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長崎県壱岐島,岳ノ辻火山の噴火史

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長崎大学教育学部紀要 一自然科学 ‑ Nn69,1‑16(2003.6)

長崎県壱岐島,岳 ノ辻火山の噴火史

長 岡信 治 1)・中川英 朗 2)

1'長 崎 大 学 教 育 学 部

2)九州電力(樵)土木部 (平成15314日受理)

EruptiveHistoryofTakenotsujiVolcanointheIkiIsland

,

WesternJapan shinjiNAGAOKAl'andHideakiNAKAGAWA2'

1'FacultyofEducation,NagasakiUniversity

2'civilEngineeringDepartment,KyushuElectricPowerCo・,Inc・

ThelkiislandislateMiocenetoPleistocenevolcanoesincludingscoriacones, Shieldvolcanoesandlavaplateauofalkalicandsubalkalicrocksinthesouthernend ofJapanSea.Takenotsujivolcanolocatedinthesouthernpartoftheislandisoneof theyoungestvolcanoesintheisland.Thevolcanois212m highandiscomposedof lavaRowsandscoriaconesofalkalicbasalt.Through descriptionandinterpretationof thevolcanicsequenceandtheK‑Ardating,Wereconstructtheeruptiveprocessesand historyonTakenotsujivolcano.Werecognizeanddescribeatotalof14unitsformed successively with totalbulk eruptivevolume ofapproximately 0.18km3 in the eruption.Therearethreeventpositionsfortheunits.Accordingtotheventposition,

alloftheunitsaregroupedintothreestages・.Umezu,Shiwara,andNagata.First, UmezustagetheventofwhichisthewestofsummitofTakenotsuji,iscomposedof Umezuscoriaflow(USfl),Umezulavaflow (U‑1)whichwidelycoveredpre‑Takenotsuji volcanoesformedlavaplateau,Nishi‑Takenotsujiscoriafall(U‑2)whichformed westernpartofTakenotsujicone.Second stage,Shiwarastage,Occurredfrom fissuresandcratersstrikingEIW inthenorthernflankofTakenotsuji.Thisstageis dominatedbypyroclasticsformlng andphreatomagmaticeruptions:Tanakabure scoriaflow(S‑1),Shiwarascoriafall(S‑2),Shiwaraminamiburepyoclasitcsurge(SIS), and Shiwaranishiburescorianow andpyroclasicsurge(S‑4).LastNagatastage alternatedlavaflOwsandscoriafallsfrom thecentralventandconstructedeastern partofTakenotsujicone.TheproductsinthisstageareNagatalavanow(N‑1),Nanto lavaflow(N‑2),Hokutolavaflow(N‑3),Higashi‑Takenotsujiscoriafall(N‑4),Chosuichi lavaflow(N‑5),andSanchoscoriafall(N‑6).TheKIArdatingindicatesthatthesethree stageoccurredin0.9‑0.6Ma.

Keywords:basalt,scoriacone,scoriafall,scoriaflow,lavaflow,phreatomagmatic eruption,eruptivehistory,Ikiisland,Takenotsuji

(2)

2 長 岡 信治 ・中川 英朗

1.は じめに

九州北西方 の玄海灘 に浮かぶ壱 岐島は,西 日本弧 の火山フロン トか ら150km内陸 に位 置 し,主 に新第三紀〜第四紀 中期 の火 山岩か らなる (Table 1).壱岐島の火山地質の研 究は,奈佐 (1891)や20万分の1地質図の調査 (大築,1910)によ り予察的に行われ,

さ らに松井 (1958)によ り5万分 の1地質 図幅調査が行われ全体像が明 らか とな った.

一方,青木 (1958),Aoki(1959)は,本島に分布す るアルカ リ岩 の岩石学的な成因の 考察 を行 った.その後,壱岐団体研究会 (1973),壱岐島地学研究 グループ (1973),松 本 ・壱岐団体研究 グループ (1977),竹下 ほか (1987)によ り,詳細な火 山層序が明 ら か にされた. また,佐野 (1995),松井 ほか (1997) はK‑Ar年代 に基づ いて壱岐島全 体 の火 山噴火史 を考察 して いる. さ らに長 岡 (1994)は,南部 の岳 ノ辻火 山の噴火史 に ついて予察的に報告 している.

