Title
正常並に病的膀胱壁の病理組織学的研究 主として弾力線
維,膠原線維及び筋線維に就いて
Author(s)
浅井, 明
Citation
泌尿器科紀要 (1959), 5(9): 809-821
Issue Date
1959-09
URL
http://hdl.handle.net/2433/111827
Right
Type
Departmental Bulletin Paper
Textversion
publisher
809 泌 尿 紀 要5巻9・9' .昭 和34年9月.
正常並に病的膀胱壁の病理組織学的研究
主 と し て 弾 力 線 維,膠
原 線 維 及 び 筋 線 維 に 就 い て
慶応義塾大学医学部皮膚科泌尿器科教室
(指 導
泌尿器科学
田村
一教授)
(指 導 病
理 学
小林忠義教授)
浅
井
明
Histological
Studies
on the Normal
and Morbid
Bladder
Wall
with Special
Reference
to Elastic
Fibers,
Collagenous
Fibers
and Smooth
Muscle
Fibers
Akira ASAL
From the Department of Dermatology & Urology, School of Medicine, Keio University
(Director . Prof. H. Tamura M. D.)
Distribution and quantitative transition of elastic fibers, collagenous fibers and smooth
muscle fibers of the bladder of the human being of all ages, especially over age of manhood,
at which neoplasms are Haber to develop, were studied and also histopathological studies
on the bladder walls in the cases of neoplasms of the bladder or prostatic hypertrophy
were performed with special reference to elastic fibers, collagenous fibers and smooth
muscle fibers.
Studies were performed in 64 cases of the normal bladder, 10 cases with neoplasms of
the bladder and 14 cases with prostatic hypertrophy.
Specimens were obtained from
tri-gonum vesicae, the region aroud orificium ureteris, vertex vesicae, and the region around
orificium urethrae internum and histological studies were performed.
The results obtained were as follows:
(1) According to increase of age, it was observed that marked proliferation of elastic
fibers being accompanied with proliferation of collagenous fibers and atrophy and
disappeara-nce of smooth muscle fibers, especially of those in the innermost muscular layer.
(2) Elastic fibers were markedly increased in the region around orificium ureteris and
in trigonum vesicae. On the contrary, in vertex vesicae increase of elastic fibers was not
so marked and both increase of collagenous fibers and atrophy or disappearance of elastic
fibers and smooth muscle fibers were scarcely observed.
(3) Newly formed elastic fibers were observed around the basal membrane in several
cases.
(4) Pathological changes were often observed in the mucous membrane of the bladder
of the persons aged over fifty.
(5) In the cases of tumors of the bladder, increase of elastic fibers was observed
corresponding to age. But elastic fibers were scarcely observel in stroma around the nests
of cancer cells where collaginous fibers were increased.
810
浅井一正常並 に病的膀胱 壁の病理組織学的研究
observed
and both collagenous fibers and elastic
fibers
were slightly increased.
Above
mentioned
findings in the bladder
wall with trabeculae
were not observed in the normal
bladder of the persons
of the same age.
(7)
The local increasing
of the elastic fibers of the bladder
wall seems to be affected
by some factors
from the nature of the epithelium
of the bladder mucosa.
第1章 緒 言 人体 膀 胱 壁,特 に そ の 粘 膜 上 皮 に 関 す る 病 理 組 織 学 的 研 究 は,丈 献 上 数 多 く見 られ る が.弾 力 線 維,筋 線 維 及 び 膠 原 線 維 の 関 係 に 関 す る も の は,未 だ 一 致 し た 意 見 に 到 達 せ ず,よ つ て 幾 多 の解 明 す べ き 点 が 少 く な い. Jeanは,膀 胱 壁 の 結 合 織 性 硬 化 を 初 め て 記 載 し,之 は 炎 症 疾 患 の 持 続 に よ り起 因 す る 間 質 結 合 織 増 殖 とみ て い る.Albarranは,無 菌 的 尿 停 滞 に 伴 う筋 層 の 退 行 性 変 性 に よ る も の と し,そ の 退 行 変 性 を 高 令 の 徴 と し て 見 徹 す と報 告 し,Lydstonと 同 様 に 硬 化 性 変 化 の 他 に, 脂 肪 変 性 を 見 出 し た.