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全文

(1)

平成

19 年度修士論文

大電力

RF/DC 変換用 GaN ショットキーダイオ

ードとレクテナへの応用に関する研究

徳島大学大学院 先端技術科学教育部 システム創生工学専攻

(2)

図3 アドミタンスの順方向特性(f=2.45GHz)

研究題目

大電力

RF/DC 変換用 GaN ショットキーダイオード

とレクテナへの応用に関する研究

氏 名

伊藤 秀起

1.はじめに 宇宙太陽光発電、電気自動車の無線充電などマイクロ波による無線電力伝送が研究されている。受 電部における大電力小型化、高効率化は整流回路(レクテナ)のダイオード特性に大きく依存し、大 電力RF/DC 変換用には、大電流密度、高耐圧かつ低容量、低抵抗であることが重要である。そこで 高い絶縁破壊電界を持つGaN を用いて、レクテナに適したショットキーダイオードを設計・試作し 評価を行った。 2.デバイス設計と試作 SPICEを用いてレクテナのRF/DC変換効率とダイオ ード特性の関係についてシミュレーションを行い、目標 値を耐圧100Vに設定した。レクテナの高効率化には特 に寄生抵抗、寄生容量をなるべく下げたデバイス構造で あることが重要である。寄生容量低減と放熱性の向上の ため半絶縁性のSiC基板を用い、エピの低抵抗化のため に厚さ 1µm、高不純物濃度 4×1018cm-3のn+GaN層を 形成し、その上に耐圧100Vを想定して厚さ 1µmの不純 物濃度 1×1017cm-3 のn-GaN層を設けた。アノード電 極はSiO2膜を堆積させ2 µm×100 µm開口し、その上か らNi/Auを蒸着し耐圧向上のため、フィールドプレート 構造とした。カソード電極は低抵抗化のためリセスオー ミック構造とし、Ti/Al/Ti/Auを用いた(図 1)。寄生容量 低減のため、パッド部はGaNをSiC基板までエッチング してダイオード本体部分とは分離し、エアブリッジ配線 を行った。 3.測定結果 C-V測定から不純物濃度は約 2~3×1017cm-3であっ たため逆方向耐圧は約 50Vであった。ON抵抗は約 10 Ω で 順 方 向 最 大 電 流 は 1 フ ィ ン ガ ー で 0.4A( 2× 105A/cm2)以上であり、連続測定による特性劣化も見ら れなかった(図 2)。実使用周波数帯である 2.45GHzでの 電圧-アドミタンス特性を評価した(図 3)。コンダクタ ンス成分はダイオードがON状態になる約 0.8Vで急上 昇し、直列寄生抵抗値で一定となった。一方、サセプタ ンス成分はダイオードがONになると減少し、蓄積電荷 の影響は見られず良好なアドミタンス特性であった。 4.まとめ 【大野研究室】 金めっき カソード電極 n-GaN n+GaN SI-SiC sub u-GaN アノード電極 金めっき カソード電極 n-GaN n+GaN SI-SiC sub u-GaN アノード電極 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 -0.005 0.000 0.005 0.010 0.015 -0.05 0.00 0.05 0.10 0.15 Yim Susce ptan ce [S ] Voltage [V] Yre C o n du ct an ce [S] 図2 電流電圧特性 図1 デバイス断面構造 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10-9 10-8 10-7 10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 Current (A) Voltage (V)

(3)

目次

第1章 序論

... 4

1.1 はじめに ... 4 1.2 GaN ショットキーダイオード ... 6 1.2.1 GaN の物性上の特徴 ... 6 1.2.2 GaN 系ショットキーダイオードの現状と問題点 ... 7 1.3 本研究の目的 ... 8 1.4 本論文の構成 ... 9

第2章 ダイオード特性とレクテナ

RF/DC 変換効率の関係 ... 12

2.1 レクテナの概要 ... 12 2.2 レクテナの動作理論 ... 14 2.3 RF/DC 変換効率のダイオードパラメータ依存性の解析 ... 20 2.3.1 ダイオードのSPICE モデルとパラメータの関係 ... 22 2.3.2 ダイオード直流成分に起因するSPICE パラメータの影響 ... 24 1. 直列抵抗Rs... 24 2. 逆方向飽和電流 Is ... 24 3. 理想因子n 値 ... 25 4. 逆方向リーク抵抗RP ... 25 2.3.3 ダイオード交流成分に起因するSPICE パラメータの影響 ... 27 1. 空乏層容量Cjo ... 27 2. 遷移時間TT ... 27 3. 接合電位Vbi ... 28 2.4 まとめ ... 31

第3章 ダイオードの設計と作成プロセスの検討

... 33

3.1 エピ構造の検討と設計 ... 33 3.1.1 エピの厚さ、不純物濃度の設計 ... 35 3.2 デバイス構造の設計 ... 38 3.3 マスク(TEG パターン)設計 ... 42 3.3.1 高周波測定用1フィンガー ... 43 3.3.2 実装用マルチフィンガー ... 44 3.3.3 アノード電極長・幅依存性測定用フィンガー ... 46 3.3.4 円形ショットキー構造 ... 46 3.3.5 抵抗成分測定構造 ... 46

(4)

3.4 デバイス作成プロセスの検討 ... 48 3.4.1 メサ形成(n-GaN 層)エッチング ... 49 3.4.2 アイソレーションエッチング ... 51 3.4.3 デバイスの標準作成プロセス ... 53 3.5 まとめ ... 56

第4章 ダイオードの電気特性による評価

... 58

4.1 サファイア基板上GaN ショットキーダイオードの特性評価 ... 58 4.1.1 C-V 測定による評価 ... 59 4.1.2 逆方向電流電圧特性 ... 63 4.1.3 順方向電流電圧特性 ... 65 4.1.4 TLM 測定による評価 ... 68 4.2 SiC 基板上 GaN ショットキーダイオードの特性評価 ... 69 4.2.1 C-V 測定による評価 ... 70 4.2.2 逆方向電流電圧特性 ... 72 4.2.3 順方向電流電圧特性 ... 75 4.2.4 TLM 測定による評価 ... 79 4.3 まとめ ... 80

5 章 ダイオードのモデル化とパラメータ解析 ... 82

5.1 高周波アドミタンスの小信号解析による容量モデルの検討 ... 82 5.1.1 高周波測定系の構築 ... 82 5.1.2 パッド間寄生容量測定 ... 84 5.1.3 レクテナ使用周波数(2.45GHz)でのアドミタンス測定 ... 86 5.2 2 次元デバイスシミュレーションによる順方向容量の解析 ... 88 5.3 GaN ショットキーダイオードの SPICE モデル ... 90 5.4 回路モデルのパラメータの算出 ... 91 5.4.1 寄生抵抗RF の検討 ... 91 5.4.2 試作デバイスのSPICE パラメータ ... 92 5.5 まとめ ... 94

6 章 結論 ... 96

6.1 本研究のまとめ ... 96 6.2 今後の課題と展望 ... 97

謝辞

... 98

著者のこれまでの研究発表

... 100

(5)

