*正会員・東洋大学(Toyo Univ.) **正会員・首都大学東京(Tokyo Metropolitan Univ.) 1.研究の背景と目的 今後の急激な人口減少と高齢化を背景に、2016 年 8 月、 都市再生特別措置法の一部が改正され、「コンパクト・プラ ス・ネットワーク」の都市構造の形成を目指した立地適正 化計画(以下、立適)の制度が施行された。立適は、都市 計画区域を有する 1374 都市のうち 32%にあたる 440 都市 (2018 年 12 月末)1)で策定済・策定中である。 立適は、都市計画マスタープラン(以下、都市 MP)の 高度化版として位置付けられ、各自治体が都市機能誘導施 設・都市機能誘導区域と居住誘導区域を設定し、誘導区域 外における都市機能誘導施設や住宅の建築・開発行為に対 する届出・勧告によって緩やかに立地の誘導を図ろうとす る仕組みである。そのため、都市機能誘導区域・居住誘導 区域を設定しただけでは、誘導施策としての実効性に乏し い面がある。多くの自治体が立適に取り組む背景には、立 適の策定の有無が国からの補助金の獲得や補助金額のかさ 上げ等に関連している点があるが、自治体が自身の都市政 策として策定・公表する以上、各自治体による都市機能や 住宅の立地誘導の実効性の向上に向けた様々な取り組みが 求められる。現在、立適制度が創設されてから 5 年程度し か経ていない初動期ということもあり、具体的な立地誘導 策の検討やその展開については試行錯誤の段階である。 立適に関しては、居住誘導施策検討のための分析手法2) や区域指定と都市 MP との関係性3)、自治体担当者の政策 への認識の経年変化に関する研究4)、市街化調整区域の規 制緩和条例への対応に関する研究5)などの先行研究の積み 重ねが進みつつあるが、様々な都市計画手法を対象にした 総合的な観点から、立適策定後の立地誘導に向けた自治体 の取り組みについて全国的な実態の把握には至っていない。 今後、人口だけでなく、世帯数も減少局面を迎える中で は、単に誘導区域の線を引くだけにとどまることなく、「コ ンパクト・プラス・ネットワーク」の都市構造の形成の本 格的な実現に向け、自治体による誘導施策の取り組み実態 に基づいた基礎的知見を積み重ね、都市計画技術として具 体的、かつ総合的な立地誘導施策の確立が重要である。 本研究では、立適策定済の自治体に対するアンケート調 査に基づき、立地誘導施策として、①都市機能誘導区域内 の整備、②居住誘導区域外の都市計画事業の廃止・縮小、 ③土地利用規制の変更、④区域指定を伴う(1)居住誘導に関 する支援策に着目し、立適創設後の初動期における立適の 策定を機にした立地誘導施策(2)の取り組み実態と課題を 明らかにすることを目的とする。 ここで、①都市機能誘導区域内の整備とは、都市機能誘 導施設の整備・都市のスポンジ化対応策(低未利用土地権 利設定等促進計画・都市再生推進法人)、②都市計画事業と は、都市計画道路・土地区画整理事業、③土地利用規制と は、用途地域・特別用途地区・特定用途制限地域・都市計 画法第 34 条 11 号・12 号に基づく市街化調整区域の開発基 準緩和条例(以下、3411 条例、3412 条例)・区域区分・居 住調整地域、④居住誘導に関する支援策とは、新築住宅の 立地誘導や既存住宅やその跡地の利活用の促進に向けた補 助、高齢者向け住宅整備に関わる支援策等を対象とした。 分析にあたり、立適を機にした立地誘導施策の全体的な 取り組み状況は、施策の組み合わせ状況とともに、現況の 土地利用規制に基づく都市構造の状況を見るために、都市 計画区域に占める市街化区域・用途地域指定区域の面積比 率を視点にした。 また、上記の①~④の立地誘導施策別の取り組み実態の 分析にあたっては、具体的な取り組み状況に加え、人口・ 世帯数の増減状況(2010 年から 2015 年の国勢調査)も視
立地適正化計画の策定を機にした自治体による立地誘導施策の取り組み実態と課題
-立地適正化計画制度創設後の初動期の取り組みに関するアンケート調査の分析-Issues on the Measures to Induce Residence and Urban facilities with Formulating the Location Normalization Plan
- Through the Analysis of a Questionnaire to Municipalities in the Initial Period after the Formulation of the plan -野澤千絵*・饗庭伸**・讃岐亮**・中西正彦***・望月春花**** Chie Nozawa*, Shin Aiba**, Ryo Sanuki**, Masahiko Nakanishi***, Haruka Mochizuki**** This paper aims to clarify various issues on the measures to induce residence and urban facilities with the formulating
the Location Normalization Plan by municipalities in the initial period after the formulation of the plan through the analysis of a questionnaire to municipalities. As a result, the most numerous cases were such municipalities that target only development in urban facilities induction areas and continue with previous projects. In some municipalities there have already been efforts such as down zoning, reviews of development permission ordinances, and improvement of support measures for designated areas to induce residence. Even in municipalities where the number of population and households is decreasing, it is necessary to designate areas to take support measures for reorganization into the city structure of "Compact Plus Network".
