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人間関係づくりを目的としたグループ・アプローチの実践

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Academic year: 2021

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人間関係づくりを目的としたグループ・アプローチの実践

―不登校ゼロをめざして―

和歌山県教育センター学びの丘 教育相談課 はじめに 本県は、1000 人あたりの不登校出現率が長 らく高い状態にありました。現在は少しずつ全 国平均に近づきつつあります。教育センターで は、本県の不登校をさらに減らし、二度と増加 させないため、不登校予防としてのグループ・ アプローチの実践とその周知を推進事業の一つ の柱として取り組んでいます。 近 年 、 児 童 生 徒 の 社 会 的 ス キ ル ( ソ ー シ ャ ル ス キ ル ) の 低 下 が 指 摘 さ れ て い ま す 。 そ の た め に 、 勝 手な行動をとってグループ活動が出来なかった り、対人関係上のトラブルがあったり、いじめ や仲間はずれが平然と行われていたりすること が、不登校の一因にもなっています。その背景 には、少子化や核家族化、家庭環境の変化や社 会全般の生活環境の変化など様々なことが考え られています。この児童生徒の社会的スキルの 向上を図り、対人関係能力やコミュニケーショ ン力を培う効果的方法として、グループ・アプ ローチが取り上げられています。グループ・ア プローチは当センターが、グループ活動をとお してそれぞれの参加者に心理的、行動的アプロ ーチを行い、心理的援助、人間的成長、ソーシ ャルスキルの向上を目的とする活動を総称して 呼んでいるもので、「ソーシャルスキル・トレ ー ニン グ」・「 構成 的グ ルー プエンカ ウンタ ー (SGE)」・「アサーション・トレーニング」 ・「ラボラトリー方式」などがあります。 不登校予防としてのグループ・アプローチ 社会性の低下やコミュニケーション力の低下 などによって起こる影響を、下記のように考え ました。 こ の、「学校が面 白くない」「学校へ行きた くない」という児童生徒を少しでも少なくさせ るには、社会性やコミュニケーション力を培う グループ・アプローチが効果的な手法なのでは ないか、そのことが不登校予防の有効な手法に なるのではないかと考えたわけです。(下記参 照) グループ・アプローチはラボラトリーから グループ・アプローチには「構成的グループ エンカウンター」や「アサーション・トレーニ ング」などがあり、クラスや児童生徒の状況や 学校が面白くない 学校へ行きたくない 対人関係における気遣い 学校での心のエネルギーの浪費 トラブル を少なくすれば登校しやすくなる とにかく仲良くなる コミュニケーション力を高める

グループ・アプローチ

社会性の低下、コミュニケーション力の低下 自己中心的な行動、対人関係の未熟さ 対人関係における気遣い 学校での心のエネルギーの浪費 トラブル 学校が面白くない 学校へ行きたくない

