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鳴門教育大学学術研究コレクション

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Academic year: 2021

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「郷土の伝統音楽jの概念規定に基づく教材分析の視点 一構造化理論を手掛かりに一 教科@領域教育専攻 芸術系コース(音楽) 植田尉嗣

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輔究の目的 近年、音楽科教育における教材として、「わら べ歌Jや「民謡jなどとし1った、いわゆる「郷 土の伝統音楽」が注目されている。理由は第一 に伝統文化教育に資することがある。加えて実 践研究によって児童生徒が音楽文化を理解し 易く、また体験的な学習を効果的に行うことが できるなどのメリットが明らかにされている ことが挙げられる。 一方で、「郷土の伝統音楽jとし寸概念そのも のに焦点を当てた研究は未だ十分になされて いるとはいい難い。理由としては学習指導要領 上の教育用語として多用されるにもかかわら ず、その概念的理解に対する文部科学省からの 解説がなされないまま、様々な立場の研究者に よる解釈が為され、研究が進められていること があると考えられる。 そこで本研究では「郷土の伝統音楽jの概念 規定を行うことを主たる目的とすることとし た。具体的には「生活と音楽との関わりを重視 する立場」と「ミクロな視点とマクロな視点の 両面から社会を理解しようとする立場jから伝 統音楽を捉えることが可能になると考えられ る構造化理論を援用して概念規定を行うこと、 その概念規定に基づいた教材分析の視点を示 すこととする。 指導教員 鉄口真理子

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研究の方法と概要 第1章では郷土の伝統音楽の概念規定を行う ための立場を明確にすることを目的とし、「伝 統音楽」に関して述べられた緒論を概観した。 特に、日本伝統音楽の研究の大家である小泉文 夫の音楽観を、ハンス。メノレスマンの音楽美学 との比較から捉えることで、「生活と音楽との 関わりを重視する立場J及び「ミクロな視点と マクロな視点の両面から『生活

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lW文化』とし、っ た概念を理解しようとする立場」を得た。 第2章では、「郷土」としづ概念がどのような 意味で用いられているのかを明らかにするこ と目的とした。辞書的な意味での郷土の意味に 始まり、特に教育学の分野や学習指導要領にお いて、「郷土Jとしづ概念がどのように扱われて いるのかについて明らかにした。そして「郷土J としづ概念に関し、 r~生活者』であるという認 識を持った人々の視点によって、その文化的側 面が一人称的に判断される」ことが明らかとな った。 第3章では、「伝統jの意味と現状を明らかに することを目的とし、社会学的な視点から「伝 統」としづ概念がどのように認識されているの かを明らかにすることを目的とした。 ジャン・ボードリヤーノレの「シミュラークノレj、 大塚英志の「物語消費」、東浩紀の「データベー ス消費Jという概念を援用し、「伝統Jとは「大 きな物語J として、その社会の「中心となる精 -

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299-神的在り方jであるということが明らかとなり、 ある社会において「中心となる精神的在り方」 ではない形での、転統創出による「伝統」の存 在が明らかとなった。 第

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章では、社会と音楽をつなぐ視点として の構造化理論の特徴を明らかにすることを自 的とし、構造化理論の理論的特徴を概観した。 そして「構造と個人との関係性を切り離すこと なしある音楽がその社会でどのような意味を 持つのかを明らかにすることができるjという 特徴が明らかとなった。 第5章では、構造化理論を手掛かりとして「郷 土の伝統音楽」の概念規定を行うことを目的と した。第1章で得た立場より、第2章で明らか になった「郷土Jの概念的特徴と、第3章で明 らかになった「伝統」の意味を基に、構造理論 とこれら概念との連結を行った。そして、倉田 良樹の作成した構造化理論の概念図を基に「郷 土の伝統音楽に関わる概念モデ、/レ」を作成し、 (郷土の伝統音楽)を次の3の定義として概念 規定した。第1に「郷土の伝統を引用し資源を 用いて演奏される音楽」という直示的定義、第 2に[構造である郷土の規則が引用され、権威 的資源との関係において配分的資源を用いて 演奏される音楽として存在する」としづ存在論 的定義、第3に「行為者が郷土の伝統を引用す ることでなされる音楽活動によって生み出さ れる音楽であるとともに、その音楽を通して (郷土)や(伝統)の再生産を行う媒体となる」 という因果論的定義である。 そして、第3章で明らかになった「伝統」の 現状に鑑み、伝統創造による「郷土の伝統音楽J を(ポスト伝統音楽〉として概念規定を行った。 第6章では、第 5章で、行った(郷土の伝統音 楽)の概念規定を基にした教材分析の視点と、 その視点を基にした教材分析の例を示すこと を目的とした。まず、(郷土の伝統音楽)の概念 規定を基にした教材分析の視点として3点の視 点を示した。そして《比田田植唄》より(早乙 女かつま唄)を例として、教材分析の3点の視 点、より、教材分析を行った。《比田田植唄》の音 楽活動に用いられている、郷土の資源。規則を 明らかにし、「郷土と音楽との関係jや「音楽に 関連する資源・規則と児童生徒との生活との関 連j等を示すことで、構造化理論を用いた概念 規定に基づく教材分析の可能性について示し た。

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結論と今後の課題 本研究の結論として、構造化理論による郷土 の伝統音楽の概念規定に基づく教材分析の視 点を以下の3点として示した。 1. その昔楽に郷土に関わる資源と規則が用 いられているか0

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郷土の資源と規則がその音楽の音楽的特 徴とどのように関わっているのか。 3. その音楽に関わる資源と規則が児童生徒 の生活と関わっているのか、またどのよ うに関わっているのか。 これらの視点を示すことによって、「郷土の 地理的側面の範囲に関わる問題への解決策Jお よび「郷土の伝統音楽の教材性」を提示できた ことが本研究の意義と考える。 今後の課題はく郷土の伝統音楽)の概念規定 に基づく教材分析の視点、の実践検証、(ポスト 郷土の伝統音楽)の教育的意義の検討、エイジ ェンシーが郷土に与える影響の検討である。 - 300一

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