Bu l l . Fa c . Ed u c . Hi r o s a k iUn i v. 8 4:4 3 ‑4 8 ( Oc t . 2 0 0 0 )
テ トラフェニル、オクタエチルおよびテ トラアザポルフィリン 金属錯体の溶液および膜状態での主吸収ピークの位置について
UV‑ v isAbs o r p t io no IM‑ TPP , M‑ OEPa ndM‑ TAP i n Chl o r o l o r ma ndo IF山n
佐藤 香織*・小林 長夫* *・長南 幸安*
Ka or iSATO * ,Na ga oKOBAYASHI **a ndYuki ya s uCHOUNAN*
論文要 旨
現在, cD 等 に用 い られ ている有機 光学吸収体分子 としてはポル フィ リン, フタ ロシアニ ンがあ り, これ ら の 600nm 付近 に強い吸収 を持つ特徴 を記憶媒体 として利用 している。我 々は,次世代及び次次世代の有機光 学吸収体分子の開発 を 目指 し , 500‑400mm 付近 に吸収 を持つテ トラフェニル ( TPP) ,オ クタエチル ( OEP) お よびテ トラアザポル フィ リン ( TAP) 種 々の金属錯体 の溶液 お よび膜状態 での吸収 を測定 した。 ク ロロホ ルム溶液お よび膜状態での主吸収 ピークの位置は ,TA P金属錯体では Qba nd において比例関係 とな った。 また, TPP , OEP 金属錯体 では比例 関係は見 られなか ったが,膜 状態で Sor e tba nd において, TPP 金属錯体 では約 420
‑450nm , OEP 金属錯体では約 390‑430nm に吸収が見 られ た。
キー ワー ド :ポル フィ リン,ポル フィ リン金属錯体,膜状態,有機光学吸収体分子
序 論
現在 の情報記録方式は,大部分,磁気記録 に依 存 している。 しか し,磁気記録 の密度 はほぼ限界 にきてお り,記録密度 の更な る向上 を求 めて光デ ィスクが登場 した。光ディスクは, まず再生専用 の CD , LD か らスター トした。現在,追記型 ( 1 回だ け書 き込み可),書 き換 え可能型 光ディスクが 出回 り始 めた段階である。 これ までに,有機 光学 吸収体分子 としてポル フィ リン, フタ ロシアニ ン な どがあ り, これ らの 600m m付近 に強い吸収 を持 つ 特 徴 を 記 憶 媒 体 と して 薄 膜 で 利 用 して い る
。 卜 4)ポル フィ リンはその基本骨格 であるヘテ ロポ リ エ ン構造 ( 187 T電子系)に起 因 し
5‑ 7),紫外可視 部 に強い吸収 スペ ク トル を持 ってい る。一般的な ポル フィ リンの吸収 スペ ク トル の特徴 は, 波長 480
‑650nm に見 られ る Qba nd と波長 400nm 付近 に見 られ る Sor e tba nd ( Bba nd) か らな り,前 者 は禁 制遷移 の性格 を帯びてお り,後者は許容遷移 なの
で,それぞれ の分子吸光係数 (E) に大 きな差が ある。 これ らの吸収スペ ク トル の形 は,ポル フィ リン錯体 の骨格 の形や種 々の外部置換基, 中心金 属,配位子 な どに影響 を受 ける。 また, Qba nd の 数が少 ないのは,無金属体 よ り対称性が高いため に, ピークが 同 じ位置 に重な ってい るため とされ る 。 8 2 0)
多 くのポル フィ リン類似金属錯体は,溶液 中で の吸収位置が測定 され ているが,膜状態での吸収 位置 の報告例 はほ とん どなか った。そ こで我 々は, 次世代及び次次世代の有機 光学吸収体分子の開発 を 目指 し ,500‑400nm 付近 に吸収 を持つテ トラフ ェニル ( TPP) ,オ クタエチル ( OEP) お よびテ ト ラアザ ポル フィ リン ( TAP) 種 々の金属錯体 の溶 液お よび膜状態での吸収 を測定 したので以下報告 す る。
実験方法
2,7,12,17‑ Te t r a ‑ t e r t ‑ but y1 ‑5,10,15,20‑t e t r a a za ‑
*弘前大 学大学 院教育 学研 究科 自然科 学科
De pa r t me n to fNa t ur a lSc i e n c e ,Gr a d ua t eSc h o o lo fEd uc a t i o n,Hi r o s a k iUn i ve r s l t y
* *東 北大 学大学院理 学研 究科 化 学専攻
De pa r t me ntofCh e mi s t r y,Gr a d ua t eS c h o o lo fSc i e n c e ,To h o k uUn i v e r s l t y
