: Bull. Hoshizaki Green Found : Mar Hydropetric Insects of Shimane Prefecture, Japan Masakazu HAYASHI and Hiroyuki YOSHITOMI Hoshizaki Green Foundatio

全文

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はじめに

湿岩は,垂直やそれに近い角度の斜面を持つ岩 盤に,常時,地表水や地下水の供給がある特殊な 流水環境で,石清水とも呼ばれる.岩石が露出す る崖のほか,道路法面,河川の護岸,堰堤の壁面 にも同様な環境が形成する.このほか,砂岩の崖 では,透水層の砂岩から水がしみ出し,湿岩となっ ている場合もある.これらの湿岩環境では,特異 的に生息する水生昆虫が存在し,地域により生息 する種が異なっている.また,流路に生息する種 の中にも湿岩に出現する種がいる.湿岩が形成す るためにはさまざまな条件が重なる必要があり,

なおかつ生息する昆虫の複数の世代が繰り返すに

は,数年〜数10年単位での持続も必要である.湿 岩に生息する昆虫の多くは成虫が飛翔することが でき,新たに出現した環境へと進出するはずであ る.しかしながら,後翅が退化した個体が出現す る種や,飛翔ができても移動能力があまり高くな いと見られる種も存在することから,せいぜい同 一水系内での移動にとどまっている可能性もある.

日本の湿岩に生息する水生昆虫については,

津 田・中 川(1959),三 枝(2005),三 枝・倉 西

(2005),東城・宮入(2005),倉西(2005),花田

(2005),Kamite et al.(2007),Minoshima and Fujiwara(2009),Yoshitomi and Hayashi(2013)

などの報告や解説がある.しかし,日本における 湿岩昆虫相の全体を概観できるような総説やチェッ クリストがなく,まずは地域ごとに湿岩に生息す

島 根 県 の 湿 岩 昆 虫 相

林 成多1)・吉富 博之2)

1)ホシザキグリーン財団,〒691 0076 島根県出雲市園町1664 2 ホシザキ野生生物研究所

2)愛媛大学農学部昆虫学研究室,〒790 8566 愛媛県松山市樽味3 5 7

Hydropetric Insects of Shimane Prefecture, Japan Masakazu H

AYASHI1)

and Hiroyuki Y

OSHITOMI2)

1)Hoshizaki Green Foundation, Sono1664 2, Izumo, Shimane Pref.,691 0076Japan

2)Entomological Laboratory, Faculty of Agriculture, Ehime University, Tarumi3 5 7, Matsuyama, Ehime Pref.,790 8566Japan

Abstract Hydropetric insects fauna of Shimane Prefecture including Oki Islands was reviewed based on records from the references and field surveys. In total,40 taxa of aquatic insects are recorded but most species are known as the lotic species.

Among them,Bleptus fasciatus, Indonemourasp.,Nemoura sp.,Satonius kurosawai, Schinostethus brevis,Stactobiasp. are recognized as hydropetric species.S. kurosawai is widely distributed in main island area(Honshu)of the prefecture but it is not distributed in Oki Islands.

Key words:Coreoptera, Diptera, Ephemeroptera, Plecoptera, Trichoptera キーワード:コウチュウ目,ハエ目,カゲロウ目,カワゲラ目,トビケラ目

ホシザキグリーン財団研究業績 第264号

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る昆虫のリストを作成することから始める必要が ある.

島根県では,林(2013)や林・門脇(2017)等 により,隠岐諸島も含めた地域での湿岩昆虫の報 告がある.今回,未公表だった調査結果も含めて 検討を行い,島根県の湿岩昆虫相の特色について 考察した.

調査地域

島根県全域としたが,主に東部と隠岐諸島の調 査地点が多い.文献記録の調査地点を表1にまと めた.

このほか,神戸川水系での6地点(2015年5月 6日調査)と,出雲市西林木町の伊努谷川の堰堤壁 面で2013年4月から6月に6回の調査を行った.

また,クロサワツブミズムシについても分布調査 を行った.

