丹 羽: 埋 甕 集 団 の構 成と婚 姻 シス テ ム 39
埋
甕
集
団
の
構
成
と
婚
姻
シ
ス
テ
ム
丹
羽
佑
一
一
は
じ
め
に
本
稿
は、
縄
文
中
期後
半
の屋
内
埋甕
を
と
り
上
げ
、
そ
の横
築
方
法
を
分
析
こ
す
る
こ
と
に
よ
っ
て
、
埋
甕
と
いう
活
動
形
態
を
と
っ
た
集
団
の構
成
と当
時
の
婚
姻
シ
ステ
ムを
明
ら
か
にす
るも
の
であ
る。
そ
れ
で
は、
﹁
埋
甕﹂
と
は
ど
の様
な
も
の
で
あ
ろ
う
か
。
次
に従
来
の研
究
を
紹
介
し、
埋甕
を概
観
し
てみ
よう
。
ニ
ニ
ご
㈲
従
来
の研
究
従
来
の研
究
は、
幼
児
埋葬
器論
、
胎
盤
収
納
器
論
、
建
築
儀
礼
用
器
論
の三
つに
整
理
でき
る。
幼
児
埋
葬
器
論
は、
埋甕
の大
部
分
が
住
居
出
入
口推
定
部
に見
つか
る
こ
と
よ
り
、
埋
甕
は人
の出
入
の
激
し
い場
所
にあ
って、
人
々に
跨
が
れ
るも
の、
と
の規
定
と
、
死
亡
し
た幼
児
の
魂
を
母
親
の胎
内
に転
生
す
る
こと
を
希
望
し
て、
炉
の下
、
敷
居
の下
等
、
母
親
が
そ
の上
や近
く
を
よ
く
跨
ぐ
場
所
に幼
児
を
埋
葬
す
る民
族
風
習
が
存
在
す
る
こと
、
こ
の
二点
よ
り
成
立
し
て
い
る。
胎
盤
収
納
器
論
は、
幼
児
埋葬
器
論
同
様
の発
掘
所
見
へ
の
規
定
と
、
後
産
を
人
の出
入
の激
し
い所
に
埋
め、
よ
く
踏
ん
でも
らう
と、
幼
児
自
身
も
元
気
に
育
つ
、
と
いう
民
俗
感
染
呪
術
例
よ
り
成
立
し
て
い
る。
以
上
二
つ
の論
議
は、
いつ
れ
も
埋
甕
な
る遺
構
の多
く
が
入
口部
にあ
ると
いう
空
間特
性
を
重
視
し
て
い
る
の
であ
る。
一
方
、
建
築
儀
礼
用
器
論
は、
神
奈
川
県
川
崎
市
潮
見
台
遺
跡
中
期
後
半
の屋
内
埋
甕
の構
築
方
法
の分
析
よ
り
出
さ
れ
たも
の
で、
そ
の根
拠
は、
埋
甕
の構
築
が
住
居
の炉
や柱
と
同
様
に、
住
居
の
新
、
改
築
の際
に予
じ
め予
定
さ
れ
て
い
ると
こ
ろ
にあ
る。
住
居
の新
、
改
築
にあ
た
って、
埋
甕
が
出
入
口部
に構
築
さ
れ
、
そ
の内
に
供
犠
さ
れ
た
動
物
や
、
供
進
さ
れ
た食
物
が
納
めら
れ
、
建
築
儀
礼
が
遂
行
さ
れ
た
の
では
な
いか
、
と
し
て
い
る。
又
、
そ
の出
入
口部
に
在
る
と
いう
空
間
特
性
に、
住
居
の
﹁
踏
み
こ
ら
し﹂
と
いう
建
築
儀
礼
を
想
定
し
て
い
る。
こ
の論
議
は、
埋
甕
の構
築
さ
れ
る
﹁
時
﹂
(
時
間
特
性
)
を
分
析
し
た
点
が
特
徴
であ
る。
以
上
、
﹁
埋
甕
﹂
に対
す
る
三
つ
の論
議
を
紹
介
した
。
これ
ら
の当
否
は
、
埋甕
の機
能
を
容
器
と
し
て
いる
以
上
、
そ
の内
容
物
の如
何
によ
って
いる。
これ
は
発
掘
調
査
の成
果
を待
た
な
け
れ
ば
な
ら
な
い。
又
、
前
二者
の成
立
に
お
いて
は
、
民
族
学
、
民
俗
学
等関
連
学
援
用
上
の問
題
を
考
慮
しな
け
れぽ
な
ら
な
い
。