又Launois27}は,老 人 性 の 線 維 増 生 を 血 管 硬 化 性 病 変 に よ る筋 萎 縮 に 原 因 す る と述 べ た の に 対 し,Bohdanowicz2}及 びAsch7⊃ は,血 管 硬 化 叉 は ア ル コ ー ノし リス ム ス は 全 然 無 関 係 で あ る と云 つ て い る. Casperi5)は,解 剖 学 的 検 索 に よ り これ を3 型 に 分類 し,(1)筋 層 に 生 ず る(Bindegewebs-degeneration),(2)小 筋 東 間 に 結 合 織 束 が 進 入 す る も の,(3)筋 線 維 の 代 償 と し て のElastische BindegewebsBildungを 報 告 し て い る. Hermanは 結 合 織 増 加 は,一 つ は 既 存 の 線 維 組 織 の 増 量 に 基 き,他 は 筋 組 織 実 質 の 占 め る 部 位 に 新 生 され る も の,即 ち 線 維 性 置 換 或 は 転 化 に 他 な ら な い と云 つ て い る 。 丈 川13)は 主 と し て 正 常 膀 胱 の 弾 力 線 維 の 部 位 的 並 に 年 令 的 消 長 に っ い て 追 求 し,弾 力 線 維 の 増 生 は 特 に 三 角 部 に 最 も 顕 著 で,内 尿 道 口及 び 膀 胱 体 部 が 之 に 次 ぐ と し て い る. 私 は 叙 上 の 関 係 に つ い て,各 年 令 層,特 に 腫 瘍 好 発 年 令 で あ る 壮 年 者 以 上 の 膀 胱 壁 の 弾 力 線 維,筋 線 維 及 び 膠 原 線 維 と の 相 関 関 係 並 に,量 的 消長 を 検 索 し,併 せ て 腫 瘍 膀 胱 壁 及 び 前 立 腺 肥 大 膀 胱 壁 の 病 的 状 態 に 於 け る 弾 力 線 維,筋 線 維 及 び 膠 原 線 維 の 所 見 を 中 心 と し て 探 究 し た, 第 皿章 検 索 材 料 及 び 方 法 第1節 正 常 膀 胱 検 索 材 料は,慶 大病 理学 教 室 及び 大 塚 監察 医 務院 よ り提供 され た 剖 検 例 の,合 計64例 に して,男 子48例, 女 子16例 であ る 。年令 的 に 最 高は92才,最 低 は 生後10 日の症 例で,年 令別 剖 検 例数 は 第1表 の如 くで あ る. 第1表 年 令 別 症 例 数 1才以 下4例 1-9才3例 10-19才5例 20-29才9例 30-39才6例 40-19才5珂 50-59才H例 60-69才13例 70才 以 上}8例 64例 第2節 腫 瘍 膀 胱 及 び 前 立 腺 肥 大 膀 胱 腫 瘍 膀胱 は,当 教 室 例 の5例,慶 大病 理 学 教 室の剖 検 例5例,合 計10例 で,亦 前 立 腺肥 大膀 胱 は,慶 大 病 理学 教 室剖 検 例 の14例 で,そ れ ぞ れ に っ いて 下 記 の如 く検 索 した. 第3節 検 索 方 法 検索 方 法 は,膀 胱 三 角 部 よ り 後 三 角 部に か け た も の,尿 管 口附近 よ り両 側壁 にか け た もの,膀 胱 頂 部及 び 症 例 に よ り内尿 道 口部 の各 部 分 よ り,組 織 片 を 採取 し,各 々10%フ オル マ リン液 固定 及 び アル コール 固定 に て,パ ラ フィ ン包 埋 薄 切 々片 を作 成 し,染 色 法 と し て は,「 ヘ マ トキシ リン ・エ オ ジ ン」染 色,「 ツ ロ リ ー」 染 色 ,「 ワイゲル ト」氏 弾力線維染色,「 ヴン ・ ギ ー ソ ン」染 色,PAP氏 鍍銀 染 色,PAS染 色(過 沃
浅井一 正常並に病的膀胱壁の病理組織学的研究
度酸シ ツフ氏 反応)等 を施 して 検索 した ・第 匝章 検索成績
第1節
正 常 膀 胱壁
人体膀胱壁 は 主 と して,粘 膜 は1∼ 数 層 の移 行上 皮 細胞に て覆 われ て い るが,私 の 検索 材 料 に於 ては剖 検 例の為 に剥離脱 落 してい る場 合 が 少 くな い,そ の直 下 }こ線維 性の固 有層 が あ り,こ れ が 結合 織 を 以 てす る粘 膜下層に 移行 し,次 いで 滑平 筋 よ り成 る筋 層 が存 在 し,こ れは 外縦,中 輪,内 縦 に走 る.更 に 筋 層 に続 い て漿膜下組織 に達 して い る.筋 層 と上 皮層 間 の 全層 を 一括 して粘 膜下 組織(TelaSubmucosa)と 称 す る も の もあるが,事 実,固 有 層及 び 粘膜 下 層の 区 別 は容 易 でない場合が 多 い, 私は壁 の変化 を年 令 的に 追 求 して,特 に壮 年 以 後 に 興味あ る所 見を 見 出 して いる. 著者 の検索成 績 に よれば,1才 以 下 の乳 児 に於 て は 粘膜上 皮は殆 ど正 常に して,粘 膜下 層 に は 膠 原線 維 を 小量認 めるが,弾 力線 維 の増 生 は殆 ん ど見 られ な い. 筋層 の発 育は 一般 に弱 い.又3例 中2例 は,粘 膜 上 皮 下に多数 の結 合織 性 細胞 の 出現 を 認 め,こ の 際僅 か な が ら小円形細 胞浸 潤 をみ る(第1図A) 1∼9才 では,1例 に粘膜 上 皮 の萎 縮を 認 め たが 一 般に正常で あ る.粘 膜上 皮 下 には 前 述 同様 の結 合繊 性 細胞の層状 の増殖 を 認 め,粘 膜下 層 の線 維 の量 も次第 811 に増 加 して来 る.筋 層 はや や 発 育 して い るが,そ の間 を 取 巻 く膠 原 線維 は余 り増 加 して お らず,こ れ に一 致 して弾 力線 維 が 僅 か に認 め られ る. 10∼19才 で は,粘 膜 上 皮 に特 に 著 明 な 変 化 は な い が,1例 に強 い炎 症 像 を示 し(17才9),上 皮 の著 明 な脱 落 を 認 め た.前 述 した上 皮 下 の結 合織 性 細 胞 の増 生 は 少な くな り,そ の部 に 一致 して 比 較的 細 胞 数 の少 い 線維 化 が 認 め られ る例 もあ る,結 合 織性 細 胞 の層 が 線 維 性 となっ た 部 と,粘 膜 下 層 の境 界 は線 維 の 色 調が 異 る.即 ち,前 者 は,「エ オ ジ ン」に淡 染 し,後 者 は濃 染 す るが,こ の境 界 に弾 力線 維 が 稻 々著 明 に 束状 に なつ て増 加す る傾 向 を示 す.特 に膀胱 頂 部 に著 明で あ る. 又 粘 膜 下層 の線維 は 漸 次 幅が 狭 くな り,筋 層 は 上 皮 に 極 め て接 近 し,筋 東 間 に稽 々線 維 の増 生 が 強 くな つ て くる.全 般 的 に 膠 原線 維 は 中等 度 に増 殖 して来 る. 20∼29才 では,粘 膜 上 に著 変 は な い.粘 膜下 層 は 筋 線 維 と膠 原線 維 が 入 り交 り,膠 原線 維 は 次 第に 増 量 し て来 る.弾 力線 維 は 膠原 線 維 の増 生 と大略 一致 した部 位 に増 生 し,穎 粒状 或 は 線 状に 増 加 して来 る,こ の弾 力 線維 は20才 後半 に な る と次 第 に著 明 とな り,特 に 頂 部 で は粘 膜 下層 の結 合織 細 胞層 及 び これが 線維 化 した 部 の 直下 に 多 くな る.筋 層 間 では 稽 々増 加 す る 程 度 で,外 筋 層 周 辺 では 全 く増 殖 は 見 られ なか っ た.上 述 の筋 線維 と膠 原線 維 が 入 り交 る と共 に,筋 層 は 上 皮に 更 に 接近 して 来 て,そ の 筋東 間に も,膠原 線維 の増 生 を 中等 度 に認 め る(第1図B),小 円 形細 胞 浸 潤は20才 前 第1図 膀 胱 壁 の 年令 的 変 化模 型 図へ
