移動体精密三次元レーザスキャナLISA3 の計測手法と特徴
桐木 正美,松塚 悟
Characteristics and measurement methods for mobile precision 3D laser scanner LISA3
Masami KIRIKI, Satoru MATSUZUKA
Abstract: In recent years, natural disaster such as earthquake, tidal wave, volcanic eruptions and flood often occurs. For the survey of disaster recovery, aerial laser and ground laser survey have progressed with the development of measurement technology, and it has been possible to figure out terrain using 3D data. However, it has been difficult to figure out the detailed terrain such as steep terrain at high risk for the disaster like cliff failure and collapse of bedrock and bedrock sites of varying size.
The development of the mobile precision three-dimension laser scanner LISA3 makes it possible to survey the land feature that couldn’t be measured.
This paper reports a summary of system for LISA3 and the validation results of the accuracy.
Keywords: 無人ヘリコプタ(pilotless helicopter ),レーザスキャナ(laser scanner),防災
(disaster prevention)
1. はじめに
近年,地震・津波・火山噴火,洪水氾濫など自然災 害が多発し,被害が増加している.
防災対策の調査に対しては,計測技術の発達にとも ない,航空レーザ測量や地上型レーザ測量が進歩し,
三次元データによる地形の状況把握が可能になったが,
崖崩れや岩盤崩落などの災害の危険性が高い急傾斜地 や大小様々な形状をした岩盤個所などに対して,微細 な地形の把握ができなかった.
しかし,移動体精密三次元レーザスキャナ「LISA3」
の開発により,これまで調査不可能であった地形を正 確に調査することが実現できた.
本報告は,LISA3 のシステム概要をまとめ精度を検 証したものである.
桐木:〒053-0052 苫小牧市新開町2丁目1番3号
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2. LISA3 の開発
LISA ( Laser Innovational Scanning with high Accuracy)は,レーザスキャナ(レーザ測距装置)と IMU(慣性計測装置),GPS を一つのユニット体に統合 したもので,あらゆる移動体に搭載し航行しながら三 次元データの取得を可能とするシステムとして,株式 会社デベロが開発したものである.
タナカコンサルタントは,LISA を無人ヘリコプタに 搭載して計測するため,システムを開発した株式会社 デベロ(大阪市),無人ヘリコプタの操縦技術を有する 株式会社シンタニ(江別市)と連携し,無人ヘリ搭載 型レーザスキャナ「LISA3」の開発と計測精度向上の研 究を進めてきた.
この結果,システムを 25.5 ㎏まで軽量化し,無人ヘ リコプタ運航の安定化に成功し,上空からの多様な計 測を可能とするシステムを構築できた.
3. LISA3 の構成と諸元
LISA3 は,レーザスキャナ,IMU,GPS を一つのユニ ット体に統合し,スキャナと同時に画像データを取得
する高画素デジタルカメラで構成している.
LISA3 は,25.5kg と軽量かつコンパクトなためから,
計測する地形に応じて,無人ヘリコプタ,車両,ヘリ コプタ,船舶など様々なプラットホームを使用して,
特に固定せずに搭載でき効率的に三次元データを取得 することが可能である.
写真-1 LISA3
(1)レーザスキャナ LMS-Z420i(RIEGL 社製)
・レーザ安全規格 Class1
・スキャニング範囲 鉛直部 80°
水平部 360°
・測定可能距離
反射率≧80%の対象物 1,000m 反射率≧10%の対象物 350m
・最短距離 2m
・測定精度(単独) ±10mm
・測定レート 8,000/秒
・ビームの広がり角 0.25mrad
0.25mrad は 100m 距離で 2.5cm のビーム幅に相当する
・レーザ波長 近赤外線
・ライン数(1 秒あたり) 1~20
(2)モーションセンサー
・ローリング(deg) 0.01
・ピッチング(deg) 0.01
・ヘディング(deg) 0.01
・速度(m/s) 0.005 以下
(3)2 周波 GPS 受信機
(4)高画素デジタルカメラ
4. あらゆる移動体からの計測について (1)無人ヘリコプタ搭載による計測
LISA3 の特徴は,無人ヘリコプタを利用し,航空機 や実機ヘリコプタではできない低高度(数mから数百 m)からの計測を可能にしたことである.
従来の計測手法では不可能であった岩盤斜面,複雑 な形状の斜面などを安全に至近距離から遠隔操作で高 密度に計測することが可能である.
図-1 LISA3 計測イメージ
(2)ヘリコプタ搭載による計測
ヘリコプタからの計測は,最も効率的な計測手法で ある.スキャニング範囲が80°と大きな角度で計測で きるため,広範囲なデータの取得が可能である.
(3)車両搭載による計測
車両搭載は,最も気軽に計測できる方法である.キ ャリアに取り付け,道路面計測時は横置きに設置し,
道路周辺の地形,構造物などの計測には縦置きにする ことで詳細なデータの取得が行える.
図-2は,約20km/hの速度で走行して取得した点 群データである.道路,河川などの計画・詳細設計に おいて必要となる詳細な三次元形状が得られており,
精密空間情報として使用することが可能である.
図-2 取得点群データ
(4)船舶搭載による計測
船舶に搭載することで,海岸線の精密なモデリング や航空機からの取得が困難なダム周辺,河川や海岸の 詳細な三次元地形の計測が可能である.また,ナロー
マルチビームによる測深と組み合わせることにより,
地表面と水面下の三次元データを同時に取得すること も可能である.
