情報理論を応用したSOMによるメディアミックス作品と原作の作品分析
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(2) Vol.2010-CH-87 No.5 2010/7/31. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. の制御に多くの時間を必要としたが,本方法であれば,計算を行わずに相互情報量を 制御できる可能性がある.また,ネットワークに含まれる情報を,容易に制御するこ とも可能である.従って,分析対象に応じて,様々なネットワークを生成することが できる.この柔軟性は,情報理論の方法を使用する長所のひとつである. 1.3 メディアミックス作品と原作の作品分析 前述の手法の有効的な応用として,メディアミックス作品とその原作作品との類似 性の分析を行う.ここでいうメディアミックス作品とは,ある作品(原作)を,映像 化するなど別の媒体で表現したものをいう.本研究では,ジュール・ヴェルヌの作品 を研究対象とする.メディアミックス作品の代表として,映画化が挙げられる.ジュ ール・ヴェルヌの小説作品は,映画黎明期より映像化されているが,原作の内容と比 較すると,必ずしも原作に忠実であるとは言い難い[20].しかし,その原作に対する 「違い」や「類似」の感覚は,人によって異なるものの, 「何が違い,何が類似してい るのか」ということは漠然とした感想に留まっている.そこで,本論では,ジュール・ ヴェルヌの作品のうち,メディアミックス化が多く,かつ現在でもそれらの作品を入 手しやすい『地球の中心への旅』 (Voyage au centre de la Terre [1864 年])を対象作品と して扱い,メディアミックス作品同士の位置づけに対し分析を行う. 1.4 本論文の構成 セクション 2 では,競合ユニットと入力パターン間の相互情報量の意味について簡 潔に説明した後,SOM と情報理論の方法の基本的な学習手順を提示する.セクション 3 では,原作小説とそのメディアミックス作品の分析を行い,その結果を提示する. そこで,SOM のマップサイズを拡大しても,情報理論の方法では,安定した最終的結 果を得ることができることを明らかにする.セクション 4 では,セクション 3 で得ら れた結果をもとに, 『地球の中心への旅』の原作とメディアミックス作品との分析を行 い,それぞれの作品の特徴を明らかにしていく.. これは,競合ユニットのより尐ない数において発火させる傾向にあることを意味して いる.従って,入力パターンの意味を理解する為に,相互情報量を変えることによっ て,競合ユニットの活性化パターンを調べることができる.. 2. 理論と競合メソッド 2.1 情報制御. 本アプローチは,競合ユニットと入力パターン間での,競合ユニット活性化関数に おけるパラメータの変更に基づいている.一般的に,パラメータが減尐するに伴い, 競合ユニットと入力パターン間の相互情報量は増加される.この特性によって,条件 付き確率の膨大な計算を必要とする学習を行わずに,相互情報量を増加させることが 可能となる. 具体的には,パラメータが減尐するとき,入力パターンについての競合ユニットの 持つ情報量は減尐する.図 1 は,競合学習に対し,本理論の手法を応用したものを示 している.拡散パラメータが(b)から(d)と減尐するとき,相互情報量は増加されている.. 図 1. パラメータと相互情報量の概念. 2.2 理論と相互情報量. 以下に,相互情報量の計算方法を説明する.j 番目の競合ユニットは入力ユニット から入力値を受け取る.そして,j 番目の競合ユニットから,出力値は次式によって 2. ⓒ 2010 Information Processing Society of Japan.
