東アジアの低出産・高齢化と人口移動−動向と認識−
鈴 木 透 ( 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 )
Ⅰ . 緒 言
本 稿 で は 日 本 ・ 韓 国 ・ 台 湾 ・ 中 国 の 東 ア ジ ア 四 ヵ 国 に お け る 出 生 力 低 下 、 人 口 高 齢 化 、 お よ び 国 際 人 口 移 動 に 関 す る マ ク ロ デ ー タ を 用 い て 動 向 を 把 握 す る 。 世 界 最 低 水 準 の 出 生 率 が 韓 国・台 湾 と い っ た 東 ア ジ ア 新 興 国 で 生 じ た の は 、2000 年 代 で 最 も 驚 く べ き 人 口 現 象 だ と 言 っ て よ い 。そ れ ほ ど 韓 国 の 1.08(2005 年 )、台 湾 の 0.895(2010 年 )と い う 合 計 出 生 率 は 驚 異 的 な も の で あ る 。急 激 な 出 生 力 低 下 の 直 接 的 な 帰 結 は 急 激 な 人 口 高 齢 化 で あ る 。 韓 国 ・ 台 湾 ・ 中 国 は 、 既 に 世 界 一 の 人 口 高 齢 化 水 準 を 示 す に 至 っ た 日 本 を 急 激 に 追 撃 し て お り 、 東 ア ジ ア が 世 界 で 最 も 高 齢 化 し た 地 域 に な る 可 能 性 が 高 い 。 東 ア ジ ア の 急 激 な 高 齢 化 は 、 中 国 で 言 う 「 未 富 先 老 」 の よ う な 高 齢 化 へ の 準 備 不 足 の 問 題 を 生 じ て い る 。
出 生 力 低 下 は 生 産 年 齢 人 口 の 減 少 を も た ら す が 、 そ う し た 人 口 学 的 影 響 が 現 れ る は る か 以 前 か ら 、 3 K 等 と 呼 ば れ る 一 部 業 界 で は 労 働 力 不 足 が 顕 在 化 し て い た 。 日 本 は 外 国 人 単 純 労 働 者 を 受 け 入 れ な い こ と を 原 則 と し 、 産 業 研 修 生 や 技 能 実 習 生 制 度 で 労 働 力 不 足 に 対 処 し て き た が 、 韓 国 ・ 台 湾 は い ち は や く 外 国 人 雇 用 許 可 制 度 を 発 足 さ せ 外 国 人 単 純 労 働 者 を 受 け 入 れ て い る 。 中 国 に は 厖 大 な 農 村 人 口 の プ ー ル が あ り 、 こ れ ま で 外 国 人 労 働 者 の 導 入 は 問 題 と さ れ な か っ た 。 韓 国 ・ 台 湾 で は 2000 年 以 後 国 際 結 婚 の 急 増 が あ り 、 中 国 や 東 南 ア ジ ア 人 女 性 と の 結 婚 が 顕 著 に 増 え た 。 こ れ は 農 村 部 の 低 所 得 男 子 の 結 婚 難 に 対 し 、 国 際 結 婚 ブ ロ ー カ ー が 商 機 を つ か も う と 奔 走 し た こ と に よ る 。 東 ア ジ ア で は 国 籍 に 関 す る 女 子 の 上 方 婚 が 明 確 で 、 中 国 は 他 の 三 国 に 対 し て 女 性 の 送 出 国 で あ る 。
都 市 化 は ど の 国 で も 普 遍 的 に 観 察 さ れ る 現 象 だ が 、 東 ア ジ ア で は 韓 国 の 都 市 化 が 際 立 っ て 急 激 だ っ た 。 台 湾 の 都 市 化 が 韓 国 ほ ど 圧 縮 的 で な か っ た の は 、 日 本 統 治 時 代 の 農 業 発 展 の 差 異 に ま で 遡 り 得 る 。 中 国 は 計 画 生 育 や 戸 口 制 度 を 用 い て 人 々 の 自 由 な 出 産 や 移 動 を 制 限 す る 政 策 を 採 っ て き た 。 し か し 経 済 成 長 の 鈍 化 に 伴 い 、 従 来 の 強 権 的 な 政 策 の 見 直 し を 迫 ら れ る 可 能 性 が あ る 。
本 稿 で は こ う し た 人 口 変 動 が も た ら し た 政 策 転 換 に 加 え 、 そ れ と 関 連 す る 新 聞 言 説 の 分 析 を 行 う 。特 に 有 力 紙 の 報 道 や 社 説・コ ラ ム は 、政 策 形 成 と 展 開 に 大 き な 影 響 を 与 え 得 る 。 韓 国 ・ 台 湾 で は 長 年 に わ た り 強 力 な 出 生 抑 制 策 が 採 用 さ れ て き た た め 、 出 生 促 進 の 必 要 性 を 認 識 さ せ 説 得 す る の に 時 間 が か か っ た 。 中 国 で は 一 人 っ 子 政 策 擁 護 派 と 緩 和 派 の 主 張 が 新 聞 に 掲 載 さ れ て い た が 、 こ れ は 政 権 内 で の 勢 力 争 い の 反 映 か も 知 れ な い 。 韓 国 で は 外 国 人 に 対 す る 開 放 性 を 是 と す る 「 政 治 的 に 正 し い 」 見 解 へ の 敵 意 が 見 ら れ 、 こ れ を 憂 慮 す る 言 説 も 多 い 。 ソ ウ ル か ら 世 宗 へ の 行 政 首 都 機 能 移 転 は 、 あ ま り に も 進 み す ぎ た 首 都 圏 集 中 へ の 対 応 だ が 、 そ の 効 果 が 評 価 可 能 に な る の は 2015 年 人 口 総 調 査 結 果 が 出 て か ら に な る だ ろ う 。
Ⅱ . 出 生 力 低 下 と 出 生 促 進 策 へ の 転 換
日 本 は 1989 年 の 合 計 出 生 率 が 1.57 で ヒ ノ エ ウ マ (1966 年 ) を 下 回 っ た こ と を 契 機 に 出 生 促 進 策 へ の 転 換 が 進 み 、1994 年 の エ ン ゼ ル プ ラ ン 以 後 の 一 連 の 政 策 に 結 実 し た 。 図 1に み る よ う に 、韓 国・台 湾 で も1990 年 代 末 に は 合 計 出 生 率 が 1.5 前 後 ま で 低 下 し た が 、 出 生 促 進 策 に 向 か う 動 き は 見 ら れ な か っ た 。韓 国 は IMF 経 済 危 機 へ の 対 処 に 忙 殺 さ れ て お り 、 台 湾 は 2000 年 の 合 計 出 生 率 が 1.68 ま で 回 復 し た こ と な ど か ら 、 出 生 促 進 の 必 要 性 が 強 く 意 識 さ れ る こ と は な か っ た よ う で あ る 。 両 国 で 出 生 促 進 策 へ の 転 換 が 真 剣 に 議 論 さ れ る よ う に な る の は 、21世 紀 に 入 り 合 計 出 生 率 が 1.3 を 下 回 る 極 低 出 生 力 (lowest-low fertility) が 出 現 し て 以 降 の こ と で あ る 。 結 局 、 韓 国 は 2006 年 に 第 一 次 低 出 産 ・ 高 齢 社 会 基 本 計 画 ( セ ロ マ ジ ・ プ ラ ン ) を 採 択 し 、 台 湾 は 2008 年 に 出 生 促 進 策 を 含 む 『 人 口 政 策 白 皮 書 』 を 公 表 す る に 至 っ た 。
1 . 韓 国 に お け る 出 生 促 進 策 へ の 転 換
韓 国 は 人 口 密 度 が 高 い こ と も あ り 、 従 来 か ら 過 剰 人 口 感 が 強 く 、 朴 正 煕 か ら 全 斗 煥 に 至 る 軍 事 政 権 時 代 の 強 力 な 家 族 計 画 キ ャ ン ペ ー ン は 人 口 爆 発 へ の 恐 怖 感 を 盛 ん に 煽 っ て い た 。 国 民 の 意 識 に は 過 剰 人 口 感 と 出 生 抑 制 の 必 要 性 が 深 く 刷 り 込 ま れ た 状 態 で 、 出 生 促 進 策 を 採 用 す る た め に は こ の 軍 事 政 権 時 代 の 名 残 を 精 算 す る 必 要 が あ っ た 。
『 週 刊 東 亜 』 の 特 集 記 事 「 も っ と 産 む か 否 か … 混 迷 す る 家 族 計 画 」(2001-08-02) は 、 出 生 促 進 策 の 推 進 派 と し て 金 勝 權 ( 韓 国 保 健 社 会 研 究 院 ) を 、 反 対 派 と し て 李 時 白 ( 前 大 韓 家 族 計 画 協 会 会 長 ) を 対 峙 さ せ た 。 李 時 白 は 「 人 口 密 度 は パ レ ス チ ナ 、 バ ン グ ラ デ シ ュ に 続 き 世 界 3 位 で あ る わ が 国 が 、 今 か ら 低 出 産 問 題 を 心 配 す る の は 時 期 尚 早 だ 」、 と 出 生 促 進 策 の 導 入 に 反 対 し た 。さ ら に「2021 年 以 後 国 内 人 口 が 減 少 す る と い う 政 府 の 将 来 人 口 推 計 は 、 単 純 な 数 学 的 計 算 で 根 拠 が 不 足 だ 」 と し 、 出 生 率 が 置 換 水 準 を 下 回 り 続 け れ ば 人 口 が 減 少 す る と い う 人 口 学 の 常 識 を 受 け 入 れ な い 姿 勢 を 示 し た 。
2003 年 に 金 大 中 政 権 か ら 交 替 し た 盧 武 鉉 政 権 は 出 生 促 進 策 の 必 要 性 を 認 め 、2006 年 に 第 一 次 低 出 産 ・ 高 齢 社 会 基 本 計 画 を 採 択 し た が 、 こ の 頃 に な っ て も 出 生 促 進 反 対 派 の 主 張 は 続 い て い た 。 も と 経 済 部 総 理 で ソ ウ ル 大 名 誉 教 授 の 趙 淳 は ハ ン ギ ョ レ 新 聞 の コ ラ ム