por phy r i ne ( H2 TPP),2,3,7,8,1 2,1 3,1 7 , 1810c t a e t hy l ‑ por phy r i ne ( H2 0EP)の 3 種 を 配 位 子 とした ( 図 1 ) 。 中心金属は塩化物あるいはア セテー ト ( oA c )体 を出発原料 とし反応 を行なっ た。ただ し,反応の進まない ものについては尿素 を加 えた。代表 してCu‑ TA Pの合成法について述べ る 。 14)
1 0ml なす型 フラスコにH2 TAP20. 9mg ( 3. 9×
1 0ー2mm ol ), Cu ( OAc)225. 8mg ( 1 . 4×1 0‑ 1
mm ol ), Dr yDMF 2 ml を加 え,還 流 した。反応
t ‑ B U
M‑ TAP ( 2
,7, 1 2, 1 7 イet 「 a‑ f e J トbu t y l ‑ 5. 1 0, 1 5, 20‑ t e t r a a z a‑ p or ph y r i ne)
した。減圧濃縮後, シ リカゲルカ ラムクロマ トグ ラフィーにかけ,cHC1 3 でCu‑ TA Pを溶離 した。cu‑
TA Pを極 く少量 のCHC1 3 に溶解 させ,結晶が出る までMe OH を加 える。冷蔵庫で一 目放置 した後, ろ過 し精製 した。
溶液の測定には, 1mm セルを用いた。
膜 の測定は,CHC1 3 に溶解 させたcu‑ TA Pを1 0mm セルに入れ,セル を傾 け溶媒 を飛ば し,片面に膜 を作 り測定 した。
M‑ TPP ( 5. 1 0. 1 5, 20‑ Te t r aph en y L I p or ph y r i n e)
図 1 配位子の構造
結果 と考察
光磁気記録材料 としては溶液状態ではな く,薄 膜 として実際に使用 され る 。 1 5 1 9 ) この ことか ら, 本実験では,溶液状態 と膜状態 における吸収波長 の相関関係 を調べた。
I nC1 ‑ TA P錯体のCHC1 3 中お よび膜状態での吸収 スペ ク トル を例 と して 示 した。実 線 で 示 した cHCl 。 中の吸収位置 に対 し,点線 で示 した膜状態 での吸収位置ではsor e tba nd では Aん ‑ 3. 5n m,Q ba nd では AA′ニ ー 4. 0m mと若干 の ピークのずれ が見 られた ( 図 2)0TA P金属錯体では,Sor e tba nd
3 3 u
Vq10SqVEt Et
N N M′ ′ や
Et Et
M‑ OEP ( 2
,3
,7
,8, 1 2, 1 3, 1 7, 1 8‑
0c t ae t h y l ‑ p or ph y r i n e)
において,C u ( A入 ‑ 14. On m),Pd (A入 ニ ー 2.5nm),Fe ( A入 ‑ 1 6. Onm) , Mg (A入 ニ ー2. 5n m)錯体がそれぞれ以外が膜状態において より短波長側に1. 5‑36. 0mmシフ トしているのに 対 し,Qba n d で は,Sn ( A九 ‑ 1 . Onm),Pb (A 入 ‑ 0 . On m) , C o ( AA. ‑ 2. On m)錯体以外が膜 状態において よ り長波長側に‑ 1. 0‑‑ 4. 5mmシ フ トす る傾 向がみ られ た ( 表 1 ) 。各ba nd にお け るシフ ト幅は一定でな く, 中心金属によって大 き く異なっていた。
350 45 0 550 65 0
Wa veI e T l gt Unm
図 2 U
V‑ vi si bl eabs or pt i onofl nCl ‑ TAPi nCHC I ,( ) andl nCトTAPoff i l m (‑‑ ‑I)
Sor e tba nd Ce nt r a lme t al
山I l a X ul CH C l , 山na xoff i l m
A入 )ma
Xi nCHC
l,九ma xoff i l m
A九十
Na肺肝hCI2仰甜甜
貯 畔 肘
が +336. 0 336. 0 3 47. 0 3 43. 0 3 43, 0 337, 0 3 4 1 . 0 426. 0 337. 0 3 4
10339. 0
表 1
3 40, 0 ̲ 4. 0 5850 338, 5 ̲ 2, 5 577. 0 3110 3 6. 0 58 4. 0 3395 3, 5 599. 0 339. 5 3. 5 597. 0 335. 0 2. 0 593. 0 3385 2. 5 5860 43 20 ̲ 60 56 10 339. 5 ‑ 2. 5 596. 0 3395
1.