材料と方法

文献記録と未公表の調査の結果をまとめ,リス トを作成した.

野外での調査は,湿岩において見られた水生昆 虫を任意で採集した.幼虫だけでなく,湿岩上に いたカワゲラ目やトビケラ目の成虫も採集した.

本調査は昆虫相の把握が目的のため,生息してい た種を一通り採集するように努めた.採集にはピ ンセットを用い,70% エタノールにて固定・保存 した.同定は,淡水ベントス研究所(同定者:清 水高男)に委託した.標本はホシザキ野生生物研 究所に保管されている(一部,愛媛大学ミュージ アムにて保管).

神戸川水系6地点の調査結果

同 定 の 結 果,少 な く と も17種 が 確 認 さ れ た

(表2).湿岩に特異的に生息する種としては,クロ

B A B

A

C

C D D

図1 調査した湿岩.A,B,渓流の堰堤(出雲市西林木町伊努谷川);C,道路法面(出雲市佐田町);D,岩石の崖

(出雲市佐田町).

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サワツブミズムシとマルヒゲナガハナノミが確認 された.また,湿岩に生息することの多い種とし て,オビカゲロウ,インドオナシカワゲラ属,コ エグリトビケラ属が確認された.クワヤマナガレ トビケラ,マキナガレトビケラ,ヒメトビケラ属,

ツダコタニガワトビケラ,タニガワトビケラ属,

コカクツツトビケラは成虫のみが確認された.ハ エ目のチョウバエ科やユスリカ科,オドリバエ科 の数種も湿岩に特異的な種である可能性があるが,

詳細は不明である.このほか,リストには掲載さ れていないが,オドリバエ科のシブキバエ属の成 虫も確認している.

伊努谷川の堰堤での調査結果

同 定 の 結 果,少 な く と も30種 が 確 認 さ れ た

(表3).湿岩に特異的に生息する種としては,クロ サワツブミズムシが確認された.また,湿岩に生 息することの多い種として,オビカゲロウ,イン ドオナシカワゲラ属,オナシカワゲラ属,カクヒ メトビケラ属が確認された.カクヒメトビケラ属 は,湿岩に特異的に生息する種である可能性が高 いが,未記載種である.湿岩だけでなく,流路に

も生息する種として,ハナセマルツツトビケラや ノギカワゲラが複数回確認されている.ハエ目ユ スリカ科の数種も湿岩に特異的な種である可能性 があるが,詳細は不明である.このほか,アミカ 科のヒゲボソオオフタマタアミカ(オオバヒメア ミカ)も伊努谷川の湿岩環境で生息を確認して いる.

クロサワツブミズムシの調査結果

本種は島根県東部を中心に多くの記録があるが,

今 回 の 調 査 で 中 部 と 西 部 で も 分 布 を 確 認 し た

(表4).隠岐諸島では生息可能とみられる環境が存 在するが,分布は確認されなかった.

湿岩のタイプと出現する昆虫について

今回,調査を行った湿岩にもさまざまなタイプ があり,特に壁面に蘚苔類や藻類が付着する量・

面積によって岩盤の露出状態が異なっている.し かし,出現する水生昆虫の種については,あまり 大きな変化は見られなかった.これは調査対象を 水生種に限定したためで,蘚苔類を食べる種や生 表1 島根県内における湿岩昆虫の調査地点

地 名 湿岩のタイプ 位置 標高(m) 文献

島根県出雲市大社町杵築東素鵞川St.1 堰堤壁面 35.403612,132.68273 15 林(2017)

島根県出雲市大社町杵築東素鵞川St.2 堰堤壁面 35.403043,132.683526 12 林(2017)

島根県出雲市河下町河下St.2(河下A) 滝,露岩 35.445935,132.737154 5 林(2013)

島根県出雲市河下町県道23号線St.3(河下B) 道路法面のコンクリート壁 35.445647,132.727622 35 林(2013)

島根県出雲市別所町鰐淵寺川St.4(鰐淵寺) 川辺の露岩 35.421922,132.750415 125 林(2013)

