平成21年12月(2009年) 一11一
研 究報文
マ ウス胸腺 の脂 肪細 胞 分化 過程 の速度 論 に よる解析
清 水 里 枝,竹
内 亜 里 沙,田
中 麻 由 里,玉
井 千 晶,中 西 美 貴,
西 尾 依 里 奈,二
田智 恵 子,宮
崎 木 綿 子,山
口 文 乃,宮
田 堅 司
Analysis of the Differential Process of Adipocytes
in the Thymus of BALB/c Mouse by Kinetic Theory
Satoe Shimizu, Arisa Takeuchi, Mayuri Tanaka, Chiaki Tamai, Mild Nakanishi,
Erina Nishio, Chieko Nita, Yuhko Miyazaki, Ayano Yamaguchi and Kenji Miyata
The differential process of adipocytes was investigated in the thymus and spleen of BALB/c mice by the
real time PCR method. The transcriptions of PPAR
y (PP) ,adiponectin (Ad) and resistin (Re) were considered
as indications of differential stages of adipocytes and the transcription ratios, log Ad/PP and log Re/PP , were
measured. These logarithmic ratios increased rapidly, at the border between fetal stage and neonatal, from
negative value to positive in the thymus and to nearly 0 in the spleen. Subsequently, they were remained
virtually constant throughout the experimental period. Kinetics was applied to the differential model of
adipocytes in which the quantity of each transcription was assumed to be proportional to the cell number, and
the changes of log Ad/PP and log Re/PP with age were interpreted successfully.
(Received September 7, 2009)
1.は じ め に マ ウ スで は,胎 生12日 頃 に 第3咽 頭溝 に 由来 す る 上 皮様 細 胞 か ら胸 腺 原 基 が 形 成 され る1)。この 胸 腺 原 基 に多分 化 能 を有 した幹 細胞 が流 入 し,上 皮 様 細 胞 の 影響 下 に リ ンパ様 細 胞 で あ る胸 腺細 胞 に分 化 す る。胸 腺 は,リ ンパ 球 の増 殖 に よ り急 激 に増 大 し, 生 後 数 週齢 で最 大 とな り,以 降 リ ンパ 球 の 減 少 に よ り退 縮 す る 。 この 胸 腺 の退 縮 に伴 い トラベ キ ュ ラや 被 膜 に脂 肪 細 胞 が 増 殖 し,リ ンパ球 領 域 が脂 肪 細 胞 で置 換 され た様 相 を呈 す る が2),こ の 現 象 の 生 理 的 意 義 は不 明 で あ る。 本 報 で は,マ ウ ス胸腺 での 脂 肪細 胞 の 分 化 過程 を 検 討 す る た め に,脂 肪細 胞 系 列 の細 胞 が 発 現 す る こ とが 知 られ て い るPPARγ(PP)3),ア デ ィポ ネ ク チ ン(Ad)4),お よ び レ ジ ス チ ン(Re)5)の 転 写 量 比 を, リ ア ル タ イ ムPCR法 で 測 定 し た 。 ま た,比 較 の た め に 脾 臓 で も測 定 し,そ の 結 果 を 速 度 論 で 解 析 す る こ と を 試 み た6)。 皿.方法
京都女子大学食物栄養学科栄養学第二研究室
