心のある変数を研究者が外生的に操作せずに測定 することが多いが,ウェブ実験(cf: 黒木,2020)でも, 従属変数の測定に際して調査票を用いてデータを得るこ とはよくある。何をどのように問うかが異なるだけで, 手続き的な立場から両者を厳格に区別することはできな いので,こうしたケースも本稿が言及する範囲に含まれ ており,したがって,黒木(2020)と内容が一部重複す ることをあらかじめお許しいただきたい。 本稿が『基礎心理学研究』に掲載されることを考える と,読者の中に,おそらく一度も調査に協力したことは ない,という方はいないだろうが,研究手法として調査 を用いたことがない方は多くいるだろう。そこで対象と しては「科学的研究法には習熟している一方で,調査に 実施者として取り組んだ経験はないかごく少ない。しか し,将来的には調査によるデータ収集を計画している」 という調査初心者を想定する。まずウェブを媒体にする Copyright 2020. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved. Corresponding address: Graduate School of Human

Sciences, Osaka University, 1–2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565–0871, Japan. E-mail: [email protected] J-STAGE First published online: October 12, 2020

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ものに限らず,心理学研究法としての調査の利点と問題 点について述べてから,ウェブ調査の利点と問題点につ いて述べる。 本稿で読者に伝えたいのは,調査によって適切なデー タを得るために考えるべきことや身につけるべきノウハ ウは数多くあるということ,そして,どのようなデータ 収集に向く研究法なのかを良く把握したうえで調査を実 施していただきたいということである。 調査の利点と問題点 調査によるデータ収集では,実験のように目的に合わ せて参加者の置かれる環境(ウェブ実験であれば,その 想定)を研究者が操作する―研究目的に沿った環境を人 為的に作り出す―必要がないし,観察のように研究者が 見たものを見たままに記録するという,膨大かつ仔細に わたる作業も必要としない。つまり一面では「手軽で簡 単」である。しかし,そうであるからこそ,適切なデー タを収集するには,適切な手続きを踏むことが必要にな る。なぜなら,調査によるデータの収集は,実験のよう に研究者が実施環境を操作するわけではなく,収集でき るデータはあらかじめ研究者が用意した問いかけに対す る回答のみであり,それ以下ではないがそれ以上の膨大 さも仔細さも持たないからである。その点においては, 実験と同程度,あるいはそれ以上に手間がかかる。 調査の利点 ここでは,調査によるデータ収集を行うことの利点に ついて述べる。まず,実験による評価ではその低さが問 題となりがちな,生態学的妥当性の高いデータを得られ やすい。なぜなら,独立変数の操作や条件統制がなされ ていない,日常事態(あるいはそれに近い場面)におい てデータを収集できるからである。 また,多面的な情報を一度に取得することが可能であ る。調査票には,例えば刺激画像に対する印象など何ら かの評価を求めるもののほかにも,個人属性,パーソナ リティや特性など,個人に関する多岐にわたる変数を問 う項目を,言語化できるものであればなんでも含めるこ とができる。実験では,因果関係を正確に把握するため に,操作,あるいは測定する変数を極力絞り込むことが 必要だが,調査の場合はこうした制約はかなり緩い。つ まり,ある事象にまつわる多岐にわたる変数を同時に検 討することが可能である。ゆえに,事後に変数間の関係 について探索的に検討できる余地が多くあり,当初は影 響が想定されていなかった重要な要因や,予期せぬ仮説 を発見できるかもしれない。 さらに,先に述べたように,調査は言語を媒体して実 施するので,参加者に個々の質問の意味を理解し,それ に回答するだけの能力と動機づけがあれば,短時間に多 くのデータを収集することができる。加えて,大がかり な設備や施設を必要とせず,データ収集にかかるコスト を,時間的にも金銭的にも小さくすることができる。参 加者にとっては,実験に参加する場合よりも,心理的, 時間的負担が少なくすむことが多いことが大きな利点に なる。これらのことから,調査は,データ収集効率が高 い評価手法であるといえる。 加えて,実験による検証は研究倫理に抵触するような 事象にアプローチすることが,調査であれば(もちろ ん,仮想的にではあるが)可能となることがある。実験 であれば参加者を身体的に傷つける可能性があったり, 過剰な心理的ストレスを与えたり,行動そのものが反社 会的だったりするが,心理学的に興味深い行動につい て,特定の場面を想定させるような教示文を与えること で,そのような場面でどのように行動する「と思う」か をたずねる調査を実施することは,実験と比べると倫理 的な問題が小さい(もちろんゼロではない)。そこで得 られたデータがどの程度実際の行動に近似するかは議論 の余地があるとしても1,あくまで仮想的ではあるが, 実際に参加者を特定の環境にさらすことがためらわれる ような事柄であってもデータを取得できる可能性が増す のは,調査のメリットの1つだろう。 調査の問題点 しかし,先ほど挙げた調査の利点は,そのすべてが問 題(となりうる)点と表裏一体をなしている。 調査によってデータを収集する際に必ずつきまとう問 題点は,実験によるデータからは変数間の因果関係の同 定が可能であるのに対し,調査ではそれが困難であると いう点である。実験では,時に生態学的妥当性を犠牲に してまで厳密に状況を統制するからこそ,ある条件が人 間の心理や行動に対して及ぼす影響(因果関係)を検証 することが可能となる。しかし,調査の場合は,先に挙 げたような個人に関する多様な情報をone shotで収集す ることがほとんどである。ゆえに,1回の質問紙調査か ら得られたデータを分析することで,さまざまな変数の もつ特徴を析出したり,変数同士の関わり合いの強さ (相関関係)を明らかにすることは容易だが,何が原因 1 例えば服従実験(cf: Milgram, 1974 山形訳 2008)で は,場面想定と実際の実験室実験で服従率に顕著な 違いがあり,後者において高かったことがよく知ら れている.