しか し, これ までの研究では火山岩の層序や年代測定 に主眼が置かれ,各火山体 の構造 や噴出物層序や噴火経緯 については,ほとん ど明 らか にされていない.本研究では,壱岐 にお ける最新 の火 山体 のひ とつである岳 ノ辻火 山を研究対象 とし,野外地質調査および

K‑Ar年代測定 に基づいて,その噴火史 を明 らか にす る.なお,内容の一部は 日本火 山学 会1994年秋季大会九州大学 にて発表 した.

Fig.1LocationandtopographyofTakenotsujiVolnano

Numbered closed circle:columnarsectionsin Figs.4 and 7.Thick line:

topographyofthebasementofTakenotsujivolcano.Usingthetopographicmap

Gonoura■■and'Yunomot0,1:25,000by theGeographicalSurvey Instituteof Japan.TherightsummitlevelmapofthelkiislandafterSan°(1995).

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長崎県壱岐島,岳ノ辻火山の噴火史

2.地域概観

3

壱岐島の地質 は,古第三紀 の勝本層群 (砂岩 ・貢岩),中新世の壱岐層群 (火 山岩 ・凝 灰岩 ・珪藻土),鮮新世の芦辺層群 (玄武岩 ・安 山岩 ・流紋岩 ・砂磯層),第 四紀 の郷 ノ浦 層群 (玄武岩 ・安 山岩)か らなる (竹下 ほか,1987,Table1).また,K‑Ar年代 に基 づいて,全島の分布する火山岩類の噴出時期は,第1期 (4.3‑3.5Ma),第2期 (3.5‑2.8Ma), 第3期 (2.5‑2.2Ma),第4期

(

1

.

7‑1.4Ma),第5期 (1.0‑0.6Ma)の5期 (佐野,1995), または最古期 (10.8Ma),古期 (5.5‑4.5Ma),中期 (4.5‑2.5Ma),新期 (1.7‑0.7Ma) の4期 (松井 ほか1997,Table1) に区分 されている. これ ら中新世〜第四紀の火山岩類 は量的 には玄武岩 を主体 とし,大部分が海抜100m以下 の低平で侵食の進んだ溶岩台地 を構成 している (Fig.1).台地上 には,高尾 山 ・津 ノ上山 ・御津 ノ辻 ・鹿 ノ辻 ・岳 ノ辻 ・

TablelStratigraphy ofthe lki islandafterMatsuietal.(1997)

時代

完新世(100万年前) 新期 玄武岩類 更新世 (岳 ノ辻,津 ノ上 山等)

新期粗面安山岩

11305.32...64772458 壱 岐 層 中期 玄武岩頬 中期流紋岩類 古期安山岩 .

粗面安 山岩類

古期流紋岩類

古期 玄武岩瀬

最古期 玄武岩類

勝 本 層 群

久美 ノ尾な どのスコリア丘が点在 している (Fig.1). この 中で , 島 の南 部 に位 置 す る岳 ノ辻 は, 海 抜 212mの島内最高点 の山頂 を持 ち,底面 の東西方 向の長径1.2km,南北1.5km,溶岩台地か らの比 高約100m以上 と島内のスコリア丘の中では最 も地 形的に大きい(Fig.1,Photo1).岳 ノ辻スコ リア丘 は,郷 ノ浦層群 (竹下 はか,1987) の最上部 に位 置 し,佐野 (1995)の第5期 ,松井 ほか (1997) の新期 の火 山活動 に属す る壱 岐島で は最 も新 しい 活動の火山体 の一つ と考え られ る(Table1).

PhotoITakenotsujivolcano from thewest,GonouraPort

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4 長 岡 信 治 ・中 川 英 朗

3.岳 ノ辻火山噴出物の層序 と記載 3‑1 地質基盤 と基底地形

岳 ノ辻火 山の基盤 は,郷 ノ浦層群下部 に属す る玄武岩類や芦辺層群 の流紋岩類で ある (Fig・2)・ これ らはいずれ も岳 ノ辻火 山噴出物 に厚 さ30cm以上の赤色土や暗褐色土 を介 して覆われる.