島根県出雲市大社町鵜峠St.5(鵜峠) 道路法面のコンクリート壁 35.441906,132.705864 15 林(2013)

島根県出雲市西林木町伊努谷川St.6(伊努谷) コンクリート壁(堰堤) 35.412706,132.768488 80 林(2013)

島根県出雲市多伎町久村海岸St.7(久村) 海蝕崖,砂岩からの染みだし 35.303358,132.644463 5 林(2013)

島根県出雲市佐田町反辺St.8(反辺) 道路法面のコンクリート壁 35.253391,132.718706 70 林(2013)

島根県出雲市佐田町高津屋農道St.9(高津屋) 道路法面の露岩 35.192503,132.690060 280 林(2013)

島根県雲南市吉田町杉戸林道 大万木山St.10(杉戸) 道路法面の露岩 35.099274,132.862118 830 林(2013)

島根県隠岐の島町伊後大峯山(北麓) 堰堤壁面 36.313558,133.273867 380 林・門脇(2017)

島根県隠岐の島町原田大満寺山(佛谷) 堰堤壁面 36.257961,133.315637 200 林・門脇(2017)

島根県西ノ島町美田高崎山 源流の露岩 36.1152,133.0273 200 林・門脇(2017)

島根県西ノ島町美田焼火山 源流の露岩 36.0749,133.0235 150 林・門脇(2017)

島根県西ノ島町美田大山ダム 道路法面の露岩 36.087539,133.041631 40 林・門脇(2017)

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息場所にしている種などを加えれば,場所により 出現種は大きく変化すると考えられる.

また,河川等の流路の途中にある湿岩と,湧水 などによって周囲の水系から半ば独立的に存在す る湿岩の違いは,出現する種の違いに影響を与え

る可能性が高い.例えば,河川横断物である堰堤,

あるいは滝の場合,通常の流れの途中に湿岩環境 があるため,流路に生息する昆虫が移動する過程 で湿岩に出現することがある.実際,伊努谷川の 堰堤では,神戸川水系の6地点での調査よりも多 表2 神戸川水系6地点の調査結果(2015年5月6日調査)

ステージ 地点 個体数 備考

盤足目 カワニナ科 カワニナ Semisulcospira libertina 幼貝 St. 基眼目 モノアラガイ科 ヒメモノアラガイ Fossaria ollula 幼貝 St. カゲロウ目 ヒラタカゲロウ科 オビカゲロウ Bleptus fasciatus 幼虫 St. カワゲラ目 オナシカワゲラ科 インドオナシカワゲラ属の一種 Indonemourasp. undet. 幼虫 St. St

St.

St.

St.

オナシカワゲラ科 オナシカワゲラ属の一種 Nemourasp. undet. 成虫(♂) St nr.N. cercispinosa カメムシ目 ミズギワカメムシ科 ミズギワカメムシ Saldula saltatoria 成虫 St

コウチュウ目 ツブミズムシ科 クロサワツブミズムシ Satonius kurosawai 成虫 St. 幼&成 St.

St.

St St ヒラタドロムシ科 マルヒゲナガハナノミ Schinostethus brevis 幼虫 St. トビケラ目 ナガレトビケラ科 クワヤマナガレトビケラ Rhyacophila kuwayamai 成虫(♂♀) St. マキナガレトビケラ Rhyacophila makiensis 成虫(♂) St. ヒメトビケラ科 ヒメトビケラ属の一種 Hydroptilasp. undet. 成虫(♀) St カワトビケラ科 ツダコタニガワトビケラ Chimarra tsudai 成虫(♂) St.

タニガワトビケラ属の一種 Dolophilodessp. undet. 成虫(♂) St. ?D. japonica 成虫(♂) St. ?D. japonica カクツツトビケラ科 コカクツツトビケラ Lepidostoma japonicum 成虫(♂) St.