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∼ 論 一「=へ4 (T型) 4恥 粘 膜 上 皮.篇 膠 原 線#.E:b弾 力 線 維.⑭ 筋 線 鯨, 後 より比 較的 著 明に 現 われ,8例 中2例 に 認 め,淋 巴 球集籏 も8例 中2例 に認 め られ た.又 粘膜 上 皮 剥 離 の 高度な症 例ほ ど,上 皮 下 に 上述 の 結 合織 性 細 胞 の 増 生 を示す.これ は慢 性 の炎 症 と関 係 を有 す る と思 わ れ る. 30∼39才 に な る と,粘 膜上 皮 の軽 度 増殖 せ る ものが 6例 中1例 では あ るが 認 め られ る様 に な り,そ の 他 の 所 見 は 大 体20才 代 と大 差 は な いが,粘 膜 面 に近 い 内 中 層 の筋 線維 に,軽 度 の萎 縮 を認 め る.弾 力線 維 は 粘膜812
浅井一正常並 に病的膀胱壁 の病理組織学的研究
下 層 に増 生 を 示す 特 に頂 部 に於 ては,6例 中5例 に 可 成 りの増 加 を認 め て い る(附 図1,2)炎 症 時 に 結 合織 性 細 胞 の増 生 を 認 め る事 は前 述 したが 。 更 に こ れ と共 にそ の 下端 に 沿っ て弾 力線 維 も共 に増 生 す る所 見 を 認 めて い る.筋 線 維間 の 弾 力線 維 の 増生 は,そ れ 程 著 明 では な い 40才 代 にな る と,粘 膜 上 皮 は3例 中2例 に,一 部著 明に 増殖 せ る箇 所 を 認め る様 に な るが,一 般 に著 変 は な い.筋 線 維 の発 育 は,内,中.外 層 共30才 代 と略 々 同様 な る も,筋 線 維東 間 及 び粘 膜 下層 に 於 け る弾力 線 維 の増 生 は 可成 り著 明 となつ て 来 る(附 図3) 50才 代 に な る と,粘膜 は 次第 に綴 嚢 に 富 む様 に な り, 上皮 に増 殖或 は 萎 縮を 示 す 像が 各2例 づ っ 認 め ら れ た.叉 上 皮 下に 嚢胞 形 成 を認 め た ものが11例 中3例 に 存 し,これ は 殆 どが尿 管 口部 及び 三角 部 で あつ た.更 に 三 角部 及 び 内尿 道 口部 に 各1例 つ つ,扁 平上 皮 化 生が 著 明 に認 め られ た が,細 胞 の形 態 及び 排列 等 に は何 等 悪 性像 は 示 して い なか つ た(附 図5)粘 膜 下 層 に於 け る淋 巴球 を主 とす る小 円形 細胞 浸潤 は,約 半 数 に認 め られ,結 合織 性 細胞 の 増生 も存在 し,そ の下端 に浴 つ て弾 力線 維 の 増生 が 強 く,特 に頂 部 に於 て顕著 であ る.内 中 層 に於 け る膠 原線 維 の増 殖 に 伴 う筋 線維 の萎 縮 及び 消失 は40才 代 後 半 よ り50才に か け て次 第 に強 く な るが.53才 頃 か ら更 に著 明 とな り,そ れ に 伴 つ て筋 線 維 束 周 囲及 び筋 線 維東 内に 弾 力線 維 の増 生 も非 常 に 強 くな っ て来 る(附 図4,6)し か るに 頂 部 に於 て は,膠 原線 維 の増 加,筋 線 維 の萎 縮 は他 の部 に比 して 少 く,む しろ筋線 維 の肥 大 せ る も のを3例 に認 め てい る.弾 力線 維 の増 生 も従 つ て 少 い.む しろ前 述 の結 合 織 性 細胞 層 直下 の 弾 力線 維 増生 が 著 明 にな つ て来 る 。 又1例 に 於 て,壁 の血 管 内 膜 の肥 厚 を認 め た. 60才 代 の所謂 老 令 期に 入 ると,粘 膜上 皮 の増 殖,萎 縮,扁 平 上 皮化 生,嚢 胞 形 成及 び 綴壌 等 が 随所 に 認 め られ る様 に な り,又 粘 膜 上 皮 の脱 落 も著 明で,正 常 な ものは 数 例 を見 るに過 ぎな い(第2表) 粘 膜 下層 の小 円形 細胞 浸潤 も殆 どの例 に 見 られ,筋 組 織 は 益 々上 皮下 近 く迄接 近 し,膠 原線 維 の増 加 に伴 い筋 線維 は萎 縮,消 失 の傾 向が強 くな り,同 時 に弾 力 線 維 の増 生 が 著 明に 認め られ る.著 者 は,か か る所 見 を 呈 す る もの を 便宜 上 「T型 」 と 名 付 け た(第1図 C,D)し か しな が ら前 述 同様 頂 部に 於 て は,筋 層 の萎 縮 は 少 く,弾 力線 維 の増 殖 も比較 的 少 いが .粘 膜 下層 の結合 織 性 細胞 層 或 はそ の線 維化 した 層 の 直 下 に,弾 力線 維 の増 加が 特 に強 く束 状 とな つ て認 め られ る.こ れ を 「S型 」 と 称 し た(第2図 参 照)ζ の 第2表 上 皮 細胞 層 (U=尿 管 口部T=三 角部S=頂 部)増1萎
殖1縮
讐綴 離1
壁
舞
1 1 1糞1
2 1 3 1 30U1 ∼T 39S 1 1 1 2 1 3 1 40U2 ∼T2 49S 2 1 1 50Ul ∼T2 59S2 1 2 1 3 1 2 2 3 3 2 1 2 60U1 ∼T2 69S3 8 6 1 1 2 2 1 21:曇1
3 2 2 1 1 「T型 」 と 「S型 」 との差 異 は,50才 代 よ り更 に著 明 とな り,65才 前 後 で は全 般 に 筋 線維,特 に粘 膜 に近 い 方 の 内筋 層 は萎 縮 性 で,膠 原 線 維 に よ り置換 され,こ れ に一 致 して弾 力 線 維 も増 加 して い るが,外 筋 層で は 第2図(S型)饗馨
↓
饗 塗 鰻
鶏
癖
這'..
・小 円 型 細 胞 浸 潤、ミi弾 力線 維.ZZ粘 膜 上皮. 0線 経 芽 細 胆.(こ ♪ 筋 線 維 束,0毛 細 典 管,第3表
浅井一正常並に病 的膀胱壁の病理組織学的研究
813賠
尿管 口部三 角 部
頂
部
内
中
層
筋線維
正
常
肥1大膠 原線維増
殖 に伴 う筋
線維 の萎縮
及消失
十1十 柵外
層
0 1 3 0 0 0筋罐 朧 繕 霧
正 常離 野 縮 黒
肥 大.+甘 帯 …}・ ・ 228 30 443 ,向 失 蛋縮酬 萎 隔1軸、 着 喫(+、 244 PE厚7'ol40POO
登鋼 弓シ噸{韓:;
・・ 幽8§eg皇 量§鱒 蟷N中聚 耀 ≡1
§。 むロ ・2軸誕 §鯉 ,ム 。c〕.^ム 郵 嘘・§望i塗・鋭 5 8 ●A.●4■ ● 昌≡ ・: 8含n。a11A下 ノ㌶才 謝9才2ff9才ja・ 弄才4画 マ才 ￡冠マ才5駕 σ才7alAL
筋線 維は不 変 か,む しろ肥 厚 し,弾 力 線維 も増 生 は 余 りない.こ れ らの関 係 を60才 代 の13例 に っ き比 較 す れ ば第3表 の如 くで あ る. 即ち膠 原線 維 に よる筋線 維 の 置換 は,内,中,外 層 を通 じて頂部 に 於 ては 萎縮 消失(冊)は1例 もな く, 更に頂 部 の外層 に於 ては 萎縮(昔)さ え も認 め得 なか った.又 こ の年代 に て は 内,中 層 の筋 組織 の正 常 な も のは 殆 どな く,頂 部 に於 て 僅 か3例 に 略 々正 常 な 筋組 織を認 め るに 過 ぎず,尿 管 口附近 で は 全 例 に膠 原線 維 に よる置換 を 示 して い た. 65才 を過 ぎ ると,膀 胱 壁 内 の小血 管 の 硬化 が 比 較 的 著 明に認 め られ る様 に な る 。 最 後 に70才 以上 の高 令 者症 例を 総 括 して 観 察 す る に,粘 膜 上皮 は60才 代 と略 々 同様 な る も,壁 全体 が 漸 次菲薄 とな り,全 層 が萎 縮 傾 向 を帯 び,特 に 内筋 層 は 一部 或は 殆 どが膠 原線 維 化 され ,膠 原線維のの増加 と 筋線 維が 点状 乃至 穎 粒 状 に残 存 す る所 見 を 認 め,全 く 消 失せ る もの も3例 に於 て 認め られ た.こ の年 代 に な ると弾力線 維 の増 生 は 比 較 的 弱 い のが特 徴 とな つ て来 る.し か しこ の際 に も,頂 部 では 膠 原線 維 の増殖 と筋 線 維の萎 縮 は,他 の部 位 に 比 し て少 く,弾 力線 維 の増 加 も少 いが,50∼60才 代 と比 較 して,余 り部位 的 特 徴 がな くなつ て くる(第4,5,6表 参 照) 。=尿 管 ロ 郎 o=三 角 部 ム;頂 部 増沸 瑠貨 増殖卜 増 殖1-} 増殖爾 増殖{什 増 殖`+1 増憩 一} 第5表 筋 線 維 の増 減 ●=尿 管ロ部 o=三 角 部 A零 頂 部 諭