(3) Vol.2010-CH-87 No.5 2010/7/31. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 計算される.. 2.3 競合メソッド. 結果をわかりやすくするために,次式で定義される相対的な情報を使用する. 1 υsj ∝ exp − 𝐗 s − 𝐖j 2. −1. T. 𝐗 s − 𝐖j. 𝐼nrm =. Xs と Wj は,L 次元ベクトルの同じ型の入力値とウェイトを表している.L×L 行列Σ は,「スケーリング・マトリクス」と呼ぶ.行列[Σ]kl の,kl 番目の要素は,次式で求 められる. [∑]kl = σkl. 𝐼 𝐼𝑚𝑎𝑥. ここで,Imax は,最大可能情報量を示す.相互情報量は,競合ユニットと入力パター ンの平均値を表すため,ここの競合ユニットの活動を見ることができない.そこで, 競合ユニットの個々の動きを見るために,次式で定義される条件付き相互情報量を導 入した.. σ2 p k. S. 𝐼j =. 確率 p(k)は,k 番目の入力ユニットの発火確率を表し,本論文では,p(k)=1/L とする. コネクション・ウェイトが入力パターンに近づくと,出力値は増加される.j 番目の 競合ユニットの発火条件付き確率は,次式で得ることができる.. S=1. 3. メディアミックス作品と原作の作品分析への応用I. M は,競合ユニットの数を表す.j 番目の競合ユニットの発火確率は,次式によって 計算される.. 本手法の応用事例として,ジュール・ヴェルヌの著作『地球の中心への旅』とその メディアミックス作品の分析結果を提示する.最初に,パラメータを制御するとどの ようなマップが生成される分析する.次に,実際の作品分析をおこなっていく. 本研究の最終結果をわかりやすく再現する為に,ヴェサントらによって開発された SOM ツールボックスを使用する[24].SOM では,可視化において,リアルタイム方式 よりも優れた性能を示すバッチ方式を採用している.ウェイトは,データの共分散行 列の最大固有ベクトルを使用して,初期化している.情報理論による手法の性能を実 証をわかりやすくするにあたり,出力スペースにおいて,過剰な数の競合ユニットを 使用した. 3.1 ネットワークサイズが 5×5 の場合 図 2 は,マップサイズ 5×5 のパラメータσの関数として相互情報量を表している. 図にみられるように,パラメータσが増加するに従い,相互情報量は最終的にゼロに 近い値をとるようになる.図 3 は,従来の SOM による結果(a)と情報理論の方法を使 用した結果(b)-(f)を U-マトリクスで示したものである.これらの図の見方として,入 力パターンを分類する上での境界線となる競合ユニットの色は,従来の SOM を使用. S. p s p js S=1. S は,入力パターンの数である.この確率によって,競合ユニットと入力パターン間 の相互情報量を,次式によって求めることができる. S. M. 𝛪=. p s p j s log s=1 j=1. p js = p j. S. M. p j, s log s=1 j=1. p js p j. この条件付き情報は,平均相互情報量よりも一般的ではないが,多くの問題解決に有 用であることが分かっている[21][22][23].. T 1 exp − 𝐗 s − 𝐖j ∑−1 𝐗 s − 𝐖j 2 p js = 1 s T ∑−1 𝐗 s − 𝐖 ∑M m m=1 exp − 2 𝐗 − 𝐖m. p j =. p j, s log. p js p j. 相互情報量が最大化されるとき,ひとつの競合ユニットが発火する.他の競合ユニッ トは,図 1(d)に示されるように,発火しない. 3. ⓒ 2010 Information Processing Society of Japan.
(4) Vol.2010-CH-87 No.5 2010/7/31. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. したもの(図 2(a))は,より暖色になるほど境界線が深くなり,情報理論を使用した もの(図 2(b)-(f))は,より寒色になるほど境界線が深くなるという,前提がある.従 来の SOM(図 2(a))では,マップ中央の暖色の境界線によって,入力パターンを 2 つ のグループに分けている.情報理論の方法を使用した場合では,パラメータσが 0.1 (図 2(b))のとき,すべての入力パターンは,低い相互情報量のユニットによって, 寒色でほとんど個別に分類される.パラメータσを 0.2(図 2(c))にすると,入力パタ ーンを分割する境界線が現れ始め,パラメータσを 0.3(図 2(d))にすると,マップの 中央に境界線が現れ,入力パターンを従来の SOM 同様に 2 分する.. 図 3. マップサイズ. 5×5. 3.2 ネットワークサイズが 10×10 の場合. 図 2. 次に,図 4 に示した通り,マップサイズを 5×5 から,10×10 に増やした.それぞ れの U-マトリクスは,(a)が,従来の SOM による結果で,(b)-(f)が情報理論の方法を 使用した結果である.ここでは,競合ユニットの数が大きく増えたため,従来の方法 では,図 5(a)に示されるように,ひとつの入力パターンを表す競合ユニットが,それ ぞれ境界線を表す競合ユニットに囲まれてしまっている.これは,それぞれの入力パ ターンが独立して存在していることを示しており,マップからグループを分けること が難しいことがわかる.一方,情報理論を使用した方法では,パラメータσが 0.1(図 4(b))のときこそ,従来の SOM の U-マトリクス(図 5(a))に近い状態だが,パラメー タの数値を増加させることにより,ここの入力パターンを囲む寒色の境界線は徐々に 見られなくなる.そして,図 4(e)と(f)に見られるように,パラメータσが 0.4 以上で あれば,パラメータ値がそれ以上増えても,条件付き相互情報量の出力パターンは同 じであることがわかる.. 相互情報量とパラメータσ. 4. ⓒ 2010 Information Processing Society of Japan.