コエグリトビケラ科 コエグリトビケラ属の一種 Apataniasp. undet. 幼虫 St 幼虫 St. 幼虫 St. ハエ目 チョウバエ科 チョウバエ科の一種 PSYCHODIDAE sp. undet. 幼虫 St. ユスリカ科 ヤマユスリカ属の一種 Diamesasp. undet. 幼虫 St. ユキユスリカ属の一種 Syndiamesasp. undet. 幼虫 St テンマクエリユスリカ属の一種 Eukiefferiellasp. undet. 幼虫 St. 地点

St.1 出雲市佐田町大呂alt.m,35.9,2.7;St.2 出雲市佐田町大呂 alt.m,35.9,2.2;

St.3 出雲市佐田町吉野alt.m,35.5,2.7;St.4 出雲市佐田町吉野 alt.m,35.3,2.0;

St5 出雲市佐田町吉野 altm,35.3,2.0;St6 大田市山口町山口川奥altm,35.3,2.

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(5)

A

A B B

C

C D D

E

E F F

G

G H H

図2 湿岩で確認された水生昆虫.A,オビカゲロウ幼虫;B,インドオナシカワゲラ属幼虫;C,ノギカワゲラ幼虫;D,ミ ズギワカメムシ成虫;E,クロサワツブミズムシ成虫と幼虫;F,マルヒゲナガハナノミ幼虫;G,ハナセマルツツトビ ケラ幼虫;H,カクヒメトビケラ属成虫.

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表3 伊努谷川の堰堤壁面における確認種

ステージ 個体数 日付

イトミミズ目 イトミミズ科 ミズミミズ属の一種 Naissp. undet. 成虫(体) 3/5/2 ダニ目 イズミダニ科 イズミダニ科の一種 THYASIDAE sp. undet. 成虫(体) 3/5/2 ナガレダニ科 ナガレダニ科の一種 SPERCONTIDAE sp. undet. 成虫(体) 3/6/1 カゲロウ目 コカゲロウ科 シロハラコカゲロウ Baetis thermicus 幼虫(体) 3/5/2 フタバコカゲロウ Baetiella japonica 幼虫(体) 3/6/1 トビイロカゲロウ科 トビイロカゲロウ属の一種 Paraleptophlebiasp. undet. 亜成虫 1 ♀ 3/4/2 ヒラタカゲロウ科 オビカゲロウ Bleptus fasciatus 幼虫(体) 3/5/2

幼虫(体) 3/5/2 ヒラタカゲロウ科 タニガワカゲロウ属の一種 Ecdyonurussp. undet. 亜成虫 1 ♀ 3/4/2 成虫(体) 1 ♀ 3/5/2 マダラカゲロウ科 オオマダラカゲロウ Drunella basalis 幼虫(体) 3/4/9 カワゲラ目 オナシカワゲラ科 インドオナシカワゲラ属の一種 Indonemourasp. undet. 幼虫(体) 3/4/9 幼虫(体) 3/5/2 幼虫(体) 3/6/1 オナシカワゲラ属の一種 Nemourasp. undet. 幼虫(体) 2ovocercia−Group 3/4/9

幼虫(体) 1ovocercia−Group 3/5/2 幼虫(体) 1ovocercia−Group 3/6/1 幼虫(体) 1Group uncertain 3/6/1 ケフサオナシカワゲラ Nemoura redimiculum 成虫(体) 2 1♂1♀ 3/4/9 チノオナシカワゲラ Nemoura chinonis 羽化前個体 3/5/2 ナライオナシカワゲラ Nemoura naraiensis 成虫(体) 1 1♂ 3/4/9 成虫(体) 2 1♂1♀ 3/4/2 ジュッポンオナシカワゲラ(中国・四国地方型) Amphinemura decemseta 成虫(体) 9 5♂4♀ 3/4/2 ヒロムネカワゲラ科 ノギカワゲラ Cryptoperla japonica 幼虫(体) 3/4/9

幼虫(体) 3/5/2 幼虫(体) 3/5/2 幼虫(体) 3/6/1 ホソカワゲラ科 ハルホソカワゲラ属の一種 Perlomyiasp. undet. 成虫(体) 1 ♂ 3/4/2 カメムシ目 カタビロアメンボ科 ナガレカタビロアメンボ Pseudovelia tibialis 成虫(体) 3/6/1 コウチュウ目 ツブミズムシ科 クロサワツブミズムシ Satonius kurosawai 成虫(体) 3/5/2