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でどのような結果が生じたか,という因果関係を明確に 特定することは難しい。同じ参加者に複数回にわたって 協力を求めて時系列データを収集するパネル調査を実施 すれば単なる相関データでしかないという束縛からは逃 れられるが,それでも参加者の日々生活している状況の 厳密な統制は不可能であるから,例えばn回目に測定し た変数 Xからn+1回目に測定した変数Yに引いたパス 係数が有意だとしても,その因果関係に介在しうる剰余 変数を統制することは実質上不可能である。実験ほどに 測定する変数を絞りこむ必要がない一方で,あらゆる変 数を測定することはできない。また,探索的検討の余地 の大きさは,まかり間違うとHARKing (仮説の後づけ: 収集したデータに合致するように後から作った仮説を, データ収集前から用意していたかのように見せかける行 為)を誘発することになるかもしれない(cf: Chambers, 2019 大塚訳 2019)。 さらに,言語を媒体とすることで生じる問題点もあ る。調査によるデータ収集では,実験による測定とは異 なり,必ず参加者が自らの意識を言語化する手続きが必 要となるという点である。調査に耐えうる言語能力を持 たない対象からデータを収集することはできないし,あ るいは,言語化することが困難な人間の心理過程(例え ば暗黙知など)を調査によって「測定」するのは非常に 困難である。 調査における研究者(調査者)の立場は,実験と比べ るとかなり受動的であることにも注意が必要である。参 加者が与えられた質問項目を読み,その意味を解釈し, 適切だと判断した回答を行うというデータ収集プロセス のすべてが,参加者の主観的な認知に依存した形で行わ れることから,データにノイズが入り込むリスクは,実 験よりも大きい。また,心理過程を言語化することに よって,個々の質問が調査参加者の何を調べようとして いるのかが調査参加者本人に容易に推察されることにつ ながる場合も多い。設問や回答の方法によっては,調査 参加者が意図的・無意図的に回答を歪めてしまうことも ありえる。つまり,回答に虚偽報告が混在する可能性は 実験よりも高く,決してゼロにはならない。また,「研 究者にとって」正しい方向の理解が得られなかったり, 参加者ごとに質問紙の文言の解釈が異なることから生じ るデータの歪みなども考えられる。前述のとおり,こう した文言の理解や解釈は,調査参加者の知識や言語能力 に大きく依存することから,幅広い年齢層を対象とした 調査の場合は,大きなばらつきが生じてしまう可能性が ある。 ま た, 社 会 的 望 ま し さ バ イ ア ス(social desirability bias)の影響を受けやすいという問題もある。そもそも 調査によってデータを得るためには,参加者に高度な認 知的処理―質問を文章で読み解き,時には示された選択 肢を精査し,それを普段の自分のあり方と照合しながら 総合的に判断して,自分にとってもっとも適切だと思う 回答をする―を求める必要がある。そのため,社会的規 範に抵触するような心理状態や言動(普段は呈示しない 内に秘めた攻撃性の高さや道徳的に好ましくない個人の 態度,倫理に反する意見など)を測定しようとすると, 自分を良く見せようという意識が働いたり,回答に本来 の自分をそのまま表わさなかったりといった,さまざま なバイアスを含む可能性が考えられる。 基礎心理学における調査の活用 前節をまとめると,実験で収集されるデータが「統制 された」かつ「客観的」なものであるとすれば,調査で 収集されるデータは「生態学的妥当性の高い」かつ「主 観的」なものである,ということになる。では心理学に とってどちらが必要なデータかといえば,どちらも,で ある。前者によって検出された頑健な因果関係が,実社 会でも相関関係として析出されるのか,あるいは,実社 会データにおいて頑健に認められる相関関係が,統制さ れた実験下で因果関係として再現しうるのか。基礎心理 学は厳密に統制された実験室環境で実施された実験を旨 とする領域だと理解しているが,前述したとおり常に生 態学的妥当性の低さが指摘されるところであり,実験室 から出ない限りその問題を解決することはできない。日 常生活に根ざした調査を組み合わせたハイブリッドな研 究を行うことができれば,その知見の有用性は否応なく 増すはずである。 読者が調査によるデータ収集を企図したとして,その 成否を決するもっとも重要な要素は,紙筆版であろうが ウェブ調査であろうが,調査内容の決定,すなわち調査 票をどのように設計するかである。そこには様々なTips があるのだが,本稿ではそれらをここで逐一取り上げる ことはしない。文末に掲げた参考文献か,著者が人工知 能研究者向けに必要最小限のエッセンスを解説した記事 (三浦,2006)をご参照いただきたい。 ウェブ調査の利点と問題点 さて,調査によるデータ収集の実施形態として,長ら く主流だった紙筆版に取って代わって急速に普及したの が,ウェブブラウザに調査票を呈示し,マウスやキー ボードなどのデバイスからの入力によって回答を求める 方法,すなわちウェブ調査である。

