(座長:牧野先生) 笠松先生、どうもありがとうございました。 今年、平成24 年度の診療報酬改定における輸血に関する多くの情報を示していただきました。 輸血・細胞治療学会から要求していました保険改定がほとんど入っていまして、今回満足のでき る改定ではなかったかと思っております。 時間があまりないのですが、お1 人質問よろしいでしょうか。 先生、私のほうから1 つ。最初の輸血管理料ですが、施設基準としましていろいろ項目があり ます。最近、輸血看護師制度、それから新しく輸血薬剤師制度も考えていますけれども、そうい う輸血自体がチーム医療だということで、今後輸血管理料の基準の中に看護師さんや薬剤師さん の条件が入ってくる可能性はいかがでしょうか。 (回答:笠松先生) チーム医療、もともと輸血部門がしっかり根付いたものとして、中央診療部門と中央管理部門 と各科の診療の連携ということの中でできた点数でございます。その中にどういう職種の方に入 っていただくか。チーム医療ということでいろいろな方に入っていただくことは、いい部分もも ちろんあるわけでございます。一方で点数化ということになると、よりバラエティーに富んだも のを入れれば入れるほど点数が取りにくくなってしまうということになっても、本来望むところ ではないところでございます。やはり医療現場としてしっかり受け止められるもの、なおかつ現 場のニーズにフィットしたもの、効率化・医療の質の充実に資するもの、そういったものを対話 をさせていただきながら検討していくのがいいのではないかと思っております。 (座長:牧野先生) ありがとうございます。 では時間になりましたので、これで終わりたいと思います。 笠松先生、どうもありがとうございました。
シンポジウム
テーマ:ベッドサイドの輸血実施における安全対策
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〔座長〕 東京都立墨東病院 輸血科藤
田 浩
東京慈恵会医科大学附属病院 輸血部田
崎 哲 典
(座長:藤田先生) 墨東病院の輸血の藤田です。 前半は、慈恵会医科大学の田崎先生に座長を務めていただきますけれども、最初に私からオー バービューとして、「輸血実施の基本知識」ということでお話しさせていただきます。 (座長:田崎先生) 慈恵医大の田崎です。 今日のテーマは、今ご紹介がありましたように、「ベッドサイドの輸血実施における安全対策」 ということです。先ほどの特別企画講演にもありましたけれども、平成 22 年から学会認定臨床 輸血看護師制度が導入されました。これから、藤田先生の説明がありますが、輸血というのは、 医師、技師、看護師、その他、様々な職種の方が関わりますので、非常にタイムリーなテーマだ と思います。特に看護師の方は、このベッドサイドの輸血の安全性の向上には極めて重要な役割 を果たすわけですので、ぜひともそのような方々を交えてディスカッションしたいと思います。 進行ですが、まず藤田先生が「輸血実施の基本知識」を簡単にイントロダクションいたします。 その後、各演者にそれぞれの立場から15 分ほど発表いただきまして、最後 30 分程度いろいろな 角度から討論したいと思います。 それでは藤田先生、「輸血実施の基本知識」ということでお願いいたします。 東京都輸血療法研究会 世話人代表藤田 浩
オーバービュー:輸血実施の基本知識
【スライド1】 【スライド2】 今回のシンポジウムの目的でございます。輸 血現場からの問い合わせが多い項目でござい ます。今まで輸血受付をしている臨床検査技師 さんにとって、ベッドサイドの現状というのは 苦手な分野で、相談されても質問されてもなか なか答えにくい分野であったと思います。また、 東京都輸血療法研究会は第 11 回を迎えており ますけれども、今までのシンポジウムでは特に 取り上げておりません。節目にふさわしいテー マと考えております。 しかし、今までのQ&A として取り上げた内容も含まれており、また、輸血学会等でもインシデ ント・アクシデントレポートが学会報告されている内容かと思いますけれども、その報告されてい る分野は、このベッドサイドのところが多いという指摘もございます。 