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担任の目的に応じて適したエクササイズを行い ますが、これらはファシリテーター(学校にあ っては授業者)の理解度と経験によって効果に 差が出やすくなる傾向があります。しかし、「ラ ボラトリー方式」は、初心のファシリテーター でも比較的簡単に行えてそれなりの効果が期待 できます。その理由は、①すぐに使えるツール (コピーしてすぐに使える)があること。②子 ども達の知的好奇心を刺激し、興味を持って楽 しめること。③一人でも協力しない者がいると 課題が解けない仕組みになっているために、協 労的であること。④協労作業によってグループ のメンバーが仲良くなれること。⑤何よりファ シリテーターの経験がなくても一定の効果を得 ることができることです。 まず、「ラボラトリー方式」からはじめ、協 労 作 業 に よ っ て ク ラ ス の 人 間 関 係 を 円 滑 に し な が ら 、 ク ラ ス の 課 題 解 決 に 向 け た エ ク サ サ イ ズ を 行 っ て い く 土台を作って行きます。そのことによって少し ずつファシリテーターとしての経験を積み、「構 成的グループエンカウンター」や「アサーショ ントレーニング」など課題に即したエクササイ ズへと進んでいけばよいと考えました。とりあ えず「ラボラトリー方式」からはじめて、クラ スの課題に照らし、「構成的グループエンカウ ンター」や「アサーション・トレーニング」を 行って行けばよいということです。 実践事例から 実践校は、農村地域で、海にも面しているた め、漁業も行われる、農業、漁業、商業の混在 した地域の中規模校です。以前は不登校生徒の 出現率が高かったのですが、最近は減少傾向に あります。クラブ活動の盛んな学校で、少年、 少女のスポーツクラブチームも盛んです。生徒 指導上の問題については、近隣の学校とほとん ど変わらない状況です。 当時の2年生は、小学校6年生の時に、児童 の指導に課題のあった学年でした。実践校入学 に際して、中学校は授業実践や生徒指導に定評 のある教員を配置して、学年経営にあたりまし た。その甲斐あって、生徒指導上の問題もあま りなく、授業も整然と行われていました。しか し、小学校の時からの男女の仲の悪さや女子生 徒の間の対人関係上のトラブルなど、小学校時 の課題が露呈する可能性が高い状況にあり、そ れによって、またいつ崩れてくるか分からない 緊張感がありました。 前年の終わりに実施したQ-U(学級集団分 析尺度)では、荒れはじめの学級集団であると いう分析結果がだされた学級がいくつかありま した。 このようなことを背景として、学校長が生徒 の人間関係作りにグループ・アプローチを取り 入れたいと考えたのです。 2年間の取り組みですが、Q-U(学級集団 分 析 尺 度 ) の 学 校 生 活 満 足 群 に 位置する生徒が、 1 年 間 で ど の ク ラスも50%(全 国 平 均 3 5 % ) を越えるようになりました。 グループ・アプローチの実践状況は別紙の通 りです。〔実施校ではグループ・アプローチの ことをグループワークとよんで行っています〕 実践校の成果 (まとめにかえて) まず、何より1年間の実践で、Q-Uの学級 生活満足群が各クラスとも50%(全国平均3 5%)を超えたことが大きな成果で、最も高か ったクラスは63%ありました。 次に、実際の生徒からの声です。Q-Uの結 果を受けて、3年生の担任が生徒と個人面談を 行いました。そのときに、「学校へ来るのが楽

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しくて仕方がない」という生徒の声が何人から か聞かれました。また、男子と女子の仲が良く なったという生徒が何人もいました。3年生は、 小学校の時、男女の仲が悪かった学年でした。 その学年の生徒が、男女の仲が良くなったので す。 不登校も、新たに不登校になった生徒は一人 もいませんでした。現在、不登校を理由として 欠席している生徒はゼロです。また、女子の間 の ト ラ ブ ル も 以 前 よ り 少 な く な っ て き て い ま す。 2年間の取組をとおして、不登校がゼロにな ったことは、グループ・アプローチが不登校予 防として効果があることが実証されたというこ とです。 〔グループ・アプローチの参考文献〕 ラボラトリー方式については、南山大学が特 に研究をしています。南山大学の報告書である 以下の2冊を参考文献としました。 ○「豊かで潤いのある学びを育むために」 報告書 平成19年3月発行 ○「教え学び支え合う教育現場の連携づくり」 中間報告書 平成20年3月発行 南山大学 2冊とも、教育推進GP推進本部編集 市販のラボラトリー方式の文献 ○「楽しいグループワーク」 大阪グループワーク研究会編集 遊戯社 ○「協力すれば何かが変わる―続・学校グルー プワーク・トレーニング」 日本学校GWT研究会編集 遊戯社 ○「学校グループワーク・トレーニング3 友 達っていいな自分ていいな」 日本学校GWT研究会編集 遊戯社 ○「学校グループワーク・トレーニング(改 訂)」 横浜市学校GWT研究会編集 遊戯社 インターネットから ○「横浜プログラム」 横浜市教育委員会 アドレスは以下のとおりです http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/plan-hoshin/sk ill.html