第1章 序論

本章では、マイクロ波送電と GaN ショットキーダイオードの必要性について述べ、本 研究の目的を明らかにし、また論文全体の構成を示す。

1.1

はじめに

近年、インターネット、携帯電話などに代表される「ユビキタス情報社会」に対応する ために、様々なシステムが導入されつつある。その一方、情報だけがワイヤレスでは不便 であり、唯一残された電源もワイヤレス化したい、いう要望が高まっている。電力輸送は 有線に寄らずとも、無線でも行うことができる。基本的に光を含む電磁波は「エネルギー」 であるため、無線でエネルギー伝送が行えることは、電磁波の発見とほぼ同時期から知ら れていた。現在代表的な電力伝送技術にはその原理で電磁誘導型、電波受信型、共鳴型の 3 種類に分別できる[1]。なかでも電波のエネルギーをアンテナで送受信できることをその まま利用したものである電波受信型は、マイクロ波を用いた無線電力伝送により、長距離 送電が可能であるうえフェーズドアレーという電気的手法を用いたビーム方向制御が可能 であり空気電離層等の媒質による吸収も他の周波数に比べ非常に小さいという特徴がある [2]。 無線によるエネルギー伝送の概念をはじめて提唱し、実際に実験を行ったのは 20 世紀 初頭のN.Tesla である[3][4]。1899 年に 150kHz、300kW のエネルギー放射実験を行っ ている。過去の日本でのマイクロ波電力伝送の研究は、1994 年には,離島や山頂への送電, 緊急時の送電システムを想定した地上2 定点間における大規模マイクロ波電力伝送実験が 行われた[5]。さらに,京都大学を中心としたグループによりガス管内を移動するロボット への無線電力伝送システムに関する研究、農業用電気駆動車両への自動追尾式マイクロ波 送電システムに関する研究、また,ユビキタス電源の実現を目指す研究として微弱なマイ クロ波を用いて低消費電力機器をバッテリーレス駆動,コードレス充電を行うことができ る無線電力空間システムなどがなされている。またマイクロ波の無線電力伝送はSuica や ICOCA に代表される電子タグ(RFID) 等の小電力伝送用途への応用でも非常に重要であ る[6]。 近年のマイクロ波送電の代表的なものに電気自動車への無線充電システムに関する研究 などがある[7]。またマイクロ波無線電力伝送の新たな応用として提案されている建物内無 線配電システムがある。建物内無線配電システムでは閉空間(導波管)をマイクロ波伝送 路として用いるため、人体への影響を懸念する必要がなく、幅広いシステム構築が可能と なる。このシステムは,建物の構造体や仕上げ材により生じる閉空間をマイクロ波伝送路 として利用し無線配電を行うものである。これらの研究は過去のものと違う点は有限の面

(6)

積・体積で大電力を受電する必要がある点である。ここで課題になってくるのがレクテナ (Rectena;rectifyingAntenna)である。レクテナはマイクロ波を受電し、整流する素子 のことである。マイクロ波送電の受電・整流はマイクロ波送電に固有の技術であり、通常 アンテナとダイオードを用いた整流回路を接続したレクテナを用いる。例えば電気自動車 の場合、車体底面の面積が有限であること、また大電力を急速に充電することの二点がシ ステム上の要点となっている。そのため,レクテナを出来る限り小型化,大電力化(数W 以上)する必要がある。また建物内無線配電システムの場合、要求仕様として、(1)50W 程度の電力が取り出せること(2)受電アダプタを小型化することが挙げられる。具体的 な寸法としては、床に埋め込む受電アダプタを100mm3程度の大きさに収めることが必要 である。1.の大電力化を考えた時に数十~数百 W 以上の電力を高効率整流するレクテナの 開発が必須となってくる。そのため現時点では高周波用に用いられているSi や GaAs のシ ョットキーダイオードで電力分配器を組み合わせることや、いくつものショットキーダイ オードを直並列に接続して、ダイオードへの入力電力を小さくする以外の方法がない。現 在2.45GHz、100W を 50%で整流するレクテナが開発されている。しかし 1W 程度のレ クテナであれば、70%以上の変換効率をもつにも関わらず、この手法ではどうしても電力 分配回路での損失が大きくなる。さらにこの手法では(2)の問題点を考慮した際、求め られる容積内に納めることができないといった課題も挙げられる。この2 つの課題解決の ためには、1 つの整流回路で対応可能な電力を大きくする必要がある。そのためには、1 つのショットキーダイオードで扱える電力を大きくする必要がある。そのためには、マイ クロ波帯の周波数でも動作が可能かつ、逆方向耐圧の高いショットキーダイオードが必要 図1.1 建物内無線配電システムの概念図

(7)

である。 実際にはダイオードの逆方向耐圧だけでなくON 抵抗、ON 電圧をなるべく小 さく、空乏層容量、寄生容量をなるべく小さくすることが必要であるが、レクテナとダイ オードについての詳細な関係の議論は2 章に譲る。

1.2

GaN ショットキーダイオード

1.2.1 GaN の物性上の特徴

ガリウムナイトライド GaNは、高周波用デバイスとして実用化されているGaAsと同じ Ⅲ-Ⅴ族半導体であるが、GaAsの高速性に加えてより高出力可能な素子として期待されてい る。表1は電子デバイスに用いられる代表的な半導体材料の特性をまとめたものである。 GaNは表に示すような物性値を持ち高電子移動度、高電子飽和速度、ワイドバンドギャッ プ(Si、GaAsの約2~3倍)、高絶縁破壊電界(Si、GaAsの10倍)熱伝導度が大きいなどの 物性上の特徴をもっている。これらの特性は電子デバイス特性に高パワー(高耐圧、高電 流密度)動作、高速動作、低損失動作、あるいは高温、放射線照射下などの過酷環境下で の動作が可能であるなどさまざまなメリットをもたらす[8][9]。

GaN GaAs Si SiC

バンドギャップエネルギー (eV) 3.4 1.4 1.1 3.3 電子移動度 (cm2/Vs) 1200(バルク) 2000(2DEG) 8500 1500 1000 電子飽和速度(cm/s) 2.5×107 2×107 1×107 2.0×107 絶縁破壊電界 (V/cm) 3.3×106 4×105 3×105 3.0×106 熱伝導率[W/cmK] 2.1 0.5 1.5 4.9 電子のドリフト移動度ではGaAs が高く、これが高周波デバイスとして開発実用化された 理由である。しかし高電界の状態にあるデバイスでは電子は飽和速度近くで走行するため、 低 電界でのド リフト移動 度よりも飽 和速度の方 が重要にな る。GaN はシリコンの 1×107cm/s、GaAs の 2×107cm/s より高い値が記されており、優れた高周波特性が期待で 表1-1 主な半導体の物性定数

(8)

きる。そのため低電界移動度が高いことも重要な要素である。低電界移動度はGaAs には 劣るが、シリコンと同等である。先にも述べたようにワイドバンドギャップの GaN はシ リコンに比べて1 桁近い破壊電界を持つ。高周波特性の指標の 1 つである遮断周波数は材 料の飽和速度とチャネル長により決定され、GaN は 2.7×107[cm/s]であり、Si の 1× 107[cm/s]や GaAs の 2×107[cm/s]より高い値を示しており、優れた高周波特性であると言 える。これより、GaN 系電子デバイスは次世代の高速高出力素子として期待されている [10]。