建
築
儀
礼
用
器論
は、
改
築
に
よ
る
埋
甕
保
有
か
ら
喪
失
への
、
又
そ
の逆
の
変
遷
への解
釈
等
、
諸
遺
跡
に
お
い
て住
居
構
築
のあ
り
方
と
埋
甕
構
築
の
関
連
性
を
検
討
しな
く
て
は
な
ら
な
い
。
こ
れ
ら
三
者
は、
埋
甕
機
能
の
復
原
を
目
的
にし
て
いる
が
、
本
稿
の
目
的
40
第9号
要
紀
学
大
良
察
は、
﹁
埋
甕
集
団
﹂
及
び
そ
の
﹁
構
成
﹂
の復
原
であ
る。
確
か
に、
幼
児
埋
葬
器
論
、
胎
盤
収
納
器論
で
は
埋
甕
祭
式
の主
役
は母
親
であ
る
が、
これ
は民
族
誌
例
、
民
俗
誌
例
か
ら
の
類
推
であ
る
。
土
器
はそ
れ
自
身
では
埋
甕
にな
らな
い。
集
団
所
究
が
必要
な
所
以
であ
る
。
そ
れ
で
は、
埋甕
か
ら
如
何
に
し
て埋
甕
集
団
及
び
そ
の構
成
の
復
原
が
可
能
か。
ω
分
析
方
法
ω
資
料
の条
件
鋤
基
礎
と
な
る考
え方
と
分
析
方
法
の
二項
目を
設
け
て
論
じ
る
こと
にす
る。
ω
分
析
方
法
D
資
料
の条
件
﹁
埋
甕
﹂
と
呼
ぼ
れ
て
い
るも
のに
は
、
屋
内
、
屋
外
の
別
が
あ
り、
屋
内
に
お
い
ては
、
奥
室
、
炉
辺
、
側
室
、
前
室
、
入
口
部
に分
か
ル
れ
、
土
器
の埋
け方
に
お
い
て
は、
天
地
を
そ
のま
ま
に
す
る
﹁
正
位
﹂
と、
天
地
を逆
にす
る
﹁
逆
位
﹂
が
あ
る。
そ
の土
器
の
形
を
み
る
と
、
口
縁
を欠
く
も
の、
胴
上半
を
欠
く
も
の、
胴
下
半
を欠
く
も
の
、
底
部
を
欠
く
も
の
、
底
に
穿
孔
をも
つも
の
、
口縁
も
底
部
も
欠
く
も
の
等
多
様
であ
る
。
石
蓋
を持
つも
の
ニ
も
あ
る。
時
期
を
み
る
と
、
縄
文
時
代
早
期
後
葉
に
一
例
あ
り
、
中
期
に
至
っ
て
盛
行
、
後
期
中
葉
ま
で続
く
。
地
域
的
にも
現
在、
東
北
地
方
か
ら関
東
、
中
部、
北
陸、
東
海
、
近
畿
東
部
に拡
が
って
いる。
こ
の様
な
状
況
で
は、
﹁
埋
甕
﹂
一
般
を
語
る
こと
は不
可
能
であ
る。
埋
設
土
器
の形
態
に至
る
や、
一
遺
跡
一
時
期
に
お
い
ても
多
様
な
のであ
る。
と
ころ
が、
一つの活
動
は、
現
象
的
に
は
限
定
さ
れ
た時
間
、
空
間
、
資
材
、
集
団
の結
合
によ
って成
立
し、
特
定
の形
態
と
し
て残
存
す
る。
こ
の活
動
に
コ
特
定
の形
態
を
与
え
るも
の
が
、
活
動
の目
的
と
伝
統
・
地
域
性
な
の
であ
る。
す
な
わ
ち
、
諸
目
的
の錯
綜
が
形
態
の多
様
性
と
映
り
、
諸
伝
統
・
地
域
性
の重
複
が
多
様
性
を
助
長
す
る。
よ
っ
て、
適
切
な
視
点
に基
づ
いて
特
定
の形
態
を
抽
出
し、
そ
れ
を
目的
(
機
能
)
、
地
域
、
時
代
に対
応
さ
せ得
る
な
ら
ぽ
、
我
コ
じ
々は
特
定
の活
動
の
存
在
、
そ
の伝
統
・
地
域
性
を
把
握
し得
る
であ
ろ
う
し、
当
然
各
々
を
担
う
集
団
を
想
定
でき
る。
し
か
し、
これ
ら
の
人
々
