Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japar ユese Society for the Science of Design芸
術 的
で
直
感 的 な プ
ロ
セ
ス
を
内包
す
る デ ザ イ
ン
実
践
の
認 識論
Epistemology
of
Design
Practice
which
Encloses
the
Artistic
and
lntuitive
Process
須 永 剛
司多摩 美術 大学
、
京 都 大学
SUNAGA
Takeshi
Tama
Art
University
,
Kyoto
University
わ れ わ れは語 ること ができ ることよ り多 くの こ と を 知るこ
とができ る
。
We
canknow
morethan
we can†elI.
マ イ ケ ル
・
ポ
ラ ンニー
「暗黙 知
の次 元」匚 P°
la”
yi 66] こ の 特 集 号 は、
芸 術 的で直 感 的 な プロセスを内
包 する デザ イン 実 践の認 識 論 をテー
マに、9
つ の論
考 と2
つ の講
演録
を編纂
し た もの である。2013
(
平 成
25
) 年 度
日本
デザ イン学会
60
周
年記
念 筑 波 大 会の特
別フォー
ラム 「実践
する デザイ ナー
た ちの デザイ ン知と は何
か ?」 を起 点に し た論 考と、
「デザ インの学 び の な か に生ま れ る デ ザ イン知」 につ い ての論 考、
「創 造 する こ と」につ い て語られた2
つの講 演 録で構 成 さ れて いる。
問 わ れ
て い るデザ イ
ン今
日、
デザイン思考
、
デザイン学、
デ ザ インの科 学 など 「デザ イン」 の重
要性
が 叫 ば れ、
デ ザ インを 駆 動 す る 実 践 知 が さ ま ざ ま な 学 問 の 関 心 対象
に なっ ている。
そ のこと は す ば ら しい。
こ れ まで美 術の中 に あっ た デ ザ イン の営 み が 大 き く広 がる ことを意
味 している か らだ。
しか し、
さ ま ざ ま な 学 問 が築
い てき た枠組
み に収
ま る知、
つ ま り実 証 科 学 を 基 盤とする近 代の知に適う こ と の み が そ こ で扱わ れ る と、
そ の広 が りの価 値 を 見 失 うことになる。
な ぜ なら、
デ ザ インへ の関 心の真のねら い は、
学 問 がそ の 堅牢
な枠組
み を自
ら再構
成 し、
こ の社会
の リ ア リ テ ィ と結
びつ く力 を手
に入 れ る ことにあると考
えるからだ。 デザイ ンする こ と は、
言葉
や推論
で表
現 す ることが むず
か しい非 論
理的 な 過 程
を内 包
し て いる。 そ れ ゆ え に、
デザ
インす る ことの本 質
に迫る論述
は多
くない。 し か し、
デザ
インを 駆 動 し て い る のは間
違いな く私
た ち人 間
の知 性
であ
る。
も の ごとを 企て [嶋 田 ゜2’
14]、
形を与
え ること、
つ ま り デ ザインす ることの成 り 立 ち を明ら か にする こ と は、
芸 術 や 直 感 を も 組 み 込んだ 新 た な学術領 域の搆 築
に貢 献す る はずであ る。
デ ザ イン の知 「デザ インとは何 か 」 を問 う こ と は、
人間 が も っ て い る根
源的 な 知、
私
た ちの日常
の営
みを形
づく る 「知
」 と は何
かを 問 うこ とだ と言 える。
そこ に問
わ れている の は、
人
が自分
の身
の回 り の生 活 世 界 を形 づ く り たいと願
う私
た ちの思
い、
そ し てつ くり
たいものやことの姿 を描
き、
実際
に それらをつ くっ てみる こ と、
そ れ らの成 り立 ちであ る。
見 出
さ れる答
え は、
専
門的 な知 識
の成
り立ち とその意
味では な い。
人 び とが 基 本 的にもっ て い る 「あた りま え の知 」 の そ れ で あるは ず だ。
「デザイ ン の知 」 は、
デザイ ン す る専
門家
の み が もっ て いるも の で はな く、
人 びとが皆