(5)台車や高所作業車搭載による計測
特定の構造物や限られた範囲,特定の施設などの計 測には台車や高所作業車に取り付けて計測することが できる.
5. LISA3 の精度検証
LISA3 の精度検証を行なうため,苫小牧東部地域柏 原地区の道路沿いに南北・東西に直交する比較点を 5 点選定し,地上レーザ測量で使用する反射ターゲット 板を設置した.この反射ターゲット板を車両に搭載し 走行しながら計測した成果と,GPS 測量機を用いて計 測した成果との差を比較し,データの妥当性を検証し た.また,ターゲット間の区間距離を比較するため,
光波測距儀による測定を行なった.
図-2 検証箇所図
図-3 精度検証調査地
使用した GPS 測量機
受信機名 : ライカ GPS1200 モデル GX1230GG 受信機番号 : 351010
アンテナ : AX1202GG アンテナ番号 : 06210177 データ取得間隔 : 1.0 秒 衛星の最低高度角 : 15 度
解析ソフト : LEICA Geo Office V4.0
LISA3を走行車両に搭載し計測した結果と VRS 方式
を用いて実測した結果を表-1 に示す.
水平位置誤差は最大 34mm,標高差は最大 31mmで あった.また,光波測距儀で測定した水平距離との差
は表-2 の通りで,最大で 11mmと非常に高精度な結 果が得られた.
検証結果から,LISA3の計測値は,実施設計,詳細 設計に使用する地形図や縦横断図などへの展開が可能 と考える.
表-1 LISA3 と VRS の誤差 LISA3 と VRS の計測誤差 測点 X Y ⊿S Z
A-1 -0.000 0.024 0.024 -0.001 A-2 0.003 0.031 0.031 -0.026 A-3 0.031 0.014 0.034 0.009 A-4 0.024 -0.013 0.027 0.031 A-5 0.012 -0.004 0.013 0.007 標準偏差 0.007 0.017 最小二乗誤差 0.030 0.021 (単位:m)
表-2 LISA3 と VRS の水平距離誤差 区間 LISA3 光波測距儀 差 A-1~A-2 442.041 442.041 0.000 A-2~A-3 509.297 509.287 0.010 A-3~A-4 591.109 591.106 0.003 A-4~A-5 836.728 836.717 0.011 (単位:m)
6.無人ヘリコプタ搭載精密三次元計測
無人ヘリコプタ搭載は,振動によるLISA3の誤動作 が問題となったが,マウンターを改良することで,安 定して計測データを取得することが可能となった.
写真-2 計測機器搭載状況
LISA3の特長を利用した無人ヘリコプタからの計測
は,次のような利点を持っている.
① 遠隔操作,無人飛行により,危険な箇所を安全 に計測することができるため人命リスクがない.
② 安定した航行速度が20kmと低速度なため,近 接した距離からの計測では16点/㎡(点間0.25m)
の高密度な取得データが得ることができる.(ホバリン グしながらの計測では,数倍の密度での取得が可能で ある)
③ レーザのビーム径の広がりが,100m先で2.5c mと照射投影面積が小さく精度の向上が図られる.ま た,樹木間での狭い隙間でもレーザの照射を多く通過 させることができるため地表面まで到達できる確率も 格段に高くなる.
このことから,災害時においては,迅速性・機動性 を活かし,初動段階での被害状況の把握や二次災害の 可能性の有無など,現場で即座に計測データの利用す ることができるため緊急災害対策に役立つものと期待 できる.
図-4 従来の航空レーザ測量と無人ヘリコプタ によるレーザ測量
7. 数値地形モデルの利活用
数値地形モデルは三次元データであるため,等高線 図,陰影図,標高段彩図,傾斜区分図,鳥瞰図など多 彩な地形表現ができるため,地形・地質の判読に有効
である.LISA3の計測値で作成した数値地形モデルは,
従来の航空写真測量や航空機レーザ測量のモデルと比 べ,地表面の微細な地形や崩壊地,地すべり地,遷急 線,崖錐地形等の特有な地形箇所をより正確に把握す ることを可能にした.目的に応じた主題図(素因図,
不安定箇所図,想定災害影響域図,崩壊確率図,リス ク図等)作成,解析作業(横断データ作成,GISで活 用)等幅広い利用が可能である.
図-5 数値地形モデルを用いた地形表現
(左:傾斜量図,右:傾斜区分図)
8. おわりに
あらゆる移動体からの計測が可能な LISA3 の特徴 は,危険な箇所においても安全に近距離から計測する ことであり,高密度で高精度な三次元データを効率的 に取得できることである.
特に近年は,多発する地震・津波・火山噴火・洪水 氾濫等の自然災害への防災対策として,地形・地物を 高精度で計測することへの社会的ニーズが高まってお り,道路・河川・海岸・火山など防災対策を必要とす る地域で詳細な三次元データを得るためには特に有効 であると考えられる.
また,地形・地質の判読,地形解析のため,詳細な 数値地形モデルを作成することは有効であり,更には,
それらの数値解析を行なうことで各種シミュレーショ ンやハザードマップ作成へ応用することができる.
今後は,更なる実証実験を積み重ねるとともに,赤 外線サーモグラフィを搭載して,森林バイオマス調査,
自然環境保全など環境分野での活用を図りたいと考え ている.
参考文献
1) 国土地理院:航空レーザ測量による数値標高モ デル(DEM)作成マニュアル(案),平成18 年4月
2) 日外勝仁:道路防災事業における航空レーザ測 量の活用,寒地土木研究所月報NO648,pp31
-36,2007.5