流紋岩類は南西部の梅津湾周辺や東部の久喜周辺,壱岐層群は北部の幡鉾川沿いに分布 す る・玄武岩類は,岳 ノ辻火 山下 に広 く分布す る.本地域の基盤 としては最下部 にある ド

50m0.o (冗‑7±0.Ar/I)1Ma,I,JtEllt.h !m:I Sa山頂降下スコリアnchoScoriaFal1 0.004kmユ N‑6 N8Ea田ステージgastaSttemScageoriaCone i t

8Ot . ChostlichiBasalticlaVa O.003km3 N̲5

貯水池溶岩

HigashiTakenotsu5iScoriaFall N‑4 東岳 ノ辻降下スコリア

0.014k血, Su東部山体 (山頂火口mmitCrhtスコ リア丘)cr HokutoBasaldchva O.001km' 3

t

ll⊥ 暮吐き Na帝東溶岩北東溶岩ntoBasaLtichva O.002km3 2

ShiwamMinamiburcPyro車 中cSurgC S‑3 志度南触火砕サ‑ジ 0加 9km3

sh'waraScon'aFal1 0.030km3 S‑2

志原降下スゴリア 北麓割れ 目火 口

Ta田中触スコリア流nakabureScoriaFlow O.003km3 S‑1

N西岳 ノ辻降下スコリアishiTak印OtSujiScofiaFall0..006km3U2 梅津ステージUmcWczsustertnScageoriaCone SMa仰rL ‑,..一 ̲..̲̲.̲ Umezu,.Basaltic.LhVa O.077km3U1

梅津溶岩

UmczugawascoriaFlow O.005km}

梅津コリア流 USfl FromSou西部山体 (スコリア丘)thcrnSide?** ?

11一 bTurls,C?,浮 Fdl HSfa F津ノ上山火山romTsunok叩 iyamaVolcztno

Fig.2GeneralizedstratigraphicsectionofTakenotsujivolcano

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長崎県壱岐島,岳 ノ辻火山の噴火史 5

レライ ト (竹下はか,1987の岳 ノ辻 ドレライ ト)は,調査地域のほぼ全域 に見 られ, し ばしば赤褐色の粘土状 に強 く風化 している.今回の調査では, この ドレライ トを不整合に 覆って,さらにいくつかの玄武岩や ドレライ トの溶岩や火砕岩が確認 された. しか し, こ うした岳 ノ辻火山よ り古 い各火山噴出物は露頭が断片的で,その層序関係は不明である.

基盤の高度分布 (Fig.1)か ら岳 ノ辻火山形成前の地形 をおおよそ復元すると,岳 ノ辻火 山の下 には, ドレライ トを主体 とし, これ をその後 の玄武岩が薄 く被 う海抜50‑ loom の溶岩台地 または楯状火山が広がっていた と考え られる.

3‑2 東触降下スコリア堆積物 HSfa

東触降下スコリア堆積物は,岳 ノ辻火山の基底 にあって,基盤の上に発達する赤色土壌

l

I

Fig.3IsopachmapofHigashiburescoriafallincm

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6 長岡 信治 ・中川 英朗

を直接覆い,岳 ノ辻火山噴出物 によ り整合 に覆われる (Fig.2).模式地は郷 ノ浦町東触 の 地点62 (Fig.4)である.岳 ノ辻周辺では,厚 さは,160‑ 10cmあ り,大部分の露頭で 褐色 の粘土状 に風化 してお り粒子 の形態や堆積構造 の詳細 は不明であるが,東触 の地点 62では10fallunitsが認め られた.

各露頭では東触降下スコリアを覆 う岳 ノ辻火山噴出物 との間に時間間隙を示す土壌な ど が存在 しない ことか ら,一見岳 ノ辻火山の先駆的噴出物 に見える. しか し,層厚は北西方 向に大 きくなる傾向があ り,その給源が岳 ノ辻ではないことを示 している (Fig.3).分布 主軸の北西延長部 には津 ノ上山スコ リア丘がある ことか ら, ここが給源 と推定 され る.