1.材 料 コ ンベ ン シ ョナ ル な 条 件 下 で 飼 育 し た 雌 雄 の BALB/cマ ウス を用 い た 。 出生 後3週 間 は母 親 マ ウ ス と 同居 させ,21日 齢 で 分 離 した。 固 型 飼 料(MF, オ リエ ンタル 酵 母)お よび水 道 水 は 自由 に摂取 させ た。 頚椎 脱 臼 させ たマ ウス を 開腹,開 胸 し,胸 腺 お よび 脾 臓 を 摘 出 し た。摘 出 し た 試 料 は サ ン プ ル チ ュー ブ に入 れ,直 ち に液体 窒 素 中 で凍 結 した 後, -80℃ で保 存 した。胎 生 期 マ ウ スの 日齢 は,1晩 雄 と同居 させ 翌 朝 交 配 を確 認 で きた 場 合 を胎 生0.5日 齢 と した 。胎 仔 の胸 腺 お よび脾 臓 は実体 顕 微 鏡 下 に一12一 摘 出 し た 。 胎 生 期 マ ウ ス の 雌 雄 の 判 定 は 困 難 で あ り, 区 別 は 行 な わ な か っ た 。 2.卜 一 タ ルRNAの 抽 出,逆 転 写 反 応 お よ び リ ア ル タ イ ムPCR 凍 結 した 組 織 よ り,酸 性 グ ア ニ ジ ン チ オ シ ア ン 酸 一 フ ェ ノ ー ル ー ク ロ ロ ホ ル ム 法 に よ っ て ト ー タ ル RNAを 抽 出 し た7)。 エ タ ノ ー ル 沈 殿 法 に よ り精 製 し た ト ー タ ルRNAを,濃 度100ng/μ1に 調 整 し た 。 ト ー タ ルRNA300ngを 鋳 型 と し て 逆 転 写 反 応 を 行 っ た 。 逆 転 写 反 応 はM-MLVリ バ ー ス ト ラ ン ス ク リ プ タ ー ゼ(ReverTra Ace一 α,東 洋 紡), oligo dT20 プ ラ イ マ ー を 用 い,メ ー カ ー の プ ロ ト コ ー ル に 従 い,30℃ で10分 間,さ ら に42℃ で20分 間 行 っ た 。 99℃ で5分 間 処 理 す る こ と に よ り反 応 を 停 止 さ せ る と と も に 鋳 型RNAを 分 解 し た 。 こ の 反 応 産 物 を 水 で15倍 に 希 釈 し た 溶 液(15倍 希 釈 試 料 溶 液)を 試 料 と して リ ア ル タ イ ムPCR(Line Gene, Bio Flux)を 行 っ た 。 反 応 は,メ ー カ ー の プ ロ トコ ー ル に 従 い, SYBR Green mix(Realtime PCR Master Mix,東 洋 紡) 7.5,u P,forward primerお よ びreverse primer(4 pmo1/ μ の を 各1.5オ8,15倍 希 釈 試 料 溶 液4.5オ8,合 計 15オ8の 溶 液 で 行 っ た 。PCR反 応 は,95℃10分 の 前 処 理 の 後,変 性94℃15秒,ア ニ ー リ ン グ60℃15秒, 伸 長 反 応72℃30秒 の サ イ ク ル を45回 行 い,各 サ イ ク ル の 伸 長 反 応 終 了 時 点 毎 に 蛍 光 強 度 を 測 定 し,PP, Adお よ びReの 増 幅 曲 線 を 得 た 。 増 幅 反 応 終 了 後 に,増 幅 さ れ たDNAの 融 点 解 析 を 行 い,増 幅 さ れ たDNAが 均 一 な も の で あ る こ と を 確 認 し た 。PP,Adお よ びReの 増 幅 反 応 に 用 い た プ ラ イ マ ー を 下 記 に示 す 。 プ ライマ ーPP-R プ ライマ ..-F プ ライマ ーAD-R プ ライマ ーAD-F プ ライマ ーRe-R プ ライマ ーRE∼F 食 物学 会 誌 ・第64号 CTGACCCAATGGTTGCTGAT GAGCTGGGTCTTTTCAGAAT ATCCTGGCCACAATGGCACA ATCTCCTGTCTCACCCTTAG CACTGTGTCCCATCGATGAA GGAGGAGACTGTCCAGCAAT プ ラ イ マ ー は,少 な く と も一 つ の イ ン トロ ン領 域 を 問 に含 む エ ク ソ ン領 域 に相 補 的 に 結 合 す る よ う に 設 定 し た 。 こ れ ら の プ ラ イ マ ー に よ り,PP, Adお よ びRe と も に110塩 基 対 のDNAフ ラ グ メ ン トが 増 幅 さ れ る 。 3.転 写 量 比 の 測 定 リ ア ル タ イ ムPCRの イ ン タ ー カ レ ー タ ー 法 で は, 増 幅 さ れ た2本 鎖DNAに 取 り込 ま れ た 色 素 が 励 起 さ れ て 発 す る 蛍 光 強 度 を 測 定 す る こ と に よ り,増 幅 曲線 が リ ア ル タ イ ム に得 ら れ る。 増 幅 曲 線 よ り,そ れ ぞ れ 蛍 光 強 度 が 一 定 値 に 達 す る ま で に 要 したPCRの サ イ ク ル 数 ηp,nA,お よ びnRを 読 み 取 っ た 。15倍 希 釈 試 料 溶 液 中 に存 在 し たPPとAdお よ びReと の コ ピ ー 数 比 の 常 用 対 数 値10910Ad/PP,お よ びlogloR6/PP は① 式 あ る い は ② 式 よ り求 め た8)。 皿.結