Keywords:立地適正化計画,コンパクトシティ,居住誘導,土地利用規制
取り組み分野とその具体的な施策の内容 具体的な施策 に取り組む自 治体数※1 76 (70%) 有 無 有 無 有 有 有 有 無 有 無 無 無 無 23 (21%) 無 無 有 有 無 有 無 無 有 有 有 有 無 無 16 (15%) 無 無 無 無 有 有 有 無 有 有 有 無 有 無 9 (8%) 無 無 無 無 無 有 有 有 無 無 有 有 有 有 109 48 24 12 6 6 2 2 2 2 1 1 1 1 1 100% 44% 22% 11% 6% 6% 2% 2% 2% 2% 1% 1% 1% 1% 1% 合計 立地誘導施策の取り組み状況 (立適策定前からの継続、及び見直し・新規導入・検討中の施策) ※1 最左欄に記載した具体的な施策のいずれかに取り組んでいる(立適策定前からの継続、及び見直し・新規導入・検討中の施策)と回答があった自治体をカウントした。 ※2 対象とした具体的な施策は、①転入者が住宅を購入等・居住する場合の固定資産税の免除、②住宅取得(新築)に対する補助、③住宅取得(既存住宅・空き家)に対する 補助、④既存住宅・空き家のフォーム費用の補助、⑤空き家の解体費補助、⑥既存住宅・空き家の流通に向けた金融機関との連携(金利の優遇等)⑦高齢者住宅整備支援(サ高 住、グループホーム等の高齢者向け住宅の整備等)⑧その他の独自支援策とした。また、区域指定とは、施策対象として指定した区域に居住誘導区域を含む場合。 都市機能誘導区域内の整備:都市機能誘導施設の 整備や公共空間の整備計画、低未利用地土地権利設 定等促進計画・都市再生推進法人の認定 区域指定を伴う居住誘導に関する支援策:新築 住宅の立地誘導、既存住宅や跡地の利活用の促進に 向けた補助等 ※2 土地利用規制の変更:用途地域・特別用途地区・特 定用途制限地域の見直し・導入、市街化調整区域の 3411・3412区域の縮小、居住調整区域、区域区分 居住誘導区域外の都市計画事業の廃止・縮小:都市 計画道路の廃止や縮小、土地区画整理事業の中止や 縮小(定期見直し除く) 点とした。この理由は、各自治体の人口・世帯数の増減状 況によって、立適を機にした立地誘導施策の必要性が異な るためである。加えて、②居住誘導区域外の都市計画事業 の廃止・縮小と③土地利用規制の変更については、都市M P改定と関係する場合があるため、立適と都市MPの策定 時期の前後関係も分析の視点とした。 2.研究の方法 2018 年 8 月末時点で都市機能誘導区域・居住誘導区域と もに設定した 142 市町村(国土交通省調査)を対象にした アンケート調査を実施(2019 年 1 月、郵送による発送・回 収)し、142 市町村中 109 から(76.8%)回答を得た。また、 立適を機にした居住誘導策の取り組み実態を明らかにする ために、立適策定後に居住誘導を中心とした土地利用規制 (地域地区等)の見直し・新規導入を実施済の舞鶴市(線 引き都市)、むつ市(非線引き都市)、3411 条例の見直しを した鹿児島市(線引き・非線引きが併存する複合都市)に 取り組みの経緯・目的等についてヒアリング調査を行った。 アンケートの項目(2)は、線引きや用途地域指定の状況、立 適の公表時期、都市 MP 策定時期との関係、届出・勧告数、 居住調整地域指定の検討状況、立適を機にした各立地誘導 施策の取り組み状況、居住誘導区域内外に対する支援策の 取り組み状況、立適の実効性を高めるための課題とした。 3.立適の策定を機にした立地誘導施策の取り組み状況 表-1 より、立適策定を機に「都市機能誘導区域内の整備」 に取り組む(立適策定前から継続、見直し・新規導入・検 討中)自治体は 76(70%)と多いが、「区域指定を伴う居 住誘導に関する支援策」「土地利用規制の変更」「居住誘導 区域外の都市計画事業の廃止・縮小」に取り組む自治体は 少ない。施策の組み合わせ状況を見た場合、「都市機能誘導 区域内の整備のみ」の自治体が 48(44%)と最も多く、次 いで「いずれの取り組みもなし」が 24(22%)であった。 そこで、「都市機能誘導区域内の整備のみ」と「いずれの 表-1 立地誘導施策の取り組み状況 取り組みもなし」の自治体について、現況の土地利用規制 に基づく都市構造の状況を見るために、都市計画区域に占 める市街化区域・用途地域指定区域の面積比率を分析(表 -2)した。その結果、「都市機能誘導区域内の整備のみ」の 自治体は、都市計画区域に占める市街化区域・用途地域指 定区域の面積比率が 75%以上の大きな自治体の割合が多 かった。都市計画区域に占める市街化区域・用途地域指定 区域の面積比率 75%以上の 5 自治体は、線引き都市の市域 のほとんどが市街化区域の大都市圏であり、寝屋川市(面 積比率 88%)を除く、高石市(同 98%)・門真市(同 97%)・ 吹田市(同 95%)・名古屋市(同 93%)の都市機能誘導施 設の整備内容は、立適策定前からの施策の継続であった。 こうした状況は、国からの補助金の主要な対象が都市機 能誘導施設等であることもあり、立適前から既にあった施 設の整備計画を立適に位置付けたものと考えられる。加え て、大都市部で市域のほとんどが市街化区域の自治体にと っては、積極的に居住誘導を目指す必要性に乏しいことも 要因として考えられる。実際に、「都市機能誘導区域内の整 備」のみ取り組みありの自治体ではアンケートにおいて「本 市の立適正化計画の主なねらいは都市機能誘導区域におけ る都市再生の推進にある」として居住誘導に関する支援策 に関する設問は回答の対象外とする自治体も見られた。 表-2 都市計画区域に占める市街化区域等の面積比率 都市計画区域に占 める市街化区域・ 用途地域指定区域 の面積比率 ※1 75%以上 6 100% 5 83% 0 0% 50%以上75%未満 11 100% 6 55% 2 18% 25%以上50%未満 26 100% 12 46% 5 19% 25%未満 66 100% 25 38% 17 26% 計 109 100% 48 44% 24 22% 自治体数 「都市機能誘導 区域内の整備」 のみ取り組みあ り※2 ※1 国土交通省「2017年度モニタリングシート(全体表)」のデータにより作成 ※2 立適策定前からの継続・見直し・新規導入・検討中を取り組みありとした。 ※3「都市機能誘導区域内の整備」「区域指定を伴う居住誘導に関する支援策」「土地 利用規制の変更」「居住誘導区域外の都市計画事業の廃止・縮小」のいずれも取り組み (継続・見直し・新規導入・検討中)がない場合とした。 いずれの取り組 みもなし ※3
