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韓国男子高校生の性別役割規範について—全州市の別学・共学校における意識調査分析— [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)『韓国男子高校生の性別役割規範について』 ―全州市の別学・共学校における意識調査分析― キーワード:韓国、ジェンダー問題、性別役割規範、男子高校生 発達・社会システム専攻 佐々木 正徳 Ⅰ.問題の所在. であるのかを明らかにすることが必要である。.  韓国においてジェンダー問題に対する取り組みは急激な.  そこで本論では、韓国全羅北道全州市の高校生を対象と. 発展を遂げてきたといえる。例えば学問の分野では、1977. して行なった性別役割規範に関する質問紙調査を基にして、. 年に梨花女子大学において女性学講座がはじめて開設され. 高校生間の性別役割規範の差異について検討する。高校生. て以来、1999 年の段階で全国 158 の大学のうち実に 120. を調査対象とした理由は三つある。一つは、学校教育が何. 余りの大学で講座が開設されている。また、1983 年に設立. らかのセクシズムを有しており、生徒たちがそれによって. された「女性開発院」が中心となって数多くの調査・研究. 男女有別意識を内面化している可能性があることである。. が行われ、その成果は報告書としてまとめられている。法. もう一つは、韓国では後期中等教育段階での男女別学が多. 整備の面でも、1987 年の男女雇用平等法に始まって、93. く、共学校・別学校ともに特異な形態として存在している. 年の性暴力特別法、98 年の家庭暴力防止法などの法律が相. わけではないことである。よって学校教育が性別役割規範. 次いで制定され、男女問題の解決へ向けての働きかけがな. の形成に大きな影響を与えていると考えるならば、この学. されてきた。こうした一連の活動は女性の意識変革を促し、. 校形態の違いが異性間だけでなく同性間にも差異を生じさ. 性差別の解消を求める韓国女性運動の拡大に貢献してきた. せている可能性がある。理由の三つ目は、この世代が従来. といえる。. の世代とは行動や考え方の面で大きく異なっていると社会.  また、韓国のジェンダー問題を扱う際には韓国社会に根. からみなされていることである。今回の調査を通して、結. 強く残る儒教規範との関係を無視することはできない。儒. 果的に韓国の世代差をとらえる一つの視点も供給できるこ. 教規範は「男女有別」をその基本的な理念の一つとしてお. とになると考えられる。. り、男性優位の側面が非常に強い規範である。その意味で 韓国における女性運動の展開は、そうした規範との相克の. Ⅱ.韓国の儒教規範∼伝統の残存と変容∼. 過程ともいえよう。.  儒教の影響が現代においても強固に残存しているとされ.  一方、女性に対する意識調査、意識変革運動が進む中で、. る韓国社会であるが、儒教が社会に支配的な影響を与え始. 男性の問題は無視されてきた感がある。従来、ジェンダー. めたのは、李氏朝鮮王朝が儒教を国教として奨励してから. 問題を扱う視角は、主として女性を対象としたものであっ. 以後のことである。儒教は科挙や中央集権官僚機構の成熟. た。確かにジェンダー問題を考える端緒にあって、これま. に合わせて、支配層から民衆層へ、あるいは中央から地方. で学問的関心から一切無視されてきた女性に注目すること. へと普及していくことになる。そして、儒教的な秩序原理. は非常に有意義であったろうし、男女有別意識が色濃く残. が地方に浸透していくにつれて、家庭生活を含めたあらゆ. る韓国社会の特殊性を考えると、女性の意識を高め社会参. る社会生活の側面で儒教の秩序原理に基づいた規範を実践. 画を推進させていく上でそれは非常に大きな貢献をしたと. することが、その人物や家門の社会的地位を評価する基準. いえよう。しかし、ジェンダー問題に関係している性は女. とみなされるようになり、このことが両班という独特な生. 性だけではない。男性もまたジェンダー問題の当事者とし. 活様式を志向する上流社会を生むことになる。朝鮮におけ. て欠かしてはならない存在である。なぜなら、ジェンダー. る儒教社会の誕生である。このように李氏朝鮮王期期の朝. 問題とは文化的な「男性性」と「女性性」との関係性によ. 鮮社会では、中央に限らず地方においても質の違いは存在. って引き起こされる問題であるからである。その意味で男. してはいただろうが、儒教の影響が充分に浸透していたと. 性も女性と同様ジェンダー問題の主体であるといえる。そ. みなすことができる。この時期に儒教概念が広い地域・階. のため、ジェンダー問題の解決をより一層促進していくた. 級に浸透していたことは、李氏朝鮮王朝滅亡後の儒教概念. めには、女性を対象とするだけではなく男性も対象として. の残存を導いた。そして、韓国社会は「未だ一度も儒教に. 意識改革等を進めていく必要があろう。そして、そのため. 対する本格的な批判を経験しないまま経済発展や社会の近. にはまず、ジェンダー問題に対して男性がどの程度自覚的. 代化を遂げてきた」 (伊藤亜人編 1997『もっと知りたい韓. 1.