幼虫(体) 3/5/2 成虫(体) 3/5/2 幼虫(体) 3/5/2 成虫(体) 3/6/1 幼虫(体) 3/6/1 トビケラ目 カクスイトビケラ科 ハナセマルツツトビケラ Micrasema hanasensis 幼虫(体) 3/4/9

幼虫(体) 3/5/2 幼虫(体) 3/5/2 幼虫(体) 3/6/1 カクツツトビケラ科 カクツツトビケラ科の一種 LEPIDOSTOMATIDAE sp. undet. 若齢 3/5/2 カワトビケラ科 ツダコタニガワトビケラ Chimarra tsudai 成虫(体) 2 ♂ 3/5/2 クロツツトビケラ科 クロツツトビケラ Uenoa tokunagai 幼虫(体) 3/5/2 幼虫(体) 3/6/1 ナガレトビケラ科 クラマナガレトビケラ Rhyacophila kuramana 幼虫(体) 3/6/1 ナガレトビケラ科 ニワナガレトビケラ Rhyacophila niwae 幼虫(体) 3/5/2

幼虫(体) 3/5/2 幼虫(体) 3/6/1 ヒメトビケラ科 カクヒメトビケラ属の一種 Stactobiasp. undet. 幼虫(体) 3/5/2

3/5/2 幼&蛹 3/6/1 ヒメトビケラ科の一種 HYDROPTILIDAE sp. undet. 成虫(体) 1 ♀:?Stactobia 3/5/2

成虫(体) 3/5/2 ヤマトビケラ科 コマコヤマトビケラ Agapetus komanus 成虫(体) 1 ♂ 3/5/2 ハエ目 オドリバエ科 オドリバエ科の一種 EMPIDIDAE sp. undet. 幼虫(体) 3/5/2 1(+1♂成虫) 3/5/2 ガガンボ科 Dicranomyia属の一種 Dicranomyiasp. undet. 幼虫(体) 3/4/9

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くの種が確認された.伊努谷川の堰堤では特にノ ギカワゲラやハナセマルツツトビケラ,ニワナガ レトビケラが複数回確認されているが,これらの 種は独立的に存在する湿岩では確認されておらず,

流路の中にある微環境の一部として,選択的に生 息していると考えられる.

本土側の湿岩昆虫相

湿岩に出現する種としては,ヒラタカゲロウ科 のオビカゲロウ,オナシカワゲラ科のインドオナ シカワゲラ属(クロオナシカワゲラを含む)とオ ナシカワゲラ属(ケフサオナシカワゲラ,チノオ ナシカワゲラ,ナライオナシカワゲラを含む),ツ 表3 (続き)

ステージ 個体数 日付

幼虫(体) 3/6/1 ハエ目 ユスリカ科 エリユスリカ属の一種 Orthocladiussp. undet. 幼虫(体) 3/5/2

幼虫(体) 3/5/2 幼虫(体) 3/6/1 テンマクエリユスリカ属の一種 Eukiefferiellasp. undet. 幼虫(体) 3/5/2 ニセテンマクエリユスリカ属の一種 Tveteniasp. undet. 幼虫(体) 3/5/2 ニセナガレツヤユスリカ属の一種 Paracricotopussp. undet. 幼虫(体) 3/5/2 ユキユスリカ属の一種 Syndiamesasp. undet. 幼虫(体) 3/4/9

表4 島根県内におけるクロサワツブミズムシの確認地点

地名 湿岩のタイプ 位置 標高(m) 文献

出雲市別所町鰐淵寺 川辺の露岩 35.421922,132.750415 125 林(2007)

雲南市木次町山方ふるさと尺の内公園 人工の湿岩環境 35.317288,132.913724 80 林(2007)

雲南市木次町山方ふるさと尺の内公園 人工の湿岩環境 35.317288,132.913724 80 林(2008)