の
﹁
ま
と
ま
り﹂
と
は
一
体
何
であ
ろう
か。
まず
言
え
る
こ
と
は、
彼
ら
は活
動
を直
接
行
な
う集
団
と
し
て
で
は
なく
、
活
動
の
存
在
と
目
的
と
を知
って
お
り、
そ
の
方
法
を
一
定
の
時
空
の拡
が
り
に
お
い
て
共
有
す
る集
団
と
し
てあ
る、
と
いう
こ
と
であ
る。
そ
の時
空
の拡
が
り
は、
ニ
ニ
集
団
の意
志
で
は
なく
、
結
果
と
し
て
も
た
ら
さ
れ
たも
のであ
ろ
う。
し
たが
って、
これ
ら
の拡
が
り
は、
縄
文文
化
を
考
え
る
上
で
の
﹁
埋甕
﹂
と
いう
遺
構
概
念
の規
定
に
必要
と
な
る
も
ので
あ
る。
し
か
し、
そ
の
拡
が
り
に
お
い
て
捉
え
ら
れ
る
人
々
のま
と
ま
り
は、
活
動
す
る
集
団
と
し
て
の
実
体
を
欠く
も
の
と
いえ
る。
こ
れ
は、
我
々が
問
題
に
す
る、
埋甕
を構
築
し、
使
用
し、
廃
絶
す
る集
団
で
は
な
い
。
﹁
縄
文
文
化
﹂
を
創
っ
た
人
々で
は
な
く、
遺
跡
を創
っ
た人
々でも
な
く、
そ
こ
に足
跡
を
残
し
た
人
々を
必
要
と
す
る
ので
あ
る。
我
々は、
遺
跡
か
ら
得
ら
れ
た結
果
を
遺
跡
に還
元
し
な
く
て
は
な
ら
な
い
。
我
々に
は、
埋
甕
の分
布
を
覆
い尽
く
す
膨
大
な
資
料
では
な
く、
埋
甕
を
構
築
し、
使
用
し、
廃
絶
す
る
、
そ
の過
程
を
明
確
に
し得
る
資
料
を
必
要
と
す
る
の
であ
る。
恥
基
礎
と
な
る
考
え
方
と
分
析
方
法
私
は先
に、
一
つ
の活
動
は
、
現
象
的
に
は
限
定
さ
れ
た
時
間
、
空
間
、
資
材
、
集
団
の結
合
によ
って成
立
し
、
特
定
の形
態
と
し
て残
存
す
るが
、
こ
の
活
動
に特
定
の形
態
を
与
え
る
も
のは
、
活
動
の目
的
と
伝
統
・
地
域
性
であ
る
、
と
した
。
こ
の考
え
方
を
さ
ら
に進
め
る
と
図
一
に
な
る
。
す
な
わ
ち
、
或
る
集
団
(
母
集
団
)
に
一
つ
の目
的
が
発
生
す
る
と
、
彼
ら
は周
囲
に在
る全
て
の
資
材
、
時
間
、
空
間
か
ら
、
そ
の目
的
に
見
合
う
資
材
、
時
間
、
空
間
を
選
択
す
る。
又
、
選
択
は彼
ら
の環
境
だ
け
では
な
く
、
彼
ら
自
身
にも
行
な
わ
れ
る。
一つの
目的
に見
合
う
人
員
の選
択
であ
る
(
以
後
、
基
にな
る集
団
を
母集
団
、
選
択
さ
れ
た
人
員
のま
と
ま
り
を
目
的
集
団
と
す
る
)
。
目
的
集
団
も
又、
時
間
、
空
間
を
そ
の属
性
と
し
て合
わ
せ持
つ。
以
上
が
活
動
の第
一
段
階
であ
る
。
そ
し
て、
こ
の資
材
、
資
材
の所
在
丹 羽: 埋 甕 集 団 の 構 成 と婚 姻シス テ ム
41
目
的
1
伝
統
・地
域
性
国■一
母 集 団C
旧的( 埋甕劇31
一
≡〉T
国
集団B
11
目的( 埋甕) 輔2
m
>
T
ン
母 集 団A
/ 肋( 埋 甕) 集団1/
\i
選 択
→ 構築
→ 使 用 → 廃 絶
臨
一一i /
1『
環
境A
\
〉 資林空間・時間1 1
↓
/
環
境B
\
罫
1 盤1・ 時剛
1\
/
!