果
1.加 齢 に 伴 う転 写 量 比 の 変 化 BALB/c雄 マ ウ ス の 胸 腺 お よ び 脾 臓 に お け る 転 写 量 比10910Ad/PP,お よ びlogsfl Re/PPの 加 齢 変 化 の 測 定 値 を 図laお よ びlbに 示 し た 。 胎 仔 期17.5日図1 BALB!c雄 マ ウ ス の 胸 腺 お よ び 脾 臓 に お け る 転 写 量 比 の 加 齢 変 化
1a.胸 腺 に お け る 転 写 量 比log Ad/PP(○),お よ びlog Re/PP(●)は,出 生 を境 に 急 激 に 増 大 し,3週 齢 以 降 ほ ぼ 一 定 に な っ た 。 表1の 速 度 定 数 た1およ びaの 値 を 用 い て 計 算 した 理 論 値log A4/PP(一 一),お よ びlog R8 /PP(… …)も 示 し たQ
lb.脾 臓 に お け る 転 写 量 比log Ad/PP(○),お よ び10g Re/PP(●)は,出 生 後 急 激 に 増 大 し0に 近 づ い た 。 表1の 速 度 定 数klお よ び α の 値 を 用 い て 計 算 し た 理 論 値log A4/PP(一),お よ び ・_・一/PP(・・… → も示 した 。
平成21年12月(2009年) 齢 か ら出 生 直 前 の期 間で は,こ れ らの値 は 負 とな っ た け れ ども,こ の 時期 か ら出生 直 後 に か け て急 激 に 増大 した。胸 腺 で は,生 後直 後 か ら正 の値 と な り,3 週 齢 以 降 は ほ ぼ1.1と な り一 定 値 と な っ た。 脾 臓 で は,出 生 後,負 の値 か ら0に 漸 近 した。 ま た,胸 腺 お よび脾 臓 の 場合 と も に,出 生 後 に は,各 日齢 毎 に 10910Ad/PP,お よ び10910Re/PPの 値 は ほ ぼ 等 し か った 。 す な わ ち,Adお よ びReの 転 写 量 は 等 し か っ た。 雌 マ ウス の 結 果 を 図2aお よび2bに 示 した 。 胸 腺 お よび 脾臓 の場 合 と もに,雌 雄 の差 異 は ほ と ん ど認 め られ な か っ た。 IV.考
察
一13一 な段 階 の細 胞 の マ ー カー と し,PPに 対 す るAdお よびReの 転 写量 の加 齢 変 化 を調 べ る こ と に よ り, 脂 肪 細 胞 の分 化 過 程 を検 討 した 。 これ らの遺 伝 子 の 転 写 量 は,そ の転 写細 胞 数 に比 例 す る と仮 定 し,脂 肪 細 胞 の 分化 過 程 を反 応 速 度論 に基 づ き解析 す る こ とを試 み た6)。 図3に 示 した様 な分 化 過 程 を考 え る。 この 場 合 に は,PPはPPARγ 転 写細 胞 を表 し, Adで 表 され る ア デ ィポ ネク チ ン転 写細 胞 に分化 し,そ の後 機 能 を 失 うか 細 胞死 に至 る。Sは 脂 肪 細 胞 系 列 の 幹細 胞 を 表 し,ka, klお よびk2は 各 過 程 の 速 度 定 数 とす る。 Reに 関 して も同様 に表 した。 Adの 場 合 に つ い て, koお よ びk2過 程 を 無 視 し, kl 過 程 を一 次 反応 速 度式 で表 す と, PP, Adお よびReは 脂 肪 細 胞 系 列 の細 胞 が 産 生 す る こ とが 知 られ て い る3・4・5)。PPは脂 肪細 胞 系 列 の 分化 初 期 に必 要 な核 内受 容体 タ ンパ ク 質 と考 え られ て い る9)。した が っ て,PPを 脂 肪 細 胞 系 列 の 未 熟 図2 BALB/c雌 マ ウ ス の 胸 腺 お よ び 脾 臓 に お け る 転 写 量 比 の 加 齢 変 化2a.胸 腺 に お け る 転 写 量 比log Ad/PP(○),お よ びlog Re/PP(●)は,出 生 を 境 に 急 激 に 増 大 し,そ の 後 ほ ぼ 一 定 に な っ た 。 表1の 速 度 定 数 た1およ びaの 値 を用 い て 計 算 し た 理 論 値iog Ad/PP(一),お よ びlog Re/ PP(・ ・・…)も 示 した 。
