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読者の皆さんが本誌を手に取られるころには、総務省消防庁から「地方公共団体の地震防災訓 練(図上型訓練)実施要領モデルの作成に関する調査研究報告書」が刊行されていると思われます (報告書作成には私も委員として関わりました)。その報告書の中では図上シミュレーション訓練 の実施要領とともに、実際の図上シミュレーション訓練で使用された「状況付与シナリオ」も参 考として示されています(注)。
このような事情を踏まえ、前回お約束した「状況付与シナリオ作成手順」については上記報告 書が読者の方々の手元に届いたのちに触れることにし、本稿では、前回述べた「訓練の準備に時 間をかけない」考え方を踏まえ、具体的にどのように準備をしたら良いかを「マニュアル」風に 述べることにします。
(注)本連載では上記報告書の内容との重複はできるだけ避け、別の角度から解説することにより 読者の理解と実践が容易となるよう記述しようと思います。
◆◆◆◆◆◆◆◆図上シミュレーション訓練のく準備〉◆◆◆◆◆◆◆◆
準備段階での主な作業は以下の二つです。
1.訓練会場の確保及び設営
2.図上訓練関係資料の作成及び事前配布等
1.訓練会場の確保及び設営 (1)訓練会場の確保
次の(2)の会場設営方法を考慮して、体育館や会議室など適当な広さの屋内空間を確保しま す。
地域防災実戦ノウハウ(43)
Blog防災・危機管理トレーニング
日 野 宗 門
主 宰
連 載 講 座
―実践的な防災訓練を目指して
(その 20)―
- 70 - (2)会場設営
訓練予定日が近づいたら会場設営を行います。
① 机の配置
机を移動するなどにより参加機関ごとに「島」を作ります。
(※会場の関係で島を作ることが困難な場合は、適宜色テープなどで机を仕切り、機関ごと にスペースを割り当てます)
②コピー機、ホワイトボード(+サインペン)を必ず用意 ア.コピー機
コピー機は、対応記録票、対応伝達票等を複写するときに使用します。参加機関が多いと きは複数台を用意した方が良いでしょう。
イ.ホワイトボード(+サインペン)
ホワイトボード(+サインペン)は、図上訓練進行管理者(以下「統制班」という。)が訓練の 進行管理を行うためのものを最低一つは用意します。図上訓練では、昼間に行う場合でも訓 練上は夜間と想定したり、あるいは実時間の数倍の速さで時間を進めるといったことがあ ります。このような場合、訓練上の時刻を参加機関に周知徹底することは極めて重要な意味 を持ちます。
なお、余裕があればホワイトボード(+サインペン)は参加機関ごとに用意しておくと、地 図や書類の貼付、被害状況や対策の書き出しといったことが容易となり訓練効果が促進さ れると思われます。
2.図上訓練関係資料の作成及び事前配布等
作成すべき資料と参加機関への配布時期等は次表のとおりです。
以下、これらの資料について解説します。
2.1 事前配布資料の作成
以下の(1)~(3)の資料が整った段階で関係者に送付します。
丁寧な資料を作成し、関係者を一堂に集めた事前説明はできるだけ省略あるいは最小限に止め るように努めます。
なお、参加機関には、訓練要綱等の配布時に訓練当日までに概ね以下の準備をしておくよう依 頼するものとします。
①加機関における災害時の活動要領・体制等の確認
② 訓練対象地域に対する基本的な地理的知識等の事前習得
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③簡易型地震被害想定システムの操作への習熟
「簡易型地震被害想定システム」は、総務省消防庁においてパソコンを用いて安価かつ容易 に被害想定ができるように開発されたシステムです。このシステムは、発生時期・時刻等の条 件も自由に変更できるという大変なすぐれものです。被害想定結果は、約 1km のメッシュサイ ズ及び市町村単位で得ることができます。
また、本システムは、地震発生後に震源データや震度データを入力することにより、準リア ルタイムの被害推定システムとしても活用可能です。地震を想定した図上訓練ではこのシステ ムが推定する被害量を参考に意思決定を行ってみることが重要です。
なお、本システムは、働消防科学総合センターが窓口になり、一般にも実費(1 万円)で頒布し ています(地方公共団体が業務用で使用する場合は、7,500 円)。現在多数の地方公共団体で使 用されています。
(1)訓練要綱
訓練を企画する際には、「いつ」、誰を「対象」に、何を「目的」とし、どのような「方法」
で行うかを決める必要があります。そのためには、訓練要綱を作成するのが良いでしょう。
ただし、あまり難しく考える必要はなく、本マニュアルで扱う訓練の場合、以下のような訓 練要綱(例)程度で十分と思われます(この時点では、時間割は暫定的なものでかまいません)。
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- 73 - (2)図上シミュレーション訓練とは
次の事前配布資料 2 を参照してください。
- 74 - (3)図上訓練用地図
図上訓練では共通の地理認識を前提とした状況判断・活動調整・連携活動等を行うことにな ります。そのため、共通で使用する地図(原則として全ての参加機関の所在地域を含む地図) は必須といえます。
これらの地図は、原則として訓練企画者側で用意し事前に参加機関に配布し、図上訓練に備 えていただくと良いでしょう。
(1)~(3)の資料を事前配布する際に、上記の地図の他、参加機関が使用している(あるいは 災害時に使用予定の)地図も訓練当日に持参をお願いすると良いでしょう。
- 75 - 2.2 当日配布資料の作成
図上訓練当日に配布する資料も前もって作成しておきます。それらの例については、次回の「図 上シミュレーション訓練のく実施〉」において示す予定です。
◆◆◆◆◆◆◆◆図上シミュレーション訓練のく準備〉完◆◆◆◆◆◆◆◆