瀬
'』
L琿
境c
L埋 甕2・壁剛 一埋 甕 集団 と埋 甕 の変 遷
図1
示
す
時
間
、
空
間
と、
目的
集
団
と
そ
の
所
在
を
示
す
時
間、
空
間、
こ
れ
らが
一
対
一
に対
応
し
た時
、
活
動
の
第
二
段
階
が
始
ま
る。
こ
こに
お
いて、
活
動
は
資
材
の特
定
の形
態
に変
換
さ
れ
る。
次
いで、
第
三
段
階
の使
用、
第
四
段
階
の廃
絶
と
続
き
、
目的
は達
成
さ
れ
る
。
な
お
、
重
要
な
こと
であ
る
が、
第
一
段
階
の選
択
、
第
二
段
階
の資
材
の変
形
、
第
三
、
第
四
段
階
の活
動
の方
法
を
決
定
す
る
の
は、
目
的
で
あ
り
、
伝
統
・
地
域
性
な
の
であ
る
。
以
上
が
、
目的
の発
生
か
ら
達
成
に
お
け
る
資
材
、
時
間
、
空
間
、
集
団
の
関
係
であ
る。
こ
れ
よ
り
次
の事
柄
が
導
か
れ
る
。
す
な
わ
ち
、
母
集
団
か
ら
の人
員
の選
択
は、
目的
集
団
の構
成
を
指
し
、
そ
れ
は
環
境
か
ら
の資
材
、
空
間
、
時
間
の選
択
に対
応
す
る。
又
、
目
的
集
団
は資
材
、
空
間
、
時
間
の結
合
した
特
定
の形
態
に対
応
す
る。
した
が
って
、
﹁
集
団
﹂
は特
定
の形
態
を
した
遺
構
、
或
い
は遺
物
と
し
て
捉
え
ら
れ
、
そ
の
﹁
構
成
﹂
は特
定
の形
態
を
構
成
す
る資
材
の形
、
空
間、
時
間
の特
性
に
よ
って知
る
こ
とが
でき
る
の
であ
る。
し
か
し、
埋甕
な
る
も
の
は、
当
然
な
が
ら人
々のあ
つま
り
で
はな
い。
そ
の活
動
の結
果
が
埋
甕
と
し
て残
存
し
て
い
る
にす
ぎ
な
い。
そ
れ
で
は、
埋
甕
集
団
の
実
体
は、
ど
の様
に
し
て把
握
で
き
る
の
であ
ろう
か。
上述
し
て
き
た
考
え
方
の基
本
に
母集
団
が
あ
る。
埋
甕
集
団
と
いう
一つの
目
的
集
団
は
、
母
集
団
か
ら選
択
さ
れ
た
。
し
たが
って、
母集
団
の
実
体
とそ
の
選
択
の内
容
が
わ
かれ
ぽ
、
埋甕
集
団
の
実
体
が
把
握
さ
れ
る
のであ
る。
ま
ず
母
集
団
に
つい
て検
討
し
て
み
よ
う。
こ
れ
に
つ
いて
は、
埋甕
が屋
内
にあ
る
と
ころ
か
ら
、
埋
甕
構
築
住
居
構
成員
を想
定
でき
よ
う。
さ
ら
に関
連
し
て
重
要
な
こと
は
、
埋
甕
を
構
成
す
る諸
要
素
-埋
設
土
器、
時
間、
空
間
の
環
境
に
住
居
の構
成
諸
要
素
を想
定
し得
る
と
いう
こと
であ
る。
し
た
が
っ
て
次
の
問
題
、
﹁
選
択
の内
容
﹂
は、
以
下
の様
に
し
て求
め
られ
る。
す
な
わ
ち、
﹁
選
択
の内
容
﹂
は、
埋
甕
構
成
諸
要
素
の特
性
によ
って示
さ
れ
る
が
、
そ
の
特
性
と
は、
住
居
構
成
諸
要
素
と
埋
甕
構
成
諸
要
素
と
の関
係
と
し
て捉
え
ら
れ
る
42
第9号 奈 良 大 学 紀 要
であ
る。
以
上、
本
稿
の目
的、
分
析