(2) 国【第 2 版】1』弘文堂、85 頁)のである。そのため儒教. で分担していると考えている割合が比較的高くなっている。. 規範の多くは現代の韓国社会にも残存している。韓国社会. これは、夫との家事分担などの問題に直面する当事者であ. が儒教社会と呼ばれていることは、こうしたことを背景と. る就業女性の中にも伝統的な性別役割規範は確固として維. しているのである。. 持されているため、男性の家事分担への期待がはじめから.  こうした中で形成・維持されてきた儒教規範に基づく伝. 高くないことの現われであると読み取ることもできる。こ. 統的な性別役割規範とは、一言で言うなら「男女有別」で. の意味では、女性の視点に立った調査・研究を進めていく. ある。すなわち、男性と女性という性別の違いによって、. 必要性もまだまだ存在しているといえるだろう。. 社会において果たす役割を厳然と区別するという規範であ.  では学校教育はこうした規範の形成に対して、どの程度. る。これを象徴的に表す概念として「内外区分」がある。. の影響力を持ちうると考えられるだろうか。韓国では高等. これは端的に言えば男性の役割を「外」=家庭外での生活. 学校への就学率・進学率がともに非常に高く、適齢人口の. =公的領域への参与、女性の役割を「内」=家庭内での生. ほとんど全てが高等学校に在籍している。よって、そこで. 活=公的領域からの排除とするものである。この区分は社. 行なわれる教育はその世代の成員の規範や価値観の形成に. 会生活の至るところで見られ、思考様式や態度だけでなく、. 大きな影響を与えていると考えることができる。. 物理的・空間的な面にまで影響を及ぼしていた。家屋構造.  また、韓国の高等学校に特殊な特徴として、男女別学校. などはその影響を示す好例である。こうした「男女有別」. が特殊な形態としてではなく存在しているというものがあ. 意識は性別に関する儒教規範の基本的なものであり、それ. る。近年の傾向としては共学校が増えつつあるものの、依. が結果的に女性を蔑視する性格を持つに至ったことは否め. 然男女別学の高校も多く存在している。また現在は、高等. ないであろう。. 学校において学習されている教科の中で、別学特有・共学.  では、こうした規範の残存は現代韓国社会にどの程度の. 特有のものや、男女が別々に履修しているものは原則とし. 影響を与えているのであろうか。各種統計資料や先行研究. て見られない。現在の高等学校では、共学・別学の形態に. を分析することにより次の三つの特徴が見出される。. かかわらず同一の教育政策・教育課程のもとに運営されて.  まず、性別役割規範にみられる儒教規範の現代への影響. おり、こうした制度面で性別役割規範の差異が生じること. を考察した研究は、そのほとんどが女性を研究対象として. は原則としてないということができよう。よって、こうし. いることである。これは各研究や調査が女性を対象とする. た状況にもかかわらず、性別役割規範について男女間での. ことに有効性と意義を見出しているためであり、その意味. 性差や同性間での差異が見出されるのであれば、学校形態. で批判されるべき点ではない。しかし、かといって韓国の. の違いが生徒の規範形成と何らかの関係を有している可能. 儒教規範と性別役割規範の関係性についての問題を考える. 性が高まることになるのである。. 際に、男性側からの視点を扱う必要がないというわけでは ないことは指摘しておかなければならない。ジェンダー問. Ⅲ.調査分析∼男子高校生の性別役割規範∼. 題とその解決方法を考える際に男性側の意識・視点を明ら.  