先ほど座長の田崎先生からご説明がありましたように、日本輸血・細胞治療学会では、最初に認 定検査技師が始まりましたけれども看護師制度も始まりまして、輸血医療はさまざまな多職種から 支えられているということで、今回のシンポジウムを企画いたしました。 【スライド3】 本日は、血液製剤から患者さんに輸血実施さ れる場面で、最初に臨床検査技師の立場から輸 血用血液の取り扱いについて、国際医療センタ ーの真鍋先生に解説していただきます。また、 患者さんに輸血するときには輸血セット等を 用いますけれども、われわれ医師も看護師も機 械の不得意なところがあります。本日は森川先 生に、輸血関連装置について臨床工学士の立場 から解説していただきます。 患者さんの観察につきましては、看護師の立 場から虎の門病院の池田先生、また副作用予防 とその対処ということで、医師の立場から駒込 病院の奥山先生に講演をしていただきます。 私からは、ちょっとはざまになっております 混合注射について説明させていただきまして、 シンポジウムを始めさせていただきたいと思い ます。 【スライド4】 最初から各論になってしまいますけれども、 混合注射というのは、ベッドサイドの質問では 当院で一番多い質問です。点滴を落としている ときに輸血製剤を落としてもいいか、という質 問は多々寄せられます。 混合注射は添付文書に書かれているとおり、 輸血用血液はするとしても生理食塩液のみで、 アルブミン製剤に関しては生理食塩液と中性 輸液のみとされております。 混合注射の注意としましては、側管輸血の場 合は、病棟では問題になる場面でございます。 製剤同士を合わせることはほとんどないと思い ますけれども、血漿交換でアルブミン置換液を つくる際は、アルブミン製剤と中性維持輸液の 乳酸加リンゲル等を混ぜるという行為は臨床現 場で行われておりますけれども、それ以外はほ とんどなく、やってはいけない行為のことが多 いかと思います。
【スライド5】 これは東京都臨床研究の一部の結果を示し たものです。浸透圧の高い薬品と混ぜると血液 製剤は溶血するという例です。左側は50%グル コースで、右側は高張液アルブミンです。よく 中心静脈栄養中にそのルートで輸血をするこ とがあるかと思いますけれども、しっかりルー ト内の溶液を生理食塩液でリンスしなければ、 このような溶血現象、あるいは凝集が起こって しまうことが知られております。 【スライド6】 当院で経験したヴィーンF(酢酸リンゲル) と抗菌薬、赤血球製剤の混合注射によって、末 梢の点滴が詰まった事例です。カルシウムを含 む輸液と血液製剤が反応いたしますと、このよ うな凝集塊をつくってしまうことがあり、患者 さんに迷惑を掛けることになります。 【スライド7】 右の写真は、抗DIC 薬メシル酸ナフォモスタ ット(フサン®)と赤血球濃厚液を混合反応し て30 分後の写真です。 薬品濃度依存性に溶血しているのがわかりま す。 【スライド8】 これは1 つの例ですけれども、予想外という ことです。薬品と赤血球製剤等を抜いて、その 血液を混合すると予想外の溶血反応が起こり 得ますので、混合注射は生理食塩液以外は厳禁 であるということです。このことを知らなかっ た方は覚えてお帰りになっていただきたいと 思います。 【スライド9】 まとめのスライドです。混合注射をしますと、 輸血効果を損ねるとともに患者さんの全身状 態を悪化させる可能性もありますし、廃棄する 理由にもなりますので、くれぐれも混合注射に ついては、現場から問い合わせがあったときに は厳禁ということでご注意いただければと思 います。以上です。 (座長:田崎先生) ありがとうございました。ご質問は後で、それぞれのところでいろいろお話が出ると思います。 一番最後のところで今の凝集塊等のお話も出るかもしれませんので、その時にまとめていきたいと 思います。 ちょっと失礼とは思いましたが、今のお話で2 点ほど追加させていただきます。 スライドには「高浸透圧」と書いてありますが、ハイパートニック(hypertonic:高浸透圧)だ けではなく、ハイポトニック(hypotonic:低浸透圧)もあります。よく間違えるのは蒸留水です。 例えばアルブミンを蒸留水で希釈すると低浸透圧で溶血を起こします。それから、混注は凝集や溶 血だけでなく感染症もありますし、中心静脈の場合には循環作動薬が結構入っていますので急にフ ラッシュしたりすると非常に危険だというような、いろいろな背景があるということ。当然、皆さ んはご存じだと思いますけれども、ちょっと付け加えさせていただきました。 先生、どうもありがとうございます。