(2006-06-12) で 、「 世 界 的 に 稠 密 な 人 口 密 度 を 持 つ 国 で 、 こ れ か ら 雇 用 は さ ら に 悪 化 す る と 予 想 さ れ る の で あ れ ば 、 単 線 的 な 産 児 促 進 政 策 は 正 し い 人 口 政 策 に な ら な い だ ろ う 」 と 出 生 促 進 策 に 反 対 し た 。조 이 여 울イ ル ダ 編 集 長 は 、「 こ の よ う な 持 続 可 能 性 の パ ラ ダ イ ム
0.5 1 1.5 2 2.5 3
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
図1 東アジアの合計出生率
日本 韓国 台湾 1.3
で 見 た と き 、 資 源 の 消 費 を 最 小 限 に す る こ と が 肝 心 で 、 人 口 減 少 は ま た と な く 良 い 機 会 に 違 い な い 」「 低 出 産 現 象 は 、人 口 減 少 と い う 次 元 で 肯 定 的 な 変 化 の 動 力 と 受 け 入 れ る べ き な の だ 」 と 人 口 減 少 を 肯 定 的 に 評 価 し た 。
韓 国 の 出 生 促 進 策 導 入 時 に 特 徴 的 な こ と は 、 適 正 人 口 の 概 念 が 説 得 に 用 い ら れ た こ と で あ る 。 先 の 『 週 刊 東 亜 』 の 記 事 (2001-08-02) は 、「 適 正 人 口 規 模 が 把 握 さ れ な い 限 り 、 出 産 攻 防 は 正 解 が な い 水 か け 論 に 過 ぎ な い 」 と 主 張 し て い た 。 政 府 は こ れ を 受 け て 、 韓 国 人 口 学 会 に 韓 国 の 適 正 人 口 の 選 定 を 依 頼 し た 。 韓 国 人 口 学 会 は 2005 年 6 月 の 報 告 書 で 、 韓 国 の 適 正 人 口 は 4600〜5100 万 人 だ と 報 告 し た 。2005 年 の 韓 国 の 総 人 口 は 4813.8 万 人 で 、 こ の 適 正 人 口 の 中 間 付 近 に あ っ た 。 し た が っ て 適 正 人 口 の 設 定 は 、 現 状 肯 定 的 な も の だ っ た と 言 え る 。
と も あ れ 出 生 促 進 策 は 導 入 さ れ 、 低 出 産 ・ 高 齢 社 会 基 本 計 画 も 第 一 次 (2006〜10 年 )、
第 二 次(2011〜15年 )を 経 て 2016 年 か ら は 第 三 次 期 間 に 入 る こ と に な る 。し か し 図 1 に み る よ う に 、 こ の 2006 年 以 後 の 合 計 出 生 率 は 期 待 ほ ど 回 復 せ ず 、 極 低 出 生 力 と 定 義 さ れ る 1.3 の 水 準 を 抜 け 出 せ ず に い る 。 そ の よ う な 現 状 か ら 、 早 く も 出 生 促 進 策 は 失 敗 だ っ た と す る 評 価 が 現 れ て い る 。 中 央 日 報 の 社 説 (2014-09-25) は 、「 天 文 学 的 な 財 政 を 使 っ て も 効 果 が 少 な い の に 、 出 産 奨 励 に オ ー ル イ ン す る 理 由 は な い 」 と 出 生 促 進 策 に 見 切 り を つ け 、「 海 外 か ら 若 い 高 学 歴 の 外 国 人 を 呼 び 込 め る よ う 、移 民 制 度 を 手 入 れ し な け れ ば な ら な い 」 と 移 民 政 策 へ の 重 点 シ フ ト を 提 唱 し た 。 朝 鮮 日 報 の 崔 承 賢 政 治 部 次 長 の コ ラ ム
(2015-05-24) も 同 様 に 、「 昨 年 1 年 間 で 政 府 の 少 子 化 関 連 予 算 は 14 兆 ウ ォ ン ( 約 1 兆 5000 億 円 )に 達 す る と い う 。し か し 、国 民 が 実 感 で き る 政 策 は な か な か な い 」と 出 生 促 進 策 の 非 効 率 性 を 示 唆 し 、「 与 野 党 か ら は 韓 国 も 本 格 的 な 移 民 受 け 入 れ 政 策 を 検 討 す べ き で は な い か と い う 声 も 上 が っ て い る 」 と 紹 介 し た 。
韓 国 で は 日 本 と の 比 較 が 常 に 強 く 意 識 さ れ て い る が 、 フ ラ ン ス や ス ウ ェ ー デ ン の よ う な 出 生 促 進 の 成 功 例 に 対 し 、 日 本 は 失 敗 例 と す る 見 方 が 典 型 的 で あ る 。 実 際 、 東 亜 日 報 の 特 集 記 事 (2005-07-01) は 、「10 年 前 か ら 低 出 産 対 策 を た て た が 、 職 場 文 化 が 韓 国 と 似 て お り 、今 年 再 び 史 上 最 低 の 出 産 率 を 更 新 し た 日 本 を 反 面 教 師 に す べ き と い う 指 摘 も 出 て い る 」 と し て 、 賢 明 に 行 動 す れ ば 日 本 の 失 敗 を 回 避 で き る と い う ニ ュ ア ン ス を 出 し て い た 。 し か し 4年 後 の 朝 鮮 日 報 の 記 事(2009-05-06)で は 、「 日 本 が 少 子 化 対 策 に 失 敗 し た 国 な ら ば 、 韓 国 は 惨 敗 し た 国 と い え る 」 と し 、 早 く も 韓 国 の 出 生 促 進 策 は 失 敗 に 終 わ っ た と い う 判 定 を 下 し て い る 。
2012 年 末 に 朴 槿 惠( セ ヌ リ 党 )と 文 在 寅( 新 政 治 民 主 連 合 )が 大 統 領 選 挙 戦 を 繰 り 広 げ 、 各 種 論 点 に つ い て テ レ ビ 討 論 を 行 っ た 。低 出 産・高 齢 化 対 策 に 関 し て は 、文 在 寅 候 補 が 12 歳 ま で の 全 児 童 を 対 象 と す る 児 童 手 当 の 導 入 を 提 唱 し た 。 こ れ に 対 し 朴 槿 惠 候 補 ( 現 大 統 領 )は 、「 こ れ は 2009 年 の 日 本 民 主 党 の 総 選 公 約 だ っ た 。そ の 後 に ど う な っ た か と 言 え ば 、 昨 年 7月 日 本 総 理 が 国 民 に 謝 罪 し て 金 額 を 半 減 ら し て 結 局 公 約 を 廃 止 し た 」 と し 、 児 童 手 当 は 日 本 民 主 党 の 失 敗 の 轍 を 踏 む も の だ と し て 反 対 し た 。(News1 2012-12-16)
中 国 が 先 進 国 水 準 に 達 す る 前 に 高 齢 化 を 迎 え る 「 未 富 先 老 」 を 憂 慮 す る よ う に 、 韓 国 に も 日 本 を 凌 駕 す る 前 に 高 齢 化 に 足 を と ら れ る 相 対 的 剥 奪 感 が あ る 。 朝 鮮 日 報 の 李 志 勲 記 者 は コ ラ ム で 「 問 題 は 韓 国 が 日 本 に 追 い 付 く 前 に 、 日 本 が 20 年 前 に 経 験 し た 衰 退 の 兆 候 が 表 れ て い る と い う 点 だ 」 と し 、「 日 本 は 非 常 に 巨 大 な 富 と 技 術 の 蓄 積 が あ っ た た め 、20 年
に わ た る 長 期 の 不 況 に も 耐 え る こ と が で き た 。 し か し 韓 国 は 蓄 積 が 小 さ い だ け で な く 、 高 い 回 転 率 で 経 済 が 持 ち こ た え て い る 国 だ 」 と 憂 慮 し た 。
2 . 台 湾 に お け る 出 生 促 進 策 へ の 転 換
台 湾 は 人 口 密 度 が 高 く 、UNPD(2015)に よ る と 2015 年 時 点 で 660.3 人 / ㎢ で 、 日 本
(347.2 人 ) や 韓 国 (517.3 人 ) を 上 回 る 。 そ れ だ け に 出 生 促 進 策 へ の 抵 抗 感 が 強 く 、 中 国 か ら の 人 口 流 入 に 対 す る 懸 念 も 加 わ り 、 出 生 促 進 策 を 含 む 『 人 口 政 策 白 皮 書 』 が 確 定 し た の は 2008 年 3月 だ っ た 。 当 初 、『 人 口 政 策 白 皮 書 』 は 2005 年 3月 ま で に ま と め る 予 定 だ っ た が 、 草 案 が ま と ま っ た の は 同 年 の 6月 で 、 内 容 に は 出 産 奨 励 、 保 育 サ ー ビ ス の 改 善 等 が 含 ま れ て い た 。こ の 時 、「 第 三 子 以 降 に 成 人 ま で 月3000 元 を 支 給 、第 四 子 以 降 は 月6000 元 を 支 給 」「 減 税 に よ り 出 生 を 促 進 す る た め 、婚 外 出 生 子 に も 減 税 」と い っ た 内 容 が 含 ま れ て い る と の 報 道 が あ り 、 内 政 部 は こ れ を 否 定 し た ( 内 政 部 発 言 人 室 2005-06-14)。
政 府 は 改 め て 2006 年 初 頭 に『 人 口 政 策 白 皮 書 』を 公 表 す る と 発 表 し 、「 人 口 増 加 の 鈍 化 が 国 力 に 与 え る 影 響 が 論 点 の ひ と つ だ 」 と し て 出 生 促 進 策 へ の 転 換 を 示 唆 し た 。 こ れ に 対 し 生 態 学 者 と 女 権 運 動 家 が 反 対 を 表 明 し 、 台 湾 の よ う な 人 口 過 密 な 国 で 出 生 促 進 策 を 導 入 す る の は 正 し く な い と 主 張 し た ( 聯 合 新 聞 網 2005-12-26)。2006 年 に 入 っ て も 白 皮 書 の 草 案 は ま と ま ら ず 、3 月 の 行 政 院 人 口 政 策 網 領 及 人 口 政 策 白 皮 書 研 修 小 組 の 会 議 に は 財 団 法 人 婦 權 基 金 會 研 修 小 組 が 乗 り 込 ん で 来 て 、対 案 を 提 示 し た 。対 案 で は「 多 生 を 追 求 せ ず 、 年 齢 ・ 性 別 ・ 階 級 ・ 族 群 別 人 口 と 自 然 環 境 と の 調 和 を 目 指 し 、 持 続 可 能 な 出 生 と 死 亡 の バ ラ ン ス を 追 求 す る 」 と さ れ て い た 。