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別紙

【1年生】 (入学から10月まで、計6回) ○目的:適切な対人関係を築き、人間力を向上 させる。 実施月:5月 テーマ:Q-Uテスト ねらい:Q-Uを用いて、生徒一人ひとりの 状況(承認感、被侵害・不適応感) を把握するとともに、学級集団の状 態を分析する。 実施月:6月 テーマ:自己紹介すごろく ねらい:簡単な遊びを通して、自分を理解し てもらう伝え方、人の話を聞く態度 を養う。 〈横浜プログラム(横浜市教育委員会)より〉 実施月:6月 テーマ:聴き方上手になれるかな ~話すこと・きくこと体験~ ねらい:話の聴き方によって話やすくなった り話しにくくなったりすることを知 る。友達と思いやりのある会話や話 し合いができるようになる。 〈横浜プログラム(横浜市教育委員会)より〉 実施月:7月 テーマ:ムシムシ教室の席がえ ねらい:人の話をよく聴いたり、タイミング 良く話したりすることの大切さを体 験する。 〈学校グループワーク・トレーニング3 (遊戯社)より〉 実施月:9月 テーマ:お願いします ねらい:相手の気持ちや立場を尊重しながら 頼み事をする方法をみにつける。 〈横浜プログラム(横浜市教育委員会)より〉 実施月:10月 テーマ:僕らのクラス ねらい:望ましいクラスについて考え、意見 を出しあい、自分たちのクラスにつ いてふりかえり、クラスの課題を発 見する。 〈学校グループワーク・トレーニング3 (遊戯社)より〉 【2年生】 (1年次6月より2年次11月まで、計12回) ○目的:生徒の人間関係を良好にし、市民性の 育成を期する。 実施月:1年次9月 テーマ:嵐の里 ねらい:グループワーキングを通じて、コミ ュニケーションをとる中(とらざる 得ない中)で、幅広い友人関係を築 く。お互いの良さを広く認め合う。

〈新版 Creative Human Relations「202.匠の里」 (株式会社 プレスタイム)を筆者がアイド ルグループ嵐のメンバーに書き換えて改良 したもの〉 実施月:1年次9月 テーマ:匠の里 ねらい:グループワーキングを通じて、コミ ュニケーションをとる中(とらざる 得ない中)で、幅広い友人関係を築 く。コミュニケーションに必要な声 の出し方、態度を学ばせる。

〈新版 Creative Human Relations「202.匠の里」 (株式会社 プレスタイム)〉 実施月:1年次10月 テーマ:島耕作 ある日の出来事 ねらい:時と場に応じた言動とスキルを身に つける。グループ討議を通じて、意 見を言う、意見を聞く態度、スキル を養う。互いのよい点に気づく。 〈道徳教材「自分を見つめる」より〉 実施月:1年次10月 テーマ:クラスにとって大切な人は、どんな

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人? ねらい:学級役員を選出するときに、リーダ ーの選ぶ基準を学ぶ。理由をつけて、 自分の意見をまとめる。リーダーの 資質を考えることにより、自己をみ つめ自己の向上をはかる。 実施月:1年次10月 テーマ:僕らの編集室 ねらい:活動的なグループワークで、協力し て も の ご と を 成 し 遂 げ る こ と を 学 ぶ。 〈学校グループワーク・トレーニング(遊戯 社)より〉 実施月:1年次11月 テーマ:半分おとな、半分子ども ねらい:礼は、心と形がともなっていなけれ ばならないことを知り、適切な言動 を 心 が け よ う と す る 実 践 意 欲 を 培 う。グループ討議を通じて、意見を 言う、意見を聞く態度、スキルを養 う。互いのよい点に気づく。 実施月:2年次5月 テーマ:Q-Uテスト ねらい:Q-Uを用いて、生徒一人ひとりの 状況(承認感、被侵害・不適応感) を把握するとともに、学級集団の状 態を分析する。 実施月:2年次7月 テーマ:「これだけは許せない」ランキング ねらい:今後のグループ活動を進めるにあた り、どういう行為をしてはいけない かをお互いに認識し、今後の取り組 みをスムーズに進める。互いに意見 を出しあうことにより、互いの考え を知り、理解を深める。 実施月:2年次8月 テーマ:先生ばかりが住んでいるマンション ねらい:お互いに情報を交換し、コミュニケ ーションを図りながら、互いの親近 感を深める。 〈学校グループワーク・トレーニング(遊戯 社)より〉 実施月:2年次9月 テーマ:バースデーチェーン(グループ分け) 自己紹介すごろく ねらい:互いにすごろく遊びの形式で自己紹 介を行い、互いの理解を深める。 〈横浜プログラム(横浜市教育委員会)より〉 実施月:2年次10月 テーマ:ちょっと大人の楽しみ上手、盛り上 げ上手 ねらい:楽しむときは楽しむ、特に、体育祭 があり、みんなが楽しめるように気 をつけることを考えさせる。 実施月:2年次11月 テーマ:目指せ!最強のメンバー ねらい:リーダーがそのリーダーシップを発 揮できるように、まわりのメンバー が心がけることを知り、今後のグル ープワーク活動に活かしていく。 【3年生】 (2年次7月より3年次11月まで、計13回) ○目的:適切な対人関係を築き、人間力を向上 させる。 実施月:2年次7月 テーマ:ムシムシ教室の席がえ ねらい:言葉で伝えることの必要性と、グル ープ全体で課題を解決する達成感を 共有する。 〈学校グループワーク・トレーニング3(遊 戯社)〉 実施月:2年次9月 テーマ:嵐の里 ねらい:言葉で伝えることの必要性と、グル ープ全体で課題を解決する達成感を 共有する。