56220 31 5. 5 23. 5 575. 0
589. 5 ‑ 45 581 . 5 ̲ 45 5850
11.06030 ̲ 4. 0 59 75 ̲ 0. 5 595. 5 ‑ 2. 5 585. 0
1. 0
566. 5 ‑ 5. 5
600 0 ‑40622. 0
00573. 0 20
△九ofM‑ TAP ( 九maxi nCHCl 3 ‑人maxoff i l m)
また , E の小 さいSo r e tba nd では溶液状態 と膜状 態の差 はほ とん どな く,約 3 4 0 n mに集 中 していた。
よ り Eの大 きなQba nd ではCHC 1 3 中 ・ 膜状態 ともに 最 も短波長側 に吸収があ ったのがFe 錯体 ( cHC l 3 中 5 61. Onm ・膜状態 5 6 6. 5 mm)であ り,長波長側
0 0 tJ 2 ′LU ′0 0 0 0 0ノ ′0 5
'tu H U ul
Yt!tI
ZYに吸収が あ ったのがpb 錯 体 ( cHC 1 3 中 6 2 2. Onm ・ 膜状態 6 2 2. Onm)である 。TA P金属錯体 のQba nd で は,金属 に こそ周期性 は見 られ なか ったが, cHC 1 3 中 と膜状態での吸収位置 には傾 き 1 の相関 関係があることが見出 された ( 図 3) 。
=‑
560
5 7 0 5 8 0 5 9 0 6 0 0 61 0
人T na XOff l 】 T n
図 3 QbandsofM‑ TAP
TPP 金属錯体 について,Zn‑ TPP 錯体 を例 に とり, cHC l 。 中お よび膜状態での吸収 スペ ク トル を示 し た。実線 で示 したcHC 1 3 中の吸収位置 に対 し,点 線で示 した膜状態での吸収位置では,So r e tba n d に おいて Aん ニ ー5. On m,Qba nd において Aん ニ ー 4. 5 n mと若干の ピークのずれ と,膜状態ではSo r e t
6 2 0 6 3 0
ba nd のブ ローディングが見 られた ( 図4)
oTPP 金 属錯体so r e tba nd において,全ての錯体が膜状態で は,よ り長波長側 に ‑5. 0‑‑3 2. O n mシフ トシフ トしていて,Qba nd で も ,Ni 錯体 ( Aん ‑ 1 8. Onm) 以外が膜状態において, よ り長波長側に‑ 0. 5‑
‑5. 5 n mシフ トす る事がわか った ( 表 2) 0
4
r33 5 q・tO Sq V
350 4 50 550 650
W a v e l e n g t h / n m
図 4 UVI V i s i bl ea b s or p t i o no fZn ‑ TPPi nCHCl 3 ( ) a n dZn ‑ TPPo Hi l m( ‑ ‑ ‑ )
Sor e tba nd Ce nt r a lme t a l
九nl a Xi nCHCl , kI a XOff i l m
A九' j rj{・r
{
;LT
3′
虻 'f{
・・‑
'‥'十+415 . 0442 .5‑27.5 417 . 0423 .5‑6.5 417 . 0422 .0‑5.0 425 .04430‑18.0 424 , 0448 .0̲28.0 421 . 0426 . 0‑50 426 . 0438 .0̲12.0 409 5 425 . 5̲160 426 , 0444 .0‑I8.0 419 . 0436 .0‑17.0 411 . 0443 5 ‑32 . 5
山na xi nCHC
l, 九ma XO
frilm539. 0 5 49. 5 5 24. 0 529. 0 528, 0 51 0. 0 5600 56 4. 0 5 48. 0 5 49. 5 550. 0 559. 5 56
105 6 4 5 57
1.0575. 5 5640 568. 0 655. 0 660 . 5 528. 0 5 48. 0
A九
5 0 0 0 5 5 5 5
05 0 1 0 4 1 g 4
・ 7;4 . 3 4
T4 2 l . 、 .