2007 年 に な っ て も ま だ 白 皮 書 は 公 表 さ れ ず 、政 府 は 同 年 6月 末 に 公 表 予 定 だ と し た( 中 廣 新 聞 網 2007-06-05)。 白 書 で は 毎 月 二 千 元 ( 第 三 子 以 上 は 五 千 元 ) の 児 童 手 当 が 提 案 さ れ て い る と 報 道 さ れ た( 中 廣 新 聞 網 2007-06-05)。7 月 に 入 る と 、新 た な 公 表 期 日 は 2007 年 末 だ と 発 表 さ れ た 。 内 政 部 は 、 白 皮 書 は 「 少 子 化 篇 」「 高 齢 化 篇 」「 移 民 篇 」 の 三 部 構 成 で 、 各 篇 ご と に 三 回 の 公 聴 会 を 開 い て 民 間 の 意 見 を 聞 く 予 定 だ と し た 。 移 民 篇 の 「 中 國 配 偶 配 額 限 制 」 部 分 は 削 除 す る 予 定 だ が 、 中 国 人 妻 へ の 支 給 額 の 議 論 は ま だ 行 っ て い な い こ と な ど が 報 道 さ れ 、 こ の 時 点 で は 大 陸 花 嫁 を 含 む 「 移 民 篇 」 が 紛 糾 の も と に な っ て い た こ と が わ か る( 中 央 通 訊 社 2007-07-26)。台 湾 で は 中 国 と の 両 岸 関 係 が 圧 倒 的 に 重 要 な 政 治 的 論 点 で あ り 、 低 出 産 ・ 高 齢 化 を 含 む そ れ 以 外 の 論 点 は 等 閑 視 さ れ る 傾 向 が あ る 。
3 . 中 国 に お け る 出 生 抑 制 策 の 緩 和
中 国 の 出 生 力 が 置 換 水 準 を 下 回 っ て い る こ と は 間 違 い な い が 、 そ の 水 準 は 明 確 に わ か っ て い な い 。 セ ン サ ス に よ る 合 計 出 生 率 は 、 表 1に み る よ う に 、2000 年 時 点 で す で に 1.3を 下 回 る 極 低 出 生 力 水 準 を 示 し た 。 し か し 国 内
外 の 多 く の 人 口 学 者 が こ の 水 準 に 疑 義 を 呈 し 、 国 連 人 口 部 の 最 近 の 推 計 に よ る と 、 中 国 の 合 計 出 生 率 は 2000〜05年 の 1.50 か ら ゆ っ く り と 回 復 中 と さ れ る 。一 方 で Guo&Gu(2014) は 、1970 年 代 前 半 コ ー ホ ー ト の 完 結 出 生 率 は 1.5 人 程 度 と 考 え ら れ 、2010 年 の 合 計 出 生 率 が 1.19 で も 不 自 然 で は な い と 主 張 し て い る 。そ の 場 合 は 韓 国・台 湾 と 並 ぶ 世 界 最 低 水 準
表1. 中国の合計出生率
公表値 国連人口部推計値
2000年人口普査 1.22 2000-05年 1.50 2005年1%標本調査 1.34 2005-10年 1.53 2010年人口普査 1.19 2010-15年 1.55 Guo&Gu(204), UNPD(2015)
の 出 生 率 と い う こ と に な り 、 高 齢 化 で 日 本 を 追 い 越 す 可 能 性 が あ る 。 国 連 人 口 部 の 推 定 が 妥 当 だ と し て も 、65歳 以 上 割 合 は 2040 年 に 24%を 超 え 、2010 年 の 日 本(23.0%)を 上 回 る 。高 齢 化 の 影 響 は 既 に 現 れ て お り 、従 属 人 口 指 数((0〜14 歳 +65歳 以 上 )/15〜64 歳 ) は 2015 年 の 36.6%か ら 2020 年 に は 41.3%に 上 昇 し 、既 に 人 口 ボ ー ナ ス( 従 属 指 数 が 低 下 し 貯 蓄 に 有 利 な 状 況 が 出 現 す る こ と )は 終 了 し て い る こ と を 示 す 。生 産 年 齢 人 口(15〜64 歳 ) は 、2015 年 の 約 10億 人 か ら 、2020 年 に は 9.93 億 人 に 減 少 す る (UNPD 2015)。
2015 年 は 中 国 経 済 の 減 速 が 注 目 さ れ た が 、賃 金 上 昇 や 為 替 レ ー ト と 並 ん で こ う し た 人 口 変 動 も 原 因 の ひ と つ に 上 げ ら れ る 。 一 人 っ 子 政 策 が 功 を 奏 し て 出 生 率 が 抑 制 さ れ れ ば 、 そ れ が 人 口 減 少 と 高 齢 化 を も た ら す の は 自 明 だ っ た は ず で あ る 。 し か し 1979 年 の 導 入 以 後 30年 以 上 に わ た っ て 維 持 さ れ た 一 人 っ 子 政 策 に は 巨 大 な 慣 性 が あ り 、強 い 過 剰 人 口 感 と 相 ま っ て 軌 道 修 正 は 容 易 で な か っ た 。
一 人 っ 子 政 策 の 緩 和 を 要 求 す る 声 は 早 く か ら あ っ た と 思 わ れ る が 、 中 国 の 主 要 紙 に 掲 載 さ れ た 論 説 と し て は 、 プ リ ン ス ト ン 大 学 の 鄒 至 庄 教 授 ( 第 一 財 経 日 報 2009-06-09)、 清 華 大 学 国 情 研 究 セ ン タ ー の 胡 鞍 鋼 主 任 ( 経 済 参 考 報 2009-11-26)、 中 国 共 産 党 中 央 党 校 の 周 天 勇 教 授 ( 経 済 参 考 報 2010-07-16) ら の 寄 稿 が あ る 。
一 方 、 政 策 の 実 施 主 体 で あ る 計 画 生 育 委 員 会 は 、 一 人 っ 子 政 策 の 緩 和 に 反 対 し て き た 。 2008 年 3月 に は 、国 家 人 口 計 画 生 育 委 員 会 は「 一 人 っ 子 政 策 の 廃 止 が 検 討 さ れ て い る 」と の 報 道 に つ い て 、 事 実 と 相 い れ な い と し て 否 定 し た ( ロ イ タ ー 2008-03-03)。2010 年 2 月 に は 、同 委 員 会 の 趙 白 鴿 副 主 任 が 、「 十 二 五(2011 年 〜15年 の 5ヵ 年 計 画 )期 間 中 は 現 行 の 一 人 っ 子 政 策 を 変 更 せ ず 、 少 な く と も 今 後 5 年 間 は 続 行 す る 」 と 明 言 し た (Record China 2010-02-06)。 現 実 に は 2013 年 11月 に 単 独 二 孩 ( 夫 婦 の 一 方 が 一 人 っ 子 な ら 第 二 子 を 容 認 す る ) の 方 針 が 決 定 さ れ た た め 、 こ の 宣 言 は 守 ら れ な か っ た こ と に な る 。
2011 年 に 入 っ て も 、 国 家 人 口 和 計 画 生 育 委 員 会 の 李 斌 主 任 は 、「 中 国 は 今 後 も 現 行 の 一 人 っ 子 政 策 を 続 け 、 出 生 率 を 低 く 抑 え 、 人 口 の 質 の 向 上 に 力 を 入 れ て い く 」 と の 今 後 の 方 針 を 示 し て い た(Record China 2011-07-13)。と こ ろ が 同 年 11月 の 共 産 党 第 18 回 全 国 代 表 大 会 報 告 で は 、「 人 口 の 長 期 的 で バ ラ ン ス の と れ た 伸 び を 促 進 す る 」と い う 文 言 が 含 ま れ 、 一 人 っ 子 政 策 の 緩 和 を 暗 示 し た ( 毎 日 中 国 経 済 2011-11-13)。 こ れ に 対 し 国 家 人 口 和 計 画 生 育 委 員 会 の 王 侠 主 任 は 、「 長 期 に わ た り 、一 人 っ 子 政 策 を 基 本 国 策 と し て 堅 持 し 、合 計 出 生 率 の 制 御 を 主 要 任 務 と す る こ と が 必 須 で あ る 」と 主 張 し た(Record China 2012-01-16)。
こ れ は 一 人 っ 子 政 策 の 堅 持 ・ 緩 和 を め ぐ っ て 政 権 中 枢 で 権 力 闘 争 が あ っ た こ と を う か が わ せ 、2013 年 3月 に 国 家 人 口 和 計 画 生 育 委 員 会 と 衛 生 部 が 合 併 し て 国 家 衛 生 和 計 画 生 育 委 員 会 に 改 編 さ れ た の も そ の 現 れ と 考 え ら れ る 。
結 局 、 一 人 っ 子 政 策 緩 和 派 が 勝 利 し 、2013 年 11 月 に は 夫 婦 の 一 方 が 一 人 っ 子 な ら 第 二 子 を 容 認 す る 「 単 独 二 孩 ( ま た は 単 独 二 胎 )」 方 針 が 決 定 さ れ た 。 そ し て 浙 江 省 (2014 年 1月 ) を 皮 切 り に 、3月 に は 北 京 市 、 上 海 市 、 広 東 省 な ど で も 実 施 に 移 さ れ 、2014 年 末 ま で に 新 疆 ウ イ グ ル ・ 西 蔵 自 治 区 を 除 く 地 域 で 実 施 さ れ た 。 こ の 政 策 転 換 に よ っ て 、 毎 年 の 出 生 数 は 200 万 人 程 度 増 加 す る も の と 予 想 さ れ て い た ( 東 亜 日 報 2013-11-18; 国 民 日 報 2015-01-13)。 し か し 実 際 の 効 果 は 、 期 待 し た ほ ど の も の で は な か っ た 。 国 家 衛 生 ・ 計 画 生 育 委 員 会 は 、2015 年 7月 の 記 者 会 見 で 、「 第 二 子 の 出 産 申 請 を し た 夫 婦 が 5 月 ま で の 累 計 で 145 万 組 に 達 し 、こ の う ち 139 万 組 の 申 請 手 続 き が 完 了 し た 」と 発 表 し た( マ カ オ 新