雲南市木次町西日登斐伊川 堰堤下流側の河川本流 35.248852,132.896708 60 林(2008)

出雲市河下町河下 St.2(河下A) 滝,露岩 35.445935,132.737154 5 林(2008)

出雲市多伎町久村海岸 海蝕崖,砂岩からの染みだし 35.303358,132.644463 5 林(2008)

出雲市佐田町大呂 高津屋農道 道路法面の露岩 35.185489,132.725852 230 林(2009)

出雲市河下町河下 St.2(河下A) 滝,露岩 35.445935,132.737154 5 林(2013)

出雲市河下町県道23号線St.3(河下B) 道路法面のコンクリート壁 35.445647,132.727622 35 林(2013)

出雲市別所町鰐淵寺川St.4(鰐淵寺) 川辺の露岩 35.421922,132.750415 125 林(2013)

出雲市多伎町久村海岸 St.7(久村) 海蝕崖,砂岩からの染みだし 35.303358,132.644463 5 林(2013)

出雲市佐田町高津屋農道St.9(高津屋) 道路法面の露岩 35.192503,132.690060 280 林(2013)

雲南市吉田町杉戸林道 大万木山St.10(杉戸) 道路法面の露岩 35.099274,132.862118 830 林(2013)

出雲市佐田町大呂 St.1 道路法面のコンクリート壁 35.195029,132.717397 170 本報告 出雲市佐田町大呂 St.2 道路法面の露岩 35.185489,132.725852 230 本報告 出雲市佐田町吉野 St.3 道路法面のコンクリート壁 35.174405,132.704737 390 本報告 出雲市佐田町吉野 St.5 道路法面の露岩 35.192503,132.690060 280 本報告 大田市山口町山口川奥 St.6 道路法面のコンクリート壁 35.191293,132.648829 290 本報告 大田市祖式町 道路法面のコンクリート壁 35.049866,132.439413 245 本報告 江津市坂本川(17.vii.2017) 道路沿いの大きな湿崖 34.975197,132.417347 145 本報告 益田市匹見町紙祖川(18.vii.2017) 道路沿いの小さな湿崖 34.490286,131.999589 480 本報告

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ブミズムシ科のクロサワツブミズムシ,ヒラタド ロムシ科のマルヒゲナガハナノミ,ヒメトビケラ 科のカクヒメトビケラ属が確認された(表5).ガ ムシ科のコモンシジミガムシは,川辺の砂礫中に 生息する種であるが,湿岩にも生息することが多 い.また,山地渓流の堰堤でアミカ科のヒゲボソ オオフタマタアミカ(オオバヒメアミカ)も確認 されている.

隠岐諸島の湿岩昆虫相

隠岐諸島では,島後と西ノ島の2島に湿岩環境 があり,調査を行った(表5).本土側との共通す る水生昆虫としては,ヒラタカゲロウ科のオビカ ゲロウ,オナシカワゲラ科のインドオナシカワゲ ラ属とオナシカワゲラ属,ガムシ科のコモンシジ ミガムシ,ヒラタドロムシ科のマルヒゲナガハナ ノミ,ヒメトビケラ科のカクヒメトビケラ属が確

認された.一方,クロサワツブミズムシはまった く確認されず,分布していない可能性が高いと考 えられる.

クロサワツブミズムシの分布

島根県の本土側には広く分布することが判明し た(図3).本種は後翅のサイズに変異があり(Há- jeket al.,2011),長翅の個体は飛翔可能である.

未確認の種について

湿岩性の昆虫は,地域によって出現する種に変 化が見られる.例えば,甲虫類では,ガムシ科の コマルシジミガムシとミゾシジミガムシ,ダルマ ガムシ科のニッポンセスジダルマガムシ,ナガハ ナノミ科のヒメヒゲナガハナノミ,ヒメドロムシ 科のナガアシドロムシ属の一種(未記載種:緒方・

中島,2006)などが本州から報告されているが,

図3 島根県内で確認されたクロサワツブミズムシの生息地

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いずれの種も島根県では確認されていない.この 中でナガアシドロムシ属の一種は,西日本に広く 分布することから,島根県で確認される可能性が ある.