1.2.2 GaN 系ショットキーダイオードの現状と問題点

前節で述べた優れた材料的特徴からGaNを用いたショットキーダイオードは逆回復時間 が非常に小さく高速で動作しかつ高耐圧動作が期待できる。このことから大電力のレクテ ナ用途に適した特性を持っている。また現状、優れた結果も数多く発表されている。しか し高周波、高出力デバイス用材料として優れた物性特性を持つGaNではあるが、実用性能 に関しては十分でないのが現状である。 まず課題として、ショットキーダイオードの逆方向リーク電流(ショットキーダイオー ドがオフ状態のときに流れる電流を指す)の低減、オーミック電極の接触抵抗の低減があ る。現状の GaN 系電子デバイスにおいてこれらの原因は結晶の不完全性などが主なもの とされている[11]。このことにより、ショットキー特性の理論値より数桁大きい逆方向リ ーク電流が流れる。このリーク電流低減のために従来ショットキー電極材料として用いら れているNi/Au よりもショットキー障壁高さの高い Pt 系電極材料を用いた検討がなされ ている[12]。オーミック電極の低抵抗化には Ti/Al 系電極を 800℃~900℃での短時間熱処 理により良好なコンタクト特性が得られるようになってきている。ショットキー性、オー ミック性の両面を改善するためには今後も結晶の品質、前処理等を含めた改善が必要であ る。 また次に GaN ショットキーダイオードを用いたレクテナ用高周波パワーデバイスの高 電圧・高出力動作への課題として、物性値から予想される十分な逆方向耐圧が得られない こと、表面準位や基板中の深い準位の影響による不安定現象があげられる。逆方向耐圧を 上げるには、一般にフィールドプレート構造や表面処理が用いられる。フィールドプレー ト構造とはショットキー電極端への電界集中を緩和させることで耐圧を上げる構造である [13]。またこの構造を用いることでショットキー電極端から流れるゲートリーク電流の低 減の可能性もある。 現状として GaN を用いたショットキーダイオードについても高耐圧用のパワーデバイ スを中心に数多くの研究がなされている。フィールドプレート構造を用いたもので、2000 年に発表されたものですでに逆方向耐圧450[V]以上のものが発表されている[14]。しかし このデバイスでは順方向の立ち上がりや抵抗については十分な議論や検討がなされてなく、

(9)

またそのデバイスサイズも非常に大きく、レクテナ用高周波ショットキーダイオードとし ては十分であるとはいえない。そのほかにも耐圧向上やON 電圧を下げるためにショット キー電極直下をエッチングした構造、オーミック直下をエッチングして金属を半導体との 接触抵抗による寄生抵抗を低減するリセスオーミック構造[15]、フィールドプレート用の 絶縁膜の評価など過去に様々な研究がなされている。しかしいずれも耐圧とON 抵抗のト レードオフの問題もあり、レクテナ用のショットキーダイオードとして十分なものはない。 近年では導電性基板を用いた縦型構造 GaN ショットキーダイオードについても数多くの 発表がなされている。その中でも特に代表的なものにGaN 基板上に GaN をエピタキシャ ル成長させたパワーデバイス用のショットキーダイオードがあり、ショットキーバリアダ イオードで耐圧580[V]、オン抵抗 1.3[mΩcm2]を達成している[16][17]。従来 GaN 系半導 体デバイスを作成する際、一般的なサファイアなどの異種基板上にエピタキシャル成長さ れたものにくらべ、転移などの欠陥を大幅に低減でき、ダイオードの高性能化に繋がる。 しかし、縦型構造の場合横型構造と比べて電極が同一平面にないことから、デバイスの評 価が困難であること、回路上に実装が困難であるなどの問題点が挙げられる。 実際にレクテナへの応用を考えた際に問題になるのは GaN ショットキーダイオードのシ ミュレーション用の回路モデルである。ダイオード特性とレクテナの効率は密接な関係が ある(詳しい議論は 2 章に譲る)。しかし、これまでに述べた用に表面準位や基板中の深 い準位の影響による不安定現象により理論とは異なった特性を示す。これらのことにより、 従来のSi や GaAs デバイスでのショットキーダイオード特性と同様の等価回路モデルでは 正確にその特性をモデル化することが困難である。またこのことにより、実際にレクテナ に組み込まれたことを想定した際のシミュレーションに大きな誤差を示してしまう。この ことから、実際の特性を正確に表せる等価回路モデルの作成を行う必要がある。

1.3

本研究の目的

前節までに述べたような研究背景から、本研究の主な目的を以下の3 つに定めた。 (1)レクテナに最適なダイオードの基板・デバイス構造設計と検討 (2)レクテナ用ダイオードプロセスの開発とマスクの設計 (3)実測・デバイスシミュレーションを用いたダイオードの等価回路モデル提案と検 討 第1の目的に対して、本研究では、実際に SPICE シミュレーションを用いてレクテナ の動作解析を行い、ダイオードの様々なパラメータとレクテナの効率に関して解析を行っ た。そして、レクテナをより高効率にするためのダイオードエピ基板・デバイス構造の最

(10)

適設計を行った。

第2 の目的に対して、本研究では、レクテナ用の実際にレクテナに実装し評価すること を想定して、実装用のダイオードのマスク設計を行った。そして作成するための新規プロ セスの提案とそのための解析用TEG(Test Element Group)を作成した。

第3 の目的に対して本研究では、自ら作成した TEG パターンと試作デバイスを用いて ダイオード特性の解析を行った。そしてその特性の評価を行い、課題を導き出しプロセス 設計にフィードバックし最適化を行った。そして、GaN ショットキーダイオード用ダイオ ード等価回路モデルを提案しその妥当性を検討し、SPICE パラメータを検討した。

1.4

本論文の構成

本論文は第1 章「序論」から第 6 章「結論」の全 6 章構成になっている。第 2 章ではレ クテナとショットキーダイオードの関係性について述べる。第3 章ではレクテナ用デバイ スの設計と、そのマスク、プロセスについて述べる。第4 章では実際に試作したデバイス の特性について述べる。第5章では試作したダイオードのモデル化の検討と等価回路モデ ルの提案と SPICE モデルパラメータを抽出し、その妥当性について述べる。第6章では 結論と今後の課題について述べる。

(11)

1章の参考文献

[1] 日経エレクトロニクス 2007 年 3 月 26 日発行

[2] 篠原真毅,マイクロ波エネルギー伝送技術と宇宙太陽光発電所 SPS 2007 年 3 月

[3] Tesla,N.,”The transmission of electric energy without wires, the thirteenth Aniversary Number of the Electrical World and Engineer”,March 5 1904.

[4] Tesla,N.,”Experiments with Alternate Current of High Potential and Frequency” McGraw Pub.Co.,N.Y.,1904. [5] 篠原真毅,マイクロ波電力伝送の受電システムならびに電力ビームの伝播特性に関 する研究,京都大学博士論文,(1996). [6] http://www.microsoft.com/japan/business/rfid/about/default.mspx [7] 篠田健司、篠原真毅、三谷友彦、松本紘、橋本隆志、岸則政、電気自動車無線充 電システムの開発 電子情報通信学会 2006 [8] 大野泰夫,”窒化ガリウムを用いる高周波デバイス”,FED Review,Vol.1,No.13(2002) [9] 菊田大悟,”窒化ガリウム系絶縁ゲート型へテロ構造電界効果トランジスタに関す る研究”2006 年 3 月 [10] 高橋清 監修 長谷川文夫・吉川明彦 編著,”ワイドバンドギャップ半導体光・電 子デバイス”森北出版 [11] T.Hashizume et al.,Appl.Phys.Lett.84,4884 (2004)

[12] T.Nanjor et al., J.J.Appl.Phys.25,596 (2004)

(12)

[14] Z.Bandic et al., Appl.Phys.Lett.74,1266(1999)

[15] Gerard T.Dang et al.,IEEE Ttans.Electron.Devices.47,692(2000)

[16] S.Hashimoto et al.,Proc.13th ICMOVPE, Th-B1.4(2006) 530

(13)

第2章 ダイオード特性とレクテナ

RF/DC 変換効率の関

本章では、まずレクテナの概要について説明し、その動作理論について説明する。後に ダイオードのパラメータと回路の効率との関係についてシミュレーションを行う。レクテ ナとダイオードパラメータには密接な関係があり、その関係について説明する。