聞 2015-07-11)。申 請 者 の う ち 実 際 に 2015 年 に 第 二 子 を 生 む 夫 婦 は 100 万 組 に 満 た な い だ ろ う か ら 、 2015 年 の 出 生 数 も「 単 独 二 孩 」が な か っ た 場 合 に 比 べ 100万 人 以 下 の 増 加 に と ど ま る こ と に な る 。 実 際 、 2014 年 の 出 生 数 は 1687 万 人 で 、前 年 比 47万 人 の 増 加 に と ど ま っ た 。 2015 年 10 月 の 第 18 期 共 産 党 中 央 委 員 会 第 5次 全 体 会 議(5 中 全 会 ) で 、 無 条 件 で 第 二 子 を 許 容 す る 方 針 が 決 定 さ れ た の は 、 単 独 二 孩 の 効 果 が 思 っ た ほ ど で な か っ た た め と 思 わ れ る 。 こ の 政 策 の 影 響 に つ い て は 、 人 民 大 学 の 翟 振 武 教 授 が「按 低 方 案 测 算 , 2017 年 新 生 儿 总 量 为 2023 万 人 ,每 年 出 生 人 数 在 400 万 左 右)( 低 め に 見 積 も っ て も 、2017 年 の 新 生 児 数 は 2023 万 人 と な り 、 毎 年 の 出 生 数 は 400 万 人 ほ ど 増 え る )」「政 策 变 化 对 妇 幼 保 健 的 影 响 主 要 表 现 为 , 出 生 人 数 的 增 加 , 增 加 比 例 为 25%( 政 策 の 変 更 に 伴 う 婦 幼 保 健 へ の 主 な 影 響 と し て 、出 生 数 は 25%増 加 す る )」
と 述 べ た ( 人 民 日报 2015-11-27)。
翟 振 武の 予 測 通 り 出 生 数 が 25%
増 加 し 、 そ れ が 年 齢 に ほ ぼ 中 立 な 年 齢 別 出 生 率 の 上 昇 に よ っ て 起 き る と す れ ば 、合 計 出 生 率 も ほ ぼ 25%増 加 す る だ ろ う 。 一 人 っ 子 政 策 が 緩 和 さ れ な か っ た 場 合 の 合 計 出 生 率 が UNDP(2015)の 中 位 推 計 に 近 い と す れ ば 、図 2に み る よ う に 緩 和 後 の 合 計 出 生 率 は 高 位 推 計 に 近 い 水 準 に な る だ ろ う 。 図 3 に 示 し た よ う に 、 中 位 推 計 で は 中 国 の 65歳 以 上 割 合( 高 齢 化 率 ) は 2055 年 に 30%を 超 え る と さ れ る が 、 高 位 推 計 に 近 い 水 準 で 推 移 す る の で あ れ ば ピ ー ク で も 28.4%(2060 年 )に と ど ま る こ と に な る 。ま た 出 生 数 が 増 え れ ば 当 初 は 年 少 人 口 の み を 増
1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4
2015-2020 2020-2025 2025-2030 2030-2035 2035-2040 2040-2045 2045-2050 2050-2055 2055-2060 2060-2065 2065-2070 2070-2075 2075-2080 2080-2085 2085-2090 2090-2095 2095-2100
図2. 国連人口部によるTFRの仮定値
中位 中位×1.25 高位 低位
0 10 20 30 40 50
2015 2030 2045 2060 2075 2090
(%)
図3. 中国の65歳以上割合(国連人口部2015)
中位 高位 低位
0 30 60 90 120
2015 2030 2045 2060 2075 2090
(%)
図4. 中国の従属指数(国連人口部2015)
中位 高位 低位
や す た め 、 図 4 の よ う に 従 属 指 数 は 2055 年 ま で は む し ろ 上 昇 す る 。 し か し 高 位 推 計 に 近 い 水 準 で 推 移 す る の で あ れ ば 、 従 属 指 数 は ピ ー ク 時 で も 85.4%(2060 年 ) で 、2070 年 以 後 は 80%未 満 で 推 移 す る こ と に な る 。
こ の よ う に 出 生 率 の 上 昇 は 長 期 的 に は 大 き な 違 い を も た ら す が 、 好 ま し い 影 響 が 顕 著 に な る の は 数 十 年 先 で あ る 。 ま た 「 単 独 二 孩 」 政 策 の 効 果 が 期 待 ほ ど で は な か っ た 点 か ら 考 え て 、翟 振 武が 主 張 す る ほ ど の 持 続 的 効 果 が あ る か も 疑 問 で あ る 。 既 に 2015 年 の 出 生 数 は 増 え る ど こ ろ か 、 前 年 よ り 32万 人 減 少 し た と い う 報 道 も あ る ( 一 財 网 2016-01-19)。
そ も そ も 近 年 の 中 国 の 合 計 出 生 率 が 置 換 水 準 を 大 幅 に 下 回 っ て い る の は 確 実 で 、 他 の 国 で あ れ ば 出 生 促 進 策 に 転 換 し て も お か し く な い 水 準 で あ る 。 そ れ が で き な い の は 、 政 策 立 案 者 の 間 で 根 強 い 人 口 過 剰 感 と 、 毛 沢 東 時 代 の 失 政 ( 人 口 抑 制 を 主 張 す る 馬 寅 初 が イ デ オ ロ ギ ー 闘 争 で 失 脚 し た こ と ) へ の 悔 恨 の た め だ ろ う 。 既 に 出 生 促 進 策 の 必 要 性 を 主 張 す る 専 門 家 も お り 、た と え ば 国 家 発 改 委 社 会 発 展 研 究 所 の 楊 宜 勇 所 長 は 、「 自 由 生 育 之 後 的 下 一 個 階 段 就 是 獎 勵 生 育 , 如 果 自 由 生 育 大 家 還 是 不 生 , 中 國 人 口 少 於 10 億 人 , 就 要 獎 勵 生 育 了 ( 出 生 自 由 化 の 次 の 段 階 は 出 生 の 促 進 で 、 も し 自 由 化 し て も 出 生 数 が 増 え ず 、 中 国 人 口 が 10 億 人 を 下 回 れ ば 、 出 生 促 進 が 必 要 と な る だ ろ う )」 と 述 べ た ( 中 國 經 濟 週 刊 2015-11-10)。 し か し 国 連 人 口 部 の 中 位 推 計 で は 、2100 年 ま で 中 国 人 口 が 10 億 人 を 下 回 る こ と は な い 。楊 宜 勇 の 言 う 条 件 下 で は 、21世 紀 中 に 中 国 が 出 生 促 進 に 踏 み 切 る 可 能 性 は ご く 低 い こ と に な る 。
Ⅲ . 人 口 高 齢 化 の 衝 撃
極 端 に 低 い 出 生 率 の 直 接 的 な 結 果 は 、極 端 に 急 激 な 人 口 高 齢 化 で あ る 。 図 5に は UNPD(2015)の 中 位 推 計 に よ る 従 属 人 口 指 数 =(15 歳 未 満 人 口
+65 歳 以 上 人 口 ) / (15〜64 歳 人 口 ) を 示 し た 。 従 属 人 口 指 数 が 低 下 す れ ば 、 純 消 費 者 に 対 し 純 生 産 者 が 相 対 的 に 多 く な り 、 貯 蓄 ・ 投 資 が 促 進 さ れ 経 済 発 展 に 有 利 な 状 況 に な る 。 こ れ が 人 口 ボ ー ナ ス (demographic bonus) と 呼 ば れ る 状 態 だ が 、 日 本 の 人 口 ボ ー ナ ス は1990年 頃 終 了 し 、 以 後 は 従 属 人 口 指 数 の 上 昇 が 続 い て い る 。 韓 国 ・ 台 湾 ・ 中 国 の 人 口 ボ ー ナ ス は 2010〜15 年 ま で 続 い た が 、 今 後 は 日 本 と 同 様 に 従 属 人 口 指 数 が 上 昇 に 転 じ る と 予 想 さ れ る 。 特 に 極 端 に 低 い 出 生 率 を 示 す 韓 国 ・ 台 湾 の 高 齢 化 は 急 激 で 、 従 属 人 口 指 数 は 2060 年 ま で に 日 本 を 追 い 越 す と 予 想 さ れ て い る 。
0 30 60 90 120
1950 1970 1990 2010 2030 2050 2070 2090
図5. 東アジアの従属人口指数(国連人口部2015)
日本 韓国 台湾 中国
1 . 韓 国 の 高 齢 者 の 状 況