人口 増・世 帯数増 N=31 人口 減・世 帯数増 N=48 人口 減・世 帯数減 N=30 63 58% 46 17 4 9 4 100% 73% 27% 13% 19% 13% 48 44% 34 14 4 7 3 100% 71% 29% 13% 15% 10% 16 15% 0 15 2 9 4 100% 0% 94% 6% 19% 13% 17 16% 5 12 2 7 3 100% 29% 71% 6% 15% 10% 都市のスポンジ化対応 (都市再生推進法人等) 継続 (※) 全自治 体に占 める割 合 N=109 ※都市のスポンジ化対策は2018年7月施行だが、都市再生推進法人は以前からある制度である ため、継続の自治体がある。 都市機能誘導施設 の整備計画 公共空間の魅力向上 に向けた整備計画 都市のスポンジ化対応 (低未利用土地権利設定等 促進計画) 見直し・新規導入済、見直し・ 新規導入予定、検討中の自治体 都市機能誘導区域内 の整備内容 取り 組み あり の自 治体 計 一方、表-2 より、都市計画区域に占める市街化区域・用 途地域指定区域の面積比率が小さい自治体の方が、「いずれ の取り組みもなし」とする自治体が増える傾向にあった。 これは、都市計画区域に占める市街化区域・用途地域指定 区域の面積比率が小さい自治体は、既にコンパクトな都市 構造となっている場合、立地誘導施策の必要性が他の自治 体よりも低いことが関係していると考えられる。 しかし、「いずれの取り組みもなし」の 24 自治体のうち、 特に非線引き区域を有する 9 自治体については、開発行為 が 3000 ㎡未満の開発行為は開発許可が不要であり、用途地 域や立適に基づく誘導区域の指定だけでは立地の誘導が困 難であることから、立適の実現に向けた立地誘導施策の検 討に着手することが求められる。 4.立地誘導施策別の取り組み実態 (1)都市機能誘導区域内の整備に関する取り組み実態 次に、都市機能誘導区域内の整備の内容別に取り組み実 態を見ると、表-3 より、立適の策定を機にした立地誘導施 策として、「都市機能誘導施設の整備計画」「公共空間の魅 力向上に向けた整備計画」は、立適策定前からの整備計画 を継続して立適に位置付けた自治体が多い(7 割以上)と いう状況であった。立適を機に既存の施策の見直しや新規 に導入している自治体は少ないものの、都市のスポンジ化 対策のための新たな制度の「低未利用土地権利設定等促進 計画」(2018 年 7 月、改正都市再生特別措置法の一部改正) の導入済が 1、新規導入の検討中が 15 と、制度創設から間 もないが、都市のスポンジ化対策として新たな取り組みを 行おうという自治体も見られた。「低未利用土地権利設定等 促進計画」を導入済・検討中の 15 自治体について、人口・ 世帯数の増減状況から見ると、表-3 より、人口増・世帯数 増の 31 自治体中 2(6%)に比べ、人口減・世帯数増の 48 自治体中 9(19%)、人口減・世帯数減の 30 自治体中 4(13%) と多く、人口が減少下の自治体の方が「低未利用土地権利 設定等促進計画」に取り組む傾向が見られた。 表-4 土地利用規制(地域地区)に関する取り組み実態 表-3 都市機能誘導区域内の整備に関する取り組み実態 (2)都市計画事業の廃止・縮小の取り組み実態 居住誘導区域外の土地区画整理事業は、廃止・縮小済や 検討中が 0、検討予定が 2 自治体だったが、都市計画道路 は、中止・廃止済が 1(魚沼市)、検討中が 8 自治体、検討 予定が 8 自治体と、都市計画道路の方に動きが見られた。 都市計画道路に関して、人口・世帯数の増減状況から、 居住誘導区域外に都市計画道路の予定を有する自治体数に 占める変更の動きがある自治体の割合については、人口 増・世帯数増は 11%(3 自治体)、人口減・世帯数増は 16% (7 自治体)、人口減・世帯数減は 26%(7 自治体)と、人 口も世帯数も減少下にある自治体の方が居住誘導区域外の 都市計画道路を変更しようという自治体の割合が多かった。 (3)土地利用規制(地域地区等)の変更の取り組み実態 次に、立適の策定を機にした土地利用規制の見直し・新 規導入の動向を整理した。表-4 より、地域地区等の内容別 に見ると、「見直し中・検討中」「今後、見直し・新規指定 の必要性を検討予定」の割合が高いのが、特定用途制限地 域(35%)であった。これは、非線引き区域では、立地誘 導のための土地利用規制のツールが他にないことが関係し ていると考えられる。 