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本節では,紙筆版と比べたウェブ調査の利点と問題点 についてその概略を述べる。なお,ここで扱う「ウェブ 調査」には,特に手続き上の利点については,ごく単純 に「ウェブブラウザを媒体としてデータを収集する」行 為,例えば,実験室実験の参加者の特性を把握したり実 験に対する印象評価を求めたりするための調査を紙筆版 ではなくブラウザベースで実施するような行為を含んで はいるが,その限りではない。 ウェブ調査の利点 まず,ウェブ調査では,質問内容をダイナミックに変 化させる仕掛けを施すのが容易であることが紙筆版には ないメリットである。それによって,紙筆版の調査では 問題とされる一方で不可避に近いデータの瑕疵の低減が 期待できる。例えば,回答漏れがあった場合に警告を表 示したり,直前の回答状況に応じて次の質問項目を変え たり,参加者ごとに質問の呈示順序をランダム化するこ とでキャリーオーバー効果(前に置かれた質問が,後の 質問への回答に影響を与えること)を相殺したりでき る。こうした工夫は,現在世界的に最も一般的に使われ ている調査票作成プラットフォーム Qualtrics (https:// www.qualtrics.com/jp/)などのサービスでは標準機能と して搭載されており,簡単に実現可能である2。Google フォームなど無料ツールもある程度の機能を備えてい る。また,ウェブ実験によく用いられる無料プラット フ ォ ー ムPsyToolkit (https://www.psytoolkit.org/) で も, 比較的自由度の高い調査票を構築できるそうである。著 者はプログラミングがきわめて不得意で,共同研究者か らそう聞いてデモを見せてもらっただけで勉強する時間 を到底取れないでいるが,本誌の読者であれば,むしろ 自力で環境構築できる方が好ましく,お仕着せのフォー マットにはなじめない,という方も多いだろうから,是 非活用していただきたい。 研究者にとっては,当初からデータを電子化した形で 入手できることも大きなメリットの一つである。紙筆版 の場合は,回答者が記入した回答を何らかの形で転記し ないと電子化できないので,その過程でミスが生じる可 能性がある。ウェブ調査ではその可能性はゼロである。 こうした点も,より誤差の小さいデータを収集したいと いう研究者のニーズにあった特徴であると言える。さら に,電子媒体であるということは,画像や音声など文字 以外を利用した刺激を呈示することも容易である。 また,ウェブ調査の大きな利点は,研究者の手が届く 参加者の範囲を大きく広げられることである。心理学研 究では,研究者らが直接アクセス可能な,例えば自身の 講義を受講している学生を対象として,教室のような集 合場面で調査票を配布・回収することで得るデータを用 いた研究が多用されてきた。こうした手続きによって収 集されたデータは,時にstudent psychologyと揶揄され, サンプリングバイアスがもたらす多くの問題点をもつこ とが指摘されてきた。しかし,利便性の高さを優先させ るとそれには目を瞑らざるを得なかった。あるいは,実 験は「課題遂行に最低限必要な知覚・認知能力を有する ヒト」であれば,大学生だろうが一般市民だろうが大き な問題にはならないのかもしれない。しかし,個人の主 観を問う調査はより社会的影響を強く受けるために, 「参加者はいつも大学生」という限定は知見の一般化の 際に大きな足かせとなる。ウェブ調査会社に登録してい るモニターやクラウドソーシングサービス(以下,クラ ウド)の登録者など,大学生に限定されない幅広い属性 をもつ人々を研究対象にしやすいことは,ウェブ調査の 大きなメリットである3 参加者にとってもウェブ調査はコストが低い。イン ターネットに接続された端末のウェブブラウザで調査票 にアクセスできればよいのだから,時間や場所,あるい は端末を選ばず回答できる。ほとんど,と言ってよい割 合の人々がインターネット利用者となった現在では, ウェブを媒体とすることによるサンプルの限定性や特殊 性を問題にする必要は,以前よりもかなり少なくなって いる。 ウェブ調査の問題点 ウェブ調査は,前述のように多くの利点がある。しか し,研究者はこうした利点に安住するのではなく,その 先を常に考える必要がある。 参加コストが低く,誰でも手軽に参加できるというの は,言い換えれば「参加環境を制約できない」というこ とである。これが収集されるデータに負の影響を与える 可能性に留意しなければならない。紙筆版であれば調査 票の体裁は一定に保たれるが,ウェブ調査であれば回答 時の使用端末がスマートフォンかパソコンか,あるいは 3 こうした人々による「協力」はウェブを媒体とした ものに限らないので,実験室実験の参加者はよく訓 練された大学生ばかり,という問題も解決可能であ る.ただし,ウェブ調査やウェブ実験と比較すると 当然ながら金銭的コストは増大する. 2 Qualtricsの利用には個人あるいは機関単位の年間契 約が必要で,契約形態に応じていくつかのプランが あるが,いずれにせよ年間数十万円以上のオーダー になる.