搦
響 ● ・。28・ ・ム ・ga略9認 含1§38・ :。 。:2緯
塾 …
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膠原線維増殖
1オ以 下1-9オ10-19才 ∼a一汐 ■ 、脆 ヲ%紹 一4財 聾59オbe・igオ7〃 才 以上第6表
弾力線維増殖
膀胱 壁 に於 け る血 管 壁 の硬 化 は,一 層著 明 とな り, 屡 々認 め られ る様 に な る. 基 底 膜 と弾 力 線維 との関 係:膀 胱 壁 の粘 膜 固 有 層, 粘 膜 下 組織 及 び 筋 層に は,上 述 の如 く年 令 の推 移 と共 に 多量 の 弾力 線 維が 増 加 して くるが,基 底膜 に近 い部 分 では 一 般 に弾 力 線維 が 認 め られ な い のが 通 常 で あ る,然 るに著 者 の症例 に於 ては 第2図 に示 す如 く,数 例 に可 成 り太 い弾 力線 維 が粘 膜 上 皮 下 に認 め ら 互,上 皮 が剥 離 脱 落 した例 に於 ては,弾 力 線 維が 内 腔 に露 出 した如 く,一 層を 成 して配 列 して い るの を認 め た.ワ イゲ ル ト氏 弾 力線 維 染 色,PAS法 に よる重 染 色及 び PAP氏 好 銀染 色 を行 っ て検 索 した が,基 底 膜 との位 置 的 関 係は 充 分 に解 明 し得 な か つた,即 ち基 底 膜 直下 に存 在 す るか,或 は 基 底 膜 内 に存在 す るか につ いて は 不 明で,PAS染 色 に よつ て赤 染 す る基 底 膜 と大 略 同 一 の 走 行 を示.Lて いた(第7表)第2節
腫 瘍 膀 胱 壁
当教室にて膀胱腫瘍 の診断の下に膀胱全別除術を施
行 して得た腫瘍膀胱5例 及び当病理学教室 の剖棟例 に
814
浅井一正常並に病的膀胱壁 の病理組織学的研究
第7表 基 底 膜 層 の 弾 力線 維番
号
年
令 _ 110日ll[21貝
532才 546 5511 4217 3818 2820 4121 2723 40、25 4726 1726 3927 56;29 4Bl 2331 32β1 u 11 15 33 51 36 7 19 21 24 33 37 39 40 44 45 50 50 51 18i5237153
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認 め られ た膀 胱 腫瘍 例5例 につ い て検 索 した.そ の症 例 は 第8表 の如 くで あ るが,そ の代 表的 な 症例2,3 に つ い て述 べ る と下 記 の 如 くで あ る. 症 例1福 田某50才 男子 乳 頭状 癌 肉 眼的 所 見:三 角 部,i頸 部,左 尿 管 口部 及び 後 壁 に 栂 指頭 大∼ 小豆 大 の梢 々広 基 性 の腫 瘍 を 認 め,多 発性 の為,膀 胱 全 別 除 術を 施 行 した. 組 織 所 見:腫 瘍 は乳 頭状 移 行 上 皮癌 で,粘 膜 下 層迄 浸潤 して い るが.筋 層 に は浸 潤 を認 め ず これ らの 浸 潤 した癌 巣周 囲 に は,既 に増 生 して いた 弾 力線 維 が癌 巣 に圧 迫 され,比 較 的多 く認め られ る.筋 層は 稻 々萎 縮 性で 膠 原 線維 の増 生が 認 め られ るが,弾 力 線維 の増 生 は略 々同 年代 の正常 膀 胱 と同程 度 の もので あ る.又 腫瘍 部 以 外 の 肉眼 的 に正 常 と思わ れ る部位 で は,粘 膜 上 皮は 剥 離 し,表 層 に慢 性 炎症 像 を 認 め,粘 膜 下層 の 膠 原線 維 は 増生 してい る. 症 例2石 井 某60才 男子 乳 頭状 癌 肉 眼 的所 見=膀 胱 左 半主 と して 左壁 よ り後 三 角部 に か け て 多発 せ る 無茎 性 の乳 頭 状 腫瘍 を 認 め,肉 眼 的に は 腫瘍 部 以 外 の粘 膜 に は全 然 変化 を認 め ない. 組織 所 見=腫 瘍 部 は,正 常 の 粘 膜 は 全 く見 ら れ ず,粘 膜 固有 層 に到 る迄 す べ て癌 組 織 で置換 され て い る,更 に こ の癌 組織 は 筋 層 に 迄 浸入 し,同 時 に 淋 巴 球,プ ラス マ細 胞 等 の浸 潤 も認め られ,筋 層 は一 般 に 肥 大 し,弾 力線 維 の増 生 も極 め て軽度 であ る.腫 瘍以 外 の部 の粘 膜 上 皮 は一 部 陥 入 す る如 く,僅 か に上 皮 の 増 殖 あ る も,他 は 殆 ど萎 縮 性 で,主 と して脱 落 して い る.筋 線 維 の 萎 縮 及び そ の 弾 力線 維 の 増生 は,他 の60 才 代 の正 常例 と全 く同 様 に高 度 であ る, 症 例3柏 村 某63才 男 子 扁平 上 皮癌 肉眼 的所 見:膀 胱 後 壁 に,半 鷲 卵 大 の花 甘藍 状 乳 頭 状 の 無茎 性 腫 瘍 を認 め る他,周 囲粘 膜 に は 肉眼 的に 異 常を 認 め な い. 組 織所 見:腫 瘍 は壊 死 傾 向 の強 い 非 角 化 性 の 扁 平 上 皮癌 で,筋 層 よ り漿 膜 に 迄 浸潤 してい る.筋 層 は断 裂 し,膠 原 線 維 の増 生 が 強 く認 め られ る.弾 力線維 は 断裂 しな が ら中等 度 に散 在 し,消 失 しつ つ あ る筋線 維 の部 に 一致 してい る 。又 癌 巣 の周 囲 に基 質 と して増 生 した 膠 原線 維 の 部 には,僅 か に 弾 力線 維 を 認め るが著 明 でな い.癌 組 織 が 浸潤 破 壊 した部 には 既 に増 生 して い た 弾 力線 維 の 集塊 が.癌 組 織 に接 して残 存 してい る 所 見を 呈 す(附 図7)癌 組 織 を 認 め ない 粘 膜面 の上 皮 は,剥 離 し,プ ラス マ組 胞,淋 巴球 及 び 僅 か な好 中 球 の浸 潤 が あ り.毛細 血 管 の拡 張 が 著 明 な,肉 芽 組織 が第8表
腫瘍膀胱症例
1膀
胱全別術症例
福○安○
石○源○
金○栄○
諸○波○
永 ○ ひ ○ 1性1別
δ 3 6 3 ♀年
令
50 60 56 56 52 初 診1 症 年 月 日. 32.7.10 33.8.4 32.2.20 31.1.5 32,2.6状
頻 尿 及排 尿痛 (3日 前 よ り) 血 尿(約6ヵ 月) 血 尿(約6ヵ 月) 排 尿痛(約3週 間) 腰 痛(約2ヵ 月)発
生
部
位
岡
転
帰
三 角 部,頸 部,左 尿 管 口部 及 後 壁 に掴 指 頭 大∼ 小 豆 大. 左 壁 よ り後 三 角 部 に無 茎 性 の もの 多 数 左 壁 よ り後 三 角 部 にか け て5ケ 右 側 壁 に 鷲卵 大 の もの1ケ 両 側 尿 管 口附 近 よ り発 生.三 角部 全 般 に 及ぶ.移行上
皮 癌
〃 〃 〃 〃生
〃存
〃 死亡(術 後1年 にて イ レウ スに よる) 生 存浅井一 正常並に病的膀胱壁の病理組織学的研究
815皿 剖
検
例
柏○ 哲○
中○ 喜○
木○ 豊○
秋○ よ○新○ 安○
性
別
年
令
死 亡 年 月 日1発
生
部
位
663 667 670 ♀ δ 60 72 31.11.14 30.5.19 30,2.1 30.4.17 30.3.28 後 壁,両 側 壁 及三 角 部 に 多数,示 指 頭 大 ∼ 小豆 大 後 壁 か ら三 角 部 にか け 漁慢 性 潰 瘍形 成. 三 角部 に雀 卵 大1ケ 頂 部 よ り両 側壁,頸 部 に 多数. 三 角部 よ り後 壁 にか け 数 ケ診
