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テンサイ

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 北 崎 一 義

学 位 論 文 題 名

テンサイ Owen 型細胞質雄性不稔性における      花粉稔 性回復機 構の解明

学位論文内容の要旨

  細胞質雄性不稔性(CMS)は雄性配偶子の特異的退化をもたらす形質で、7%を超える被子 植物で記載例がある。CMSの遺伝モデルは植物種を問わず原則として同じであり、雄性不 稔性を引き起こす因子を細胞質に 仮定し、この細胞質因子に働く1ないし少数の優性の抑 制 因 子 を 核 に 仮 定 し て 、 両 者 の 相 互 作 用 に よ り 形 質 発 現 が 担 わ れ る と す る 。   テ ン サ イ の 一 代 雑 種 育 種 に 広 く 利 用 さ れ て い るOwen型CMSで は、 細胞 質側 の因 子 (CMS原因遺伝子)としてミ卜コンドリアゲノムにコードされるpre 飴ゆぢが同定され、次い で核側の因子(稔性回復遺伝子)として丑ロがクローニングされた。本研究では、pre^動駟ぢ と丑 ロと の 相互 作用 を分 子レ ベル で調 査し 、テ ンサ イOwen型CMSの 稔性 回復 機構につ いて解明を試みた。

pre飴ゆぢと丑ロの相互作用

  丑ロは、ペプチ ダーゼM48ドメインを保持す るタンパク質をコードする。遺伝学的観察 に基づけば、丑ロとヰ.e蝕ゆぢの相互作用は、タンパク質レベルで行われている可能性が高 い。そこで本研究 では、抗RF1抗体を作成し、 丑ロのタンパク質レベルでの発現を調査し た。葯、葉、根な どの器官からそれぞれ抽出したタンパク質に対し、抗RFl抗体を用いた ウエスタンブロット解析を行ったところ、葯でのみ翻訳産物の蓄積が確認された。さらに、

葯を減数分裂期か ら成熟花粉期までの4つの発 育ステージ別に採取し、それぞれの抽出タ ンパク質に対して ウエスタンブロット解析を行ったところ、減数分裂期から小胞子期まで の未成熟な葯で翻訳産物の蓄積が確認された。

  preSATP6とRF1が共 に蓄積する稔性回復株の未成熟葯タ ンパク質に対し、免疫沈降法 を用いてタンパク 質問相互作用を検証した。抗preSATP6抗体を用いて免疫 沈降を行った と ころ 、preSATP6に 結合 する タン パ ク質 は1種の みであり、それがRFlであることを確 認 した 。さ らに 、丑 々にFIAGタグを連結し、CMS細胞に導 入した形質転換培養細胞を作 り、解析を試みた 。形質転換培養細胞から抽出したミトコンドリアタンパク質に対し、抗 FLAG抗 体を 用い た免 疫沈 降を 行っ た とこ ろ、RF1に結 合す るpreSATP6を検 出した。し たがって、p胎エ飴ゆぢと丑口はタンパク質問で相互作用していることが明らかとなった。

    ―1229―

(2)

丑丑によるOwen型CMSの花粉稔性回復機構

  pre.鋤ゆガと丑ロのタンパク質問相互作用が検出されたものの、丑ロはペプチダーゼM48 ドメ.イン内のプロテアーゼ活性中心2n2+結合モチーフ(HExxH)が不活性型に変更されてお り 、ど の よう な機構に よってpreSATP6の機能 を変更し ているか は不明 である。 一方、

preSATP6はミトコンドリア内膜でホモ多量体を形成していることが明らかにされている。

そ こ で 、 丑 ロ の 発 現 と pre& 灯 P6多 量 体 の 関 係 に つ い て 調 査 し た 。   CMS株および 丑ロを優性ホモ接合型で持っ稔性回復株の未成熟葯から複合体を壊すこと なく穏和にタンパク質を抽出し、Bluenative.PA〔迥を用いてpreSATP6多量体の調査を行 った。その結果、稔性回復株特異的に低分子側へのサイズシフトが見出された。このよう な現象は、稔性回復株の成熟花粉や根ではみられず、丑ロが発現する未成熟葯でのみ検出さ れる 。そこで 、丑ロをCMS細 胞に導入 した形 質転換培 養細胞 を用いてpreSATP6多量体の 挙動を調査したところ、稔性回復株の未成熟葯と同様のサイズシフトが再現された。さら に、 低分子側 にサイズ シフト したpresATP6複 合体には 、RF1が含まれ ることを二次元電 気泳動により確認した。

  これらの解析結果から、次のような仮説を立てることができる。pre鯔LTP6は、ミトコン ドリア内膜でホモ多量体を形成し、その結果、ミトコンドリアに何らかの機能障害を与え、

花粉不稔を誘発する。それに対して、丑ロは未成熟葯でのみ発現し、翻訳産物がpreSATP6 と結合する。RF1それ自体は、プロテアーゼ活性に重要なZn2+結合モチーフが不活性型で あり、preSATP6を分解できないので、翻訳産物の蓄積量は減ずることはない。しかし、新 規にRF1‐pre黜LTP6複 合体が形 成され ることによって、preSATP6ホモ多量体の総量が減 少 し 、 多 量 体 の 細 胞 毒 性 を 軽 減 し 、 花 粉 稔 性 が 回 復 す る と 考 え ら れ る 。