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調査表示画面の大きさや解像度などによってそれはいか ようにでも異なる可能性がある。また,回答時に参加者 がどこで何をしているのかも多くの場合において把握不 能である。家でくつろいでいるのか,授業中の暇つぶし なのか,あるいは移動中なのか。回答端末のOSやブラ ウザ,画面解像度,あるいは所在地情報やIPアドレス などの情報は入手可能だが,その端末を手にしている人 物の状況に関する情報は(それを問う項目を調査票に含 めれば本人に尋ねることはできるが)まったくわからな いし,おそらく極めて多様であることが容易に想像でき る。 回答環境が参加者任せとなると,回答に際する態度を 調査者がコントロールすることは不可能である。おそら く多くの調査者は,参加者が誠実に回答に取り組むこ と,つまり教示文にせよ質問項目にせよ選択肢にせよ, その意味を理解し,内容を吟味して回答することを期待 している。しかしウェブ調査では,紙筆版の集合実施で あればできたような方法(つまり,実施者による監視) によってデータの質を保つ努力はできない。こうした点 が回答に影響する(特に,歪める)のか,影響するとし たらどの程度かは調査内容に依存するが,場合によって は回答の質を著しく下げることになりかねない。 著者らは,参加者の回答態度とデータの質の関係につ いて,「努力の最小限化(Satisfice)」という観点からい くつかの検討を行ってきた。Satisfice は satisfy と suffice の合成語で,人間の認知資源には限りがあることが,要 求に対する努力を最小化しようとする傾向につながり, 目的を達成するために必要最小限を満たす手順を決定 し,追求する認知的ヒューリスティックのことを指す (Simon, 1956)。ウェブ調査に当てはめると,参加者が教 示文や尺度項目を十分に読まずに回答する行動として典 型的に出現する(cf: Krosnick, 1991)。 ウェブ調査において努力の最小限化を検出する方法 は,黒木(2020)にも言及があるように,多様に提案さ れている。設問への回答の際にそれに付随する教示文を 精読しない努力の最小限化を検出するための方法が IMC (Instructional Manipulation Check; Oppenheimer, Meyvis, & Davidenko, 2009)である。IMCでは,調査でよ く用いられる回答形式(リッカート式や複数選択式な ど)の設問に,直感的な回答行動からは生じ得ないよう な答え方を指示する教示文を付随させ,その精読の有無 によって努力の最小限化を判定する。また,尺度項目を 精読しない努力の最小限化を検出するための方法が DQS (Direct Question Scale; Maniaci & Rogge, 2014)であ る。DQSでは,例えば,多数の項目からなる心理尺度 に,選択すべき選択肢を指示する項目(例えば「この項 目は「まったくあてはまらない」を選んで下さい,など」 を含め,指示通りの選択がなされたかどうかで努力の最 小限化の有無を判定する。 著者らは,Webを活用したデータ収集において,参加 者の努力の最小限化傾向が心理尺度への回答データや実 験的操作を含むデータに及ぼす影響を多面的に検討して きた。例えば,IMCに違反する「教示文を精読しない」 努力の最小限化は非常に頻繁に生じ,またそれがDQS によって検出される「尺度項目を精読しない」努力の最 小限化の発生と対応していた(三浦・小林,2015a)。実 験的操作を含む Web調査における努力の最小限化を対 象とした研究では,映像刺激の「見飛ばし」による努力 の最小限化が実証的知見を毀損する方向に働く可能性が 示された(三浦・小林,2015b)。また,DQSによって検 出される努力の最小限化が,心理尺度への回答において 項目の意味的な逆転を検知しない回答につながり,デー タから得られる因子構造を著しく毀損することも示され た(三浦・小林,2018)。 では,研究者は参加者による努力の最小限化にどう対 処すべきか。著者らは,刺激人物に対する印象評価を従 属変数とする実験的Web調査の冒頭にIMCを実施して 努力の最小限化を検出し,指示された答え方に違反した 参加者に警告を与える手続きを導入した研究を行った。 その結果,警告に応じなかった参加者の印象評価は,刺 激に関する情報を精読していないことを反映した方向に 歪むのに対し,警告によって求められた答え方を理解 し,回答を修正した参加者では,当初から指示を遵守し た参加者に近づくことが示された。つまり,努力の最小 限化によるデータの毀損は,それを参加者に自覚させる ことで以降の回答行動の修正につながり,ある程度解消 されたということになる。 著者らの様々な「努力の最小限化」に関わる研究で一 貫して示されているのは,「きわめて不注意な」参加者 はごくわずかであるということである。確信犯的な努力 の最小限化に基づく回答は排除すべきだが,確信犯では ない参加者に努力の最小限化をさせないための努力を研 究者は最大限に払うべきである。なお,本稿では敢えて 著者が現在使用している検出項目を紹介しない(過去に 出版した論文で紹介したものは使用していない)。項目 が普及すると,確信犯的な参加者がそれに特定的に対応 することで,検出が無力化する可能性が高まるためであ る。 なお,こうした検出方法は倫理的に問題があるのでは ないかという指摘もある。指示したとおりの回答を求め