3‑3 岳 ノ辻火山噴出物

今回の調査で,岳 ノ辻火山は一連の噴出物か らなるが,その噴火 口は複数ある ことがわ かった.本稿では, こうした現在の岳 ノ辻 を中心 に複数の火 口か らの噴出物か らな り,大 きな時間間隙な く連続的に形成 された火山体 を,岳 ノ辻火山と呼ぶ.岳 ノ辻火山の噴出物 は層相 によ り少な くとも13メンバーに細分 され る(Figs.2,4).これ らのメンバーは風化 土壌 を発達 させ るような時間間隙はな く,1噴火サイ クルの噴出物 と推定 される.本稿で は これ ら一連のメンバー を噴火 口の位置 によ り,梅津ステージ,志原ステージ,永 田ステ ージの三つのステージに区分 した (Figs.2,5,7).

なお,竹下 ほか(1987)や佐野 (1995)の岩石記載 に基づ くと,岳 ノ辻火 山の噴出物 のほ とん どがアルカ リ岩質のカ ンラン石玄武岩 または普通輝石カ ンラン石玄武岩であ り, 永 田ステージの降下スコリア堆積物 にはケルスー ト角閃石の斑晶が含 まれている.

3‑ 3‑ 1 梅津ステージ

梅津ステージの噴出物は現在 の岳 ノ辻西部付近 を噴火 口とす る活動 によるもので,西半 部の山体 を形成 している.噴出物は,下位 よ り,梅津川スコ リア流堆積物,梅津溶岩,西 岳 ノ辻降下スコリア堆積物か らなる.

梅津川ス コ リア流堆積物 USfl:岳 ノ辻南方 の梅津川 に沿 って断片的 に露 出す るスコ リ ア流堆積物である.模式地 の郷 ノ浦町坪蝕 の地点116 (Fig.5)では,厚 さは5‑ 7m以 上である.いずれの露頭で も風化が進み,著 しく粘土化 している.直径50cm以上のス コ リアが多量 に含 まれ る.マ トリクスは,粘土化 した火山灰である.梅津川中流で厚 い こ とか ら,岳 ノ辻南西部が給源 と推定 される .しか し,露頭が少ないので噴火 口の位置は特 定できなかった.また, これ を被 う梅津ステージの梅津溶岩 との間には,土壌 はないが, 起伏のある侵食面が形成 されていることか ら,次の梅津溶岩噴出までやや時間間隙があっ た と考 え られる.以上のように噴出源 の問題や時間間隙の存在か ら,梅津川スコ リア流は 梅津ステージか ら独立させるべきかもしれないが, ここでは一応梅津ステージに含めてお く.

梅津溶岩∪‑1:梅津溶岩 は,岳 ノ辻火 山の噴出物 の中で最 も広 く分布 し,郷 ノ浦町片 原 の地点140 (Fig.5)や 同町梅津湾北岸 を模式地 とす る灰 白色細粒 の玄武岩質溶岩であ る.岳 ノ辻火 山に向かって分布高度 を上げることか ら,同火山か ら確実 に噴出 した推定 さ れ る最初の玄武岩質溶岩流である.岳 ノ辻の北側では,郷 ノ浦市街地か ら幡鉾川右岸,清 水 橋 付 近 まで広 が って い る.南側 で は,若 松触 西 方 か ら坪 触 を経 て ,給 源 付 近 か ら 3.5km離れた細崎で海面下 に没す る.厚 さは平均で10‑ 20mである.梅津溶岩 は,カ

(7)

7

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長崎県壱岐島,岳 ノ辻火山の噴火史

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(8)

Fig・5StratigraphiccorrelationofsectionsofUmezustage LocaliesareshowninFig.1.

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(9)

長崎県壱岐島,岳 ノ辻火山の噴火史 9

ンラン石,普通輝石,斜長石 を斑晶 として持つが (佐野,1995),特 に,岳 ノ辻南西のユ ニ ッ トは,斜長石の斑晶が大 きい.

西岳 ノ辻降下ス コ リア堆積物∪‑2:岳 ノ辻山体 の西部下半部 を構成す る降下スコ リア である.模式地 は郷 ノ浦町永 田触 の地点119 (Fig.5)である.永 田付近か ら東南東方向 へ岳 ノ辻西部 を経て若松付近 まで細長 く分布す る(Fig.6).この ことか ら,岳 ノ辻西部 に 長 さ700mで西北西 一東南東方向の割れ 目火 口が形成 された と推定 され る.岳 ノ辻南側 に開いた火 口跡 は この一部であろう. この火 口壁では,厚 さ50m以上 にわたって磯支持 で無層理の高温酸化 した赤褐色のスコ リアや火山弾が見 られる.その一部は溶結 しアグル チネ‑ トに変化 して いる.ス コ リアや火 山弾 は最大50cmの粒径 を持 ち,中程度 に発泡

している.