もっ ている 「あ た り ま え の知
」 に違
いな
い。
しか し、
私 た ちの多
く は そ のこと に気
づい て いない。 いま、
生
活 世 界 を 形づく る 「デ ザ イン の知」 の存 在 に気
づ き、
そ れ らが 生
き る た めの資
源であるが 故 に 新 た な 学 術 の礎
にな る可 能 性 を 改 めて考 察 すること が 重 要になっ てい る。
行
う こ と のな
か に生
ま れ る知
knowing
デ ザ イ ナー
が 行っ ている 表 現 は 多 くの場 合、
頭のな かで考 え た ことの外 化で は ない。
自 分 が 表 現 したアウ ト プッ トのな かに、
あ るいは 表 現 す る行為
のな か に、
創
造 的 思考
を起
こして い る の だ。
デザ イ ナー
た ち は、
そ のプロ セ スが クリエイ テ ィブなデザ インを 成 り立 た せて い る こと を体 験
して い る。実 践 す
る デザ イ ニ ングの成 り立 ち と意味
を わ かるため に、
表
現 する行 為
が先 行
しそ の行 為
のな かで デザインの思考
が 駆動
され
て い るとい う認識
は重 要 だ。
実 践 者の知 につ いて考 察 し た ドナ ル ド・
ショー
ンは、
熟 練した 実 践のな か に 起 きている行 為 と思 考の流 れ を 次のよう に語っ て い る。
私 た ちは行 為の前に考え る こ と も あ る け れ ど も、
熟 練し た実践
を無 意識
の うちに行
う ほ と ん どの場 合
、
先
行 す る知
的操作
か ら は生
ま れ ないあ る 種の知
の存
在 を そこに 見いだ す こと も事 実
であ
る。Although
we sometime thinkbefore
acting,
it
is
alsotrue
that
in
much of the spontaneousbehavior
of skillfulpractice
we reveal akind
ofknowing
whichdoes
not stemfrom
aprior
intellectual
operation.
匚sch° n83 ]デ ザ イ ナ
ー
の実体 験
とショー
ン の こ の見解
は呼応
し て いる。 そ の こと に触 発 さ れ、
デザ イン の知の探 求
がで きる はず
だと考
え たのが 本 号の著 者
らである。 これ まで自分
たち自身
が 言葉
に し て こなか っ た 自 分た ち の行 為と 思考
を、
改めて 「デ ザ イン の 知」 とし て探 究し て み た く なっ た の だ。 そ の試み の所 産が こ の 特 集 号である。
本
号 の 組 み 立て 本 号は2
つ の ス コー
プ か ら 編 集した9
の論 文と2
つ の講
演 録で 構 成 さ れてい る。
デ ザ イン知研 究会
という活動
を と おし て 「実
践 す るデザ ナー
た ちの デザイ ン知」 を探 究
し た のが第
1
の ス コー
プである。
最初
の4
つ の論 文
がそれ
を構成
す る。 最初
に導
糴
幣
1
二∵ ∴
[
」
Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japar ユese Society for the Science of Design入と して デ ザ イン学 会
60
周 年 記 念大会の特
別フォー
ラ ム を 題 材に し た須 永・
永 井 論 文を おいた。
実
施 し た ワー
ク ショ ップの 概 要と そこ に見 出し た デ ザ イ ナー
の 思考
と行 為の 原 理 を提示 し てい る。
続 く平 野・
落 合 論 文 は ま さに実 践 す る デ ザ イナー
であ る 両 氏 の 貴 重 な 論 考であ る。
自 らのデ ザ イニ ング を 駆 動 して い る 建 設 的 な 対 話 を 創 出 す る 知 につ いて論 じている。
小 川 論 文 は 工学 的アプロー
チとデザイ ン の アプロー
チ を 比 較 することか ら デザイ ン の知それ 自 体 が 生 成 的である こ とを 論じ てい る。
渡 辺 論 文は 工学設計研究 者である氏 が見出し たクリエ イ ティブ・
