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既に出てきた水痘ワクチン定期接種の効果

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第74巻 第4号,2015(595〜596) 595

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 日本小児保健協会予防接種・感染症委員会では「感染症・予防接種」に関するレターを毎号の小児保 健研究に掲載し,わかりやすい情報を会員にお伝えいたしたいと存じます。ご参考になれば幸いです。

       日本小児保健協会予防接種・感染症委員会  委員長庵原 俊昭   副委員長岡田 賢司    乾  幸治    多屋 馨子    三田村敬子     菅原 美絵      津川  毅   古賀 伸子

既に出てきた水痘ワクチン定期接種の効果

 水痘は,ヘルペスウイルス科αヘルペスウイルス亜 科に属する水痘帯状庖疹ウイルス(varicella−zoster virus, vzv)の初感染の臨床像です。通常は,発熱と ともに全身に50〜500個の皮疹が出現します。皮疹の 数が50個未満は軽症,500個以上は重症と定義されて います。水痘の皮疹の特徴は,発赤,紅斑水庖膿庖,

痂疲などの種々の皮疹が同時に出現することです。水 痘の潜伏期間は通常14〜16日です。

 水痘では,上気道の分泌物と水庖に含まれている VZVにより周囲に感染します。水庖がすべて痂疲化 すれば登園や登校が許可されます。ワクチンを受けて いた子どもが水痘を発症すると,多くは軽症に経過し ます(修飾水痘)。修飾水痘の場合,水庖を形成しな いことがあります。米国では,修飾水痘の場合は,皮 疹が増加しなくなれば登園,登校を許可しています1)。

 一度感染した水痘ウイルスは脊髄後根などに潜伏感 染し,VZVに対する特異的細胞性免疫が低下すると 再活性化します。再活性化した臨床像が帯状庖疹です。

水痘ワクチンを受けていると,その後帯状庖疹を発症 するリスクは軽減されます。水痘ワクチンでは,自然 感染と比べ,体内で増殖するウイルス量が少ないため に潜伏するウイルス量が少ないと考えられています。

 水痘対策の基本は水痘ワクチン接種による予防で す。水痘ワクチンOka株は大阪大学の高橋先生が開 発した株で,WHOが認めた世界で唯一のワクチン株 です。水痘ワクチンは,水痘に罹ると重症化するリス クが高い,白血病患児やステロイド治療中のネフロー ゼ患児の感染を予防するために先ず開発されました。

その後健康な小児にも使われるようになり,現在では 広く健康な小児に接種されるようになりました。

 この水痘ワクチンは,2014年(平成26年)10月から 2回接種による定期接種となりました。接種対象者は 生後12か月から生後36か月に至るまでの間にある者で,

米国・カナダ

ドイツ

日本

MMR__閣灘圃____一_.__

   12〜15か月         4〜6歳

水痘 __」圏匿L______幽幽崖__

   12〜15か月          4〜6歳

MMR__■■」團團■L_____ご間

   1t〜14か月15〜23か月

水痘」圏四圏圏L____き塑間

   11〜14か月15〜23か月

MR ___劉團國團L______』■■L__

    12〜24か月

水痘

12〜36か月

 小学校就学前1年間

6〜12か月空けて2回接種 最小接種間隔は3か月間

図1 各国のMMR(MR)ワクチン/水痘ワクチン接   種基本スケジュール

この期間に2回接種すればいいのですが,標準的な接 種期間は,1回目の接種は生後12か月から生後15か月 に達するまでであり,2回目の接種は,1回目の接種 終了後6か月から12か月までの間隔をおく,となって います。また,最短の接種間隔は3か月以上です。

 米国やドイツでの水痘ワクチンの定期接種は,1回 接種で始まりました。米国では12〜15か月児を対象 に1996年から水痘ワクチンの定期接種を開始した結 果,徐々に水痘患者数は減少していきました。しかし,

2004年頃から水痘ワクチン接種後に水痘を発症する子 どもが増加したため,2006年から4〜6歳児を対象 に2回目の接種が始まりました(図1)。一方,2004 年に水痘ワクチンの定期接種を開始したドイッでは,

MMRワクチンと同様に11〜14か月児を対象に1回接 種で始まりました。しかし,ドイツでも1回接種では 水痘患者数の減少が顕著ではないために,2009年から 15〜23か月児を対象に2回目の接種が始まりました。

ドイッでの最小接種間隔は4〜6週間になっていま す。なお,ドイツでのMMRワクチン2回目の接種 時期は,水痘ワクチンと同様の15〜23か月です。

 水痘ワクチンは細胞性免疫不全者に世界で最初に接 種された生ワクチンです。このため本邦の水痘ワクチ

Presented by Medical*Online

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ンは,免疫原性(抗体を誘導する力)は弱い傾向にあ ります。しかし,水痘ワクチンを1回接種していると,