(座長:田崎先生) それでは早速、今日のシンポジウムの1 番目の演題、「輸血用血液の取扱い上の注意」というこ とで、国立国際医療研究センター病院中央検査部の真鍋先生、お願いいたします。 【スライド1】 では、早速始めさせていただきます。 今回は基礎的知識ということで基本的なと ころを説明させていただきますので、この中に はベテランな方もいらっしゃると思いますけ れども、再確認ということで聞いていただけれ ばと思います。スライドを2 枚ほど追加してあ ります。お手元の資料にはありませんがご容赦 願います。 【スライド2】 今日は、全般的な注意事項と輸血血液の保 管・保存等について話を進めていきたいと思い ます。
(1)輸血用血液の取扱い上の注意
国立国際医療研究センター病院 中央検査部真
鍋 義 弘
【スライド3】 全般的注意事項です。一番問題になるところ ですが、血液の準備と照合についてです。 事務的な過誤による輸血事故を防ぐため、輸 血の準備および実施は1 回 1 患者。それと適合 性のチェックに関しては、各チェック項目を2 人で声を出し合って照合し記録することが重 要です。照合に関しては、2 人で声を出し合っ て何か打ち消すように読み合わせをするとこ ろがありますが、ガイドラインにも書いてある とおり交互に声を出し合って照合することが 重要です。 【スライド4】 次に、使用する血液製剤の外観チェックがあ ります。これは細菌汚染等により、色調の変化、 凝集物、凝固物、あるいは血小板にはスワーリ ングの消失がありますので、チェックする必要 があります。 これはたぶん日赤の輸血情報に載っていま すけれども、細菌汚染されたものに関してはこ れだけ真っ黒になって、セグメントのほうはも ともとの色だと思いますが、この差で確認しや すいということが言えると思います。 【スライド5】これはFFP(Fresh Frozen Plasma:新鮮凍 結血漿)で、乳びです。たまに病棟で看護師さ んや先生がびっくりしますけれども、凝固物や フィブリン物や凝集塊が見られなくて、明らか に乳びであるものに関しては使用できますの で問題がありません。
【スライド6】 FFP を溶かす場合です。恒温槽を使った場合 は温度が一定に保たれているのでいいのです が、例えば昔は洗面器を使って、温度計を使え ばまだいいのですが、人肌でして、温度が高い 場合には蛋白変性が起きたりします。それから、 漬けっぱなしで看護師さんがほかの仕事をし ていて、溶けたかなと思ったら、もう温度が下 がってクリオグロブリンが析出する場合があ ります。 【スライド7】 クリオグロブリンとフィブリンに関しては、 目視では確認することが難しいので、実際 30 ~37℃の加温で消失すればクリオグロブリン ということで、これは使用することができます。 【スライド8】 次は血小板に細菌が混入した場合です。色調 が変化したり、凝集物が幾つか見られる場合が あります。もともとのスワーリングは消失して おります。 【スライド9】 スワーリングがどういうものかを見ていた だくと、正常な血小板に関しては光を屈折する 性質があって、光の散乱現象、要するにスワー リングが確認することができます。これは定量 的ではありませんけれども、日赤の出庫の際で すとか、輸血室では出庫の際に確認していると 思います。ご利用の先生も、もう一回蛍光灯に さらして確認していただければと思います。 【スライド10】 先ほど藤田先生からお話がありましたが、輸 血情報にも混注、日赤で記載がありますのでご 確認いただければと思います。 【スライド11】 ほかの国で、混注しているものがあるかとい う こ と で 調 べ ま し た 。AABB ( American Association of Blood Banks:米国血液銀行協会) は、医師の確認のもとにという注釈があります が、ABO 一致の血漿、5%アルブミンや加熱人 血漿蛋白(PPF)、カルシウムが入っていない等 張電解質液などは使えますということが書かれ ております。それから、生理食塩液は日本でも 大丈夫です。