図 6 は 2010 年 の 男 子 労 働 力 率 を 比 較 し た も の で あ る 。 日 本 で は 60 歳 を 超 え て 初 め て 労 働 力 率 が 低 下 し 始 め る の に 対 し 、 韓 国 ・ 台 湾 ・ 中 国 は 50 歳 代 か ら 低 下 を 開 始 し 、 企 業 等 で 早 期 退 職 へ の 圧 力 が あ る こ と が 窺 わ れ る 。 台 湾 の 高 齢 男 子 の 労 働 力 率 は 低 い が 、 中 国 ・ 韓 国 は 相 対 的 に 高 い 。 特 に 70 歳 以 上 で は 、 日 本 の 22.5%に 対 し 韓 国 は 27.1%、 中 国 は 25.6%と 日 本 を 上 回 っ て い る 。 こ れ は 年 金 制 度 が 充 分 に 発 達 し て お ら ず 、70 歳 を 超 え て も 勤 労 所 得 へ の 依 存 度 が 高 い た め と 考 え ら れ る 。 一 方 、 台 湾 の 高 齢 者 の 低 い 労 働 力 率 は 、 家 族 か ら の 支 援 が 手 厚 い た め に 就 労 を 続 け る 必 要 が な い も の と 解 釈 で き る 。実 際 、NTA(National Transfer Account; 国 民 移 転 計 算 ) 枠 組 を 用 い た 分 析 に よ る と 、 高 齢 者 の 勤 労 所 得 以 外 の 収 入 源 で 私 的 移 転 が 公 的 移 転 と 資 産 運 用 を 上 回 り 最 大 の 収 入 源 と な っ て い る の は 、 ア ジ ア ・ ヨ ー ロ ッ パ ・ 南 北 ア メ リ カ 20ヵ 国 の う ち 台 湾 だ け で あ る(Lee, et al. 2012)。こ の よ う に 台 湾 で 家 族 支 援 が 比 較 的 手 厚 い の は 、 伝 統 的 価 値 観 が 比 較 的 よ く 保 存 さ れ て い る 上 に 、 都 市 化 が 韓 国 ほ ど 急 激 で は な く 、 高 齢 者 の 独 居 割 合 が 低 く 子 と の 同 居 割 合 が 高 い こ と も 関 係 が あ る (Suzuki 2014)。
表 2 に 示 し た 65 歳 以 上 の 貧 困 率 と 自 殺 率 に 現 れ て い る よ う に 、 韓 国 の 高 齢 者 の 福 祉 は 危 機 的 状 況 に あ る 。 中 央 日 報 の 社 説 (2005-05-19) は 、 OECD30 ヵ 国 中 で 韓 国 の 高 齢 者 の 自 殺 率 が 1 位(2003 年 に 10 万 人 当 た り 71人 )だ っ た こ と の 衝 撃 を 、「 こ の 数 値 は 10万 人 当 り 10人 前 後 で あ る 米 国 や 豪 州 な ど は 言 う ま で も な く 、 自 殺 率 が 比 較 的 高 い 日 本 (10 万 人 当 り 32 人 ) に 比 べ て も 2倍 以 上 高 い 。 恥 ず か し い 現 実 で 、 危 機 に 置 か れ た 老 人 た ち の 現 住 所 で も あ る 」 と 表 現 し た 。 キ ム ・ ド ン ホ 経 済 選 任 記 者 の コ ラ ム ( 中 央 日 報 日 本 語 版 2005-02-06) は 、 高 齢 者 の 高 い 労 働 力 率 を 指 摘 し 、「 最 後 ま で あ く せ く 働 か な け れ ば い け な い 韓 国 人 の 老 後 と ふ と ん の 下 や タ ン ス の 中 に お 金 を 置 い て い る 日 本 人 の 老 後 、 ど ち ら が よ い の だ ろ う か 」 と 悲 憤 慷 慨 し た 。 こ の よ う に 高 齢 者 福 祉 は 韓 国 で は 喫 緊 の 深 刻 な 問 題 だ が 、 左 右 の 理 念 対 立 の た め 、 韓 国 の 社 会 保 障 は 委 縮 し た 社 会 民 主 主 義 と い う 均 衡 点 か ら 抜 け 出 せ ず に い る ( 大 西 2014)。
0 25 50 75 100
〜19歳 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳 35〜39歳 40〜44歳 45〜49歳 50〜54歳 55〜59歳 60〜64歳 65〜69歳 70歳以上
(%)
図6. 男子労働力率(2010年センサス)
日本 韓国 台湾 中国
台 湾 の 65〜69 歳 は 65 歳 以 上
表2. 65歳以上高齢者の状況(2010年)
日本 韓国 台湾 相対貧困率(%) 19.4 47.0 16.6 自殺率(人口10万対) 17.9 81.9 35.8 資料:大西(2014)、薛(2014)、立法院(2012-04-02)、
中央日報日本語版(2012-09-11)
2 . 中 国 に お け る 高 齢 化 へ の 懸 念
最 近 中 国 経 済 の 減 速 に 対 す る 関 心 が 高 い が 、 人 口 ボ ー ナ ス の 消 失 や 生 産 年 齢 人 口 の 減 少 と い っ た 人 口 要 因 が 有 意 に 影 響 を 与 え て い る と 思 わ れ る 。一 人 っ 子 政 策 が 緩 和 さ れ た の も 、 中 国 当 局 が そ の こ と を 強 く 意 識 し て い る 現 れ だ ろ う 。 人 口 高 齢 化 が 経 済 発 展 を 阻 害 し 中 進 国 水 準 に と ど ま っ て し ま う 「 未 富 先 老 」 を 憂 慮 す る 専 門 家 の 声 は 、 新 聞 で も し ば し ば 報 道 さ れ る 。 清 華 大 学 就 業 与 社 会 保 障 中 心 の 楊 燕 緩 主 任 は 、 中 国 で は 「 老 年 人 口 の 養 老 資 産 」 と 「 老 齢 サ ー ビ ス 産 業 の 充 実 」 が 不 足 し て お り 、 人 口 高 齢 化 へ の 準 備 が で き て い な い と 憂 慮 し た (中 国 经 济 周 刊 2014-02-24)。 国 務 院 発 展 研 究 中 心 の 李 建 偉 副 部 長 は 、「 労 働 力 の 供 給 が 減 少 し て い る こ と か ら 、中 国 経 済 の 成 長 率 が 今 後 2 け た の 伸 び を 再 現 す る こ と は 難 し い 」と 指 摘 し(Record China 2014-07-02)、実 際 に 2015 年 の 経 済 成 長 率 は 7%以 下 ま で 減 速 し た 。中 国 証 券 監 督 管 理 委 員 会 の 祁 斌 主 任 は 、「 年 金 制 度 は 2033 年 ご ろ に 最 大 の 危 機 を 迎 え 、 そ の 後 社 会 全 体 で 雪 崩 式 の 年 金 赤 字 が 発 生 す る 」 と 年 金 制 度 の 危 機 を 指 摘 し た
(Record China 2014-06-23)。
こ う し た 悲 観 論 に 対 抗 し 、 中 国 経 済 に 対 す る 楽 観 論 を 主 張 す る 専 門 家 も い る 。 労 働 科 学 研 究 所 の 莫 栄 副 所 長 は 、 中 国 で は 子 ど も と 老 人 が 少 な く 生 産 年 齢 人 口 が 多 い た め 、 人 口 ボ ー ナ ス は 少 な く と も あ と 20 年 は 継 続 す る と 主 張 を し た ( サ ー チ ナ 2011-07-15)。 人 民 大 学 の 陳 衛 も 、15〜64 歳 人 口 が 総 人 口 に 占 め る 割 合 が 2010〜11 年 に 低 下 し た こ と に 対 し 、
「 慌 て る 必 要 は な い 。 労 働 力 は 依 然 と し て 増 加 し て お り 、 そ の 増 加 率 は 高 齢 化 率 を 超 え て い る 」 と 楽 観 的 な 見 方 を 示 し た (Record China 2012-01-26)。 北 京 大 学 の 厲 以 寧 は 、 一 般 的 な 人 口 ボ ー ナ ス が 終 焉 し た と し て も 、 よ り 高 度 な 訓 練 を 受 け た 人 材 の 数 が 増 え る 新 た な 人 口 ボ ー ナ ス が 始 ま る こ と 、 さ ら に は 海 水 淡 水 化 技 術 や 砂 漠 の 利 用 な ど 今 ま で 使 え な か っ た 資 源 が 使 え る よ う に な る 資 源 ボ ー ナ ス が 発 生 す る と 主 張 し た (Record China 2014-07-02)。 し か し 現 実 に 中 国 経 済 は 減 速 し て お り 、 当 局 が 一 人 っ 子 政 策 を 緩 和 し た こ と か ら 、 こ う し た 楽 観 論 は 説 得 力 を 失 っ て い る と 思 わ れ る 。
Ⅳ . 外 国 人 労 働 力 の 導 入
1 . 東 ア ジ ア 諸 国 の 外 国 人 労 働 者 政 策
日 本 は 外 国 人 単 純 労 働 者 を 受 け 入 れ な い 方 針 を 貫 き 、 も っ ぱ ら 研 修 生 ・ 技 能 実 習 生 制 度 を 通 じ た 受 け 入 れ に 限 っ て き た 。1981 年 の 入 管 法 で 在 留 資 格「 研 修 」が 創 設 さ れ た 。1993 年 に 技 能 実 習 制 度 が 創 設 さ れ 、 研 修 生 は 技 能 実 習 生 に 移 行 す る こ と で 在 留 資 格 を 「 特 定 活 動 」 と し 、 合 計 3 年 間 滞 在 で き る よ う に な っ た 。2010 年 7 月 か ら 、 実 務 を 伴 う 研 修 ・ 実 習 は す べ て 「 技 能 実 習 」 に 一 本 化 さ れ 、「 研 修 」 は 実 務 を 伴 わ な い 研 修 の み と な っ た 。
日 本 と 異 な り 、台 湾 は 1992 年 か ら 、韓 国 は 2003 年 か ら 外 国 人 雇 用 許 可 制 度 を 運 用 し て い る 。 台 湾 に 対 す る 労 働 力 送 出 国 は タ イ 、 フ ィ リ ピ ン 、 ベ ト ナ ム 、 イ ン ド ネ シ ア と い っ た ASEAN 諸 国 で 、 中 国 人 労 働 者 を 導 入 す る 計 画 は な い 。 職 種 は 製 造 業 、 家 事 使 用 人 、 介 護 士 な ど が 多 く 、 特 に イ ン ド ネ シ ア 人 は 2010 年 時 点 で 介 護 労 働 者 が 87%を 占 め 、 ほ と ん ど が 女 性 で あ る ( 田 嶋 2010)。