2.1

レクテナの概要

レクテナは、無線で伝送されるマイクロ波を受電し、その受電したマイクロ波を直流出 力に変換する素子である。レクテナには様々な種類のものがある。しかし、ほとんどのレ クテナではダイオード1 つをマイクロストリップ線路に並列に挿入し、λ/4 線路とコンデ ンサを組み合わせた出力平滑フィルタを用いる全波整流回路(シングルシャントモデル) がよく用いられる[1]。この全波整流回路は理想的にはダイオード 1 つで効率 100 パーセン トのマイクロ波-直流変換が可能とされている[2]。図 2.1 にシングルシャントモデルレクテ ナ(以下の文ではレクテナと表記)の構成を示す。 レクテナはアンテナ部、入力フィルタ、整流回路、出力フィルタで構成されている。本 研究では整流回路、特にショットキーダイオードについて議論の対象とする。整流回路は ショットキーダイオード、出力フィルタは伝送線路とコンデンサから構成されており、偶 高調波で短絡、奇高調波で開放となっている。入力フィルタは RF/DC 変換の際に発生し た校長はが受電アンテナへ戻って再放射されるのを防ぐために設けている。出力フィルタ は負荷に流れる交流成分を防ぎ、負荷における出力電力のリプルを抑えるため、十分大き

アンテナ

入力フィルタ

出力フィルタ

DC 出力

RF 入力

図2.1 シングルシャントモデルレクテナのブロック図

ダイオード

(14)

なコンデンサを用いて整流されたマイクロ波を直流に変換する働きをしている。一般的に レクテナのRF/DC(マイクロ波-直流)変換効率特性は図 2.2 のように表される[3]。 入力電力が小さいときはダイオードの接合電位による立ち上がり電圧 Vj のためにダイ オードの順方向に流れる電力量が小さくなる。そのため RF/DC 変換効率は低下する。ま た、高調波電力の入力電力に対する割合は入力電力が小さい時の方が小さく、入力電力が 大きくなるにつれて大きくなっていく。これはダイオードの両端の電圧がその接合電位以 下となる時間が,入力電力が小さいときの方が長いためである。一方,入力電力が大きい ときはダイオードのブレークダウン電圧Vbr のためにダイオードの逆方向にも電流が流れ るようになり、RF/DC 変換効率は著しく低下する。図 2.2 中の「高調波効果」はダイオー ドで整流する際に発生する高次の高調波がアンテナから再放射されることによる損失を示 している。したがって、RF/DC 変換効率低下の原因であるこれらの要因をまとめると、レ クテナのRF/DC 変換効率は図 2.2 のような効率曲線のようになる。 これらの特性から数mW 級の低電力用のレクテナでは、立ち上がり電圧が大きく特性に 影響を与えると考えられる。逆に今回のように数十~数百W 級の大電力用のレクテナでは、 数十から数百 V の電圧がダイオードの両端にかかると考えられるので、立ち上がり電圧 Vj による影響は少ないと想定できる。一般に GaN のようなワイドバンドギャップ半導体 を用いたショットキーダイオードでは、Si や GaAs のものに比べて、立ち上がり電圧 Vj は 0.3V 程度大きくなる。しかしワイドバンドギャップ半導体であることから、逆方向耐 圧を大きいため、扱える電力を大きくすることがすることができるので効率に Vj 効果は 高調波効果 Vbr 効果 レクテナ 最大効率曲線 Vj 効果 RF/DC 変換効率 入力マイクロ波電力or 接続負荷 100% 図2.2 RF-DC 変換効率特性

(15)

大きく影響しないと考えられる。また、ブレークダウン電圧 Vbr 効果についても、GaN のショットキーダイオードを用いた際に図2.2 のようになるとはいえない。なぜなら、実 際にダイオードがブレークダウン電圧に達したときには、絶縁破壊が起こり、ダイオード が破壊される。よって、一度破壊電圧まで達してしまえば、その後はもう整流作用はしな い。また GaN のショットキーダイオードでは、理論で予想されるよりも大きい逆方向リ ーク電流が生じるそのため、ブレークダウン電圧に達するまでに、大きい逆方向リーク電 流が流れることも考えられる。そのためリーク電流の影響についても考慮しないといけな い。実際のショットキーダイオードが立ち上がり電圧 Vj や、その他のパラメータの影響 については章の後半で議論する。 レクテナの出力側に接続される負荷の大きさには最適値が存在する。最適負荷値はレク テナの出力インピーダンスと負荷との整合が取れているときの負荷値であり、この最適負 荷が接続されていない場合には反射波が生じて RF/DC 変換効率が低下することになる。 したがって、このような負荷変動に対する効率変動特性は、レクテナを電源として考えた 場合不利となる。特にモータ等の駆動系に動力源として用いる場合、その大きな負荷変動 はRF/DC 変換効率の変動と直結しているため、何らかの対策が必要となる。

2.2

レクテナの動作理論

レクテナは図 2.3 に示されるように、DC 素子キャパシタ C1、ダイオード、λ/4 線路、 出力平滑フィルタCL により構成されている。C1は反射波によるDC 成分が入力側に流れ るのを防ぐために挿入されているものである。整流回路の動作原理は,F 級増幅回路の原 理を応用しており,理想的なダイオード特性の場合,100 パーセントの効率が得られると されている[1][2][3]。

(16)

整流回路伝送線路モデルを図2.4 示す。図 2.4 において、点 P から距離 d にある出力側 をみた入力インピーダンスZin(d)は

)

tan(

)

tan(

)

(

0 0 0

d

jZ

Z

d

jZ

Z

Z

d

Z

L L in

β

β

+

+

=

(2.1) で与えられる。ここで、ZL は出力平滑コンデンサ CL と負荷 RL の合成インピーダンスで あるので、

Zs

-

図2.4 レクテナの等価回路

Z

L

Z0 Zin

1

d

a

1

p

2

Rs C1

λ/4線路

D

C

L

R

L

V

L

+

Vs

-

図2.3 レクテナの等価回路

I

o

I

1

Z0 β

I

2

I

L

I

dio

V

L

V

L

P

(17)

L L L

C

j

R

Z

ω

+

=

1

1

(2.2) となる。式(2.2)において出力平滑コンデンサ CL の値が十分大きいとすると、

0

1

1

1

=

+

=

L L L

C

j

R

Z

ω

(2.3) この回路を無損失線路とすると伝播定数

γ

=

α

+

j

β

となる。ここで、n 次の偶高 調波からみると

β

=

(

2

π

λ

)

×

2

m

(

m

=

0

,

1

,

2

L

)

、n 次の奇高調波からみると、

)

,

2

,

1

,

0

)(

1

2

(

)

2

(

×

+

=

L

=

π

λ

m

m

β

となることから、

d

=

λ

4

のとき、

=

0

)

4

tan(

β

λ

(2.4) すなわちダイオード端から負荷側を見たインピーダンスは、式(2.1)と式(2.4)より 以下のように表される。

)

4

tan(

)

4

tan(

)

(

0 0 0

β

λ

λ

β

L L in

jZ

Z

jZ

Z

Z

d

Z

+

+

=

(2.5) 偶高調波の場合、式(2.3)、(2.4)、(2.5)より、

0

0

0

)

(

0 0 0 0 0

+

=

=

+

=

L L L L in

Z

Z

Z

Z

jZ

Z

jZ

Z

Z

d

Z

(2.6) 奇高調波の場合も偶高調波の場合と同様に、

=

=

+

+

=

L L L L in

Z

Z

jZ

jZ

Z

jZ

Z

jZ

Z

Z

d

Z

2 0 0 0 0 0 0

)

4

tan(

)

4

tan(

)