【スライド12】 実際に輸血に使うことに関しては、専用のろ 過装置を具備した輸血セットを使うというこ とになりますので、たとえ FFP でも乱用はで きませんので、その辺は確認していただきたい と思います。 【スライド13】 これは自分も疑問に思ったことがあります が、輸血セットの交換頻度はどうするかという ことです。 ここにある文献では、国、ガイドラインによ りさまざまであり、ちょっと根拠としては乏し いということも書いてありました。最も頻度の 高い推奨内容は 12 時間後の交換、あるいは 4 単位ずつ交換するということが書かれている そうです。 東京都福祉保健局の『院内感染対策マニュア
ル(2010 年版)』、あるいは CDC(Centers for Disease Control and Prevention:アメリカ疾病
予防管理センター)では、24 時間以内に交換しなさい。テルモのメーカーは、時間的なものは別 としてフィルターが詰まるまで。目安として、2 単位×5 パックまでと言われております。この 2 単位×5 パックというのは、2001 年に稲葉先生の文献がありましたので、それを引っ張ってきて いるのではないかと思います。 【スライド14】 輸血の準備に関しては、一番重要で、よく起 こりやすいことです。輸血セットをつなぐとき に力を入れすぎて破ってしまったり、吊り下げ たまま差し込むと血液が漏れてしまったりする ことがありますので、十分注意していただきた いと思います。実際に血液バッグを水平にして いても、差し込むときに斜めに刺さって破れた という例もありますので注意していただきたい と思います。 【スライド15】 輸血速度のことに関しては、ガイドラインに 書いてあるように資料を参考にしていただきた いと思います。 【スライド16】 患者観察です。即時型の副作用や遅発型の副 作用がありますので、5 分、15 分、その後も適 宜観察を続ける。輸血終了後も、遅発型の副作 用が出る可能性があるので観察する必要があり ます。 【スライド17】 副作用の発生時です。担当医に連絡は当たり 前ですが、輸血を中止し、適切な処置を行いま す。輸血セットの交換は、輸液が必要であれば、 生理食塩液、細胞外液類似輸液等を使うことに なります。 検査については、例えば溶血性の副作用が疑 われる場合は、血液型の再検査、不規則抗体検 査、直接クームス検査等の検査を行って原因を 究明することが重要です。
【スライド18】 次に、輸血血液の保管・保存等についてです。 【スライド19】 保管については、温度管理が不十分な状態で は、輸血用血液の各成分は機能低下を来しやす くなりますので、そういう意味でも一元管理を することがベストです。それから、病棟や手術 室などには、実際に使用するまで持ち出さない こと。手術室などに 30 分以上血液を置く場合 には、輸血部等と同様の条件下で管理すること が重要です。 【スライド20】 保存に関しては、専用の冷蔵庫、自記温度記 録計、警報装置の付いたものを使用しなさいと いうことになっています。たぶん皆さんは、冷 蔵庫を買ったときにはその標準温度計、施設に よっては別途温度計を買って、冷蔵庫の中に置 いて定期的にチェックしていると思います。実 際、ISO15189 を参考にしていただきたいので すが、温度計の信頼性ということで標準温度計 を使う。これを全部使えればいいのですが値段 が高いので1 本ぐらい買って、その温度計を定 期的にチェックして、誤差がどのくらいあるか記録することが重要であるといわれていますので、 【スライド21】 ここからは、各製剤の注意事項です。 赤血球製剤は、凍結や加温時の加熱による溶 血に注意しなければなりません。それから、「加 温する必要があるんですか」とよく聞かれます が、加温の適応はこちらに書いてありますので 参照していただければと思います。 【スライド22】 血漿製剤に関しては、どこも経験したことが あると思いますが、凍った状態では破損しやす いので取り扱いには注意したほうがいいと思い ます。実際に当施設でも、各病棟で溶かしてい る場合には毎月破損が結構ありました。現在は 輸血のほうで溶かして出庫するようになったの で、破損は実質的にはありません。 【スライド23】 どこが破れるのかという写真です。つなぎ目 のところなどは簡単に破れますので、こういっ た事がおきているって事がわかります。