韓 国 の 雇 用 許 可 制 度 の 特 色 は 、 民 間 仲 介 業 者 を 排 し 、 政 府 機 関 が 人 材 登 用 を 行 っ て い る こ と で あ る 。ま た 相 手 国 政 府 と 覚 書(MOU; Memorandum of Understanding)を 交 わ し 、送
出 国 で も 政 府 が 窓 口 と な る 。 現 在 、 フ ィ リ ピ ン 、 ス リ ラ ン カ 、 タ イ 、 イ ン ド ネ シ ア 、 ベ ト ナ ム 、 モ ン ゴ ル 、 ウ ス ベ キ ス タ ン 、 カ ン ボ ジ ア を 含 む 15 か 国 と MOU を 締 結 し て い る 。 し か し 2012 年 末 の 外 国 人 労 働 者 59.3 万 人 の う ち 、 中 国 籍 朝 鮮 族 の 在 留 者 は 29.3 万 人 で 49.4%を 占 め 、そ の 大 部 分 は 在 外 朝 鮮 族 の た め の 訪 問 就 労 ビ ザ(H-2)を 得 て お り 、上 記 の 雇 用 許 可 制 度 と 異 な り 民 間 業 者 が 斡 旋 を 行 っ て い る ( 今 泉 2014)。
2 . 韓 国 に お け る 多 文 化 社 会 化 表 3で 外 国 人 人 口 割 合 を み る と 、 中 国 に 居 住 す る 外 国 人 は 、 香 港 ・ マ カ オ ・ 台 湾 を 含 め て も 在 日 外 国 人 人 口 よ り 少 な く 、 割 合 も き わ め て 低 い 水 準 に と ど ま っ て い る 。 2013 年 に 韓 国 は 1.93%、 台 湾 は 2.51%で 「 移 民 国 」 と ま で は 言 い 難 い 水 準 だ が 、 い ず れ も 日 本 を 上 回 っ て い る 。 韓 国 で は 2003 年 の 外 国 人 雇 用 許 可 制 度 導 入 以 後 、 急 速 に 外 国 人 人 口 が 増 加 し た 。 外 国
人 労 働 者 に 加 え て 国 際 結 婚 も 増 加 し 、「 多 文 化 家 庭 」 と 呼 ば れ る 外 国 人 配 偶 者 ( 妻 が 多 い ) が 増 え た 。 そ う し た 趨 勢 に 反 発 す る 一 般 大 衆 に 向 け て 、 低 出 産 ・ 高 齢 化 に 苦 し む 韓 国 で は ヒ ト の 国 際 化 も 必 要 不 可 欠 で あ り 、 開 放 的 な 「 多 文 化 社 会 」 を 受 け 入 れ る よ う 説 得 す る 論 調 が 目 立 つ よ う に な っ た 。 先 駆 的 な も の と し て ソ ウ ル 新 聞 社 説 (2005-12-21) は 、 外 国 人 の 割 合 が 1%を 超 え る 見 通 し で あ る こ と を 告 げ 、「 わ れ わ れ は 世 界 化 の 時 代 に 加 え 、高 齢 化・
低 出 産 で 多 く の 外 国 人 労 働 力 を 必 要 と す る 時 代 を 一 気 に 迎 え た 。 … … 外 国 人 1%時 代 を 契 機 に 、 政 府 と 全 国 民 の 発 想 の 転 換 を す る キ ャ ン ペ ー ン が 必 要 だ 」 と 主 張 し た 。
そ の 後 も 外 国 人 労 働 者 や 外 国 人 配 偶 者 は 増 え 続 け た が 、 韓 国 人 の 意 識 は オ ピ ニ オ ン ・ リ ー ダ ー た ち が 期 待 し た ほ ど に は 速 や か に 変 わ ら な か っ た 。中 央 日 報 社 説(2009-08-07)は 、
「 韓 国 社 会 の 多 文 化 包 容 意 識 は 依 然 と し て 不 十 分 」 だ と 診 断 し 、 外 国 人 労 働 者 に 対 す る 賃 金 遅 配 、 肉 体 的 お よ び 言 葉 に よ る 暴 力 、 外 国 人 配 偶 者 と 子 に 対 す る 家 庭 内 暴 力 と い じ め と い っ た 諸 問 題 を 指 摘 し た 。2012 年 4 月 の 選 挙 で は 、フ ィ リ ピ ン 出 身 で 韓 国 に 帰 化 し た 李 ジ ャ ス ミ ン 候 補 が セ ヌ リ 党 比 例 代 表 で 国 会 議 員 に 当 選 し た 。 東 亜 日 報 社 説 (2012-04-16) に よ る と 、 こ の 「 多 文 化 を 象 徴 す る 人 物 」 に 対 し 、 ネ ッ ト 上 で は 罵 詈 雑 言 に 加 え 、 外 国 人 憎 悪 を 煽 ろ う と 捏 造 さ れ た 「 李 ジ ャ ス ミ ン 公 約 」 が 流 布 し た 。 社 説 は 「 外 国 人 流 入 に 消 極 的 で 経 済 活 力 を 失 っ て い る 日 本 を 反 面 教 師 と す べ き だ 」 と 唐 突 に 日 本 を 引 き 合 い に 出 し た 上 で 、「 人 種 差 別 的 偏 見 を お さ め て 李 ジ ャ ス ミ ン 氏 を 政 治 人 と し て 正 当 に 評 価 し て こ そ 成 熟 し た 国 民 だ 」 と 主 張 し た 。
3.日 本 における中 国 人 実 習 生
日 本 の 研 修 生 制 度 は 1950 年 代 か ら あ っ た が 、1993 年 の 入 管 法 改 正 で は 技 能 実 習 制 度 が 導 入 さ れ 研 修 後 2年 の 就 労 が 認 め ら れ た 。2010 年 に は 研 修 制 度 を 廃 止 し 、技 能 実 習 制 度 に
表3. 東アジア諸国の外国人人口
国 (年) 総人口 外国人人口 外国人(%) 日本 (2013) 125,704,000 1,593,000 1.27 韓国 (2013) 51,141,463 985,923 1.93 台湾 (2013) 23,373,517 586,646 2.51 中国 (2010) 1,370,536,875 1,020,145 0.07 資料 日本:総務省統計局「10月1日現在推計人口」
韓国:統計庁ポータル(KOSIS) 台湾:行政院主計總處
中国:統計局(第六次全国人口普查)
台湾の外国人には「大陸」「香港澳門」「無戶籍國民」を含む。
中国の外国人には「香港」「澳門」「台湾」を含む。
一 本 化 し た 。 こ う し た 日 本 入 管 の 「90 年 体 制 」 の 背 景 に は 、 好 景 気 に 伴 う 労 働 力 不 足 と 、 外 国 人 労 働 力 導 入 の 副 作 用 を 憂 慮 す る 言 説 が あ っ た ( 駒 井 2015)。
表 4 に は 日 本 の 産 業 研 修 生 (2009 年 ま で )と 技 能 実 習 生(2010 年 以 後 )数 の 推 移 を 示 し た 。2010 年 の 入 管 法 改 正 を 控 え た 2009 年 に は 産 業 研 修 生 は 大 幅 に 減 っ た が 、 改 正 後 は 2010〜11 年 に か け て 大 き く 増 加 し た 後 、 微 増 に 止 ま っ て い る 。 特 に 技 能 実 習 生 の 大 半 を 占 め て い た 中 国 人 は 減 少 に 転 じ て お り 、 全 体 に 占 め る 割 合 は か つ て の 3/4 以 上 か ら 2/3 程 度 に ま で 低 下 し て い る 。 世 界 第 二 の 経 済 大 国 と な っ た 中 国 と し て は 、 単 純 労 働 者 の 送 出 国 と い う イ メ ー ジ は
似 つ か わ し く な い と 考 え る だ ろ う 。 そ の た め か 、 中 国 紙 や 日 本 国 内 の 華 字 紙 は 研 修 生 ・ 技 能 実 習 生 と し て の 日 本 で の 就 労 に 否 定 的 な 記 事 を 送 り 続 け て い る 。 た と え ば 日 本 新 華 僑 報 は 、 研 修 生 と し て の 就 業 が 苛 酷 で 孤 独 で あ る こ と を 強 調 し 、 過 度 の 期 待 を 抱 か ぬ よ う 警 告 し た (Record China 2009-11-18)。 広 州 日 報 は 外 国 人 研 修 ・ 技 能 実 習 制 度 が 、 日 本 企 業 が 中 国 人 労 働 者 を 搾 取 す る 制 度 と 化 し て い る と 非 難 し た (Record China 2013-12-11)。 広 州 日 報 は 2014 年 10 月 の 記 事 で も 研 修 生 ・ 技 能 実 習 生 制 度 を 非 難 し 、「 日 本 の 大 多 数 の 研 修 生 は 工 場 の 奴 隷 で あ る 」「 米 国 か ら も 外 国 人 研 修・技 能 実 習 制 度 は 強 制 労 働 の 温 床 に な っ て い る と 警 告 さ れ て い る 」 な ど と 主 張 し た 。 中 文 導 報 (2015-01) は 、 岐 阜 県 の 縫 製 工 場 で 長 時 間 労 働 を 強 い ら れ る 中 国 人 女 性 の 「 帰 国 し た ら み ん な に は 『 日 本 に 行 く な 』 と 伝 え た い( 我 回 国 后 ,会 告诉大 家 '不 要 去 日 本 ! )」と い う 言 葉 を 伝 え た 。中 国 新 聞 网
(2015-03-09) は 、「 技 能 実 習 生 が 低 賃 金 で 酷 使 さ れ 、 雇 用 主 か ら 虐 待 さ れ る こ と も あ る
(除 了 是 廉 价 劳 工 ,不 少 也 遭 雇 主 虐 待)」と 報 道 し た 。い ず れ も 中 国 人 が 日 本 で 単 純 労 働 に 従 事 す る こ と を 苦 々 し く 思 う ジ ャ ー ナ リ ズ ム に よ る ネ ガ テ ィ ヴ・キ ャ ン ペ ー ン と み ら れ る 。