(

λ

β

λ

β

( 2.7) したがって、ダイオード端から出力側をみた入力インピーダンスは偶高調波では短絡、 奇高調波では開放となる。そしてコンデンサCL により負荷 RL に流れる電流は直流電流 となる。この考え方をもとに各部での電流について詳述すると以下のようになる。入力側 を流れる電流

I

1

(

t

)

は基本波のみで構成されているため、以下の式で表される。 (偶高調波) (奇高調波)

(18)

)

sin(

)

(

0 1

t

I

t

I

=

ω

(2.8) 理想的なダイオードは

0

< t

ω

<

π

の半周期において開放状態(

I

dio

=

0

)になり、

π

ω

π

< t

<

2

においては短絡になる。図2.3 を見てもわかる通り、点 P において流入 する電流と流出する電流の関係から、 2 1

I

I

I

+

dio

=

(2.9) の関係がある(電流の向きは図2.1 中の矢印の向きとする)。よってダイオードが開放状態 にある

0

< t

ω

<

π

においてはダイオードに流れる電流は

I

dio

=

0

となるので、電流

)

(

2

t

I

は、

)

sin(

)

(

0 2

t

I

t

I

=

ω

(

0

< t

ω

<

π

)

(2.10) となる。ここで

I

2

(

t

)

は上述した入力インピーダンスの考え方から、偶高調波のみで構成 されるため、

)

(

)

(

2 2

t

I

t

I

ω

+

π

=

ω

(2.11) となる。したがって、

I

2

(

t

)

はピーク値が

I

0 の全波整流波形となり以下の式で表される。

)

sin(

)

(

0 2

t

I

t

I

=

ω

(

0

< t

ω

<

π

)

(2.12) 理想的なダイオードに流れる電流は式(2.9)、(2.12)の関係より

)

sin(

)

sin(

)

(

t

I

2

I

1

I

0

t

I

0

t

I

dio

=

=

ω

ω

(2.13) すなわち、理論ダイオードを流れる電流

I

dio はピーク値

2 I

0 の半波倍整流正弦波となる。 負荷電流

I

L の大きさは

I

2

(

t

)

の平均値であるので、あるので、以下の式で示される。

dt

t

I

T

I

I

L

=

av

=

×

T 0 0 2

)

1

sin(

)

(

ω

dt

t

T

I

T

×

=

0 0

sin(

ω

)

(19)

[

]

T

t

T

I

0 0

cos(

ω

)

ω

×

=

0

2

I

π

=

(2.14) 次に各部での電圧について述べる。理想的なダイオードにかかる電圧

V

dio

(t

)

はダイオ ードが電流を通している間は0 であるから、

0

)

(

t

=

V

dio

(

π

< t

ω

<

2

π

)

(2.15) となる。ここでダイオードにかかる電圧

V

dio はDC 成分と奇高調波成分のみで構成されて いて以下のように表される。 av dio dio

V

t

V

=

2

[

(

)]

(

0

< t

ω

<

π

)

(2.16) 右辺の項に2 が乗算されているのは、

V

dio

(t

)

の平均値の

[

V

dio

(

t

)]

av は半周期で0 であ るので、半周期に印加される電圧を求めるためには、全周期での平均値を2 倍してやる必 要があるためである。ここで

[

V

dio

(

t

)]

av はダイオードにかかる電圧の平均値であり、負 荷にかかるDC 電圧

V

L に等しくなければならないので L dio

V

V

=

2

(2.17) とあらわすことができる。また、

V

dio の基本周波数成分は

V

dio のフーリエ級数展開によ り求められる。

⎥⎦

⎢⎣

+

×

=

2

sin(

)

L

2

1

2

V

t

V

dio L

ω

π

(2.18) したがって、

π

L s s

I

R

V

V

=

0

+

4

(2.19) と表すことができる。ここで、

V

sは電源電圧、

R

sは電源に直列に接続された抵抗である (図2.3 参照)。 次に、式(2.19)に(2.14)を代入すると

(20)

L s s L

V

R

I

V

=

×

×

8

4

2

π

π

(2.20) となる。上式は整流回路が

π

4

×

V

s のDC 電圧源と

π

2

8

×

R

s の内部抵抗を持つ回路 として表される(図 2.5)。最大電力供給関係から、

R

L が内部抵抗

π

2

8

×

R

s に等しいと き出力電圧は最大となる。このときの出力電力

(

V )

L op はDC 電圧源

π

4

×

V

s の半分と なる。よって最大出力負荷電力

(

P

L

)

max は以下のように求められる。 op L op L L

R

V

P

)

(

)

(

)

(

2 max

=

s s

R

V

×

×

=

8

)

8

(

2 2

π

π

s s

R

V

8

2

=

(2.21) またRF 入力電力

P

ins s s s in

R

V

R

V

P

8

4

)

2

(

2

=

2

=

(2.22) であることから、整流回路のRF‐DC 変換効率は式(2.16)、(2.17)から

%

100

)

(

max

=

=

P

L

P

in

η

(2.23) となる。このように、シングルシャントモデルのレクテナは、非線形素子であるダイオー ドより発生する高調波成分のうちλ/4 線路により奇高調波成分を抑制することで全波整流 を実現することができる。したがって、理想的なダイオード、無損失線路を想定した場合 においては、ダイオードとλ/4 線路 100%の効率の RF-DC 変換を得ることができること がわかる。しかし、実際は図2.2 に示すようなダイオードの内部パラメータの影響などで 変換効率は100 パーセントにはならない。

(21)

2.3

RF/DC 変換効率のダイオードパラメータ依存性の解析

前節までにレクテナの理想的な動作原理について説明してきた。そして理論効率が 100%になることを示した。しかし、図 2.2 に示すようなダイオードの内部パラメータに よって、理論効率は100%にならない。この効率が 100%になる条件というのは、アンテ ナと回路全体のジュール損失がなく、かつ変換損失のない理想的な整流器を考えた場合で ある。そして、アンテナの動作入力インピーダンスと負荷のインピーダンスが整合してい ることである。実際の受電効率の低下には主に以下のような原因が考えられる。 (1)ダイオードの損失 (2)インピーダンス不整合 (3)フィルタ、伝送線路など回路の損失 (1)はダイオードの立ち上がり電圧や内部抵抗、接合容量などによる損失であると考えら れる。(2)は入力インピーダンスと負荷側のインピーダンスが完全に整合しないことによ おり反射波が生じ、それが、アンテナから放射されることで、損失となる影響である。(3) は回路内で生じる損失である。また図2.2にも示したようダイオードの持つ内部パラメータ による影響によって理想とは異なる動作をする。過去の研究から整流回路の主な損失は(1) のダイオードによる損失が主であるとされている。実際のダイオードには半導体とショッ トキー金属との接合部分に生じる空乏層容量(接合容量)CJや、半導体層の直列抵抗Rsな どの影響を考慮する必要がある。なぜなら、寄生抵抗があるということはそこに電流が流 れるだけでジュール損となり効率の低下となる可能性があり、容量があることで、ダイオ ードのON・OFFによる電荷の充放電による損失や、寄生容量が大きくなるとインピーダン

π/4Vs

I

L

π

2

/8Rs

R

L

V

L

+

-

図2.5 レクテナの簡易等価回路

(22)