【スライド24】 血小板製剤に関しては、できるだけ速やかに 使用して、やむを得ず保存する場合は20~24℃ で穏やかに振とうします。 これもほかの施設でもあると思いますが、あ まり血小板を使わない新人看護師さんや病棟 では、たまたま患者さんが処置していたり検査 に行って輸血できない場合、気を利かすわけで もありませんけれども、すぐ冷蔵庫に入れてし まいます。皆さんもご存じのとおり血小板は酸 と低温に弱いので、もうそうなったら使えなく なってしまいます。 【スライド25】 当院でも病棟は違いましたが3 回連続して冷 蔵庫に入れられてしまったので、それを防ぐた めに、こういう注意書きを全部血小板製剤ごと に入れています。注意書きを入れてからは、一 切冷蔵庫に入ることはありませんので助かっ たかなという感じであります。 【スライド26】 これは最後のスライドになりますけれども、 血液製剤取扱いについての再確認です。 使用の際には添付文書を確認する。これ以外 にも重要なことが書いてあるので一読いただけ ればと思います。 実際の製剤取扱い以外にも、血液製剤使用の 記録、同意書、検査記録等、それから遡及調査 といった必要な資料です。それから、輸血前検 体の保管・管理等、重要な業務があります。こ ういうところも、輸血管理室や輸血部では重要 な業務の1 つだと思われます。 それから副作用報告です。輸血終了後あるいは遡及調査とか、輸血後感染症の問題がありますの で、輸血終了後あるいはそれ以上まで管理することが重要であると思われます。 【スライド27】 今回の参考資料は、こちらに記載させていた だいております。 どうもご清聴ありがとうございました。 (座長:田崎先生) どうもありがとうございました。 赤血球、血小板、FFP、あと輸血全般についての注意点でしたが、何かフロアの方から、ご質問 あるいは追加などございますでしょうか。どうぞ遠慮なく手を挙げていただきたいと思います。 (質問:髙橋先生) 東大病院の輸血部、高橋でございます。 今のは輸血実施に関することなので意識して外したのかもしれませんが、輸血過誤防止というこ とで言うと、先生はご説明されなかったけれども、血液型の検査・確認のところも、先生がおっし ゃられたようなクロスマッチをするときの確認のようなことが大事だと思いますし、この後の演者 の方がたぶんお話しをされると思いますけれども、検体の取り違え防止ということが大事ではない かと思います。 (座長:田崎先生) ありがとうございました。 今のことに関して何かご追加がございますか。よろしいですか。確認の仕方とか、あるいは検体 の取り違え防止等々、よろしいでしょうか。 (回答:真鍋先生) 輸血専門にやっている方はガイドラインを見ていただければ、そのとおりだということになりま すが、血液型に関しては違うタイミングで採血をして確定するということですね。検体の採血の仕 方というのは、それぞれ施設のほうで業務規定として決めていると思いますが、少なくとも患者と の照合をきちんとやるということです。システムを使っている場合は、リストバンドと PDA(携 帯情報端末)で確認できますし、それを使わなければ名前を確認してというか、逆に患者さんに名 乗ってもらって確認することが重要だと思います。 (座長:田崎先生) 過誤防止の要点、どうもありがとうございます。 それでは時間が迫っておりますので、最後のディスカッションのときにまた伺いたいと思います。 ありがとうございました。
(座長:田崎先生) それでは 2 番目ですが、「輸血実施に関連する医療機器の注意事項」ということで、森川先生 お願いいたします。 【スライド1】 早速始めさせていただきたいと思います。 私は、藤田先生と同じ都立墨東病院で臨床 工学技士をしております森川と申します。よ ろしくお願いいたします。 本日は、「輸血実施に関連する医療機器にお いての注意事項」ということで、私臨床工学 技士の立場からお話しさせていただきたいと 思います。 【スライド2】 まず、輸血使用時に使用される医療機器と しまして、新鮮凍結血漿溶解装置ですとか、 輸液ポンプ、シリンジポンプなどの定量ポン プ、そして、輸液や輸血の加温装置や急速輸 血装置などがあるかと思いますが、それぞれ の注意事項等について説明していきたいと思 います。
