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Aluminium-dependent inhibition of Na, K-ATPase activity by fluoride

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 石 川 一 郎 学 位 論 文 題 名

Aluminium‑dependent inhibition of Na,       K‑ATPase activity by fluoride

(フッ素によるアルミニウムに依存したNa,K―ATPase活性の抑制)

学位論文内容の要旨

【目的】

  う蝕予防に使用されるフッ化物はその毒性が問題とされるが、急性毒性の機構に関しては 不明な点が多い。フッ素(F)は動物細胞に普遍的に存在して細胞機能の調節に関与する Na, K‑ATPaseを阻害する。そこで、Na,K一ATPaseがFによる急性毒性のターゲットである 可能性を考えて、FのNa,K‑ATPase活性阻害機構を検討した。

【材料と方法】

  ブタ腎臓膜分画のNa,K‑ATPaseを用いて、種カ条件下でのATPase活性に対するNaF及 びKFの作 用を調べた。ATPase活性は、生じた無機リンをChifflet法により定量して測 定した。

【結果と考察】

1. フ ッ 素 に よるNa,K一ATPaseのATP加水 分解 活性 阻害に おけ るカ リウ ム要求 性:

  NaFはK十非存在下のNa―ATPase活性を抑制しなかったが、K十存在下のNa,K.−ATPase活 性をKFと 同様 の濃 度依存 性で抑制した。また、KFは1.5mMまではNa一ATPase活性を10 倍程度促進したが、2.5 mMでは逆に減少に転じた。この結果は、1.5mMまでは、Fによる 活性阻害よりも、KFが解離して生じたK十によるNa,K一ATPase活性としてのATP加水分解 活性(ATPase活性 )促 進が上回ること、2.5mMに栓るとK十によるATPase活性の促進効 果は上限に達し、F―によるATPase活性抑制効果が顕著になることを示唆する。これらの結 果は、FはNa,K‑ATPaseによるK十の関与するNa,K一ATPase活性は抑制するが、Na一ATPase 活性は抑制しないことを示唆する。FはNa,K一ATPaseのATP加水分解反応中のK十が結合     ―551一

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した反応中間体に結合してNa,K一ATPase活性を抑制するものと推測される。

2.フッ素によるNa,K一ATPase活性阻害のアルミニウム要求性:

  NaF及 ぴKFによ るNa,K‑ATPase活性 阻 害のKio.5値は 共 存するAlの 濃度に依存 して 2ルMか ら100ルMま で は 減 少 し た が 、100 pMで は 効 果 は 飽 和 し て400ルMま でAl濃 度を 上げてもKio.5値はほば 一定であっ た。この結 果は、AlがNa,K―ATPaseのFに対す る親和性を増大することを意味する。

  一方、AlはFによるNa,KIATPase活性阻害を不可逆的にする上で有効であった。また、

A1のキ レーターで あるdeferoxamineの共存により不可逆的な阻害は観察されなかった。

これらの結果は、FはA1と結合して、すなわち、フッ化アルミニウムくA1Fヨ)として高い 親 和 性でNa,K叫TPaseに 結合 し 、ひ と た び結 合 する と 解離 しにくい ため不可逆 的に Na,K一ATPase活性を抑制する、として説明することが出来る。Robinsonらは、AlF3の立体 構造はPiの立体構造に類似しており、A1FユはNa,K一ATPaseの反応中に形成されるりン酸 化反応中間体のPiの類似体として結合すると推定している。また、この反応にはりン酸化 反 応 中 間 体 の 形 成 の 場 合 と 同 様 に Mgの 存 在 が 必 要 で あ る と 報 告 し た 。   本研 究において も、FとAlによる不可 逆的な阻害 にはMgの存在が必要であり、しかも その 濃度依存性 はNa,KーATPaseのりン酸化 反応中間体形成におけるMg依存性と類似し てい た。このMgの 役割は同程 度の濃度のCaやMnによって 置き換えが 可能であっ た。し かし、本来のNa,K―ATPaseのりン酸化反応中間体形成あるいはNa,K一ATPase活性における Mgの役 割は、部分 的にしかCaやMnによって置 き換えるこ とはできず 、場合によ っては CaやMnはMgの作用と拮抗する。

  また 、Robinsonらは、A1F3がPiと 同様に作用 することを示す実験結果として、FとA1 による不可逆的なNa,K一ATPase活性の抑制がPiの存在によって阻害されると報告してい るが、我々の結果ではPiの添加は不可逆的な阻害に影響を与えたかった。我カの結果は、