2b.脾 臓 に お け る 転 写 量 比log Ad/PP(○),お よ びlog Re/PP(●)は,出 生 後 急 激 に 増 大 し0に 近 づ い た 。 表1の 速 度 定 klお よ びaの 値 を 用 い て 計 算 した 理 論 値log Ad/PP(一),お よ びlog Re/PP(… ・・→ も 示 し た 。
図3 脂 肪 細 胞 系列 の分 化過 程
PPARγ を転 写 す る細 胞 は分 化 初 期 の細 胞 で あ り,ア デ ィポ ネ ク チ ンや レジ ス チ ン を転 写 す る 細 胞 へ と分 化 す る。Sは 幹 細 胞, PPはPPARγ 転 写 細 胞, Adは ア デ ィ ポネ クチ ン転写 細 胞, Reは レ ジス チ ン転 写細 胞 を表 す。 ko, kl,お よびk2は 各 分 化過 程 の 速度 定 数 で あ る 。
一14一 と な る 。[PP]お よ び[Ad]は,そ れ ぞ れPP細 胞 お よ びAd細 胞 の 濃 度 を 表 す 。 ③,④ 式 を 解 く と, [Ad]一[PP]。(1-・ 一め
0
とな る。 こ こで[PP]oはPP細 胞 の初 期 濃度 で あ る。 生 体 内 で は,PP細 胞 は幹 細 胞Sが 分 化 す る こ とに よ り供 給 され続 け る とす る こ と に よ り,ko過 程 を考 慮 す る。 す な わ ち,a[PP]o=[PP]
と す る と,⑤ 式 よ り 1・91。[Ad][PP]-1・91。(1-・ 恕)1・91。a⑥
0
とな り,こ の 式 が転 写 量 比 の 日齢 変 化 の 理論 値 を与 える。 ⑦ 式 は,t》1の 場合, [Ad]l °glo[PP]_‐l°gloa t《1の 場 合,⑧
1・91。[Ad][PP]-1・91。t+1・g1。kl-1・91。a⑨ と な る 。 雄 の 場 合 の 実 測 値10910Ad/PPをloglotに 対 し て プ ロ ッ ト し(図4),tが 大 き い 領 域 の 値 と, tが 小 さ い 領 域 で 傾 き1の 直 線 をt=0に 外 挿 し た 値 を 読 み 取 り,⑧ お よ び ⑨ 式 よ り,klお よ びaの 値 を 求 め た(表1)。 Reの 場 合 も,同 様 に し て 求 め たklお よ びaの 値 食 物 学 会誌 ・第64号 を表1に 示 した 。雌 の 場 合 の結 果 も表1に 示 した。 αの値 は,測 定期 間にわ たっての平均値であ るけれ ども, 脾 臓 で は ほ ぼ1と な り,PP転 写 細 胞 濃 度[PP]は 初 期 濃 度[PP]oか らほ とん ど変 化 しな い こ とを示 し て い る 。胸 腺 で は,aの 値 は 雄 で は0.075,雌 で は 0.055と な り,PP転 写 細 胞 濃 度 が 初 期 値 の1/10∼ 1/15に 低 下 して い た。 この こ と は,胸 腺 にお い て は,PP細 胞 の分 化 が 起 きて い る こ と を示 して い る。 表1お よび2に 示 し隷 正お よ び・値 を用 いて,⑦ 式 に よ り計 算 した加 齢変 化 の 理論 曲線 も図1a, bお よ び 図2a, bに 示 した。 胸腺 の場 合 には,10910Ad/PP お よびlog10Re/PPの 値 は,出 生 直 後 に急 激 に増 大 し,10日 齢 以 降 はほ ぼ 一定 値 とな り,実 験 値 と よ く 一致 した。脾 臓 の 場合 には,Iog10Ad/PPお よびloglo Re/PPの 値 は,胸 腺 の場 合 と比 較 す る と緩 やか に 増大 し,0に 漸 近 した 。図3に 示 した様 に,脂 肪 細 胞 系 列 の 分 化 過程 に お い て,幹 細 胞Sを 考 え る こ とに よ り,速 度 論 に基 づ き,10910Ad/PPお よびlog10 Re/PPの 生 後 の 日齢 変 化 を 説 明 す る こ とが で きた。 この方 法 で は,胎 仔 期 の値 を計 算 す る こ とはで きな い け れ ど も,生 後 直 後 に急 激 に増 大す る 理論 曲線 を, 日齢 ∫が 負 の値 の 領域 に外 挿 す る こ とに よ り,実 験 値 を説 明可 能 で あ った 。 本 報 で分 化 の 指 標 と して用 い たAdやReの 転 写 量 は,出 生 時 を境 に急 激 に増 大 した。BALB/c雌 マ ウス の胸 腺 で は,組 織 学 的 に は,生 後4∼5週 齢 で 胸腺 内 の トラベ キ ュ ラに脂 肪 を蓄 積 した 脂肪 細 胞 が 観 察 され始 め るi°}。