方
法
、
基
礎
と
な
る考
え
方
を
述
べ
た
。
次
に、
天
竜
川
水
系
諸
遺
跡
を
と
り
上
げ
、
具
体
的
に
埋甕
集
団
に
つ
い
て分
析
し
て
み
よ
う
。
二
天竜川水系諸
遺
跡
の
分
析
コ
㈲
増
野
新
切
遺
跡
(
長
野県
下
伊
那
郡
高
森
町
)
(
図
二
∼
五
)
ω
遺
跡
の概
観
本
遺
跡
に
お
い
て中
期
前
半
の住
居
趾
一
一
基
、
後
半
の
ニ
ハ
住
居
吐
七
六
基
が
検
出
さ
れ
て
いる。
し
か
し、
これ
は南
北
に
弧
状
に
連
な
る
住
居
肚
群
の中
央
部
の調
査
結
果
であ
り
、
そ
の全
容
は明
ら
か
で
な
い。
埋
甕
コ
セ
は、
中
期
後
半
の三
三
基
の住
居
駈
か
ら
検
出
さ
れ
て
お
り、
時
期
別
に
み
る
と
、
1
期
○、
H
期
一
一
ー
二
一
(
二
一
基
中
一
一
基
が
持
つ
)
、
皿
期
二
一
ー
二九
、
W
期
一
-一
九
、
と
な
る。
し
か
し、
住
居
の全
容
が
不
明
の為
、
分
有
関
係
は
明確
でな
い
。
よ
って、
主
に
埋甕
の
構
築
空
間、
時
間
、
埋
設
土
器
を
観察
す
る
Q
鋤
構
築
空
間
埋
甕
の構
築
空
間
を観
察
す
る
と
、
入
口
部
(
四
三
例
)
、
奥
室
部
(
一
例
D
一
五
号
)
、
炉
辺
奥
壁
側
(
一
例
D
一
〇
号
)
、
右
側
室
部
(
二
例
B
二
七
号、
D
二
九
号
)
、
左
側
室
部
(
三
例
B
二
六号
、
D
四
四
、
四
六
号
)
、
とな
る。
以
上
は、
本
遺
跡
の住
居
床
面
に穴
を掘
り、
土
器
を
埋
設
し
た遺
構
全
て
の
位
置
を
検
討
し
た結
果
で
あ
る
。
大
部
分
のも
のは、
入
口部
にあ
る。
し
か
し、
少
数
であ
るが
、
奥
室
や
左
右
側
室
部
にも
存
在
す
る。
﹁
埋
設
土
器
の形
態
﹂
の項
に
お
い
ても
述
べ
る
が、
入
口部
のも
の
は
正位
、
左
右
側
室
部
のも
の
は
コ
底
部
穿
孔
逆
位
で
﹁
伏
甕
﹂
と
呼
ば
れ
るも
の
であ
る。
奥
室
部
の
二例
は
正位
であ
るが
、
床
面
にあ
け
た
穴
が
浅
く
、
土
器
を
埋設
し
た
と
いう
よ
り、
据
え
た
型
にな
って
い
る。
し
た
が
って埋
甕
で
はな
い。
こ
の
様
に
、
空
間
の差
異
室
辺
室
室
口
奥
炉
前
側
入
中 心 軸
A
一
B
c D8号
簿
∼
︹
/
/
簸
E
、
B27月
/
亀
o埋
甕
◎
伏甕
B26号' 111D25
増 野 新 切 遺 跡 屋 内 空 問 の 分 割( r r i 線 は15一文亀献に 加 筆したもの で あ る)
`
丹 羽: 埋 甕 集 団 の 構 成 と婚 姻 シ ス テ ム 43
思
の
る
◎
B7号
O
ー
〆
\
-﹂
﹁
ヂ
ー
ー
B9号
O
α
。
四
B11号
ζ
ー
と
埋
設
の方
法
の差
異
が
厳
密
に対
応
し
て
い
る点
が
注
目
さ
れ
る。
な
お、
以
上
の観
察
か
ら、
﹁
埋甕
﹂
と
呼
び
得
る
も
の
は
入
口部
に
あ
る
も
のだ
け
であ
る
。
鱒
