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不登校の子どもをもつ親の自助グループ参加が子どもの行動変容プロセスに及ぼす影響

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-63 246

-不登校の子どもをもつ親の自助グループ参加が

子どもの行動変容プロセスに及ぼす影響

○正田 温子1)、門倉 愛1)、野中 俊介2)、嶋田 洋徳3) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )東京未来大学こども心理学部、 3 )早稲田大学人間科学学術院 【問題と目的】 不登校状態における心理的援助を行う際には,子ど もの家庭内外における「行動の拡大」が重要であるこ とが指摘されており(小林ら,1995),不登校の子ど もの「行動の拡大」に対しては,これまで親による影 響性が指摘されてきた(小野,1993)。子どもに対す る親による影響性の代表的なプロセス変数として,親 側の心理的ストレスや不登校に対する否定的評価が示 唆されている(中野,2003)。また,境ら(2015)に よると,ひきこもり者の親の随伴性認知やセルフエ フィカシ―を高めることを狙いとしたアプローチを 行った結果,ひきこもり者の「行動の拡大」に一定の 効果があったことが示されており,親の随伴性認知や コントロール感も重要であると考えられる。 このような親に対する代表的な支援の 1 つに自助グ ループ(以下,「親の会」とする)がある。先行研究 によると,親の会の援助機能として,孤立感解消,精 神的安定,カタルシス,問題の外在化,不登校に対す るとらえ方の変容,子どもの理解,子どもに対する対 処法や進路に関する情報提供などの効果が指摘されて おり(小野,2000),親側のストレス低減に有効であ ることが示されている(植田ら,2004)。このような 親の会の機能を認知行動療法的観点から整理すると, 親の会における取り組みは,ストレスや否定的評価, 随伴性認知,コントロール感を結果として変容させて いる可能性があると理解することができる。 しかしながら,親の会への参加が子どもの「行動の 拡大」に対してどのような影響を与えているのかに関 しては必ずしも実証的に明らかにされていない。そこ で本研究においては,親の会のどのような機能的側面 が親のストレス反応をはじめとする認知的諸変数に有 効なのか,また,子どもの「行動の拡大」に対して影 響を与えるのかを検討することを目的とした。 【方法】 研究参加者 現在,子どもが不登校状態,あるいはそ れに近い状態にあり,不登校児童生徒をもつ親の会 ( 8 団体)に参加している者48名(母親46名,父親 2 名,平均年齢48.1歳±5.7歳)を対象とした。子ども の性別は,男子27名,女子21名であり,平均年齢は 13.3歳±2.5歳であった。 測度 ( a )フェイス項目:不登校開始学年,親の会 への参加回数,参加目的,不登校開始から親の会参加 までの期間など,( b )心理的ストレス反応の程度: 新しい心理的ストレス反応尺度(SRS-18:鈴木ら, 1997),( c )親のサポート知覚の程度:知覚されたサ ポート尺度(福岡・橋本,1997),( d )不登校状態に 対する否定的評価の程度:小野(2000),境ら(2009) をもとに本研究にて作成,( e )子どもに対するコン トロール感の程度:平石(2007)をもとに本研究にて 作成(得点が高いほどコントロール感が低いことを示 す),( f )子どもに対する随伴性モニタリングの程度: Nonaka et al.(in press)をもとに本研究にて作成, ( g )子どもの態度・行動の広がりの程度:Nonaka et al.(2018)をもとに本研究にて作成,( h )親の会に おける援助機能の程度:小野(2000)をもとに本研究 にて作成,を用いた。 なお,質問紙は,初めて「親の会」に参加する直前 時(pre期)と現在(post期)の 2 時点における質問 で構成された。 手続き 同意の得られた親の会の責任者を通して研究 参加者を募集し,親の会参加者に事前の同意を得たう えで,親の会終了後に質問紙調査への回答を求めた。 回答後の質問紙は,封筒に入れ厳封のうえ回収され た。 倫理的配慮 本研究は早稲田大学「人を対象とする研 究に関する倫理審査委員会」による承認を得て実施さ れた(承認番号:2017-272)。また,本研究では,一 部の研究参加者には親子の相互作用を明らかにするこ とを目的として面接調査も行っているが,本報告では 質問紙調査のデータのみを発表する。 【結果】 親の認知的変数および子どもの行動的変数の変化 親の認知的変数および子どもの態度・行動の広がり の変化を検討するために,各下位尺度得点を従属変数 とする t 検定を行った。その結果,すべての親の認知 的変数および子どもの態度・行動の広がりにおいて, 親の会参加前から参加後において有意な得点の改善が みられた(ストレス反応:「抑うつ・不安」(t (41) = 12.83, p < .01),「不機嫌・怒り」(t (40)=8.76 p < .01),「無気力」(t (41) = 7.90, p < .01);「サ ポート知覚」(t (40) = 3.74, p <.01);「否定的認 知」(t (39) = 10.50, p < .01);「コントロール感」 (t (40) = 8.81, p < .01);「子どもの態度・行動の 広がり」(t (38) = 5.27, p < .01))。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-63 247 -親の会機能,親の認知的変数と子どもの行動的変数の 関連 親の会参加前後における各測度の下位尺度得点の変 化量と親の会機能得点(post期)の関連性を検討する ことを目的に相関係数を算出した(Table1)。 親の会の機能と親の認知的変数の関連を検討した結 果,「活動性対処法」得点においては,ストレス反応 における「不機嫌・怒り」および「無気力」得点の変 化量と,「孤立感解消」と「不登校に対するとらえ方」 得点においては,「否定的認知」得点の変化量と中程 度の有意な負の相関が示された。さらに,「子ども理 解」と「不登校情報」得点においては,「随伴性認知」 の合計得点と中程度の有意な正の相関が示された。 その一方で,親の会機能得点の各下位尺度得点と 「子どもの態度・行動の広がり」得点の変化量におい ては,いずれも有意な相関は示されなかった。 さらに,子どもの行動的変数と親の認知的変数の関 連性を検討した結果,「子どもの態度・行動の広がり」 得点の変化量においては,ストレス反応における「不 機嫌・怒り」と「無気力」得点,「コントロール感」 得点の変化量と中程度の有意な負の相関,および「随 伴性認知」の合計得点と中程度の有意な正の相関が示 された。 【考察】 本研究の結果,すべての親の認知的変数および子ど もの態度・行動の広がりにおいて,親の会参加前後に おいて有意な得点の改善がみられた。したがって,親 の会への参加は,親のストレス反応や認知的側面およ び子どもの「行動の拡大」に有効であると考えられる。 その一方で,親の会機能得点と子どもの態度・行動の 広がりにおいては,中程度以上の正の相関関係が示さ れなかったことから,親の会に参加することが,子ど もの「行動の拡大」に直接的には影響を与えていない 可能性がある。これらのことを考慮すると,親の会へ の参加は,親の認知的側面を媒介して,子どもの行動 的側面に影響を与えている可能性が考えられる。 今後は,子どもの「行動の拡大」に影響を与える変 数として,親の会への参加のみではなく,親の会への 参加に関連する親の認知的変数といった第 3 の変数を 明らかにすることによって,親の会への参加が子ども の「行動の拡大」に有効である親の状態像に対する理 解が深まることが考えられる。

参照

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