(5) Vol.2010-CH-87 No.5 2010/7/31. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 第二に,相互情報量の制御効果は,クラス構造の柔軟な抽出に関連している.パラ メータの値が小さいとき,相互情報量は大きくなり,U-マトリクス上に多くの明確な 境界線が現れる.これは,ここの入力パターンが,別々に条件付き相互情報量のマッ プ上にプロットされることを意味している.従って,相互情報量がより大きければ, より細かいクラスの境界を得ることができる.他方,パラメータ値が増加されるにつ れ,対応する相互情報量は減尐していき,詳細なクラス境界線は徐々に見えなくなる. そして,より大きなクラスが現れる.また,パラメータが増加するにつれ,条件付き 相互情報量の出力マップを安定させていく.これは,条件付き相互情報量の安定した マップが,入力パターンの全体的な特徴を示していることを意味する.. 図 4. マップサイズ. 10×10. 3.3 ネットワークサイズが 15×15 の場合. さらに,図 5 では,マップサイズを 15×15 に増加させて,同様の実験を行った.従 来の SOM の場合(図 5(a))は,個別の入力ユニットを示す競合ユニットが,より暖 色の競合ユニットに囲まれていることがはっきりと見て取れる.しかし,情報理論を 使用した方法の場合は,パラメータ値の増加によって,入力ユニットを示す競合ユニ ットを個々に区分する,より寒色の境界線が拡散していく(図 5(b)-(f)).そして,パ ラメータσの値が 0.4 のとき(図 5(e))と,1.0 のとき(図 5(f))の U-マトリクスは同 じであり,条件付き相互情報量が同様であることを示している. 3.4 相互情報量量とマップ これらの実験結果から,2 つのことが言える.すなわち,相互情報量の柔軟な制御 とクラス構造の柔軟な抽出である. まず初めに,実験結果は,相互情報量がパラメータσを変えることによって制御さ れることを示した.図 2 では,パラメータが増加されるに従い,相互情報量が徐々に 減尐することを明確に見ることができる.これは,大量の計算を伴うとき,相互情報 量値を計算せずに,容易に相互情報量を制御できることを意味する.. 図 5. マップサイズ. 15×15. 4. メディアミックス作品と原作の作品分析 II 本章では,セクション 3 で得られた結果を応用し,『地球の中心への旅』とそのメ ディアミックス作品の分析を行う.分析にあたり,SOM のマップサイズは 10×10 の ものを,パラメータσが 0.4 のものを使用した.. 5. ⓒ 2010 Information Processing Society of Japan.
(6) Vol.2010-CH-87 No.5 2010/7/31. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 4.1 データ作成方法. の旅』の愛読者であることから,物語に脚色を加えず,原作に忠実に物語を,彼の最 も得意とする分野―音楽によって再現したと考えられる.また,原作の場面をそれぞ れ音楽で歌いあげていくという構成では,小説や映画のよう登場人物の細かい動きを 継続して描写していく必要性が無くなる.従って,原作から物語を構成するのに必要 最低限のエピソードだけが抜粋される.故に,本作品の物語構造は, 『地球の中心への 旅』を構成する最も単純な物語構成を持つことになり,全体の中心に据えられたのだ と解釈することができる. 第二に着目したい点は,原作の対角線上に『地底戦車サイクロトラム』が位置する ことである.本マップでは,距離が遠いものほど関連性が薄いことを表している.つ まり,原作の対極に位置している『地底戦車サイクロトラム』は, 『地球の中心への旅』 の映像化作品ではあるものの,最も原作との類似が尐ないことを意味している.実際, 『地底戦車サイクロトラム』の制作当時,原作である『地球の中心への旅』の版権を 所有していなかったため, 「映像化作品」としているものの原作の内容を大幅に変える 必要があったという背景がある.今回の分析では,その結果が反映されていると考え ることができる. ここで,各作品の配置をマップ全体から捉えることで,どのように分類されている かを改めて確認したい.