した が って,脂 肪 細 胞 系 列 の 細 胞 が 成 熟 す る前 の 段 階 で 既 にAdやReを 盛 ん に 転 写 して い る こ とが 明 らか とな った 。 また,脾 臓 で は, 図4 BALB/c雄 マ ウ ス の 胸 腺 の 場 合 の 速 度 定 数 お よ びaの 決 定log Ad/PPお よ び ・_'一/PPの 測 定 値 をlog tに 対 し て プ ロ ッ ト し た 。tが 大 きい 領 域 の 値 か ら,-logα=1.12 と な っ た 。 ま た,log tが 小 さ い 領 域 で 傾 き1の 直 線 をlog t→0に 外 挿 す る こ と に よ り, log kl-logα の 値 を 求 め た 。log Ad/PPの 場 合 に は0.486と, log Re/PPの 場 合 に は0.313と 読 み 取 っ た 。
平 成21年12月(2009年) 一15一 表1 速 度 定 数 た1,お よ び α
雄
雌
胸 腺
脾 臓
胸 腺
脾 臓
Ad Re Ad Re Ad Re Ad Rekl(1/d)
0.232 0.156 0.0369 0.00815 0.169 0.0607 0.0115 0.0045 0.075 0.075 1 1 0.055 0.055 1.& 1.& 成 熟 した脂 肪 細 胞 が 認 め られ る こ とは ない け れ ど も, 出 生 後,AdやReの 転 写 量 がPPの 転 写 量 と等 し くな った こ とか ら,脂 肪 細 胞 へ分 化 し得 る細 胞 が存 在 す る こ とが示 唆 され た。 Adは 細 胞 の耐 糖 能 を改 善 し11・12), Reは 耐 糖 能 を 低 下 させ る3,13>。今 回,正 常 な マ ウス の胸 腺 お よ び 脾 臓 で のAdとReの 転 写 量 は ほ ぼ等 しか っ た が, こ の こ との 生理 的 な意義 は不 明 で あ る。 V.要約
BALBlcマ ウ ス の胸 腺 お よ び脾 臓 での 脂 肪 細 胞 の 分 化 過 程 を,PPARγ(PP)に 対 す る ア デ ィ ポ ネ ク チ ン(Ad),お よ び レジ ス チ ン(Re)の 転 写 量 を指 標 と して,リ ア ル タ イ ムPCR法 に よ り検 討 した 。 加 齢 に伴 い 成 熟脂 肪 細 胞 が増 加 して くる胸 腺 にお い て は,ア デ ィポ ネ クチ ンお よ び レジ ス チ ンの 転 写量 は,胎 生 期 に はPPARγ の転 写 量 よ り少 な か っ た が, 出生 を境 に急 激 に 増 大 し,PPARγ の転 写 量 の 数 十 倍 とな り,そ の後 ほ ぼ一定 とな った 。成 熟 した脂 肪 細 胞 が 認 め られ な い脾 臓 で は,ア デ ィポ ネ クチ ンお よ び レ ジ ス チ ンの 転 写 量 は,出 生 を境 に 増 大 し, PPARyの 転 写 量 と ほ ぼ等 し くな っ た。 各 遺 伝 子 の 転写 量 は細 胞 数 に比 例 す る と仮 定 し,脂 肪 細 胞 系 列 の幹 細 胞 を考 え る こ とに よ り,こ れ らの結 果 を,速 度論 に よ り説 明 す る こ とが で き た。文
献
1) R. Rugh : The Mouse, Its Reproduction and
opment (Burgess Publishing)
, 253 (1968)
2) D.E.Kelly, R.L.Wood and A.G.Enders : BAILEY'S
TEXTBOOK
OF MICROSCOPIC
ANATOMY, 18th
ed. (Williams & Wilkins) , 453 (1984)
3) P.Tontonoz, A.R.Graves, I.A.Budavari and M.B.
Spiegelman
: Genes & Dev., 8, 1224 (1994)
4) E.Hu, P.Liang and M.B.Spigelman
: J. Biol. Chem.,
271, 10697 (1996)
5) M.C.Steppan, T.S.Bailey, S.Bhat, J.E.Brown, R.R.
Banerjee, M.C.Wright, R.H.Patel, S.R.Ahima and A.
M.Lazar : Nature 409, 307 (2001)
6)楠 本瑠 美,長 尾 由貴 子,橋 本 珠 実,舟 木 真 知子, 三 仲 亜 季 子,森 林 さ や か,山 田 浄,宮 田 堅 司:本 諾62,13(2007)