断
扁平上皮癌
単
純 癌
扁平上皮癌
〃 〃移行上皮癌
露出 してい る.膠 原 線維 の 増生 も強 く,筋 線 維 は稽 々 萎縮性 で,筋 線維 束 は膠 原 線維 の 中に 島状 に残 存 して いる,尚 癌 に随 伴せ る慢 性 炎 症 の所 見 は 随所 に認 め ら れる.弾 力線 維 は,細 胞 浸 潤 の 部 を除 い て,中 等 度 に 増生 してい る. 著者 の検 索 した癌 例 に於 ては 殆 ど腫 瘍 部 以外 の 粘膜 上皮は脱 落 し,慢 性炎 症 像 を 示 し,幼 若 肉芽 が 出 現 し,こ の部 には 弾 力線維 は 認 め られ な い.筋 線 維 は年 令相応 に,膠 原 線維 に よ り置 換 され,癌 浸潤 に よ り破 壊 され た部 では,既 に増 加 して い た弾 力 線 維が 残 存 し て認 め られ,そ の他 の 部 では 一般 に年 令 相応 の弾 力線 維の増 加を 認め る.又 浸 潤 破壊 された 筋 線 維,或 は 癌 巣 の基 質 と しての膠 原 線維 の部 分 には,弾 力線 維 の 増 加は殆ん ど認め られ な い.腫 瘍 膀胱 例 で は 感 染 を伴 う 事が 多 く,こ の際 には,炎 症 性 変 化,即 ち 表 層 の 肉芽 組織 の直 下に認 め られ る弾 力線 維 の増 加(S型)が 見 られ た.第3節
前 立 腺 肥大 膀 胱 壁
当病理 学教 室剖 検 例 中,前 立 腺 肥 大 が 証 明 され た症 例14例 につい て,そ の膀 胱 壁 を検 索 し,正 常 膀胱 と比 較検討 した.先 ず 症例 にっ い てそ の 代表 的な もの を掲 げれば下記 の 如 くで あ る. 症例1(4361)須 田某60才 肉眼的所 見:膀 胱 内腔 は 極め て狭 小 で 肉柱 形 成 は著 明であ る.粘 膜 は掴 独 し,壁 は肥 厚 して い る.前 立腺 は硬 く,1/2鶏 卵大 に 腫大 し表 面 殆 ど平 滑 で あ る ・ 組 織所 見=粘 膜 は 撤蟹 に富 み,上 皮 は 軽度 に増 殖 し てい る。粘膜 下 層 には 僅 か に膠 原線 維 の 増生 は 認 め ら れるが,細 胞 浸潤 等 はみ られ な い 筋 線 維は 一 般 に肥 大 し,間 質は 軽 度 の浮 腫状 を 呈 す る.弾 力線 維 は,筋 線維 の周 囲及 び一 部 筋 線維 東 内 に,わ つ か に増 生 して いるが著 明 では な い,又 繊襲 に富 む粘 膜 下 組織 には, 前述の結 合織 性 細胞 層 直 下 に中 等 度 の弾 力線維 の増 生 を認め る. 症例2(4715)中 里 某70才 肉 眼 的所 見;膀 胱 内腔 は 稻 々狭 小 で壁 は厚 い.粘 膜 は 搬 嚢 に富 む も,粘 膜 全体 に 及 んで 撤 髪 の一 部 が突 出 して,乳 頭 状 を呈 す る部 も認 め られ る.前 立 腺 は肥 大 し小鶏 卵 大 で硬 度 は 稽硬 い. 組 織所 見.前 述 の 例 と異 る所 は,上 皮 が剥 離 し,一 部 粘 膜上 皮の増 殖 を 認 め る.粘 膜 下 層 に著 明な 出血, 即 ち 出 血性 膀胱 炎 の 像 を呈 して い る.筋 線 維 は 肥 大 し,表 面 の緻 襲は 著 明 で,弾 力線 維 の増 生 は比 較 的 少 い(附 図8) 症 例3(4345)朝 吹某78才 肉眼 的所 見.膀 胱 容積 小に して,粘 膜 は稽 々肥 厚 し てい る.肉 柱 形 成は 特 に 後壁 に 於 て著 明 であ る.前 立 腺 は 高 度 に肥 大 し鶏 卵 大 とな り,硬 度 は稽 々硬 く,表 面は 多 少 凹 凸を 示 し,割 面は 部 分 的 に結 節 状 で あ つ た. 組 織 所 見;膀 胱粘 膜 上 皮 の増 殖 は梢 々強 く,搬 襲 に 富み,粘 膜 は所 々に剥 離 して い る.上 皮 に結 合 織性 細 胞 の 出現 を 認め,筋 層 は 肥 大 し,弾 力線 維 は 余 り増 生 して い ない が,粘 膜 下層 に あ たつ て稽 々増 量 し て い る. 上 述 した 各症 例 と,程 度 の差 は あ る が,他 の症 例 も 略 々同様 な 所 見を 呈 してい る.即 ち 粘 膜上 皮 が稻 々増 殖 を 示 した もの が14例 中5例 に認 め られ,尿 序滞 の為 の軽 度 の膀 胱 炎 に よる炎 症 像 も若 干 見 られ た.正 常 膀 胱 の70才 以 上 の 高令 層 に於 ては,壁 全 体 は 菲 薄 と な り,全 層が 萎 縮 傾 向を 帯 び,特 に 内筋 層 は一 部,或 は 殆 どが 膠 原線 維 化 され て了 ひ,膠 原線 維 の増 加 と筋線 維 が 点 状乃 至 穎 粒状 の萎 縮 に陥 るが,前 立 腺肥 大 例 に 於 ては,膠 原線 維 の増 加 も少 く,む しろ筋 線維 は 全 層 に亘 つ て肥 大 して,そ の間 に於 け る弾 力線 維 の増 生 も 極 め て少 くな る. 即 ち前 立 腺肥 大 の 肉柱 膀 胱 を検 索 す れば,主 と して 筋 線維 の肥 大 が認 め られ,同 年令 層 の 膀胱 壁 に 比 較 し て,膠 原線 維 及び 弾 力線 維 の 増 加は 極 め て 少 く,内 筋816
浅井一正常並 に病的膀胱壁の病理組繊学的研究
層 にお け る筋 線 維 と,膠 原 線維 との 置 検換 も軽 度 で, 正常 膀 胱例 の同 年 令 の症例 と比 較 す る と,著 明 な 差異 を 示 してい る.第1V章
考
按
宮 田28}(1937)は,入
体,犬 及 び豚 に つ い て
膀 胱 の解 剖 学 的 構造 を検 索 し,粘 膜,筋 層及 び
外 膜 の 三 層 に 区分 し,所 謂粘 膜 下 層 も亦 区別 さ
れ 得 る と して い る.即 ち粘 膜 は厚 く柔軟 で,髪
疎 結 合 織 を以 て緩 く筋層 と連 結 す るが 。膀 胱 三
角 部 では 粘 膜 と筋 層 とは互 に 固 く結 合 す る と述
べ てい る.筋 層 も厚 く,滑 平 筋 を以 て 構 築 さ
れ,外 膜 は 一つ の髪疎 結 合 織 層 と して見 られ,
更 に頂部 よ り体 後面 に は 腹膜 が 之 を覆 つ てい る
と記 載 して い る.こ の 中,膀 胱 粘膜 の正 常 叉 は
病 的態 度 に つ い ては,数 多 くの諸 家 の研 究 を見
るが,膀 胱 壁 の 各線 維 間 の相 互 関 係 並 に量 的 消
長 につ い て は2∼3の
交 献 を 見 るに過 ぎ ない
Sugimura35,は28例
の剖 検 例 に て,膀 胱 壁 に
於 て は,弾 力線 維 は 極 め て少 く,年 令 に よ る差
は な く,単 に弾 力線 維 の厚 径 及 び長 径 に認 む べ
き差 が あ るの みで あ る と云 い,特 に 高 令 者 で
は,膀 胱 の筋 層 に しば しば間 質結 合織 増 生 を来
た し,筋 線 維 は増 殖 せ る結 合 織,及 び比 較 的 強
く増 殖 した弾 力 線 維 に よつ て囲 まれ,最 後 に 破
壊 に陥 る事 を記 載 し,更 に弾 力線 維 の増 生 は,
筋 線 維 の消失 と一 致 して進 行 し,筋 線 維 を置換
す るが.こ の際 比 較 的大 きい膀胱 の血 管 の硬 化
を合 併 して来 るも のが 多 い と述 べ て い る.叉 交
川13}は115例 の剖 倹例 よ り,弾
力線 維 発 育 は 明
か に年 令 と関係 あ り,総 じて初 生 時 に於 ては,
繊 細 且 つ 微量 な るも,年 令 と共 に 次第 に そ の量
を増 加 し,20才 前 後 に大 略 一定 度 に達 し,高 年
に 向 い.個 女の弾 力 線維 は 肥大 し,し ば しば 染
色 性 に異 常 を 呈す る と云 つ て い る.