本調査は韓国全羅北道全州市の男子高校生徒、共学高校. かにすることは、ジェンダー問題の捉え方を一方の視点に. 男子生徒、女子高校生徒、共学高校女子生徒を対象に質問. 偏らせないようにするためにも必要なことである。. 紙を用いて行われたものである。全州市は、周辺地域は人.  次に、女性の就業についての意識は上昇傾向にあり、そ. 口の減少傾向が見られながらも、市そのものは人口増加が. れにつれて、儒教規範に基づく家族内での女性の役割や地. 見られる点などから、現状としては人口減少・高齢化の進. 位には変化の兆しが見出せるものの、家庭や職場(労働市. む農村に周辺を囲まれた農村地域の中心都市であるといえ. 場)などでは依然として女性の地位は不平等な状態のまま. る。その意味で都市地域的性格と農村地域的性格を併せ持. であることである。この理由としては、男性側のこうした. っている地域であると考えることができる。. 問題への意識の低さをまず挙げることができよう。そうし.   質問紙調査の内容は大きく、 「家族構成に関する設問」 「理. た意識を高めていくためにも、男性を対象とした調査・研. 念的な性別役割規範に関する意識を問う設問」 「実際的な. 究が必要となるのである。. 性別役割規範(性別役割分業観)を問う設問」 「 『男らしさ』.  三つ目は、そうした不平等な状態を女性もある程度受け. イメージについての設問」の四つに分類される。このうち、. 入れている傾向がみられることである。統計によると、家. 主たる分析の対象としたのは「理念的な性別役割規範に関. 事労働に費やしている時間は女性の方が男性より圧倒的に. する意識を問う設問」 「実際的な性別役割規範(性別役割分. 多いにもかかわらず、共働き世帯の女性が家事労働を共同. 業観)を問う設問」の二つである。前者は性に起因するイ. 2.

(3) メージや行為についての意識、すなわち理念的な. には明確な関連性がそれほど見られない、つまり女性の就. 性別役割規範についての意識を様々な角度から訊ねたもの. 業を可とすることが必ずしも自身の家庭内での役割負担の. である。これによって回答者の性別役割規範についての大. 遂行を意識させるものとはなっていないという傾向が見ら. まかな傾向を把握することができると考えられる。また、. れた。こうした意識の違い、すなわち男性側の無自覚さは、. 後者は回答者に自身の理想の将来像を想像してもらうこと. 現代の韓国社会においてジェンダー問題を引き起こす原因. により、就業・家事・育児に関する性別役割分業観を明ら. となっている。この種の意識差が、現社会の中心世代に見. かにすることを試みたものである。これにより、理想とい. られるものであることは、統計資料の検討によってⅡ章で. う形ではあるが、回答者が有している性別役割規範の理念. 明らかにされたが、そういった中心世代だけではなくより. と、将来の実際的な問題との現時点での関連性を考察する. 新しい規範を有していると考えられている高校生世代にお. ことができる。以上の目的をもって行なわれた本調査によ. いてもこうした意識差が依然存在していることが明らかに. って明らかになった点は、次の三点である。. なった。ジェンダー問題の解決には、こうした意識差を埋.  一点目は、同性間においてもその学校形態の違いによっ. めていくことが必要とされているのであり、この結果はこ. て差異が見られた点である。分析を通して、男子高生徒と. うした点を解消していくための試みが不足しているという. 共学男子生徒には、儒教的な考え方にとらわれない新しい. ことを示すものであるということができよう。. 性別役割規範をある程度受容しているということと、同時.  