ス不整合による損失などが想定される。今回は大電力レクテナを想定しており、入力数十 ~数百Wを想定している。図2.2に示してあるダイオード特性、回路定数による変換効率関 係は小電力での関係を示しているために、改めて解析する必要性がある。本研究において は、まず、ダイオードパラメータ解析を行い、レクテナ整流回路とダイオードパラメータ の関係を調べた。今回のパラメータ解析にはWINSPICEを用いて行った。そしてダイオー ドの直流特性、交流特性、過渡特性に影響するパラメータVj、Vbr、Rs、Cjo、Is、につい てこれらのパラメータが整流特性の効率にどのように影響するかのシミュレーションを行 った。シミュレーション方法としてレクテナの等価回路を用いて理想的なダイオード(変 換効率がほぼ100パーセントになるようなダイオード)のパラメータを基準値として設定し、 個々のパラメータを変化させて、変換効率のパラメータ依存性の評価を行った。理想的で あるという条件は、半導体層の直接抵抗成分Rsがゼロであり、空乏層容量がほとんどゼロ であるようなパラメータ解析に使用したレクテナの等価回路は、図2.3に示したものと同様 のシングルシャントモデルである。シミュレーションに用いたダイオードパラメータの基 準値とレクテナの各パラメータの値を表2.1に示す。これらのシミュレーションに用いた回 路パラメータは実際の回路設計に用いるものとは異なる。効率を評価するためのシミュレ ーション方法としては、効率

η

は式2.23と同様に、入力の交流電力と負荷で取り出される 直流電力の比で表されるものとして、計算をする。

(23)

パラメータ 値 VJ [eV] 0.1 CJ0 [F] 10f Is[A] 1e-9 Rs[Ω] 0 N 1 Vb[V] 400 RP[Ω] 1e12

2.3.1 ダイオードの SPICE モデルとパラメータの関係

今回のシミュレーションにはSPICE3f5 系のフリーソフト WINSPICE を用いて行う。 SPICE のデバイスモデルは世界中に広く受け入れられている標準の回路解析ツールであ り様々なシミュレーターに取り入れられている。ダイオードの SPICE 用デバイスモデル は、図2.6 に示すように、端子電圧に対して指数関数的に変化する電流を表す非線形電流 源と、直列に存在する抵抗、端子間に寄生する非線形静電容量がモデル化されている。ダ イオードの電圧-電流特性は、図 2.7(a)に示すように立ち上がりは指数関数的だが、大電流 域ではキャリアの高注入効果による移動度の低下と、半導体バルク抵抗による電流の飽和 がみられる。これを、SPICE モデルでは直列抵抗 RS で表している。逆方向電圧による降 伏は図2.7(b)に示すように、 破壊電圧 BV と電流 IBV で表している。また交流解析や過 渡解析ではダイオードの容量が問題となりそのモデル化が必要である。これは、半導体と 金属の接触による空乏層容量CJ と少数キャリアの蓄積により生じる拡散容量 CD でモデ ル化されている[4]。 回路パラメータ 値 Vin[V] 200 Rs[Ω] 50 C1[F] 100p CL[F] 100p RL[Ω] 61.8 伝送線路 Zo 50 F 2.45G NL 0.25 表2.1 シミュレーションに用いた基準パラメータ(a)ダイオード(b)レクテナ (a) (b)

(24)

図2.6 SPICEダイオードの等価回路

図2.7 ダイオード特性(a)電流電圧特性理論(b)電流電圧特性と用いられる式

(25)

2.3.2 ダイオード直流成分に起因する SPICE パラメータの影響

1. 直列抵抗 Rs

図2.8(a)にダイオードの直列抵抗 Rs を変化させた場合の RF/DC 変換効率との関係を示 す。横軸には直列抵抗Rs の値を、縦軸には変換効率を示している。図 2.8(a)に示す通り、 Rs の値が大きくなるにつれ、変換効率が減少する。また Rs の値が小さくなるにつれて、 変換効率は上昇する。これはマイクロ波の入力電力のうち、ダイオードの直列抵抗成分に 流れる電流によりジュール損が生じていると考えられる。この結果から直列抵抗 Rs が効 率に大きな影響を及ぼすことがわかる。また、過去の他の研究機関の研究によると、Rs の値が変化しても電力反射率には大きく影響しないという報告がある。このことからもわ かるように、直列抵抗 Rs の増加による効率の減少の原因は熱による損失であると考えら れる。ダイオードを作成するにあたって、エピ基板の最適設計によって、この直列抵抗を 下げるためには、ダイオードの実効面積を大きくすること、エピ基板の不純物濃度をあげ ること、半nGaN 層を薄くすることなどが考えられる。エピ基板の設計とともに、コンタ クト抵抗や、寄生抵抗を下げるための新たなデバイス構造、オーミック金属、ショットキ ー金属材料やその他のプロセス条件とともに最適化が必要である。

2. 逆方向飽和電流 Is

図2.8(b)にダイオードの逆方向飽和電流 Is を変化させた場合の RF/DC 変換効率との関 係を示す。図 2.7(b)でも示した通り、ダイオードの SPICE モデルでは順方向電流は以下 の式で表される。

=

exp

1

nkT

qV

I

I

s (2.24) 式を見てもわかるように、Is を大きくすると、それに比例して順方向電流 I が大きくな る。また逆方向飽和電流Is は理想的なダイオードのオフ状態での電流でもある。よって大 きくすると逆方向リーク電流の増加にも繋がる。図 2.8(b)をみてもわかる通り逆方向飽和 電流Is を大きくしていくにしたがって 1[fA]程度から 1[mA]の範囲で変換効率が上昇する。 これは順方向の絶対値が大きくなったことで、オン電圧が小さくなったことが考えられる。 また 1[mA]よりも大きくすると、逆に効率が大きく減少する。しかし、式(2.24)を見ても わかる通り、電流電圧特性の立ち上がりはexp の項の中にある、理想因子 n の値が支配的 である。また実際の逆方向リーク電流は電圧に依存して一定ではない。したがって逆方向 リーク電流を表す抵抗RP を用いて表現する。そのため実測データの電流電圧特性をモデ ル化する際には、あまり意味のない値となる。そのため、特性に大きく影響のない値にし ておくことが望ましいと思われる。しかし、オン電圧がその特性に影響すること、逆方向

(26)

リークがその特性に依存することはわかった。オン電圧と、逆方向リーク特性については、 この後の理想因子n 値と逆方向リーク抵抗 RP にて議論する。

3. 理想因子 n 値

図 2.8(c)にダイオードの理想因子 n 値を変化させた場合の RF/DC 変換効率との関係を 示す。式(2.24)を見てもわかる通り、理想因子 n 値は順方向電流電圧特性に大きく影響す るパラメータである。理論的には理想因子n 値は 1~2 の値をとるが GaN のようなワイド バンドギャップ半導体のショットキーダイオードの場合、既存のSi や GaAs に比べて、シ ョットキー障壁が高くなるため、順方向のON 電圧も必然的に大きくなる。そのため、理 想因子n 値が 2 以上になる場合もありえるので理想因子 n 値の変化させる範囲を 1 から 5 としている。図2.8(c)を見てもわかる通り、理想因子 n 値が 1 の時に RF/DC 変換効率が 最大値となり、n 値を大きくしていくと、その変換効率は減少していくことがわかる。こ れは、理想因子n 値を大きくすることで ON 電圧が小さくなり、整流できる範囲が広くな るためであると考えられる。ON 電圧を決定するパラメータは逆方向飽和電流 Is と理想因 子n 値である。この二つのパラメータの解析結果から、直列抵抗ほどではないが、ON 電 圧もRF/DC 変換効率大きな影響を及ぼすものと思われる。エピ基板の最適設計によって、 ON 電圧を下げるためには、電流値を大きくするためにダイオードの実効面積を大きく、 また電流密度を大きくすること、エピ基板の不純物濃度を大きくして半導体層の抵抗を小 さくし、電流値を大きくすることなどがある。デバイス設計からの最適化法としては、シ ョットキー金属の選択、ショットキー金属と半導体界面の処理法を工夫することなどが考 えられる。GaN ショットキーダイオードの電流電圧特性は半導体表面にできる自然酸化膜 により、ON 電圧が高くなることがあるためである。