今回の分析結果では,横軸は脱出方法,縦軸は物語の時代設 定が 19 世紀(原作と同年代)か否か,という観点で分類していると解釈することがで きる.実際に,横軸の最も左手に並ぶ 3 作品(項番 1,7,8)は,地底からの脱出方 法に,他の作品が原作と同じ火山を使用するなかで,水を使用している(ただし, 『地 底帝国の謎』,『センター・オブ・ジ・アース ワールド・エンド』は火山,水以外の 方法で脱出をしている).また,縦軸においては,真ん中を境に,原作と同じ 19 世紀 を舞台としている作品(項番 3,8,2,4,7)と,制作当時乃至近未来を舞台として いる作品(項番 6,5,1,10,9)で分類されていることがわかる. 続いて,競合ユニットが暖色の部分,すなわち他の作品と深い境界を持つ作品につ いてみていきたい.前述した通り,情報が含まれていない部分が濃い寒色になるため, 逆に情報が多く含まれている部分は濃い暖色になる.共通しない情報が多く含まれて いるということは,それだけ物語構造にオリジナリティが存在していることを意味す る.この点において,まず注目したい作品は, 『地底探検/アース・エクスプローラー ズ』と TVM 版『センター・オブ・ジ・アース』である.この 2 作品は,マップ中に 暖色で示された通り,原作と同じ 19 世紀を舞台にしながらも物語が大きく異なる.2 作品の概要は,次の通りである.主人公たちは,行方不明の夫を探して欲しいという 女性の依頼を受け,地底へと向かう.しかし,地底に辿り着くと,そこには行方不明 となっていた夫が支配する地底人たちの都市があった,という内容だ.地底へと誘う 資料を見つけ,探検に出かけるという原作とは,根本的に話の構成が異なっている. 故に,マップ上でもこの 2 作品は,独特な物語構成のものとして,周囲の作品との境. 今回,メディアミックス作品として取り扱う作品は,以下の 10 作品である. 表 1 項番 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10. 本論で取り扱ったメディアミックス作品. 作品名(邦題) 地底戦車サイクロトラム 地底探検 地底探検 新・地底探検/失われた魔宮 伝説 地底帝国の謎 地底探検~完結編 地底探検/アース・エクスプ ローラーズ センター・オブ・ジ・アース センター・オブ・ジ・アース ワールド・エンド センター・オブ・ジ・アース. 公開年 1951 1959 1984 1976. 作者・監督 テリー・O・モース ヘンリー・レヴィン リック・ウェイクマン ファン・ピケール・シモン. 媒体 映画 映画 音楽 映画. 1988 1999 1999. ラスティ・レモランデ リック・ウェイクマン ジョージ・ミラー. 映画 音楽 TVM. 2008 2008. T・J・スコット デヴィッド・ジョーンズ スコット・ホイーラー エリック・ブレヴィグ. TVM OV. 2008. 映画. 分析は,原作の物語展開をモデル化し,その原作のモデルを各メディアミックス作 品のモデルにあてはめることで,そこから漏れる項目によって, 「差異」を見ることで 行った. モデル化は,物語で起こる出来事を時系列に抽出していくことで行った.抽出した 出来事を変数化し,その出来事が起こる場合は「1」,起こらない場合は「0」として, 作品(入力パターン)ごとに入力データを作成した. 4.2 分析結果と考察 本節では,原作とメディアミックス作品それぞれの関係を,物語の構造の面から総 合的に評価する.故に,個々の作品における作品論,映像化作品における出演者の演 技や CG 技術などについては,分析対象外となっている. まず,注目したい点は,原作ではなくリック・ウェイクマンによる『地底探検』が 全体の中心に位置していることである.色も深い藍色であるので,この作品には情報 があまり含まれていない―すなわち,他の作品と共通する最もシンプルで基本的な物 語構造を持っているといえる.実際に,本作品は,原作に登場する各々の場面を表現 したインストゥルメンタル,情景を歌ったボーカルソングとコーラスから構成されて いる.ウェイクマン自身,尐年時代から 100 回以上読んでいるという『地球の中心へ. 6. ⓒ 2010 Information Processing Society of Japan.