著 者 の64例 の剖 検 例 に於 け る膀 胱 壁 の弾 力 線
維 の 消長 は大 体文 川 の所 見 に 一致 す るが.こ の
弾 力線維 と筋 線 維 及 び膠原 線 維 との 年 令 的関 係
は極 め て興 味 あ るも ので あ る.即 ち20才 代 後 半
に な る と(第1図B参
照),粘
膜 下 層 は筋 線 維
と膠 原 線維 とが 入 り交 つ て,膠 原 線維 は 次第 に
増量 して来 る.弾 力線維 は,膠 原 線 維 の増 生 と
略 女 一 致 し た 部 に,穎 粒 状,線 状 或 は 帯 状 に な っ て,筋 線 維 束 の 周 囲 或 は 筋 線 維 東 内 に 特 に 強 く増 生 し て 来 る.そ し て,両 線 維 が 入 り交 る と 共 に,内 筋 層 は 粘 膜 下 層 に 次 第 に 接 近 し,そ の 筋 東 間 に も弾 力 線 維 及 び 膠 原 線 維 の 中 等 度 の 増 生 を 認 め る 様 に な る.上 述 し た 如 く,弾 力 線 維 の 増 加 に 際 し て は 細 線 維 状 を な す も の,或 は 稽 汝 太 い 帯 状 を な す も の,或 は 密 集 し て 糸 屑 の 如 き 外 観 を 示 す も の,又 穎 粒 の 集 団 の 如 き所 見 を 示 す も の 等 あ り,い つ れ も ワ イ ゲ ル ト氏 弾 力 線 維 染 色 に よ り陽 性 を 示 す が.エ ラ ス ク ー ゼ の 消 化 試 験 を 用 い た 小 林 等24⊃の 報 告 し た 所 見 に,こ れ ら は 一 致 す る も の と解 釈 さ れ,一 応 す べ て弾 力 線 維 と 見 傲 して 差 支 え な い と思 う. M611endorf3i),Sugimura35,,文 川13,等 は, 一 様 に 粘 膜 下 層 に 弾 力 線 維 が 多 い と し て い る が.著 者 の 例 に 於 い て も20才 以 後 に著 明 で,幼 時 に 於 て は 殆 ん ど認 め ら れ な か つ た. 30∼40才 代 の 各 線 維 は,20才 代 と 大 差 な く, 50才 代 に 入 る と所 謂 老 人性 変 化 と も云 うべ き 所 見 が.急 に 発 現 し て 来 る.長 谷 川10},市 川171等 は,50才 以 上 の 正 常 膀 胱 粘 膜 に上 皮 の 陰 窩 状 増 殖,嚢 胞 形 成 及 び 化 生 変 化 等 を認 め,叉}lerx-heimer14,等 は,上 皮 の 陰 窩 状 増 殖 は 高 令 に な る に 従 つ て 頻 度 が 高 く な る と述 べ て い る.著 者 の 例 で も,粘 膜 の 増 殖,扁 平 上 皮 化,嚢 胞 形 成,萎 縮 等,多 様 の 変 化 を 認 め る 様 に な る.50 才 代 に 入 る と,膠 原 線 維 の 増 殖 に よ つ て 内 中 層 の 筋 線 維 は 置 換 さ れ る が.こ れ に 伴 つ て 該 部 の 弾 力 線 維 の 増 生 も非 常 に 強 く な つ て 来 る.し か る に 膀 胱 頂 部 に 於 て は,筋 線 維 の 萎 縮 消 失 は 他 の 部 に 比 して 少 く,む し ろ 肥 厚 し,膠 原 線 維 の 増 殖 も軽 度 で あ る.従 つ て 弾 力 線 維 の 増 生 も 少 い.却 つ て 結 合 織 性 細 胞 層 直 下 の 弾 力 線 維 の 束 状 の 増 生 が 著 明 に な つ て 来 る.著 者 は こ れ を 「S型 」 と名 付 け た. Casperls)は,Tractusurogenitalisの 病 理 学 的 検 索 を 行 い.65∼84才 の 男 女 両 性 の 老 人 膀 胱(Alterblase)を 三 型 に 区 別 し て 観 察 し た.即 ち 1)PerifasciculareBindegewebsdegener-ation浅井一正常並に病的膀胱壁の病理組織学的研究
2)1htrafasciculareBindegewebsentwic-klung 3)E!astischeBindegewebsbildung と し,こ れ ら の 種 々 な 型 の 間 に 数 多 く の 移 行性 が 存 在 し,こ の3つ の 型 は,elastisches Gewebe形 成 の 代 償 的 な 意 義 を 有 す る と報 告 し て い る. 著 者 の例 で は60才 代 の,所 謂 老 令 期 に 入 る と,筋 組 織 は 益 々上 皮 下 に 接 近 し,膠 原 線 維 の 増殖 に伴 い,萎 縮 消 失 に傾 き,同 時 に 弾 力 線 維 の増 生 を 強 く示 す,著 者 は か か る 所 見 を 「T 型」 と称 し た.こ れ は 三 角 部 を 中 心 と し た も の に 多 く見 ら れ る.そ し て,前 記 「S型 」 と,こ の 「T型 」 と の 差 異 は 益 々著 明 と な り,老 令 期 に於 け る膀 胱 収 縮 力 の 強 弱 が 部 分 的 に 異 る事 が 判 る. ]tJII13}は内,中,外 筋 層 中,何 れ に こ の変 化 が多 い か に つ い て は,三 層 に は 著 し い 差 異 は 認 め難 い け れ ど も,概 し て 膀 胱 腔 側 に 近 い 部 分 に 強 いか の 如 き感 が あ る と云 つ て い る が,著 者 の 検 索 成 績 に よれ ば,や は り粘 膜 面 に 近 い 内 筋 層 は,す べ て 萎 縮 性 で 膠 原 線 維 の 増 殖 及 び 弾 力 線 維 の 増 加 が 著 明 で,外 筋 層 で は 筋 は 不 変 か,む しろ 肥 厚 し,弾 力 線 維 の 増 生 も 少 い と云 う事 実 が判 明 し た. 70才 以 上 に な る と壁 全 体 は 漸 次 菲 薄 と な り, 全 層 が萎 縮 傾 向 を 帯 び,特 に 内 層 筋 は,一 部 或 は殆 ん どが 膠 原 線 維 化 され て 了 い,膠 原 線 維 の 増加 と,筋 線 維 は 点 状 乃 至 穎 粒 状 の 萎 縮 と な つ て認 め られ,全 く消 失 して 了 う も の も あ る.こ の際 注 目す べ き事 は,60才 代 迄 は,膠 原 線 維 の 増 加 に 伴 う筋 萎 縮 消 失 に 随 伴 し て 増 生 す る弾 力 線維 が,こ の 年 代 に な る と,比 較 的 弾 力 線 維 の 増 生 が 弱 くな る事 で,こ れ が70才 以 上 の 高 令 者 の特 徴 と云 え よ う し か し,や は り頂 部 に 於 て は ・筋 萎 縮 が 他 部 に 比 し て 少 い が,そ れ 以 前 の 年代 よ り部 分 的 特 微 が 無 く な つ て 来 る.