(2)輸血実施に関連する医療機器の注意事項
東京都立墨東病院 臨床工学室森
川 紗 千 子
【スライド3】 初めに新鮮凍結血漿溶解装置です。 最近では、このスライド下の写真にあります ような専用溶解装置が発売されていますが、従 来は新鮮凍結血漿溶解には、検査室等で使用さ れる検体用の恒温水槽を代用している施設が 多かったかと思います。恒温水槽を使用した場 合は、先ほど真鍋先生のご講演にもありました とおり、水槽温度の設定間違いによって新鮮凍 結血漿の成分変性につながり、血液製剤が使用 できなくなる場合がありました。 専用装置ではなく、恒温水槽を血液製剤の溶解に使用している施設も多いかと思いますが、こう いった装置を使用する場合には、設定温度の確認と温度計での実際温度の確認を怠らないことが重 要かと思います。ちなみに当院の場合は、温度設定ミスを防ぐために、恒温水槽の設定温度のダイ ヤルを37℃に固定して使用しています。 【スライド4】 次に、定量ポンプを使用した輸血投与につい てです。 当たり前のことですが、ポンプを使用して血 液を注入する際には陽圧がかかりますので、血 管外へ漏出した場合には、落差注入に比べて血 管損傷等の障害が大きくなる恐れがあります。 また定量ポンプ自体には、血管外へ漏れ出した 際のアラーム機能がありませんので、ポンプ使 用時には刺入部の観察を頻回に行う必要があ ります。 実際に輸血にポンプを使用する場合には、新生児ではシリンジポンプを使用するかと思いますが、 大人では輸液ポンプを使用することが多いと思います。輸液ポンプを使用する場合には気を付けな ければいけない点が幾つかあります。 まず 1 つ目に、すべての輸液ポンプで輸血が行えるわけではありませんので、適正なポンプの 選択が必要になります。そして、ポンプを選択した上で、そのポンプに適応した専用のセットを使 用するということです。【スライド5】 まず、適正な輸液ポンプの選択についてです。 一般的に輸液ポンプに一番多く使用されて いる方式が、ペリスタリック方式というもので す。これは輸血に適さないポンプです。輸液ポ ンプの扉を開けていただくと、内部に駆動部が あります。ペリスタリック方式とは、図のよう な丸棒でチューブをしごいて中の薬液を送り 出していきます。この方式は、別名フィンガー 方式と書いてありますが、チューブを完全につ ぶしてしまうために血球が破壊される可能性 があり、輸血使用には適応しません。 【スライド6】 同じペリスタリック方式の中でも、フィンガ ー方式を改良したミッドプレス方式というも のがあります。これは前者とは違い、先ほどの 丸棒ではなく、このような板状の部品を用いて 薬液を送り出していきます。この場合には、図 のように回路を完全にはつぶさないため輸血 での使用が可能といわれています。 【スライド7】 また写真のような、ボルメトリック方式とい われる特殊な輸液ポンプですが、これでも輸血 使用が可能といわれています。これは回路の一 部にためられた液をシリンジポンプと同じよう に、ピストンを押し出すことによって送り出し ていきますので、血球が破壊されることなく輸 血に使用できるといわれています。実際にボル メトリック方式の輸液ポンプは、本体と回路が 特殊であり、消耗品にもコストがかかるため、 海外ではよく使用されているようですが国内で 使用している施設はあまり多くないようです。 【スライド8】 次に、適正な回路の選択についてです。 まず初めに、「輸液セット」と「輸血セット」 の構造の違いについて少し触れておきたいと 思います。左にあります「輸液セット」は、回 路の先端にろ過網が埋め込まれていて、網目の 大きさは40μm 程度といわれています。一方、 右側の「輸血セット」は、回路の先端ではなく 回路上部に2 段の点滴筒があります。その上段 にろ過網が組み込まれていて、ここで血液の凝 集塊等を除去する役割を果たしています。この 網目の大きさは、JIS 規格で 210μm 以下と定められています。 この網目の数値の違いを見ていただきますと、誤って輸血で輸液セットを使用してしまった場合、 この細かい網目部分で目詰まりを起こしてしまうということがわかるかと思います。