4. 逆方向リーク抵抗 RP

図2.8(d)にダイオードの逆方向リーク抵抗 RP を変化させた場合の RF/DC 変換効率との 関係を示す。逆方向リーク抵抗RP は、WINSPICE にはないが、市販されている PSPICE 系のシミュレーターや、高周波回路設計に用いられる ADS などには導入されているモデ ルパラメータである。真性のダイオードと並列に線形抵抗を加えたものであり、逆方向電 圧に比例したリーク電流を表現するものである。図 2.8(d)を見てもわかる通り、逆方向リ ーク抵抗RP が大きい範囲(リーク電流が十分小さい範囲)では RF/DC 変換効率には影 響しない。しかし、逆方向リーク抵抗RP が 100[kΩ]より小さくなると、変換効率に影響 が出始めて、1[kΩ]よりも小さくなるとその変換効率は大きく減少する。100[kΩ]という のは、バイアス 10[V]では、0.1[mA]、100[V]では 1[mA]に相当する。つまり、逆方向リ ーク電流が RF/DC 変換効率に影響を及ぼさないようにするためには、これらの値よりも

(27)

小さくすることが必要である。エピ基板の最適設計によって、逆方向リーク電流を下げる ためには、不純物濃度を下げて、空乏層を大きくし、トンネルに起因する成分を減少させ ることができる。またデバイス設計からの最適化法としては、障壁高さの高いショットキ ー金属の選択がある。また現状の本研究室での解析ではリーク電流はショットキー電極端 から流れるものが支配的であると考えられている。よって、ショットキー電極端への電界 集中を緩和するような電極構造やデバイス構造を検討する必要がある。また過去の研究報 告においてショットキー接合を形成するプロセス中に GaN 表面に欠陥ドナーが生じて深 い準位が形成され、その結果トンネル電流成分が増加するといった報告がある [5]。よっ て順方向ON 電圧と同様に、ショットキー金属と半導体界面の処理法を工夫することなど が考えられる。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0

10

20

30

40

50

60

RS[Ω]

効率[

%]

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1E-15 1E-11 1E-07

0.001

10

Is[A]

効率[

%]

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1

1000

1E+06 1E+09 1E+12

RP[Ω]

効率[

%]

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0

1

2

3

4

5

6

n値

効率[

%]

図2.8 ダイオードの直流成分に起因するパラメータの RF/DC 変換効率依存性 (a)直列抵抗成分 Rs (b)逆方向飽和電流 Is (c)理想因子 n 値 (d)逆方向リーク抵抗 (b) (a) (d) (c)

(28)

2.3.3 ダイオード交流成分に起因する SPICE パラメータの影響

1. 空乏層容量 Cjo

図 2.9(d)にダイオードの空乏層容量 Cjo を変化させた場合の RF/DC 変換効率との関係 を示す。図をみてもわかるように Cjo が 0.01~0.1[pF]程度範囲では変換効率に影響を及 ぼさないことがわかる。しかし、0.1[pF]より空乏層容量 Cjo が大きくなると変換効率が減 少し始める。さらに 1[pF]よりも大きくなると、変換効率に及ぼす影響は顕著になる。容 量が増加した際の効率減少の影響を見るために、図2.10 に空乏層容量 Cjo を変化させてい った時の、ダイオードに全体に印加される電圧と、流れる電流との関係を示す。横軸は時 間軸であり、2.45GHz での 1 周期分にあたる 0.41[ns]分だけを取り出したものである。Cjo が変換効率に影響を及ぼさないほど十分小さい時は、ダイオードに電圧が印加されている ときに、電流は流れていないため、理想的なF 級動作をしているが、Cjo が大きくなるに 従って、ダイオードに電圧が印加されている時に逆方向に電流が流れ、スイッチング損失 となっていることがわかる。またこのCjo はインピーダンスマッチングに大きく影響する ためにCjo が大きくなると整合が取れずに電力反射率が大きくなり整合が取れなくなると いった報告がある。そのためこのCjo は 0.1~1[pF]の範囲以下にしたい。エピ基板の最適 設計によって、容量を下げるには、誘電率を下げることがあり、デバイス設計の観点では、 面積を小さくすること、また空乏層容量以外の寄生容量を小さくすることなどがある。

2. 遷移時間 TT

遷移時間 TT は少数キャリアの蓄積効果により、生じる拡散容量 Cd に関係があるパラ メータである。SPICE でのダイオードの容量モデルは式(2.25)のように空乏層容量と拡散 容量の和で表される。 jo d

C

C

C

=

+

(2.25) またダイオードに印加される電圧V、その時流れる電流 I、遷移時間 TT を用いて、拡散容 量Cd は表され、次式のようになる。 D d

TT

G

V

I

TT

C

=

=

(2.26) 式(2.26)中の記号

G

Dはコンダクタンスである。よって、ダイオードがON 状態になると、 上昇し始め、直列抵抗成分が顕著になる領域 (図 2.7 参照)では一定値となる。そのため順 方向バイアスされた状態では拡散容量はダイオード全体の容量を増加させる原因となり、 実際レクテナでダイオードを使用する際には問題になる。他のパラメータと同様に遷移時 間TT も RF/DC 変換効率のシミュレーションを行ったが、解が収束せず、その依存性の調

(29)

査はできなかった。一般的に、ショットキーダイオードは多数キャリアデバイスであるこ とから、拡散容量の影響はほとんど無視されると考えられる。またワイドバンドギャップ 半導体である GaN は真性キャリア密度が小さいことから、少数キャリアの発生はほとん どないとも考えられる。しかし、先の空乏層容量Cjo を変化させて、シミュレーションし た結果より、ダイオードの寄生容量が RF/DC 変換効率に大きく影響を及ぼすことはわか っている。そのため拡散容量の影響が実際に見られるかどうかを、高周波小信号測定や、 デバイスシミュレーションを用いて解析することは必須である。

3. 接合電位 Vbi

接合電位Vbi はダイオードの空乏層容量 Cj に影響するパラメータで、以下の式で表さ れる。

Vj

V

C

C

j

=

jo

1

(2.27) 式(2.27)を見てもわかる通り、同じ電圧の場合 Vj が大きいほど、ダイオードの空乏層容量 は小さくなるが、容量が無限大になる点が順方向側にシフトする。そのため、全体的な容 量値としては変化しないため、接合電位のパラメータ依存性はほとんどないと考えられる。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

1E-14 1E-13 1E-12 1E-11 1E-10 Cjo[F]

効率[

%]

(30)

-20 0 20 40 60 80 100 120 140 160

0.E+00 1.E-10 2.E-10 3.E-10 4.E-10 5.E-10 time[s] vo ltag e [V ] -1 0 1 2 3 4 5 6 cu rr en t[ A] Vdio Idio -20 0 20 40 60 80 100 120 140 160

0 1E-10 2E-10 3E-10 4E-10 5E-10 time[s] vo ltag e [V ] -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 cu rr en t[ A] Vdio Idio 図2.10 Cjo を変化させた時の 1 周期分のダイオード電圧と電流の関係 (a) Cjo=1×10-14[F] (b)Cjo=1×10-12[F]

(a)

(31)

-20 0 20 40 60 80 100 120

0 1E-10 2E-10 3E-10 4E-10 5E-10 time[s] vo ltag e [V ] -4 -2 0 2 4 6 8 cu rr en t[ A] Vdio Idio -2 0 2 4 6 8 10 12