Fig.6DistributionofUmezulavaandNishトTakenotsujiscoriafall 3‑3‑2 志原ステージ

志原ステージは,岳 ノ辻北麓 に形成 された割れ 目火 口または火 口列か らの噴出物である (Figs.2,7,8).それは,下位 よ り,田中触火砕流堆積物,志原降下スコ リア堆積物,志 原南触火砕サージ堆積物,志原西触火砕流および火砕サージ堆積物か らなる.溶岩流 を伴 わず,火砕物 を主体 とす るステージである.

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長 岡 信治 ・中川 英朗

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(11)

長崎県壱岐島,岳 ノ辻火山の噴火史 ll

Photo2PyroclasticsofatShiwarastageatloc.28

A:A 10‑m‑highoutcropatloc.28.B.・PyroclasicsofS‑2,S‑3,andS‑4coveredwithN‑1 lava,atsouthern end ofthe outcrop.C:Scoria flow (Sfl)ofS‑4 intercalated between Pyrclasicsurges(Ps)ofS‑3andS‑4.D:SagstructureinthepyroclasticsurgeofS‑4.

田中触火砕流堆積物S‑1:田中触火砕流堆積物 は,郷 ノ浦町田中触 の地点51(Fig.7) を模式地 とし,志原か ら北へ半径1kmの扇型に分布するスコリア流堆積物である(Fig.8). 厚 さは10‑ 3mである.層厚分布か ら,給源火 口は岳 ノ辻北麓登山道入 り口付近 と推定 され る.マ トリクス支持の堆積物は,無層理不淘汰で,中程度 に発泡 したスコ リア ・玄武 岩質岩片 とマ トリクスの火山灰か らなる.スコ リアや岩片 には,直径が1mを越 えるもの がある.

志原降下ス コ リア堆積物S‑2:志原降下スコ リア堆積物 は,郷 ノ浦町志原西触 の地点8 (Fig.7)を模式地 とし,郷 ノ浦市街地か ら志原周辺 にか けて分布す る (Fig.8).分布 は 東西 に細長 く,層厚の中心が志原付近 と永 田ダム周辺の二つ認 め られる.ことか ら,2ヶ所 の割れ 目火 口か ら同時 に噴出 した と考 え られ る(Fig.8).西側 の火 口と考 え られ る永 田ダ ム周辺では10‑ 15m以上の層厚 があ り,最大粒径50cmを越 え,かつ弱溶結 して いる ところもある.層厚か らみて,永 田川沿 いに東西に延びた割れ 目火 口が形成 されていた と 考 え られ る (Fig.8).地点3(Fig.7)では,粗粒 ・細粒 スコ リアの互層で,15枚以上の fallunitsが確認できる.大部分の露頭では,スコ リア層が著 しく風化 を受 けていて, ち ともとの粒子の状態 を確認できない ことが多 い.志原西触 の地点48 (Fig.7)では,珍 し く新鮮な淘汰 のよいス コ リア層が見 られた. このス コ リア粒子 は最大粒径2.5cm暗灰色 で発泡が悪 い.

志原南触火砕サージ堆積物S‑3:志原南触火砕サージ堆積物 は郷 ノ浦町志原南触 の地点

(12)

12 長岡 信治 ・中川 英朗

Fig.8Isopachmapsofpyroclasticsfrom Shiwarastage Dottedareasarepossibleventpositions.