構
築
時
間
埋甕
と
時
間
の関
係
を
、
各
住
居
の
改
築
と
埋
甕
構
築
のあ
り
方
を
中
心
に観
察
す
る
と
、
次
の三
つに分
け
ら
れ
る。
ω
新
旧
両
床
面
に各
々埋
甕
が
構
築
さ
れ
る。
D
一
、
ω
、
一
四
号
(
以
上
は
改
築
に
お
い
て住
居
中
心
軸
の移
動
が
みら
れ
る
)
、
B
一
一
、
二
五号
、
D
二
二
、
三
二
号
(
以
上
は改
築
に
お
い
て中
心
軸
の移
動
は
な
い
)
、
の住
居
趾
に
み
ら
れ
る。
新
旧
埋甕
の配
列
は
、
前
者
に
お
い
て各
々
の住
居
中
心
軸
上
に
別
れ
て在
り
、
後
者
に
お
いて
は
中
心
軸
上
に古
いも
のか
ら新
し
いも
の
の順
番
で
内
か
ら
外
に直
列
に
並
ぶ。
ω
の場
合
は、
こ
の
様
に
次
々と
埋
甕
が
構
築
さ
れ
て
いく
の
であ
る
が、
新
旧
複
数
の埋
甕
が
共
存
す
る
のか
ど
う
か、
次
に
検
討
し
て
み
よう
。
そ
の資
料
と
し
て、
ω
貼
り床
の施
工
、
@
石
蓋
の設
号
、
枷
/
⑲
∴
,
ー
二
し
l
l
j
∼
-B25号
コ
ノ
ヤ
ー
∼
01. 6m3. 2m
o埋
甕 ×
石 棒
』 ≡
』
図3増 野 新 切 遺 跡 住 居 肚 実 測 図( 注15文 献 よ り)
備
、
を
挙
げ
る
こと
が
でき
る。
ω
に
つ
いて
み
て
み
ょう
。
D
コ
ニ
、
一
四、
三
二
号、
B
一
一
号
の古
い埋
甕
に
は貼
り
床
があ
る。
一
方
、
B
二
五号
、
D
一
号
のそ
れ
に
は
貼
り
床
が
無
い。
こ
のこ
と
か
ら、
前
者
に
お
い
て
は、
旧
埋
甕
は、
遅
く
と
も
改
築
時
に廃
絶
さ
れ、
改
築後
の新
埋甕
と
は共
存
し
な
い。
後
者
に
お
い
て
は共
存
の可
能
性
が
あ
る
。
次
に
@
に
つい
て
み
て
み
よう
。
D
一
四
号
では
新
し
い埋
甕
に石
蓋
が
伴
い
、
古
い
埋甕
に
は貼
り床
が
施
さ
れ
て
いる。
と
ころ
が
、
D
一
三
号
の新
旧
三
つ
の埋甕
で
は、
中
間
期
のも
の
に
石
蓋
が伴
い
、
新
古
のも
の
に
は、
埋
土、
貼
り床
が
認
め
ら
れ
る。
埋甕
が
容
器
の
機
能
を
も
つと
仮
定
す
る
と、
石
蓋
は
当
然機
能
中
の
埋甕
に伴
う。
D
一
四
号
の
あ
り
方
は
、
これ
を
肯
定
す
る。
よ
っ
て、
D
一
三
号
の
あ
り方
は、
中
間
期
の埋甕
が
新
し
い埋
甕
の廃
絶
後
ま
で
存
続
し
た
こ
と
を
示
し
て
お
り、
新
し
い埋甕
と
中
間
期
の埋
甕
が
一
時
共存
し
た
と
いえ
る
のであ
る。
又、
B
二
五
号
は、
貼
り
床
の項
で新
旧
の
共存
を
指
摘
さ
れ
た
が、
二
つ
の埋甕
に伴
う
奈 良 大 学 紀 要 第9号 44
D
1号
Ψ
一
一N
J - 一
ノ
/ 飛
、
畿y⑨
て
で
㌔
,
3
噛
D15号
f
∼
㍉
〆
O4
・
N
/
D12号
メ
@
/ ◎
◎
D
32号
p3. 2m6. 4m
o埋
甕
×
石 棒