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ているだけなのだが,確かに,不用意な実施は参加者を 傷つけたり,騙したり,あるいは本来の調査目的とは相 違する回答を求めるような行為に該当する可能性がある かもしれない。著者が実施するウェブ調査では,常に何 らかの形で努力の最小限化を検出する項目を含めている が,IMCであればどのような回答であれ事後に実施した 理由(回答の際は相応の注意を払う必要があることを自 覚してほしいこと)を説明する画面を呈示し,DQSで あれば指示に従わない回答には必ずその内容と今後は留 意して欲しい旨をフィードバックしている。 ウェブ調査では,個々の参加者の回答態度とそれが データの質に与えうる影響を査定する手続きを慎重に行 う必要があるし,紙筆版調査よりもそれが容易な手法で もある。参加者の回答行動に無謬性を仮定せず,積極的 な抑止策を講じるべきである。 「一般市民」サンプルの調達先ごとの特徴 本節では,物理的に身近にいる人々に協力を求める, というのではなく,ある程度広く「一般市民」にウェブ 調査への協力を求めたい場合に,参加者をどこで調達す るかという問題と,調達先による差異(house effects) について,ごく簡単に現況を紹介する。 黒木(2020)も言及しているとおり,世界的にはクラ ウドソーシングサービス(以下,クラウドサービスとす る)の利用が盛んである。今や心理学研究におけるウェ ブ調査(あるいはウェブ実験)のほとんどがクラウド サービスで実施されていると言ってもよい状況で, Amazon Mechanical Turk (https://www.mturk.com/; 以 下, MTurkとする)がその最たるものである。悪し様な言い 方になるが,仕事がほしい,仕事をくれ,と報酬目当て で集まった人々が入った檻に,調査協力という仕事を投 げ込むようなものなので,様々なレベルでそのサンプル の質を問う論文は枚挙に暇がない。人工的に作られたア カウント(ボット)による「回答」が大量に含まれるケー ス が発覚して大騒ぎになったこともある(Dreyfuss, 2018)。参加者の質を高める努力を積極的に謳うサービ ス(例えばProlific (https://www.prolific.co/))もあり,著 者は適宜使い分けているが,どこを利用しようと前節で 述べたとおり参加者に全幅の信頼を置くべきではない。 日本では少々事情が異なる。MTurkやProlificに日本 語を母語とする登録者は(ほぼ)いないので,日本語で 調査をするなら両者を利用するのはよい選択肢ではな い。日本国内にクラウドサービスは数社あり,著者もよ く利用しているが,参加者管理機能はかなり貧弱であ る。現状,日本国内のサービスがMTurkやProlificと最 も異なるのは,参加者に人口統計学的な情報(例えば性 別や年齢,母国語,学歴など)にもとづく条件を付けら れない点である。そのため,当然のことながら,母集団 に対するサンプルの代表性をコントロールしたり,特定 の属性から特定の人数の回答を得るような調整をしたり することは後述のような方法を除けば今のところ不可能 である。「一般市民」からデータを収集する際に,現在 の日本の人口統計になるべく合わせたサンプリングが重 要となる局面であれば,クラウドサービスではなく, ウェブ調査会社を利用することを勧める。調査にかかる 金銭的コストは一般にウェブ調査会社の方が高いが,そ の差額は参加者管理やサンプリングの調整にかかってい ると考えればよい。つまり,同じウェブ調査会社の中で も価格帯にはかなりのばらつきがあるが,それもそこに かけているコストを反映していると考えてよいだろう。 繰り返し言うが,それをベネフィットと見なすかどうか は研究計画次第である。 以前著者らは,ウェブ調査会社のモニタ,クラウド サービスの登録者,大学生の回答行動を比較した論文を 公刊しているが(三浦・小林,2016),ここでは2020年 7月に収集したウェブ調査データで前2者の特徴を比較 する。この調査は,まったく同じ内容の調査票(ただ し,画面デザインやレイアウトはそれぞれ異なる)を用 いて,ウェブ調査会社2社とクラウドサービス1社で各 1,200名を対象にして実施したものである4。ウェブ調査 会社では,10–60代の各世代の男女各100名ずつの均等 割付でデータを収集し,クラウドサービスでは1,200名 を上限にデータを収集した。互いに参加者が重複してい る可能性はゼロではないが確認していない。 まず「何も条件をつけない」クラウドサービスで得ら れたデータの性年代構成比率を Table 1に示す。サービ ス規約上登録できるのは18歳以上(20歳未満は親権者 の同意が必要)なので,10代の比率は非常に小さい。 全体的に女性の方が多く,また30–40代が多いことが特 徴的である。会社ごとに,あるいは依頼タイミングに よって多少の差があるという話を聞いたこともあるが, 著者のこれまでの経験ではほぼ常にこれに近い比率であ る。職業を見ると専業主婦/主夫が全体の24.5%(もっ とも多いのは「正社員・正職員」28.8%)で,女性では 36.2%(「正社員・正職員」は18.8%)を占めている。こ れに呼応して,直近の特定の平日1日あたりの在宅時間 もウェブ調査会社2社よりクラウドサービスからの参加 4 ク ラ ウ ド サ ー ビ ス で 実 施 し た 調 査 票 は https://bit. ly/3f5IPYxから参照できる.