また輸液セッ トを間違って使用した場合に、バッグ自体に圧をかけたり、ルートにポンプを用いて圧をかけた場 合には、網目部分で溶血を起こしてしまいますので注意してください。 【スライド9】 ポンプを使用して輸血を行う際に気を付け なければいけないことは、輸血用セットである ことのほかに、使用するポンプに適応した適正 な回路を使用しなければいけないということ です。専用セット以外を使用した際には、流量 精度の低下やアラームセンサーが正常に働か ずに事故につながる可能性があります。使用す る際には、ポンプのメーカー名ですとか、「ポ ンプ用」という表示を確認した上で使用をお願 いしたいと思います。 【スライド10】 次に、輸液や輸血を加温する装置について少 し触れておきたいと思います。手術室や救急領 域で広く使用されている機械ですが、このよう な装置に専用ルートをセットして、外側に温め られた循環水が流れることによって、この中を 通る血液や薬液が温められるという装置です。 送る速度はクレンメの調節によりますが、使用 する際の注意点としましては、やはり空気塞栓 の予防としてルート内の気泡を完全に除去し てから使用するということです。
【スライド11】 加温と同時に、最大流量30L/h 程度まで急速 な輸液や輸血を行うことができる、急速加温輸 液輸血装置というものもあります。外傷による 出血性ショックや大量の輸液・輸血を伴う手術 など、主に救急領域で使用される機械です。 この機械は、加圧装置にバッグを取り付ける ことによって、バッグを加圧し急速に輸液また は輸血を行っていきます。取り付けるバッグや 回路の気泡を十分に除去してから使用しない と、大量に空気投与する危険性がありますので、 空気の除去を完全に行った後に使用することが注意点です。 【スライド12】 急速輸血に関しましては、以前ローラーポン プを使用した輸血で事故が発生していたかと 思います。輸血投与にローラーポンプを使用す ることは今ではあまりないかと思いますが、輸 血以外で、人工透析や人工心肺装置では血液を 送るのにローラーポンプを使用しています。 ローラーポンプの特徴としては、強制的に送 り込む力が強いので、引き込み側に万が一開放 部分などがありますと、ここから大量に空気を 送り込んでしまうために、使用には細心の注意 が必要です。もちろん機械自体に気泡アラームが付いているものがほとんどですが、その気泡アラ ーム自体がオフにできるものや、アラームに連動してポンプが自動停止しないものなどもあります ので、細心の注意を払って使用する必要があるかと思います。 そして、送り側にも非常に高い圧がかかりますので、輸液ポンプですとか急速輸血装置を使用す るとき以上に刺入部の観察が重要になると思います。 ローラーポンプ使用時には、ポンプとチューブの接触部分で、ポンプが回るときに圧変化が起き やすいといわれています。陰圧が発生しやすいために溶血が起きやすいともいわれていますので、 そういったことを防ぐためにも、チューブの圧閉度を適正に調整しておく必要があることも知って おかなければならないと思います。 【スライド13】 そのほかに自己血輸血に関連する医療機器の 紹介としまして、手術中に出血した血液を直接 回収し、生理食塩水を用いて、洗浄・遠心分離 を行うことで赤血球を回収する自己血回収装置 という機械もあります。回収した血液をその場 で自己血として使用できるために、出血量の多 い心臓血管外科や整形外科領域の手術で使われ る機械です。 【スライド14】 最後に、臨床工学技士の立場から医療機器の 日常的な管理の重要性についてお話しさせてい ただきたいと思います。 医療機器を安全に、適正に使用するためには、 やはり日常の適正な点検が大切です。ここにあ る日常の点検とは、まず使用前の作動確認のこ とです。最近の医療機器のほとんどは、電源を 立ち上げますと機器自体で自己診断が行われま すので、まず初めにその自己診断が正常に行わ れて、その時に異常なアラームが鳴っていない ということを確認してから使用を行ってください。 また使用中にも、普段の作動状態をしっかり見ておくことが大切なことかと思います。ちょっと した異音や、触ったり見たりしている中で何かいつもと違うなという感覚も、機械の不具合に気付 く上では意外に大切なことだと思います。 そして、定期的な点検を行うことも大切なことです。各機械に応じた適正な定期点検期間を設定 して、臨床工学技士もしくはメーカーの細かい精度点検を行うことで、機械の安全性を定期的に確 認する必要があるかと思います。