即 ち 「S型 」 と 「T型 」 と の 差 が 少 くな つ て 来 る の で あ る. Launois27},Sugimura35)等 は,高 令 者 で は 膀 胱 線 維 層 に於 け る比 較 的 大 き い 動 脈 に の み, 動 脈硬 化 性 の 血 管 変 化 を 確 認 す る事 が 出 来,慢 817 性 の 筋 変 性 に 伴 う筋 線 維 間 の 弾 力 線 維 の 増 殖 は,恐 ら く,動 脈 硬 化 と関 係 を 有 す る で あ ろ う と云 う見 解 を 持 つ て い る.こ れ に 反 し て,著 者 はCasper4},Ciechanowski5,,Herman,丈 川13)等 と 同 様 に,こ の 両 者 間 に は 緊 密 な 関 係 を 有 す る 所 見 に 接 し て い な い.即 ち60才 以 上 の 症 例 に,血 管 壁 の 著 明 な硬 化 を 認 め た も の も あ る が,血 管 壁 に 何 等 異 常 な 所 見 を 認 め な い 例 も少 くな い. 基 底 膜 内 の 弾 力 線 維 の 有 無 に つ い て は,加 藤18》,Dick6),山 下,中 津32)等 の 報 告 が あ る が, 加 藤18)は 下 鼻 甲 介 粘 膜 の 基 底 膜 に 微 細 な 弾 力 線 維 を 認 め,中 津32〕は 喉 頭 粘 膜 の 原 始 基 底 膜 直 下 に,弾 力 線 維 が 認 め られ,基 底 膜 内 に は 存 在 し な い 事 を 報 告 し て い る.著 者 の 検 索 に 於 て は 上 述 し た 如 く,基 底 膜 に 略 女 一 致 し て 弾 力 線 維 を 認 め た が,基 底 膜 内 か,或 は 直 下 か に つ い て は 決 定 し得 な か つ た. 膀 胱 腫 瘍 患 者 に於 け る 腫 瘍 膀 胱 粘 膜 に つ い て,Melicow30)は 非 腫 瘍 膀 胱 粘 膜 に 比 し て,上 皮 の 増 殖 性 及 び 化 生 性 変 化 の 頻 度 及 び 程 度 が 著 明 に 高 い事 を 示 し,Masina8}は 腫 瘍 周 囲 粘 膜 に は,炎 症 性 変 化 と共 に,腫 瘍 と同 傾 向 の 変 化 が あ る 事 を 認 め て い る.叉 市 川等17)は40例 に つ い て,腫 瘍 接 近 部,遠 隔 部,後 部 尿 道 粘 膜 の 変 化 を 調 べ,陰 窩 状 上 皮 増 殖 は,約90%に 存 在 す る を認 め た が,直 ち に 之 を 腫 瘍 と関 係 ず け る事 は 早 計 で あ る と報 告 し て い る.し か し著 者 の 検 索 し た 例 で は,殆 ん ど粘 膜 は 脱 落 し慢 性 炎 症 像 を 示 し て い て,腫 瘍 膀 胱 粘 膜 像 を 正 確 に 観 察 し 得 な か つ た.か くの 如 く,腫 瘍 膀 胱 粘 膜 の 研 究 は 近 年 に な つ て 諸 家 に よ り行 わ れ た が,そ れ の 膀 胱 壁 の 各 線 維 の 態 度 に つ い て は 皆 無 で あ る. 著 者 は こ の 年 代 の 正 常 膀 胱 例 と比 較 しっ っ 検 索 し た.即 ち,癌 浸 潤 に よ り破 壊 され た 部 で は 既 に 増 加 し て い た 弾 力 線 維 が 残 存 し,そ の 他 の 腫 瘍 膀 胱 壁 で は 一 般 に 年 令 相 応 の 弾 力 線 維 の 増 加 を 認 め て い る.叉 癌 の 浸 潤 度 が 高 く,筋 層 を 貫 通 し た も の で は 筋 線 維 は 破 壊 し,叉 癌 巣 の 基 質 と し て の 膠 原 線 維 の 部 分 に は,そ の 増 加 に も拘 らず 弾 力 線 維 の 増 生 は 極 め て 少 い.こ の 点 は 街 症 例 数 を重 ね て 研 究 す る 必 要 を 認 め て い る.炎818
浅井一 正常並に病 的膀胱壁の病理組織学的研究
症 の強 い時 に は 「S型 」 に類 似 した弾 力線 維 の
増 加 が 見 られ る.
要 す るに 腫瘍 膀 胱 壁 は,そ の腫 瘍 の浸 潤 が 波
及 した 部 分 の 各線 維 は,変 化 を来 すが,腫 瘍 の
浸 潤 度 が 少 く,粘 膜 下 層 位迄 に と どま る もの で
は,粘 膜上 皮 に於 け る如 き特 別 な変 化 は 認 め ら
れ ず,そ の 年令 に相 当 して正 常 膀 胱 壁 の 変 化
と,同 一 の規 範 の中 に あ る と見 て よい と思 う.
前立 腺 肥大 時 に於 け る膀 胱 壁 の変 化 は,主
と
して肉 柱形 成 で あ る.肉 柱 膀 胱 は,慢 性 の機 械
的(前 立 腺 肥 大 症,尿 道 狭 窄 等),或
は機 能 的
(神 経性 排 尿 頻数,脊 髄 炎,脊 髄 虜 等)排 尿 障
碍 の結 果,膀 胱 筋 の 肥大 と解 され る.
Sugimura35)は
肉柱 形 成著 明 な る膀 胱 憩 室16
例 につ い て,憩 室 膀 胱 は,筋 組 織 に特 有 な る線
維 性変 化 を 示 し,之 は結 合織 増 殖 並 び に弾 力線
維 増 生 を特 徴 とす る と記 載 し,且 つ膀 胱 筋 層 筋
東 間 小 動 脈 の硬 化 性 変 化 との 関連 に注意 した.
Asch7}は
尿停 滞 を来 せ る肉柱 膀 胱 の一 部 につ
き,原 発 性 筋変 性 を認 め,之 は膀 胱 壁 小血 管 の
硬 化性 変 化 とは無 関 係 で あ る と主張
し,Ciech-anowski5)は,老
令 者 に於 い て,膀 胱 筋 組 織 の
線 維 増 生 を観 察 し,こ の所 見 は 機械 的排 尿障碍
或 は慢性 炎症 性 病変 に際 し高 度 とな り,小 動 脈
硬 化は其 の原 因 に非 ず と述 ぺ て い る.文 川13}も
一 般 に 肉柱 膀 胱 例 に あつ ては ,膀 胱壁弾力線維
の増 生 を来 す と報 告 して い る.勿 論,前 立腺 肥
大 は高 令者 に発 生 す るも ので あ り,特 に60才 以
上 の正 常 膀 胱 壁 は,前 述 の如 く壁全 体 は 次第 に
菲 薄 とな り,全 層が 萎 縮 傾 向 を帯 び,そ れ に 伴
う弾 力 線維 の増 生 が著 明 とな るが,こ れ を前 立
腺 肥大 膀 胱 壁 の 各線 維 と比 較 す る と,筋 線 維 は
年 令 に比 して萎 縮 は認 め られ ず,却 つ て肥 大 し
て い る場 合 が多 く(特 に頂 部 に多 い),諸
家 の
述 べ る如 き弾 力 線維 の 増生 は著 明 に は認 め られ
な いの を常 とす る.粘 膜上 皮 は 極 め て籔 壁 に富
み,そ
の約1/3に,増
殖性 変 化 を認 め たが.こ
れ は 尿停 滞 に よ る慢 性 炎症 及 び機 械 的刺 戟 に よ
る為 と思 わ れ る.