(7) Vol.2010-CH-87 No.5 2010/7/31. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 界を持つ暖色で表されたものと思われる.Amazon のカスタマーレビューにおいても, 「折角のヴェルヌの壮大な地底探検も地底に到着するまでの工程の説明もサスペンス も無いに等し」[25]いという評価がなされている. もう一つ注目したいのが,左上の『地底探検~完結編』と『地底帝国の謎』である. ただし,競合ユニットの色を見ると,互いに異なるため,この 2 つの作品に関連性が ないことが見て取れる.それどころか, 『地底帝国の謎』が,最も濃い暖色で表されて いる.本作品は,洞窟探検をしていた一行が地震の影響で地底に落ちてしまい,同行 していた主人公が地底帝国の支配権を狙う将軍に捕らえられてしまうという内容の映 画である.ただし,このように原作から逸脱した物語展開である理由は,エドガー・ ライス・バローズの小説『地底世界ペルシダー』(1922)の作品雰囲気を取り入れたり, 主人公が地底帝国に迷い込んでからの話が, 『エイリアン from L.A./地底王国アトラ ンティス』(1988)の続編として描かれていたりしたためである.従って,本作は『地 球の中心への旅』以外の要素が多く含まれてしまっているのだが,レモランデ監督に よれば,ヴェルヌの物語は脚本の基礎は担っているという.故に, 『地底戦車サイクロ トラム』より原作に近い場所に位置するも,異種作品として深い暖色で表されたのだ ろう. 一方,『地底探検~完結編』は,リック・ウェイクマン自身による『地底探検』の セルフリメイク作品である.しかし,前作は原作の内容をそのまま音楽化していたの に対し,本作では『地球の中心への旅』の物語から 200 年後の世界を舞台に,地底を 旅した先人の足跡を辿り,地底を旅する物語を音楽にしている.そこには,地底に対 するウェイクマンの思想や世界観の解釈が色濃く反映されている.つまり, 『地底探検 ~完結編』は, 『地球の中心への旅』を通したウェイクマン自身の地底世界観を音楽化 したものと考えることができる.従って,本作と同様に『地球の中心への旅』に描か れた出来事は実際に起こったこととして,その足跡を辿るという物語構造を持つ『セ ンター・オブ・ジ・アース』と同じく,縦軸上の原作と同じラインに並ぶも,内容が 異なるものとして,暖色で示されたものと思われる.. である.相互情報量が大きいときは,出力マップにクラスの境界を詳細に表示させた. 一方,相互情報量が小さいと,詳細なクラスの境界線を崩し,大きなまとまりを表示 させるようになる.従って,相互情報量は,目的に応じた解釈に必要となる異なった マップを生成するために使用することができる.つまり,相互情報量は異なるマップ を生成するのに使いやすく,実用的な問題にも適用できる柔軟性を持っているという ことが示された.そして,応用事例においては,数あるヴェルヌ作品について,これ まで作品ごとに評価されていたメディアミックス作品と原作の関係を,ひとつの原作 とそのメディアミックス作品群を総合的に扱い分析することで,メディアミックス作 品同士の位置づけを可視化し評価することができた. 今後の問題点としては,次の 2 点がある.まず,現段階の手法では分析に適切なマ ップサイズを自動的に決定することができない.従って,分析に最も適するマップサ イズを決定できる方法を考える必要がある.次に, 『地球の中心への旅』とその派生作 品分析において,今回はメディアミックス作品のみをとり扱ったが,本作品に関して は,明治期の翻案小説やパロディー小説,類似する小説などが存在している. 『地球の 中心への旅』に対する「違い」と「類似」を考えていく上では,これらの作品も分析 対象に含めていく必要がある. 謝辞. 本論文の作成にご協力頂いた皆様に,謹んで感謝の意を表する.. 参考文献 1 T. Kohonen, Self-Organization and Associative Memory. New York: Springer-Verlag, 1988. 2 T. Kohonen, Self-Organizing Maps. Springer-Verlag, 1995. 3 K. Tasdemir and E. Merenyi, “Exploiting data topology in visualizations and clustering of self-organizing maps,” IEEE Transactions on Neural Networks, vol. 20, no. 4, pp. 549-562, 2009. 4 G. Polzlbauer, M. Dittenbach, and A. Rauber, “Advanced visualization of self-organizing maps with vector fields,” Neural Networks, vol. 19, pp. 911-922, 2006. 5 J. Vesanto, “SOM-based data visualization methods,” Intelligent Data Analysis, vol. 3, pp. 111-126, 1999. 6 S. Kaski, J. Nikkila, and T. Kohonen, “Methods for interpreting a self-organized map in data analysis,” in Proceedings of European Symposium on Artificial Neural Networks, (Bruges, Belgium), 1998. 7 I. Mao and A. K. Jain, “Artificial neural networks for feature extraction and multivariate data projection,” IEEE Transactions on Neural Networks, vol. 6, no. 2, pp. 296-317, 1995. 8 A. Ultsch and H. P. Siemon, “Kohonen self-organization feature maps for exploratory data analysis,” in Proceedings of International Neural Network Conference, (Dordrecht), pp. 305 -308, Kulwer Academic Publisher, 1990. 