  このよ うな機構 を通じ て花粉稔 性の回 復が起こる例はこれまでに報告されていなぃ。

CMS原 因 遺伝 子は、 ゲノム中 に散在 する反復 配列を 介したDNA組み 換えを盛 んに繰り 返 す被子植物ミトコンドリアゲノム進化の副産物として出現したと考えられ、植物種ごとに あるいは同一種内でも不稔細胞質型ごとに遺伝子構造は異なる。これに対し、稔性回復遺 伝子も植物種もしくは不稔細胞質型ごとに異なるが、これまでにクローニングされた稔性 回復遺伝子を見てみると、代謝補正を担うと考えられるトウモロコシの丑窃を除き、いず れもpentatrico peptide repeat(PPR)モチーフを保持するミトコンドリアRNA結合タンパ ク質(PPRタンパク質)をコードしている。PPRモチーフを持っこれらのRfi貴伝子は、作用 機構に 若干の違 いはあるものの、すべてCMS原因遺伝子の転写産物に直接作用し、最終的 に翻訳産物の蓄積を阻害することで花粉稔性回復に寄与しているものと考えられている。

したがって、本研究で、これらとは一線を画す新規の稔性回復システムを示せたことは、

核ゲノムによるミトコンドリアゲノム変異の制御機構について新たな知見をもたらすもの と期待される。

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(3)

学位論文審査 の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 准教授

三上 佐野 喜多村 久保

学 位 論 文 題 名

哲夫 芳雄 啓介 友彦

テ ン サ イ Owen 型 細 胞 質 雄 性 不 稔 性 に おけ る      花 粉 稔 性 回 復 機 構 の 解 明

  本 論 文 は98頁 か ら な る 和 文 論 文 で あ り 、 図28と 表8茄 よ ぴ 付 図4を 含 む 。 別に 、参考論 文3編が添え られて いる。

  細 胞 質 雄 性 樅 ば 趨 紛 の 形 成 が 妨げ ら れ る 変異 形 質 であ り 、 ハイ ブ リ ッド 作 物 の 種子生産 に欠く ことがで きなぃ 。テンサ イのハイ ブリッ ド育種に 広く利 用されて い るOwen型細 雌曙弦触 生不稔陛 に関し ては、ミ トコン ドリアゲ ノムよ り原因遺 伝子 preSatp6が 同定さ れ、次い で原因 遺伝子の 作用を 抑制して 花粉稔陸 回復を もたらす 核 遺 伝 子Rflが ク ロ ー ン 化 さ れ た 。 し か し 、 両 遺 伝 子 の 機 能 は明 ら か でな い 。   本研 究では 、preSa tp6とRfとの相 互作用を 分子レ ′シレで調査し、Owen型細胞質 雄 性不稔に おける 稔性回復 議隣の 解明を試 みた。得 られた 結果は以 下のよ うに要約 され る。

1.preSatp6とRfの相互 作用

  抗RF1抗 体 を用 い た 角晰 を 通 じて 、RF1タ ン パ ク質 が減数分 裂期か ら小胞子 期ま での未成 熟な葯 でのみ蓄 積するこ とを明 らかにし た。

遺 伝 学 的 観 察 に 基 づ け ば 、prぬ な 后 に 対す る 脚 の抑 制 作 用は 、 両 遺伝 子 が コー ド尹るタ ンパク 質問の相 互作用の 結果生 じている 可能陸が高V丶。これを立証するた め、preSATP6とRF1が 共 に蓄 瞶 す る 稔陸 回 復 昧(o職型不 稔細胞 質をもち 、核遺伝 子型が兄 ロ昆ロ の植物) の未成熟 葯よル タンパク 質を抽 出し、免 疫沈降 法を用いて タン パ ク 質問 相 互 作用 を 調べた 。その結 果、preSATP6に 結合する タンパ ク質はRF1

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(4)

のみであることを見出した。両タンパク質の結合は丶CalVN 35Sプロモーターにっを いだRflを細胞質雄陸不穏植物由来の細胞へ導入して作った形質転換培養細胞系に おいても確認された。

2.Rf7による在粥挿愈性回復機構

  RYはペプチダーゼドメインを含むタンパク質をコードする。しかし、そのアミ ノ酸配列から判断して、RF1タンパク質にプロテアーゼ漕陸があるとは考え難く、

どのよう按機構を介してpreSATP6の働きを阻害しているのかは容易に予想できな い。

  そこで兄口の発現と、ミトコンドリア内膜でホモ多量体を作ることが判明した preSAlP6との関係を調べた。その結果、@朏の発現に伴ってpreSAlP.6多量体のサ イズが変化し、◎サイズの変わったpre鮒IP6複合体にはRFlが含まれていることを 明らかにした。

  得られた結果をもとに、次のような仮説を立てた。すなわち、preSATP6多量体は ミトコンドリアの機能に何らかの障害をもたらし、花粉不稔を誘発する。一方、未 成熟葯で蓄積するRF1タンパク質それ自体はプロテアーゼ漕陸が無くpreSAlP6を分 解したいので、舳ゆ6翻訳産物の蓄積量が減ることはなレヽ。しかし、RFl一preSATP6 複合体が形成されることによって、preSATP6ホモ多量体の総量が減少し、多量体の も つ 細 胞 毒 陸 が 軽 減 さ れ る 結 果 、 花 粉 稔 陸 が 回 復 す る と 考 え た 。   このような機障を介した花粉稔陸回復のシステムはこれまで全く報告例が無しヽ。

  本研究の成果は、テンサイの細胞質雄陸不稔陸の機構解明に寄与するとともに、

核ゲノムによるミトコンドリアゲノム変異の帯雌黼tこ新知見をもたらすものと期 待きれ、学pf:Tおよぴ応用の両面で高く評価できる。

  よって審査員一同は北崎ー義カ軸(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有 するものと認めた。

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参照

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