三点目は、性別役割規範に関する限り世代間の差異はそ. に儒教規範に基づく伝統的な性別役割規範も充分に有して. れほど大きいとはいえないという点である。男子生徒によ. いることの二つの共通する特徴が見出された。しかし、双. って受け入れられている新しい性別役割規範は、既に韓国. 方を比較すると男子高生徒の方が共学男子生徒よりも新し. 社会で特異でなく見られつつあるものであり、決して革新. い規範を有している割合が高いことが明らかになった。ち. 的とは言い得ないものであった。そして社会にまだそれほ. ねみに、共通しない特徴としてみられたのは、男子高生徒. ど広まっていない事柄に関しては、多く伝統的な性別役割. の側は「弱音を吐かない」といった内面的な男性役割の維. 規範が保持されていた。また、高校生世代においても男子. 持に対して変化の兆しがみられたこと、男女の基本的な能. 生徒のジェンダー問題への無自覚さが見られたことは二点. 力差の存在の有無について迷いの傾向がみられること、新. 目の特徴として述べた通りである。このことは韓国の高校. しい形態の家族の出現についてはある程度肯定的でありな. 生世代が、新しい価値観を多く保有しており社会変革を起. がらも自身がそうした形態の家族を形成することには否定. こしていく牽引役になっているというよりは、社会状況の. 的であることである。一方の共学男子生徒の側は、新しい. 変化を非常に敏感に感じ取って新しい性別役割規範をそれ. 性別役割規範が徐々に獲得されつつあること、新しい形態. ほどの抵抗なく受け入れている存在であることを意味して. の家族の出現については否定的であることである。男子高. いる。換言すれば彼らは、新しい規範を創出する存在とい. 生徒に見られた傾向は、新しい性別役割規範を獲得しつつ. うよりは、社会に生じた新しい規範を積極的に受容してい. あるが故にみられる傾向であり、共学男子生徒のそれは新. る存在であるといえるのである。その意味で、彼らと現社. しい性別役割規範の獲得が不充分である故に見出された傾. 会の中心となっている上位世代との間に格別大きな世代差. 向であるといえる。よって、こうした傾向の違いも男子高. は存在していないとみなすことができそうである。. 生徒が共学男子生徒よりも新しい性別役割規範をより広範 囲に有していることを示唆するものであるといえよう。. Ⅳ.結論.  二点目は、男子高生徒・共学男子生徒間に見られた差異.  Ⅲ.で見られた三点の傾向の原因を考察することによって、. 以上に、彼らと女子生徒との間には差異が見られた点であ. 本研究の成果と今後の課題について確認することができる。. る。学校形態別に新しい性別役割規範の受容度合いを見る と、最も広範囲に有しているのは女子高生徒で、その後順.  男子高生徒の方が共学男子生徒より新しい性別役割規範. に共学女子生徒、男子高生徒、共学男子生徒と続くという. に対して柔軟であったという結果からは少々意外な印象を. 結果が得られた。 これについて、特に顕著な違いが見ら. 受けるかもしれない。なぜなら、共学男子生徒は男子高生. れたのが家事分担や育児分担について訊ねた理想の将来像. 徒よりも普段から女子生徒に接する機会が多く、女子の意. に関する設問群である。結婚後の女性の就業可否と理想の. 見を聞く機会や摩擦を感じる機会、あるいは教育を通じて. 家事分担との相関関係、出産後の女性の就業可否と理想の. 男女の役割分担の問題について考えさせられる機会がより. 育児分担との相関関係をそれぞれ見てみると、男子生徒側. 多いと考えられ、そのため男子高生徒よりは新しい性別役. 3.