多くの点でRObinsonの報告とー致するが異なる点も多く、Na,K叫TPaseの反応機構を基に した今後の研究が必要である。

  NaFあ るい はKFのNa,pATPase活 性阻 害 実験 に おい て 、積 極的にはA1を添加して い ないのにFの濃度に依存した活性の低下が観察された。これは、ガラス器具、使用する水 や試 薬などから 混入するAlの作用として考えることが出来る。しかし、deferoxamine存 在下でも濃度依存的な活性抑制を完全に押さえることは出来なかった。deferoxamineは鉄 及ぴA1のキレータ ーとされているが、我々の実験系において、混入するA1のうちどの程

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度が遊離Alとして存在するのかを検討する必要がある。

  ー方、希釈実験においては、deferoxamineはほば完全な効果を示した。両者の違いにつ いては、Fの Na,K一ATPase活性阻害を不可逆にするにはAlのみが有効であるが、活性を 可逆的に抑制するだけならAlは必要ではない、あるいはAl以外の金属イオンでも代用で きると説明することも可能性であろう。RobinsonらはべりりウムもAlと類似した、しか し 完全 に同 じで はない 作用を示すと報告しており、今後の詳細な研究が必要である。

3.フッ素の毒性とアルミニウムの生体に対する作用:

  NaFの経口 投与 による致死量は5g程度とされている。100%吸収したとし、全血液量 を5Qと仮定して血中濃度を計算すると23.8mMとなる。今回の活性阻害実験においては 積極 的にAlを 添加 しなく ても2.5mMのFに よっ てNa,K‑ATPase活性はほぼ完全に抑制 され る。 さら に、 生体に広く存在するとされるAlが共存すると、1mMのNaFによっても ほば完全に阻害される。組織内濃度は血中濃度よりはかなり低いと予想されるが、ほぼすべ ての細胞に存在し重要な機能を担うNa,K一ATPaseが急性毒性のターゲットとたる可能性は 十分あると考えられる。

  Alは自然界に広く存在する元素である。生体にも広く存在するとされているが必須の微 量金属とは考えられていない。生体内分布の測定は極めて困難とされ、その機能あるいは病 態における作用も明らかではない。骨疾患、貧血、認知症、骨格筋疾患を悪化させるとの記 載もあるが、詳細は不明である。本研究において、Alは2uMという低濃度でも作用した。

Alの 生 体 内 に 韜 け る 作 用 に 関 連 す る 可 能 性 が あ り 、 新 た な 研 究 が 必要 で あ る 。

【結論】

  フッ素による Na,K一ATPase活性阻害にはカリウムが必要であり、アルミニウムは Na,K一ATPaseのフッ素に対する親和性を増大する。フッ素によるNa,K‑ATPase活性の不可 逆的な阻害にはアルミニウムと2価金属イオンが必要である。フッ素とアルミニウムの複 合体は2価金属存在下でNa,K一ATPaseに不可逆的に結合して、ATPase活性を阻害すること を示唆する。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Aluminium‑dependent inhibition of Na,       K‑ATPase activity by fluoride

( フ ッ 素 に よ る ア ル ミ ニ ウ ム に 依 存 し たNaKATPase活 ´ 陸 の 抑 制 )

  審査 は、全審査委員出席のもと行い、まず 学位申請者に対して提出論文の内容の説明 を 求め た。 学位 申請 者か ら は以 下の 内容 の論 述が なさ れた 。

  う蝕 予防 に使 用さ れる フッ化物 はその毒性が問題ときれるが、急性毒性の機構に関し て は不 明な 点が 多b` 。フ ッ素(F) は動 物細 胞に 普遍 的に存在して細胞機能の調節に関 与 するNaK一ATPaseを阻 害す る。 そこ で、NaK‑ATPaseがFに よる 急性 毒性 のターゲ ッ ト で あ る 可 能 性 を 考 えて 、FNa, いATPase活性 阻害 機構 を 調べ るこ とを 目的 に本 研 究を 行っ た。

  実験 には 、プ タ腎 臓膜 分画 のNa,KlATPaseを用 いて 、種 々条 件下 でのATPase活性に 対 す るNaF及 ぴKFの 作 用 を 調 べ た 。ATPase活 性 は 、 生 じ た 無 機 リ ン をChifflet に より 定量 して 測定 し、 以下 のよ うな 結 果を 得た 。