人口・世帯数の増減状況別に見ると、居住誘導区域内外 見直し・ 新規指定 をした 見直し 中・新規 指定を検 討中 今後、見 直し・新 規指定の 必要性を 検討予定 見直し・ 新規指定 をした 見直し 中・新規 指定を検 討中 今後、見 直し・新 規指定の 必要性を 検討予定 都市機 能・居住 の誘導に 関連する 特別用途 地区あり 見直し・ 新規指定 をした 見直し 中・新規 指定を検 討中 今後、見 直し・新 規指定の 必要性を 検討予定 都市機 能・居住 の誘導に 関連する 特定用途 制限地域 あり 見直し・ 新規指定 をした 見直し 中・新規 指定を検 討中 今後、見 直し・新 規指定の 必要性を 検討予定 31 0 2 4 0 1 6 12 1 0 4 3 0 2 1 100% 0% 6% 13% 0% 3% 19% 100% 8% 0% 33% 100% 0% 67% 33% 48 0 1 12 0 3 10 24 0 1 1 11 0 0 4 100% 0% 2% 25% 0% 6% 21% 100% 0% 4% 4% 100% 0% 0% 36% 30 3 1 5 2 1 5 14 1 0 4 12 0 1 1 100% 10% 3% 17% 7% 3% 17% 100% 7% 0% 29% 100% 0% 8% 8% 109 3 4 21 2 5 21 50 2 1 9 26 0 3 6 4% 19% 5% 19% 2% 18% 12% 23% ※その他として、居住調整区域の指定:1自治体、区域区分の見直しの検討中:1自治体ある。 0% 4% 2% 23% 減 減 計 100% 100% 特定用途制限地域 人口 (2015年 国勢調 査) 世帯数 (2015 年国勢 調査) 回答を 得た自 治体数 24% 20% 居住誘導区域内の用途地域 居住誘導区域外の用途地域 特別用途地区 35% 3% 100% 増 増 減 増
市町村 線引き 人口※ 世帯数※ 魚沼市 非線引き 減 減 長岡京 市 線引 き 増 増 ※2015年国勢調査データに基づく むつ市 非線 引き 減 減 ①都市機能誘導区域外の準工業地域に、大規模集客施設を立 地制限する特別用途地区を新規指定 ※立適策定前に、用途地域外での市街地の拡大を抑制するた めに、特定用途制限地域を指定済 ②都市機能誘導区域内の用途地域の見直し 中央地区:一低層→二種住居、50/80→60/200、下北地区: 一住居→準住居、柳町地区:一住居→二住居 ①居住調整区域の新規指定 ②現況の施設立地の状況を踏まえ、土地利用の適正化のた め、居住誘導区域外の用途地域を見直し 宇田町地区:近商→準住居、80/200→60/200、苫生地区:一 住居→準工業+特別用途地区指定(大規模集客施設制限地 区) 具体的な見直し・新規導入の内容 都市機能誘導区域内の用途地域を見直し 1中高→準工業(新庁舎建設計画などの土地利用転換) ①都市機能誘導区域の近隣商業地域(市庁舎エリア)に特定 大規模小売店舗制限地区を新規指定 ②都市機能誘導区域内に移転する病院(都市計画病院)エリ アに対する特定用途誘導地区(容積率緩和)決定 舞鶴市 非線引き 減 減 ①市街化区域の約27%、584haの用途地域を見直し 市全体として、住居系203ha増加、商業系81ha減少、工業系 122ha減少 【居住誘導区域内の見直し例】商業・準工業→2中高、近商 →1住居、商業→近商、商業→1住居、準工業→近商 ②コンパクトシティに向けて郊外化の抑制を図るため、区域 区分の見直し基準を策定(逆線引き) の用途地域については、「見直し済」「新規指定済」の自治 体は、全て人口減・世帯数減の自治体であった。 また、非線引き区域を有し、都市機能・居住誘導に関連 する特別制限用途制限地域がある自治体のうち、人口増・ 世帯数増の自治体では、特別用途制限地域を「見直し中・ 新規指定を検討中」が 67%と多いが、これに比べ、人口減・ 世帯数減の自治体では、「見直し中・新規指定を検討中」が 非常に少なかった。人口も世帯数も減少している自治体で は、開発圧力が弱まっており、特定用途制限地域の指定に よる開発規制を行う必要性が低いと捉えることもできるが、 人口も世帯数も減少しているとはいえ、一定量は店舗等や 住宅のバラ建ちが進行し市街地の拡大は続くことが多い。 人口減・世帯数減の非線引き都市に対し、今後、居住誘導 区域外への土地利用規制の導入を検討する方向へ向かうよ う都道府県や国からの専門的・技術的支援も必要であると 考えられる。 次に、立適の策定を機にした居住誘導区域内外の土地利 用規制(地域地区等)の具体的な見直し・新規導入の内容 を表-5 に整理した。表-5 より、都市機能誘導施設に関連し ているのは、魚沼市における新庁舎建設計画などの土地利 用転換のための用途地域の見直し、長岡京市における建て 替え予定の市庁舎エリアに対する特定大規模小売店舗制限 地区の新規指定や都市機能誘導区域内に移転予定の病院 (容積率緩和)に対する特定用途誘導地区の新規指定、む つ市における都市機能誘導区域内の用途地域の変更、及び、 都市機能誘導区域外の準工業地域に対する大規模集客施設 を立地制限するための特別用途地区の新規指定であった。 そこで、居住誘導に関連した複数の土地利用規制(地域 地区等)を総合的に見直し・新規導入を既に実施済の舞鶴 市とむつ市に、立適を契機にした立地誘導策の取り組みに ついて、具体的な経緯・目的等についてヒアリング調査(む つ市:2018 年 7 月、舞鶴市:2019 年 3 月)を行った。 表-5 土地利用規制(地域地区等)に関する取り組み内容 (Ⅰ)舞鶴市:人口は 1960 年に 99,615 人をピークに、人 口は減少し続け、2015 年には 83,990 人(国勢調査)となっ た。時代と共に、まちなかを中心に空き家・空き店舗も増 加し、人口ピーク期の線引きや用途地域が時代に合わなく なっていた。そのため、2014 年 10 月から「舞鶴市都市計 画見直し基本方針検討会」をスタートさせ、区域区分の見 直し、市街化区域内の用途地域の方針を策定、2018 年 4 月 に立適の策定と共に、都市 MP 改訂も行った。 こうした経緯により、用途地域は、市街化区域の約 27% (584ha)を見直し、空き家・空き店舗が多いまちなかの居 住誘導区域の用途地域のダウンゾーニングを実施済であり、 逆線引きは現在、検討中(3)である。市街化調整区域の編 入検討候補地区を既に市の HP で公開しており、今後、地 元との協議を行いながら進めていきたいとのことであった。 