3 (Fig.7)を模式地 とし,岳 ノ辻北東麓 に分布す る.層厚分布か ら,志原南触付近 に火 口が存在 した と推定 され る(Fig.8).しか し,永 田溶岩 に被われた ことやそ の後 の侵食が 著 しいことために,マールやタフリング,火 口などを確認できなかった.地点3,28 (Fig.7, photo2,A,B)では,下部 に5‑ 8枚のfallunitsか らなる厚 さ100‑ 150cmの火山豆 石質の降下火 山灰が認め られ る.含 まれ る豆石 の最大粒径は1.5cmで ある. これ を被 う 火砕サージ堆積物は,最大8mの層厚で,数cm間隔の平坦 ラミナを持つ細〜粗粒火山灰 とスコ リアか らなる.地点3では最大径50cmのスコ リアの火山弾が含 まれ 下位 の地層 が凹んだsag structureを形成 している. この堆積物 は給源か ら500m以上離れ ると, 厚 さ200cm以下の細かい平坦 ラミナの発達 した火山灰層 に変化す る(Fig.7).

志原西触ス コリア流堆積物および火砕サージ堆積物S‑4:志原西触スコリア流堆積物お

(13)

長崎県壱岐島,岳 ノ辻火山の噴火史 13 よび火砕サージ堆積物は,郷 ノ浦町志原西触の地点28 (Fig.7)を模式地 とし,志原西触 か ら北方および西方へ1kmの範囲に分布す る (Fig.8).大部分がスコ リア流堆積物で, スコリアと火山灰の不淘汰なマ トリクス支持の堆積物か らな り,スコリアの粒径は5cm 以下 と細かい.厚 さは最大で350cmである.層厚分布か らみて,その噴出源 は志原南触 火砕サージ堆積物 と同一火 口かその周辺 と推定 される(Fig.8).火 口に近 い地点ではスコ

リア流堆積物 の間 に薄 い火砕サー ジ堆積物 が挟 まれて いる.すなわ ち,地点28では, 2 flow unitsのスコリア流が認め られ,その間に厚 さ80cmの火砕サージ堆積物が確認 される (Fig.7,Photo2C).これは,火 口近 くでは,火砕流の形成 と平行 して火砕サー ジが発生 していた ことを示 している.火砕サージ堆積物は,間隔数cmの多数の平坦 ラミ ナが発達 した細〜粗粒火 山灰か らな り,直径20cm以下のスコ リアや溶岩片,火山弾 と それ らによるsagstructureを伴 っている (Photo2,D).

3‑313 永田ステージ

現在の岳 ノ辻火山の東側 山体 を形成 した活動である.4枚の玄武岩質溶岩流 と2枚の降 下スコリア層か らなる. これ らは,下位よ り,永田溶岩,南東溶岩,北東溶岩,東岳 ノ辻 降下スコリア堆積物,貯水池溶岩,山頂降下スコリア堆積物である (Fig.2).

永 田溶岩N‑1:岳 ノ辻北麓か ら北へ広が り,一部は半城湾へ達 してお り (Fig.4), こ のステージでは最 も分布が広い,青灰色の撤密均質な玄武岩質溶岩である (Photo2,A,B).

模式地 は郷 ノ浦永 田触周辺 と志原南触 の地点3 (Fig.7)である.厚 さは,最大で30m, 普通は10m前後である.岳 ノ辻東部山体 に向って分布高度が140‑ 130mと大きくなる

ことか ら,その噴出口は,現在の岳 ノ辻東部山体下 と推定 される.

南東溶岩N‑2:岳ノ辻南東中腹に小規模な分布を示す灰色の赦密な玄武岩質溶岩で (Fig.4), 模式地の岳 ノ辻南東麓の地点104 (Fig.7)では永 田溶岩や梅津ステージの西岳 ノ辻降下 スコリア層を直接被 っている.

北東溶岩N‑3:岳 ノ辻北東中腹 にのみ露出する小規模な溶岩流で (Fig.4),厚 さは2‑

3m,灰色の均質撤密な玄武岩か らなる.模式地は岳 ノ辻北東山腹である.

東岳 ノ辻降下ス コリア堆積物N‑4:岳 ノ辻北登山道沿 いの海抜110‑ 170mにかけて 分布す る降下スコ リアである (Fig.4).厚 さは この登山道沿いでは約50m,南側の貯水 池付近で約20mである.模式地の北登山道沿いでは,最大径30cmの発泡の悪 い赤褐色 スコ リアや火山弾が見 られ,一部は溶結 しアグルチネ‑ トとなっている.

