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高校数学における公式・性質の指導面から見た意義の考察

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Academic year: 2021

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高校数学における公式・性質の指導面から見た意義の考察

新ヰ・領域教育専攻 自然系コース(数学) 長 尾 俊 輝

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章 は じ め に

高等学校の数学の教科書では,多くの公式・ 性質が扱われ,まとめられている。公式や性質 を知っていれば毎回複雑な計算や証明をする ことなく,形式的に処理し,効率的に正解を得 ることができる。 ここで注目したいのは,それぞれの公式や性 質がなぜ成り立つのかを理解したうえで扱って いるかどうかという点である。つまり,公式や 性質を用いて形式的に処理するとし、っても,そ の公式や性質の証明や導き方を理解したうえで 用いている場合と,証明や導き方を理塀せずに 用いている場合がある。スケンプ(R.R.Skemp) の考え方から見れば,前者を関係的理解,後者 を道具的瑚卒と捉えることができる。数学を考 える際にはどちらの理解も非常に有意義である が,どちらか一方の理解に偏りが起きてしまう と弊害が生じる。そこで,公式や性質を扱う際 には,道具的理解と関係的理解とを併せ持ち, 状況に応じて使い分ける,具体的に言えば,す べての公式・性質がなぜ成り立つのかを瑚干し たうえで,時間に制限が設けられている場合や 敢えて証明する必要がない場合には形式的に扱 い,効率よく問題を解決するべきであると考え た。すべての公式・性質がなぜ成り立つのかを 理解するためにはその公式・性質の証明を知る 必要があるため,公式・性質の指導において必 ず証明を行う。そ こ で 証 明 の 要 素J,r発想の 指導教員 松 岡 隆 有無J,

r

証 明 の 分 量 の三つの観点から,教科 書に示されているそれぞれの公式・性質の証明 の特性を調べた。

2

章公式・性質の証明の特性表

それぞれの公式・性質の証明の特性をまとめ るにあたり,そのまとめ方について説明してお く。まず,それぞれの公式・性質の証明を下の 四段階で分類し,耕糟に証明が示されている かどうかを調べた。 1 ID正明がある 2 具体例はあるが,証明はない 3 証明せよという問いのみが与えられている 4 具体例,問い,証明のいすすももない 次に,教科書で証明が示されている公式・性 質の証明を,

r

証明の要素J,r指官、の有無J,

r

証 明の分量lの三観点で特性を調べた。 『証明の要素』 この観点では,新ヰ書に示されている公式・ 性質の証明に他の公式や性質が用いられている かどうかを調べた。それぞれの公式や性質が他 の公式や性質を用いて証明されている場合は, 用いられている公式・性質が一目でわかるよう にするために,この観点を設定した。 『発想、の有無』 この観点では,それぞれの公式や性質の証明 に何らかの発想が用いられているかどうかを調 べ,用いられている発想を以下の表に簡単に示 した。それぞれの公式や性質を扱う際に,用い

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− 258 − られている発想を理弊させることが非常に効果 的であると考えたので,この観点を設定した。 なお,本論文における「発想Jとは,言明首鼠呉 では思し、付かないような工夫を意味する。 『証明の分副 この観京では,新ヰ書で示されているそれぞ れの公式・性質の証明の分量の多さについて調 べ,

r

多し、J,

r

少ないjの二段階で評価した。他 の観点と合わせて,扱われている証明が生徒の 理解にとって適切かどうカキリ断するために,こ の観点を設定した。

3章 指 導 法 の 考 察

公式や性質の証明を行う上でさまざまな留意 点が考えられる。ここでは,それぞれの公式・ 性質を,上記の三つの観点から次の四つタイプ に類型化し,それぞれのタイプに対してどのよ うな点に留意しながら指導を行うべきかをまと めた。 A 分量が少なく,導出要素または発想、がある もの (rまたは」は両方ある場合も含む) B 分量が少なく,導出要素も発想、もないもの C 分量が多く,導出要素または発想があるも の (rまたは」は両方ある場合も含む) D 分量が多く,導出要素も発想、もないもの 留意点 I 導出要素を朝平させる タイプAの例:三角比の2倍角の公式 正弦の加法定理 sin(α+戸)= sin αcoss +cos αsins において戸をαで置き換えるこ とで正弦の 2倍角の公式が導かれ,余弦と正接 においても同様に導くことができる。三角比の 2倍角の公式のように,タイプAの公式・性質 は導出要素を瑚卒することで比較的容易に証明 することができるので,指導においては用いら れている導出要素を理解させたうえで証明を行 フ。 留意開発想、を瑚卒させる タイプAの例:900 - ()の三角比 900 - ()の三角比の公式の証明において, 二 つの角の関係性

l

こ注目するという発想が用い られている。直角三角形において乙BAC

= (

)

, 乙ABC

=

900 - ()とすると,

90

0-

8

)

=去=

cos8

が成り立つこ とがわかる。余弦と正接においても同様に導く ことができ,()の三角比と900- ()の三角比の 関係を捉え,公式を導くうえで,用いられてい る発想の理解が大きな役割を果たしていること がわかる。したがって,タイプAの公式・性質 の指導においては用いられている発想をしっか り理解させたうえで証明を行う。 留意点E 場合によっては教科書で扱われてい ない証明を用いる タイプDの例:角の二等分線と比 教科書では,ムABCにおいて点 Cを通り直 線APに平行な直線と,辺 ABのAを超える延 長との交点をDとし,平行線と都台の比の性質 を用いて言正明を行っているが,ここでは別の証 明について考えてみる。角の二等分線と比の公 式の証明において,点B,Cから線分 APまた はその延長線上に垂線を下ろし,相似な三角形 を作って証明する。この証明における点 B,C から線分APまたはその延長線上に垂線を下ろ すとしづ処理は,チェパの定理を証明する際に も用いられており,これら二つの証明を関連付 けて考えることで効果的に証明治湾里解できるよ うになると考えられる。このように,タイプD の公式・性質の指導においては,生徒の瑚卒に 役立つような証明がる場合は,新ヰ書で扱われ ている証明に固執することなく,柔軟に対応す る。

参照

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