なお、市街化調整区域の編入検討候補は、主に市街化区域 のフリンジ部分で農地が多く残る区域とされている。 (Ⅱ)むつ市:人口は 1985 年に 71,857 人(国勢調査) でピークを迎え、2015 年に 58,506 人と減少し続けているが、 市街地の拡大は続いていたため、2007 年にスーパーの立地 などを制限する都市計画の変更を検討されたのを機に、 2010 年の都市MP にコンパクトなまちづくりを位置付けた。 市が市街地拡大の抑制を目指した特定用途制限地域の指定 の検討を始めた頃に、立適が創設されたため、その策定に も取り組むこととなった。2017 年 2 月に策定された立適で は、住宅地の開発抑制方針として、住宅地開発抑制エリア を定め、2018 年 4 月 1 日からは、全国初の居住調整地域を 施行した。併せて、現況の施設立地の状況を踏まえた土地 利用の適正化を目的に、一部地域で近隣商業地域を準住居 にダウンゾーニングも実施した。 以上から、土地利用規制(地域地区)を見直した舞鶴市 は立適と都市 MP 改訂の時期が重なり、むつ市は立適と同時 期に都市 MP を改訂しており、両市は、もともとコンパクト シティに向けた動きがベースにあり、それが立適の創設時 期と重なったため土地利用規制と立適との相互連携が可能 だったと言える。そこで、次に、都市 MP 改定が関係する場 合がある「土地利用規制の変更」「都市計画事業の廃止・縮 小」について、立適と都市 MP の改定時期の前後関係を分析 する。 (4)土地利用規制の見直し等と都市 MP 改訂時期の関係 表-6 より、立適より前に都市 MP が改定された自治体の 54%、立適と同時期に都市MP の改定を行った自治体の33% で、「土地利用規制の変更」「居住誘導区域外の都市計画事 業の廃止・縮小」が行われていた。逆に、当面、都市 MP 改訂予定なしの自治体では 13%にとどまっており、立適を 機にした「土地利用規制の変更」「都市計画事業の廃止・縮 小」に、都市 MP の改定時期が関係している自治体が多い。 以上から、今後、立地誘導施策として、土地利用規制や 都市計画事業で見直すべき内容がある場合、立適の方針を 踏まえた都市 MP の改定を市町村に促すことが重要である。
都市MPと立適の策定時期 の前後関係 市町村 数(A) 割合 「土地利用規制の変 更」「都市計画事業 の廃止・縮小」のい ずれかの取り組みあ りの市町村数(B) A/B (%) 都市MP策定→立適策定 13 12% 7 54% 立適と同時期に都市MP改訂 (策定時期が重なった場合も含む) 40 37% 13 33% 立適策定→都市MPを改訂中 8 7% 2 25% 立適策定→今後、都市MP改訂予定 33 30% 7 21% 立適策定→当面、MP改訂予定なし 15 14% 2 13% 計 109 100% 31 28% (5)土地利用規制(開発許可)の変更の取り組み実態 開発許可に関する取り組みは、表-7 より、3411 条例の区 域指定をしている自治体は 31 のうち、「指定区域の縮小を する予定はない」が 13(41%)であった。また、3412 条例 の区域指定をしている自治体 32 のうち、「指定区域の縮小 をする予定はない」が 20(63%)と、3411 条例より 3412 条例の方が「指定区域の縮小をする予定はない」とする割 合が高かった。なお、3411 条例や 3412 条例の見直し等は、 人口と世帯数の増減状況との関連性は見られなかった。 3411 条例の「指定区域の縮小をする予定はない」とする 理由について、アンケートの自由回答では、「居住誘導区域 に近接しているため」「地域コミュニティの維持を目的に、 その区域指定においては法令の基準に基づき指定を行って いる」など、法律等で許容されている点が挙げられていた。 また、「地域コミュニティの維持目的や市街化調整区域で あっても土地利用のポテンシャルの高い地域等については 一定の開発行為を認める方針」「11 号条例区域は市街化調 整区域の人口集約の核として位置づける」など、市街化調 整区域でも一定のエリアでは開発を許容すべきとしている。 その他として、3411 条例の区域指定はしているが開発余地 や開発圧力が低いことや、市民等からの反発が挙げられて いた。3412 条例の「指定区域の縮小をする予定はない」と する理由も 3411 条例とほぼ同様の内容であった。 他方、3411 条例は、「区域指定をしていたが、立適策定を 機に指定区域の縮小を実施」が 3、「今後、指定区域の縮小 を検討する予定」が1、「今後、指定区域の縮小の必要性 表-6 都市 MP と立適策定時期と立地誘導施策との関係 表-7 土地利用規制(開発許可)に関する取り組み実態 について検討予定」が 12 と、3411 条例を導入している自 治体の 52%で見直しの動きも見られた。 具体的には、既に 3411 条例や 3412 条例について「区域 指定をしていたが、立適の策定を機に指定区域の縮小を実 施」した自治体(4)は、毛呂山町、春日部市、鹿児島市で あった。各自治体の公開資料(2019 年 3 月末時点)による と、毛呂山町は、開発時に整備された道路や排水施設の維 持管理コストの増加、農地や森林の減少による集中豪雨時 の冠水対策エリアの拡大などが財政を圧迫する懸念や市街 化区域における空き家の増加等に鑑み、3411 条例の指定区 域(線引き前からの住宅団地除く)を縮小した。春日部市 は、3411 条例の区域指定を 2019 年 4 月 1 日に全面的に廃 止(既存住宅団地・区画整理地内は 3412 条例で対応)した。 鹿児島市は、2018 年4 月1 日から、3411 条例区域を廃止し、 3412 条例区域等に一本化すると共に区域等の見直しや開 発規模の上限を定めた。 そこで、3411 条例 3412 条例と連携させ、区域指定や要 件を見直した鹿児島市に、取り組みの経緯・目的について ヒアリング調査(2019 年 3 月)を行った。 