貯水池溶岩N‑5:岳 ノ辻山頂南東の海抜160‑ 185mを中心 に認め られる厚 さ10m以 下の暗灰色の轍密な玄武岩質溶岩である (Fig.4).分布がスコリア丘内に限 られることか

らアグルチネ‑ トの可能性 もある.模式地は岳 ノ辻南東山腹の貯水池周辺である.

山頂降下ス コ リア堆積物N‑6:岳 ノ辻山頂部 を被 う降下スコ リアである (Fig.4).模 式地は岳 ノ辻山頂一帯で,西側山頂で厚 さ20‑ 25m,東側山頂で35‑40mある.スコ リアは中程度 に発泡 し,径が40cm以上の ものが含 まれ る.また,長径が50cm以上の 紡錘状 ・リボン状火山弾が含 まれる.東山頂の北斜面ではアグルチネ‑ トも見 られる.層 厚やアグルチネ‑ トの存在か ら,噴出口は東山頂北側 に開いた馬蹄形の谷が火 口跡 と推定 される (Fig.4).

(14)

14 長 岡 信治 ・中川 英朗

4.

噴火年代

噴火年代 を推定するため,噴出物のK‑Ar年代を測定 した (Table2).測定はテ レダイ ン ・ジャパン株式会社に依頼 した.岳 ノ辻南西麓梅津川柴山橋付近の基盤の ドレライ ト(竹 下ほか,1987の岳 ノ辻 ドレライ ト)は,2.53±0.14Ma (KA92‑3392)を示 した.一方, 梅津川流域の地点116付近の梅津溶岩か ら0.8±0.08Ma (KA93‑3624),岳 ノ辻東山頂 北斜面の山頂降下スコリア堆積物のアグルチネ‑ トか ら0.7±0.1Ma (KA92‑3393)と いう年代値 を得た. これ らの年代値は層序 と矛盾せず,岳 ノ辻火山の噴火は0.88‑0.6Ma の間に起きた と推定 される.

Table2K‑AragesbyTeledyneIsotopes.

samplename MaterialAnalyzed lsotopicAge(Ma) 40Ar(scc/gm xIO 5) %40Ar %K TeledynelsotopesNo.

WelddedSanchoscoriafall(N‑6) Wholerock 0.7±0.1

KA92‑3393 0.03 16.8 0.96

0.02 16.9 0.96 Umezulava(U‑1) Wholerock 0.80±0.08

KA96‑3624 0.005 23.7 1.67

0.005 24.5 1.67 0.004 24.5 1.66 PreTakenotujivolcanicrock Wholerock 2.53j=0.14

(Takenotsujidolerite) KA92‑3392

0.06 38.5 0.65 0.06 36.6 0.65

Forthesesample,wehaveshownthe40Arconcentrationtofourplacespastthedecimal. Althoughwemaintainthatthe40Arconcentrationmeasurementissignificanttoonly1XIOー8 scc/gm,Wehaveincludedthefourthdigitinbracketsfortworeasons.First,attheselow values,theroundingofferrorcanbesignificantfractionof1XIO 7scc/gm weusefourdigits intheagecalculation.

5.

岳 ノ辻火山の噴火史

以上の記載 に基づいて,岳 ノ辻火山の噴火史 を考察する (Fig.9).

岳 ノ辻火山の山体が形成 され る以前,2.7‑2.4Maには, ドレライ トおよびその他の玄 武岩質溶岩や火砕物か らなる海抜50‑ 110m,長径4‑ 5kmの溶岩台地や楯状火山がす でに存在 していた.

岳 ノ辻火山は0.9‑ 0.6Maに噴火 し山体 を形成 した.最初のステージは,現在 の岳 ノ 辻の西側火 口を中心 とす る活動である (Fig.9下図).まず,基盤の楯状火山の南部で梅 津川スコリア流が発生 した.スコリア流は現在の梅津川にほぼ一致する谷沿いに堆積 して いる.引き続いて現在の岳 ノ辻火山の西側で梅津溶岩が噴出 した.梅津溶岩は,大量であ ったため,基盤の火山体 を被い尽 くし,北側のユニ ッ トは幡鉾平野にまで達 した.梅津溶 岩流の噴火後,割れ 目火 口か らス トロンポ リ一式噴火が始 ま り,西岳 ノ辻降下スコリアが

(15)

長崎県壱岐島,岳 ノ辻火山の噴火史 15 堆積 した. このスコリア層は,現海抜160m,梅津溶岩か ら30m程度の比高,底面長径 500mのスコリア丘 を形成 した. これが現在の岳 ノ辻西側の山体である.