本研究は,公益財団法人ホシザキグリーン財団 と国立大学法人愛媛大学の共同研究で得られた成 果をまとめたものである.実施にあたり,関係部 署には便宜を図っていただいた.水生昆虫の同定 にあたっては,淡水ベントス研究所の清水高男博 表5 島根県東部と隠岐諸島(島後・西ノ島)の湿岩で確認された水生昆虫

目 科 和 名 学 名 本土:

東部

隠岐:

島後

隠岐:

西ノ島 カゲロウ目 コカゲロウ科 シロハラコカゲロウ Baetis thermicus ○ ○

フタバコカゲロウ Baetiella japonica ○ トビイロカゲロウ科 トビイロカゲロウ属 Paraleptophlebia ○ ヒラタカゲロウ科 オビカゲロウ Bleptus fasciatus ○ ○

タニガワカゲロウ属 Ecdyonurus ○ マダラカゲロウ科 オオマダラカゲロウ Drunella basalis ○ カワゲラ目 オナシカワゲラ科 クロオナシカワゲラ Indonemoura nohirae ○ ○

インドオナシカワゲラ属 Indonemoura ○ ○ ケフサオナシカワゲラ Nemoura redimiculum ○ ○ チノオナシカワゲラ Nemoura chinonis

ナライオナシカワゲラ Nemoura naraiensis

オナシカワゲラ属 Nemoura ○ ○

ジュッポンオナシカワゲラ Amphinemura decemseta ○ ヒロムネカワゲラ科 ノギカワゲラ Cryptoperla japonica ○ ホソカワゲラ科 ハルホソカワゲラ属 Perlomyia ○ ○ カメムシ目 ケシミズカメムシ科 ケシミズカメムシ Hebrus nipponicus

カタビロアメンボ科 ナガレカタビロアメンボ Pseudovelia tibialis ○ ミズギワカメムシ科 ミズギワカメムシ Saldula saltatoria ○ コウチュウ目 ツブミズムシ科 クロサワツブミズムシ Satonius kurosawai

ガムシ科 コモンシジミガムシ Laccobius oscillans ○ ○ ヒラタドロムシ科 マルヒゲナガハナノミ Schinostethus brevis ○ ○ ○ トビケラ目 カクスイトビケラ科 ハナセマルツツトビケラ Micrasema hanasensis

カクツツトビケラ科 カクツツトビケラ属 Lepidostoma ○ カワトビケラ科 ツダコタニガワトビケラ Chimarra tsudai

クロツツトビケラ科 クロツツトビケラ Uenoa tokunagai ○ ナガレトビケラ科 クラマナガレトビケラ Rhyacophila kuramana ○ ○

ニワナガレトビケラ Rhyacophila niwae ○ ムナグロナガレトビケラ Rhyacophila nigrocephala ○ コエグリトビケラ科 コエグリトビケラ属 Apatania ○ ○ ヒメトビケラ科 カクヒメトビケラ属 Stactobia ○ ○ ○ ヤマトビケラ科 コマコヤマトビケラ Agapetus komanus

ハエ目 オドリバエ科 オドリバエ科 EMPIDIDAE ○

ガガンボ科 Dicranomyia属 Dicranomyia ○ チョウバエ科 チョウバエ科 PSYCHODIDAE ○ ユスリカ科 エリユスリカ属 Orthocladius ○ テンマクエリユスリカ属 Eukiefferiella ○ ニセテンマクエリユスリカ属 Tvetenia ○ ニセナガレツヤユスリカ属 Paracricotopus ○ ユキユスリカ属 Syndiamesa

ヌカカ科 ヒラタヌカカ属 Atrichopogon

アミカ科 アシボソヒメフタマタアミカ(ナガヒメアミカ) Philorus longirostris ○ ヒゲボソオオフタマタアミカ(オオバヒメアミカ) Philorus kuyaensis

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士にご協力をいただいた.以上の方々に厚くお礼 申し上げる.

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