鹿児島市は、2004 年 10 月、既存集落の活性化等を目的 に 3411 条例を施行したが、施行後 10 年以上経過し、特定 の地区に建築が集中することで、市街化調整区域の小学校 の教室不足による後追い的な公共投資を要したり、虫食い 状に開発や急激な宅地化が進行により周辺の道路などの生 活環境に大きな影響を与えるなど、様々な問題が顕在化す るようになった。こうした状況から、市街化の促進につな がる大規模な開発行為は市街化調整区域の本来の趣旨に合 わないこと、加えて、市街化区域における立適の導入によ り、都市政策としての整合性がとれないことなどを踏まえ、 市街化調整区域の一定規模以上の宅地造成等の抑制を目指 し、3411 条例による区域等を廃止、3412 条例に一本化した。 改正後の 3412 条例では、指定既存集落(1997 年に県知事 指定)を中心とした区域に大幅に縮小し、開発区域を 2 戸 以下で 1000 ㎡未満、かつ開発区域が幅員6m以上の道路に 4m以上接する等を要件としている。鹿児島市は、改正後 の課題として、同じ市内で線引き区域と非線引き区域が併 存しているため、線引き区域の規制緩和を見直した結果、 開発規制が緩く、更に郊外部の地価が安い非線引き区域で の宅地開発がシフトしている点を指摘していた。 区域指定 あり 指定区域 の縮小を する予定 はない 立適を機に 指定区域の 縮小を実施 今後、指 定区域縮 小を検討 予定 今後、指定区 域縮小の必要 性について検 討予定 無 回 答 区域指定 あり 指定区域 の縮小を する予定 はない 立適を機に 指定区域の 縮小を実施 今後、指 定区域縮 小を検討 予定 今後、指定区 域縮小の必要 性について検 討予定 無回 答 31 9 4 0 0 4 1 12 7 0 0 4 1 100% 100% 44% 0% 0% 44% 11% 100% 58% 0% 0% 33% 8% 48 18 7 2 0 8 1 17 11 1 0 4 1 100% 100% 39% 11% 0% 44% 6% 100% 65% 6% 0% 24% 6% 30 4 2 1 1 0 0 3 2 0 1 0 0 100% 100% 50% 25% 25% 0% 0% 100% 67% 0% 33% 0% 0% 109 31 13 3 1 12 2 32 20 1 1 8 2 10% 3% 39% 3% 3% 25% 31% 6% 63% 100% 52% 計 100% 100% 42% 6% 減 減 人口 (2015 年国勢 調査) 世帯 数 (2015 年国勢 調査) 回答 を得 た自 治体 数 3411条例 3412条例 増 増 減 増
市全域 を対象 市全域対象 +居住誘導 区域を含む 指定区域へ の加算あり 居住誘導区 域を含む指 定区域あり 指定区 域の有 無は無 回答 10 7 4 0 4 1 26 15% 4% 100% 4 11 6 3 4 0 28 21% 0% 100% 1 4 0 0 2 0 7 0% 0% 100% 15 22 10 3 10 1 61 25% 36% 5% 16% 0 0 0 0 1 0 1 0% 0% 100% 2 4 0 3 3 1 13 0% 8% 100% 4 10 3 0 2 0 19 16% 0% 100% 6 14 3 3 6 1 33 18% 42% 9% 18% 2 2 0 0 0 0 4 0% 0% 100% 0 3 2 0 2 0 7 29% 0% 100% 1 0 1 1 1 0 4 25% 0% 100% 3 5 3 1 3 0 15 20% 33% 7% 20% 24 41 16 7 19 2 109 22% 38% 6% 17% 線 引 き 人口 (201 5年国 勢調 査) 世帯 数 (201 5年国 勢調 査) 施策 なし 継続 のみ ※2 見直し済・導入済、及び 見直しや導入について検討中・検討予定 合計 27% 0% 100% 小計 増 増 減 29% 0% 9% 合計 24% 100% ※1 (1)~(8)までの施策を複数取り組んでいる場合、いずれかの施策で 「対象区域を指定」「指定区域の場合、加算」の施策がある場合にカウントした。 25% 16% 11% 100% 2% 15% 25% 29% 46% 21% 線 引 き 都 市 非 線 引 き 都 市 3% 100% 増 増 減 増 減 減 100% 増 増 減 増 減 65% 54% 71% 61% 増 減 小計 38% 74% ※2 市町村全域、都市計画区域、用途地域指定区域、中心市街地活性化計画区域を対象 100% 0% 60% 減 減 小計 線 引 き 複 合 都 市 2% 15% 20% 53% 50% 27% 61% 43% 居住誘導に関する支援策(1)~(8)いずれかの取り組みの有無 ※1 (1)転入者が住宅を購入等して居住する場合の固定資産税の免除、 (2)住宅取得(新築)に対する補助制度、(3)住宅取得(既存住宅・ 空き家)への補助制度、(4)既存住宅・空き家のリフォーム費用の補 助制度、(5)空き家の解体費補助制度、(6)既存住宅・空き家流通に 向けた金融機関との連携、(7)高齢者住宅整備支援、(8)独自施策 (6)区域指定を伴う居住誘導に関する支援策の実態 居住誘導に関する支援策の取り組み実態として、①転入 者が住宅を購入等して居住する場合の固定資産税の免除、 ②住宅取得(新築)に対する補助、③住宅取得(既存住宅・ 空き家)に対する補助、④既存住宅・空き家のリフォーム 費用の補助、⑤空き家の解体費補助、⑥既存住宅・空き家 の流通に向けた金融機関との連携、⑦高齢者住宅整備支援、 ⑧その他の独自の居住誘導に関する支援策区域のいずれか の取り組みの有無と対象区域の設定状況を表-8 に整理した。 表-8 より、全体では、「立適策定前からの継続のみ」が 38%と最も多く、次いで「施策なし」が 22%であった。 