これに引き続 く志原ステージは,西岳 ノ辻スコリア丘北側 に東西に並ぶ火 口列の活動で ある (Fig.9の中図).初期 の噴火は,岳 ノ辻北麓の北登山口付近で田中触 スコ リア流が 発生する.その後,割れ 目火 口が東西へ拡大 し,ス トロンポ リ一式噴火が発生,志原降下 スコリアが堆積 した.噴火の中心は,東側 と西側の二つが主な ものであったが,特 に西側 の永 田川沿いの割れ 目または火 口列は長 さが1.2kmと規模が大 きかった.その後,東側 火 口もしくはその周辺でマグマ水蒸気噴火が起き,志原南触サージやそれに伴 う火山豆石 質降下火山灰が堆積 した.東側の火 口では,さらに引き続 いて志原西触スコリア流が発生 する. この時,火 口付近ではマグマ水蒸気噴火が同時に起きて,志原西触火砕サージが発 生 した.

最後の永 田ステージでは,現在の岳 ノ辻の東山頂付近に火 口が形成 され,岳 ノ辻の東側 の山体が形成 された (Fig.9の上図).永 田溶岩 の噴出に始 ま り,小規模な南東溶岩およ

South Fig.9EvolutionofTakenotsujivolcano

(16)

16 長岡 信治 ・中川 英朗

び北東溶岩 の噴 出, さ らにス トロンポ リ一式噴火 による東岳 ノ辻降下 ス コ リアの堆積 によ り,北登 山道 中腹 の海抜 170m付 近 を山頂 とす る火 山体 が成長す る. 引 き続 いて,貯水 池溶岩が 山頂周辺 に流 出 した.最後 に再 びス トロンポ リ一式噴火が発 生, 山頂降下 ス コ リ アが堆積 して活動 を終 了 した.全噴 出物 の総体積 は約0.18km3で ある.

6.ま とめ

壱岐島の岳 ノ辻火 山の噴火史 につ いて,野外調査お よび

K‑

Ar年代 に基づ いて考察 した.

岳 ノ辻火 山 を形成 した噴火 は0.9‑0.6Maに起 きた1噴火サイ クル の活 動 で,噴火 口の位 置 によ り梅津 ・志原 ・永 田の3ステー ジに分 け られ る.最初 の梅津 ステー ジで は,現在 の 岳 ノ辻 の西部 に火 口が形成 され,梅津川 ス コ リア流 ,梅津溶岩 ,西岳 ノ辻降下 ス コ リアが 噴 出 し,溶岩台地 とス コ リア丘が形成 された.志原 ステー ジで は北麓 に東西方 向の割 れ 目 火 口また は火 口列 がで き, 田中触 ス コ リア流,志原 降下 ス コ リア,志原南触 火砕サ ー ジ, 志原西触 ス コ リア流お よび火砕サー ジが連続 的 に噴 出 した.志原南触 お よび志原西触 火砕 サー ジはマ グマ水蒸気 噴火 による.最後 の永 田ステー ジは,現在 の岳 ノ辻付近 に中心火 口 が形成 され,規模 の大 きな永 田溶岩 ,小規模 な南東溶岩 ,北東溶岩 を噴 出後 ,東岳 ノ辻降 下 ス コ リア,貯水池溶岩 , 山頂降下 ス コ リア を噴 出 しなが らス コ リア丘 または小型 の成層 火 山体 を形成 した.総噴 出量 は約0.18km3で あった.

(秩 )摩 耶 コ ンサ ル タ ンツの西村和雄 さん と郷 ノ浦 町坪触 民宿梅津荘 の浜 田キ ク ノさん には現地調査 の際 に物心両面で大変お世話 にな った.心か ら御礼 申 し上 げます .

引用文献

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壱岐団体研究会 (1973)壱岐島の地質 ‑とくに中新統壱 岐層群 について.地質学論集,9,69‑81.

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参照

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