〈新版 Creative Human Relations「202.匠の里」 (株式会社 プレスタイム)を筆者がアイド ルグループ嵐のメンバーに書き換えて改良

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したもの〉 実施月:2年次9月 テーマ:つながったね!みんなの心(長縄と び) ねらい:活動を通して、よりよい集団を作る ためにはどんなことが大切かを考え る。 〈横浜プログラム(横浜市教育委員会)より〉 実施月:2年次9月 テーマ:「発見!僕・私のいいとこは・・・」 ね ら い : 自 分 の よ い と こ ろ を 指 摘 し て も ら い、多様な見方や自己認識との違い を知り、自分を見つめ直す機会とす る。 〈横浜プログラム(横浜市教育委員会)発見 ビンゴを参考に作成〉 実施月:2年次10月 テーマ:「ケータイ安全教室」 ねらい:映像資料とプリント(自作)を活用 し責任あるケータイの利用について 理解する機会とする。 〈ケータイ安全教室映像教材〉 実施月:2年次11月 テーマ:犯罪から自分の身を守ろう ねらい:危険を感じ、回避する力など安全を 見極め、危機を回避する能力をロー ル プ レ イ の 体 験 を 通 し て 身 に つ け る。 〈横浜プログラム(横浜市教育委員会)より〉 実施月:3年次5月 テーマ:未来予想図 ね ら い : 新 し い 一 年 間 の 生 活 に 目 標 を 見 つ け、希望を持って望む。 〈横浜プログラム(横浜市教育委員会)より〉 実施月:3年次5月 テーマ:Q-Uテスト ねらい:Q-Uを用いて、生徒一人ひとりの 状況(承認感、被侵害・不適応感) を把握するとともに、学級集団の状 態を分析する。 実施月:3年次6月 テーマ:宝島を脱出せよ ね ら い : 口 頭 で の 情 報 交 換 と 話 し 合 い に よ り、協力して課題解決をさせる。 〈学校グループワーク・トレーニング3(遊 戯社)〉 実施月:3年次7月 テーマ:あなたはどちら? ねらい:さまざまな人の考え方の違いを気づ かせる。 〈横浜プログラム(横浜市教育委員会)より〉 実施月:3年次9月 テーマ:上手な断り方 ねらい:要求に応じられないときに、適切に 断る方法を考えさせる。 〈横浜プログラム(横浜市教育委員会)より〉 実施月:3年次10月 テーマ:クラスをパワーアップ やればでき る ねらい:個人の意見をグループ内で一つにま とめ、発表するという活動を通じて、 グループやクラスに一体感とやる気 を起こす。 〈横浜プログラム(横浜市教育委員会)より〉 実施月:3年次11月 テーマ:めざせ五輪 ねらい:口頭での情報交換により、グループ でのコミュニケーションを深め、情 報処理の方法を学ばせる。 ご覧いただいておわかりのとおり、ソーシャ ルスキル学習(グループワーク)の内容は、出 版物やインターネットから取ることのできるエ クササイズや、それを改良したり、参考にして 考案したものです。 授業は、その内容に照らし合わせて、道徳や 特活の時間に行っています。

参照

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