デ ザイ ン の探 索 的アプロー
チ と デザイ ナー
の能 力の特 性につ いて議 論
し て いる。 第2
のス コー
プ は 「デ ザ イン を 学 ぶことのな かで獲 得 さ れ る デ ザ イン知」 を主 題 に し た 研 究 会 活 動 (次 世 代 デ ザ イン研 究、
科 研 :5注り
が 基 盤 と なっ た 探 究であ る。
本 号 後 半の5
つ の論 文 が そ れ を構 成す る。
安 井 論 文は デザイ ン の探 索 的なプロ セ ス知と し て 「バ ス ケ ットボー
ル・
プ レ イ ヤー
の ピ ボッ ト と い う動き」 に見立てる モ デ ル を提
示 して い る。
小早川論
文 は デザインの学 び を一
般大学のコミュ ニ ケー
ショ ン教 育に 適応
し た事
例 を取り 上 げ、
デザ インの専
門 教育
で はない と こ ろ に起 き るデ ザ イン知 の獲 得 につ い て論 じて い る。
原 田 論 文 は 対 象とな るフ ィー
ル ド に 身 を 置 き、
自身 を 含 ん だ 問 題 と してデ ザ イン課 題 を 組 み 立て る学 びの可 能 性 とそれ を 支 える知に言 及 している。
岡 本 論 文 は 社 会の中に参 加 する デザイ ン の試みを 事 例に、
デザイ ン対 象の 社 会 的コ ン テ キ ス ト に深く依 存す る デザイ ン の知につ い て議 論 す る。
藤 井 論 文はデザ イン の 学 びのなかで学 ば れて い るこ と に 注 目 し た 第2
ス コー
プの研 究 会 活 動の 総 括 か らデザ イン の学と 術の あ り 方 を展 望 して いる。
続く2
っ は、
2013
年 度日本デザ イン学 会 秋 季 企 画 大 会の講演
録である。
美 術 家である 五十 威 暢 氏 と工学 者である原 島 博 氏 が 「創 造と創 造 する知 」 につ い て それぞれの視 点で語っ たこ と を テキス ト に し た も の で あ る。謝 辞
掲 載 す る そ れら ひ とつひ とつが、
自身
の デザイ ン体験
を一
人称
の視 点で表 現 しそれ を省
察 す ること か ら編 み 上げ
られた貴 重
な 論 考である。
デザ インとい う生 成に か かわ る 体 験を表
現 す るこ と もそれ ら を 文 章 に す ることも 容 易で はなかっ た。
たい へ ん時 間のか かる論 述 とい う 作 業 に取 り組んで くださっ たすべ て の著者
の多
大 な努
力に感謝
し たい。
合 わ せて本
号 を 手 に する読 者の み な さ んがそ の所
産を味
わい、
自
ら の デザイ ン知 を顧
み る機
会 が そ れ ぞ れに も てるこ と を願って い る。 最 後 に、
本 号 を 読 んでいた だ く 入 口 に したいという 思い で、
本 号の編 纂 を と おし て見 出した 「デザ インの知 と はデザ イン とい う実 践 を 支え る 認識の枠 組み である」 という気づき から得 た、
私 (著 者 )の想いを 次の言 葉で 示 し てお く。
デ ザ イン の知と は : それ が、
そこに 在 ることを 知 ること 自分 もそ こに居るこ と を知ること そ し て、
それ と か か わ り合
っ て い る こと を 知る こと そ の中で、
それ が 倉1」出 され、
生 成 さ れ、
いつ か 終了する こ と を 知っ ていること そ れ ら創 出、
生 成、
終了を た と えば 「旅す る こ と 」 のよう に、
楽し め る こ と 「デ ザ インを 学 ぶこ とのな かで獲 得 さ れる デザ イン知」 を 探 す 研 究 会で @ は こだて未 来大 学、
2014 年 1月20 日2
デ ザ イ ン 掌 研 究 特 集 号specdal issueofjapaneSe$OCIetyfOrthe sGlenceo 「design Vol
.
21−
3 No.
83 2014Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japar ユese Society for the Science of Design楽 しみな が ら