0 1E-10 2E-10 3E-10 4E-10 5E-10 time[s] vo ltag e [V ] -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 cu rr en t[ A] Vdio Idio (a) (b) 図2.11 Cjo を変化させた時の 1 周期分のダイオード電圧と電流の関係 (a) Cjo=1×10-11[F] (b)Cjo=1×10-10[F]

(32)

2.4

まとめ

本章では、まず、シングルシャントモデルのレクテナと整流ダイオードと効率との関係 について説明し、その理論を示した。そしてレクテナの理論に基づき SPICE を用いてダ イオードの各モデルパラメータと RF/DC 変換効率との関係について示した。その結果、 各モデルパラメータとレクテナのRF/DC 変換効率から以下のような見解が得られた。 (1) ダイオードの直列抵抗成分が大きくなるとその RF/DC 変換効率に大きく影響を及ぼ す。またON 電圧(n 値)も変換効率に影響を及ぼすが、それほど RF/DC 変換効率に大 きな影響しない。 (2) 逆方向リーク電流はある一定値より大きくなると、RF/DC 効率に大きな影響を及ぼ す。 (3) ダイオードの容量成分はある一定値以上大きくなると、RF/DC 変換効率に大きく影 響を及ぼす。 直列抵抗成分をなるべく小さくするにはエピ基板の不純物濃度を高くし、エピの厚さを なるべく薄くしたい。しかし不純物濃度を高くすると、リーク電流の増大や耐圧の低下な どが懸念される。寄生容量を小さくするためにはなるべく接合面積を小さくすることが必 要であり、また寄生容量を減少させるような構造も必要である。これらのパラメータは互 いにトレードオフの関係があり、それぞれのパラメータを最適化する必要がある。この結 果を踏まえて次章ではエピ設計、デバイス構造の設計をした後に、そのプロセスについて 検討する。

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2 章の参考文献

[1] 篠原真毅,マイクロ波エネルギー伝送技術と宇宙太陽光発電所 SPS 2007 年 3 月

[2] Gutmann,R.J.andJ.MBorrego,”Power Combing in Array of Microwave Power Rectifier”,IEEE Trans.Microwave Theory Tech.,vol.27,pp.958-968,1979

[3] Tae-Whan,Kai Chang,”Theoretical and Experimental Development of 10 and 35GHz Rectennas”, IEEE Trans.Microwave Theory.,Tech., pp.1259-1266, 1992

[4] http://www.cqpub.co.jp/dwm/contents/0004/dwm000400911.

pdf#search='SPICE%20 ダイオードモデル'

[5] 橋詰保,GaN 系ショットキー接合のリーク電流,電子情報通信学会論文誌 C vol.J88-C No.8 pp621-629,電子情報通信学会 2005

(34)

第3章 ダイオードの設計と作成プロセスの検討

2 章において、レクテナにおいてダイオードの特性が大きく RF/DC 変換効率に影響する ことを示した。そこで本章では、まず2 章の結果から RF/DC 変換に適した最適なデバイ ス構造を提案し、エピ基板の設計し作成を行った。そのためにダイオード作成のために評 価用の TEG パターンを検討し、フォトマスクの設計をした。その後、ダイオード作成の ためのプロセスを提案し、予備実験を行い、デバイスの作成を行った。

3.1 エピ構造の検討と設計

今回レクテナに用いる整流ダイオードはショットキーダイオードを用いる。これは、PN 接合ダイオードでは少数キャリアの蓄積による影響が大きく高速動作に適さないこと、順 方向バイアス時に生じる拡散容量成分による効率減少の影響が懸念されるためである。ま たダイオードのエピ基板の設計を行うためには、使用周波数、逆方向破壊耐圧、順方向最 大電流値を定める必要がある。まずレクテナで想定される入力電力に対して、必要な耐圧 を決定する必要がある。今回の設計目標値を表3-1 に示した、入力 RF 電力 100W での大 電力レクテナで使用されることを想定した場合、ダイオード単体に必要な耐圧は理論値で 78V、実際の回路シミュレーションでは 250V 程度が必要であるという報告がある。また 最大順方向電流値も問題であるが、これに関しては、理論値 4A、シミュレーションでは 2A 程度であるという報告がなされている。今回は初めての試作なので目標耐圧 100V、順 方向最大電流2A を目標値として設計を行う。また、2 章で述べたように、抵抗と容量は 効率に大きく影響するために耐圧100V を満たしつつ寄生抵抗、寄生容量をなるべく小さ くするようなダイオード構造の設計をする。 目標値 使用周波数[GHz] 2.45 逆方向破壊耐圧[V] 100 順方向最大電流値[A] 2 電流電圧特性について設計目標値を達成するためにピ基板には以下のような条件が考え られる。 (1)耐圧 100V 程度に耐えられるエピ厚、不純物濃度 表3-1 ダイオード設計目標値

(35)

(2)低抵抗、低寄生容量であること (3)基板が放熱性に優れていること

よって今回使用するデバイス構造を図3.1 に示す。図に示すように、半絶縁性基板上に 低抵抗のn+-GaN 層, 高抵抗の n--GaN 層のエピタキシャル成長させた構造である。n-GaN

層が耐圧を決定する層である。(1) について耐圧を決定するための不純物濃度エピ厚の決 め方については後述するが、基本方針としては、寄生抵抗を下げるためには耐圧100V を 保ちつつ、エピ厚をなるべく薄く、不純物濃度を高くすることが求められる。また(2)につ いて、なるべく寄生抵抗を小さくしたいので、基板とショットキー金属接触層の間に低抵 抗のn+-GaN のドリフト層を設けた。こうすることでエピ基板全体のシート抵抗が減少す るため、寄生抵抗を減少させることができる。ドリフト層は厚い方がいいが、現状のプロ セス条件では1~2μm程度が限界であると思われる。基板は寄生容量を低減するために半 絶縁性基板を用いてある。半絶縁性基板上に GaN をエピタキシャル成長させる場合、通 常サファイアもしくはシリコンカーバイド(SiC)基板を用いる。今回、プロセスの条件 出しや測定試験には安価で購入できるサファイア基板を用いるが、実装用のデバイスには、 SiC 基板を用いる。サファイア基板上に GaN をエピタキシャル成長させるためには格子 定数の違いを緩和するためのバッファ層が必要となるため基板が厚くなることや、実用上 放熱性が悪いことなどがある。SiC 基板を用いると、基板と GaN との格子定数がマッチ ングするため、バッファ層が必要ないためエピ層を薄くできることや、結晶性の向上など の利点がある。結晶欠陥が少なくなると、格子定数の違いにより生じる貫通転移などの結 晶欠陥に起因する逆方向リーク電流を抑制できることや、エピ基板の歩留まりの向上も考 えられる。(3)の条件に関して SiC 基板は、1 章の表 1-1 に示したように、熱伝導率が高い ために放熱性に優れているため適しているためである。2 章にも示したようにレクテナ用 の整流ダイオードでは、容量を 10-13~10-12[F]程度に抑えたいことから、ショットキー電 極と半導体との接合面積をなるべく小さくする必要がある。接合面積を小さくした場合、 基板での発熱がRFDC 変換効率に関して問題となるといった研究報告がある[1]。 GaN シ ョットキーダイオードに関しても、電流電圧特性の動作温度依存性に関する研究報告によ ると、温度上昇により逆方向ゲートリーク電流の上昇や、ON 電流の減少などが報告され ている[2]。そのためこの論文報告においては温度依存性に関しては測定していないが、今 後研究すべき課題の一つでもある。

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参照

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