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者の方が長めである(Table 2参照)。ウェブ調査会社で 均等割付をせずにデータを収集した場合は,些か古い データではあるが三浦・小林(2015a)では,性別比は 男女ほぼ同程度かやや男性が多く,年齢層はクラウド サービスより高年齢層にシフトしており,専業主婦/主 夫の比率はより低かった。明確というわけではないが, 両者の相違はご想像いただけるのではないだろうか。 クラウドサービスでこうした比率の偏りをある程度コ ントロールして参加を募りたければ,まず,偏りを調整 したい属性に関する予備調査を実施して「参加候補者 プール」を作成し,そのデータに基づいて必要な調整を して(つまり,スクリーニングをして),本調査への参 加を個別の登録者へのダイレクトメッセージで依頼する ことは可能である。人口統計学的な属性に限らず,特定 の経験や嗜好,態度を持つ人なども同様の手続きをすれ ばよい。ただし,ウェブ調査会社ではないので委託はで きず,ダイレクトメッセージを1通ずつ送ることも含め て,すべてが研究者による手作業になる。なお,実施で きる条件は限定されるが,傾向スコアを算出することな どによって事後に統計的に補正することも可能である。 もう一つ研究者が懸念すべきことは,参加者がどの程 度「すれて」いるかである。当然のことだが,ウェブ調 査会社のモニタは,動機は人それぞれだろうが,調査回 答を目的として登録している。多くの調査に参加した方 が報酬をより多く獲得できる。1件あたりの報酬はごく わずか5なので,なるべく多くの調査に協力することへ の志向性は強いと考えるべきだろう。調査回答頻度を尋 ねた項目の度数分布を Table 3に示す。クラウドサービ スの登録者にはウェブ調査会社への登録の有無を尋ね, 登録している参加者(54.1%)のみそこでの調査回答頻 度を尋ねている。ご覧の通り,という以上に言葉を重ね る必要はないだろう。非常に多くの人々が,毎日のよう に何らかの調査に回答している。こうした特徴が要求特 性を発揮させる方向に影響するか,それとも努力の最小 限化に向かわせるかまでは特定できないが,少なくとも 研究者はこの実状を意識しておいた方がよいだろう。 最後に,努力の最小限化を検出する項目に対する回答 状況を見ておこう。ウェブ調査会社A, B, クラウドサー ビスで,「教示文を精読しない」IMCで指示に従わな か っ た参 加 者 は 33.1%, 35.8%, 4.8% で, 三 浦・ 小 林 (2016)と類似した傾向が見られた6 5 ウェブ調査会社に委託する場合は研究者が報酬を調 整することは通常不可能である.対してクラウド サービスでは自ら設定する必要がある.著者は1時 間あたり500円を目安にして回答所要見込時間に応 じて設定している. Table 1.