9 A. Ultsch, “U*-matrix: a tool to visualize clusters in high dimensional data,” Tech. Rep. 36, Department of Computer Science, University of Marburg, 2003. 10 K. Torkkola, “Feature extraction by non-parametric mutual information maximization,”Journal of. 5. 結論 本論文では,相互情報量が入力パターンのクラスの境界を抽出する為に使用できる ことを示した.クラスの境界は,パラメータσを変化させることによって,細かくも 大きくもすることができる.この方法を使用した応用事例として,フランス人小説家 ジュール・ヴェルヌの作品とそのメディアミックス作品の分析を行った.まず,相互 情報量を使用した方法の有用性については,実験結果から次の 2 つのことが示された. 第一に,パラメータ値が減尐するに従い,相互情報量は増加されていったことである. 第二に,様々なネットワーク構成を,パラメータに応じて生成することができること. 7. ⓒ 2010 Information Processing Society of Japan.
(8) Vol.2010-CH-87 No.5 2010/7/31. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Machine Learning Research, vol. 3, pp. 1415-1438, 2003. 11 R. Linsker, “Self-organization in a perceptual network,” Computer, vol. 21, pp. 105-117, 1988. 12 R. Linsker, “How to generate ordered maps by maximizing the mutual information between input and output,” Neural Computation, vol. 1, pp. 402-411, 1989. 13 H. B. Barlow, “Unsupervised learning,” Neural Computation, vol. 1, pp. 295-311, 1989. 14 H. B. Barlow, T. P. Kaushal, and G. J. Mitchison, “Finding minimum entropy code,” Neural Computation, vol. 1, pp. 412-423, 1989. 15 J. C. Principe, D. Xu, Q. Zhao, and J. W. F. III, “Learning from examples with information theoretic criteria,” The Journal of VLSI Signal Processing, vol. 26, no. 1-2, pp. 61-77, 2000. 16 D. E. T. Lehn-Schioler, Anant Hegde and J. C. Principe, “Vector-quantization using information theoretic concepts,” Natural Computation, vol. 4, no. 1, pp. 39-51, 2004. 17 R. A. Morejon and J. C. Principe, “Advanced search algorithms for information-theoretic learning with kernel-based estimators,” IEEE Transactions on Neural Networks, vol. 15, no. 4, 2004. 18 K. Torkkola, “Feature extraction by non-parametric mutual information maximization,” Journal of Machine Learning Research, vol. 3, pp. 1415-1438, 2003. 19 R. Kamimura, “Mutual information maximization by free energy-based competitive learning for self-organizing maps,” in Proceedings of the international conference on systems, man, and cybernetics(SMC2008), pp. 1819-1825, 2008. 20 桜井飛鳥、「いざ、知 k 通の中心へ―イマジネーションが描く終わりなき旅」、Excelsior!、第 2 号、pp.38-41、2008 21 N. Abramson, Information Theory and Coding. New York: MacGraw-Hill, 1963. 22 K. N. Gurney, “Information processing in dendrites: II information theoretic complexity,”Neural Networks, vol. 14, pp. 1005-1022, 2001. 23 R. Kamimura, “An information-theoretic approach to feature extraction in competitive learning,” Neurocomputing, 2008. 24 S. T. Team, “SOM toolbox for Matlab,” tech. rep., Laboratory of Computer and Information Science, Helsinki University of Technology, 2000. 25 http://www.amazon.co.jp/product-reviews/B001CMJAE2/ref=sr_1_3_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&showVie wpoints=1&qid=1278250977&sr=1-3. 8. ⓒ 2010 Information Processing Society of Japan.
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