また、立適を機に「見直し済・導入済、及び見直しや導入 について検討中・検討予定」のうち、「市全域を対象」の自 治体が 15%に比べ、「市全域対象+居住誘導区域を含む指 定区域への加算あり」「居住誘導区域を含む指定区域あり」 が 24%と多くなっていた。 表-8 居住誘導にかかる支援策に関する取り組み実態 人口・世帯数の増減状況から見ると、人口も世帯数も減 少下の自治体による区域指定を伴う居住誘導支援策の取り 組みは、線引き都市では 29%だが、非線引き都市では 11% と少なく市全域を対象とする場合の方が多かった。非線引 き区域は、開発許可制度上、開発区域が 3000 ㎡以上になら ない限り、居住誘導区域内外の開発規制の差がほぼないに 等しいこともあり、人口も世帯数も減少し始め、開発圧力 が低下している非線引き都市では、過疎化対策・移住支援 として少しでも人口を維持・増加したいと、住宅取得やリ フォーム等の補助対象を市全域にする傾向があると言える。 (7)区域指定を伴う居住誘導に関する支援策の内容 次に、立適を機に、区域指定を伴う居住誘導に関する支 援策へと「見直し済・導入済」と回答した自治体の具体的 な支援策について、アンケート調査で記載されている内容 を各自治体の HP 等(2019 年 3 月末時点)で具体的な要件 等を確認した上で、表-9 に整理した。 表-9 より、区域の指定を伴う居住誘導に関する支援策と して多く取り組まれていたのが、表-9 の②住宅取得(新築) と③住宅取得(既存住宅・空き家)に対する補助であった。 これらは、線引き都市で人口増・世帯数増の王寺町(奈良 県)や豊川市(愛知県)でも導入されていた。例えば、大 阪市内への利便性が高く住宅の需要が高い王寺町では、子 世帯と町内在住の親世帯が町内に同居・近居するための住 宅取得やリフォーム工事の費用の一部の補助を居住誘導区 域に限定している。この理由を王寺町まちづくり推進課に 聞いたところ、立適を策定した以上、住宅政策としてもそ の整合性を図る必要があるからとのことであった。王寺町 では、居住誘導区域を対象にした 40 歳以下への若者定住支 援事業(住宅取得補助)は、人気があり、既に事業目標に達 し、2018 年 3 月 30 日に終了している。 非線引き都市では、燕市、黒部市、小城市で、市域全体 を対象としつつも、居住誘導区域内の住宅取得の場合に加 算するという手法を導入していた。人口減・世帯数減の府 中市(広島県)では、居住誘導区域内の特定の住宅団地へ の新築補助を行っていた。 また、居住誘導区域内を対象に、①転入者が住宅を購入 等・居住する場合の固定資産税の免除を新規に導入する自 治体(長岡市)や、⑤空き家の解体費補助の対象を居住誘 導区域に見直しを行う自治体(黒部市)も見られた。 更に、立適を機に、都市計画関連課と異なる他部署や民 間企業との連携も見られた。具体的には、⑦高齢者住宅整 備事業者への補助の際、居住誘導区域の有無を評価の要件 に入れるなどの見直し(高槻市)や、居住誘導区域内の市 有地売却価格の減額を導入(新潟市)、居住誘導区域内の既 存住宅・空き家の流通に向けた金利優遇等について金融機 関との連携(王寺町、北九州市、舞鶴市)である。その他 の独自支援策も展開されており、例えば、本庄市では、重 点区域内(居住誘導区域内)の民間事業者に最大 2000 万円 の宅地開発補助を行っていた。
以上より、居住誘導に関する支援策は、全体的には市全 域を対象とする場合が多いものの、一部の自治体では、立 適の策定を機に、各自治体の創意工夫で、居住誘導区域を 中心とした区域を指定する形で見直し・新規導入が進めら れていることがわかった。 5.まとめ 以上をふまえ、立適創設後の初動期における立適の策定 を機にした立地誘導施策の取り組み実態をまとめる。 立地誘導施策の取り組み状況として、施策の組み合わせ を見ると「都市機能誘導区域内の整備のみ」が 44%と最も 多く、次いで「いずれの取り組みもなし」が 22%であった。 都市計画区域に占める市街化区域・用途地域指定区域の面 積比率が高い自治体の方が、「都市機能誘導区域内の整備の 表-9 区域指定を伴う居住誘導に関する支援策の内容 み」の自治体が多く、逆に、都市計画区域に占める市街化 区域・用途地域指定区域の面積比率が低い自治体の方が、 「いずれの取り組みもなし」の自治体が多かった。 立地誘導施策別に見ると、「都市機能誘導区域内の整備」 に取り組む自治体の 7 割が立適前からの整備計画を継続し、 そのまま立適に位置付け、新たな取り組みをする自治体の 割合が少なかった。「居住誘導区域外の都市計画事業の廃 止・縮小」については、少数ではあるが、既に都市計画道 路の廃止済や検討中とする自治体も見られた。 「土地利用規制の変更(地域地区等)」の取り組みは、居 住誘導区域内外の用途地域や特別用途制限地域の見直しや 新規導入の動きが見られた。一部の自治体(舞鶴市やむつ 市)ではダウンゾーニングの取り組みも見られた。「土地利 用規制の変更(開発許可)」については、、3411 条例を導入 している自治体の 42%が 3411 条例の指定区域の縮小・廃