Gender and age distribution of Web survey participants via crowdsourcing service.

10s 20s 30s 40s 50s 60s

Male 0.2% 5.3% 11.7% 11.1% 4.4% 1.4%

Female 1.0% 13.0% 28.1% 16.0% 7.0% 0.7%

Table 2.

Time spent at home on July 1st 2020.

<10 h 10–12 h 12–14 h 14–16 h 16–18 h 18–20 h 20–22 h 22–24 h Absense

Web survey firm A 30.2% 11.3% 10.0% 7.3% 3.9% 5.8% 7.3% 21.2% 3.1%

Web survey firm B 32.5% 9.2% 9.9% 8.6% 3.9% 5.4% 5.7% 21.0% 3.8%

Crowdsourcing service 21.1% 10.6% 9.2% 7.0% 5.5% 9.0% 12.9% 24.1% 0.5%

Table 3. Frequency of survey answering. Almost

everyday 4–5 times per week 2–3 times per week a weekOnce a monthTwice a monthOnce

Less than once a month

Web survey firm A 77.6% 11.7% 6.1% 1.3% 0.3% 0.4% 2.8%

Web survey firm B 76.4% 10.8% 5.3% 2.2% 0.6% 0.7% 4.2%

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以上,ごく簡単にではあるが,Web調査会社とクラウ ドサービスを利用した際に参加する「一般市民」はどの ような方々なのかを推測する手がかりを提供した。身近 にいて,分散や偏りをある程度想定可能な大学生と比べ て,こうした対象に調査依頼を投げるのは,特に初めて 着手するときはまるで雲を掴むような気持ちがするもの かもしれない。少しでも参考になれば幸いである。 発展的情報収集のための参考文献 ここまで,調査という研究法に関する基礎知識につい て,特にウェブを媒体として実施することを念頭に置き つつ,利点と問題点に注目しながら解説した。著者の目 的が首尾良く達成されていれば,読者が「調査初心者」 であったとしても,ある程度は「(ウェブ)調査とは何 か」のイメージが明確になったのではないかと期待す る。一方で,具体的なノウハウに乏しく食い足りなかっ た,と言われる向きもあるだろう。そこで最後に,より 実践的な知識を身に付けたい方々のために参考文献を数 冊挙げておく。 『なるほど!心理学調査法』(大竹,2017)は,心理尺 度作成の一般的な作業の流れについて,実際の研究例を 紹介しながら具体的に解説している。経験サンプリング 法や国際比較調査といった応用的な調査手法についても 比較的詳しく紹介されている。 『聞き方の技術―リサーチのための調査票作成ガイ ド―』(山田,2010)は,ワーディングや回答形式な ど,調査票作成段階で考慮が必要なポイントが網羅され ている。実務として調査に関わる人を読者として想定し ているがゆえに,調査についてあまり知識や経験のない 人が陥りがちな落とし穴に配慮した懇切丁寧な記述がさ れている。 『質問紙デザインの技法[第2版]』(鈴木,2016)は, 質問紙法の計画・準備・技法から倫理的配慮までが体系 的に解説されている。題名のとおり質問紙デザインの技 法に関する記述が充実している。 日本学術会議社会学委員会Web調査の課題に関する 検討分科会(2020)による提言には,社会調査(社会全 体の有様をなるべく正確に同定するために,対象となる 母集団からなるべく代表性の高いサンプルを抽出して データを収集しようとするアプローチ)の立場から見た ウェブ調査の利点と問題点が端的にまとめられている。 これからウェブ調査を始めようとする方々には最適の文 書である。 ウェブ調査に関する書籍としては,いずれも翻訳書だ が『ウェブ調査の科学―調査計画から分析まで―』 (Tourangeau, Conrad, & Couper, 2013 大隅・鳰・井田・小