図4増 野 新切遺 跡 住 居 肚 実 測 図( 注15文 献 よ り。D14号南 側 円 柱状 石塊 は 省 く)
竃
謝
45
丹 羽: 埋甕 集団の構成 と婚姻 システム
No. 1
ヘ
ノ
鰯 照
殴
No. 2
No. 1
I I I /
D15号
No. ユ
/ / /
B27- j 7
D1号
ノ D32号
No. 2
No. ユ
z 螂
趣
\一/ D37号
号
M
U
B25号
. 石 斧 片
D12号
No. 1
D30号 黒f 艶枯醜 No. 1
/ 1/ ,
1
0
》
湧
\
D13号
D14号
No. 3
翼
躍
No. 2
、
40c m 80c m
999/ / G
床
面
焼
土
石
蓋
46
第9号 紀 要
学
大
良
奈
の構
成
に
お
い
ても
、
D
一
三
号
に類
似
し、
そ
の推
定
を裏
付
け
て
いる。
な
お、
こ
れ
ら
の石
蓋
は、
埋
甕
に添
え
ら
れ
て
い
ると
い
った表
現
が適
切
で
、
上
を覆
っ
て
いる
わ
け
で
は
な
い。
遅
く
と
も
、
住
居
廃
絶
時
に機
能
の
廃
絶
が
も
た
ら
さ
れ
た
と
いえ
よう
。
以
上、
二
例
で
はあ
るが
、
二
個
の埋
甕
が
共
存
し得
る
こ
と、
そ
の
期
間
は
長
く
て
一
住
居
存
続
期
間
であ
る
こと
が
分
か
った。
又、
埋甕
構
築
の契
機
を
想
定
す
る
と
、
新
、
改
築
の可能
性
が
大
であ
る。
但
し、
これ
は
埋甕
の時
間
を
住
居
の
タ
イ
ムテ
ーブ
ルで観
察
す
る
と
いう
条
件
に原
因
し
た
のか
も
し
れ
な
い
。
さ
ら
に埋
甕
廃
絶
の
契
機
は、
D
一
三
号
の新
し
い埋甕
の場
合、
住
居
の廃
絶
で
はな
い
と
い
え
る。
②
一
時
期
の床
面
に複
数
の埋甕
が
構
築
さ
れ
る。
B
二〇
号、
D
三
七
号
が
そ
れ
であ
る。
こ
の場
合
埋甕
は
並
列
す
る。
共
に
一
方
の埋
設
土
器
は
底
部
周
辺
のみ
で、
皿状
を
呈
し、
他
の埋
甕
と
異
な
る。
埋
甕
構
築
の共
通
性
だ
け
で
な
く
、
土
器
の形
態
も
類
似
す
る
の
であ
る。
一
時
期
に複
数
の埋甕
が
共
存
す
る
と
考
え
られ
るが
、
D
三
七
号
を
み
ると
、
皿状
の埋設
土
器
は、
当
初
普
通
の形
を
呈
し
て
い
た
が、
破
壊
さ
れ
床
面
下
に埋
め
込
ま
れ
た、
と
報
告
さ
れ
て
いる
。
三
七
号
に限
れば
、
二
つ
の並
列
す
る埋
甕
は、
厳
密
に
は
共存
し
な
いと
いえ
る。
又
、
並
列
と
いう
配
列
の形
式
を
考
え
る時
、
改
築
前
に
新
た
な
埋甕
構
築
が
必
要
と
さ
れ
た
場
合、
こ
の様
な
配
列
形
を
と
った
も
のか
と
も
推
・
察
さ
れ
る
。
㈹
二
時
期
の床
面
の
い
ず
れ
か
に
一
個
の埋
甕
が
構
築
さ
れ
る。
B
九、
一
〇
、
二
三
号
、
D
一
二、
三〇
号
が
そ
れ
であ
る。
二時
期
の
床
面
と
は、
こ
の
場
合
柱
の建
直
しを
表
現
し
た
も
の
で、
床
面
積
の異
動
は殆
ん
ど
無
い
。
同
じ
く
改
築
を
し
ても
、
ω
の例
は複
数
の埋
甕
を
持
つ
。
こ