Ⅴ . 国 際 結 婚
1 . 国 際 結 婚 の 動 向
日 本 ・ 韓 国 ・ 台 湾 で は 1980〜90 年 代 に 国 際 結 婚 の 増 加 が 目 立 つ よ う に な っ た 。 こ れ は 国 内 結 婚 市 場 で 不 利 を 強 い ら れ る 低 所 得 あ る い は 農 村 居 住 の 男 性 と 、 よ り 良 い 暮 ら し を 求 め 途 上 国 農 村 部 の 貧 困 世 帯 の 娘 の ニ ー ズ を 、 仲 介 業 者 等 マ ッ チ ン グ す る こ と に よ っ て 生 じ た 。 東 ア ジ ア 先 進 国 は 低 熟 練 労 働 者 の 受 入 に 慎 重 な た め 、 結 婚 が ほ と ん ど 唯 一 の 合 法 的 定 着 の 手 段 に な っ て い る こ と も 、「 国 際 移 動 の 女 性 化 」 の 背 景 に な っ て い る (Tseng 2010)。
図 7 に は 日 本 ・ 韓 国 ・ 台 湾 の 国 際 結 婚 割 合 の 推 移 を 示 し た 。 台 湾 は 2003 年 の 31.9%と い う 驚 く べ き 高 率 で ピ ー ク を 打 っ た 後 、 近 年 は 15%以 下 ま で 低 下 し て い る 。2014 年 の 国 際 結 婚 ( 夫 妻 の 一 方 が 台 湾 人 で 他 方 が 華 僑 ・ 大 陸 ・ 香 港 ・ マ カ オ ・ 外 国 籍 の い ず れ か で あ る 婚 姻 )の 割 合 は 13.3%だ が 、う ち 華 僑 が 0.1%、大 陸 が 6.7%、香 港 ・ マ カ オ が 0.6%、そ の 他 の 外 国 籍 が 5.8%で あ り 、 大 陸 出 身 者 と の 婚 姻 が 過 半 数 を 占 め る こ と が 分 か る 。2014
表4. 日本の研修生・技能実習生数の推移 年 総数 中国人 中国人(%) 2006 70,519 52,901 75.0 2007 88,086 66,576 75.6 2008 86,826 65,716 75.7 2009 65,209 50,487 77.4 2010 109,351 83,926 76.7 2011 145,382 108,876 74.9 2012 153,281 111,839 73.0 2013 156,707 107,510 68.6
2009年までは「研修」、2010年以後は「技能実習」「研修」の合計 資料:登録外国人統計、在留外国人統計
年 の 大 陸 出 身 者 と の 婚 姻 10,044 件 の う ち 、 妻 が 大 陸 出 身 で あ る 場 合 が 9,317 件 (92.3%) で 大 部 分 を 占 め る 。
韓 国 の 国 際 結 婚 割 合 は 、2005 年 に 13.5%を 記 録 し て 以 来 低 下 し 、 2014 年 に は 23,316 件(7.1%)と な っ て い る 。2014 年 の 外 国 人 配 偶 者 の 国 籍 が 多 い 順 に 、中 国(7,064 件 )、 ベ ト ナ ム (5,026 件 )、 日 本
(2,521 件 )、 米 国 (2,384 件 )、
フ ィ リ ピ ン(1,168)件 と 続 く 。国 籍 ご と に 外 国 人 が 妻 で あ る 割 合 を み る と 、ベ ト ナ ム(94.4%)、フ ィ リ ピ ン (96.7%)、 中 国 (77.6%)
は 外 国 人 女 性 と の 婚 姻 が 多 い が 、
中 国 は 他 ほ ど 偏 り が 大 き く な い 。米 国(26.7%)
は 、米 国 人 男 性 と の 婚 姻 が 多 い 。日 本(53.4%)
は 、 日 本 人 夫 と 日 本 人 妻 が ほ ぼ 拮 抗 し て い る 点 が 特 徴 的 で あ る 。2010 年 に は 日 本 人 妻 /( 日 本 人 夫 + 日 本 人 妻 ) の 割 合 は 36.3%で 、 ま だ 日 本 人 男 性 と の 結 婚 に 偏 っ て い た が 、 近 年 急 速 に 偏 り が 縮 小 し た 。
表 5は 外 国 人 配 偶 者 の 妻 / 夫 比 を 示 し た も の で 、比 が 1よ り 大 き け れ ば そ の 国 は 届 出 国 に 対 し 女 性 の 送 出 国 で あ る こ と を 示 す 。 日 本 と 韓 国 の 関 係 は 拮 抗 し て お り 、 韓 国 で の 届 出 で は 日 本 が 女 性 の 送 出 国 だ が 、 日 本 で の 届 出 で は 依 然 と し て 韓 国 が 女 性 の 送 出 国 で あ る こ と を 示 唆 し 、
一 貫 性 が な い 。 韓 国 と 台 湾 の 関 係 で は 、 韓 国 ・ 台 湾 い ず れ の 届 出 で も 韓 国 人 夫 = 台 湾 人 妻 の 組 合 せ の 方 が 多 く 、 台 湾 が 韓 国 に 対 し 女 性 の 送 出 国 に な っ て い る 。 中 国 は 日 本 ・ 韓 国 ・ 台 湾 の い ず れ に 対 し て も 女 性 の 送 出 国 だ が 、 韓 国 で は 中 国 人 男 性 と の 結 婚 も 比 較 的 多 い の に 比 べ 、 台 湾 で は 圧 倒 的 に 中 国 人 女 性 と の 結 婚 に 偏 っ て い る 。
2 . 女 性 送 出 国 と の 軋 轢
図 7 に み る よ う に 韓 国 で は 2000 年 代 前 半 に 国 際 結 婚 が 急 増 し た が 、 そ れ は 仲 介 業 者 を 通 じ た 途 上 国 女 性 と の 結 婚 が 増 え た こ と に よ る 。 こ の よ う な 状 況 に 対 し 、 朝 鮮 日 報
(2005-03-22) は 、「 国 際 結 婚 急 増 は 韓 国 社 会 に 大 き な 影 を 落 と し て い る 。 結 婚 相 手 を 探 し 夫 婦 関 係 を 結 ぶ 過 程 か ら『 売 買 婚 』方 式 が ま ん 延 し 、結 婚 後 に も 人 種 差 別 と 人 格 べ っ 視 ・ 虐 待 に よ り 破 綻 に 至 る ケ ー ス が 少 な く な い 」 と 憂 慮 し 、「 韓 国 社 会 は ま だ 国 際 結 婚 10%
0 5 10 15 20 25 30 35
2000 2005 2010 2015
(%)
図7. 国際結婚割合
日本 韓国 台湾
表5. 国籍別外国人配偶者数(2014年)
日本人妻 日本人夫 妻/夫比 韓国届出 1,345 1,176 1.14 台湾届出 243 599 0.41 韓国人妻 韓国人夫 妻/夫比 日本届出 2,412 1,701 1.42 台湾届出 55 210 0.26 台湾人妻 台湾人夫 妻/夫比 韓国届出 230 120 1.92 中国人妻 中国人夫 妻/夫比 日本届出 6,019 776 7.76 韓国届出 5,485 1,579 3.47 台湾届出 9,317 727 12.82 日本厚生労働省、韓国統計庁、台湾行政院主計總處
時 代 に ソ フ ト ラ ン デ ィ ン グ で き る 準 備 が で き て い な い 」 と 診 断 し た 。
韓 国 の 仲 介 業 者 の 強 引 な 花 嫁 募 集 は 、 東 南 ア ジ ア 諸 国 と の 軋 轢 を も た ら し た 。 朝 鮮 日 報
(2005-01-24) に よ る と 、 駐 韓 フ ィ リ ピ ン 大 使 館 は 「 働 き 口 を 求 め て 韓 国 の 宗 教 団 体 の 結 婚 斡 旋 ま た は E6( 就 業 ) ビ ザ を 通 じ 韓 国 旅 行 に 応 じ た 場 合 、 非 良 心 的 な ブ ロ ー カ ー に よ り 犠 牲 と な る 可 能 性 が あ る た め 、 特 別 な 注 意 が 必 要 だ 」 と い う 公 文 書 を 在 韓 フ ィ リ ピ ン 人 女 性 に 緊 急 配 布 し た 。 東 亜 日 報 (2005-08-25) は 、 フ ィ リ ピ ン や ベ ト ナ ム が 韓 国 人 男 性 と 自 国 人 女 性 の 結 婚 に 関 す る 審 査 を 強 化 し た こ と を 報 じ 、「 こ の よ う な 事 態 は 、『 自 業 自 得 』 の 性 格 が 強 い 。 外 国 人 女 性 た ち が 韓 国 で 受 け た 被 害 が 、 国 際 結 婚 を 準 備 す る 韓 国 人 男 性 た ち に ブ ー メ ラ ン と な っ て 戻 っ て き た わ け だ 」と 伝 え た 。2007 年 4月 に は 花 嫁 捜 し に ベ ト ナ ム を 訪 れ た 韓 国 人 男 性 2 名 が 、ベ ト ナ ム 人 女 性 の「 裸 体 検 査 」を し た と し て 逮 捕 さ れ た( 韓 国 日 報 2007-04-26)。2010 年 3 月 に は 、 カ ン ボ ジ ア で 韓 国 人 男 性 と カ ン ボ ジ ア 人 女 性 の 集 団 見 合 い が 横 行 し た こ と か ら 、 韓 国 人 男 性 と の 国 際 結 婚 が 一 時 的 に 禁 止 さ れ た 。 禁 止 の 対 象 が 韓 国 人 だ け だ っ た こ と か ら 、 中 央 日 報 社 説 (2010-03-22) は 「 ま っ た く 恥 ず か し く て 顔 を あ げ る こ と さ え で き な い 」と し 、「 こ れ 以 上 国 の 恥 を か か な い よ う 、徹 底 的 な 実 態 の 調 査 と 取 り 締 ま り を 行 う べ き だ 」と 行 政 の 介 入 を 求 め た 。2010 年 7月 に は ベ ト ナ ム 人 花 嫁 が 韓 国 入 国 後 一 週 間 で 夫 に 殺 害 さ れ る 事 件 が あ り 、 ベ ト ナ ム で は 一 時 反 韓 感 情 が 広 が っ た