野訳 2019)と『ビット・バイ・ビット―デジタル社 会調査入門―』(Salganik, 2017 瀧川・常松・阪本・大 林訳 2019)が質量ともに充実している。前掲の提言と 同じく社会調査の立場から書かれており,心理学研究に おける調査ではそれほど注目されない点に関する詳細な 記述も多く含まれているが,ウェブ調査の全般的な特徴 や活用範囲の広さを把握するには間違いなく有用であ る。 お わ り に 10年以上前のことだが,ある高名な生理心理学者に 「調査でデータを取るような心理学者は信用できへん」 と面と向かって言われたことがある。「社会心理学者だ というからお前もどうせそんな類かと思っていたら実験 もするらしいとわかって認識を改めた」と続いたので私 個人を面罵する意図の発言ではなかったようだが,(過 度の一般化である可能性はあるものの)基礎心理学では 調査の評判はひどく悪いらしいと痛感した瞬間であっ た。 確かに,雑に設計して雑に取った調査データは雑な内 容にしかならない。しかし,それは実験など他の手法で も同じことだろう。生理心理学のゼミに所属すればまず 脳波計の操作や電極の付け方の,動物心理学のゼミに所 属すればまず動物のハンドリングのノウハウを,それぞ れたたき込まれるだろう。それは,脳波計や動物を雑に 扱うと適切なデータが取れなくなるからである。それ自 体は調査でも同様で,本稿はそのほんの一部を紹介した にすぎないが,適切なデータを取るためには,適切なノ ウハウに習熟し,それを駆使することが必須である。 では両者で何が違うかと言えば,脳波測定や動物実験 は計測装置や動物が身近に存在しないためにそもそもド シロウトが思いつきでできる行為ではない一方で,調査 は対人コミュニケーション場面でごく当たり前に誰もが している「問いかけに対して反応を得る」という行為に 基づいているので,誰でも思いつきでできてしまうとこ ろであろう。おそらく件の生理心理学者は,調査は「オ レも(誰でも)やろうと思えばできる」ものである一方 で,生理心理学実験は「訓練を受けた人(例えばオレ) でないとできない」ものだから,心理学の研究手法とし 6 「尺度項目を精読しない」DQSは従来とやや表現を 変えたものを1項目設定したのだが,回答パターン が従来とは大きく異なっていた(指示に従わない参 加者が非常に多かった)ため,再検討に付すことに し,ここでは結果を紹介しない.

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て前者は洗練されておらず,したがって後者に劣る,と いう印象を持っていたのではないだろうか。しかし,そ もそもの行為の日常性が両者で異なる以上,身につける べきノウハウのスタート地点が異なっていて当然であ る。器具や動物のように「間違えると壊す(殺す)」こ とも想像しにくいからその繊細さのレベルも異なるだろ う。しかし,誰もができる直感的な「調査」と,研究法 としての調査は歴然と違うのだ。誰でもできると思われ たらこっちが迷惑だ。そう反論できずに,とっさに「え え,私は調査だけをやるような人間じゃないんですよ (ドヤ」と迎合してしまった自分を,今は後悔している。 読者の中には,新型コロナウイルス禍で実験室実験を 実施する制約が大きくなったことで,ウェブ調査(ある いはウェブ実験)に活路を見いだそうとしている方もい るのではないだろうか。それ自体は何ら悪いことではな い。しかし,中には「調査をしたことはないが,やろう と思えばできるはず」と思っている方がいらっしゃるか もしれない。そんなことは思っていない,とおっしゃる 方も含めて,生兵法は怪我のもとだと強く申し上げた い。実験と同じく,調査によって適切なデータを得るた めに考えるべきことや身につけるべきノウハウは数多く ある。そして,どんな研究法にも向き不向きはある。熟 慮,熟達(あるいは熟達者を研究チームに加える)のう えで調査をその選択肢の 1つに加えるというのであれ ば,ご検討いただく価値は十分にあるだろう。 引用文献

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参照

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