1Fに よ るNaKlATPaseATPase活 性 阻 害 に お け る カ リ ウ ム (K) 要 求 性 :   NaFはK十 非存 在下 のNa叫TPase活 性を 抑制 しな かっ たが、K十存在下のNa,K一ATPase 活 性 をKFと 同 様 の 濃 度 依 存 性 (Kio5 14尚 ) で抑 制し た 。ま た、KF15尚ま で はNaー.ATPase活 性をlO倍 程度 促進 し たが 、2.5耐 では 逆に 減少 に転 じた 。この結 果 は 、15尚 ま で は 、Fによ る活 性阻 害よ りも 、KFが解 離し て 生じ たぐ によ るATPase 活 性 促 進 が 上 回 る こ と 、25尚 に なる とF−に よるATPase活 性 抑制 効果 が顕 著に なる こ と を 示 唆 す る 。 こ れ ら の 結 果 は 、FNaKATPaseに よ るK十 の 関 与 す る NaKTPase活 性 は 抑 制 す る が 、NaATPase活 性 は 抑 制 し ぬ い こ と を 示 唆 す る 。 2.Fに よるKi015値の アル ミニ ウムQl) 濃度 に依 存し た減 少:

  NaF及 ぴKFに よ るNaKATPase活 性 阻 害 のKio5値 は 、 共 存 す るAlの 濃 度 に 依 存 し て 2 Mか ら 100 Mま で 減 少 し た 。 一 方 、Alの キ レ ー タ ー で あ る

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明人 誠 邦正 木村 橋 鈴田 舩 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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deferoxamineの共存によりKio.s値は増加した。この結果は、AlがNa,KーATPaseのF に対する親和性を増大することを示唆する。

3.Fによる不可逆的なNa,KーATPase活性阻害のAl要求性:

  AlFによるNaMrPase活性阻 害を不可逆 的にする 上で有効 であった 。また、

deferoxamineの共存により不可逆的な阻害は観察されなかった。これらの結果は、F Alと結合して高い親和性でNa,K一ATPaseに結合し、ひとたぴ結合すると解離しにくい ため不可 逆的にNaKATPase活性を抑 制する、 として説 明するこ とが出来る。

4FAlに よる 不 可 逆的 なNaKATPase活 性 阻害 の2価 金 属イ オ ン要 求 性 :   FAlによる 不可逆的な阻害にはマグネシウムくMg)の存在が必要であり、その 濃度依存 性はNaKTPaseのりン酸化 反応中間体形成におけるMg依存性と類似し ていた。 このMgの役 割は同程度 の濃度の カルシウム(Ca)やマンガン(ぬ)によ って置き換えが可能であった。しかし、本来のNaKlATPase活性におけるMgの役割 は、部分 的にしかCaMnによって 置き換え ることはできず、場合によってはCa MnMgの作用 と拮抗する。Na,pATPaseの反応機構を基にした今後の研究が必要で ある。

  以上の結果をまとめると、FによるNaKTPase活性阻害にはKが必要であり、A1 Na,KIATPaseのFに対する親和性を増大する。FによるNa,K−ATPase活性の不可逆的な 阻害 に はAl2価 金属 イ オ ンが 必 要で あ る 。FAlの複 合体は2価 金属存在 下で N8KTPaseに不 可逆的に 結合して、ATPasも活性を 阻害する ことを示 唆する。

  以上の論述に引き続き、各審査委員より提出論文の内容ならびにそれに関連のある学 術 に っ い て 口 頭 に より 質 疑船 よ ぴ 試問 が 行わ れ た 。主 な 試問 内 容 とし て は 、   1) 活 性 測 定 時 の 反 応 液 の 、 Na K、 脆 イ オ ン の 濃 度 の 決 定 理 由   2)Hillプロットの解釈、特にHill係数について

  3Fによる阻害を不可逆的にするのに必要な2価金属イオンと、Na,K‑ATPase活性     の発現に必要な2価金属イオンとの関係について

  4)AlFの生体毒性に関する見解

  5)開業臨床医として、う蝕予防のためのFの使用を、今回の研究成果をもとにどの     ように考えるか

などがあり広範囲にわたった。いずれの質問に対しても学位申請者から適切かつ明快な 回答が得られた。また、今後の研究の方向性と将来の展望などについても明確な方針が 示された。

  本論文の内容は高いレベルにあり、今後のこの分野の研究の発展に大きく寄与するも のと考えられた。加えて、試問の結果より学位申請者は専攻分野の専門領域のみならず 関連分野にっいても十分強学識を有していることが認められた。従って、学位申請者は、

博 士 ( 歯 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る の に ふ さ わ し い と 認 め ら れ た 。

参照

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