の差
異
は、
改
築
の内
容
に
よ
る
の
かも
し
れ
な
い
。
ω
の場
合
は、
㈹
と違
って床
面積
の
拡
大
が
あ
る
か
ら
であ
る。
又、
新
旧
い
ず
れ
の床
面
に埋
甕
が
構
築
さ
れ
た
の
であ
ろ
う
か。
D
三〇
号
の埋
甕
を
覆
って石
蓋
が
あ
る
こと
、
B
二三
号
に
は石
蓋
が
添
って
い
た
こ
と、
以
上
よ
り
、
少
な
く
と
も
新
床
面
には
埋
甕
が
機
能
し
て
いた
と
い
え
よ
う。
よ
って、
埋
甕
を
持
た
な
い期
間
を
想
定
す
る
と
、
ω
と
の関
連
よ
り
ほぼ
一
住
居
存
続
期
間
と
いう
こ
と
にな
る。
以
上、
本
遺
跡
の埋
甕
の時
間
特
性
に
つい
て、
改
築
を
タイ
ム
スケ
ー
ルと
す
る
住居
の時
刻
表
によ
って検
討
し
て
みた
。
結
果
、
埋
甕
構
築
の契
機
は
、
改
築
全
般
に
は
必
ら
ず
しも
一
致
しな
いが
、
床
面
積
の拡
大
は、
埋
甕
にと
っ
て十
分
条
件
と
な
る
。
一
方
、
埋
甕
の
機
能
の廃
絶
は
、
住
居
の廃
絶
に伴
う
の
は当
然
であ
る
が、
多
く
は改
築
時
に
も
も
た
ら
さ
れ
る。
但
し、
そ
の原
因
を
想
定
す
る
時、
必
ら
ず
しも
住
居
の改
築
、
廃
絶
であ
る
と
は
いえ
な
い。
な
お、
埋甕
の
廃
絶
は、
埋
甕
自
体
に即
し
て
いえ
ぽ
、
空
白
か
、
共
存
か
、
こ
の
一
定
期
間
を考
慮
し
た
上
で、
新
し
い埋
甕
の構
築
によ
って引
き
継
が
れ
た
、
と
い
え
よ
う
Q
切
埋
設
土
器
の形
態
本
遺
跡
の
埋
甕
に使
用
さ
れ
た
土
器
の形
態
を
み
る
と
N
口
縁
を
欠
く
も
の、
胴
上
半
を
欠
く
も
の、
口縁
、
胴
下
半
を
欠
く
も
の
、
胴
下
半
を
欠
く
も
の、
底
部
を欠
く
も
の、
底
部
を
穿
孔
す
る
も
の等
さ
ま
ざ
ま
であ
る。
し
か
し
、
最
初
底
部
を
欠
い
て、
埋
設
の段
階
で他
の底
部
を
底
に
あ
て
が
った
り
(
D
一
号
)
、
内
部
に他
の土
器
底
部
や
、
破
片
を
入
れ
た
り
(
B
七、
二
三
号、
D
一
二、
一
三
号
)
、
ロー
ム土
を
底
部
の穿
孔
に充
填
し
た
り
す
る
も
の
(
D
三
二
号
)
が
あ
る。
故
に、
底
部
の有
無
が
形
態
上
の要
に
な
っ
て
いる
と
仮
定
さ
れ
る
。
又
、
本
遺
跡
の改
築
は、
旧
床
面
を
掘
り
下
げ
て行
な
わ
れ
る
と
ころ
か
ら
、
上
半
部
の形
態
は不
確
実
であ
る
。
以
上
よ
り
、
底
部
の
形
態
で
埋甕
埋
設
土
器
を
整
理す
ると
、
の
底
部
を
欠
損
し
て
いな
いも
の、
β
底
部
を
欠
損
す
る
が
、
他
の
土
器
片
、
土
によ
って充
填
す
るも
の、
γ
底
部
を
欠
損
す
る
も
の、
の
三
つに分
類
でき
る。
そ
の数
量
比
は、
α
-一
一
例
三
二
%
、
β
i
七
例
二
一
%
、
γ
1
一
六
例
四
七
%
、
と
な
って
い
る。
こ