、. 一
表 2 △AofM‑TPP(九maxinCHCl3‑人maxoffilm)
次に ,OEP 金属錯体について ,CHC1 3 中お よび膜 状態 での吸収 スペ ク トル を Mg ‑ OEP 錯体 を例 に と
り示 した。実線で示 した cHC1 3 中の吸収位置に対 し, 点線 で示 した膜 状態 で の吸収位置 につ いては, S o r e t b a n d において A入ニ ー2 2. 0 n m,Q b a n d にお いて A入‑ 1 2 1. On m とピークのずれ と,膜状態 では Ob a n d の分裂がはっき りとした もの となって
いた ( 図 4) 。傾 向 として ,S o r e t b a n d にお いて, Fe 錯体 ( A入 ‑ 4. 5 n m) 以外が膜状態で,よ り長 波長側 に‑ 2. 5‑‑ 4 6. 5 n m シフ トしてい る。 Q
b a n d で も ,I n 錯体 ( A入‑ 1. 5 n m) 以外が膜状態 において,よ り長波長側 に ‑1 5. 0‑‑3 9. On mシフ
トしていることがわか った ( 表 3) 。
25 0 3 0 0 3 5 0 40 0 45 0 5 0 0 5 5 0 6 0 0 65 0 700 Wa v e l e ng 也
血m
図 5 UVI Vi si bl eabsor pt i onofMg一 〇EPi nCHCl , ( )andMg‑ OEPof川m( ‑ ‑ ‑)
S。r e tba nd qba nd
山na xi nCHC
l,kI l a XOff i l m
A入山t l a Xi n CHCl 3 山na xof
RIm A入Ce nt r a lme t a l
'
・j
げN
・。M'
;'t什吋't
393. 0 439. 0 39 4. 0 4000
3930 3955
3930 4110
39 8. 0 41 4. 0 402. 0 425. 0 409. 0 4045 393. 0 41 5. 0 41 0. 0 41 7. 0
46 . 5 553. 0
‑ 6. 0 5 470
‑ 2, 5 5530
̲ 1 8. 0 553. 0
‑ 1 6. 0 562. 0
̲ 23. 0 569. 0 4. 5 5730
‑ 22. 0 56
1.0‑ 6. 0 545. 0
58 6. 0 ‑ 330 563. 0 ‑ 1 60 5680 ‑ 1 50 55
15
1.5 601 . 0 ‑ 39. 0 59 6. 5 ‑ 27. 5 59 2. 0 ‑ 1 9. 0 58 2. 0 ‑ 21 . 0 572. 0 ‑ 27. 0
表 3
△九ofM‑ OPE (九maxi nCHC l 3 ‑人maxoff i l m)
TPP,OEP 金 属 錯 体 に お い て は,
Eの 大 き い Sor e tba nd では溶液 と膜 の差 が一定 ではな く, M‑
TPP は膜 にな る と約 420‑450m m, M‑ OEP は約 390
0 0 3 2 4 4
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