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DSpace at My University: 英語教育リレー随想 96号(2018.3) 異文化を理解する? しようとする?

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大阪女学院大学・大阪女学院短期大学 教員養成センター http://www.wilmina.ac.jp/ojc/edu/ttc/ 〈英語教育リレー随想〉第 96 号 1 2 月 14 日に高等学校の学習指導要領(案)が新たに提示された。小学校における外国語教育 から中学校を経て、高等学校までの「異文化理解」の教材の提示など、実は校種間にほとんど差 異がない。最新の検定教科書を分析してみても、日本の文化を紹介することも含めて、「自国の 文化や他の国や地域における文化を紹介する」ことが「異文化理解っぽい」教材として提供され ている感は否めない。(異?他?)文化とは果たして、さほど簡単に理解できるものだろうか。 筆者の都合により、担当授業で受講生とともに学んでいる EU 加盟国の文化にかんする指導を取 り上げてみることとする。

EU における外国語教育といえば、Common European Framework of Reference for Languages (以 降 CEF-R と記す)である。そこに記載されている言語政策、Prulilingualism はあまりに有名で ある。特に、ベトナムなどは CEF-R が提示されたのちすぐさまその共通参照レベルだけを国内の 英語教育に取り入れた。日本の英語教育分野にもゆっくりではあるが影響を与えている。ただ、 CEF-R には母語以外に Council of Europe が定めた方言も含めると 40 言語のうち、少なくとも 2外国語を習得し、EU 圏内を自由に就労も住居も移動できるようにするという最終目標がある。 そこで複数の外国語習得だけでは行き詰まることは目に見えており、様々な文化への柔軟性を育 むには Pruliculturism を目標とし、それを浸透させることも多民族が連なる EU 加盟国には重要 であり、そのことは CEF-R 内に記載されている。 これまた筆者の都合上、すべての EU 加盟国を見たわけではないので、研究上、縁のあるフィン ランドを実例に挙げる。なぜかフィンランドと聞くと、ムーミンのように穏やかで柔軟な国民だ と思われがちである(そう記した雑貨の本も見たことがある)が、実際に住居し、友人と話して みると決してそうではなかったといえる。すばらしいマナーを備えた国民であることは自信をも ってお伝えできるが、人口の少ない、これといった産業もなくなった国民がそんなに移民、さら には難民に対しお人好しではいられない。結果から述べると、急激な移民・難民の増加に現在の 国民の意識は頑なであると言わざるを得ない。携帯電話の世界的企業であった Nokia を米国の Microsoft に吸収されたフィンランドは一気に経済状態が悪化した。そこに絶妙のタイミングで、 シリアなどから難民を受け入れるよう EU 加盟国として余儀なくされた。国民も職を得ることが 困難な最中に、国内に難民や移民を受け入れた。スウェーデンと旧ソビエト連邦に占領された辛 い過去をもったフィンランドという国は実は、自国意識がかなり高い。そこに大きく異なる文化 を持つ集団が EU 加盟国ゆえに入ってきた。友人たちが言うには、まったく何を互いに話してい

大阪女学院大学・大阪女学院短期大学 教員養成センター

〈英語教育リレー随想〉

2018 年 3 月

異文化を理解する?しようとする?

福島知津子

第 96 号

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大阪女学院大学・大阪女学院短期大学 教員養成センター http://www.wilmina.ac.jp/ojc/edu/ttc/ 〈英語教育リレー随想〉第 96 号 2 るかわからないことへの不安感である。加えて、その人々が持つ個人ではなく「どこへ行くにも 集団で移動すること」、「男女の平等性が低い文化」に対し、脅威さえ抱いているらしい。 EU が目標とする Pruliculturism が根付いているか。それ以前にも教育にかんする政策は成され てきたが、外国語教育政策といえば、なかでも 2001 年「ヨーロッパ言語年」と銘され華々しく また崇高な目標をヨーロッパは世界に示した。第 3 次世界大戦をなんとしても防がねばならない その気合いの現われの1つであった。今、Council of Europe に属する言語教育部門が 15 年以 上かけて築いた成果が問われている。 自分が属さない文化への理解とはそうたやすいことではなさそうである。長年、このことで頭を 悩ましてきた EU でさえこの様子である。新たな学習指導要領にも小学校外国語活動から高等学 校の外国語まで「異文化理解」への指導に校種間に差異がないのは、それだけ「異文化理解」が 学校教育だけでは十分ではないことの現われなのではないだろうか。学習指導要領に記載されて いる「理解しようとする態度の育成」の文中にある 4 文字を英語科教員は考える必要がある。 (福島知津子 専任講師/教員養成センター)

参照

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