【スライド15】 最後に、何よりも大切なのは日ごろの丁寧な 取り扱いです。ちょっと言いにくいことですが、 当院でも医療機器の破損が結構多く、私たちが いつも恐れていることは破損した機械をそのま ま使用していないかということです。実際に起 きたインシデントとしまして、写真を見ていた だきますと、輸液ポンプの扉の上部が破損して いたにもかかわらず、気付かずにそのまま使用 してしまったところ、機械が正常に作動せずに 輸液が全開投与されてしまったという事例もあ りました。 また破損だけでなく、特に輸液ポンプやシリンジポンプでは、本体が薬液や血液によって汚染さ れていることがあります。薬液等が機械の隙間を通って機械内部の基盤にまで入り込んでしまいま すと、誤作動を起こす危険性がさらに高くなりますので、機械に薬液や血液が付着した場合には速 やかに拭き取っていただき、いつもきれいに、そして大切に取り扱っていただくことが必要かと思 います。 今回は機械を取り扱う専門の立場から説明させていただきましたが、機械を使った安全な輸血を 行うためには、日ごろからの取り扱いや点検をしっかり行うことが患者さんの安全を確保すること にもつながり、そして私たち使用者側のインシデントやアクシデントをなくすことにもつながると 思っていますので、本日お話ししたことを日ごろ医療機器を取り扱う上での参考にしていただけた らと思います。 ご清聴ありがとうございました。 (座長:田崎先生) どうもありがとうございました。 ただ今のご発表に関しまして、どなたかご質問ございますでしょうか。 先生のところでは、そういう機器というのを臨床工学室でまとめて扱っているのですか。そして、 必要な部署に出しているわけですね。 (回答:森川先生) 当院では、病棟所有の機械ももちろんありますが、輸液ポンプ等は中央管理といいまして、私ど も臨床工学室で一元管理し、点検してきちんと作動確認したものを病棟等に貸し出ししております。 (質問:田崎先生) そうしますと、一番重要なことは機械が正しく作動するかということと、きちんとマッチした器 材が使われるかということかと思います。貸し出しのときに、これを使ってください、この機械に はこれですよというような、例えば輸液セットを機器と一緒にというかたちで貸し出すのでしょう か。その医療材料のほうですが。 (回答:森川先生) 貸し出し時は私たちから口を出すのは機械だけですけれども、消耗品も一緒にというと、なかな かそこまで業務的にできないところもありまして、一応当院の場合には、機械の取り扱いに関しま しては、各機器において院内で頻回に勉強会等を行っております。その際に、こういった説明など もさせていただいて、適正な回路を使用するなどの説明をして周知しているつもりです。 (座長:田崎先生) ありがとうございました。 そのほかございますでしょうか。 (質問:) 聞き間違えたかもしれないのですが、専用セットのところで、「血小板が輸液ポンプには使えな いということをご理解ください」と言っていたようですが、ちょっと勉強不足で申し訳ないのです がその理由を教えてください。 (回答:森川先生) メーカーに問い合わせをし、確認したところ、ミッドプレス式の輸液ポンプでも血小板輸血での 使用ができるように、2006 年にポンプ用血小板輸血セットが発売され、血小板輸血での使用が可 能だそうです。 (座長:田崎先生) そのほかなければ、よろしいですか。 どうもありがとうございました。 では次、藤田先生お願いします。
(座長:藤田先生) それでは、「輸血実施における不適合輸血防止と副作用観察の要点」、池田先生お願いします。 【スライド1】 よろしくお願いします。虎の門病院の看護 師の池田と申します。 【スライド2】 初めに、輸血は移植の一種であり、輸血治 療を行うには専門の知識と判断力が要求され ます。輸血に関する職種として、医師、検査 技師、看護師などがありますが、それぞれの 職種において、輸血に関する専門性の向上を 目的として学会認定制度が導入されています。 平成 24 年現在、各職種における学会認定制 度の状況はこのようになっています。