止の予定はないとしつつも、52%で何らかの見直しの動き が見られた。 「居住誘導に関する支援策」は、市全域を対象とする場 合が多いものの、一部の自治体では、立適の策定を機に、 支援の対象を、居住誘導区域を中心にした区域指定をした り、居住誘導区域内に加算するなどの見直し・新規導入が 進められていた。具体的には、居住誘導区域を対象に、住 宅取得(新築・既存住宅)やリフォーム等の補助、固定資 産税の免除、空き家の解体費や家財道具の整理費に対する 補助など、各自治体の創意工夫が図られていた。 次に、人口・世帯数の増減状況から見ると、ほとんどの 立地誘導施策で、その取り組み実態の違いに関連性がなか ったが、人口が減少下の自治体の方が都市のスポンジ化対 策の「低未利用土地権利設定等促進計画」の策定に取り組 む動きや、人口も世帯数も減少下にある自治体の方が、「居 住誘導区域外の都市計画道路」の変更や市全域を対象とし た「居住誘導に関する支援策」に取り組む動きが見られた。 立適と都市 MP 改訂時期との前後関係を見ると、「土地利用 規制の変更」や「居住誘導区域外の都市計画事業の廃止・ 縮小」は、立適より前に都市 MP が改定、あるいは立適の策 定と都市MPと同時期に改訂された自治体が多かった。用 途地域のダウンゾーニングなどを行った舞鶴市やむつ市で は、もともとコンパクトシティに向けた都市計画上の動き が背景にあったことが、土地利用規制と立適との相互連携 を可能にしていた。 また、人口も世帯数も減少している中で、「居住誘導に関 する支援策」を区域指定して取り組む自治体は、線引き都 市に比べ、非線引き都市の方が少なかった。非線引き区域 は、開発許可制度上、居住誘導区域内外での開発規制の差 がほぼないに等しいことを背景に、人口も世帯数も減少し ている場合、過疎化対策・移住支援として少しでも人口の 維持・増加を目的に、立地を問わず、住宅取得やリフォー ム等の補助を行う傾向があることを示唆している。 こうした立適制度創設後の初動期における各自治体の取 り組み実態を踏まえ、以下に課題をまとめる。 第一に、立適制度の主旨として、「コンパクト・プラス・ ネットワーク」の都市構造の形成を目指すという観点から 見て、市域のほとんどが市街化区域となっている大都市で 「都市機能誘導施設の整備のみ」とする自治体における立 適策定の意義や必要性、及びそれに伴う補助金等の支援の あり方について検証が必要である。 第二に、立適を策定しても、具体的な立地誘導施策に何 も取り組みが見られない自治体に対しては、立地誘導施策 に取り組むための動機付けやインセンティブが必要である。 立適策定後、一定期間を経ても、立地誘導施策の取り組み の動きが見られない自治体に対しては、例えば、国や都道 府県からの技術的な情報提供や専門人材の派遣による支援 策や、自治体に対する補助金等の要件を都市機能誘導施設 以外の立地誘導施策の取り組み状況も加味したものにする ことなどが考えられる。 第三に、立地誘導施策の中でも、「土地利用規制の変更」 や「居住誘導区域外の都市計画事業の廃止・縮小」は、都 市MP改訂を要する場合があるため、自治体は、今後の都 市MP改訂の機会を見据えて、戦略的に立地誘導施策の具 体的な検討の推進が必要である。 第四に、「居住誘導に関する支援策」に関しては、各自治 体が、居住誘導区域を中心とした区域指定に基づき、居住 誘導に関する支援策を展開しやすいようにすることが重要 である。特に、開発許可制度上、居住誘導区域内外での開 発規制の差がほぼない非線引き区域は、用途地域や立適に 基づく誘導区域の指定だけでは立地の誘導が困難であるた め、居住誘導区域を中心とした区域指定をするといった居 住誘導支援策の導入が必要である。例えば、国や都道府県 から各自治体に対して、立適と連携した先進的な居住誘導 に関する支援策に関する情報提供や、国や都道府県による 住宅関連の補助制度自体を、居住誘導区域を中心とした区 域を中心とした枠組みにしていくことなどが考えられる。 【謝辞】本調査は全国の多くの自治体のご担当の方々に多大なご 協力を頂いた。また、本調査は、「立地適正化計画策定後の運用実 態と課題~区域内への立地誘導策と区域外への支援策に着目し て」をテーマに、公益財団法人大林研究財団から 2018 年度研究助 成を受けて実施したものである。自治体、及び財団に感謝の意を 表します。 【補注】 (1)「区域指定を伴う」とは、各自治体が居住誘導に関する施策の対象 として指定した区域の中に、居住誘導区域が含まれる場合を指す。 (2)アンケート調査では、立地誘導施策として、公共交通網の見直しや 公共施設の再編計画の見直し・新規導入についても設問とした。 しかし、アンケート実施時点では、公共交通網再編計画を策定済 の自治体が 57 自治体(52%)であり、逆に、公共施設等総合管理 計画は、総務省から平成 28 年度末までに策定するよう要請があっ たこともあり、多くの自治体で既に策定済で、今後、立適と整合 させるためには計画の改定を要する場合がある。そのため、公共 交通網の見直しや公共施設の再編計画の見直し・新規導入につい ての取り組み実態を明らかにするには、一定の時間を要するため、 本研究の立地誘導施策には含めないこととした。 (3)逆線引きの権限は京都府が有するが、舞鶴市は市としての案を検討 している。 (4)本アンケート調査で対象外の自治体の中にも、例えば、和歌山市 (2018 年 9 月以降に両誘導区域を策定・公表した都市)など、3411 条例の指定区域の縮小は行われている。 【参考文献】 1)国土交通省「立地適正化計画の作成状況等について」,社会資本整備 審議会 第 10 回都市計画基本問題小委員会 資料2」(2019 年), pp.4,国土交通省 2) 例えば、竹間美夏・佐藤徹治「立地適正化計画に基づく居住誘導施 策検討のための都市内人口分布推計手法の開発 -愛知県豊橋市を対 象として」(2017),都市計画論文集,No.52-3,pp.1124-1129 3)例えば、甘粕裕明・姥浦道生・苅谷智大・小地沢将之「立地適正化 計画と都市計画マスタープランの計画内容の関係性に関する研究 -都市機能誘導区域図と将来都市構造図の整合性に着目して」(2018), 都市計画論文集,No.53-3,pp.400-407 4)越川知紘・菊池雅彦・谷口守「コンパクトシティ政策に対する認識 の経年変化実態-地方自治体の都市計画担当者を対象として」 (2017),土木学会論文集 D3(土木計画学)No.73(1), pp.16-23 5)例えば、齋藤勇貴・松川寿也・丸岡陽・中出文平・樋口秀「立地適 正化計画策定都市での開発許可制度の方針と運用に関する研究」 (2018),都市計画論文集,No.53-3,pp.1123-1129