( 聯 合 ニ ュ ー ス 2010-07-19)。2012 年 3 月 に も ベ ト ナ ム で 不 法 仲 介 業 者 を 通 じ て 花 嫁 を 選 ぼ う と し た 韓 国 人 男 性 2 名 が 、 ホ ー チ ミ ン の ホ テ ル で 現 行 犯 逮 捕 さ れ た ( 聯 合 ニ ュ ー ス 2012-03-16)。
近 年 で は 悪 質 な ブ ロ ー カ ー の 暗 躍 に 伴 う 「 醜 い 韓 国 人 」 騒 動 は 下 火 に な っ た よ う で 、 代 わ っ て 経 済 大 国 化 し た 中 国 と 東 南 ア ジ ア 諸 国 と の 軋 轢 が 増 え て い る よ う で あ る 。2010 年 に は 、ベ ト ナ ム で 集 団 見 合 い を 行 っ て い た 中 国 人 男 性 数 人 が 逮 捕 さ れ 、罰 金 を 徴 収 さ れ た( 環 球 時 報 2010-07-31)。2014 年 6月 に は AFP通 信 が 兄 に よ っ て 中 国 人 男 性 に 売 ら れ 、逃 げ 出 し て 警 察 に 保 護 さ れ た ベ ト ナ ム 人 少 女 の 事 例 を 伝 え た( 参 考 消 息 網 2014-06-26)。同 年 8 月 に は 、 カ ン ボ ジ ア 人 女 性 と 中 国 人 男 性 の 偽 装 結 婚 を 利 用 し た 人 身 売 買 が 深 刻 化 し て い る こ と か ら 、 カ ン ボ ジ ア 政 府 は 中 国 に カ ン ボ ジ ア 人 女 性 へ の ビ ザ 発 給 を 制 限 す る よ う 求 め た (Record China 2014-08-08)。 A F P = 時 事 (2014-08-20) に よ る と 、 ベ ト ナ ム や ミ ャ ン マ ー で は 中 国 人 男 性 と 結 婚 さ せ る た め の 女 性 の 人 身 売 買 が 横 行 し て い る と い う 。
3 . 女 性 送 出 国 と し て の 中 国
経 済 大 国 化 し て 生 活 水 準 が 上 が り 、 中 国 人 男 性 と 外 国 人 女 性 の 結 婚 が 増 え た と は 言 え 、 表 5 で み た よ う に 中 国 は 日 本 ・ 韓 国 ・ 台 湾 に 対 し て は 依 然 と し て 女 性 送 出 国 で あ る 。「 大 国 崛 起 」「 中 華 民 族 の 偉 大 な 復 興 」を 目 指 す 中 国 に と っ て 、こ の よ う な 女 性 送 出 国 の 地 位 は 、 単 純 労 働 者 の 送 出 国 と し て の 地 位 と 同 様 に 、 早 急 に 解 消 す べ き 汚 点 に 違 い な い 。 し た が っ て 中 国 人 女 性 と 日 本 人 男 性 の 結 婚 に 対 し て は 、 新 聞 紙 上 で も 盛 ん に ネ ガ テ ィ ヴ ・ キ ャ ン ペ ー ン が 行 わ れ て き た 。
日 本 新 華 僑 報 の 蒋 豊 編 集 長 は 自 身 の ブ ロ グ (2010-04-01) で 、「 私 が か つ て 話 を 聞 い た あ る 中 国 人 妻 は『 日 本 人 の 夫 が セ ッ ク ス で 求 め る 体 位 が ど う に も 耐 え ら れ な い 』と 語 っ た 」
「 日 本 の 入 国 管 理 局 の 職 員 の こ の よ う な や り 方 は 、 偽 装 結 婚 防 止 の た め で は あ る が 、 差 別 的 な 要 素 も 含 ま れ て い る よ う に 思 わ れ る 」「 中 国 人 花 嫁 は こ の よ う な 暮 ら し に は 絶 対 に 耐 え
ら れ な い と 逃 げ 出 し て し ま う 」 な ど と 、 不 幸 な 中 国 人 妻 の 事 例 を 列 挙 し た 。 新 華 網
(2010-04-17) は 日 本 人 と 結 婚 し た 中 国 人 女 性 の 離 婚 率 の 高 さ を 強 調 し 、「 離 婚 し た 中 国 人 女 性 の 多 く に よ る と 、日 本 人 の 夫 は 傲 慢 非 礼 で あ り 、自 分 勝 手 で 吝 嗇 、酷 い 亭 主 関 白 で 、 最 も 耐 え 難 か っ た の が 性 生 活 だ っ た と い う 」 と 日 本 人 男 性 を 卑 下 し た 。 日 本 新 華 僑 報
(2010-11-20) は 、 日 本 人 男 性 と 結 婚 し た 中 国 人 女 性 が ス ト レ ス か ら 精 神 病 に か か り や す い と 報 じ た 。
一 方 で は 国 際 結 婚 市 場 に お け る 中 国 人 男 性 の 地 位 が 向 上 し た こ と を 強 調 し 、 満 足 感 ・ 充 足 感 を 与 え よ う と す る 記 事 も み ら れ る 。 こ れ は 胡 錦 濤 政 権 以 降 の 中 国 の 公 定 ナ シ ョ ナ リ ズ ム で あ る 「 大 国 指 向 ナ シ ョ ナ リ ズ ム 」 に 合 致 す る も の で 、 経 済 大 国 化 の 成 果 を 強 調 し 、 次 の 目 標 と し て 文 化 的 魅 力 等 の ソ フ ト パ ワ ー の 充 実 を 目 指 す も の で あ る( 江 藤 2014)。そ の う ち 中 国 人 男 性 と の 結 婚 を 熱 望 す る 日 本 人 女 性 が 急 増 し て い る と い う 千 龍 網 の 記 事
(2009-12-08) は 、 日 本 の 人 口 動 態 統 計 の 数 字 を 捏 造 し て お り 、 な ぜ 多 く の 新 聞 に 転 載 さ れ た の か わ か ら な い ほ ど 杜 撰 で 滑 稽 な 記 事 で あ る 。 成 都 全 捜 索 新 聞 網 (2014-07-04) は 、
「 興 味 深 い こ と に 、 中 国 人 男 性 と 韓 国 人 女 性 の 結 婚 数 は 増 加 中 で あ る (有 意 思 的 是 , 中 国 男 性 和 韩 国 女 性 的 婚 姻 数 量 却 在 持 续 攀 升)」と し 、「 韓 国 女 性 は 中 国 男 性 に 嫁 ぐ の が 趨 勢(韩 国 女 嫁 中 国 男 是趋 势)」と 見 出 し を 打 っ た 。し か し 韓 国 で 届 け 出 ら れ た 中 国 人 男 性 と 韓 国 人 女 性 の 婚 姻 件 数 は 、2005年 の5,037件 を ピ ー ク に2013年 に は1,727件 ま で 減 少 し て お り 、 事 実 に 反 す る 。
環 球 時 報 の 記 事 (2013-08-16) は 冒 頭 で 、「 い つ の 頃 か 多 く の 中 国 人 女 性 が 悦 ん で 外 国 人 の 胸 に 飛 び 込 む よ う に な っ た が 、そ れ に 釈 然 と し な い 同 胞 男 性 は 多 い 。し か し 昨 今 、 多 く の 国 々 で『 中 国 人 夫 』が 席 巻 し て い る(曾 几 何 时 ,许 多 中 国 女 孩 乐 意“投 入 外 国 人 怀 抱” 令 不 少 男 同 胞 不 能 释 怀 , 不 过 , 如 今 不 少 国 家 , 特 别 是 周 边 邻 国 却 出 现“中 国 丈 夫”走 俏 的 趋 势)」と し 、タ イ 、シ ン ガ ポ ー ル 、ロ シ ア 、韓 国 、日 本 で 中 国 人 男 性 の 株 が 上 昇 し て い る と 伝 え た 。こ の う ち 韓 国 で は 中 国 人 男 性 の「 思 い や り が あ り 、家 庭 を 大 切 に し 、苦 労 に 耐 え 、 家 事 に 積 極 的 で 、 浮 気 を し な い 」 と い っ た 美 点 が 高 く 評 価 さ れ 、 中 国 人 男 性 と 韓 国 人 女 性 の 結 婚 は 過 去 10年 で 10倍 に 増 え た と 伝 え た 。こ の 組 合 せ の 婚 姻 数 は 、上 述 の よ う に 2005 年 に 5,037件 あ り 、2000 年 (210件 ) の 24倍 以 上 だ か ら 、「 過 去 10年 」 の 定 義 に よ っ て は 間 違 い で は な い 。 し か し そ の 後 減 少 し 、 ま た 韓 国 人 男 性 と 中 国 人 女 性 の 婚 姻 は そ の 数 倍 あ る の だ が 、 環 球 時 報 の 記 事 は そ の こ と に 触 れ て い な い 。 日 本 に つ い て は 日 本 人 男 性 と 中 国 人 女 性 の 結 婚 の 方 が 多 い こ と に 触 れ な が ら も 、「 こ こ 数 年 、中 国 人 女 性 が 日 本 に 嫁 ぐ と い う 結 婚 が 減 少 傾 向 に あ り 、 中 国 人 男 性 と の 結 婚 が 急 速 に 伸 び て い る (最 近 几 年 , 中 国 女 孩 嫁 到 日 本 的 婚 姻 呈 波 浪 形 减 少 的 趋 势 ,而 找“中 国 丈 夫”的 婚 姻 却 直 线 上 升)」と し て い る 。実 際 に は 中 国 人 男 性 と 日 本 人 女 性 と の 婚 姻 件 数 は 、2006 年 の 1,084 件 を ピ ー ク に 減 少 を 続 け て い る 。 た だ し 中 国 人 女 性 と 日 本 人 男 性 の 婚 姻 件 数 の 減 少 の 方 が 速 い た め 、 中 国 人 妻 / 夫 比 は 2006 年 の 11.2か ら 2014 年 に は 7.8( 表 5参 照 ) ま で 低 下 し た 。
Ⅵ . 都 市 化 と 国 内 人 口 分 布
1 . 韓 国 の 圧 縮 的 都 市 化
図 8に 各 国 の 首 都 圏 人 口 が 全 国 人 口 に 占 め る 割 合 の 変 化 を 示 し た 。 こ れ を み る と 、 中 国