抗体が陽性にならなくても免疫記憶細胞は誘導されて います。免疫記憶細胞が成熟する期間である初回接種 後6か月以上の間隔を空けて2回目を接種すると,効 果的なブースター反応(追加免疫効果)を認めます2)。

 水痘ワクチンの免疫原性,および,今までの米国や ドイツでの1回接種の経験から,本邦では水痘ワクチ ンの定期接種は,最初から2回接種で始まりました。

2回接種を導入するに当たって問題となったのは,2 回目を米国方式で行うかドイッ方式で行うかです。

 ここで,2回目の接種時期の決定に役立ったのは,

三重県K市の保育園での水痘流行調査でした3)。水痘 ワクチンを接種していても,接種率が50〜70%程度で は保育園で水痘流行が起こり,ワクチンを受けていた 園児の40〜50%が,多くは軽症ですが水痘を発症しま した。この結果から,早期に水痘の流行規模を小さく するためには,2回目の水痘ワクチンの接種時期は,

米国方式よりもドイッ方式の方が効果的と判断され,

現在の接種スケジュールとなりました。日本は世界で 最初に,2回接種で水痘ワクチンの定期接種を開始し

た国になりました。

 国立感染症疫学情報センターの水痘報告数を見ます と,水痘ワクチンの定期接種開始後,今年の1〜4月 の水痘患者報告数はワクチン導入前の1/4となって います(図2)。また,毎年患者数が増加する4,5月 になっても今年(2015年)は,水痘報告数は増加して きていません。この結果は,1回接種で水痘ワクチン の定期接種化を始めた米国やドイツの水痘患者の推移 と明らかに異なっています。本邦の水痘ワクチン2回 目接種時期が疫学上適切であったこと,保護者の高い 認識で2回の水痘ワクチン接種率が高いことの結果だ

と推察しています。

 水痘ワクチンの2回目の標準的な接種期間は,1回

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       (IDWR第17巻第17号)

図2 定点あたりの水痘患者報告数

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小児保健研究

目の接種終了後6〜12か月になっています。2回目の 接種時期については,免疫記憶細胞が成熟するまでの 期間を考えると,水痘の流行が地域でなければ,初回 接種後12か月頃に2回目接種を勧めています。実際

番効果的な抗体反応は,初回接種後12〜23か月に接 種したときに認められます2)。

 水痘ワクチンの接種率が上昇し,水痘の流行規模が 小さくなると考慮すべき問題が2つあります。1つ目 は,ワクチンを受けていない子どもが,保育園での水 痘のoutbreakを経験しても水痘を発症しないことで す4)。ワクチン接種者が水痘を発症しても,自然感染

と比べ周囲への感染力が弱いためと考えられていま す。1歳を超えると水痘の顕性感染率は高いですので,

このような子どもは水痘ウイルスの曝露を受けなかっ たと考えられます。不顕性感染で免疫を獲得したと考 えるのは不適切です。成人が水痘に罹ると,小児より も重くなります。成人になって水痘にならないよう,

3歳を超えて水痘未罹患の子どもには水痘ワクチン接 種を勧めて下さい。

 2つ目の問題は,高齢者の帯状庖疹の問題です。水 痘ワクチン接種により水痘の流行規模が小さくなる

と,自然ブースターの機会が減少し,高齢者の帯状庖 疹の発症頻度が増加します。水痘ワクチンは抗体を誘 導・上昇させるだけではなく,帯状庖疹発症予防に関 係している特異的細胞性免疫も強化します。帯状庖疹 予防帯状庖疹後神経痛予防のための高齢者への水痘

ワクチン接種も大事な課題です。

         文   献

1) Pickering LK, et aL Varicella−zoster infections. In

 Red Book 29th edition, pp774−pp789,2012, edited by  Committee on Infectious Diseases, Arnerican Acade−

 my of Pediatris, Elk Groove Village, IL.

2)庵原俊昭.MR・水痘ワクチン.新型インフルエンザ  等新興・再興感染症研究事業「成人感染が問題とな   りつつある小児感染症への対応に関する研究⊥平成  21〜23年度総合研究報告書,pp39−pp49,2012年3月.

3)落合 仁,庵原俊昭.2度の水痘流行を経験した保  育園における水痘ワクチンの効果.日本小児科医会  会報 2014;46:159−162.

4)落合 仁,庵原俊昭.水痘ワクチン接種率が高い保  育園における水痘流行像の解析.日本小児科学会雑  誌2015;119:329.

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