(4) 割規範を持つ可能性が高いと考えられるからである。. の可能性よりは伝統的な規範を有しているといえるが、条.  この理由については今後同様の調査を行なうことにより. 件付きではありながらも女性の就業は認めているという点. 明らかにしていく他はないと思われるが、現段階で一つの. で、一つ目の可能性よりは新しい規範に対して柔軟である. 可能性を指摘することはできる。それは、共学男子生徒が. といえる。今後は男子生徒の多くが、こういった考えのど. 日常的に女子生徒と接していることで逆に性差を強く意識. れに最も近いのか、それともまったく別の理由を有してい. し、伝統的な男性性を内面化していくという可能性である。. るのかについての追加調査を行なう必要があろう。. 共学女子生徒は男性に対して伝統的な男性役割を期待する.  性別役割規範に関する限り世代間の差異はそれほど大き. 割合が高くなっており、そのこともこの可能性を補完して. いとはいえないという結果が得られたことに関しては、こ. いるといえる。また、このように考えるなら、男子校・女. れがイコール韓国社会の世代差が小さいということには結. 子校・共学校各形態によって行なわれる教育実践に何らか. び付かないものの、イメージされているよりは随分と小さ. の違いがあり、それが生徒たちの規範形成に影響を与えて. いという可能性を示唆するものである。原因としては高校. いる可能性も指摘することができる。現在は学校形態によ. 生世代が情報を得る手段として、雑誌やテレビ、そしてイ. って異なる教科目を履修するといった学校カリキュラムに. ンターネットなどのマスメディアからのものが中心になっ. よる違いは見られない。それゆえに、生徒間に見られる規. ていることが考えられる。マスメディアが流す情報を創り. 範の差異が各学校内で「実際に」行なわれている教育の様. 出しているのは、本研究が調査対象とした高校生世代など. 相に強く影響を受けている可能性は高いと考えられる。し. では決してなく、上位世代であるからである。しかし、ど. かし、こうした点を明らかにするためには、よりエスノグ. んな社会においても世代間の差異がある程度生じるという. ラフィックな調査を行なうことが必要である。よって、こ. ことは普通であり、その意味では韓国も例外ではないであ. れについては今後の課題としたい。. ろう。問題は、これまでキーワードのように語られてきた.  男子高生徒・共学男子生徒間に見られた差異以上に彼ら. 「韓国は世代間差異が大きい」という前提に対して、そう. と女子生徒との間には差異が見られた点、特に就業と家事. した差異が上位世代(あるいは下位世代)が思うほど広く. 分担・育児分担の関係について顕著な違いが見られた原因. 大きいとは言い切れなさそうであるということである。今. としては次の三つの可能性を指摘することができる。. 後こうした差異の距離を図るためには、より詳細かつ綿密.  一つ目は女性の社会進出に対する男子生徒の受容が表面. な調査研究を行なう必要があろう。それを通して、更に深. 的なものに留まっている可能性である。つまり、表面的に. い議論の展開が可能になると考えられる。. は女性が就業を続けていくことなどに賛意を示しているが、.  以上のことから、韓国の男子生徒の性別役割規範にはそ. 実際には伝統的な性役割を担っていくことを女性に対して. れなりに変化を遂げつつある様相が見え、その動きはこれ. 期待しているということである。もしそうであるなら、自. からも続いていくことは確実であると思われる。しかし、. 身が家事・育児を行なうという意識が希薄であってもおか. 女子生徒のそれと比較した場合、それはまだ不充分なもの. しくはない。. であると言わざるをえない。この背景としては、女性が直.  二つ目は結婚後・出産後の女性の就業問題を女性のみに. 面するジェンダー問題を男子生徒が自身も主体として関係. 関係している問題ととらえてしまい、自らも当事者として. している問題としてとらえきれていないことが考えられよ. 関わっている問題であるとは認識できていない可能性であ. う。最終的な結論として、韓国の男性は変わりつつあるが、. る。女性が結婚後・出産後も就業を続けていくことと家事・. 依然、根本的な部分では変わってはいないと結論付けるこ. 育児を担当していくこととをまったく別物として考えてい. とができる。今後はジェンダー問題の解決へ向けてこうし. るならば、女性の社会進出については肯定的な考えを持ち. た点を鑑み、男性側の視点からの研究と、男性にジェンダ. ながらも、家事・育児分担については伝統的な考えを持ち. ー問題を意識化させていくことを積極的に推進していくこ. 続けているということは充分に考えられる。. とが必要とされているのである。.  三つ目は女性の就業を家庭内での伝統的な役割を果たす ことを前提とした上での選択の問題であると考えている可. 《主要参考文献》. 能性である。つまり、女性が担う役割の中心はあくまで家. 江原由美子 2000『フェミニズムのパラドックス』勁草書房. 庭内での仕事である家事や育児であり、そうした役割をし. 小林孝行編 2000『変貌する現代韓国社会』世界思想社. っかりとこなした上ではじめて、外に出て働くという選択. 日本ジェンダー学会編 2000『ジェンダー学を学ぶ人のため. 肢が生じると考えているということである。これは二つ目. に』世界思想社. 4.

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