以 上 の如 く,正 常 膀 胱 壁 に於 い て弾 力 線 維 は
高 令 に な るに 従 い著 明 に増 加 す る事 を記 載 した
が.弾 力 線維 の形 成機 序 に 関 して考 察 す る と未
だ不 朋 な 点 が 多 く,細 胞 核 或 は細 胞 膜 か ら生 成
され る とい う説,或 はElastoblasten説
等 が あ
るが.今
日で は全 く認 め られ て いな い 。現 在 で
は弾 力線 維 物 質 が そ れ 自体 で線維 を 形 成 す る
か.或 は既 に 形 成 せ られ た好銀 線 維 に弾 力線 維
物 質 が 沈 着 す るか.い つ れ か で あ る と考 え られ
て い る.著 者 の検 索材 料 に於 ては,勿 論 か か る
点 につ い て は 充分 に究 明 出 来 な かつ た が,局 所
性 に弾 力線 維 の増 生 を うな が す条 件 を考 察す る
と,小 林23,,泉23},新 井,宮 入29,,櫛 引24,,安
井36,,船 曳12)等の業 績 が 挙 げ られ る.即 ち,上
皮 の或 る種 の もの は骨 組 織 を誘 導 し,或 る種 の
もの は弾 力 線 維 を 誘 導 し,更 に或 る種 の も のは
骨組 織 と共 に弾 力線 維 も誘 導 し,い つ れ の場 合
に も附 随 的 に 硝 子 化層 が誘 導 され る場 合が 多 い
事 が 明 か に され た.即 ち,膀 胱,胆 嚢,精 嚢,
前立 腺,胃 及 び乳 腺 等 の粘 膜 上 皮 が,弾
力 線
維,骨 組 織,或
は そ の両 者 を誘 導 す る能 力 を有
す る事 が 多 くの研 究 に よ り明 か に され てい る.
著 者 の検 索 に於 ては,膀 胱 壁 の弾 力線 維 の増 加
は,年 令 の進 む に 従 い.何 等 か の条 件 に よ り,
上 皮 に異 常 な 生 活環 境 が 与 え られ,上 皮 の機 能
変 調 が 生 じた場 合 に,か か る膀 胱 粘 膜上 皮 の誘
導 能 が 発 揮 され,間 葉性 組 織 の誘 導 が 起 つた も
の と推 定 され る.即 ち黒 川39〕
の実 験 に 見 られ る
如 く,膀 胱 粘 膜 移 植 の み では 骨形 成 は著 しい に
も拘 らず,弾 力線 維 の新 生 は極 め て 少 い.し か
しな が ら,VitaminC欠
乏動 物 に於 て は,移
植 膀胱 片 に著 明 な弾 力線 維 の 増生 を報 告 してい
る.安 井36)は,胆 嚢 粘 膜 を 同時 に移 植 し た 場
合,膀 胱 粘 膜 部 に 可 成 り著 明 な弾 力線維 の新 生
が認 め られ る事 を証 明 して い る.従 つ て高 令 者
に於 け る膀 胱 壁 の弾 力線 維 の増 加 に も この種 の
因子 の関 与 が 一 応 考 え られ る.こ の際 粘膜 上 皮
の病 理 組 織 学 的 所 見 は検 索材 料 が 剖 倹例 で あ る
為 に剥 離 が 一 般 に強 く,弾 力線 維 の増 加 と上 皮
との間 には,特 異 的 な所 見 は認 め ら れ な か つ
た.い つ れ にせ よ,膀 胱 粘膜 上 皮 は上 述 各種 実
験 に も認 め られ る如 く,特 殊 な誘 導能 を有 す る
一 証 査 と も考 え られ る
.叉 著 者 の検 索例 で は骨
の形 成 は認 め られ て い な い.
叉Hass9〕
の論 交 に よ る と滑 平 筋 と弾 力線 維
浅井一正常並 に病的膀胱壁 の病理組織学的研究
が密 接 な 関 係 の あ る事 が 明 ら か に さ れ て お り, あ る学=者 を し て 云 わ し め れ ば,``Myoelastic tissue"と 云 う 一 つ の 組 織 を 考 え る も の も あ る と述 べ て お り,横 内38}の 兎 胎 児 を 使 用 し た 大 動 脈 の 発 育 過 程 の 検 索 に 於 い て も,線 維 芽 細 胞 は 勿 論 の事,滑 平 筋 細 胞 と 思 わ れ る 細 胞 と線 維 と が,密 接 な 関 係 の あ る 事 が 証 明 され て い る.膀 胱 壁 は滑 平 筋 線 維 に 富 む 組 織 で あ り,膠 原 線 維 の増 殖 に 伴 う筋 線 維 の 萎 縮 に 際 し て,弾 力 線 維 が 増 加 す る所 見 よ り,滑 平 筋 線 維 と弾 力 線 維 の 間 に 何 等 か の密 接 な 関 係 が 推 定 され,今 後 の 研 究 に 侯 ち た い第V章
結
語
1.膀
胱 壁 は年 令 の増 加 に伴 い,特 に50才 以
上 に於 いて は膠 原 線 維 の 増殖,滑 平 筋 線 維特 に
内筋 層 に於 け る筋 線 維 の萎 縮 及 び消 失 に 随伴 し
て,弾 力線維 が著 明 に増 加 す る.
2.部
位 的 に は,尿 管 口部,三 角部 に著 明 に
弾力線 維 の増 加 を認 め るが,之 に 反 して,頂 部
に於 い ては膠原 線 維 の 増 加及 び筋線 維 の萎 縮 消
失 は極 め て少 な く,弾 力線 維 の増 加 も著 明 で な
い.
3.基
底 膜 に大 略 一致 して,弾 力線 維 の新 生
を数例 に認 めた.
4.正
常膀 胱 粘 膜 に於 い ては,50才 以 上 の例
に於 い て粘膜 上 皮 に,増 殖,嚢 胞形 成,扁 平 上
皮化生等 の変 化 を認 め る場 合 が 多 い.
5.腫
瘍 膀 胱例 に於 い て は,年 令 相 応 の弾 力
線 維の増加 を認 め,癌 浸 潤 に よ り破壊 され た部
位 では,既 に増加 して いた弾 力線 維 が残 存 して
認 められ るが,癌 胞 巣 の周 囲 の基 質 と して増 殖
した膠 原線 維 の部 に は,弾 力線 維 の増 加 は殆 ん
ど認め られ な い.な お 腫 瘍 膀胱 例 で は,感 染 を
伴 う事 が 多 い.
6.前
立 腺 肥大 の肉 柱 膀胱 壁 で は,筋 線維 の
肥大 が認 め られ,膠 原線 維 の増 殖 は 極 め て 少 な
く,弾 力線 維 の増 加 も著 明 に少 な くて,同 年 令
の,正 常 膀胱 壁 に比 して,明 か な差 異 を 示 して
い る.
7.膀
胱 壁 の弾 力線 維 の増 加 に対 す る局所 的
な一条 件 とし て,膀 胱 粘 膜 上 皮 の誘 導 能 が推 定
さ れ る ㌻ 819 掘 筆 す るに 当 り,御 懇 篤な る御指 導,」御 校 閲 を賜 つ た恩 師 田村 教授 並 び に 小林 教 授 に深甚 な る謝 意 を表 す る と共 に,終 始 直 接御 指 導 御鞭 縫 を 戴 いた 久 田講 師 に 深謝 し,御 協 力 下 さっ た 教室 員 諸 兄 に感 謝致 します. 尚本 論 文 の要 旨は,第240回 日本 泌尿 器 科学 会 東京 地 方 会 に於 て発表 した.文
献
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